JP2787279B2 - 糖リン脂質及びその調製法 - Google Patents

糖リン脂質及びその調製法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はグリセロリン脂質に糖分
子が結合した新規糖リン脂質およびその組調製法に関す
る。本発明による糖リン脂質は生化学試薬、医薬品食品
原料、あるいは界面活性剤として有用である。
【0002】
【従来の技術】リン脂質は生体の中で種々の機能を果し
ている。ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノ
ールアミン、スフィンゴミエリン等のリン脂質は生体膜
の構成成分として脂質2分子膜を形成し外界から細胞膜
を保護している。そこで蛋白質の機能発現に適した環境
を作っている。また、コリン、リン、脂肪酸の供給源と
しての役割を果たし、プロスタグランジン生合成の際に
おけるアラキドン酸の貯蔵物質となっていることが知ら
れている。現在、細胞分化の調節機能も徐々に明かにな
りつつある。更に、リン脂質の中には、PAF(血小板
活性因子)の様に、それ自身が強い生理活性を発現して
いるものも存在している。この様にリン脂質は、生体内
において、様々な重要な役割を果たしている。
【0003】また、糖脂質も細胞膜の構成成分となって
いるが、細胞膜外表面に存在している糖脂質は、その糖
鎖の多様性と細胞の種類により異なる糖鎖の発現パター
ンから、細胞の表面マーカーとして機能しているものと
考えられている。分化した細胞は、特定の糖脂質を細胞
表面に発現している。このことは、糖脂質が様々な細胞
機能を持っていることを示唆する。例えば、受容体とし
ての機能、膜酵素の活性調節、イオンチャンネルの調
節、膜流動性の調節、細胞分化の調節等である。
【0004】糖脂質は、分子内に水溶性糖鎖と脂溶性基
の両者を含む物質の総称であるが、動物細胞においては
糖脂質は、そのほとんどがスフィンゴ型であり、グリセ
ロ型は植物か、細菌等にしか見つけだされてはいなかっ
た。最近になり、ブタ精巣におけるセミノリピド存在の
発見等、動物細胞においてもグリセロ型の糖脂質もなん
らかの生理機能を有しているといわれている。リン脂質
と糖との関連で、ホスファチジルイノシトールが分子内
のイノシトール結合糖鎖を介して蛋白質と結合し、蛋白
質を細胞膜につなぎ止めるアンカーの役割を果たしてい
る(GPIアンカー)ことが明らかになっている。この
GPIアンカーについてはトリパノゾーマ膜抗原、人赤
血球アセチルコリンエステラーゼ等種々のものについて
構造解析の報告がある。そのタンパク質は膜表面を移動
することができ、GPIは酵素的な作用、受容体として
の機能を制御していると考えられている。しかしこれま
でグリセロ型のリン脂質に糖が結合した化合物は見出さ
れていない。また、牛乳など哺乳動物の乳中に糖リン脂
質が存在するという報告はこれまでにない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は牛乳を出発
原料として、単離精製した画分中に薄層クロマトグラフ
(TLC)において、リン脂質の呈色反応と糖の呈色反
応を示す物質見いだし、これをカラムクロマトグラフィ
ーを中心とする複合脂質精製法によって精製単離を繰り
返し、リン脂質画分単離した。これらの画分の構造解析
を行った結果、従来まったく知られていない糖リン脂質
が、乳中に存在することを初めて確認した。従って本発
明は、新規な糖リン脂質にあり、特に新規なグリセロ型
リン脂質に糖が結合した糖リン脂質の提供とこの糖リン
脂質の調製方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記(1)〜
