JP2792500B2 - 結晶の面方位測定方法及び装置 - Google Patents

結晶の面方位測定方法及び装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、結晶の面方位測定
方法および装置に関し、特にシリコン、砒化ガリウムな
どの半導体結晶の面方位測定方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、シリコン(Si)、砒化ガリウム
(GaAs)、燐化ガリウム(GaP)などの半導体結
晶が各種半導体デバイス用基板としてウェーハ状に切り
出され、市販もされている。これらの結晶の面方位の測
定方法の第1の従来例としては、X線発生装置から結晶
にX線を照射して、X線の回折角度からバルク結晶の面
間隔の情報を得て、面方位を測定するX線回折法があ
る。
【0003】また、第2の例として、特開昭58−21
0546に記載のレーザラマン分光法を用いる方法があ
る。レーザ光を結晶表面に照射して結晶表面から発生す
るラマン光のスペクトル中の、LOフォノンによるスペ
クトルとTOフォノンによるスペクトルはそれぞれ特定
の結晶面から発生するので、結晶表面の方向によって発
生するLO、TOフォノンによる両方のスペクトルの強
度は異なる。前述のLO、TOフォノンの面方位依存性
は、1次ラマン散乱のラマンテンソルから計算できる。
そこで、まずレーザ光を結晶表面に照射して結晶表面か
ら発生するラマン光を分光光度計に導入し、ラマン光の
スペクトル中のTOフォノンに対応するラマンバンドの
ピーク強度とLOフォノンに対応するラマンバンドのピ
ーク強度の比を求める。次に、結晶体をレーザ光入射面
が存在する面内で180゜回転させて上述の測定を繰り
返す。この2つの比の値と1次ラマン散乱のラマンテン
ソルから結晶方位を求める。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述した第1の従来例
では、大型で高コストのX線装置が必要なこと、X線の
安全対策が必要なことなどから、面方位の測定コストが
高くなるという問題がある。また、第2の従来例のラマ
ン光強度の回転角度依存性から結晶方位を求める方法で
は、入射レーザ光と波長差の少ないラマン光を入射レー
ザ光から分離するために高精度で高価な分光器を必要と
するので、測定コストが高くなるという問題点がある。
【0005】そこで、本発明の目的は、X線回折法での
装置の大型化や安全性の問題、ラマン光強度法での高価
な高精度分光器の必要性を解消し、安全性が高く、かつ
安価な装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の結晶の面方位測
定方法は、結晶の表面に照射するためのパルスレーザを
発振器において発生させ、結晶をステージに載せて回転
し、結晶の表面から発生する弾性波を検出器により検出
し、コンピュータにより、レーザ発振器の出力とステー
ジの回転角度とを制御し、かつ弾性波検出器の出力を検
出することを特徴としている。
【0007】また本発明の結晶の面方位測定装置は、結
晶の表面に照射するパルスレーザ光を発生するためのレ
ーザ発振器と、前記結晶を載せ回転するステージと、結
晶の表面から発生する弾性波を測定する検出器と、レー
ザ発振器の出力と前記ステージの回転角度とを制御し、
前記弾性波検出器の出力を検出するためのコンピュータ
とからなることを特徴としている。
【0008】次に、上述の方法について説明する。
【0009】シリコン等のウェーハ状に切り出されて市
販されている結晶を回転ステージ上に設置して、この結
晶表面にYAGレーザ等のパルスレーザ光を照射し、そ
れによって生じる弾性波をアコースティックエミッショ
ン(AE)センサー等の弾性波検出器で測定する。パル
スレーザ光結晶が表面に照射された時間と、弾性波が検
出された時間との差を、弾性波の伝搬時間として上述の
ステージの回転角度とともにコンピュータに記録する。
同様な操作をこのステージの角度を1゜変えて行い、伝
搬時間の回転角度依存性を測定する。このサイクルを繰
返し、360゜の伝搬時間を測定する。結晶のような異
方性の弾性体では伝搬方向によって弾性波の速度が違う
ので、弾性波の伝搬時間の回転角度依存性から結晶の面
方位を求めることができる。
【0010】弾性波の伝搬時間の回転角度依存性から結
晶方位を知る本発明の作用について説明すると、結晶に
パルスレーザを照射するとそのエネルギーの一部が吸収
されて熱歪が生じ弾性波が発生する。この現象をフォト
アコースティック効果という。結晶のような異方性の弾
性体では伝搬方向によって弾性波の速度が違う。具体的
には、シリコンではSi(100)面に垂直な方向に進
む縦波の速度は8.43×105cm/s、そしてSi
(110)面に対しては9.13×105cm/sであ
る。よって、伝搬距離が同じ場合は、伝搬時間の長短が
弾性波の伝搬速度の大小を表わす。したがって、伝搬時
間の回転角度依存性を検出することによって、結晶方位
を知ることが可能となる。
【0011】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態につい
て図面を参照して説明する。
【0012】図1は、本発明の、結晶の面方位測定装置
の一実施形態例の構成図、図2は、本実施形態例の面方
位測定方法によって得られたSi(100)面の回転角
度に対する弾性波伝搬時間の依存性を示す図、図3は、
Si(100)面のSi原子の配列と縦波の伝搬速度の
結晶方位依存性を示す図である。
【0013】図1に示すように、本発明の結晶の面方位
測定装置は、試料2である結晶の表面に照射するパルス
レーザ光5を発生するためのレーザ発振器4と、結晶試
