JP2755816B2 - 水力発電設備の運転制御方法 - Google Patents

水力発電設備の運転制御方法

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JP2755816B2
JP2755816B2 JP2331681A JP33168190A JP2755816B2 JP 2755816 B2 JP2755816 B2 JP 2755816B2 JP 2331681 A JP2331681 A JP 2331681A JP 33168190 A JP33168190 A JP 33168190A JP 2755816 B2 JP2755816 B2 JP 2755816B2
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  • Control Of Water Turbines (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の目的〕 (産業上の利用分野) 本発明は、水車またはポンプ水車とを発電機または発
電電動機を有する水力発電設備の負荷遮断時の運転制御
方法に関する。
(従来の技術) 水力発電所としては、複数台の水車またはポンプ水車
を並設し、これらに直結された発電機または発電電動機
を同一の電力系統に接続した構成のものが多用されてい
る。
第12図は同一の電力系統に接続された2組の水力発電
設備を備えた水力発電所の構成例を示している。なお、
番号が同一の場合は同一の構成要素を示し、添字aは第
1発電設備(1号機)を、添字bは第2発電設備(2号
機)を示す。
上池1a,1bの水は、水圧鉄管2a、2bを通して水車3a,3b
に供給される。また、水車3a,3bを通過した水は放水路4
a,4bを通って下池5a,5bに放流される。
水車3a,3bには各々発電機6a,6bが直結されており、そ
れらは並列用遮断器7a,7bを介して同一電力系統の送電
線8に接続されている。なお、ここでは説明を簡略化す
るため、発電機6a,6bは界磁遮断器9a,9bを備えた同期発
電機とする。
このように構成した水力発電所において、1号機、2
号機共に最大出力で発電運転をしている際に、並列用遮
断器7a、7bが開くことによる負荷遮断が発生した場合、
多号機の運転状態は第13図に示すように変化する。第13
図において、横軸は並列用遮断器7a,7bが開いてからの
経過時間t(sec)を示し、縦軸は1号機および2号機
の鉄管水圧H1a,H1b、回転速度上昇率△na,△nb、ガイド
ベーン・サーボストロークSa,Sbの値を示す。なお、△n
a=0,△nb=0は定格回転速度に相当する。
負荷遮断による各号機の運転状態の変化は、各水力発
電設備の仕様が異なるため同一ではない。即ち、水車お
よび発電機回転体の回転慣性GDm3は両者でほぼ同一であ
るが、1号機では2号機と比較して水圧鉄管が長いた
め、水圧鉄管の最大水圧を同程度にするためには、比較
的長いガイドベーン閉鎖時間を採用しなければならな
い。一方、2号機は水圧鉄管の長さが短く、比較的短い
ガイドベーン閉鎖時間を採用することができるため、2
号機の回転速度上昇率△nbの最大値△nbmaxは、1号機
の回転速度上昇率△naの最大値△namaxに比較して低く
なっている。
このような発電所において、遠方遮断(遠方遮断また
は遠方負荷遮断)の発生した場合の状況を説明する。こ
こで、遠方遮断とは、第12図に示す送電線8の遠方に接
続されている電力負荷(図示せず)が事故等により送電
線8から切り離されることをいう。この場合は、第13図
に示す負荷遮断の場合と以下の点で異なる。すなわち、
まず第1に、送電線8の遠方で負荷が遮断されたという
情報が発電機側に伝達されない。このため、発電機側は
自身の回転速度の変化等を検出し、自身のガイドベーン
の閉鎖等を行って、負荷変化に伴う回転速度の変化を抑
制する制御を行う。第2に、この場合は並列遮断機7a,7
bが開かず、各発電機6a,6bが電力系統に並入されたまま
である。これは、再び負荷が増加した場合に直ちに発電
運転を開始するためである。
このような遠方遮断が、前述したような回転速度上昇
率の最大値が互いに異なる2つ発電機を含む系統で発生
した場合の各号機の運転状態の変化の様子を第14図に示
す。この場合各発電機6a、6bは並列用遮断器7a、7bを介
して電気的に結合されているため、1号機および2号機
の回転速度の変化は同一で、第14図に示すように1号
機、2号機とも同じ軌跡で上昇する。
その際、発電機6aは発電運転となって電力を発生し、
