JP2792268B2 - 偏平形低圧放電灯装置 - Google Patents

偏平形低圧放電灯装置

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JP2792268B2
JP2792268B2 JP3143192A JP14319291A JP2792268B2 JP 2792268 B2 JP2792268 B2 JP 2792268B2 JP 3143192 A JP3143192 A JP 3143192A JP 14319291 A JP14319291 A JP 14319291A JP 2792268 B2 JP2792268 B2 JP 2792268B2
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久司 本田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、断面が偏平形状をなす
バルブ内に一対の冷陰極からなる主電極を対向して設け
偏平形低圧放電灯装置に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、VTRのカラービューファインダ
として小形の液晶表示装置が開発されており、このもの
は23mm×18mm程度の大きさの液晶表示パネルをその
背面からバックライトで照明するようになっている。バ
ックライトとして直管形けい光ランプやU字形あるいは
W字形のけい光ランプを用いると大き過ぎて使用するこ
とができず、このため、きわめて小さな偏平形の冷陰極
けい光ランプを使用している。
【0003】この種の偏平形けい光ランプは、断面が偏
平な形状のバルブ内に一対の冷陰極からなる主電極を対
向して設けるとともに、このバルブ内に水銀と不活性ガ
スを封入し、かつバルブの内面にけい光体被膜を形成し
て構成されており、形状が偏平であるから薄形の光源と
なり、にも拘らず比較的広い面で発光するので光反射板
や光拡散板を用いなくても上記液晶表示パネルと同等の
面積をもつ偏平な発光面を作ることができ、光源全体を
小形、薄形に構成することができる等の利点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、上記の
ような偏平形けい光ランプは、暗黒、低温下で始動性が
良くない欠点がある。すなわち、通常、放電開始に必要
な初期電子の供給源は、熱電子や光、あるいは宇宙線で
ある。しかし、暗黒中では光が期待できず、またこの種
のランプは冷陰極であるから電極からの熱電子も期待で
きず、よって宇宙線だけとなるが、暗黒中やケーシング
内に収容されるけい光ランプの場合宇宙線の到達量は極
微小量であり、放電開始のきっかけとなり難い。したが
って、始動し難いという問題がある。
【0005】特に、この種の偏平形けい光ランプは、こ
れをパルス点灯すると高効率で輝度分布が均一になるこ
とが判ってきており、最近ではパルス点灯方式を採用す
る場合が増えている。 しかし、上記のような偏平形けい
光ランプをパルス点灯すると、益々暗黒、低温下で始動
性が良くないという欠点がある。
【0006】すなわち、通常放電開始に必要な初期電子
の供給源は、熱電子や光、あるいは宇宙線である。しか
し、暗黒中では光が期待できず、またこの種のランプは
冷陰極であるから電極からの熱電子も期待できず、よっ
て宇宙線だけとなるが、宇宙線の到達量は極微小量であ
り、放電開始のきっかけとなり難い。
【0007】そしてまた、正弦波点灯方式の場合は、正
弦波の裾の部分に僅かであるが電圧が存在し、この裾の
部分の電圧を放電破壊のエネルギーとして活用すること
ができるが、パルス点灯の場合は、上記正弦波の裾の部
分の電圧が存在しないので電圧印加時間が短く、初期電
子の放電破壊を発生させる確率が低くなる。このため、
この種のパルス点灯式偏平形けい光ランプは、暗黒、低
温下での始動特性が劣る不具合がある。
【0008】本発明はこのような事情にもとづきなされ
たもので、暗黒、低温下においても始動性が向上するパ
ルス点灯式の偏平形低圧放電灯装置を提供しようとする
ものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、不活
性ガスが封入された断面が偏平形状のバルブ、このバル
ブ内に対向して設けられた一対の冷陰極からなる主電極
および少なくとも上記一方の主電極の近傍に設けられた
始動用補助電極を具備してなる偏平形低圧放電灯と;
平形低圧放電灯の始動用補助電極に接続されるパルス発
