JP2811799B2 - プロトロンビンの測定方法 - Google Patents

プロトロンビンの測定方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、例えば、臨床検査における血漿等の試料中
のプロトロンビンの測定方法に関するものである。
(従来の技術及び発明が解決しようとする問題点) 従来、プロトロンビンの測定方法としては、凝固法、
免疫法、合成基質法等が知られている。
プロトロンビン時間に代表される凝固法は広く用いら
れているが、血漿中に含まれるフィブリノーゲンをはじ
めとする他の凝固因子による凝固時間への影響が大き
く、試料中のプロトロンビンの濃度を正確に反映するこ
とができない。また、免疫法はプロトロンビンを直接的
に測定できるという特徴があるが、操作が煩雑である上
に、PIVKA(Protein induced by vitamin K absence or
antagonist)等の生理活性をもたないプロトロンビン
をも同様に測定してしまうという欠点がある。
一方、合成基質法は、フィブリノーゲンの濃度に影響
されない、プロトロンビン濃度に直線性がある等の利点
がある。
かかる合成基質法のうち従来簡便な方法として、被検
血漿中に含まれるプロトロンビンをトロンボプラスチン
により活性化し、生成するトロンビンを発色性の合成基
質に作用させ、該合成基質を加水分解することにより、
該合成基質の吸光度の変化からプロトロンビン量を測定
する方法が知られている。
しかしながら、活性化されたトロンビンは、通常、血
漿中に含まれるアンチトロンビンIIIにより比較的速や
かに失活してしまうので、プロトロンビン量を正確に測
定できないという問題がある。従来、かかる問題を回避
する方法として、被検血漿を高度に希釈し、アンチトロ
ンビンIIIの影響を低下せしめる方法が提案されている
が、高度に希釈することによりアンチトロンビンIII以
外の因子も希釈され、その結果、合成基質を加水分解す
るトロンビン活性が低下し、またプロトロンビン活性化
の遅延を生じるため測定精度が十分期待できなくなる。
(問題点を解決するための手段) そこで、本発明者らは、血漿等の試料中のアンチトロ
ンビンIIIによる失活の影響を受けないプロトロンビン
の測定方法を提供すべく鋭意検討した結果、血漿等の試
料中のプロトロンビンをトロンビンに変換する際、可逆
的なトロンビン阻害剤を存在させておくことにより所期
の目的が達成できることを知得し、本発明を完成するに
至った。これは、可逆的なトロンビン阻害剤が、生成し
てくるトロンビンとの間で複合体を形成することによ
り、アンチトロンビンIIIによる失活を防ぐことによる
ものであると考えられる。
また、トロンビン−トロンビン阻害剤複合体は希釈に
より容易に分離するため、その後のトロンビンとトロン
ビン基質との反応では、トロンビン阻害剤による影響は
少ない。
即ち、本発明の要旨は、血漿または脱フィブリノーゲ
ン血漿試料をカルシウムイオン及び可逆的なトロンビン
阻害剤の存在下、トロンボプラスチンと反応させ、次い
で、該反応物とトロンビン基質を反応させて、該基質の
吸光度の変化を測定して、該試料中のプロトロンビン量
を測定することを特徴とするプロトロンビンの測定方法
に存する。
以下本発明を説明するに、本発明においては、血漿ま
たは脱フィブリノーゲン血漿を試料とする。これらの試
料は常法に従って調製することができる。
上記試料をカルシウムイオン存在下にトロンボプラス
チンと反応させて、試料中のプロトロンビンをトロンビ
ンに変換する。その際、本発明においては、可逆的なト
ロンビン阻害剤を共存させる。
可逆的なトロンビン阻害剤としては特に制限はない
が、例えば、特開昭52−97934号公報、同55−33499号公
報、ヨーロッパ公開特許第8746号公報、J.Med.Chem.23,
827(1980)、同23,830(1980)、同23,1293(1980)、
或いは、Biochemistry,23,85(1984)に記載されている
ようなアルギニンを基本骨格とする化合物、J.Med.Che
m.16,970(1973)、Pharmazie29,337(1974)、或い
は、Thrombosis Research36,457(1984)に記載されて
