JP2814495B2 - コンタクトレンズの製造方法及び製造装置 - Google Patents

コンタクトレンズの製造方法及び製造装置

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JP2814495B2 JP63231971A JP23197188A JP2814495B2 JP 2814495 B2 JP2814495 B2 JP 2814495B2 JP 63231971 A JP63231971 A JP 63231971A JP 23197188 A JP23197188 A JP 23197188A JP 2814495 B2 JP2814495 B2 JP 2814495B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、患者の視力を矯正するために眼の角膜に接
触させて用いられるコンタクトレンズの製造方法及び製
造装置に関する。
〔従来の技術〕
一般にコンタクトレンズは、第2図(a)あるいは
(b)に示すような形状を有している。第2図(a)は
主に近視視力を矯正するためのマイナスレンズ、第2図
(b)は主に遠視視力を矯正するためのプラスレンズの
部分断面図である。
第2図(a)及び(b)に示すように、コンタクトレ
ンズの内面側には、ベースカーブと呼ばれる曲面201が
形成され、その反対側の前面側にはフロントカーブと呼
ばれる曲面202が形成されている。ベースカーブ201の曲
率半径R1は、患者の眼の角膜の形状に適合するように設
定され、フロントカーブ202の曲率半径R2は、ベースカ
ーブ201の曲率半径R1と患者が必要とする矯正度数に基
づいて設定される。第2図(a)に示すマイナスレンズ
ではR1<R2、第2図(b)に示すプラスレンズではR1
R2の関係にあり、R1≒R2の場合には矯正度数はほぼ0D
(ディオプトリー)となる。
ベースカーブ201の外周には、ベベルと呼ばれる曲面2
03が形成されている。従って、コンタクトレンズの内面
カーブはベースカーブ201とベベル203で構成されてい
る。さらに通常ベベル203は、セカンダリーカーブと呼
ばれる曲面204及びペリフェラルカーブと呼ばれる曲面2
05の2つの曲面から構成される。このベベル203は、次
のような目的のために形成される。
すなわち第3図に示すように、コンタクトレンズ301
は、通常角膜302との間に涙液303が介在した状態で使用
させる。この涙液303は、角膜302の表面の洗浄・殺菌及
び角膜302への酸素供給という重要な機能を有するた
め、コンタクトレンズ301と角膜302との間に介在する涙
液303は常に新鮮な涙液と交換される必要がある。ベベ
ル203は、この涙液をスムーズに流入及び流出させるた
め、及びレンズの上下の動きをスムーズにさせるために
設けられたもので、その形状は、患者の涙液の量、角膜
の周辺部の形状などの処方データに基づいて決定され
る。ベースカーブ201の曲率半径R1と、セカンダリーカ
ーブ204の曲率半径R3及びペリフェラルカーブ205の曲率
半径R4とは、通常R1<R3<R4の関係にあるが、R1R3
R4となる場合もある。
フロントカーブ202の外周には、レンチックカーブと
呼ばれる曲面206が形成されている。このレンチックカ
ーブ206は、エッジ厚207の厚みを所定の値にするための
ものであり、その形状は、フロントカーブ202の曲率半
径状R2及び中心厚208の厚みに基づいて決定され、通常
ラロントカーブの曲率半径R2とレンチックカーブR5
は、マイナスレンズの場合はR2>R5の関係にあり、プラ
スレンズの場合はR2<R5の関係にあるが、R2=R5となる
場合もある。従って、コンタクトレンズの前面カーブ
は、通常フロントカーブ202とレンチックカーブ206で構
成されるが、レンチックカーブがない場合もある。
エッジ厚207の値は、患者の装用感に重大な影響を与
えるものであるが、多くの臨床試験の結果から、この値
は一般の患者の場合は0.08〜0.11mm程度が適当であると
言われており、まぶた304の張りが弱まっている高齢者
の患者の場合には0.14〜0.15mmが適当であると言われて
いる。また、このエッジは、角膜を傷つけないように滑
らかな曲面に形成されている。同じように、ベースカー
ブとベベル及びフロントカーブとレンチックカーブの接
続部も、滑らかな曲面に形成されている。
このようなコンタクトレンズを製造する、従来の代表
的な製造工程の一例を第4図に示す。
従来は、第4図の製造工程の前に、患者の眼の処方デ
ータもしくはあらかじめ定められた標準規格に基づいて
所望の形状を選るために設計データを求めておき、この