(12)の物理化学的特性値を有する糖リン脂質にあ
る。 (1)プロトンNMR測定により次のプロトンピークが
検出される。4.0ppm付近の4個のプロトンピー
ク、5.1ppmのプロトンピーク、4.2ppmのア
ノメリックプロトンピーク、0.9ppmのメチルプロ
トンピーク、1.5〜3.0ppmのプロトンピーク。 (2)フーリエ変換赤外線分析法により測定した場合3
500cm- 、1000cm- 、1300cm- 、に特
徴的な吸収が存在する。 (3)ホスホリパーゼCにより分解される。 (4)ディットマー−レスター(Dittmer−Le
ster)試薬によりリン脂質の呈色反応を示す。 (5)β−ガラクトシダーゼによって糖を遊離する。 (6)オルシノール硫酸、ジフェニールアミン−アニリ
ン試薬により、糖の呈色反応を示す。 (7)ガラクトースを構成糖とする。 (8)ニンヒドリン試薬により発色する。 (9)分子中のエタノールアミンを定量した場合、1分
子当たりエタノールアミンが1個存在する。 (10)分子中のグリセロールを定量した場合、1分子
当たりグリセロールが1個存在する。 (11)分子中のリンを定量した場合、1分子当たりリ
ン酸基が1分子存在する。 (12)塩酸メタノールで分解し、メチルエステルを分
析した場合、炭素数12〜20の飽和または不飽和脂肪
酸が検出される。
【0007】さらに詳しくは、下記一般式(I)で表さ
れる糖リン脂質にある。
【化2】 (ただしR1 、R2 は同一かあるいは異なる、飽和また
は不飽和の脂肪族炭化水素基を示し、AはNグリコシド
結合した糖を示す。)
【0008】特に式中、R1 2 は、同一か、あるいは
異なる炭素数13〜17の飽和または不飽和の直鎖脂肪
族炭化水素基、例えばトリデカニル(C13:0)、ペンタ
デカニル(C15:0)、ペンタデセニル(C15:1)、ヘプ
タデカニル(C17:0)、ヘプタデセニル(C17:1)及び
ヘプタデセジエニル(C17:2)からなる群から選択され
る少なくとも1種の脂肪族炭化水素基であり、Aは、例
えばガラクトース2残基が結合したものである。本発明
の糖リン脂質は、牛乳もしくは乳製品から抽出精製する
ことができる。乳製品としてはチーズホエー、バターミ
ルク等から得られた脂質画分が用いられる。例えば実施
例に示すように、チーズホエー、チーズホエー粉、バタ
ーミルク等を蛋白分解酵素で蛋白質を分解し、ついでメ
タノール、クロロホルムを順次加えて撹拌して、複合脂
質を抽出する。このような脂質画分に、クロロホルム−
メタノール混液もしくはクロロホルム−メタノール−水
混合液で抽出し、シリカゲルクロマトグラフィーにか
け、吸着される画分をクロロホルム−メタノール、クロ
ロホルム−メタノール−酢酸−水等の溶媒を移動相とし
て溶出、糖リン脂質の反応を示す画分を採取することに
よって調製することができる。このようにして得られる
糖リン脂質は通常は脂肪属炭化水素基が相違するいくつ
かの糖リン脂質の組成物の形で得られるが、本発明では
このような状態で得てもよく、あるいは場合によりさら
に精製を行ってもよい。
【0009】本発明の糖リン脂質の物理化学的性質につ
いて以下にさらに詳細に説明する。 (1)プロトンNMR分析 既知の方法に従い、本発明糖リン脂質をジメチルスルフ
ォキシド−重水(98:2)に溶かしプロトン−プロト
ンの2次元によるNMRを測定した。そのチャートを図
1に示す。この結果より、4.0ppm付近の4個のプロト
ン、5.1ppmの1個のプロトンが示すグリセロール特有の
化学シフト及び2次元NMRにおける相関より、グリセ
ロ脂質であることが確認された。4.2ppmのアノメリック
プロトンが観測されること、またその結合定数より、β
結合により結合する糖が1個存在することがわかる。5.
