JP2759743B2 - パルス・レーザー光の周波数シフト方法およびその装置 - Google Patents

パルス・レーザー光の周波数シフト方法およびその装置

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JP2759743B2 JP5234058A JP23405893A JP2759743B2 JP 2759743 B2 JP2759743 B2 JP 2759743B2 JP 5234058 A JP5234058 A JP 5234058A JP 23405893 A JP23405893 A JP 23405893A JP 2759743 B2 JP2759743 B2 JP 2759743B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、パルス・レーザー光の
周波数シフト方法およびその装置に関し、さらに詳細に
は、各種レーザー発振器から出力されるパルス・レーザ
ー光の周波数シフト方法およびその装置に関するもので
あって、例えば、同位体分離において、所望の同位体の
吸収スペクトルにパルス・レーザー光の波長を高精度に
一致させたり、あるいはレーザー・レーダーとして大気
中の物質の微量分子の濃度を測定するために、当該大気
中の物質の吸収スペクトルにパルス・レーザー光の波長
を高精度に一致させたりするなどの際に用いて好適な、
パルス・レーザー光の周波数シフト方法およびその装置
に関する。
【0002】
【発明の背景および発明が解決しようとする課題】同位
体の分離方法においては、所望の同位体の吸収スペクト
ルにパルス・レーザー光の波長を一致させ、当該所望の
同位体のみを選択励起して分離する方法が知られてい
る。
【0003】こうしたパルス・レーザーを用いた同位体
の分離方法において、例えば、UF6(6フッ化ウラ
ン)から同位体として235UF6を分離するために、パル
ス・レーザーとして代表的なCO2レーザーが用いられ
る。
【0004】ところが、大気圧動作CO2レーザーは約
9μm乃至11μmの波長域に渡って100本以上の発
振線を有しているが、通常はこれらの発振線は離散的に
分布し、しかもこれらの発振線の中心波長近傍でしか発
振しないという性質を備えているものであった。
【0005】このため、レーザー媒質(CO2ガス)の
圧力を5気圧から10気圧に高めた高気圧CO2レーザ
ーを用いることが提案されている。
【0006】即ち、レーザー媒質(CO2ガス)の圧力
を5気圧から10気圧に高めた高気圧CO2レーザーに
おいては、利得の圧力拡がりにより連続的に波長を変化
させることができるようになるので、波長選択素子たる
回折格子を用いて、所望の波長のパルス・レーザー光を
得るようにすれば良いものであった。
【0007】しかしながら、このように波長選択素子と
して回折格子を用いる場合には、回折格子自体の分解能
が低いため、多くの共振器縦モードで高気圧CO2レー
ザーが発振し、スペクトル幅は数GHzにまで広がって
しまうようになり、所望の同位体のみを選択励起するこ
とが困難であるという問題点があった。
【0008】一方、ライン幅の狭帯域化を図り、上記し
たような問題点を解決するために、注入同期法により単
一縦モード発振を行わせることが一般的に知られている
が、注入同期法における注入レーザー光を発生するCW
(連続波)−CO2レーザーも、上記と同様に離散的に
しか波長を選択できないため、高気圧CO2レーザーに
おける波長の連続的可変性と単一縦モード発振とを同時
に実現することはできないという問題点が存在してい
た。
【0009】なお、大気圧動作CO2レーザーにおいて
も、注入同期による単一縦モード発振は中心波長付近に
限られているものであった。
【0010】さらに、離散的に分布する発振線の中心波
長以外で注入同期を行うため、CO2の同位体混合ガス
やN2Oをレーザー媒質とした注入レーザー光発振器が
用いられているが、これらとても離散的にしか波長を選
択できなかった。
【0011】さらにまた、注入レーザー光の波長を連続
的に変化させるために、電気光学素子からなるモジュレ
ーターを用いて波長をシフトさせることも提案されてい
るが、任意のシフト幅および可変幅を得ることが困難な
だけでなく、モジュレーターの駆動用ドライバーを選択