生電源と; 上記主電極とこれに近接した上記始動用補助
電極との距離をd(mm)、不活性ガスの封入圧をP(To
rr) 、始動時におけるパルス電圧の休止期間をτ(μse
c)とした場合、 0.1≦d≦2.0 τ≦0.25P を満足していることを特徴とする 。請求項2の発明は、
請求項1記載の始動用補助電極は、先端を尖らせたこと
を特徴とする。
【0010】
【作用】請求項1の発明によると、始動時に主電極と始
動用補助電極との間で始動放電が発生し、これが主電極
間の主放電に移行するので、暗黒や低温の雰囲気であっ
ても確実な始動が可能となる。しかも、始動用補助電極
はパルス発生源に接続されており、このパルス電圧の印
加条件を規制したから、パルス点灯される偏平形低圧放
電灯であっても確実に始動が可能である。請求項2の発
明によれば、始動用補助電極の先端を尖らせたので、始
動時に電界が集中し、放電破壊を招き易くなり、始動が
容易になる。
【0011】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳
細に説明する。図面は、VTRのカラービューファイン
ダに適用される液晶表示装置のバックライトとして用い
られる偏平形冷陰極けい光ランプを示す。
【0012】図において1は、断面が長円形筒形をなす
偏平バルブであり、この偏平バルブ1の内面にはけい光
体被膜2が形成されている。偏平形バルブ1の両端開口
部は閉塞部材としての平板形ステム3、3で気密に閉塞
されている。ステム3、3はガラス板からなり、平板形
をなしているのでいわゆるボタンステムの類に属する。
このような平板形ステム3、3には、それぞれ冷陰極か
らなる主電極4a、4bが取付けられている。冷陰極形
主電極4a、4bは、例えばニッケル板からなり、前面
にジルコン−アルミニウムからなるゲッター5を塗布す
るとともに、背面に水銀−チタン合金からなる水銀放出
構体6を付着させて構成されている。なお、互いに対向
する冷陰極4a、4bは、ゲッター5を塗布した面が相
互に対面するようになっている。
【0013】このようなプレート形の冷陰極4a,4b
は、それぞれ一端がウエルズ7,7に接合されており、
このウエルズ7はステム3を気密に貫通して外部に導出
されている。
【0014】上記それぞれのステム3,3には、ウエル
ズ7と離れた箇所に他のウエルズ8、9が機密に貫通さ
れている。一方のステム3のウエルズ8は先端が冷陰極
形主電極4aに対向するように曲げられており、これは
始動用補助電極10を構成している。この始動用補助電
極10とこれに近接した冷陰極形主電極4aは、それぞ
れ先端が鋭角に尖っており、これら先端部10a、4a
aは図2に示すように、寸法d(mm)を存して対向して
いる。
【0015】他のステム3のウエルズ9は、ダミ−ウエ
ルズであり、バルブ1およびステム3が加熱された場合
に主電極4b側のウエルズ7との間で熱的なバランスを
とるために設けられているものである。
【0016】また、ステム3の内面には、このステム3
を偏平形バルブ1の両端開口部に嵌合する場合に位置決
めするためのボス部11、11が突設されており、これ
らボス部11、11を貫通して上記ウエルズ7、7、8
および9が配置されている。
【0017】上記のような各電極を備えたステム3、3
は、ガラス接着剤、つまりフリットガラス12、12に
より上記バルブ1の開口端部に接合されている。フリッ
トガラス12、12は、ガラスの熱膨脹率に似たガラス
材からなり、バルブ1の開口面に一致するような長円形
リングをなしており、ステム3、3の内面との間に挾み
込まれて外部から加熱されることにより溶融してバルブ
1の開口端面にステム3、3を気密に接合している。
【0018】なお、冷陰極4a、4bに取付けられた水
銀放出構体6は、バルブの封止後、外部から高周波誘電
加熱などの手段で加熱されることによりバルブ内に蒸発
して放出されるようになっている。また、バルブ1内に
はアルゴンArなどの希ガスが所定圧P(Torr)、例え
ば30〜140Torr封入されている。上記のような構成
の偏平形冷陰極けい光ランプは、図3に示す通り、パル
ス発生回路からなる点灯回路20に接続されて点灯され
る。
【0019】パルス発生点灯回路20は、繰返し周波数
fが例えば15KHz、休止期間τを有するオン/オフ
のデュ−ティ比が例えば0.1程度とされた公知のもの
であってよい。このようなパルス発生点灯回路20のプ
ラス側は一方の冷陰極形主電極4aに接続されていると
ともに、マイナス側は他方の冷陰極形主電極4bに接続
されている。そしてまた、上記パルス発生点灯回路20