並列用遮断器7a,7bを介して発電機6bに電力を供給す
る。また、発電機6bは電動機として2号機の水車3bを加
速する。
その結果、1号機には制動力が作用するため、その最
大回転速度上昇率は、第13図に示した通常の負荷遮断時
の最大回転速度上昇率△namaxより低くなる。一方、2
号機は1号機により加速されるため、その最大回転速度
上昇率は、通常の負荷遮断時の最大回転速度上昇率△n
bmaxよりも高くなる。
これに対して、従来の一般的な制御方法では、回転速
度が負荷遮断時の最大回転速度より更に5%高くなった
時点で急停止制御が開始されるようにしている(参考文
献:水力発電所標準一人制御方式:電気協同研究:第27
巻 第9号)。
即ち、第14図に示すように、2号機の回転速度上昇率
△nbが規定上限値△nbo(=△nbmax×1.05)を越えた
時点t=tb(sec)で急停止制御が開始される。
この急停止制御では、ガイドベーンは閉鎖されるが、
並列用遮断器7a,7bはガイドベーン開度が小開度Sbxにな
るまで開かないため、2つの発電機6a,6bの電気的結合
は依然継続しており、1号機の回転速度が上昇する限り
2号機の回転速度も上昇し続け、最終的には通常の負荷
遮断時の最大回転速度をオーバーする回転速度に達す
る。
この場合、ガイドベーン開度Sbが小開度Sbxとなった
時点txでようやく並列用遮断器7bが開き、1号機、2号
機の電気的結合が解消され、回転速度の変化は1号機、
2号機で別々となる。この後、2号機は停止するが、1
号機は第14図中に示したように、回転速度が定格速度と
なるよう調速機により制御され、待機運転となる。
通常、発電機等の回転体の強度は第13図に示すような
他の発電機と電気的な結合が無い状態の負荷遮断の最大
回転速度に基づいて決定されるため、それを上回るよう
な回転速度での運転状態があり得るということは、2つ
の発電機が電気的に結合した状態で電力系統の遠方で負
荷遮断が発生するというケースが非常に稀なケースであ
るとしても、機器の保全上、問題である。
一方、第14図の運転状態で発生する最大回転速度に基
づき回転体の強度設計をする場合は、機器の保全上の問
題はないが、機器の製作コストが増加し、発電設備全体
の経済性を追求する観点からは好ましい対策ではない。
なお、以上の例では、1号機、2号機ともに最大出力
としたが、1号機が最大出力、2号機が最大出力より小
さい部分負荷の場合でも、1号機の回転速度の上昇に伴
い2号機の回転速度も引上げられるため、部分負荷で運
転しているにもかかわらず、2号機の最大回転速度が通
常の負荷遮断時の最大回転速度上昇率△nbmaxを上回る
こともある。
(発明が解決しようとする課題) 上述のように従来の制御方法では、仕様の異なる水力
発電設備が電力系統を介して電気的に結合している時
は、相互作用により負荷遮断時の回転速度上昇が大きく
なるという問題が発生し、それに対して有効な制御を行
うことができなかった。
本発明は以上の事情に鑑みてなされたもので、仕様の
異なる水力発電設備が電力系統を介して電気的に結合し
ていても、負荷遮断時の回転速度を安定して制御できる
制御方法を提供することを目的とするものである。
〔発明の構成〕
(課題を解決するための手段) 第1の手段は、複数台の水車またはポンプ水車を並設
し、これらの水車またはポンプ水車に各々直結された発
電機または発電電動機を同一の電力系統に接続した水力
発電設備において、各々の発電機または発電電動機が並
列遮断機を介して前記電力系統に並入されて発電運転を
行っている時、ある発電機または発電電動機の回転速度
が予め定められた規定回転速度を越えたことを条件に、
当該発電機または発電電動機と電力系統とを結ぶ前記並
列遮断機を開くか、或いは当該発電機または発電電動機
の励磁を切るとともに、前記規定回転速度は、当該発電
機または発電電動機において、他の発電機または発電電
動機との電気的結合がない状態での最大出力負荷遮断時
の最大回転速度より所定量高い値に定められることを特
徴とする水力発電設備の運転制御方法である。
第2の手段は、複数台の水車またはポンプ水車を並設
し、これらの水車またはポンプ水車に各々直結された発
電機または発電電動機を同一の電力系統に接続した水力
発電設備において、各々の発電機または発電電動機が並
列遮断機を介して前記電力系統に並入されて発電運転を
行っている時、ある発電機または発電電動機の回転速度
が予め定められた規定回転速度を越えたことを条件に、
当該発電機または発電電動機と電力系統とを結ぶ前記並
列遮断機を開くか、或いは当該発電機または発電電動機
の励磁を切るとともに、前記規定回転速度は、当該発電