する波長に応じて種々用意する必要があるなどのため
に、装置が複雑かつ大型化し、実用化には極めて大きな
問題点があった。
【0012】即ち、従来の高気圧CO2レーザーなど
は、基本的には連続的に波長を変化することができるに
もかかわらず、注入レーザー光を離散的にしか波長選択
できないため、出力パルス・レーザー光も離散的にしか
単一縦モード化できないことになり、出力パルス・レー
ザー光の波長可変性が、注入レーザー光の波長可変性に
制限されてしまうという問題点があった。
【0013】本発明は、従来の技術の有するこのような
問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とすると
ころは、連続的に波長を変化することのできるパルス・
レーザーを注入同期法によりそのスペクトルを狭帯域化
したまま、任意の周波数にシフトすることができるよう
にしたパルス・レーザー光の周波数シフト方法およびそ
の装置を提供しようとするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明のうち請求項1に記載のパルス・レーザー光
の周波数シフト装置は、後方反射鏡と出力取り出し鏡と
を有してなる主共振器の間にパルス・レーザー放電部を
配置したパルス・レーザー発振器と、前記後方反射鏡を
介して前記パルス・レーザー発振器内に、所定の偏光状
態に制御された注入レーザー光を入射する注入レーザー
発振器と、前記主共振器内のパルス・レーザー光の光路
上に配置され、前記注入レーザー光に依存して前記所定
の偏光状態に制御されたパルス・レーザー光の偏光を、
他の偏光状態に変化させることのできる偏光制御装置
と、前記主共振器内のパルス・レーザー光の光路上に配
置され、前記所定の偏光状態と前記他の偏光状態とに応
じてパルス・レーザー光を透過あるいは反射する選択装
置と、前記選択装置によって反射されたパルス・レーザ
ー光の光路上に配置され、前記選択装置によって反射さ
れたパルス・レーザー光の周波数をシフトする周波数シ
フト装置と、前記周波数シフト装置から出射されたパル
ス・レーザー光を反射して前記主共振器内のパルス・レ
ーザー光の光路に戻す反射鏡と前記後方反射鏡とを有し
てなり、前記反射鏡と前記後方反射鏡との間に前記周波
数シフト装置が配置される副共振器とを有するようにし
たものである。また、本発明のうち請求項2に記載のパ
ルス・レーザー光の周波数シフト方法は、請求項1記載
のパルス・レーザー光の周波数シフト装置において、前
記偏光制御装置によりパルス・レーザー光の偏光を前記
所定の偏光状態と前記他の偏光状態とに選択的に変化さ
せ、前記変化に応じて前記選択装置によりパルス・レー
ザー光を透過あるいは反射させ、前記選択装置がパルス
・レーザー光を透過するときに、前記主共振器にパルス
・レーザー光を移動させて前記主共振器によりパルス・
レーザー光を成長させるとともに、前記選択装置がパル
ス・レーザー光を反射するときに、前記副共振器にパル
ス・レーザー光を移動させて前記副共振器の間に配置さ
れた前記周波数シフト装置によりパルス・レーザー光の
周波数シフトを行い、前記偏光制御装置によるパルス・
レーザー光の偏光状態の選択的な変化に応じて前記主共
振器と前記副共振器との間でパルス・レーザー光を移動
させ、前記偏光制御装置による前記副共振器へのパルス
・レーザー光の移動の制御により、パルス・レーザー光
が前記副共振器内における前記周波数シフト装置を通過
する回数を制御して周波数シフト量を可変するようにし
たものである。
【0015】さらに、本発明のうち請求項3に記載のパ
ルス・レーザー光の周波数シフト装置は、後方反射鏡と
出力取り出し鏡とを有してなる主共振器の間にパルス・
レーザー放電部を配置したパルス・レーザー発振器と、
前記後方反射鏡を介して前記パルス・レーザー発振器内
に、所定の偏光状態に制御された注入レーザー光を入射
する注入レーザー発振器と、前記主共振器内のパルス・
レーザー光の光路上に配置され、前記注入レーザー光に
依存して前記所定の偏光状態に制御されたパルス・レー
ザー光の偏光を、他の偏光状態に変化させることのでき
る偏光制御装置と、前記主共振器内のパルス・レーザー
光の光路上に配置され、前記所定の偏光状態と前記他の
偏光状態とに応じて、パルス・レーザー光の光軸を屈折
