JP2759362B2 - 電磁力バルブ駆動装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、エンジンの同一シリンダに配設された複数
の吸気バルブ及び排気バルブを電磁力により開閉駆動す
る電磁力バルブ駆動装置に関する。

（従来の技術） 従来の吸、排気バルブの開閉駆動装置は、エンジン回
転位相と同期して回転するカムシャフトのカム面からロ
ッカーアームやプッシュロッド等の動弁機構を介してバ
ルブの軸端面を押すことにより、常時スプリングにより
閉方向にバイアスされている吸、排気バルブを開閉駆動
するものである。該開閉駆動装置は、カムシャフト及び
リンク機構をエンジンに付設せねばならず、そのためエ
ンジンが大型化し、カムシャフト及び動弁機構を駆動す
る際の摩擦抵抗によりエンジン出力の一部が消費され、
エンジンの実効出力が低下する。またエンジン運転中に
吸、排気バルブの開閉タイミングを変更できないので、
所定のエンジン回転数に合わせてバルブ開閉タイミング
を調整しなければならない。よって、該所定の回転数と
異なる回転数での運転時にはエンジンの出力及び効率が
低下するという問題がある。

そこで、上記問題を解決するために、吸、排気バルブ
の開閉駆動をカムシャフトによらず、吸、排気バルブに
付設した磁性体を該吸排気バルブの移動方向に配設した
電磁石により吸引し、該吸引力によって吸、排気バルブ
を駆動する装置が、特開昭58-183805号公報、あるいは
特開昭61-76713号公報に記載されている。

（発明が解決しようとする課題） しかし、磁性体に作用する吸引力は電磁石と磁性体と
の間隔の二乗に反比例するため、上記２公報により開示
された装置では該間隔の変化に伴ない吸引力が変化し
吸、排気バルブの駆動が不安定になるという問題があ
る。また、駆動開始時には吸、排気バルブに対し強力な
加速力を与えなければならないが、上記２公報により開
示された装置は駆動開始時における、電磁石と磁性体と
の間隔が最大となり、よって吸、排気バルブに対して最
小の駆動力しか作用させることができない。更に、同一
シリンダに複数の吸気バルブあるいは複数の排気バルブ
が配設される場合について記載されておらず、上記開示
された装置を単に複数個並設するだけでは吸、排気バル
ブの取付けピッチが拡張し同一シリンダに複数の吸、排
気バルブを設置できないという問題がある。

本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、吸排気
バルブに作用する駆動力が吸、排気バルブの移動による
影響を受けず安定して吸、排気バルブの開閉制御を行な
い、かつ、駆動開始時には吸、排気バルブに強力な駆動
力を作用させ、更に、同一シリンダに配設された複数の
吸、排気バルブを駆動することのできる電磁力バルブ駆
動装置を提供しようとするものである。

（課題を解決するための手段） 本発明によれば、エンジンの同一シリンダに配設され
た複数の吸気バルブの各々に連結され往復運動自在な複
数の可動磁極と、該可動磁極の側面部と対向し該可動磁
極の往復方向に並設された複数の固定磁極と、該固定磁
極に捲設され上記可動磁極の往復運動時に該運動方向の
進行磁界を形成する励磁コイルと、上記各可動磁極側面
の固定磁極との対向位置に周設され２次コイルと、上記
励磁コイルへの通電状態を制御し吸気バルブを開閉駆動
せしめる制御手段とを有することを特徴とする電磁力バ
ルブ駆動装置を提供できる。

また本発明は、上記複数の吸気バルブに代えて複数の
排気バルブを開閉することもでき、さらに往復方向に移
動自在であり各可動磁極の端面と当接する可動磁性板
と、該可動磁性板を吸引し各可動磁極の端面に当接させ
吸気バルブを駆動せしめる電磁石とを有する電磁力バル
ブ駆動装置を提供することもできる。

（作用） 本発明の電磁力バルブ駆動装置では、同一シリンダに
接近して配設された複数個の吸気バルブもしくは複数個
の排気バルブの各々に連結される２次コイルに、固定磁
極からの進行磁界により発生する誘導電流が、該進行磁
界から受る電磁力により吸、排気バルブを往復駆動する
ので、吸排気バルブの位置が変化しても駆動力は変化せ
ず、従って、安定した開閉制御を行なうことができる。
また、初期駆動時には電磁石で吸、排気バルブの軸端部
と対向する磁性板を吸引し、該磁性板を吸、排気バルブ
に当接させて該吸、排気バルブを初期駆動するので、強
力な初期駆動力を発生させることができる。