料2を載せ回転するステージ1と、結晶試料2の表面か
ら発生する弾性波6を測定する検出器3と、レーザ発振
器4の出力とステージ1の回転角度とを制御し、弾性波
検出器3の出力を検出するためのコンピュータ7とから
なっている。
【0014】本装置の操作方法について述べると、先
ず、例えば試料2としてSi(100)基板をステージ
1の上に設置する。これにYAGレーザ等のパルスレー
ザ光5を照射するとレーザ光5が照射された部分から弾
性波6が発生して伝搬していく。弾性波6はAEセンサ
等の弾性波検出器3によって電気信号として検出され
る。レーザ光5が照射された時間と、弾性波検出器3の
電気信号検出時間との差を伝搬時間としてステージ1の
回転角度とともに記憶する。ステージ1の回転角度を1
゜変えて同様な操作を行い、伝搬時間の角度依存性を測
定する。このサイクルを繰返し360゜の伝搬時間を測
定すると、Si(100)面の原子配列が4回転対称性
をもつので、90゜毎の周期構造をもつ図2に示される
ような波形が得られる。このように回転依存性から面方
位が特定できる。さらにこの測定後、得られた面方位の
情報に従ってステージ1を回転および平行移動すること
によってパルスレーザ光5の結晶表面上の位置を任意に
選んだ後にパルスレーザ光5の強度を上げて、レーザ光
5とその反射光とで作られる平面内でレーザ光5を走査
し、アブレーションを起こさせる。このアブレーション
によって形成された溝は、現在の半導体ウェーハに見ら
れるオリエンテーションフラットの代わりとすることが
できる。
【0015】ここで具体的に、弾性波のうちで縦波の伝
搬速度の違いを利用する場合を示す。Si(100)面
に垂直な方向に進む縦波の速度V(100)は8.43
×105cm/sであり、Si(110)面に対しては
V(110)は9.13×105cm/sである。Si
(100)面上の原子配列を図3を用いて説明する。図
3にシリコン原子11が示されている。図3に示すSi
(100)面上の原子配列の単位格子は4回転対称性を
もっているので、Si(100)面上の縦波の伝搬速度
も図3のように4回転対称性をもつ。結晶の対称性を考
えると、縦波がSi(110)面と等価な方向に進む時
の伝搬時間が最小に、Si(100)面と等価な方向に
進む時の伝搬時間が最大になる。パルスレーザが照射さ
れた試料上の位置と検出器3の距離を10cmとする
と、この最大伝搬時間と最小伝搬時間の差は0.9μs
程度(8%)であり、容易に測定可能である。試料とし
て使われるウェーハの厚みは高々1mm程度なので、厚
みによる伝搬時間への影響は充分小さいものとして無視
できる。検出器の受信部の大きさと縦波の波長を、伝搬
距離の8%よりも充分小さくすることで測定精度が向上
する。上述した実施形態例では回転角度刻みを1゜、走
査角度を360゜としたが、測定対象の弾性波伝搬時間
の回転角度依存性に応じて、これらを任意に選べばよい
ことはいうまでもない。また、対象とする結晶はSiの
みならずGaA,InP,Geなどの結晶でも同様の効
果が期待できる。
【0016】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、レーザ発
振器からのパルスレーザを結晶の表面に照射し、結晶を
ステージに載せて回転し、結晶の表面から発生する弾性
波を検出器により検出し、 コンピュータにより、レー
ザ発振器の出力とステージの回転角とを制御し、かつ弾
性波検出器の出力を検出する等の、レーザ光を使った簡
単な装置構成により、大型、高コストのX線装置や高価
な分光器を用いることなく結晶方位を測定することが可
能となるので、従来に比し低運転コストかつ低装置価格
の、結晶の面方位測定方法および装置を提供できるとい
う効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の、結晶の面方位測定装置の一実施形態
例の構成図である。
【図2】本実施形態例の面方位測定方法によって得られ
たSi(100)面の回転角度に対する弾性波伝搬時間
の依存性を示す図である。
【図3】Si(100)面のSi原子の配列と縦波の伝
搬速度の結晶方位依存性を示す図である。
【符号の説明】
1 ステージ 2 試料 3 弾性波検出器 4 レーザ装置 5 レーザ光 6 弾性波 7 コンピュータ 11 シリコン原子 V(100),V(110) 縦波の速度
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G01N 29/00 - 29/28 G01N 21/00 - 21/61

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 結晶の面方位測定方法において、 結晶の表面に照射するためのパルスレーザを発振器にお
    いて発生させ、 前記結晶をステージに載せて回転し、 前記結晶の表面から発生する弾性波を検出器により検出
    し、 コンピュータにより、前記レーザ発振器の出力と前記ス
    テージの回転角度とを制御し、かつ前記弾性波検出器の
    出力を検出することを特徴とする、結晶の面方位測定方
    法。
  2. 【請求項2】 結晶の面方位測定装置において、 結晶の表面に照射するパルスレーザ光を発生するための
    レーザ発振器と、 前記結晶を載せ回転するステージと、 結晶の表面から発生する弾性波を測定する検出器と、 レーザ発振器の出力と前記ステージの回転角度とを制御
    し、前記弾性波検出器の出力を検出するためのコンピュ
    ータとからなることを特徴とする、結晶面方位の測定装
    置。
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