JP2755810B2 - 物品識別用マーカ - Google Patents

物品識別用マーカ

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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、小売店,工場や公共の施設などで、商品、
品物又は人物(以下、「物品」という。)等の識別又は
同定を行なう物品識別システムに使用される非晶質金属
細線を用いた物品識別用マーカに関するものである。
(従来の技術) 物品を非接触で識別又は同定する方法としては一般的
にバーコードシステムが使用されているが、使用環境に
問題がある。そのため最近全く新規な磁気応用識別シス
テムとして、大バルクハウゼン不連続発生磁界値の各々
異なる非晶質金属細線を少なくとも2種組合せたマーカ
を適当な手段で識別すべき物品に添付し、入射磁界に対
して応答するパルス信号の発生位置が該金属細線の組合
せに対応して異なっている時系列パルスを認識すること
が提案されている(平成2年3月28日:電気学会全国大
会講演第1617番)。
(発明が解決しようとする課題) しかし、上記時系列パルスを認識するマーカにおいて
は、非晶質金属細線の相互干渉によってパルスの発生磁
界位置が個々の金属細線単独での磁界値より位相がずれ
ることによる識別の誤認という問題があった。
(問題点を解決するための手段) 本発明者らは、このような問題を解決するために鋭意
検討の結果、非晶質金属細線の少なくとも一方の端部
が、隣接する他の非晶質金属細線の端部と互いに長手方
向にずれているように各々の非晶質金属細線を物品に並
列配置することにより、非晶質金属細線の相互干渉によ
るパルス発生磁界位置の位相ずれを防止できることを見
出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、入射磁気エネルギーに応答して関
連する物品識別装置に出力信号を発生させるための成分
として、その磁気ヒステリシスループにおける大バルク
ハウゼン不連続の発生磁界値が各々異なっている少なく
とも2種の非晶質金属細線が、長手方向に並列に配置さ
れている物品識別用マーカであって、各々の非晶質金属
細線の長手方向の少なくとも一方の端部が、隣接する他
の非晶質金属細線の端部と互いに長手方向にずれている
ことを特徴とする物品識別用マーカを提供するものであ
る。
本発明において、磁気ヒステリシスループに於ける大
バルクハウゼンとは、非晶質金属細線の繊維軸方向にお
ける外部励磁磁界が或る特定のしきい値を越えたとき、
非晶質金属細線内に逆磁区が形成されると同時に瞬時に
磁壁が移動して金属細線の磁化の反転が終了してしまう
現象をいい、この急激な磁化反転を大バルクハウゼンと
称し、励磁磁界が非晶質金属細線毎に固有のしきい値レ
ベルを越えさえすれば磁化の急激な反転が励磁磁界の変
化率とは無関係に発生する。
本発明において、大バルクハウゼン不連続を有する非
晶質磁性材料としては公知の如何なるものも利用でき
る。例ばえば特公昭64−9906号公報に記載の回転液中紡
糸法で作成されたままの磁歪性非晶質金属細線があげら
れる。さらには、特開昭63−24003号公報に示されてい
るように、回転液中紡糸法で作成された後、最終減面率
30%以上でダイス線引きされた磁歪性非晶質金属細線
を、張力印加の状態で250℃以上、結晶化温度以下の範
囲の温度で熱処理後急冷することによっても作成され
る。磁歪性とは磁歪特性を有する合金組成であることを
意味している。
本発明においては、磁性材料の作成の難易度、大バル
クハウゼン不連続発生磁界値の設定の難易度、マーカ作
成の容易性、磁性材料に要求される大バルクハウゼン不
連続発生のための必要最小長さの観点から、細径の細い
熱処理した非晶質金属細線を使用するのが最も好まし
い。細径は特に限定されないが、例えば0.01〜0.2mmで
ある。
本発明で大バルクハウゼン不連続発生磁界値の異なっ
た非晶質磁性材料を得るには例えば、合金組成・細線作
成条件・熱処理条件等を変更するなど公知の方法によっ
て可能である。
本発明で物品を検知するためには、例えば、互いに大
バルクハウゼン発生磁界値の異なる非晶質金属細線を少
なくとも2種組合せ、適当な周波数でかつ各金属細線の
大バルクハウゼン不連続発生磁界値の最大値よりも大き
な振幅値で変化する励振磁界(入射磁気エネルギー)で