のマイナス側は、例えば1MΩ程度のインピーダンス2
1を介して前記補助電極10に接続されている。
【0020】このような構成のランプにおいては、ラン
プの始動時には補助電極10とこれに近接した一方の冷
陰極形主電極4aの間にパルス電圧が印加され、これら
補助電極10と冷陰極形主電極4aの距離が短いので、
これらの間で放電破壊が発生し、これら補助電極10と
冷陰極形主電極4aの間で補助放電が発生する。
【0021】この補助放電は電子を多量に放出し、よっ
て互いに対向する一対の冷陰極形主電極4a、4bの主
放電を誘発する。すなわち、このようなランプによれ
ば、暗黒雰囲気や低温雰囲気であっても、補助電極10
と冷陰極形主電極4aの間で補助放電が容易に発生し、
この補助放電が速やかに主放電に移行するから、始動性
が向上することになる。
【0022】特に、上記実施例の場合、始動用補助電極
10とこれに近接した冷陰極形主電極4aは、それぞれ
先端10a、4aaを鋭角に尖がらせてあるから、始動
電圧が印加された場合にこれら先端部10a、4aaに
電界が集中し、これらの間の放電破壊を速やかに促すか
ら、始動が確実になされるようになる。
【0023】ところで、上記のような補助電極10を用
いて始動放電を発生させる場合、その始動性能を左右す
る要因として、補助電極10と主電極4aとの離間距離
d(mm)、始動時におけるパルス電圧の休止期間の長さ
τ(μsec)および不活性ガスの封入圧P(Torr)が考え
られる。これらの要因について、研究した結果を説明す
る。
【0024】図4は、補助電極10と主電極4aとの距
離d(mm)と、始動電圧(V)との関係を調べた特性図
である。補助電極10と主電極4aとの距離d(mm)が
短い程放電を発生し易いことは知られている。しかし、
この放電ギャップdは0.1mm以上でないと、単なる導
通状態となって放電を発生しなくて、電子の放射がなさ
れない。そして、図4から理解できる通り、放電ギャッ
プdが2.0mmを超えると始動電圧が急激に上昇する傾
向がみられる。図4の特性は、バルブ内にアルゴンAr
を80Torr封入した場合を示すが、アルゴンArの封入
圧が変化しても同様の傾向があることが判明している。
このため、 0.1≦d(mm)≦2.0 …(1) であることが必要である。
【0025】次に、ランプをパルス点灯する場合、補助
放電から主放電に移行する要件はパルスの休止期間τ
(μsec)に依存する。休止期間τが臨界値τc 以下であ
れば補助放電から主放電への移行は容易であり、逆に休
止期間τが臨界値τc より大きいと移行が困難になる。
これは、補助放電により発生した電子がパルスの休止期
間中に管壁方向へ拡散あるいはドリフトして消滅するか
らである。
【0026】また、このような電子の管壁方向へ拡散あ
るいはドリフトは、封入された希ガスのガス圧にも影響
される。周囲のガス圧が低いと電子は動き易いので拡散
やドリフトを発生し易く、またガス圧が高いと電子は動
き難いので消滅し難い。
【0027】そこで、前記0.1≦d(mm)≦2.0の
条件のもとで、補助放電から主放電に移行する場合のパ
ルス休止期間の臨界値τc (μsec)について、アルゴン
Arの封入圧P(Torr)との関係を実験により求めた。
【0028】この結果を表1に示す。なお、表1のデ−
タは、パルスの繰返し周波数fを10〜20KHz、パ
ルス電圧を1000〜2000Vとして実験した場合で
ある。
【0029】
【表1】 この実験結果から、パルス休止期間τとアルゴンArの
封入圧Pとの関係を、 τ(μsec)≦0.25P(Torr) …(2) にすれば、補助放電から主放電への移行が確実に、かつ
安定して行えることが判る。そして、補助電極10を設
けない従来のランプと、補助電極10を設けたランプと
を始動点灯テストしたところ、図5のような結果を得
た。図5の特性を下記の表2に示す。
【0030】
【表2】
【0031】補助電極10を設けない従来のランプは、
図5の特性Aおよび表2に示すように、始動時間が平均
62(μsec)で、始動電圧が平均1250Vを必要とし
たのに対し、補助電極10と主電極4aを備えたランプ
の場合は、図5の特性Bおよび表2に示すように、始動
時間が平均35(μsec)で、始動電圧が平均760Vと
なり、始動時間で56%、始動電圧では61%の改善率
となることが確認された。
【0032】このようなことから、補助電極10を用い
たランプは始動特性が向上し、暗黒や低温などの劣悪な
状況においても、安定した始動が可能となることが理解
できる。