設計データに基づいて製造が行われていた。
原料カット工程401は、通常コンタクトレンズの原料
である高分子モノマーの重合体あるいは共重合体は、第
5図(a)に示すように、円柱の棒状に成形された原料
ロッド501の形で供給されるため、これを最終的に必要
な厚みよりも大きめの厚みを有するボタン状原料502に
カットする工程である。原料がボタン状原料502の形で
形成されれば、この工程は省略される。
ベースカーブ切削工程402は、このボタン状原料502を
切削してベースカーブを形成する工程であり、第5図
(b)に示すように、ボタン状原料502をコレットチャ
ック504に固定し、高精度のNC旋盤等に取り付けられた
切削工具505によって切削し、所望の形状のベースカー
ブ506を形成する工程である。
ベースカーブ研磨工程403は、ベースカーブの表面を
研磨して、光学的鏡面に仕上げる工程であり、第5図
(c)に示すように、所望のベースのカーブ形状に合致
する表面形状を有する専用の研磨工具507を用いて研磨
する。ベースカーブが非球面の場合には、微少な研磨パ
ッドを用いる場合もある。
フロントカーブ切削工程404は、ベースカーブと反対
側の面を切削してフロントカーブ及びレンチックカーブ
を形成する工程であり、第5図(d)に示すように、ベ
ースカーブ506側を接着剤508によって固定治具509に固
定し、ベースカーブ加工時と同じように高精度のNC旋盤
などに取り付られた切削工具510によって切削し、所望
の形状のフロントカーブ511及びレンチックカーブ512を
形成する。その後フロントカーブ研磨工程405におい
て、ベースカーブの時と同じように、専用の研磨工具を
用いて研磨し、光学的鏡面に仕上げる。
ベースカーブ及び/又はフロントカーブ加工時の加工
誤差によって、所望の形状あるいは矯正度数が得られな
かった場合には、研磨工程時に研削も併せて行い、形状
を変化させることによって誤差を修正する場合もある。
このようにして得られた、所望の矯正度数を有するレン
ズは、一般にアンカットレンズと呼ばれている。
ベベル研削工程406は、第5具(e)に示すように、
アンカットレンズ513を接着剤514などによって固定治具
515に固定し、患者の処方データに適合する表面形状を
有する専用の研削工具516を用いて、アンカットレンズ5
13の外周部を研削することにより、所望の形状のベベル
を形成するとともに、、所望の外径になるように外周を
カットする工程であり、通常はセカンダリーカーブの形
成とペリフェラルカーブの形成および外周カットの3工
程からなる。
最後に、エッジ加工工程407において、エッジ及び各
曲面の接続部を滑らかな曲面に研磨・研削して完成す
る。
ところで、人間の眼の形状は、各人各様で異なるもの
であり、したがってコンタクトレンズの製造にあたって
も、患者の処方データに基づいて、各患者ごとにその患
者に最適な形状のコンタクトレンズを製造するのが理想
であるが、実際には量産効率を高めて製造コストを低減
したいという、製造者側の要求と、必要な時にすぐ入手
して使用したいという使用者側の要求とから、多くの臨
床試験の結果に基づいて、大多数の患者に適合する標準
の形状が求められており、それらの標準品をあらかじめ
製造し、眼科医や小売店に常備させておくという販売形
態がとられている。
〔発明が解決しようとする課題〕
コンタクトレンズを製造するうえでの課題の一つは、
製造コストが極めて高いという点である。前述のよう
に、標準品の規格を定めることにより、量産効率を高
め、製造コストを低減しようとする試みが従来よりなさ
れているが、一般的な標準品は、例えばベースカーブの
曲率半径では、0.05mmごとに7.00mm〜8.50mmの範囲、矯
正度では、0.25Dごとに±10.00D程度の範囲で、これに
ベベルの形状、外径、エッジ厚及び中心厚を加えると、
常備品としてあらかじめ用意しておく必要のあるレンズ
の種類は、数千種類にもなり、典型的な多品種少量生産
となるため量産効果に乏しく、製造コスト低減という目
的が充分に達成できないという問題があった。
さらに、これだけ多種類の標準品を用意しても、これ
に適合する患者は全体の9割程度であり、残りの1割の
患者については、特注品という形で個々の患者ごとに個
別の形状に作りこむ必要がある。このような特注品のレ
ンズを製造する場合には、個別の形状に適合する専用の
工具を別個に作製する必要があり、製造コストがさらに
上昇するとともに、注文を受けてから完成するまでに多
くの日時がかかるという問題もあった。
すなわち、従来ベースカーブ、フロントカーブなどの
研磨には、先に述べたように、要求される精度を維持す