4ppmのシス2重結合水素由来のプロトンの存在、0.9ppm
のメチルプロトン、1.5〜3.0ppmの各プロトンは脂肪酸
由来のものである。また1次元のNMRを図2に示す。
【0010】(2)ホスホリパーゼCとの反応性 本発明の糖リン脂質はホスホリパーゼC(PLC)によ
り分解される。またPLCにより分解されたことより、
糖リン脂質はグリセロリン脂質であることが証明でき
る。またリン脂質検出試薬であるディットマー−レスタ
ー(Dittmer−Lester)試薬による呈色反
応も、リン脂質としての反応を示す青色を示した。
【0011】(3)FT−IR分析 フーリエ変換赤外分析法(FT−IR)によって本発明
化合物を分析した場合、3500cm-1の水酸基に由来
する糖に特徴的な吸収、また1000cm-1、1300
cm-1のリン酸基由来の吸収が確認された。さらに25
00〜2800cm-1のリン酸基の非結合水酸基由来の
弱いブロードの吸収がみられた。これにより本発明の糖
リン脂質はリン酸基はトリエステルでは存在せずリン酸
のジエステル構造を分子内に持っていることを確認し
た。本発明の糖リン脂質のFT−IR吸収パターンおよ
び対象として測定したホスファチジルエタノールアミン
(PE)のFT−IR吸収パターンを図3に示した。図
に示すように標品のPEの吸収パターンとほぼ一致し
た。しかし、PEのスペクトルに見られる1560cm-1の一
級アミン特有の吸収が本発明化合物の吸収では認められ
なかった。又アミドの吸収も認められなかった。このこ
とから糖はN−グリコシド結合していると予想された。
【0012】(4)糖分析 本発明の糖リン脂質は、は糖に特異的に反応するオルシ
ノール硫酸、ジフェニルアミン−アニリン試薬により呈
色を示す。さらに6N塩酸100℃3時間処理物をトリ
メチルシリル(TMS)誘導体化し、GC/MS分析を
行った。0.2N硫酸分解、2Nトリフロロ酢酸(TF
A)分解100℃処理物の薄層クロマトグラフィー(T
LC)による定性試験を行った。0.3N硫酸/90%
酢酸80℃14時間処理によりアルジトールアセテート
とした後、糖のGC/MS分析を行った。1N TFA
100℃1.5時間処理物のPulsed Amperometric Dete
ctor分析を行った。いずれの分析結果もガラクトースの
存在を示すものであった。以上の分析で全て構成糖はガ
ラクトースであることが確認された。
【0013】(5)グリコシダーゼとの反応 種々のグリコシダーゼによる逐次分解を試みたが、βガ
ラクトシダーゼによってのみ糖が遊離することが確認さ
れた。以上の結果と先のNMRの結果とも併せて、ガラ
クトースのβ結合が存在することが確認された。またこ
のグリコシダーゼ処理で遊離されるガラクトースは本発
明の糖リン脂質1分子当たり1残基であった。以下の分
析ではガラクトース2残基がつながった形で存在してい
ることが確認されており、ガラクトース1残基はグリコ
シダーゼにより遊離されないことから、O−グリコシド
結合で結合していないことが確認された。
【0014】(6)FAB(Fast Atom Bombardment)−
MS分析 本発明の糖リン脂質をトリエタノールアミンをマトリッ
クスに用い負イオンFAB−MSを行った。この結果よ
り糖と思われる180の分子量を持つ物質が2個つなが
ったものが分子中に存在することが確認できる。これは
糖組成からガラクトースが2個つながったものである。
また本発明の糖リン脂質の一つは、分子量が1067で
あることが確認できた。FAB−MS分析スペクトルを
図4に示した。
【0015】(7)ガラクトースの結合位置の確認 前記の糖の結合位置を確定するためにメチル化分析を行
った。箱守の方法により完全メチル化し、0.5N硫酸
/90%酢酸による加水分解を行い、メチル化糖の遊離
を行った。遊離メチル化糖は還元し、アルジトールに変
換し、遊離水酸基は無水酢酸によりアセチル化した。得
られた部分メチル化糖アルジトールアセテートをGC/
MS分析を行った結果を図5に示した。また部分メチル
化したヘキシトールのアセチル誘導体の標準品を同一条
件でGC−MSに付して測定し同定を行った。このマス
スペクトルによれば、保持時間17.949分に1,5
−ジ−アセチル−2,3,4,6−テトラ−O−メチル
ヘキシトールが観測された(図5−a)。また保持時間
23.361分に1,5,6−トリ−O−アセチル−