することなく透過するか、パルス・レーザー光の光軸を
屈折するとともに周波数シフトして透過する音響光学素
子と、前記音響光学素子から透過された光軸を屈折する
とともに周波数シフトされたパルス・レーザー光を反射
して前記主共振器内のパルス・レーザー光の光路に戻す
反射鏡と前記後方反射鏡とを有してなり、前記反射鏡と
前記後方反射鏡との間に前記音響光学素子が配置される
副共振器とを有するようにしたものである。さらにま
た、本発明のうち請求項4に記載のパルス・レーザー光
の周波数シフト方法は、請求項3記載のパルス・レーザ
ー光の周波数シフト装置において、前記偏光制御装置に
よりパルス・レーザー光の偏光を前記所定の偏光状態と
前記他の偏光状態とに選択的に変化させ、前記変化に応
じて前記音響光学素子によりパルス・レーザー光の光軸
を屈折することなく透過するか、あるいはパルス・レー
ザー光の光軸を屈折するとともに周波数シフトして透過
させ、前記音響光学素子がパルス・レーザー光の光軸を
屈折することなく透過するときに、前記主共振器にパル
ス・レーザー光を移動させて前記主共振器によりパルス
・レーザー光を成長させるとともに、前記音響光学素子
がパルス・レーザー光の光軸を屈折するとともに周波数
シフトして透過するときに、前記副共振器にパルス・レ
ーザー光を移動させて前記副共振器の間に配置された前
記音響光学素子によりパルス・レーザー光の周波数シフ
トを行い、前記偏光制御装置によるパルス・レーザー光
の偏光状態の選択的な変化に応じて前記主共振器と前記
副共振器との間でパルス・レーザー光を移動させ、前記
偏光制御装置による前記副共振器へのパルス・レーザー
光の移動の制御により、パルス・レーザー光が前記副共
振器内における前記音響光学素子を通過する回数を制御
して周波数シフト量を可変するようにしたものである。
【0016】
【作用】本発明のうち請求項2または請求項4に記載の
パルス・レーザー光の周波数シフト方法によれば、注入
レーザー光が後方反射鏡の後方からパルス・レーザー発
振器内に入射されると、後方反射鏡と出力取り出し鏡と
を有して構成される主共振器内で反射を繰り返し、パル
ス・レーザー光が注入同期法により単一縦モードで成長
することになる。そして、偏光制御装置によるパルス・
レーザー光の偏光状態の選択的な変化に応じて主共振器
と副共振器との間でパルス・レーザー光を移動させ、偏
光制御装置による副共振器へのパルス・レーザー光の移
動の制御により、パルス・レーザー光が副共振器内にお
ける周波数シフト装置または音響光学素子を通過する回
数を制御して周波数シフト量を可変する。こうして、成
長しつつあるパルス・レーザー光の周波数をシフトした
後に、出力取り出し鏡から出射させる。
【0017】即ち、パルスCO2レーザーを代表するエ
ネルギー蓄積型レーザーは、レーザー光の立ち上がりに
数100nsから数μs程度を要するので、この間にパ
ルス・レーザー光の周波数をシフトさせ、その後に出力
取り出し鏡から出射させることができる。
【0018】また、本発明のうち請求項1に記載のパル
ス・レーザー光の周波数シフト装置によれば、注入レー
ザー発振器によって、注入レーザー光が後方反射鏡の後
方からパルス・レーザー発振器内に入射されると、後方
反射鏡と出力取り出し鏡とを有して構成される主共振器
内で反射を繰り返し、パルス・レーザー光が注入同期法
により単一縦モードで成長することになる。
【0019】そして、パルス・レーザー光が単一縦モー
ドで成長しつつあるときに、偏光制御装置によりパルス
・レーザー光の偏光状態を変化させて、選択装置により
パルス・レーザー光を反射させて副共振器内の周波数シ
フト装置に導入する。即ち、偏光制御装置によるパルス
・レーザー光の偏光状態の選択的な変化に応じて主共振
器と副共振器との間でパルス・レーザー光を移動させ、
偏光制御装置による副共振器へのパルス・レーザー光の
移動の制御により、パルス・レーザー光が副共振器内に
おける周波数シフト装置に導入される。周波数シフト装
置に導入されたパルス・レーザー光は、周波数シフト装
置により周波数がシフトされた後に、反射鏡によってパ
ルス・レーザー発振器の光路に戻される。そして、パル
ス・レーザー発振器の光路に戻されて増幅されたパルス
・レーザー光が、偏光制御装置および選択装置を介して
再び周波数シフト装置に導入され、周波数がシフトされ