るために、所定の形状を有する専用の研磨工具を用いて
いた。そのためベースカーブ、セカンダリーカーブ、ペ
リフェラルカーブ、フロントカーブ及びレンチックカー
ブごとに、それぞれの形状に適合する研磨工具を別個に
用意しなければならず、さらにレンズの種類に対応する
だけの種類の研磨工具が必要となり、製造コストが上昇
するとともに、レンズの種類が変わるたびに、研磨工具
も交換しなければならないため、生産性が著しく低下す
るという問題があった。
また、コンタクトレンズの製造にあたっては、要求さ
れる加工精度がきわめて高いという課題がある。
特にベースカーブ及びベベルの形状は、患者の眼の角
膜に接する部分であるため、コンタクトレンズの装用感
を向上させ、かつコンタクトレンズの使用による眼の充
血や炎症を防止するという、医学的な安全性の向上のた
めに重要な意味をもつものであり、要求される精度が著
しくきびしいものである。
ところで、従来の製造方法では、第4図に示すよう
に、ベースカーブ及びフロントカーブの加工を行った
後、ベベルの加工を行っていたために、以下のような問
題を有していた。
すなわち、ベースカーブ及びフロントカーブの加工を
終了した時点におけるコンタクトレンズ原料の厚みは、
前述のごとく0.08〜0.15mm程度と、きわめて薄いため、
第5図(e)に示すように研磨工具を押しつけることに
より、その応力によってコンタクトレンズ原料が変形し
てしまい、この変形のためにベベルの形状が正確に形成
できなかった。従来は、熟練した作業者の長年の経験と
勘によって、変形の度合いを考慮しながら加工するとい
う手法がとられていたが、このような製造方法はきわめ
て生産性が悪く、かつ歩留まりもきわめて低いという問
題があった。更に、製品1個1個と形状精度のバラツキ
も大きく、極端な場合患者の眼に装着してよい結果が得
られるまでレンズを交換するという非効率的なことまで
行われていた。
本発明は、以上述べたような従来の問題点を解決する
ためになされたものであり、その目的とするところは、
高い加工精度が得られ、どのような形状のコンタクトレ
ンズであっても、製造コストを上昇させることなく、迅
速に製造することが可能なコンタクトレンズの製造方法
及び製造装置を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的を達成するため、請求項1記載のコンタクト
レンズの製造方法は、コンタクトレンズ原料を所望の形
状に加工してフロントカーブを有する前面カーブ及びベ
ースカーブとベベルを有する内面カーブを備えるコンタ
クトレンズを製造するコンタクトレンズの製造方法にお
いて、前記コンタクトレンズ原料に前記前面カーブ又は
前記内面カーブを形成する工程と、流体を研磨布の裏面
に吹き付けることにより該研磨布を前記前面カーブ又は
内面カーブの表面に圧接し、前記コンタクトレンズ原料
と前記研磨布とを相対運動させることにより、前記前面
カーブ又は内面カーブの表面を研磨する工程とを有する
ことを特徴とする。
請求項2記載のコンタクトレンズの製造方法は、コン
タクトレンズ原料を所望の形状に加工するコンタクトレ
ンズの製造方法において、前記コンタクトレンズ原料
に、所定の設定データに基づいて所定の形状を有するベ
ースカーブ及びベベルを有する内面カーブを形成する工
程と、流体を軟質な材料からなる研磨布の裏面に吹き付
けることにより該研磨布を前記内面カーブの表面に圧接
し、前記コンタクトレンズ原料と前記研磨布とを相対運
動させることにより、前記内面カーブの表面を研磨する
工程と、前記コンタクトレンズ原料に、所定の設定デー
タに基づいて所定の形状を有するフロントカーブを有す
る前面カーブを形成する工程と、流体を軟質な材料から
なる研磨布の裏面に吹き付けることにより該研磨布を前
記前面カーブの表面に圧接し、前記コンタクトレンズ原
料と前記研磨布とを相対運動させることにより、前記前
面カーブの表面を研磨する工程とを有することを特徴と
する。
請求項3記載のコンタクトレンズの製造方法は、請求
項2記載のコンタクトレンズの製造方法において、前記
前面カーブを形成する工程と、前記前面カーブの表面を
研磨する工程は、前記内面カーブの形成工程よりも後で
あることを特徴とする。
請求項4記載のコンタクトレンズの製造方法は、請求
項1〜3のいずれかに記載のコンタクトレンズの製造方
法における前記前面カーブを研磨する工程において、前
記コンタクトレンズ原料の外径より大きい内径を有する
ノズルを用いて前記流体を研磨布の裏面に吹き付けるこ
とを特徴とする。
請求項5記載のコンタクトレンズの製造装置は、所定
の設計データに基づいてベースカーブ及びベベルを有す
る内面カーブを所定の形状に加工する加工手段を具備し