機または発電電動機および水車またはポンプ水車の回転
体の機械的強度上の許容回転速度に定められることを特
徴とする水力発電設備の運転制御方法である。
第3の手段は、複数台の水車またはポンプ水車を並設
し、これらの水車またはポンプ水車に各々直結された発
電機または発電電動機を同一の電力系統に接続した水力
発電設備において、各々の発電機または発電電動機が並
列遮断機を介して前記電力系統に並入されて発電運転を
行っている時、ある発電機または発電電動機の回転速度
が予め定められた規定回転速度を越えたことを条件に、
当該発電機または発電電動機と電力系統とを結ぶ前記並
列遮断機を開くか、或いは当該発電機または発電電動機
の励磁を切るとともに、前記規定回転速度は、当該発電
機または発電電動機および水車またはポンプ水車の出
力、運転落差およびガイドベーン開度から算定される負
荷遮断時の最大回転速度に基づいて定められることを特
徴とする水力発電設備の運転制御方法である。
第4の手段は、複数台の水車またはポンプ水車を並設
し、これらの水車またはポンプ水車に各々直結された発
電機または発電電動機を同一の電力系統に接続した水力
発電設備において、各々の発電機または発電電動機が並
列遮断機を介して前記電力系統に並入されて発電運転を
行っている時、ある発電機または発電電動機の回転速度
の上昇率が定められた許容最大回転速度上昇率を越えた
ことを条件に、当該発電機または発電電動機と電力系統
とを結ぶ前記並列遮断機を開くか、或いは当該発電機ま
たは発電電動機の励磁を切ることを特徴とする水力発電
設備の運転制御方法である。
第5の手段は、複数台の水車またはポンプ水車を並設
し、これらの水車またはポンプ水車に各々直結された発
電機または発電電動機を同一の電力系統に接続した水力
発電設備において、各々の発電機または発電電動機が並
列遮断機を介して前記電力系統に並入されて発電運転を
行っている時、ある発電機または発電電動機において少
なくともその入力電力が予め定められた入力電力限界値
を越えたことを条件に、当該発電機または発電電動機と
電力系統とを結ぶ前記並列遮断機を開くか、或いは当該
発電機または発電電動機の励磁を切ることを特徴とする
水力発電設備の運転制御方法である。
(作 用) 上記第1乃至第5のいずれかの手段のように構成され
た発明によれば、複数台の発電機または発電電動機が電
力系統に並入されて発電運転を行っている時、ある発電
機または発電電動機の回転速度、回転速度の上昇率また
は入力電力がそれぞれ予め定められた値を越えた場合、
当該発電機または発電電動機が他の発電機または発電電
動機によって加速されていると判断される。そして、こ
れらの場合に、当該発電機または発電電動機と電力系統
とを結ぶ前記並列遮断機を開くか、或いは当該発電機ま
たは発電電動機の励磁を切ることにより、当該発電機ま
たは発電電動機の他の発電機または発電電動機によって
加速されないようにし、回転速度の上昇を抑えることが
できる。
さらに、上記第1の手段のように構成された発明によ
れば、規定回転速度は、当該発電機または発電電動機に
おいて、他の発電機または発電電動機との電気的結合が
ない状態での最大出力負荷遮断時の最大回転速度より所
定量高い値に定められるので、他の発電機または発電電
動機との電気的結合がない遠方遮断では、並列遮断機を
開いたり当該発電機または発電電動機の励磁を切ること
はない。
また、上記第2の手段のように構成された発明によれ
ば、規定回転速度は、当該発電機または発電電動機およ
び水車またはポンプ水車の回転体の機械的強度上の許容
回転速度に定められるので、これらの回転体の機械的強
度上の許容回転速度を越えて回転速度が上昇することが
防止される。
さらに、上記第3の手段のように構成された発明によ
れば、規定回転速度は、当該発電機または発電電動機お
よび水車またはポンプ水車の出力、運転落差およびガイ
ドベーン開度から算定される負荷遮断時の最大回転速度
に基づいて定められるので、遮断負荷が最大出力負荷遮
断時よりも小さい場合は、規定回転速度が最大出力負荷
遮断時の最大回転速度より所定量高い値に定められる場
合に比べ、より低い回転数で並列遮断機を開くか励磁を
切る制御が行われる。
(実施例) 次に、本発明の制御方法の実施例を図面に参照して説
明する。
なお、本発明が適用される水力発電所の構成例は第12
図と同じであるとする。
実施例1 本実施例の方法では、第1図に示すように、該当号機
の回転速度nを検出(A1)し、その回転速度nが予め定
められた規定回転速度nxを越えたこと(A2)を条件に、
該当号機の並列用遮断器または界磁遮断器を開く(A