2,3,4−トリ−O−メチルヘキシトールが観測され
た(図5−b)。以上の結果から、本発明の糖リン脂質
のガラクトース2分子はβ1,6結合していることが確
認された。
【0016】(7)エタノールアミン分析およびホスフ
ァチジルエタノールアミン骨格の確認。 本発明の糖リン脂質はニンヒドリン発色する。さらに6
N塩酸による強酸分解によりエタノールアミンが生成す
ることがTLC、TMS誘導体のGC分析に付すること
により確認できた。また強酸分解後、ジニトロフルオロ
ベンゼン試薬による比色法により、糖リン脂質中のエタ
ノールアミンの存在量を測定することができた。これに
より糖リン脂質1分子中に1個のエタノールアミンの存
在することが確認された。一方、本発明の糖リン脂質を
0.2N硫酸、または0.1N塩酸を用いて100℃で
加水分解を行い、この分解物のTLC分析を行った。本
発明の糖リン脂質の分解物の他に、TLC上でホスファ
チジルエタノールアミン(PE)と同じRf値を示すス
ポットが検出された。このスポットはディットマー−レ
スター試薬による発色反応陽性、ニンヒドリン発色反応
陽性であって、オルシノール−硫酸発色反応陰性であっ
た。この結果、このスポットはホスファチジルエタノー
ルアミンであることが確認された。以上の結果から、本
発明の糖リン脂質にはホスファチジルエタノールアミン
が骨格として存在することが確認できた。
【0017】(8)グリセロール分析 本発明の糖リン脂質を2N塩酸125℃48時間分解処
理後過ヨウ素酸ナトリウムを反応させ、生成するホルム
アルデヒドにクロモトロープ酸を反応させ得られる赤紫
物質を比色した。その結果糖リン脂質1分子中にグリセ
ロールは1個存在することが確認された。 (9)リン分析 本発明の糖リン脂質に、10N塩酸180℃3時間分解
後モリブデン酸アンモニウムを作用させ、生じるリンモ
リブデン酸アンモニウムを定量した。これにより糖リン
脂質1分子中にリン酸基が1分子存在することを確認し
た。
【0018】(10)脂肪酸分析 本発明の糖リン脂質はその構造中に脂肪酸を含んでい
る。5%塩酸メタノールによる分解を行い、生成した脂
肪酸メチルエステルをガスクロマトグラフィーにより測
定した場合、その脂肪酸構成は下記表1の脂肪酸を有す
ることを確認した。この脂肪酸の構成比は、一例を示し
たもので、本発明の糖リン脂質の由来によって異なって
いるが、炭素数12〜20の飽和または不飽和直鎖脂肪
酸が大部分である。
【0019】
【表1】 ──────────────────── 構成脂肪酸 % ──────────────────── C14:0 1.6 C16:0 14.4 C16:1 1.9 C18:0 17.1 C18:1 52.7 C18:2 12.0 ────────────────────
【0020】以上の特性を示す代表的な構造として、次
の化学式〔II〕に示す構造の糖リン脂質を明示するこ
とができる。
【0021】
【化3】
【0022】本発明の糖リン脂質はグリセロ型リン脂質
に糖が結合するという構造を持つ。この糖リン脂質は上
述した生理機能を有しており、さらにリン脂質に糖が結
合したことにより、これまでのリン脂質の有していない
機能に関与している可能性もある。糖リン脂質は、その
構造上の類似性よりGPIアンカーもしくはその前駆体
としての機能も充分に考えられる。
【0023】さらに、このリン脂質は、分子内にリン酸
基を中心とした親水性を持つ部分と脂肪酸およびスフィ
ンゴ脂質の場合の塩基の疎水性部分から成り立ってい
る。その両親媒的な性質、また天然由来素材であること
より、乳化剤として食品に用いることが可能である。特
に本発明の糖リン脂質はその構造上、糖を有することか
らリン脂質としては親水性の極めて高い物質であり、水
中に効果的に分散する。さらに、本発明の糖リン脂質は
グリセロリン脂質であることより、その脂肪酸部の置
換、削除は比較的容易に行うことができる。従ってこの
操作により本発明の糖リン脂質を乳化剤として利用する
場合、そののHLB値を自由に操作することもできる。
この糖リン脂質精製物、合成物、またその組成物は乳化
剤、特にO/W乳化剤として有効な素材として利用可能
である。この界面活性剤としての独特の性質は、医薬分
野、食品分野のみならず化粧品分野への応用も充分に考
えられるものである。
【0024】以下に実施例を示して本発明の糖リン脂質