たコンタクトレンズの製造装置において、前記加工手段
は、前記内面カーブ表面に軟質な材料からなる研磨布を
該研磨布の裏面に流体を吹き付けて圧接させ、前記コン
タクトレンズ原料と前記研磨布とを相対運動させること
により、前記内面カーブ表面を研磨する研磨手段を有す
ることを特徴とする。
請求項6記載のコンタクトレンズの製造装置は、所定
の設計データに基づいてフロントカーブを有する前面カ
ーブを所定の形状に加工する加工手段を具備したコンタ
クトレンズの製造装置において、前記加工手段は、前記
前面カーブ表面に軟質な材料からなる研磨布を該研磨布
の裏面に流体を吹き付けて圧接させ、前記コンタクトレ
ンズ原料と前記研磨布とを相対運動させることにより、
前記前面カーブ表面を研磨する研磨手段を有することを
特徴とする。
〔作用〕
本発明にかかるコンタクトレンズの製造方法及び製造
装置によれば、任意の形状に変形可能な軟質材からなる
研磨布の裏面に流体を吹き付けて該研磨布をコンタクト
レンズ原料の表面に圧接させ、この研磨布とコンタクト
レンズ原料とを相対運動させることにより、コンタクト
レンズの形状にかかわらず、同一手段、同一工数で、か
つ精度良く研磨を行うことができる。
〔実施例〕
本発明に係るコンタクトレンズの製造方法において
は、まず、あらかじめ定められている標準品の規格、も
しくは患者の眼の処方データに基づいて、所望の矯正度
数、ベースカーブの曲率半径、フロントカーブの曲率半
径、外径、中心厚、エッジ厚、レンチックカーブの曲率
半径、ベベルの形状などからなるコンタクトレンズの形
状に関する設計データを算出する。
次に第1図に示すように、原料カット工程101におい
て、第5図(a)に示す従来の製造方法と同じように、
円柱の棒状に成形された原料ロッドを、ボタン状原料
(以下、ワークという)にカットする。次いでベースカ
ーブ切削工程102において、前記設計データに基づいて
ワークを切削し、ベースカーブ及びベベルを同時に形成
し、さらにベースカーブ研磨工程103において、このよ
うにして形成されたベースカーブ及びベベルの表面を研
磨する。
ワーク固定工程104においては、研磨されたベースカ
ーブ面と固定治具との間に接着剤を塗布し、固定治具に
接着固定する。
次いでフロントカーブ切削工程105において、前記設
計データに基づいてワークを切削し、フロントカーブ及
び必要な場合にはレンチックカーブも併せて形成し、さ
らにフロントカーブ研磨工程106において、このように
して形成されたフロントカーブ及びレンチックカーブの
表面を研磨する。
ベースカーブ研磨工程103及びフロントカーブ研磨工
程106における研磨は、任意の形状に変形可能な軟質材
からなる研磨布を、流体圧力によってワークに圧接し、
この研磨布とワークとを相対運動させることにより、コ
ンタクトレンズの形状にかかわらず、同一手段、同一工
程で、かつ精度良く行うことができる。
最後にエッジ加工工程107において、エッジの形状を
滑らかな曲面に加工し、完成体とする。エッジ加工工程
は、適当な加工方法によって、ベースカーブ切削工程10
2もしくはフロントカーブ切削工程105のいずれかの工程
において一緒に行うことにより省略することができる。
第6図に、第1図で説明したコンタクトレンズ原料の
切削加工に用いられる精密NC旋盤の一例を示す。被加工
物であるワーク601は、固定治具602に、第5図(b)に
示す従来の方法と同じように固定され、固定治具602は
主軸スピンドル603に固定されている。主軸スピンドル6
03は、主軸駆動モータ604により、矢印605で示すように
一定の速度で一定の方向に回転させられ、これに伴って
ワーク601も一定速度で一定の方向に回転させられる。
主軸駆動モータ604は、移動テーブル606に固定されてお
り、移動テーブル606を矢印607に示すようなX軸方向及
び矢印608で示すようなY軸方向に移動させることによ
り、ワーク601のX軸及びY軸上の座標位置を制御す
る。ダイヤモンドカッターなどからなる切削用のバイト
609は、バイトテーブル610に固定されており、バイトテ
ーブル610を矢印611で示すような極座標系のr軸方向に
移動させることにより、バイトテーブル610のr軸上の
座標位置を制御する。バイトテーブル610は、回転テー
ブル612上に移動可能に支持されており、この回転テー
ブル612を矢印613で示すように回転させることにより、
バイトテーブル610の極座標系のθ軸上の座標位置すな
わち回転角を制御する。移動テーブル606及び回転テー
ブル612は、固定台614上にそれぞれ移動あるいは回転可
能に支持されている。これら移動テーブル606、バイト