励磁することにより、各非晶質金属細線の大バルクハウ
ゼン発生磁界値に相当して発生位置の異なる第1図に示
される様な時系列パルスが得られる。マーカ内の非晶質
金属細線の選択的組合せの違いにより、この時系列パル
スのパターンが変化し、これを検知する事によって物品
を識別できる。
例えば、第1図は、大バルクハウゼン不連続発生磁界
値が各々異なっている5種類の非晶質金属細線を使用し
た場合の時系列パルスの一例である。図の下段は励振磁
界H(Oe)の時間変化の波形であり、上段が大バルクハ
ウゼン不連続発生磁界値の低い金属細線から順次生じる
磁化反転により発生するパルス出力電圧ep(mV)を表わ
している。正負交互に変化する励振磁界によって、それ
ぞれ正及び負の時系列パルスが得られるが、第1図はそ
のうちの正の時系列パルスを示している。各パルス11、
12、13、14、15が5種の金属細線に対応するパルスであ
る。これらの5種の金属細線の選択的組合せによって時
系列パルスの形が変化し、励えば大バルクハウゼン不連
続発生磁界値が2番目の値を有する金属細線を除いた4
本の組合せであれぱパルス12の存在しない時系列パター
ンとなる。従って5種類の金属細線の組合せによって原
則的には32通りの時系列パターンとなり、何も存在しな
い場合を除外すれば31種類の物品を識別することができ
る。
この場合、最も低い大バルクハウゼン発生磁界値を有
する非晶質金属細線が最初に磁化反転を生じ最初のパル
スを発生する。しかし従来、磁化反転した非晶質金属細
線により、隣接する非晶質金属細線に対する磁界の有効
値が変化し、単独の場合とは全く異なった励振磁界値で
次のパルスが発生することがある。この非晶質金属細線
間の相互干渉を減少させる手段として、非晶質金属細線
間の相互間隔を数mm以上に広げることが有効であるが、
間隔が大きいと識別マーカの幅が大きくなり、マーカと
しての実用性が低下する。
そこで本発明は、この非晶質金属細線間の相互干渉を
防ぐために、マーカ内の各非晶質金属細線の並列配置す
る方法において、各々の非晶質金属細線の少なくとも一
端部が隣接する非晶質金属細線の端部より長手方向に、
好ましくは1mm以上の間隔でずらして配置することを特
徴とする。
以下、本発明を図に基づいて、より具体的に説明す
る。第2図は従来のマーカにおける非晶質金属細線の配
置方法を示す図であり、該金属細線が5本の場合を示し
ている。図中の1、2、3、4、5は各々異なった大バ
ルクハウゼン不連続発生磁界値を有する非晶質金属細線
であり、6は該金属細線を把持するための識別マーカ構
成材料である。第2図において、各5本の非晶質金属細
線は同じ長さで、かつ各々の両端部は長手方向に対して
全て揃えられて配置されている。一方第3図、第4図、
第5図はそれぞれ本発明の配置例を示す図である。第3
図は各非晶質金属細線は同じ長さでありながら、その両
端部は隣接する他の非晶質金属細線の端部とは長手方向
にずれて配置されている。第4図、第5図は各非晶質金
属細線の長さを変更し、第4図では一端部のみ(図では
右側)、第5図では両端部が隣接する他の非晶質金属細
線の端部とは長手方向にずれて配置されている。この各
端部の長手方向のずれの間隔(L)の最小限界値は隣接
する金属細線との間隔(d)によって異なるが、励えば
d=1mmの時、Lの最小値は1mmである。尚本発明に於い
ては、ずれの間隔(L)の最小値は1mmが好ましいが、
金属細線間の距離(d)が十分大きい場合は、Lは1mm
より小さくてもよい。又d、Lは論理的には最大の限界
値は存在しないが、物品識別マーカの許容される大きか
から自ずと決定される性格のものである。なお、図では
マーカ内の各非晶質金属細線に対するd、Lの値が同一
に描かれているが、特に同じ値に限定されるわけではな
く、d、Lの値がマーカ内で異なっていても良く、また
マーカ内で第3図、第4図、第5図の配置が混在してい
ても本発明の効果は失われない。第4図、第5図の如く
非晶質金属細線の長さを変更する場合は、大バルクハウ
ゼン不連続発生磁界値が最も小さい細線の長さを最も短
くし、発生磁界値の順に長くしていくのが好ましい。
本発明のマーカは、マーカ内に識別用の信号発生手段
として、各々異なった大バルクハウゼン不連続発生磁界
値を有する非晶質金属細線を少なくとも2種含有し、長
手方向の少なくとも一方の端部が隣接する非晶質金属細
線の端部より長手方向に1mm以上の間隔でずれているこ
