JP2773454B2 - 酸化物超電導薄膜を積層する方法 - Google Patents

酸化物超電導薄膜を積層する方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、酸化物超電導薄膜を積
層する方法に関する。より詳細には、一定の配向性を有
する酸化物超電導体結晶で構成された酸化物超電導薄膜
上に、配向性の異なる結晶で構成された酸化物超電導薄
膜を積層する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】酸化物超電導体は、従来の金属系超電導
体に比較して臨界温度が高く、実用性がより高いと考え
られている。例えば、Y−Ba−Cu−O系酸化物超電導体
の臨界温度は80K以上であり、Bi−Sr−Ca−Cu−O系酸
化物超電導体およびTl−Ba−Ca−Cu−O系酸化物超電導
体の臨界温度は 100K以上と発表されている。酸化物超
電導体の超電導特性には結晶異方性があり、特に臨界電
流密度は結晶のc軸に垂直な方向が最も大きい。そのた
め、酸化物超電導体を使用する場合には、結晶方向に注
意を払う必要がある。
【0003】酸化物超電導体を超電導素子、超電導集積
回路等いわゆる超電導エレクトロニクス技術に応用する
場合、一般には酸化物超電導体を薄膜化して使用しなけ
ればならない。酸化物超電導体を薄膜化した場合には、
上記の超電導特性の結晶異方性の問題はより顕著にな
る。また、高性能な超電導素子、超電導集積回路を実現
するためには、基板に平行な方向に電流が流れる超電導
電流路と、基板に垂直な方向に電流が流れる超電導電流
路とが必要となる。例えば、電極等は基板に平行な方向
の電流が流れ、層間配線には基板に垂直な方向の電流が
流れる。従って、酸化物超電導体を超電導素子、超電導
集積回路に使用する場合、基板に平行な方向の臨界電流
密度が高いc軸配向の酸化物超電導薄膜と、基板に垂直
な方向の臨界電流密度が高いa軸配向(またはb軸配
向、以下本明細書ではより一般的なa軸配向に代表させ
て記す)の酸化物超電導薄膜とを作製しなければならな
い。
【0004】多層構造の超電導素子、超電導集積回路を
作製する場合、上記のc軸配向の酸化物超電導薄膜とa
軸配向の酸化物超電導薄膜とを積層する必要がある。酸
化物超電導薄膜を配向性は、成膜温度(一般には成膜時
の基板温度である)で制御される。即ち、a軸配向の酸
化物超電導薄膜を形成する場合には、c軸配向の酸化物
超電導薄膜を形成する場合の基板温度よりも約50〜100
℃低い基板温度で成膜を行えばよい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】一般に複数の薄膜を積
層する場合、下層の薄膜の表面を清浄にしてから上層の
薄膜を成長させる。下層の薄膜の表面を清浄にしない
と、下層の薄膜の表面に堆積した汚染物質、下層の薄膜
の表面に形成された酸化物等により界面において上層の
薄膜と下層の薄膜とが物理的あるいは電気的に不連続と
なってしまう。また、超電導薄膜同士を積層する場合に
は、不必要な弱結合が形成されてしまう。従って、素
子、集積回路の性能が所定の値にならなかったり、動作
しなかったりすることがある。
【0006】特に酸化物超電導体は、コヒーレンス長が
非常に短いので、酸化物超電導薄膜を下層の薄膜として
その上にさらに薄膜を積層する場合には、酸化物超電導
薄膜の表面状態に特に注意を払わなければならない。さ
らに酸化物超電導体結晶中の酸素は、比較的不安定で結
晶中から容易に抜けることがある。酸素を失うと、酸化
物超電導体の超電導特性は極めて低下し、極端な場合に
は超電導性を示さない場合がある。即ち、下層の薄膜と
して使用する酸化物超電導薄膜の表面は、清浄であり、
結晶性、超電導性に優れていることが要求される。
【0007】従来の半導体を使用した素子、集積回路等
では、下層の薄膜の表面を清浄にするために、純水洗
浄、化学洗浄、ドライエッチング、ウェットエッチング
等の方法が使用されていたが、酸化物超電導体は反応性
が高いので上記の各方法は適用できない。酸化物超電導
薄膜の表面を上記の方法で処理すると、酸化物超電導薄
膜の表面で反応が起こり、かえって薄膜表面の清浄性、
結晶性、超電導性が失われてしまう。