ることになる。このようにして、パルス・レーザー光が
周波数シフト装置を通過する毎にその周波数がシフトさ
れ続ける。
【0020】そして、周波数シフト装置によって所望の
周波数にシフトされたパルス・レーザー光は、偏光制御
装置によりパルス・レーザー光の偏光状態をもとに戻す
ことにより、選択装置を透過して再び主共振器の出力取
り出し鏡に戻されて、出力取り出し鏡からパルス・レー
ザー光として出射される。
【0021】従って、波長可変パルス・レーザー光を注
入同期法によりそのスペクトルを狭帯域化したまま、周
波数シフト装置を往復させる回数を制御することによ
り、任意の周波数にシフトさせたパルス・レーザー光を
出射させることができる。また、本発明のうち請求項3
に記載のパルス・レーザー光の周波数シフト装置によれ
ば、選択装置と周波数シフト装置との機能を音響光学素
子により達成するようにしたので、全体の装置構成を簡
潔化することができるようになる。
【0022】
【実施例】以下、図面に基づいて、本発明によるパルス
・レーザー光の周波数シフト方法およびその装置の実施
例を詳細に説明するものとする。
【0023】図1は、本発明の一実施例によるパルス・
レーザー光の周波数シフト装置の概略構成を示す平面図
である。
【0024】パルス・レーザー光の周波数シフト装置
は、後方反射鏡10と出力取り出し鏡12とにより構成
された主共振器14の間に、レーザー媒質となるCO2
ガスを封入したパルスCO2レーザー放電部16を配設
しており、注入同期法における注入レーザー光を生成す
るためのレーザー発振器たる連続動作CO2レーザ発振
器18から出射された注入レーザー光が、平面鏡20、
22を介して後方反射鏡14の後方から入射されて、主
共振器14内に導入されるようになされている。
【0025】ここにおいて、後方反射鏡10は約5%程
度の透過性を有するとともに、約95%の反射性を有す
るものであり、出力取出し鏡12は約30%〜80%の
反射性を有するものである。
【0026】また、主共振器14のパルスCO2レーザ
ー放電部16と出力取り出し鏡12との間の光路の光軸
上には、駆動回路24により電圧が印加されると、パル
スCO2レーザー放電部16から出力されるパルス・レ
ーザー光の直線偏光を90度回転させるポッケルス・セ
ル26と、パルス・レーザー光の直線偏光の偏光の状態
に基づいて、パルス・レーザー光を透過あるいは反射さ
せる薄膜ポラライザー28とが設置されている。
【0027】即ち、ポッケルス・セル26は、駆動回路
24により電圧を印加されていない状態においては、図
1の紙面に対して水平方向に直線偏光されたパルス・レ
ーザー光をそのまま透過するものであるが、駆動回路2
4により電圧を印加された状態においては、パルス・レ
ーザー光を図1の紙面に対して垂直方向に直線偏光させ
て透過するものである。
【0028】そして、薄膜ポラライザー28は、図1の
紙面に対して水平方向に直線偏光されたパルス・レーザ
ー光をそのまま透過するとともに、図1の紙面に対して
垂直方向に直線偏光されたパルス・レーザー光を反射す
るものである。
【0029】さらに、薄膜ポラライザー28によって反
射されたパルス・レーザー光の光路の光軸上には、入力
されたパルス・レーザー光の周波数をシフトさせる音響
光学素子30と、音響光学素子30から周波数シフトさ
れて出力されたパルス・レーザーを全反射する全反射鏡
32とが配設されている。
【0030】一般に音響光学素子は偏光依存性があり、
通過するパルス・レーザーの偏光の状態に応じて、当該
パルス・レーザー光が一回通過すると、当該パルス・レ
ーザー光の周波数を所定量(一般には、40MHz〜1
00MHz程度)シフトさせるとともに当該パルス・レ
ーザー光の光路の光軸を所定角度屈折したり、あるいは
周波数のシフトも光路の光軸の屈折も行わずに透過した
りするものである。
【0031】この第一の実施例における音響光学素子3
0は、図1の紙面に対して垂直方向に直線偏光されたパ
ルス・レーザー光に関しては、当該パルス・レーザー光
の周波数をシフトさせるとともに、当該パルス・レーザ
ー光の光路の光軸を所定角度屈折させるものとする。
【0032】そして、上記した後方反射鏡10と、薄膜
ポラライザー28によって反射されるとともに音響光学
素子30によって周波数シフトされたパルス・レーザー