テーブル610及び回転テーブル612を、所定の設計データ
に基づき、図示していないサーボモータなどの制御手段
によって、それぞれの移動量(回転角)、移動(回転)
方向及びそのタイミングを制御することにより、所定の
形状を有するベースカーブ、ベベル、フロントカーブ、
レンチックカーブを形成することができる。
第7図に、第6図に示すような切削手段を用いて、ベ
ースカーブ及びベベルを同時に切削加工したワークの形
状の一例を示す。この時のコンタクトレンズの仕様デー
タは、外径が0.9mm、ベースカーブの曲率半径が7.80m
m、矯正度数が−4.00Dの標準規格品であった。標準規格
品の場合、その他の仕様すなわちベベル及びレンチック
カーブの形状、中心厚及びエッジ厚は、上記の仕様デー
タに基づく所定の設計値によって決定される。この切削
加工では、第7図に示すように、所定形状のベースカー
ブ701、ベベルを構成するセカンダリーカーブ702及びペ
リフェラルカーブ703と同時に、レンズの外径を規定す
る溝704を形成した。なおベースカーブ701、セカンダリ
ーカーブ702及びペリフェラルカーブ703のそれぞれの接
続部は、滑らかな曲面(これをブレンドと言う)で形成
されている。
この溝704は、この後の工程で点線705に相当するフロ
ントカーブ及びレンチックカーブを形成した時点での外
径が9.05mmになる位置に形成されており、こうすること
によりエッジ加工によってエッジの形状を滑らかにする
曲面に形成した最終の外径を9.0mmとすることができ
た。
また、ベースカーブ701の最底部すなわち光学中心706
から、ワーク707のフロント側端部708までの距離t1が一
定になるようにベースカーブ701を形成することによ
り、フロントカーブを形成したときのレンズの中心厚t2
を設計値どおりの値に作り込むことができた。
なお、この距離t1は、固定方法にもよるがベースカー
ブ加工時のワークの変形を防止するために、2〜3mm程
度の値にするのが望ましい。
第6図に示すような切削手段を用いることにより、ベ
ースカーブ701の形状精度すなわち子午線上の表面うね
りを0.15μm以下とすることが可能となり、かつ主軸ス
ピンドル603の回転数を10000rpm以上とすることによ
り、表面のあらさを0.1μm以下とすることが可能とな
り、曲率半径の加工誤差±0.01mmが達成できた。
またこのように、ベースカーブ701とベベルすなわち
セカンダリーカーブ702及びペリフェラルカーブ703と
を、同時に切削加工することにより、従来ベースカーブ
加工時とベベル加工時の固定治具への固定位置の誤差に
よって生じていたベベルの偏心を防止することができ
る。
また、フロントカーブを加工する前にベベルの加工を
行い、かつ第7図に示すように距離t1を2〜3mmとい
う、充分な厚みとなるように加工するため、加工時にワ
ークが変形することがないため、極めて高い形状精度で
ベースカーブ及びベベルを形成することが可能となっ
た。
なお、第6図に示す切削手段を用いることにより、同
等の加工精度でフロントカーブ及びレンチックカーブを
切削加工することができることは言うまでもなく、同一
の装置でどのような形状の曲面であっても、同等の加工
精度で切削加工することができる。
第8図(a)に、第6図に示すような切削手段によっ
て形成された、ベースカーブ及びベベルの表面を鏡面研
磨するための研磨手段の一例を示す。
801は、回転中心802を中心にして回転可能に支持され
た回転リング803に固定された研磨布である。研磨布801
は、任意の形状に変形可能な軟質材料からなり、矢印80
4で示すように、ノズル805から裏面に圧縮空気などの流
体を吹き付けることにより、その圧力によって固定治具
806に固定されたワーク807の表面にほぼ均一に圧接させ
られている。本実施例における研磨手段は、この状態で
研磨布801の表面に研磨材を供給しながら、回転リング8
03を矢印808の方向に回転させ、同時にワーク807を、矢
印809で示すように、回転リング803とは逆の方向に回転
させることにより、ベースカーブ及び非球面形状のベベ
ルの表面を同時に研磨する。
研磨布801の材質は、任意の形状に変形可能で、適度
の弾性を有し、かつ研磨面を傷つけない程度の柔らかさ
を有するものであれば、特に制限はない。
研磨効率すなわち研磨に要する時間及び研磨の均一性
は、回転リング及びワークの回転数で決まる研磨布801
と研磨面との相対速度、流体の圧力などによって左右さ
れるが、回転リング803の回転数は、回転リングの外径
によって異なるが、30cmの外径の場合でおおむね0.5〜5
rpmの範囲が望ましく、またワーク807の望ましい回転数