3)。なお、規定回転速度nxは、他の水力発電設備との
電気的結合が無い状態で、該当号機の最大出力負荷遮断
時の最大回転速度より5%程度高い値に設定されてい
る。
この場合の運転状態の変化を第2図に示す。
2号機の回転速度nbが規定回転速度nxを越えた時点、
即ち第2図では回転速度上昇率△nbが△nbxを越えた時
点txで、該当号機の並列用遮断器7bまたは界磁遮断器9b
が開く。
この時、該当号機の水車には制動トルクが作用してい
る状態なので、第2図中の実線△nbで示すように、該当
号機の回転速度はただちに低下する。
その結果、この場合の最大回転速度上昇率は他の水力
発電設備との電気的結合が無い状態での負荷遮断による
最大回転速度上昇率△nbmaxよりは高くなるが、同図中
に鎖線△n′bで示した前記第14図の従来の制御方法を
採用した場合よりは低くなる。
一方、規定回転速度nbxは他の水力発電設備との電気
的結合が無い状態での負荷遮断による最大回転速度(最
大回転速度上昇率△nbmaxに対応)より5%高いため、
電気的結合の無い遠方負荷遮断では並列用遮断器または
界磁遮断器が開くことはなく、発電機は電力系統に接続
されたままで待機運転に移行される。
従って、本発明の運転制御方法を採用したことによる
運用上の制限は皆無である。
実施例2 第1の実施例では、並列用遮断器または界磁遮断器を
開く規定回転速度は、該当号機が他の水力発電設備との
電気的結合が無い状態で、最大出力負荷遮断時の最大回
転速度よ5%程度高い値としたが、この回転速度は水車
および発電機の回転体の機械的強度上の許容回転速度以
下でなければならない。
本実施例は、水車や発電機の回転体の機械的強度上の
許容回転速度が予め決まっている場合、並列用遮断器ま
たは界磁遮断器を開く規定回転速度を、この回転体の機
械的強度上の許容回転速度に設定する。
このような設定条件で制御すれば、水車・発電機回転
体が許容回転速度以上の高回転にさらされることがなく
なる。
実施例3 一般に、水力発電設備が他の水力発電設備と電気的に
結合している場合は、他の水力発電設備の運転状態によ
っては、該当号機の遮断負荷が最大出力より小さい部分
負荷であっても、最大出力負荷遮断と同程度の最大回転
速度に上昇する可能性があるが、他の水力発電設備との
電気的結合が無い状態では、遮断負荷(=出力)が小さ
くなればなる程、負荷遮断時における最大回転速度は低
くなる。
従って、該当号機の遮断負荷が小さい時は、該当号機
の並列用遮断器または界磁遮断器を開くための規定回転
速度は、最大出力負荷遮断時の最大回転速度+5%であ
る必要はなく、より低い回転速度の方が望ましい。
ここで、他の水力発電設備との電気的結合が無い状態
での負荷遮断時の最大回転速度は、水車の特性、水圧鉄
管の口径と長さ、水車・発電機回転体の時定数を考慮し
て、該当号機の出力、運転落差およびガイドベーン開度
から算定することができる。
該当号機の回転速度が、上述のようにして算定した最
大回転速度を越えて更に上昇するのは、他の水力発電設
備と電気的に結合している結果であり、並列用遮断器ま
たは界磁遮断器を開くべきであると判断することができ
る。この場合、並列用遮断器または界磁遮断器を開くべ
きであるとの判断を下すための規定回転速度の数表を予
め作成しておくことができる。
第3図に示した実施例では、運転状態監視装置10によ
り、常時、通常運転中の該当号機の出力P、運転落差
H、およびガイドベーン・サーボストロークSを検出
し、前記した数表を記憶している規定回転速度算定器11
により、規定回転速度nxを算定する。
負荷遮断により該当号機の回転速度nが上昇し、前記
の規定回転速度nxを越えたことを検出判定器12によって
検出されると、該当号機の並列用遮断器7bまたは界磁遮
断器9bへ開指令が出力される。
なお、運転状態監視装置10は該当号機の回転速度nも
検出し、それが定格回転速度の範囲内であるか否かによ
り通常運転中であるか否かを判定する。通常運転範囲外
と判断された場合は、それまで検出された値を保持す
る。
この実施例の運転状態の変化を第4図に示す。ここ
で、鎖線△n′b,S′bは前記した第2図の運転状態の
変化を参考のために示したものである。
この場合、該当号機の遮断前負荷が第2図の場合とし
て比較して小さいため、ガイドベーン・サーボストロー
クSbの変化は鎖線S′bの場合より小さいストロークか
ら同じ速度まで閉まり始め、鎖線S′bの場合より早く
全閉になる。
前記した第1図の実施例の方法で制御した場合には、
第4図中の鎖線△n′bによって示されるように、負荷
遮断直前の負荷が小さくても該当号機の回転速度が最大