【0008】そこで、本発明の目的は、上記従来技術の
問題点を解決した、酸化物超電導薄膜上に、酸化物超電
導薄膜の各種特性を劣化させないで、さらに薄膜を積層
する方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明に従うと、一定の
配向性を有する酸化物超電導体結晶で構成された第1の
酸化物超電導薄膜の上に、前記第1の酸化物超電導薄膜
の酸化物超電導体結晶とは異なる配向性を有する酸化物
超電導体結晶で構成された第2の酸化物超電導薄膜を積
層する方法において、圧力が10 -9 Torr以下である超高真
空中で前記第1の酸化物超電導薄膜の温度を、該酸化物
超電導薄膜を構成する酸化物超電導体に特有の酸素を
り込みやすい状態となる温度以下で、該温度との差が10
0 ℃以内の温度に加熱する熱処理を行った後、該第1の
酸化物超電導薄膜上に第2の酸化物超電導薄膜を成膜す
ることを特徴とする酸化物超電導薄膜を積層する方法が
提供される。
【0010】本発明では、上記第1の酸化物超電導薄膜
が、Y1Ba2Cu37-X酸化物超電導体で構成されている場
合、前記加熱温度が 350〜400 ℃であることが好まし
い。
【0011】
【作用】本発明の方法は、配向性の異なる酸化物超電導
薄膜同士を積層する場合に、下層の酸化物超電導薄膜を
超高真空中で熱処理して、表面を清浄にしてから上層の
酸化物超電導薄膜を積層するところにその主要な特徴が
ある。本発明の方法は、例えば、c軸配向の酸化物超電
導薄膜上に、a軸配向の酸化物超電導薄膜を積層する場
合に適用できる。本発明の方法では、下層の酸化物超電
導薄膜に対して上層の酸化物超電導薄膜を成膜する直前
に上記の熱処理を行う。この熱処理により、下層の酸化
物超電導薄膜の表面に堆積した汚染物質(炭化水素、金
属炭化物)が除去される。また、下層の酸化物超電導薄
膜の表面の結晶性が乱れた部分の結晶性が回復されると
ともに、超電導特性も向上する。
【0012】本発明の方法では、上記の熱処理の際の圧
力は1×10-9Torr以下とすることが好ましい。1×10-9
Torrより高い圧力下では上記の熱処理を行っても効果が
得られない。また、本発明の方法で下層の酸化物超電導
薄膜にY1Ba2Cu37-X酸化物超電導体を使用する場合に
は、上記の熱処理の際の加熱温度を350〜400 ℃とす
る。加熱温度が350 ℃未満では表面の汚染物質が除去さ
れず、加熱温度が400 ℃を越えた場合には薄膜を構成す
る酸化物超電導体結晶中の酸素が失われてしまう。本発
明の方法において、上記の熱処理時間は、圧力および加
熱温度により調整する必要があるが、概ね数分〜数時間
の範囲である。
【0013】本発明の方法に従えば、例えば、空気に触
れるなどして表面が劣化した酸化物超電導薄膜の表面を
清浄にして、その上に配向性の異なる酸化物超電導薄膜
を積層することが可能である。従って、配向性の異なる
酸化物超電導薄膜を、それぞれ異なる成膜装置を使用し
て最適な条件で成膜することが可能であり、従来よりも
特性の優れた積層膜を作製することができる。
【0014】本発明は、任意の酸化物超電導体に適用す
ることが可能であるが、特にY−Ba−Cu−O系酸化物超
電導体、Bi−Sr−Ca−Cu−O系酸化物超電導体、Tl−Ba
−Ca−Cu−O系酸化物超電導体に適用することが好まし
い。これらの酸化物超電導体は、臨界温度を始めとする
各種の超電導特性が現在のところ最も優れているからで
ある。
【0015】以下、本発明を実施例によりさらに詳しく
説明するが、以下の開示は本発明の単なる実施例に過ぎ
ず、本発明の技術的範囲をなんら制限するものではな
い。
【0016】
【実施例】本発明の方法により、c軸配向のY1Ba2Cu3
7-X酸化物超電導薄膜上にa軸配向のY1Ba2Cu37-X
酸化物超電導薄膜を積層した。図1を参照して、本発明
の方法で酸化物超電導薄膜を積層する手順を説明する。
【0017】まず、図1(a)に示すようなMgO(10
0)基板3の表面に、図1(b)に示すよう厚さ 300nmの
c軸配向のY1Ba2Cu37-X酸化物超電導薄膜1をオフア
クシススパッタリング法、レーザアブレーション法、反
応性蒸着法、MBE法、CVD法等の方法で成膜する。
