JP2818226B2 - 固体潤滑皮膜を形成する方法 - Google Patents

固体潤滑皮膜を形成する方法

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、例えば精密ベアリングの摩擦面に、耐久性
に優れかつ潤滑性のよい薄い固体潤滑皮膜を形成する方
法に関する。
真空城や高温域や腐食性雰囲気等で使用される部材の
接触面は、従来の潤滑油では潤滑が困難な場合が多く、
従ってこれ等の部材の摩擦面には固体潤滑皮膜を形成す
る事が好ましい。
又精密な部材では、接合面のクリアランスが小さく、
従って薄い固体潤滑皮膜が必要となる。
本発明は、この薄く且つ潤滑性の優れた皮膜を形成す
る方法に関する。
[従来の技術] 例えば2硫化モリブデンは優れた固体潤滑剤であるた
め、有機質あるいは無機質のバインダーに混じて、例え
ばスプレーコーティングし、乾燥又は焼付硬化させ、厚
さが例えば3〜15μmの固体潤滑剤皮膜を形成する方法
が行われている。
通常精密なベアリングにおいては、潤滑皮膜の厚さは
3μm以下が望ましい。しかし上記の方法では、2硫化
モリブデンの粒度の関係もありスプレーの膜厚が変動す
るために、又潤滑性皮膜を形成する面に施した前処理の
性質のばらつきのため、3μm以下の薄い膜厚では、安
定した性能のよい潤滑性皮膜を形成する事は困難であ
る。
スパッター法や蒸着法やイオンプレーティング法によ
ると薄い膜厚の皮膜は形成できるが、つきまわり性(ス
ローイングパワー)が弱いために、複雑な形状の部材へ
適用する事は難しく、又真空処理や加熱処理等では安定
した固体潤滑皮膜とはなり難い。
ジェットコーティング法は、例えば、2硫化モリブデ
ンの微粉末を高圧空気等を用いて、高速度で金属表面等
に吹きつける方法である。高速度で吹きつけられた2硫
化モリブデンは金属表面に衝突するエネルギーで金属表
面に突きささり、薄い潤滑皮膜を形成する。しかしこの
方法で、軽量で微粉末の2硫化モリブデンに高エネルギ
ーを与えるためには、高速度で吹きつける必要があるた
め、高圧力の空気が多量に必要で、2硫化モリブデンの
粉末も飛散し、経済的ではない。
[発明が解決しようとする課題] 本発明は、例えば精密ベアリングの接触面に、膜厚が
10μm以下の例えば1〜2μmの薄い固体潤滑皮膜を形
成する方法であって、耐久性に優れかつ潤滑性のよい皮
膜を経済的に形成する方法を開示するものである。
[課題を解決するための手段] 鋼球の表面をバインダーを用いて粉末の固体潤滑剤で
被覆した後、該鋼球を潤滑皮膜を形成する表面に高速度
で投射して、該表面に固体潤滑皮膜を形成する方法であ
る。
本発明で用いる固体潤滑剤は、例えば、黒鉛、2硫化
モリブデン、二硫化タングステン、窒化ほう素、PTFE等
である、これ等を混合した混合潤滑剤や他の固体潤滑剤
も使用する事ができる。
本発明で用いる鋼球は、例えば直径が1mmの鋼球であ
るが、他の大きさの鋼球も使用でき、又鋼球は硬質で比
重が大きい材質であればステンレス鋼球や他の材質の鋼
球であってもよい。
本発明では金属球を予め固体潤滑剤で被覆する。例え
ば粒度が平均5μm以下の固体潤滑剤の粉末を、有機質
あるいは無機質のバインダーを用いて鋼球に被覆する
が、後で述べる如く、粒度が大きな固体潤滑剤も、鋼球
が投射によって潤滑皮膜を形成する面に衝突した際に劈
開するため、固体潤滑剤は他の粒度のものであってもよ
い。又本発明でバインダーは、潤滑皮膜を形成する表面
に鋼球が衝突するまで鋼球を固体潤滑剤で被覆できれば
十分である。固体潤滑皮膜の被覆厚さは例えば3〜10μ
mであるが、固体潤滑剤の種類や後で述べる球状体の投
射条件によっては、他の被覆厚さであってもよい。
本発明では潤滑皮膜を形成する表面に、固体潤滑剤で
被覆した鋼球を高速度で投射する。投射速度は例えば5m
/sとするが、潤滑皮膜を形成する材質や固体潤滑の種類
や鋼球の大きさによって、他の投射速度であってもよ
い。高速度で鋼球を投射する手段としては、高圧空気や
他の機械的あるいは電気.磁気的方法等を用いる事がで
きる。
鋼球が潤滑皮膜を形成する表面に衝突した際、鋼球を
被覆している固体潤滑剤の一部は、該表面に突きささっ
て固体潤滑剤皮膜を形成し、他の一部は鋼球から剥離す
る。剥離した固体潤滑剤や鋼球は回収される。
以上の方法によって、金属や非金属の表面に薄い潤滑
性能の優れた潤滑皮膜を形成する。また同時にショット
ピーニング効果で金属や非金属の表面の潤滑性も改善さ
れる。
[作用] 質量がmで速度υの質点は1/2mυのエネルギーで衝
突する。先に述べたジェットコーティング法では、固体