出力負荷遮断時の最大回転速度+5%に達するまでは他
の水力発電設備との電気結合が解除されないため、回転
速度が最大出力負荷遮断時の最大回転速度+5%まで上
昇してしまう。
一方、この実施例では、遮断負荷(=出力)が小さい
場合は、より低い回転速度で電気的結合が解除されるた
め、該当号機の最大回転速度は遮断負荷(=出力)に応
じて低くなる。従って、水車や発電機が高回転にさらさ
れる時間が短くなり、機器の保全上、好ましい。
実施例4 一般に、回転体の回転速度n(rpm)の変化は、回転
体の回転慣性をGDm2(kg・m2)、回転体に作用するトル
クをM(N・m)とすると、次式で表される。
M=π/120・GDm2・dn/dt …(1) 従って、負荷遮断で発生する水車またはポンプ水車の
回転速度の上昇率dn/dtは、最大トルクMmaxが作用して
いる時に負荷遮断が発生した場合に最大となる。
この最大トルクMmaxの値は水車またはポンプ水車の最
大出力と回転速度から算定できるため、回転速度の上昇
率の最大値は予め算定することができる。
従って、回転速度の上昇率が、予め算定された回転速
度の上昇率の最大値よりも大きい場合は、電力系統を介
した相互作用により他号機により加速されていると判断
でき、それを用いて水車またはポンプ水車を制御すれ
ば、他号機による加速を防ぐことができる。
第5図の実施例は、上述の原理を利用したもので、該
当号機の回転速度nの変化率dn/dtを回転速度変化率検
出器13で検出し、これを判定器14に導き、予め定められ
た許容最大回転速度上昇率(dn/dt)maxと比較し、該当
号機の回転速度nの変化率dn/dtが許容最大回転速度上
昇率(dn/dt)maxを越えたことを条件に、該当号機の並
列用遮断器7bまたは界磁遮断器9bに開指令を発する。
ここで許容最大回転速度上昇率(dn/dt)maxは、該当
号機の最大発生トルクMmaxと発電機または発電電動機の
回転体の回転慣性GDm3から次式によって算定される。
(dn/dt)max=120・Mmax/(π・GDm2) …(2) この実施例における該当号機の運転状態の変化の様子
を第6図に示す。負荷遮断後、該当号機には、その水車
自身が発生するトルクと電気的結合による他号機からの
加速トルクが作用するため、回転速度の単位時間当りの
増加量は電気的結合がない状態の負荷遮断時の回転速度
上昇率よりも高く、許容最大回転速度上昇率(dn/dt)m
axを上回る。従って、負荷遮断直後のt=txの時点で該
当号機の並列用遮断器7bまたは界磁遮断器9bが開くた
め、それ以降における該当号機の回転速度の変化は、第
6図中の実線Δnbのように、他の水力発電設備との電気
的結合がない状態での負荷遮断時の回転速度変化(鎖線
Δn′b)とほぼ同じになり、最大回転速度上昇率Δn
bmax(実線)は、他の水力発電設備との電気的結合がな
い状態での負荷遮断時の最大回転速度上昇率Δnbmax
(鎖線)とほぼ同一になる。
一方、他の水力発電設備との電気的結合がない遠方負
荷遮断では、該当号機の回転速度上昇率は許容最大回転
速度上昇率(dn/dt)maxを上回ることはないので、該当
号機の並列用遮断器7bまたは界磁遮断器9bが開くことは
なく、本発明方法を採用しても運用上の制限は生じな
い。
実施例5 負荷遮断の直後に該当号機の水車に作用するトルク
は、負荷遮断直前における該当号機の水車の運転状態に
よって変化する。
この場合、他の水力発電設備との電気的結合がない水
車の負荷遮断で発生する回転速度上昇率は負荷遮断直前
における該当号機の水車の運転状態のトルクMから算定
することができ、その値を用いて、次式により、運転状
態に応じた許容最大回転速度上昇率(dn/dt)maxを求め
ることができる。
(dn/dt)max=120・M/(π・GDm2) …(3) 第7図に示した本発明の実施例においては、運用状態
監視装置15により該当号機の出力Pおよび回転速度nか
らトルクMを求め、許容最大回転速度上昇率算定器16に
より、上記(3)式に基づいて、許容最大回転速度上昇
率(dn/dt)maxを算定する。
一方、回転速度nの変化率dn/dtを回転速度変化率検
出器13で検出し、これを判定器14に導いて前記許容最大
回転速度上昇率(dn/dt)maxと比較し、該当号機の回転
速度nの変化率dn/dtが許容最大回転速度上昇率(dn/d
t)maxを越えたことを条件に、該当号機の並列用遮断器
7bまたは界磁遮断器9bに開指令を発する。
なお、負荷遮断直前の水車またはポンプ水車の運転状
態を算定する場合には、該当号機の出力Pの替わりに、
落差Hおよびガイドベーン・サーボストロークSを用い