オフアクシススパッタリング法で酸化物超電導薄膜を成
膜する場合の成膜条件を以下に示す。 スパッタリングガス Ar :90% O2 :10% 圧 力 10 Pa 基 板 温 度 700℃
【0018】成膜後、チャンバから取り出すと酸化物超
電導薄膜1の表面は、空気中の水分と反応し、劣化した
部分10が形成される。また、炭化水素、BaCO3 、BaCu
2 等で汚染されている。超高真空チャンバに収容して
1×10-9Torr以下の高真空に排気した後、LEED(低
速電子回折)、QMS(4重極型質量分析計)、XPS
(X線光電子分光)でモニタしながら以下の熱処理を行
ったところ、汚染物質は除去され、図1(c)に示すよう
劣化部分10が消滅し、結晶性の表面が出現した。 圧 力 1×10-9Torr以下 加 熱 温 度 350〜400 ℃(基板温度) 処 理 時 間 10分間
【0019】上記の熱処理により、表面が清浄となった
酸化物超電導薄膜1を超高真空を保ったまま成膜装置に
搬送し、図1(d)に示すよう厚さ200 nmのa軸配向のY1
Ba2Cu37-X酸化物超電導薄膜をオフアクシススパッ
タリング法、レーザアブレーション法、反応性蒸着法、
MBE法、CVD法等の方法で成膜する。オフアクシス
スパッタリング法で酸化物超電導薄膜を成膜する場合の
成膜条件を以下に示す。 上記本発明の方法により作製された積層膜は、下層およ
び上層いずれの薄膜も結晶性が優れているだけでなく、
界面における整合性がよいことがわかった。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に従えば、
配向性の異なる酸化物超電導薄膜を特性を損なわずに積
層する方法が提供される。本発明の方法により作製され
る積層膜は、超電導特性が優れているだけでなく、界面
における整合性も優れている。本発明を超電導素子、超
電導集積回路の作製に応用することにより、従来得られ
なかった高性能な超電導装置が作製可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法で配向性の異なる酸化物超電導薄
膜を積層する工程を説明する図である。
【符号の説明】
1、2 酸化物超電導薄膜 3 基板

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一定の配向性を有する酸化物超電導体結
    晶で構成された第1の酸化物超電導薄膜の上に、前記第
    1の酸化物超電導薄膜の酸化物超電導体結晶とは異なる
    配向性を有する酸化物超電導体結晶で構成された第2の
    酸化物超電導薄膜を積層する方法において、圧力が10 -9
    Torr以下である超高真空中で前記第1の酸化物超電導薄
    膜の温度を、該酸化物超電導薄膜を構成する酸化物超電
    導体に特有の酸素を取り込みやすい状態となる温度以下
    で、該温度との差が100 ℃以内の温度に加熱する熱処理
    を行った後、該第1の酸化物超電導薄膜上に第2の酸化
    物超電導薄膜を成膜することを特徴とする酸化物超電導
    薄膜を積層する方法。
  2. 【請求項2】 前記第1の酸化物超電導薄膜が、Y1Ba2
    Cu37-X酸化物超電導体で構成され、前記加熱温度が 3
    50〜400 ℃であることを特徴とする請求項1に記載の酸
    化物超電導薄膜を積層する方法。
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CA002064362A CA2064362C (en) 1991-03-28 1992-03-27 Improved process for cleaning a surface of thin film of oxide superconductor and utilization thereof
DE69222555T DE69222555T2 (de) 1991-03-28 1992-03-27 Verfahren zur Reinigung einer dünnen Schicht eines Supraleiteroxyd
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