光を全反射する全反射鏡32との間で、副共振器34が
構成されることになる。
【0033】以上の構成において、図1の紙面に対して
水平方向に直線偏光された注入レーザー光Aが出射され
るように、連続動作CO2レーザ発振器18を制御する
ものとする。また、ポッケルス・セル26は、駆動回路
24により電圧を印加されていないものとする。
【0034】図1の紙面に対して水平方向に直線偏光さ
れた注入レーザー光Aが出射されるように連続動作CO
2レーザ発振器18を制御すると、連続動作CO2レーザ
発振器18から図1の紙面に対して水平方向に直線偏光
された注入レーザー光Aが出射されるようになり、平面
鏡20、22を介して後方反射鏡10の後方から主共振
器14内の光路の光軸上に導入されることになる。
【0035】ここにおいて、パルスCO2レーザー放電
部18においてレーザー発振されるパルス・レーザー光
の偏光は、注入レーザー光Aに依存するため、図1の紙
面に対して水平方向に直線偏光されたものとなる。
【0036】従って、パルスCO2レーザー放電部18
から出射されたパルス・レーザー光は、ポッケルス・セ
ル26および薄膜ポラライザー28を透過して、主共振
器14のみで反射を繰り返し、通常の注入同期法により
単一縦モードのパルス・レーザー光が成長されることに
なる。
【0037】ここにおいて、ポッケルス・セル26に駆
動回路24から電圧が印加されると、主共振器14にお
いて注入同期により単一縦モードで成長されつつあるパ
ルス・レーザー光は、ポッケルス・セル26により図1
の紙面に対して垂直方向に直線偏光されることになる。
このため、薄膜ポラライザー28により反射されて主共
振器14から副共振器34に光路が移動する。即ち、パ
ルス・レーザー光は、後方反射鏡10と全反射鏡32と
の間を往復することになる。
【0038】副共振器34においては、パルス・レーザ
ー光が音響光学素子30を通過する毎にその周波数がシ
フトされることになる。
【0039】そして、パルス・レーザー光が音響光学素
子30を複数回通過することによって周波数のシフト量
が積算されて、パルス・レーザー光の周波数が所望の周
波数になると、ポッケルス・セル26に印加した電圧を
オフにすることにより、ポッケルス・セル26において
直線偏光が90度回転されなくなるので、薄膜ポラライ
ザー28に到達するパルス・レーザー光は、図1の紙面
に対して水平方向に直線偏光されたものとなる。
【0040】従って、薄膜ポラライザー28に到達した
パルス・レーザー光は、薄膜ポラライザー28を透過し
て出力取り出し鏡に到達して、出力取り出し鏡から所望
の周波数のパルス・レーザー光Bが出力されることにな
る。
【0041】なお、CO2レーザ光の周波数は長波長な
ので、音響光学素子30を一回通過する毎の周波数シフ
ト量は約40MHzが限度であるが、パルス・レーザー
光を副共振器34内で反射させて、音響光学素子30を
20往復程度通過させることにより、原理的には1.6
GHzの周波数シフト量を得ることができる。
【0042】即ち、パルスCO2レーザーを代表するエ
ネルギー蓄積型レーザーは、レーザー光の立ち上がりに
数100nsから数μs程度を要するので、この期間の
間、ポッケルス・セル26に電圧を印加して、薄膜ポラ
ライザー28を介して音響光学素子30にパルス・レー
ザー光を通過させることにより、パルス・レーザー光の
周波数をシフトさせるものである。
【0043】さらにより大きな周波数シフトを実現した
い場合においては、パルス・レーザー光強度が飽和領域
に達するまでの間は、自由に副共振器34内を往復させ
ることができるので、上記飽和領域に達するまでの範囲
でパルス・レーザー光を副共振器34内で往復させるこ
とにより、その周波数シフト量は副共振器34内を往復
する毎に積算されて、大幅な周波数シフトを実現するこ
とが可能となる。
【0044】また、そのパルス・レーザー光が副共振器
34内を往復する回数を制御することにより周波数のシ
フト量を任意に設定することができる。
【0045】ここにおいて、音響光学素子30を一回通
過する毎の周波数シフト量をfaとし、副共振器34内
をパルス・レーザー光が往復する回数をnとすると、積
算された周波数シフト量δFは、 δF=2nfa により求められる。
【0046】図2は、本発明の第二の実施例によるパル
