JP2826624B2 - 高温超電導体電流リード - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は高温超電導体電流リード
にかかるもので、とくにフィラメントワインディング法
により補強構造を施した高温超電導体電流リードに関す
るものである。

【０００２】

【従来の技術】従来の超電導コイル装置１について、図
４にもとづきその一例を説明する。この超電導コイル装
置１は、超電導コイル２と、コイル容器３と、このコイ
ル容器３内の冷媒４（たとえば液体ヘリウム）と、熱シ
ールド板５と、クライオスタット容器６と、正極用電流
リード７および負極用電流リード８と、外部電源９と、
コイル側接続線１０および電源側接続線１１と、コイル
側接続線１０および電源側接続線１１を被覆しているガ
イド管１２とを有する。

【０００３】上記コイル側接続線１０および電源側接続
線１１により、超電導コイル２を外部電源９に電気的に
接続するものである。

【０００４】なお、ガス冷却型の電流リードの場合に
は、図示のようにガイド管１２内を上昇する冷媒４の蒸
発ガスにより、正極用電流リード７、負極用電流リード
８、コイル側接続線１０および電源側接続線１１を冷却
し、外部からの侵入熱を低く抑えるようにしている。

【０００５】しかして、当該正極用電流リード７および
負極用電流リード８の全体あるいは一部を、熱伝導度の
低い高温超電導体たとえば酸化物高温超電導体により製
作することによって、この部分を通した外部からの熱侵
入量、および同部分におけるジュール熱発生量を低く抑
えることができる。

【０００６】なお、酸化物高温超電導体としては、ビス
マス系、イットリウム系、タリウム系などのものがあ
る。

【０００７】しかしながら、酸化物高温超電導体は、異
種材料との溶接が困難であること（電気的および機械的
接続困難性）、さらに衝撃値等強度が低く、電極端子を
取り付けるために力を加えることが困難であること（機
械的接続困難性）などの問題があり、その両端に電極端
子を取り付けることにより電流リードとする上での障害
となっていた。

【０００８】したがって従来、酸化物高温超電導体の電
流リードとしての性能確認のためには、超電導体の成形
時にその端部電極部に銀の箔を接合し、この銀の箔に電
流リード線を直接ハンダ付けすることにより電流リード
を構成していた。

【０００９】しかし、上記箔の接合が不安定であり、こ
の部分での発熱および剥離のおそれがあり、酸化物高温
超電導体は超電導体電流リードとしてその特性を発揮す
ることができないという問題がある。

【００１０】また超電導コイル装置に酸化物高温超電導
体電流リードを組み込んだ場合、電流リード本体の強度
不足のため、熱的衝撃および外部振動等に対して損傷の
おそれという問題もある。

【００１１】

【発明が解決しようとする課題】本発明は以上のような
諸問題にかんがみなされたもので、電極端子との間の電
気的接続を保証しつつ機械的強度を補強可能で、上述の
ような諸問題を解消することができる安定した性能の高
温超電導体電流リードを提供することを課題とする。

【００１２】

【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、酸化
物高温超電導体などの高温超電導体と、コイル側電極端
子および電源側電極端子との間に介在部材を配置すると
ともに、フィラメントワインディング法によりこれらを
一体化することに着目したもので、超電導コイルと、外
部電源とを電気的に接続可能な高温超電導体電流リード
であって、上記超電導コイルに接続するコイル側電極端
子と、上記外部電源に接続する電源側電極端子と、これ
らコイル側電極端子および電源側電極端子の間に配置し
た高温超電導体とを有し、この高温超電導体と、これら
コイル側電極端子および電源側電極端子との間の対向面
をそれぞれ接続用傾斜面とするとともに、これらの接続
用傾斜面の間に比較的軟質の導電体からなる介在部材を
配置し、該高温超電導体と該コイル側電極端子および該
電源側電極端子とを、断熱性フィラメントを用いたフィ
ラメントワインディングにより一体化したことを特徴と
する高温超電導体電流リードである。