いるようなベンツアミジン誘導体、Thrombosis and Hae
mostasis,50,53(1983)に記載されているようなグアニ
ジノフェニルアラニン誘導体等が挙げられる。中でも下
記一般式(I)で表わされるアルギニン誘導体が好適で
ある。
[式中、R1(式中、R3はC1〜C6のアルキル基、C2〜C7のアルコキシ
アルキル基またはテトラヒドロフルフリル基を表わし、
R4はC1〜C3のアルキレン基を表わす。)または (式中、R5は水素原子またはC1〜C4のアルキル基を表わ
す。)を表わし、R2(式中、R6及びR7は水素原子、ヒドロキシ基で置換され
ていてもよいC1〜C4のアルコキシ基またはC1〜C4のアル
キルアミノ基を表わす。)または (式中、R8は水素原子またはC1〜C4のアルキル基を表わ
す。)を表わし、mは3〜4の整数を表わす。] 式中、R3で表わされるC1〜C6のアルキル基としては、
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル
基等が挙げられ、またC2〜C7のアルコキシアルキル基と
してはメトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシ
メチル基、エトキシエチル基、ブトキシメチル基、ブト
キシエチル基等が挙げられる。式中、R4で表わされるC1
〜C3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン
基、プロピレン基等が挙げられる。式中、R5で表わされ
るC1〜C4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、
プロピル基、ブチル基等が挙げられる。式中、R6及びR7
で表わされるヒドロキシ基で置換されていてもよいC1
C4のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、
ブトキシ基、ヒドロキシエトキシ基等が挙げられる。ま
たC1〜C4のアルキルアミノ基としてはメチルアミノ基、
エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミ
ノ基等が挙げられる。式中、R8で表わされるC1〜C4のア
ルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブ
チル基等が挙げられる。
上記アルギニン誘導体の具体例としては、例えば、下
記第1表に示すような化合物が挙げられる。
上記一般式(I)で表わされる可逆的なトロンビン阻
害剤の使用割合は、通常、トロンビンに対するKi値の10
0〜5,000倍、好ましくは、200〜2,000倍の濃度の範囲か
ら選ばれる。
本発明においては、試料1容に対し、可逆的なトロン
ビン阻害剤溶液(例えば、水またはpH7〜8、好ましく
は、pH7.4〜7.5の緩衝液、例えば、硫酸−食塩水緩衝液
(BSB)、トリス塩酸緩衝液等に最終濃度が上記範囲と
なるようにトロンビン阻害剤を溶解した溶液)10〜100
容を加え、好ましくは、35〜38℃程度の温度で数分間予
備保温した後、塩化カルシウム等の存在下、トロンボプ
ラスチンと反応させる。
トロンボプラスチンは、公知のものがいずれも使用で
き、通常、トロンボプラスチン・塩化カルシウム溶液と
して使用する。具体的には、トロンボプラスチンC(DA
DE社製)等が挙げられる。
トロンボプラスチンの使用割合は、標準血漿(例え
ば、サイトロールI(DADE社製))を用いて測定したプ
ロトロンビン時間が11〜12秒となるトロンボプラスチン
試薬の活性を100%とした場合、通常2%以上、好まし
くは、10%以上とし、また、カルシウムイオンの使用割
合は1〜7mM、好ましくは、1〜3mMの範囲から選ばれ
る。
具体的には、上記の試料とトロンビン阻害剤の混合溶
液に対し、最終濃度が上記範囲となるように溶解したト
ロンボプラスチン・塩化カルシウム溶液を0.05〜0.2容
加えて、35〜38℃程度の温度で5〜180分間、好ましく
は、7〜20分間反応させて、プロトロンビンをトロンビ
ンに変換する。
次いで、本発明においては、上記のようにして得たト
ロンビン含有溶液とトロンビン基質を反応させる。