（実施例） 以下、本発明の一実施例を図面に従って詳細に説明す
る。

第１図は、本発明の駆動装置の一実施例を示す全体構
成図、第２図は、第１図のII-II線矢視断面図、第３図
は、第２図のIII-III線矢視断面図である。

１は、シリンダ12に配設された２個の吸気バルブであ
り、軽量で高温強度に優れた窒化珪素等のセラミックス
材、あるいは耐熱非磁性合金から形成されている。該吸
気バルブ１は往復動自在に軸承されており、該吸気バル
ブ１の閉鎖時には吸気バルブ１の傘部が吸気口を閉鎖す
る。

該吸気バルブ１の各軸端部にはそれぞれ可動子２が連
結している。該可動子２は、円筒形の磁気通路21と、該
磁気通路21の外周部に周設された複数個の２次コイル22
から構成されている。該２次コイル22は磁気通路21の外
周部に刻設された溝に、溶融したアルミニウムを流し込
んで形成される。尚、磁気通路21は２次コイル22に作用
する磁束密度を増加させるために磁性体から形成されて
おり、例えば磁性金属のアモルファス薄板を放射状に配
列して円筒形状に形成したものである。ただし、該磁気
通路21は後述する固定磁極31〜34からの磁束の通路とな
るので、該磁束の通路が確保されているように配列しな
ければならない。

また、エンジン停止時において吸気バルブ１が降下す
ることを防止するために、可動子２はスプリング11によ
って閉方向にバイアスされている。

各可動子２の側面には該可動子２を挟んで一対の駆動
部３が配設されている。該駆動部３は、２次コイル22と
対向して配設された固定磁極31〜34と、該固定磁極の各
々に捲設されたコイル35〜38とから構成されている。そ
して、後述するコントローラ５から交番電力の供給を受
け、可動子２の２次コイル22に対して進行磁界を作用さ
せるものである。

各可動子２の上部には、吸気バルブ１の着座状態時に
微小間隔を介して対向する磁性板４が配設されており、
可動子２の側面には上記駆動部３の他に、吸気バルブ１
の並設方向に該吸気バルブ１を挟む一対の磁極を有する
下部電磁石42が配設されている。該下部電磁石42の磁極
は、吸気バルブ１が閉鎖時における可動子２の上端面よ
り所定量だけ下方に設定され、該一対の磁極を励磁する
下部コイル43とから構成されている。

そして、該磁性板４は非磁性体からなるガイドバー41
を介して、下部電磁石42の両磁極と往復動自在に連結し
ており、吸気バルブ１の開タイミング時に、上記下部コ
イル43に通電されることにより、下部電磁石42に吸引さ
れ、可動子２の上端面に当接し、該可動子２を下方向へ
と駆動させるものである。

ところで、本来であれば１個の吸気バルブ１に１個の
下部電磁石を設けるが、本実施例のごとく、吸気バルブ
１が複数個配設されている場合には、下部電磁石を吸気
バルブ１の個数配設するにはスペースが無い。よって、
第１図に示すごとく、２個の吸気バルブ１をまたいで下
部電磁石42を配設することが、空間的効率を向上させ
る。

尚、該磁性板４はスプリング44により常時上方向にバ
イアスされている。

上記コイル35〜38、下部コイル43はコントローラ５に
接続されている。

該コントローラ５には、エンジンの回転数を検出する
回転センサ51と、クランク角を検出する位置センサ52
と、アクセルペダル（図示せず）の踏込量を検出する負
荷センサ53とから検出信号が入力されている。

上記コントローラ５は、上記検出信号の入力及び電力
の供給を司る入出力インターフェイス、予めプログラム
や各種関係マップを記憶するROM、該ROMに記憶されたプ
ログラムに沿って演算を実行するCPU、演算結果やデー
タを一時記憶するRAM、コントローラ５内部の信号の流
れを制御するコントロールメモリ等から構成されてい
る。