てよい。また、許容最大回転速度上昇率(dn/dt)maxを
算定する場合、制御上の余裕なども考慮して、上記
(3)式以外の関係式を用いるようにしてよい。
この実施例において、許容最大回転速度上昇率(dn/d
t)maxを該当号機の最大発生トルクと水車またはポンプ
水車および発電機または発電電動機の回転体の回転慣性
GDm3から算定した場合には、該当号機の負荷遮断直前の
運転負荷が小さい時は、他の水力発電設備と電気的に結
合し、他号機による加速トルクが作用している場合でも
トータルのトルクが最大発生トルク以下ならば、回転速
度上昇率dn/dtも許容最大回転速度上昇率(dn/dt)max
よりは低くなるため、該当号機の並列用遮断器7bまたは
界磁遮断器9bに開指令を発することはない。
一方、この実施例では該当号機の負荷遮断直前の運転
状態に応じて許容最大回転速度上昇率(dn/dt)maxを決
めているため、該当号機の負荷遮断直前の運転負荷が小
さい場合でも、他の水力発電設備と電気的に結合し、他
号機による加速トルクが作用している場合は、該当号機
の並列用遮断器7bまたは界磁遮断器9bに開指令を発せら
れ、機器が高速回転にさらされる可能性が低減する。
実施例6 この実施例においては、第8図に示すように、電力検
出器17で該当号機の入力電力Pinを検出し、この入力電
力Pinと、予め定められた限界値Plimitとを判定器18で
比較し、前者が後者を越えた場合は、発電機と電力系統
を結ぶ並列用遮断器7bまたは界磁遮断器9bに開指令が出
される。
ここで、入力電力Pinの限界値Plimitは誤動作の危険
性がない場合は零とし、発電機が電力系統から電力供給
を受けるようになった段階で、発電機と電力系統を結ぶ
並列用遮断器7bまたは界磁遮断器9bを直ちに開くように
する。
この実施例における該当号機の運転状態の変化の様子
は、前述の実施例4における該当号機の運転状態の変化
の様子を示す第6図と同じである。即ち、他の水力発電
設備との電気的結合があり、該当機器が加速される場合
は、該当号機(発電機6b)には、負荷遮断直後から、正
の電力が入力されるため、入力電力Pinの限界値Plimit
を零とした場合には、負荷遮断後、該当号機の並列用遮
断器7bまたは界磁遮断器9bが直ちに開く。
従って、該当号機のそれ以降の回転速度の変化は、他
の水力発電設備との電気的結合がない状態での負荷遮断
時の回転速度変化と同一になり、最大回転速度上昇率
は、他の水力発電設備との電気的結合がない状態での負
荷遮断時の最大回転速度上昇率Δnbmax(鎖線)とほぼ
同一になる。
一方、他の水力発電設備との電気的結合がない遠方負
荷遮断では、電力がマイナスになることはないので、該
当号機の並列用遮断器7bまた界磁遮断器9bが開くことは
なく、本発明方法を採用しても運用上の制限は生じな
い。
実施例7 一般に、他の水力発電設備と電気的に結合した状態で
負荷遮断が発生し、他号機により該当号機が加速される
際の発電機または発電電動機に入力される電流または電
力はあまり大きくない。
従って、他の水力発電設備と電気的に結合した状態で
負荷遮断が発生した時、直ちに並列用遮断器を開くため
には、入力電力Pinの限界値Plimitは零に近い値に設定
しておいた方がよい。ただし、ポンプ水車の発電運転な
どでは、系統並入直後は水車出力がマイナスになり、電
力系統から電力の供給を受ける場合もあるため、入力電
力Pinの限界値Plimitを零に近い値に設定する場合に
は、誤動作の可能性を考慮し、なんらかの誤動作防止対
策が必要である。
第9図に示した実施例においては、電力検出器17と判
定器18の他、タイマー19と論理和回路20が設けられてい
る。
この実施例においては、タイマー19により系統並入か
らの経過時間tが計測され、予めセットした時間te(se
c)が経過したという条件(t>te)と、入力電力Pinが
予め定められた限界値Plimitを越えたという2つの条件
が同時に成立した時、論理和回路20より並列用遮断機7b
または界磁遮断器9bに向けて開指令が発せられる。
なお、系統並入直後には該当号機の水車がマイナスの
水車運転に陥るのは、水路系のサージング等の影響で系
統並入直後の10〜60秒程度の期間に限られるので、タイ
マー19の作動時間teは通常10〜60秒程度にセットすれば
よい。
実施例8 第10図に示した実施例においては、第9図の実施例に
おけるタイマー19に代え、臨界ガイドベーン・サーボス
トローク判定器21が使用されている。この判定器21は、
該当号機のガイドベーン・サーボストロークSを判定
し、それが予め定められた臨界ガイドベーン・サーボス