の調製法を具体的に説明する。
【実施例1】本実施例ではリン脂質を含有するチーズホ
エーから本発明の糖リン脂質を回収する方法を示す。チ
ーズホエー粉3kgを温湯30lに溶解し、50℃に保
持した。そこに10gの枯草菌プロテアーゼを添加しp
H8、温度45℃で15時間反応させ、タンパク質を分
解した後、90℃で10分加熱し、酵素を失活させた。
そこにメタノール80lを加え室温で30分撹拌し、更
にクロロホルム40lを加え同様に30分撹拌して、複
合脂質として抽出した。次に抽出液を濾過し濃縮乾固し
た後、クロロホルム−メタノール混液(2:1、v/
v)を500ml加え、室温で30分撹拌して濾過し
た。濾液にアセトン20lを加え4℃で一晩静置し、白
色沈澱112gを得た。少量のクロロホルム−メタノー
ル混液に溶解し、移動相としてクロロホルム−メタノー
ル−水(90:10:0、80:20:2、70:3
0:3、60:40:4)の混液を用いたシリカゲルカ
ラムクロマトグラフィーの段階溶出を行った。また以上
の各精製段階のTLCによる挙動を図6に示した。
【0025】以降、糖リン脂質の検出はTLCでの展開
後、オルシノール硫酸試薬とディットマー−レスター試
薬の同時発色スポットを糖リン脂質として判断した。こ
の段階溶出により16.24gの糖リン脂質含有画分を
得た。次に移動相としてクロロホルム−メタノール−ア
セトン−酢酸−水(10:2:4:2:1)の混液を用
いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行った。こ
の精製段階で、オルシノール硫酸試薬とディットマー−
レスター試薬の呈色から判断すると90%程度の純度の
糖リン脂質3.20gが得られた。精製物のTLC展開
後のニンヒドリン試薬による呈色反応より、疎水性ペプ
チド成分と考えられるニンヒドリン発色物質が存在し
た。ここまでの精製物をクロロホルム−メタノール
(1:1)の混液に溶解し、SephadexLH−2
0を用いたゲル濾過によりニンヒドリン発色物質を除去
し2.28gの糖リン脂質を得た。その後、移動相とし
て、クロロホルム−メタノール−酢酸−水(65:2
5:8:4)、クロロホルム−メタノール−水(65:
35:8)を移動相としてシリカゲルカラムクロマトグ
ラフィーを行い、1.54gの98%純度の糖リン脂質
を得た。この物質は上記に示した糖リン脂質の特性を有
していた。
【0026】
【実施例2】本実施例は乳由来の複合脂質を高濃度に含
有する粉末から調製する方法を示す。特開平5−292
880号公報に開示されている方法に従って、複合脂質
を高濃度に含有する粉末を調製した。すなわち、バター
ミルクのpHを酸性に調節し、等電点沈殿を生じせし
め、沈殿を除去した後、限外濾過濃縮を行い、この溶液
を乾燥させて、複合脂質を高濃度に含有する粉末を調製
した。
【0027】この粉末100gを1lのアセトンを加え
懸濁させ、激しく撹拌し分散させた。その後4℃にて一
晩放置した。沈澱物を濾取し続いて凍結乾燥を行い33
gの白色粉末を得た。その内の一部1gをエタノールに
懸濁させ撹拌後濾過、エタノール不溶分を濾取した。そ
れを5mlのヘキサン/エタノール/酢酸/水=60/
40/5/5に溶解させ、この混液を移動層としたシリ
カゲルカラムクロマトグラフィーを行った。カラムは8
0×500mmの3本連結、樹脂には球状シリカゲル
(SIL−120−S50、YMC)を用いた。UV2
05nmの吸収により検出を行った。ピークのディット
マー−レスター試薬及びオルシノール硫酸試薬による呈
色反応を利用し各ピークの同定を行った。分離は良好で
あり、糖リン脂質は1本のピークとして存在した。糖リ
ン脂質含有画分を回収し凍結乾燥したところ85mgの
白色粉末を得た。リン分析によりこの中のリン脂質含量
は81%であることを確認した。リン脂質中の糖リン脂
質の含量は92%であった。
【0028】
【発明の効果】本発明により新規な糖リン脂質が提供さ
れる。本発明の糖リン脂質は生化学試薬、医薬品食品原
料、あるいは界面活性剤等の多様な用途に供することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の糖リン脂質の2次元NMRパターンを
示す。
【図2】本発明の糖リン脂質のNMRパターンを示す。
【図3】本発明の糖リン脂質のフーリエ変換赤外分析法