次に、上記構成による本発明のバルブ駆動装置の作動
について説明する。

エンジンの運転中においては、常時負荷センサ53から
アクセルペダルの踏込量と回転センサ51からエンジンの
回転数とを検出し、予め設定された関係マップを用いて
該踏込量及び回転数に対応する吸気バルブ１の開閉タイ
ミングを演算する。そして、位置センサ52により検出さ
れるクランク角が吸気バルブ１の開タイミングになる
と、下部コイル43へ通電し磁性板４を吸引する。する
と、磁性板４は可動子２に当接するため、吸気バルブ１
には初期駆動力として開方向への強力な駆動力が作用す
る。

次に、コイル35〜38に交番電力を供給して、可動子２
に開方向への進行磁界を作用させる。すると、２次コイ
ル22には電流が誘導され、該誘導電流が進行磁界から受
ける電磁力によって吸気バルブ１は引き続き開方向へと
駆動される。

クランク角が開タイミングから所定量経過すると、吸
気バルブ１と減速するため進行磁界の進行速度を減速
し、可動子２を回生作動させる。そして、吸気バルブ１
を最大リフト量の位置で停止させた後、磁界の進行方向
を上方向すなわち閉方向へと反転させる。

該反転された磁界により吸気バルブ１を閉方向へ駆動
し、クランク各が着座前になると再び磁界の進行速度を
減速して回生作動させ、吸気バルブ１の閉方向駆動速度
を減速して着座時の衝撃を緩和する。

吸気バルブ１が上記のごとく開閉駆動されている間に
下部コイル43への電力供給は停止されるので、磁性体41
はスプリング44のバイアス力により上限まで上昇されて
おり、吸気バルブ１の着座時には可動子２に磁性板４と
が衝突することはない。

尚、吸気バルブ１を閉状態で保持するスプリング11の
バイアス力は、上記電磁力に対して充分小に設定されて
いる。

以上、吸気バルブの実施例について詳細に説明した
が、本発明は排気バルブに適用できることは明白であ
り、また本発明の精神から逸れないかぎりで、種々の異
なる実施例は容易に構成できるから、本発明は前記特許
請求の範囲において記載した限定以外、特定の実施例に
制約されるものではない。

（発明の効果） 以上説明したように、本発明によれば、同一シリンダ
に接近して配設された複数個の吸気バルブもしくは複数
個の排気バルブの各々に連結される２次コイルに、固定
磁極からの進行磁界により発生する誘導電流が、該進行
磁界から受る電磁力により吸排気バルブを往復駆動する
ので、吸、排気バルブの位置が変化しても駆動力は変化
せず、従って、安定した開閉制御を行なうことができ
る。また、初期駆動時には電磁石で吸、排気バルブの軸
端部と対向する磁性板を吸引し、該磁性板を吸、排気バ
ルブに当接させて該吸、排気バルブを初期駆動するの
で、強力な初期駆動力を発生させることができる電磁力
バルブ駆動装置を提供できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明の一実施例を示す全体構成図、第２図
は、第１図のII-II線矢視断面図、第３図は、第２図のI
II-III線矢視断面図である。 １……吸気バルブ、２……可動子、３……駆動部、４…
…磁性板、５……コントローラ、12……シリンダ、21…
…磁気通路、22……２次コイル、31〜34……固定磁極、
42……下部電磁石。

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】エンジンの同一シリンダに配設された複数
   の吸気バルブの各々に連結され往復運動自在な複数の可
   動磁極と、該可動磁極の側面部と対向し該可動磁極の往
   復方向に並設された複数の固定磁極と、該固定磁極に捲
   設され上記可動磁極の往復運動時に該運動方向の進行磁
   界を形成する励磁コイルと、上記各可動磁極側面の固定
   磁極との対向位置に周設され２次コイルと、上記励磁コ
   イルへの通電状態を制御し吸気バルブを開閉駆動せしめ
   る制御手段とを有することを特徴とする電磁力バルブ駆
   動装置。
2. 【請求項２】上記複数の吸気バルブに代えて複数の排気
   バルブを開閉駆動することを特徴とする請求項（１）記
   載の電磁力バルブ駆動装置。
3. 【請求項３】往復方向に移動自在であり各可動磁極の端
   面と当接する可動磁性板と、該可動磁性板を吸引し各可
   動磁極の端面に当接させ吸気バルブを駆動せしめる電磁
   石とを有することを特徴とする請求項（１）または
   （２）記載の電磁力バルブ駆動装置。
4. 【請求項４】上記電磁石は上記吸排気バルブの初期駆動
   時に作動することを特徴とする請求項（３）記載の電磁
   力バルブ駆動装置。