トロークSeを上回ったことと、入力電力Pinが予め定め
られた限界値Plimitを越えたという2つの条件が同時に
成立した時、論理和回路20より並列用遮断機7bまたは界
磁遮断器9bに向けて開指令が発せられる。
誤動作防止対策は系統並入直後の比較的ガイドベーン
開度の小さい領域で必要であるところから臨界ガイドベ
ーン・サーボストロークSeは、下限出力相当のガイドベ
ーン開度に合せて設定される。
実施例9 第11図に示した実施例においては、第9図の実施例に
おけるタイマー19に代え、該当号機の回転速度nを検出
し、それが予め定められた臨界回転速度neを上回ったこ
とを判定する臨界回転速度判定器22が使用されている。
この判定器22からの出力と、判定器18からの出力が同時
にオンすると、論理和回路20より並列用遮断機7bまたは
界磁遮断器9bに向けて開指令が発せられる。
誤動作が問題となる系統並入直後の運転状態における
回転速度は定格回転速度であり、一方、負荷遮断時の回
転速度は、当然に定格回転速度より高い。従って、臨界
回転速度neを定格回転速度の102%〜105%に設定してお
けば、系統並入直後に水車出力がマイナスになったとし
ても誤動作することはなく、また制御上の支障も生じな
い。
なお、以上の各実施例においては、主に水車と発電機
を使用した例につき述べたが、これらをポンプ水車また
は発電電動機としても良いことはもちろんである。
〔発明の効果〕
請求項1乃至5のいずれかに記載の発明によれば、複
数台の発電機または発電電動機が電力系統に並入されて
発電運転を行っている時、ある発電機または発電電動機
の回転速度、回転速度の上昇率または入力電力がそれぞ
れ予め定められた値を越えた場合、当該発電機または発
電電動機が他の発電機または発電電動機によって加速さ
れていると判断される。そして、これらの場合に、当該
発電機または発電電動機と電力系統とを結ぶ前記並列遮
断機を開くか、或いは当該発電機または発電電動機の励
磁を切ることにより、当該発電機または発電電動機の他
の発電機または発電電動機によって加速されないように
し、回転速度の上昇を抑えることができる。このため、
遠方遮断のように事故の発生を直接検知できない負荷遮
断の場合であっても、発電機または発電電動機の回転速
度の上昇を的確に抑えて安定した回転速度制御を行うこ
とができ、水力発電設備の信頼性を高めることができ
る。
さらに、請求項1記載の発明によれば、規定回転速度
は、当該発電機または発電電動機において、他の発電機
または発電電動機との電気的結合がない状態での最大出
力負荷遮断時の最大回転速度より所定量高い値に定めら
れるので、他の発電機または発電電動機との電気的結合
がない遠方遮断では、並列遮断機を開いたり当該発電機
または発電電動機の励磁を切ることはない。このため、
水力発電設備の運用に制限を加えずに済む。
また、請求項2記載の発明によれば、規定回転速度
は、当該発電機または発電電動機および水車またはポン
プ水車の回転体の機械的強度上の許容回転速度に定めら
れるので、これらの回転体の機械的強度上の許容回転速
度を越えて回転速度が上昇することが防止される。
さらに、請求項3記載の発明によれば、規定回転速度
は、当該発電機または発電電動機および水車またはポン
プ水車の出力、運転落差およびガイドベーン開度から算
定される負荷遮断時の最大回転速度に基づいて定められ
るので、遮断負荷が最大出力負荷遮断時よりも小さい場
合は、規定回転速度が最大出力負荷遮断時の最大回転速
度より所定量高い値に定められる場合に比べ、より低い
回転数で並列遮断機を開くか励磁を切る制御が行われ
る。このため、当該発電機または発電電動機および水車
またはポンプ水車が高回転にさらされる時間が短くな
り、機器の保全上有利となる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明による制御方法を例示するフローチャー
ト、第2図は本発明の制御方法を実施した場合の各水車
の運転状態の変化を示す波形図、第3図は本発明の他の
実施例を示す説明図、第4図は第3図の実施例の制御方
法を実施した場合の各水車の運転状態の変化を示す波形
図、第5図は本発明の他の実施例を示す説明図、第6図
は第5図の実施例の制御方法を実施した場合の各水車の
運転状態の変化を示す波形図、第7図ないし第11図は、
それぞれ本発明の他の実施例を示す説明図、第12図は水
力発電所の一般的な構成を示す説明図、第13図は一般的
な水力発電所における通常の負荷遮断の例を示す波形
図、第14図は一般的な水力発電所における遠方負荷遮断
の例を示す波形図である。 1……上池、2……水圧鉄管、3……水車、4……放水