【００１３】

【作用】本発明による高温超電導体電流リードにおいて
は、コイル側電極端子と、電源側電極端子との間に、比
較的軟質の導電体による介在部材を介して、高温超電導
体による電流リード本体を挟み、さらにフィラメントワ
インディング法により機械的に接続を行うことにより全
体を一体化することとしたので、上記高温超電導体とコ
イル側電極端子および電源側電極端子との間の電気的接
続状態を確保することができるとともに、温度変化によ
る高温超電導体の膨張および収縮があっても機械的およ
び電気的接続性を維持可能である。

【００１４】さらに、フィラメントワインディング法に
より外面に形成した成形体は、これ自体が強度部材とな
るため、振動等外力に対する保護カバーとして機能する
ものである。

【００１５】

【実施例】つぎに、本発明の一実施例による高温超電導
体電流リード２０を、酸化物高温超電導体により電流リ
ード本体を構成した場合を例に取ってを図１ないし図３
にもとづき説明する。ただし、図４と同様の部分には同
一符号を付し、その詳述はこれを省略する。

【００１６】図１は、高温超電導体電流リード２０の縦
断面図であって、この高温超電導体電流リード２０はコ
イル側電極端子２１と、電源側電極端子２２と、これら
コイル側電極端子２１および電源側電極端子２２の間に
配置した酸化物高温超電導体２３と、その間に配置した
介在部材２４と、コイル側電極端子２１および電源側電
極端子２２の端面の円周に立てた複数本のフィラメント
ワインディング用ピン２５と、断熱性フィラメント２６
から構成した保護カバー２７とを有する。

【００１７】上記コイル側電極端子２１および電源側電
極端子２２は、前記コイル側接続線１０および電源側接
続線１１を接続するための接続用穴部２１Ａおよび２２
Ａをそれぞれ有する。

【００１８】さらにコイル側電極端子２１および電源側
電極端子２２は、その内面を円錐状に形成することによ
り酸化物高温超電導体２３との間の対向面に接続用傾斜
面２１Ｂおよび接続用傾斜面２２Ｂをそれぞれ有してい
る。

【００１９】上記酸化物高温超電導体２３は、その中央
部に中央孔２３Ａを形成した中空状のもので、その両端
部を外方に突出させて接続用傾斜面２３Ｂおよび２３Ｃ
をそれぞれ形成してある。なお、この酸化物高温超電導
体２３は中実状でも良い。

【００２０】上記介在部材２４は、ウッドメタル、ある
いはハンダ、インジウムなど比較的柔らかな導電体から
これを円錐状に構成したもので、酸化物高温超電導体２
３の接続用傾斜面２３Ｂおよび２３Ｃと、コイル側電極
端子２１の接続用傾斜面２１Ｂおよび電源側電極端子２
２の接続用傾斜面２２Ｂとの対向面の間にこれを介在さ
せるものである。

【００２１】上記断熱性フィラメント２６は、たとえば
ＣＦＲＰ（カーボン繊維強化プラスチック）、ＧＦＲＰ
（ガラス繊維強化プラスチック）等からこれを構成した
もので、この断熱性フィラメント２６を用いてフィラメ
ントワインディング法により、全体を一体化してある。

【００２２】すなわち、図２および図３に示すように、
上記フィラメントワインディング用ピン２５に断熱性フ
ィラメント２６をかけて、酸化物高温超電導体２３、コ
イル側電極端子２１および電源側電極端子２２の軸方向
に締め付けることにより、酸化物高温超電導体２３と、
介在部材２４と、コイル側電極端子２１および電源側電
極端子２２とを一体化するとともに、保護カバー２７を
形成する。なおフィラメントワインディング用ピン２５
は、酸化物高温超電導体２３の両端部にこれを設けても
よいが、図１の仮想線に示すようにその側部にこれを設
けるようにしてもよい。

【００２３】ＣＦＲＰおよびＧＦＲＰ等の繊維には、樹
脂、硬化剤などをあらかじめ塗布しておき、上記保護カ
バー２７を成形ののち、加熱炉において該樹脂を加熱硬
化させることによりさらに機械的強度を増強させる。

【００２４】またコイル側電極端子２１、電源側電極端
子２２および酸化物高温超電導体２３の軸線方向と、断
熱性フィラメント２６の巻き傾き方向との間の巻き角度
θを調節することにより、断熱性フィラメント２６の張
力すなわち介在部材２４への締め付け力を調整可能で、
この部位の電気的導通性を確保する。