ス・レーザー光の周波数シフト装置の概略構成を示す平
面図である。なお、図1に示した第一の実施例と同一あ
るいは相当する構成に関しては、同一の符号を付して示
すことにより、構成および作用の詳細な説明は省略す
る。
【0047】この第二の実施例においては、第一の実施
例から薄膜ポラライザー28を取り除き、薄膜ポラライ
ザーの作用を音響光学素子30により達成させるように
して、構成の簡潔化を図った点において、第一の実施例
と異なるものである。
【0048】即ち、図2に示すように、薄膜ポラライザ
ー28に換えて音響光学素子30を配置すると、図1の
紙面に対して水平な直線偏光のパルス・レーザー光が通
過する際には、当該パルス・レーザー光に関しては、周
波数のシフトおよび光軸の屈折を行うことなく、そのま
まの状態で透過させる。
【0049】一方、図1の紙面に対して垂直な直線偏光
のパルス・レーザー光が通過する際には、当該パルス・
レーザー光に関しては、周波数のシフトを行うとともに
光軸の屈折を行うことになる。
【0050】従って、駆動回路24によりポッケルス・
セル26への電圧の印加を制御すると、第一の実施例と
同様な作用を達成することができ、しかも構成を簡潔化
することができる。
【0051】なお、上記各実施例においては、音響光学
素子によりパルス・レーザー光の周波数をシフトするよ
うにしたが、これに限られることなしに、電気光学素子
を用いて周波数をシフトするようにしても良いことは勿
論である。
【0052】
【発明の効果】本発明は、以上説明したように構成され
ているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0053】本発明のうち請求項2または請求項4に記
載のパルス・レーザー光の周波数シフト方法によれば、
注入レーザー光が後方反射鏡の後方からパルス・レーザ
ー発振器内に入射されると、後方反射鏡と出力取り出し
鏡とを有して構成される主共振器内で反射を繰り返し、
パルス・レーザー光が注入同期法により単一縦モードで
成長することになり、偏光制御装置によるパルス・レー
ザー光の偏光状態の選択的な変化に応じて主共振器と副
共振器との間でパルス・レーザー光を移動させ、偏光制
御装置による副共振器へのパルス・レーザー光の移動の
制御により、パルス・レーザー光が副共振器内における
周波数シフト装置または音響光学素子を通過する回数を
制御して周波数シフト量を可変することになって、この
ようにして成長しつつあるパルス・レーザー光の周波数
をシフトした後に、出力取り出し鏡から出射させること
ができる。
【0054】即ち、パルスCO2レーザーを代表するエ
ネルギー蓄積型レーザーは、レーザー光の立ち上がりに
数100nsから数μs程度を要するので、この間にパ
ルス・レーザー光の周波数をシフトさせ、その後に出力
取り出し鏡から出射させることができるようになる。
【0055】また、本発明のうち請求項1に記載のパル
ス・レーザー光の周波数シフト装置によれば、後方反射
鏡と出力取り出し鏡とを有してなる主共振器の間にパル
ス・レーザー放電部を配置したパルス・レーザー発振器
と、前記後方反射鏡を介して前記パルス・レーザー発振
器内に、所定の偏光状態に制御された注入レーザー光を
入射する注入レーザー発振器と、前記主共振器内のパル
ス・レーザー光の光路上に配置され、前記注入レーザー
光に依存して前記所定の偏光状態に制御されたパルス・
レーザー光の偏光を、他の偏光状態に変化させることの
できる偏光制御装置と、前記主共振器内のパルス・レー
ザー光の光路上に配置され、前記所定の偏光状態と前記
他の偏光状態とに応じてパルス・レーザー光を透過ある
いは反射する選択装置と、前記選択装置によって反射さ
れたパルス・レーザー光の光路上に配置され、前記選択
装置によって反射されたパルス・レーザー光の周波数を
シフトする周波数シフト装置と、前記周波数シフト装置
から出射されたパルス・レーザー光を反射して前記主共
振器内のパルス・レーザー光の光路に戻す反射鏡と前記
後方反射鏡とを有してなり、前記反射鏡と前記後方反射
鏡との間に前記周波数シフト装置が配置される副共振器
とを有するようにしたため、注入レーザー発振器によっ
て、注入レーザー光が後方反射鏡の後方からパルス・レ
ーザー発振器内に入射されると、後方反射鏡と出力取り
