JP2761958B2 - 電磁誘導加熱によるコンクリート構造物の解体工法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 この発明は、RC、SC又はSRC構造のコンクリート構造
物の鉄筋又は鉄骨等の鋼材を誘導電流により発熱させて
加熱し、その周囲のコンクリートを熱劣化及びひび割れ
により脆弱化させて解体する工法に関するものである。

「従来の技術、発明が解決せんとする問題点」 従来、鉄筋コンクリート構造物の解体工法として、ブ
レーカー等によりコンクリート壁を直接的にハツリ破壊
していたが、機械的に破壊するので振動及び騒音が非常
に激しく、また粉塵等も発生することから周囲の環境に
悪影響を与えると共に、その対策設備に多額の費用を要
するため、鋼材に直接通電することにより加熱解体する
工法や、電磁誘導により鋼材を加熱して解体する工法等
が用いられるようになった。

すなわち、直接通電加熱解体工法は、コンクリート構
造物の鋼材に接続電極端子及びケーブルを介して電源と
接続し、電流を通ずることにより鋼材周囲のコンクリー
トを熱劣化させて脆弱化すると共に、急激な温度変化に
よりコンクリートにひび割れを生じさせて脆弱化し、こ
れによって解体するようにしたものである。

しかしながら、この直接通電加熱解体工法において
は、コンクリート構造物を機械的に破壊するものに比べ
て、振動及び騒音は軽減できるが、コンクリート構造物
の鋼材に大電流を通ずるために、接続電極端子に高価な
耐熱性銅合金を大量に使用すると共に、その取付けが煩
わしく、また大電流容量のケーブルを使用しなければな
らならず、さらに電源設備に低電圧大電流の変圧器を必
要とするので、経済的に難があった。

また、電磁誘導加熱解体工法は、コンクリート構造物
の鋼材に両端が開放されたソレノイドによって交番磁界
を発生させ、この交番磁界によって鋼材に生じる渦電流
損による発熱で、同様にコンクリートにひび割れを生じ
させて脆弱化し、これによって破壊解体するようにした
ものである。

しかしながら、この電磁誘導加熱解体工法においては
両端が開放されたソレノイドによって交番磁界を発生さ
せるため、鋼材における誘導電流の発生効率が極めて低
く、使用する電気的損失が非常に大きく、またコイルと
鋼材との距離が十分に小さくないと効果が得られないと
共に、効率を向上するために高周波電源を必要とするの
で作業環境に影響を及ぼし、しかもその設備に多額の費
用を必要とした。

「問題点を解決するための手段」 この発明は前記従来の課題を解決するために、RC、SC
又はSRC構造のコンクリート構造物の外周に、閉ループ
状の鉄芯にコイルを巻き付けたトロイダルコイルを包囲
するように設置し、そのトロイダルコイルに交番電流を
通電することにより、電磁誘導で鋼材を加熱してコンク
リートを脆弱化させて解体するようにした工法を提案す
るものである。

「作用」 コンクリート構造物の解体部の外周上に設置した閉ル
ープ状の鉄芯入りトロイダルコイルに交番電流を通ずる
ことにより、二次側の閉回路を構成した鋼材に誘導電流
が効率的に誘起され、これによって発生した大電流のジ
ュール熱により加熱され、鋼材周囲のコンクリートを熱
劣化させて脆弱化すると共に、急激な温度変化によりコ
ンクリートにひび割れが生じて脆弱化する。

従って、コンクリートを極めて容易に破壊して解体す
ることが可能となる。

「実施例」 以下この発明を図面に示す実施例について説明する
と、この発明に用いるトロイダルコイル１は、円弧型又
は溝型の２分割鉄芯部材をヒンジ２により左右に開閉可
能に組み合わせた円形又は多角形の閉ループ状の鉄芯３
の外周に、コイル４が同一方向に所要回数巻付けられて
おり、そのコイル４の両端はターミナル５に接続されて
いる。

そして、このトロイダルコイル１をヒンジ２において
左右の鉄芯部材を開放した状態でRC、SC又はSRC構造の
コンクリート構造物６の解体部の外周上に包囲させた
後、鉄芯部材を閉じて閉ループ状に設置すると共に、ト
ロイダルコイル１のターミナル５は、リード線７を介し
てジェネレーター８と接続する。

なお、コンクリート構造物６の外周のトロイダルコイ
ル１は、解体部の大小に応じて、交番磁界の同一発生方
向に複数設置してもよい。

このようにして、ジェネレーター８よりリード線７を
介してターミナル５に交番電流を通ずると、閉ループ状
のトロイダルコイル１のコイル４に交番磁界が発生し、
二次側閉回路を構成した鉄筋、鉄骨等の鋼材９に誘導電
流が効率的に誘起されることになる。

鋼材９に誘起された誘導電流は、鋼材９それ自身の抵
抗によりジュール熱を発熱して加熱され、その周囲のコ
ンクリートを熱劣化させて脆弱化すると共に、急激な温
度変化によりコンクリートにひび割れが生じて脆弱化す
る。

この状態で、ハンマーや剥離機材等により脆弱化した
コンクリートを破壊又は剥離して解体する。

「発明の効果」 以上の通りこの発明によれば、この解体工法は、閉ル
ープ状の鉄芯の外周にコイルを同一方向に所要回数巻い
たトロイダルコイルを、コンクリート構造物の外周にこ
れを包囲するように設置し、そのトロイダルコイルに交
番電流を通ずることにより、二次側の閉回路を構成する
鋼材に大きな誘導電流が効率的に誘起されてジュール熱
により充分に加熱されるので、鋼材周囲のコンクリート
を熱劣化し、またひび割れを生じさせて確実に脆弱化さ
せることができる。

そして、トロイダルコイルは、環状鉄芯の中心の穴に
被加熱物である鋼材を通し、この鋼材で二次側の閉回路
を構成するので、ソレノイドコイルに比べて極めて高効
率に大電流を発生させ、電流損失を少なくして充分に鋼
材を加熱することができ、しかも高周波電源を必要とし
ない（使用することも可能）ので、装置が極めて簡単と
なる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明による電磁誘導加熱の実施状態を示す
縦断面図、第２図はこの発明に用いるトロイダルコイル
の一例を示す斜視図、第３図は同他の例を示す斜視図で
ある。 １……トロイダルコイル、２……ヒンジ、 ３……鉄芯、４……コイル、 ５……ターミナル、６……コンクリート構造物 ７……リード線、８……ジェネレーター、 ９……鋼材（鉄筋又は鉄骨）。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】２分割鉄芯部材を組み合わせて円形又は多
   角形の閉ループ状に形成した鉄芯の外周上に、コイルを
   同一方向に所要回数巻き付けてなるトロイダルコイル
   を、RC、SC又はSRC構造のコンクリート構造物の解体部
   の外周を包囲するように設置し、前記トロイダルコイル
   に交番電流を通ずることにより、コンクリート内部の鉄
   筋、鉄骨等の鋼材に誘電電流を誘起させて発生したジュ
   ール熱により加熱し、周囲のコンクリートを脆弱化させ
   て解体することを特徴とする電磁誘導加熱によるコンク
   リート構造物の解体工法。