は、おおむね1.5〜25rpmである。また、流体の圧力は、
おおむね1〜5kg/cm2の範囲が望ましい。これにより、1
5〜30秒の研磨時間で、所望の光学面を得ることができ
る。
回転リング803の外径が30cm、その回転数が1rpm、ワ
ーク807の回転数が、3rpmである研磨手段により、研磨
布801として市販の研磨布にポリエチレンシートを裏打
ちしたものを用い、研磨剤として水に分散させたAl2O3
の粉末を供給しながら、曲率半径が7.80mmのベースカー
ブを形成した、外径が12.5mmのワーク807に、研磨布801
を、圧力2.0nkg/cm2の圧縮空気で圧接して研磨したとこ
ろ、約25秒で所望の光学面が得られた。
このように、第8図(a)に示すような研磨手段を用
いることにより、どのような形状のベースカーブ及びベ
ベルであっても、流体圧力によって研磨布801をほぼ均
一に圧接することができ、高い精度で研磨することがで
き、従来のように研磨面の形状に応じた専用の研磨工具
を用意する必要がなく、かつそれらの工具を取り替える
手間もないため、研磨工程に要する製造コストを大幅に
低減することが可能となった。また、特注品のように予
測できない特殊な形状であっても、容易かつ迅速に対応
することが可能となった。
これまでの説明は、ベースカーブ及びベベルの研磨を
例にとって行ってきたが、もちろんフロントカーブ及び
レンチックカーブの研磨も同じように行うことができる
ことは言うまでもない。
第8図(b)に、その一例を示す。基本的には第8図
(a)と同じであるが、フロントカーブは、ベースカー
ブとは逆に、中央部が凸になっているため、周辺部の流
体圧力が小さくなって均一な圧接力が得られなくなるお
それがあるため、ノズル805の内径を、ワーク807の外径
よりも大きくして、矢印810で示すように、流体が研磨
面全体に均一に吹き付けられるように変えた点が異な
る。こうすることにより、ベースカーブ研磨と同等の時
間で、同程度の研磨精度が得られた。
第9図に、ベースカーブ及びベベルを加工形成したワ
ークを、フロントカーブ及びレンチックカーブを加工形
成するために、所定の固定治具に固定する固定方法の一
例を示す。
固定治具901は、ワーク902のベースカーブ903及びベ
ベル904の形状にかかわらず、一定の外径及び接着面905
の曲率半径R6を有する共通の治具を用いる、本実施例の
場合、外径が7.0mm、接着面905の曲率半径R6が7.30mmで
ある固定治具を用いた。このような固定治具901に、接
着剤906を用いてワーク902を接着固定する。ここで用い
られる接着剤は、加工終了後に固定治具901からワーク9
02を剥離しやすいように、熱可塑性である必要があり、
さらに固定の位置決め精度を向上させるために、粘度が
高く、かつ冷却固化時の体積変動の少ないものが望まし
い。本実施例では、パラフィン、松ヤニ及びEVA等の混
合物を用いた。
本実施例における固定方法は、ベースカーブ903の曲
率半径及びその有効径t5、ワーク902の光学中心907から
フロント側端面908までの距離t1の値に基づき、固定治
具901の接着面905からワーク902のフロント側端面908ま
での距離t6が一定の値となるように、接着部の厚みt7
算出し、固定治具901の外径及び接着面905の曲率半径
R6、ベースカーブの曲率半径及びその外径t5及び接着部
の厚みt7とによって決定される空間の体積から、必要な
接着剤の量を求める点に特徴がある。次に、このように
して求められた量の接着剤を、保存容器などから精密定
量吐出させて固定治具901の接着面905の中心に滴下し、
ワーク902を一定の高さにまで押圧して接着剤906を固化
させる。
このように、固定治具及びワークの形状に基づいて必
要な接着剤の量を算出することにより、ワーク902のベ
ースカーブ903の形状にかかわらず、接着高さすなわち
接着面905からフロント側端面908までの距離t6を一定の
値とすることができるため、フロントカーブ及び中心厚
を所望の形状及び値に、きわめて高い精度で加工するこ
とが可能となった。
さらに、接着剤906の外端部を、ベースカーブ903とベ
ベル904との接続部に一致させることが可能となったの
で、フロントカーブ及びレンチックカーブの加工終了
後、エッジ加工のため改めて固定し直す必要がなく、こ
の固定状態のままでエッジ加工を行うことができ、エッ
ジ部の偏心不良の発生を防止することが可能となった。
なお、本実施例では、ベースカーブの曲率半径及び外
径の加工誤差あるいは、接着剤の吐出量の誤差を考慮
し、接着剤の量が少なすぎた場合でも、接着剤906の外
端部が、ベースカーブ903とベベル904との接続部よりも