(FT−IR法)による吸収スペクトルを示す。図中の
Aは標準物質ホスファチジルエタノールアミンの吸収ス
ペクトル、Bは本発明の糖リン脂質の吸収スペクトルで
ある。
【図4】本発明の糖リン脂質のFAB−MSスペクトル
を示す。Mは本発明の糖リン脂質の代表的な分子量を示
す。図中の〔M−162−162−H〕- は2糖脱離体
のスペクトルを示し、〔M−162−H〕- は糖脱離体
のスペクトルを示し、〔M−H〕- は1水素抜けのスペ
クトルを示す。
【図5】本発明の糖リン脂質のGC−MSスペクトルを
示す。図中の(a)上段はGC保持時間17.949分
の分離物質のマススペクトルであり、下段は1,5−ジ
−アセチル−2,3,4,6−テトラ−O−メチルヘキ
シトールのマススペクトルである。また図中の(b)上
段はGC保持時間23.361分の分離物質のマススペ
クトルであり、下段は1,5,6−トリ−O−アセチル
−2,3,4−トリ−O−メチルヘキシトールのマスス
ペクトルである。
【図6】本発明の糖リン脂質の薄クロマトグラフィーの
各精製段階のパターンを示す。
【符号の説明】
(1)Fr. フラクション (2)GPL 本発明糖リン脂質 (3)SPM スフィンゴミエリン (4)PC ホスファチジルコリン (5)LacCer ラクトシルセラミド
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07H 15/12 C07H 1/08 C07G 3/00 CA(STN) REGISTRY(STN) WPI(DIALOG)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記物理化学的特性値を有する糖リン脂
    質。 (1)プロトンNMR測定により次のプロトンピークが
    検出される。4.0ppm付近の4個のプロトンピー
    ク、5.1ppmのプロトンピーク、4.2ppmのア
    ノメリックプロトンピーク、0.9ppmのメチルプロ
    トンピーク、1.5〜3.0ppmのプロトンピーク。 (2)フーリエ変換赤外線分析法により測定した場合3
    500cm- 、1000cm- 、1300cm- 、に特
    徴的な吸収が存在する。 (3)ホスホリパーゼCにより分解される。 (4)ディットマー−レスター(Dittmer−Le
    ster)試薬によりリン脂質の呈色反応を示す。 (5)β−ガラクトシダーゼによって糖を遊離する。 (6)オルシノール硫酸、ジフェニールアミン−アニリ
    ン試薬により、糖の呈色反応を示す。 (7)ガラクトースを構成糖とする。 (8)ニンヒドリン試薬により発色する。 (9)分子中のエタノールアミンを定量した場合、1分
    子当たりエタノールアミンが1個存在する。 (10)分子中のグリセロールを定量した場合、1分子
    当たりグリセロールが1個存在する。 (11)分子中のリンを定量した場合、1分子当たりリ
    ン酸基が1分子存在する。 (12)塩酸メタノールで分解し、メチルエステルを分
    析した場合、炭素数12〜20の飽和または不飽和脂肪
    酸が検出される。
  2. 【請求項2】 構造式が下記一般式〔I〕で表される請
    求項1記載の糖リン脂質。 【化1】 (ただしR1 、R2 は同一かあるいは異なる、飽和また
    は不飽和の脂肪族炭化水素を示し、AはNグリコシド結
    合した糖を示す。)
  3. 【請求項3】 R1 及びR2 が同一か、あるいは異なる
    トリデカニル(C13:0)、ペンタデカニル(C15:0)、
    ヘプタデカニル(C17:0)、ペンタデセニル
    (C15:1)、ヘプタデセニル(C17:1)及びヘプタデセ
    ジエニル(C17:2)よりなる群から選択される少なくと
    も1種の脂肪族炭化水素基であり、Aがガラクトース2
    残基が結合したものである請求項2記載の糖リン脂質。
  4. 【請求項4】 牛乳もしくは乳製品を出発原料として、
    その脂質画分をクロロホルム−メタノール混液もしく
    は、クロロホルム−メタノール−水混液により抽出し、
    抽出液をアセトン洗浄、シリカゲルクロマトグラフィー
    により精製することを特徴とする糖リン脂質の調製法。
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