潤滑剤の微粉末を高圧空気で金属面に吹きつけて金属表
面に突き刺し、固体潤滑剤の皮膜を形成するが、固体潤
滑剤の微粉末は質量が小さいため、皮膜を形成させるに
は極めて高速度で吹きつける事が必要となる。
本発明において固体潤滑剤で被覆した鋼球は1/2mυ
のエネルギーで衝突する。衝突の際、鋼球と潤滑膜を形
成する面との間には固体潤滑剤の被覆物が挟まれる。こ
の挟まれた被覆物は、鋼球の衝突エネルギーで潤滑膜を
形成する面に打ち込まれる。鋼球の質量は固体潤滑剤の
微粉末の質量よりもはるかに大きく、従って衝突のエネ
ルギーもはるかに大きい。本発明では鋼球のこの大きな
衝突エネルギーで固体潤滑剤を潤滑膜を形成する面に打
ち込むため、ジェットコーティング法に比べて固体潤滑
皮膜の形成が容易となる。本発明では被覆した鋼球の投
射条件で固体潤滑皮膜の厚さを正確に調整でき、膜厚の
変動が少ない。従って薄くても性能が優れた固体潤滑皮
膜となる。
本発明の固体潤滑皮膜は、有機質や無機質のバインダ
ーの接合力を利用するものではないため、潤滑膜を形成
する面に前処理として化成皮膜等の下地皮膜の形成処理
が不必要で、部材が高い寸法精度に保たれ、又前処理の
性質によって潤滑皮膜の性能が損われることがない。
本発明の固体潤滑皮膜は、皮膜中の固体潤滑剤の粒度
は、鋼球の衝突による劈開で均質化され、性能のよい皮
膜となる。
本発明では、例えば被覆した鋼球を投射する位置や投
射の方向を調整する事により、複雑な形状の部材にも固
体潤滑皮膜を形成する事ができ、又皮膜の形成に際して
固体潤滑剤の加熱等を行わないため、固体潤滑剤を変質
させる事がなく、常に安定した潤滑性能の皮膜が得られ
る。
[実施例] JIS,SUJ2のボールに、本発明の固体潤滑皮膜を形成し
た例を説明する。
鋼球としては、直径が1.0mmのステンレス鋼球を用い
た。
固体潤滑剤は平均粒径が3μmの2硫化モリブデン
で、バインダーとしてエポキシ樹脂を用いて、第1図の
タンブラー装置を用いて、鋼球に3μmの厚さで被覆し
た。
この被覆した鋼球を加熱乾燥した。
被覆した鋼球の投射には第2図の装置を用い、2m/sec
で、潤滑皮膜を形成する表面に、鋼球で30gr/cm2となる
量の投射を行った。
この方法で供試部材表面には2μmの厚さの固体潤滑
皮膜が形成された。
ピン・オン・プレート摩擦試験機を用いて、この固体
潤滑皮膜の性能を試験した。その結果を比較例の供試材
と比較して第3図に示した。尚試験条件は下記の如くで
ある。
イ)供試材 本発明例:直径6mmのJIS,SUJ−2のボールの表面に本発
明の方法で上記の固体潤滑皮膜を形成した。
比較例1:本発明例と同じ寸法、材質のボールの表面に、
擦込みにより、2硫化モリブデンの固体潤滑皮膜を形成
した。
比較例2:本発明例と同じ寸法、材質のボールの表面に圧
縮空気による吹付けにより2硫化モリブデンの固体潤滑
皮膜を形成した。
ロ)試験条件 上記のボールを回転させないで試験した。
プレート:JIS,SPCC材 荷重 : 3kg 軌跡径 : 31.8mm 回転数 : 180rpm 第3図にみられる如く、本発明の固体潤滑皮膜を形成
した供試材は、比較例1および比較例2に比べて、寿命
が大幅に延長する。
[発明の効果] 本発明により、精密部材の摩擦面に、10μm以下の厚
さの固体潤滑皮膜を、高い寸法精度で形成する事ができ
る。
この方法で形成した固体潤滑皮膜は、耐久性や潤滑性
が優れ、又皮膜の形成はジェットコーティング法よりも
経済的でかつ簡易である。
【図面の簡単な説明】
第1図は固体潤滑剤を被覆するタンブラー装置の例を示
す図 第2図は固体潤滑剤を被覆した鋼球を投射する装置の例
を示す図 第3図は実施例の供試材の固体潤滑皮膜の性能の例を示
す図 である。 1:固体潤滑剤を被覆する鋼球 2:固体潤滑剤のスプレー 3:回転タンブラー装置 4:高圧空気 5:ノズル 6:固体潤滑剤を被覆した鋼球 7:投射方向

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鋼球の表面をバインダーを用いて粉末の固
    体潤滑剤で被覆した後、該鋼球を潤滑皮膜を形成する表
    面に高速度で投射して、該表面に固体潤滑皮膜を形成す
    る方法
  2. 【請求項2】2硫化モリブデン、2硫化タングステンで
    予め、10μm被覆した直径5mm以下の鋼球を、鋼材の表
    面の潤滑膜を形成する面に0.5〜50m/sの速度で投射する
    事を特徴とする、鋼材の表面に固体潤滑皮膜を形成する
    方法
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