とを好ましい要件としているのであって、マーカの他の
構成要素を特に限定するものではなく、例えば粘着剤付
きフィルム間に2種以上の非晶質金属細線を平行に並べ
てラミネートした物でもよく、プラスチックケース内に
非晶質金属細線を並べて配置した物でもよい。
(実施例) 次に、図を用いて本発明を実施例により具体的に説明
する。
実施例1 合金組成が原子%でFe39Co39Si9B13、細径が50μmの
非晶質金属細線を熱処理することにより大バルクハウゼ
ン不連続特性を有する非晶質金属細線を作成した。
このとき、第1表に示すように熱処理条件を変更する
ことにより、大バルクハウゼン不連続発生磁界値(H
*)が各々0.3、0.6、1.1、1.8、2.6(Oe)の5種類の
非晶質金属細線を得た。
これらNo.〜の5種類の非晶質金属細線を、プラ
スチック板上に長さ50mm、横方向の細線間の間隔(d)
を1mmで第3図の方式で金属細線番号1〜5に対応して
配置してマーカを構成した。長手方向のずれの間隔
(L)が1、2、5mmの3種類についてマーカを構成し
た。なお、比較のために、従来の第2図の配置方式のマ
ーカも作成した。入射磁界として60Hzの三角波、振幅値
3(Oe)で励磁し、巻数600の検出コイルを用いて発生
する時系列パルスを測定し各5つのパルスが発生してい
る時点の励磁磁界値を読み取った。このマーカとしての
各パルス発生磁界値と、第1表に示されている各金属細
線単独でのH*との差を各非晶質金属細線に対応するパ
ルスの位相ずれの値として第2表に示す。負の値は、マ
ーカのパルス発生磁界値が第1表のH*の値より低いこ
とを表わしている。位相ずれの総和は各値の絶対値の和
である。
第2表から明らかなように、本発明の配置方式によっ
て各パルス発生磁界値の位相ずれは減少していることが
示されている。
実施例2 実施例1と同じ5種類の非晶質金属細線を用いて、第
4図及び第5図の配置方式でマーカを構成した。No.
の金属細線の長さを50mmとし、各々の配置方式について
L=2及びL=4mmの2種類で構成し、実施例1と同様
の測定を行った結果を第3表に示す。
実施例1と同様に、本発明による配置方式によって各
パルス発生磁界値の位相ずれを減少させ得ることが示さ
れている。
(発明の効果) 本発明のマーカによれば、非晶質金属細線間の相互干
渉を低減出来、パルス信号の位相のずれを小さくするこ
とが出来るので、物品の識別又は同定を誤認することが
ない。又非接触で簡単にしかも人手を介入せず連続的に
行うことができ、工場等の環境の悪い条件下でも有効に
動作する物流管理等に適した物品識別を行うことが出来
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の物品識別マーカにより得られる時系列
パルスの一例(上段)及び外部励磁(下段)を示す測定
図、第2図は非晶質金属細線の従来の配置方式を示す平
面図、第3図、第4図、第5図は各々本発明による配置
方式の一例を示す平面図である。 1〜5……非晶質金属細線、 6……金属細線把持用材料、 11〜15……金属細線から発生するパルス信号、 d……細線間距離、L……細線間のずれの間隔。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山下 満男 神奈川県川崎市川崎区田辺新田1番1号 富士電機株式会社内 (72)発明者 勝山 昭史 神奈川県川崎市川崎区田辺新田1番1号 富士電機株式会社内

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】入射磁気エネルギーに応答して関連する物
    品識別装置に出力信号を発生させるための成分として、
    その磁気ヒステリシスループにおける大バルクハウゼン
    不連続の発生磁界値が各々異なっている少なくとも2種
    の非晶質金属細線が、長手方向に並列に配置されている
    物品識別用マーカであって、各々の非晶質金属細線の長
    手方向の少なくとも一方の端部が、隣接する他の非晶質
    金属細線の端部と互いに長手方向にずれていることを特
    徴とする物品識別用マーカ。
  2. 【請求項2】長手方向のずれが1mm以上である請求項1
    記載の物品識別用マーカ。
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