路、5……下池、6……発電機、7……並列用遮断器、
8……送電線、9……界磁遮断器、21……臨界ガイドベ
ーン・サーボストローク判定器、22……臨界回転速度判
定器。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】複数台の水車またはポンプ水車を並設し、
    これらの水車またはポンプ水車に各々直結された発電機
    または発電電動機を同一の電力系統に接続した水力発電
    設備において、 各々の発電機または発電電動機が並列遮断機を介して前
    記電力系統に並入されて発電運転を行っている時、ある
    発電機または発電電動機の回転速度が予め定められた規
    定回転速度を越えたことを条件に、当該発電機または発
    電電動機と電力系統とを結ぶ前記並列遮断機を開くか、
    或いは当該発電機または発電電動機の励磁を切るととも
    に、 前記規定回転速度は、当該発電機または発電電動機にお
    いて、他の電動機または発電電動機との電気的結合がな
    い状態での最大出力負荷遮断時の最大回転速度より所定
    量高い値に定められることを特徴とする水力発電設備の
    運転制御方法。
  2. 【請求項2】複数台の水車またはポンプ水車を並設し、
    これらの水車またはポンプ水車に各々直結された発電機
    または発電電動機を同一の電力系統に接続した水力発電
    設備において、 各々の発電機または発電電動機が並列遮断機を介して前
    記電力系統に並入されて発電運転を行っている時、ある
    発電機または発電電動機の回転速度が予め定められた規
    定回転速度を越えたことを条件に、当該発電機または発
    電電動機と電力系統とを結ぶ前記並列遮断機を開くか、
    或いは当該発電機または発電電動機の励磁を切るととも
    に、 前記規定回転速度は、当該発電機または発電電動機およ
    び水車またはポンプ水車の回転体の機械的強度上の許容
    回転速度に定められることを特徴とする水力発電設備の
    運転制御方法。
  3. 【請求項3】複数台の水車またはポンプ水車を並設し、
    これらの水車またはポンプ水車に各々直結された発電機
    または発電電動機を同一の電力系統に接続した水力発電
    設備において、 各々の発電機または発電電動機が並列遮断機を介して前
    記電力系統に並入されて発電運転を行っている時、ある
    発電機または発電電動機の回転速度が予め定められた規
    定回転速度を越えたことを条件に、当該発電機または発
    電電動機と電力系統とを結ぶ前記並列遮断機を開くか、
    或いは当該発電機または発電電動機の励磁を切るととも
    に、 前記規定回転速度は、当該発電機または発電電動機およ
    び水車またはポンプ水車の出力、運転落差およびガイド
    ベーン開度から算定される負荷遮断時の最大回転速度に
    基づいて定められることを特徴とする水力発電設備の運
    転制御方法。
  4. 【請求項4】複数台の水車またはポンプ水車を並設し、
    これらの水車またはポンプ水車に各々直結された発電機
    または発電電動機を同一の電力系統に接続した水力発電
    設備において、 各々の発電機または発電電動機が並列遮断機を介して前
    記電力系統に並入されて発電運転を行っている時、ある
    発電機または発電電動機の回転速度の上昇率が予め定め
    られた許容最大回転速度上昇率を越えたことを条件に、
    当該発電機または発電電動機と電力系統とを結ぶ前記並
    列遮断機を開くか、或いは当該発電機または発電電動機
    の励磁を切ることを特徴とする水力発電設備の運転制御
    方法。
  5. 【請求項5】複数台の水車またはポンプ水車を並設し、
    これらの水車またはポンプ水車に各々直結された発電機
    または発電電動機を同一の電力系統に接続した水力発電
    設備において、 各々の発電機または発電電動機が並例遮断機を介して前
    記電力系統に並入されて発電運転を行っている時、ある
    発電機または発電電動機において少なくともその入力電
    力が予め定められた入力電力限界値を越えたことを条件
    に、当該発電機または発電電動機と電力系統とを結ぶ前
    記並列遮断機を開くか、或いは当該発電機または発電電
    動機の励磁を切ることを特徴とする水力発電設備の運転
    制御方法。
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