【００２５】すなわち、断熱性フィラメント２６の軸心
に対する巻き角度θを、酸化物高温超電導体２３の外側
に成形された保護カバー２７の線膨張係数が、酸化物高
温超電導体２３の軸方向の線膨張係数と同じになる角度
とする。

【００２６】かくすることにより、熱収縮による酸化物
高温超電導体２３に過大な力が加わったり、あるいは逆
に接続用傾斜面２１Ｂ、２２Ｂ、２３Ｂ、２３Ｃでの介
在部材２４の部位がゆるみ介在部材２４への圧縮力が減
少する結果、電気的な抵抗が増加しないようにするもの
である。

【００２７】こうした構成の高温超電導体電流リード２
０においては、外側の保護カバー２７と、内側の酸化物
高温超電導体２３の線膨張係数を同一にしてあることに
より、実装の低温時においても、酸化物高温超電導体２
３とコイル側電極端子２１および電源側電極端子２２と
の電気的な接続を適正な応力で維持することができる。

【００２８】さらに外面に形成した保護カバー２７は、
これ自体が機械的強度補強部材となり、振動等の外力に
対して酸化物高温超電導体２３を保護する。

【００２９】また、断熱フィラメント２６の材料である
ＣＦＲＰあるいはＧＦＲＰ等は、それ自体が低熱伝導率
体であり、この部分への外部からの熱侵入を抑制し、そ
の成形体である保護カバー２７が熱的に高温超電導体電
流リード２０の性能を低下させることがない。

【００３０】

【発明の効果】以上のように本発明によれば、介在部材
を介して酸化物高温超電導体とコイル側電極端子および
電源側電極端子とを当接した状態でフィラメントワイン
ディング法によりこれらを一体化したので、実装低温時
においても高温超電導体電流リードの電気的接続状態を
維持した状態で機械的強度を補強しこれを維持すること
ができ、安定した性能を発揮可能である。

【００３１】

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例による高温超電導体電流リー
ド２０の縦断面図である。

【図２】同、高温超電導体電流リード２０の側面図であ
る。

【図３】同、高温超電導体電流リード２０の一部切欠き
平面図である。

【図４】従来の超電導コイル装置１の概略図である。

【符号の説明】

１ 超電導コイル装置 ２ 超電導コイル ３ コイル容器 ４ 冷媒（液体ヘリウム） ５ 熱シールド板 ６ クライオスタット容器 ７ 正極用電流リード ８ 負極用電流リード ９ 外部電源 １０ コイル側接続線 １１ 電源側接続線 １２ ガイド管 ２０ 高温超電導体電流リード ２１ コイル側電極端子 ２１Ａ コイル側電極端子２１の接続用穴部 ２１Ｂ コイル側電極端子２１の接続用傾斜面 ２２ 電源側電極端子 ２２Ａ 電源側電極端子２２の接続用穴部 ２２Ｂ 電源側電極端子２２の接続用傾斜面 ２３ 酸化物高温超電導体 ２３Ａ 酸化物高温超電導体２３の中央孔 ２３Ｂ 酸化物高温超電導体２３の接続用傾斜面 ２３Ｃ 酸化物高温超電導体２３の接続用傾斜面 ２４ 介在部材 ２５ フィラメントワインディング用ピン ２６ 断熱性フィラメント ２７ 断熱性フィラメント２６から構成した保護カバー θ コイル側電極端子２１、電源側電極端子２２および
酸化物高温超電導体２３の軸線方向と、断熱性フィラメ
ント２６の巻き傾き方向との間の巻き角度

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 超電導コイルと、外部電源とを電気的
   に接続可能な高温超電導体電流リードであって、 前記超電導コイルに接続するコイル側電極端子と、 前記外部電源に接続する電源側電極端子と、 これらコイル側電極端子および電源側電極端子の間に配
   置した高温超電導体とを有し、 この高温超電導体と、これらコイル側電極端子および電
   源側電極端子との間の対向面をそれぞれ接続用傾斜面と
   するとともに、これらの接続用傾斜面の間に比較的軟質
   の導電体からなる介在部材を配置し、 該高温超電導体と該コイル側電極端子および該電源側電
   極端子とを、断熱性フィラメントを用いたフィラメント
   ワインディングにより一体化したことを特徴とする高温
   超電導体電流リード。