本発明のトロンビン基質は、トロンビンにより特異的
に加水分解される合成又は天然のペプチドであり、特
に、トロンビンが作用することによって吸光度が変化す
るような発色性の合成基質が好適である。例えば、トロ
ンビンにより加水分解されてp−ニトロアニリンを遊離
するH−D−フェニルアラニル−L−ピペコニル−L−
アルギニン−p−ニトロアニリド(カビ社製、商標“S
−2238")、N−ベンジルオキシカルボニル−L−グリ
シル−L−アルギニン−p−ニトロアニリド(ペンタフ
ァーム社製、商標“Chromozyme TH")等が挙げられる。
上記合成基質の使用割合は、通常、トロンビンに対す
るKm値(5〜20μM)の20〜200倍、好ましくは、40〜1
50倍程度の濃度範囲から選ばれる。
具体的には、上記のようにして得たトロンビン含有溶
液1容に対して10〜100容、好ましくは、20〜30容の上
記トロンビン基質を含むpH7〜9、好ましくは、pH7.4〜
8.5の緩衝液(例えば、トリス塩酸緩衝液等)とを、35
〜38℃程度の温度で2〜10分間反応させた後、酢酸等の
酸を加えて反応を停止し、その吸光度の変化を測定す
る。一定時間後の吸光度の変化は、反応系中に存在する
トロンビン量に比例するから、吸光度変化よりプロトロ
ンビンを精度よく定量することができる。
(発明の効果) 本発明に従い、可逆的なトロンビン阻害剤を存在させ
ることによって、血漿中のアンチトロンビンによる影響
を受けることなく、良好にプロトロンビンを測定するこ
とができる。また、トロンビン含有溶液中でのフィブリ
ン生成はトロンビン阻害剤を存在させることによりみら
れなくなり、実験手技上の不便さも改善され、効果の安
定性を高めることができる。被検血漿は極めて少量で測
定可能であり、患者の採血の負担を軽くすることに役立
つ。さらに本発明によれば、実際の被検試料中に混在す
るヘパリンも少くとも0.5u/mlまでは影響なく良好にプ
ロトロンビンを測定することができる。
(実施例) 以下に実施例を挙げて更に本発明を具体的に説明す
る。
実施例1 (1) トロンボプラスチン活性化血漿中の生成トロン
ビン活性の経時変化 (i) プロトロンビン活性化によるトロンビンの生成 被検血漿0.05mlに、硼酸−食塩水緩衝液(BSB)(pH
7.4)0.75ml及び2×10-5M、1×10-4M又は5×10-4Mの
トロンビン阻害剤(第1表記載の化合物No.1;Ki=3.9×
10-8M)0.1mlを加え、37℃で5分間予備保温した後、ト
ロンボプラスチンC試薬(DADE社製)0.1mlを加えて更
に37℃で所定時間反応させた。
(ii) トロンビン基質によるトロンビン活性の測定 上記(i)で得られた各時間における反応物各々0.04
mlを、5×10-3Mのトロンビン基質S−2238(カビ社
製)0.1ml及びトリス−イミダゾール緩衝液(pH8.1)0.
86mlの系に加えて37℃で2分間反応させ、0.12mlの酢酸
を加えて反応を停止し、光路幅1cm当りの405nmの吸光度
を測定した。
その結果を第1図に示した。図から、トロンビン阻害
剤を加えない系でのトロンビン活性は約1分後にピーク
となり、以後急速に失活することが分かる。この系にト
ロンビン阻害剤を存在させると、血漿によるトロンビン
の失活は、トロンビン阻害剤の濃度に応じて抑制され、
50μM存在下では実質的に失活は完全に抑えられること
が分かる。また、トロンビン阻害剤50μM存在下ではプ
ロトロンビンの活性化は約5分で完了していることが分
かる。
(2) 血漿の希釈効果 被検血漿を1〜5倍に希釈し、トロンビン阻害剤濃度
を5×10-4Mとし、活性化反応時間を7分、10分及び15
分とする以外は上記(1)の(i)と同様にしてプロト
ロンビンを活性化した。次いで、基質との反応時間を10
分とする以外は上記(1)の(ii)と同様にして生成ト
ロンビンの活性を測定した。
その結果を第2図に示した。図から、血漿の1〜5倍
希釈のいずれの場合も7分までにプロトロンビンの活性
化は終了し(第2図a)、しかも、吸光度と血漿の濃度
は正比例することが分かる(第2図b)。
(3) トロンボプラスチンの力価による影響 トロンビン阻害剤濃度を5×10-4Mとし、トロンボプ
ラスチンC試薬を1〜20倍に希釈し、基質との反応時間