【0033】また、このようなことから、パルス発生点
灯回路20の部品として用いられる図示しない公知の昇
圧トランスの小形化が可能になり、回路効率の低下およ
び機器の小形化などにも有利となる。
【0034】なお、本発明においては、パルス休止期間
τ(μsec)の限定は、始動直後までの条件であり、安定
点灯に移行した後は必ずしも上記の条件に規制する必要
はない。例えば、アルゴンの封入圧を80Torrとした場
合、始動時のパルス周波数fを25KHz、休止期間τ
を20μsec とし、安定点灯に至るとパルス周波数fを
15KHz、休止期間τを50μsec に変更するなどの
使用方法であってもよい。
【0035】また、上記実施例の場合、補助電極10を
インピーダンス21を介してパルス発生点灯回路20に
接続するようにしたが、本発明は図6に示す他の実施例
のように、補助電極10を電源に接続せずに浮遊電極と
してもよい。このようにしても、主電極4a、4b間に
印加されるパルス電圧が比較的高い場合は主電極4aと
上記電源に接続されていない補助電極10との間で浮動
電位により補助放電が発生することが確認されている。
この場合、前記(1)式および(2)式で示す条件はそ
のまま適用される。さらに、本発明はバルブ内に水銀を
封入したけい光ランプには限らず、水銀を用いない希ガ
ス放電灯であってもよい。
【0036】さらに、バルブ内に封入する不活性ガス
は、アルゴンに限らず、キセノンXe、クリプトンK
r、ネオンNeなど、放電灯一般に使用されている公知
の不活性ガスを少なくとも1種封入したランプであって
もよい。そして、補助電極10はそれぞれの主電極4
a、4bに近接して設けるようにしてもよい。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように請求項1の発明によ
ると、始動時に主電極と始動用補助電極との間で始動放
電が発生し、これが主電極間の主放電に移行するので、
暗黒や低温の雰囲気であっても確実な始動が可能にな
る。さらに、始動用補助電極はパルス発生電源に接続さ
れており、このパルス発生電圧の印加条件を規制したか
ら、パルス点灯される偏平形低圧放電灯であっても始動
が確実になされる。そして、始動電圧を引き下げること
ができるので、パルス発生点灯回路部品の小形化が可能
になる。 また、請求項2の発明によると、始動用補助電
極の先端を尖らせたので、始動時に電界が集中し、放電
破壊を招き易くなり、始動が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す偏平形冷陰極けい光ラ
ンプの分解した斜視図。
【図2】同実施例における電極を取り付けたステムを示
し、(a)図は平面図、(b)図はその断面図。
【図3】同実施例における点灯回路と一緒に示すランプ
の断面図。
【図4】主電極と補助電極の距離に対する始動電圧の関
係を示す特性図。
【図5】従来の電極構造と本発明の電極構造の場合につ
いて、始動時間と始動電圧の関係を示す特性図。
【図6】本発明の他の実施例における点灯回路と一緒に
示すランプの断面図。
【符号の説明】
1…偏平バルブ、2…けい光体被膜、3…ステム、4
a,4b…冷陰極形主電極、4aa…主電極の先端尖り
部、10…補助電極、10a…補助電極の先端尖り部、
11…ボス部。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01J 61/54 H01J 61/30

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 不活性ガスが封入された断面が偏平形状
    のバルブ、このバルブ内に対向して設けられた一対の冷
    陰極からなる主電極および少なくとも上記一方の主電極
    の近傍に設けられた始動用補助電極を具備してなる偏平
    形低圧放電灯と; 偏平形低圧放電灯の始動用補助電極に接続されるパルス
    発生電源と; 上記主電極とこれに近接した上記始動用補助電極との距
    離をd(mm)、不活性ガスの封入圧をP(Torr) 、始動
    時におけるパルス電圧の休止期間をτ(μsec)とした場
    合、 0.1≦d≦2.0 τ≦0.25P を満足していることを特徴とする偏平形低圧放電灯装
    置。
  2. 【請求項2】 上記始動用補助電極は、先端を尖らせた
    ことを特徴とする請求項1に記載の偏平形低圧放電灯
    置。
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