出し鏡とを有して構成される主共振器内で反射を繰り返
し、パルス・レーザー光が注入同期法により単一縦モー
ドで成長することになる。
【0056】そして、パルス・レーザー光が単一縦モー
ドで成長しつつあるときに、偏光制御装置によるパルス
・レーザー光の偏光状態の選択的な変化に応じて主共振
器と副共振器との間でパルス・レーザー光を移動させ、
偏光制御装置による副共振器へのパルス・レーザー光の
移動の制御により、パルス・レーザー光が副共振器内に
おける周波数シフト装置に導入されると、周波数シフト
装置に導入されたパルス・レーザー光は、周波数シフト
装置により周波数がシフトされた後に、反射鏡によって
パルス・レーザー発振器の光路に戻される。そして、パ
ルス・レーザー発振器の光路に戻されて増幅されたパル
ス・レーザー光が、偏光制御装置および選択装置を介し
て再び周波数シフト装置に導入され、周波数がシフトさ
れることになる。このようにして、パルス・レーザー光
が周波数シフト装置を通過する毎にその周波数がシフト
され続ける。
【0057】そして、周波数シフト装置によって所望の
周波数にシフトされたパルス・レーザー光は、偏光制御
装置によりパルス・レーザー光の偏光状態をもとに戻す
ことにより、選択装置を透過して再び主共振器の出力取
り出し鏡に戻されて、出力取り出し鏡からパルス・レー
ザー光として出射することができる。
【0058】従って、本発明のうち請求項1に記載のパ
ルス・レーザー光の周波数シフト装置によれば、波長可
変パルス・レーザー光を注入同期法によりそのスペクト
ルを狭帯域化したまま、周波数シフト装置を往復させる
回数を制御することにより、任意の周波数にシフトさせ
たパルス・レーザー光を出射させることができるように
なる。また、本発明のうち請求項3に記載のパルス・レ
ーザー光の周波数シフト装置によれば、選択装置と周波
数シフト装置との機能を音響光学素子により達成するよ
うにしたので、全体の装置構成を簡潔化することができ
るようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるパルス・レーザー光の周波数シフ
ト装置の第一の実施例を示す概略平面図である。
【図2】本発明によるパルス・レーザー光の周波数シフ
ト装置の第二の実施例を示す概略平面図である。
【符号の説明】
10 後方反射鏡 12 出力取り出し鏡 14 主共振器 16 パルスCO2レーザー放電部 18 連続動作CO2レーザー発振器 20 平面鏡 22 平面鏡 24 駆動回路 26 ポッケルス・セル 28 薄膜ポラライザー 30 音響光学素子 32 全反射鏡 34 副共振器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) H01S 3/117

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 後方反射鏡と出力取り出し鏡とを有して
    なる主共振器の間にパルス・レーザー放電部を配置した
    パルス・レーザー発振器と、 前記後方反射鏡を介して前記パルス・レーザー発振器内
    に、所定の偏光状態に制御された注入レーザー光を入射
    する注入レーザー発振器と、 前記主共振器内のパルス・レーザー光の光路上に配置さ
    れ、前記注入レーザー光に依存して前記所定の偏光状態
    に制御されたパルス・レーザー光の偏光を、他の偏光状
    態に変化させることのできる偏光制御装置と、 前記主共振器内のパルス・レーザー光の光路上に配置さ
    れ、前記所定の偏光状態と前記他の偏光状態とに応じて
    パルス・レーザー光を透過あるいは反射する選択装置
    と、 前記選択装置によって反射されたパルス・レーザー光の
    光路上に配置され、前記選択装置によって反射されたパ
    ルス・レーザー光の周波数をシフトする周波数シフト装
    置と、 前記周波数シフト装置から出射されたパルス・レーザー
    光を反射して前記主共振器内のパルス・レーザー光の光
    路に戻す反射鏡と前記後方反射鏡とを有してなり、前記
    反射鏡と前記後方反射鏡との間に前記周波数シフト装置
    が配置される副共振器とを有することを特徴とするパル
    ス・レーザー光の周波数シフト装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のパルス・レーザー光の周