内周側にならないよう、接着剤906の外端部がこの接続
部よりも0.1〜0.2mm外周側にはみ出すように、接着剤の
吐出量をコントロールしている。
接着剤の外端部が、この接続部より内周側になると、
フロントカーブ及びレンチックカーブの切削あるいは研
磨加工の時に、ワークに応力が加わるため、ベースカー
ブの光学面が変化し、微少な光学的歪みを生じてしま
う。ベベルは、光学的には何の機能も有しない部分であ
るため、このような光学的な歪みが生じても何の問題も
ないが、ベースカーブの部分にこのような歪みが生じる
と、コンタクトレンズとしての光学的機能を損なうた
め、問題となる。
本実施例では、前述のように、接着剤の外端部を、ベ
ースカーブとベベルの接続部より外周側にはみ出るよう
に、接着剤の量をコントロールしているので、上述のよ
うな問題は発生せず、かつコンタクトレンズの外周端よ
りも内周側に設けているので、後述するエッジ加工の際
に改めて固定し直す必要がなく、工程の簡略化、加工精
度及び歩留まりの大幅な向上が実現できた。
第10図に、コンタクトレンズの外周端すなわちエッジ
の形状を滑らかな曲面に加工するためのエッジ加工手段
の一例を示す。
ワーク1001は、第9図に示すような固定方法により、
接着剤1002により固定治具1003に固定され、フロントカ
ーブ及びレンチックカーブを加工形成したものである。
このワーク1001をコレットチャック1004に固定し、主軸
スピンドル1005によって矢印1006の方向に6000rpm程度
の速度で高速回転させる。
1007は、モルトプレン、ウレタンフォームなどからな
る弾性を有する軟質の研磨材であり、保持具1008によっ
て保持され、駆動モータ1009によって矢印1010の方向に
回転させられる回転円盤1011に固定された、クランクシ
ャフト1012により、矢印1013に示すように往復駆動させ
られる。また、研磨材1007は、図示しない押圧手段によ
って、所定の押圧力でワーク1001に押圧されており、こ
の状態で、毎秒4往復程度の速度及び10mm程の移動量で
研磨材1007を往復動させることにより、エッジを所定の
滑らかな曲面に加工することができる。
ワーク1001のエッジは、図に示すように、研磨材1007
にもぐり込むような形で、研磨材1007を変形させている
が、図示しない押圧手段による押圧力を制御することに
より、この変形量を変えてやることにより、エッジの形
状を変えることができ、研磨材1007の往路と復路とで押
圧力を変化させることにより、フロントカーブ側とベー
スカーブ側とで曲面の滑らかさを異ならせることもでき
る。このように、本実施例によれば、研磨材の押圧力を
制御することによって、所定の形状を有するエッジを、
容易かつ自動的に形成することが可能となった。
〔発明の効果〕
以上述べたように、本発明によれば、ベベルの加工を
ベースカーブの加工と同時に行うようにしたので、ベベ
ル加工中のワークの変形を防止することができ、かつベ
ースカーブに対するベベルの偏心も防止することができ
るため、特に厳しい形状精度が要求されるベースカーブ
及びベベルを、熟練した作業者の経験と勘に頼ることな
く、きわめて高い加工精度で形成することが可能となる
と共に、どのような形状のベースカーブ及びベベルであ
っても、容易にかつ同等の精度及び工数で加工すること
が可能となった。
また、ベースカーブ、フロントカーブなどの曲面の研
磨を、軟質材からなる研磨布を、流体圧力によってワー
クに圧接して研磨する研磨手段を用いて行うようにした
ので、曲面の形状にかかわらずほぼ均一な研磨が可能と
なり、かつ従来のように曲面の形状に応じた研磨工具を
用意する必要もなく、さらにそれらの工具を取り替える
手間も必要ないため、研磨工程に要する製造コストを大
幅に低減することが可能となった。
このように、本発明によれば、極めて高い精度で、所
望の形状を有するコンタクトレンズを製造するこがで
き、かつ製造コストも大幅に低減するだけでなく、特注
品のような予測できない特殊な仕様のコンタクトレンズ
であっても、容易かつ迅速に製造することが可能になる
など、多大の効果が得られるものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明に係るコンタクトレンズの製造方法の
工程を示すフローチャートである。 第2図(a)及び(b)は、一般的なコンタクトレンズ
の形状を示す部分断面図であり、(a)はマイナスレン
ズ、(b)はプラスレンズの部分断面図である。 第3図は、コンタクトレンズの使用状態を示す図であ
る。 第4図は、従来のコンタクトレンズの製造工程の一例を