を10分とする以外は上記(1)と同様にして生成トロン
ビンの活性を測定した。
その結果を第3図に示した。図から、トロンボプラス
チンの希釈倍率を上げるに従ってプラトーに達するまで
の時間は長くなるが、プラトーにおける吸光度はトロン
ボプラスチンの1倍希釈、5倍希釈及び20倍希釈で同じ
であった。また、5倍希釈の場合もほぼ7分でプロトロ
ンビン活性化は完了していた。これらのことから、この
測定系に対するトロンボプラスチンの力価の影響は少い
ことが分かる。
(4) トロンビンによる基質分解活性 上記(1)においてトロンボプラスチン活性化血漿の
代わりに、ヒトトロンビン溶液(ミドリ十字社、1%ポ
リエチレングリコール入り生理食塩水にて図4に記載の
各濃度に希釈)を用いて、トロンビン活性を測定した。
その結果を第4図に示した。図から、405nmの吸光度
は測定に用いたトロンビンの濃度範囲で直線性を示すこ
とから、吸光度により示されるトロンビンによる基質分
解活性は、トロンビン濃度に比例することが分かる。
従ってトロンビン基質の吸光度変化を測定することに
より、トロンビンの定量、ひいてはプロトロンビンの定
量が可能である。
実施例2 実施例1の(1)において、トロンビン阻害剤である
第1表記載の化合物No.10を1×10-3Mまたは化合物No.1
4を4×10-3M使用する以外は同様にして生成トロンビン
の活性を測定した。
その結果を第5図に示した。図から、生成したトロン
ビンはトロンビン阻害剤を存在させることにより失活し
ないことが分かる。
【図面の簡単な説明】
第1図はトロンボプラスチン活性化血漿中の生成トロン
ビン活性の経時変化を示す図であり、縦軸は、トロンビ
ン基質の405nmにおける吸光度を表わし、横軸は血漿と
トロンボプラスチン試薬との反応時間(分)を表わす。 また、図中の○プロットはトロンビン阻害剤無添加、□
プロットは2×10-6Mのトロンビン阻害剤添加、■プロ
ットは1×10-5Mのトロンビン阻害剤添加及び▲プロッ
トは5×10-5Mのトロンビン阻害剤添加の場合を表わ
す。 第2図a及び第2図bは、生成トロンビン活性に対する
血漿の希釈の影響を示す図であり、第2図a及び第2図
bにおける縦軸は、トロンビン基質の405nmにおける吸
光度を表わし、第2図aにおける横軸は血漿とトロンボ
プラスチン試薬との反応時間を表わし、第2図bにおけ
る横軸は無希釈の血漿濃度を100とした時の血漿の濃度
割合(%)を表わす。 また第2図aにおける●、△、■及び▲の各プロットは
血漿の希釈倍率を表わし、●は1倍、△は2倍、■は3
倍、▲は5倍の希釈を表わす。 第3図は生成トロンビン活性に対するトロンボプラスチ
ンの力価の影響を示す図であり、縦軸はトロンビン基質
の405nmにおける吸光度を表わし、横軸は血漿とトロン
ボプラスチン試薬との反応時間(分)を表わす。 また図中、■、●及び▲の各プロットはトロンボプラス
チンの希釈倍率を表わし、■は1倍、●は5倍、▲は20
倍の希釈を表わす。 第4図はトロンビン濃度とトロンビン基質の分解活性の
関係を示す図であり、縦軸はトロンビン基質の405nmに
おける吸光度を表わし、横軸はトロンビン濃度(U/ml)
を表わす。 第5図は種々のトロンビン阻害剤存在下における血漿中
の生成トロンビン活性の経時変化を示す図であり、縦軸
はトロンビン基質の405nmにおける吸光度を表わし、横
軸は血漿とトロンボプラスチン試薬との反応時間(分)
を表わす。 また図中、●プロットはトロンビン阻害剤として第1表
の化合物No.10を使用した場合を表わし、▼プロットは
化合物No.14を使用した場合を表わす。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】血漿または脱フィブリノーゲン血漿試料
    を、カルシウムイオン及び可逆的なトロンビン阻害剤の
    存在下、トロンボプラスチンと反応させ、次いで、該反
    応物とトロンビン基質を反応させて、該基質の吸光度の
    変化を測定して、該試料中のプロトロンビン量を測定す
    ることを特徴とするプロトロンビンの測定方法。
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