    波数シフト装置において、 前記偏光制御装置によりパルス・レーザー光の偏光を前
    記所定の偏光状態と前記他の偏光状態とに選択的に変化
    させ、 前記変化に応じて前記選択装置によりパルス・レーザー
    光を透過あるいは反射させ、 前記選択装置がパルス・レーザー光を透過するときに、
    前記主共振器にパルス・レーザー光を移動させて前記主
    共振器によりパルス・レーザー光を成長させるととも
    に、前記選択装置がパルス・レーザー光を反射するとき
    に、前記副共振器にパルス・レーザー光を移動させて前
    記副共振器の間に配置された前記周波数シフト装置によ
    りパルス・レーザー光の周波数シフトを行い、 前記偏光制御装置によるパルス・レーザー光の偏光状態
    の選択的な変化に応じて前記主共振器と前記副共振器と
    の間でパルス・レーザー光を移動させ、前記偏光制御装
    置による前記副共振器へのパルス・レーザー光の移動の
    制御により、パルス・レーザー光が前記副共振器内にお
    ける前記周波数シフト装置を通過する回数を制御して周
    波数シフト量を可変することを特徴とするパルス・レー
    ザー光の周波数シフト方法。
  3. 【請求項3】 後方反射鏡と出力取り出し鏡とを有して
    なる主共振器の間にパルス・レーザー放電部を配置した
    パルス・レーザー発振器と、 前記後方反射鏡を介して前記パルス・レーザー発振器内
    に、所定の偏光状態に制御された注入レーザー光を入射
    する注入レーザー発振器と、 前記主共振器内のパルス・レーザー光の光路上に配置さ
    れ、前記注入レーザー光に依存して前記所定の偏光状態
    に制御されたパルス・レーザー光の偏光を、他の偏光状
    態に変化させることのできる偏光制御装置と、 前記主共振器内のパルス・レーザー光の光路上に配置さ
    れ、前記所定の偏光状態と前記他の偏光状態とに応じ
    て、パルス・レーザー光の光軸を屈折することなく透過
    するか、パルス・レーザー光の光軸を屈折するとともに
    周波数シフトして透過する音響光学素子と、 前記音響光学素子から透過された光軸を屈折するととも
    に周波数シフトされたパルス・レーザー光を反射して前
    記主共振器内のパルス・レーザー光の光路に戻す反射鏡
    と前記後方反射鏡とを有してなり、前記反射鏡と前記後
    方反射鏡との間に前記音響光学素子が配置される副共振
    器とを有することを特徴とするパルス・レーザー光の周
    波数シフト装置。
  4. 【請求項4】 請求項3記載のパルス・レーザー光の周
    波数シフト装置において、 前記偏光制御装置によりパルス・レーザー光の偏光を前
    記所定の偏光状態と前記他の偏光状態とに選択的に変化
    させ、 前記変化に応じて前記音響光学素子によりパルス・レー
    ザー光の光軸を屈折することなく透過するか、あるいは
    パルス・レーザー光の光軸を屈折するとともに周波数シ
    フトして透過させ、 前記音響光学素子がパルス・レーザー光の光軸を屈折す
    ることなく透過するときに、前記主共振器にパルス・レ
    ーザー光を移動させて前記主共振器によりパルス・レー
    ザー光を成長させるとともに、前記音響光学素子がパル
    ス・レーザー光の光軸を屈折するとともに周波数シフト
    して透過するときに、前記副共振器にパルス・レーザー
    光を移動させて前記副共振器の間に配置された前記音響
    光学素子によりパルス・レーザー光の周波数シフトを行
    い、 前記偏光制御装置によるパルス・レーザー光の偏光状態
    の選択的な変化に応じて前記主共振器と前記副共振器と
    の間でパルス・レーザー光を移動させ、前記偏光制御装
    置による前記副共振器へのパルス・レーザー光の移動の
    制御により、パルス・レーザー光が前記副共振器内にお
    ける前記音響光学素子を通過する回数を制御して周波数
    シフト量を可変することを特徴とするパルス・レーザー
    光の周波数シフト方法。
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