示すフローチャートである。 第5図(a)〜(e)は、従来のコンタクトレンズの主
な製造工程の具体例を示す図である。 第6図は、本発明に係るコンタクトレンズの切削加工に
用いられる精密NC旋盤の一例を示す図である。 第7図は、本発明においてベースカーブ及びベベルを形
成した状態の一例を示す図である。 第8図(a)及び(b)は、本発明における研磨方法の
一例を示す図であり、(a)はベースカーブ及びベベ
ル、(b)はフロントカーブ及びレンチックカーブの研
磨方法の一例を示す図である。 第9図は、本発明におけるワークの固定方法の一例を示
す図である。 第10図は、本発明におけるエッジ加工方法の一例を示す
図である。 101……原料カット工程 102……ベースカーブ切削工程 103……ベースカーブ研磨工程 104……ワーク固定工程 105……フロントカーブ切削工程 106……フロントカーブ研磨工程 107……エッジ加工工程

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】コンタクトレンズ原料を所望の形状に加工
    してフロントカーブを有する前面カーブ及びベースカー
    ブとベベルを有する内面カーブを備えるコンタクトレン
    ズを製造するコンタクトレンズの製造方法において、 前記コンタクトレンズ原料に前記前面カーブ又は前記内
    面カーブを形成する工程と、 流体を研磨布の裏面に吹き付けることにより該研磨布を
    前記前面カーブ又は内面カーブの表面に圧接し、前記コ
    ンタクトレンズ原料と前記研磨布とを相対運動させるこ
    とにより、前記前面カーブ又は内面カーブの表面を研磨
    する工程と を有することを特徴とするコンタクトレンズの製造方
    法。
  2. 【請求項2】コンタクトレンズ原料を所望の形状に加工
    するコンタクトレンズの製造方法において、 前記コンタクトレンズ原料に、所定の設定データに基づ
    いて所定の形状を有するベースカーブ及びベベルを有す
    る内面カーブを形成する工程と、 流体を軟質な材料からなる研磨布の裏面に吹き付けるこ
    とにより該研磨布を前記内面カーブの表面に圧接し、前
    記コンタクトレンズ原料と前記研磨布とを相対運動させ
    ることにより、前記内面カーブの表面を研磨する工程
    と、 前記コタクトレンズ原料に、所定の設定データに基づい
    て所定の形状を有するフロントカーブを有する前面カー
    ブを形成する工程と、 流体を軟質な材料からなる研磨布の裏面に吹き付けるこ
    とにより該研磨布を前記前面カーブの表面に圧接し、前
    記コンタクトレンズ原料と前記研磨布とを相対運動させ
    ることにより、前記前面カーブの表面を研磨する工程と を有することを特徴とするコンタクトレンズの製造方
    法。
  3. 【請求項3】前記前面カーブを形成する工程と、前記前
    面カーブの表面を研磨する工程は、前記内面カーブの形
    成工程よりも後であることを特徴とする請求項2記載の
    コンタクトレンズの製造方法。
  4. 【請求項4】前記前面カーブを研磨する工程において、 前記コンタクトレンズ原料の外径より大きい内径を有す
    るノズルを用いて前記流体を研磨布の裏面に吹き付ける
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコン
    タクトレンズの製造方法。
  5. 【請求項5】所定の設計データに基づいてベースカーブ
    及びベベルを有する内面カーブを所定の形状に加工する
    加工手段を具備したコンタクトレンズの製造装置におい
    て、 前記加工手段は、前記内面カーブ表面に軟質な材料から
    なる研磨布を該研磨布の裏面に流体を吹き付けて圧接さ
    せ、前記コンタクトレンズ原料と前記研磨布とを相対運
    動させることにより、前記内面カーブ表面を研磨する研
    磨手段を有することを特徴とするコンタクトレンズの製
    造装置。
  6. 【請求項6】所定の設計データに基づいてフロントカー
    ブを有する前面カーブを所定の形状に加工する加工手段
    を具備したコンタクトレンズの製造装置において、 前記加工手段は、前記前面カーブ表面に軟質な材料から
    なる研磨布を該研磨布の裏面に流体を吹き付けて圧接さ
    せ、前記コンタクトレンズ原料と前記研磨布とを相対運
    動させることにより、前記前面カーブ表面を研磨する研
    磨手段を有することを特徴とするコンタクトレンズの製
    造装置。
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