JP2709492B2 - フユエルインジエクタ用コアーの製造方法 - Google Patents

フユエルインジエクタ用コアーの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、フュエルインジェクタを構成するコアー
に関し、詳しくはフュエルインジェクタの内部において
スリーブを収容しているコアーに関する。
〔従来の技術〕
従来より周知のフュエルインジェクタの多くは第31図
のような構成になっている。図において符号201は筒状
のボデーを示す。このボデー201内には、夫々磁性材料
で形成された筒状のコアー202と、筒状のアマチャ203
と、そのアマチャ203と一体化されているニードル部材2
03aとが配置されている。コアー202の中間に形成した磁
路用の鍔204の周囲はボデー201に連結している。進退す
るアマチャ203の外周面205はボデー201の内面で軽やか
な進退を自在に支持されている。コアー202の外周には
磁界発生用のコイル206が配置され、コイル206への通電
中はアマチャ203が巻ばね207のばね力に抗して後退し、
ノズル208から燃料を噴出させるようにしてある。巻ば
ね207の後端209は、コアー202のスリーブ挿通孔210の内
に位置するスリーブ211により支えられている。
〔発明が解決しようとする課題〕 上記のフュエルインジェクタ200における巻ばね207の
ばね力が強いとアマチャ203の動作タイミングが遅れ
る。ばね力が弱いと動作タイミングが早くなる。動作タ
イミングが遅速すると燃料の噴出量が不適正になる問題
点が生じる。
上記問題点を発生させない為には上記ばね207のばね
力を正しい値に調整しなければならない。その為には、
一般に挿通孔210にスリーブ211を挿入するときに、図示
外の計測機を用いて、スリーブ211がばね207から受ける
反撥値を計測しながら挿入する。スリーブ211の挿入量
が逐次増すと上記反撥値も逐次増加する。正しい値の反
撥値が得られたらスリーブ211の挿入を止め、スリーブ2
11を動かすことなくその位置で正確にコアー202に固定
する。
しかしスリーブ211の外周と、挿通孔210の内周面との
間に上記挿入に抗する不測的な摩擦抵抗があると、上記
ばね207からの反撥値の計測に誤差が生じる。この誤差
を予防するには挿通孔210の内面の仕上は滑らかでなけ
ればならない。一方、スリーブ211の外周寸法に比較し
て挿通孔210の内径寸法を大きくすることが考えられ
る。しかし、両寸法差を大きくすると、上記の“スリー
ブ211の挿入を止め、スリーブ211を動かすことなくその
位置で正確にコアー202に固定する”という作業は不可
能になる。即ち、コアー202とスリーブ211との間の間隙
が大きいと、コアー202にスリーブ211をかしめ付けるこ
とにより、コアー202に対してスリーブ211は僅かに偏心
する。そうすると上記ばね207の後端に対するスリーブ2
11の相対位置も変位し、ばね207のばね力を変化させ
る。
このような事情から従来は、上記コアー202の挿通孔2
10をドリルを用いて孔あけ加工した後、リーマーで仕上
げ、更にバフ仕上する等、挿通孔210の内面の仕上げに
は多くの手間をかけていた。しかし、挿通孔210の内面
を最初にドリルを用いて切削すると、その後の仕上加工
によってもミクロン単位の微少な傷が残る。この微少な
傷が上記スリーブ211の進退動に微妙な影響をもたら
し、そして上記反撥値の計測に微妙な誤差をもたらす。
またドリルを用いて切削した挿通孔210の内面に微細な
傷が残っていると、その傷からは、後日、ミクロン単位
のチップが脱落し、弁の正常な作動を阻害する問題点が
あった。
本発明は以上のような点に鑑みてなされたもので、そ
の目的とするところは、上記コアー202の挿通孔210の内
周面の寸法精度を高くすることができ、その上、挿通孔
210の内面が滑らかになり、上記挿通孔210の内面をスリ
ーブ211が滑らかに進退できるようになるコアーの製造
方法を提供することである。
〔課題を解決する為の手段〕
上記目的を達成する為に、本願発明は次の様な手段を
講じたものである。
即ち本発明は、 棒状のワークピースを軸線の方向に圧縮して、そのワ
ークピースの中間位置に鍔を形成するステップと、 上記鍔が形成されたワークピースの周囲をダイで保持
することと、ワークピースにおいて軸線方向の一方の面
を、端面の中央部がワークピースから流出するスラグを
受入る為の凹部となっており、かつ、その周囲の部分が
ワークピースを受ける為の面となっている受型で受ける
こと、とを含むステップと、 パンチを、上記受型とは反対の側から、ワークピース
に対し上記鍔の位置を越えて所定の深さまで連続して押
し込むステップと、 上記パンチの押し込みによって穿孔された孔の底の残
存物を他のパンチによって打ち抜くステップとを含むフ
ュエルインジェクタ用コアーの製造方法を特徴とするも
のである。その作用は次の通りである。
〔作用〕
棒状のワークピースは軸線の方向に圧縮されて、中間
位置に鍔が形成される。次にその鍔が形成されたワーク
ピースはダイで保持されると共に、軸線方向の一方の面
が、受型で受けられる。その受型は、端面の中央部がワ
ークピースから流出するスラグを受入る為の凹部となっ
ており、その周囲の部分がワークピースを受ける為の面
となっている。次にワークピースには、受型とは反対の
側から、パンチが鍔の位置を越えて連続して押し込ま
れ、スリーブ挿通孔が形成される。次に、そのスリーブ
挿通孔の底の残存物が他のパンチによって打ち抜かれ、
フュエルインジェクタ用コアーが出来上がる。
〔実施例〕
以下本願の実施例を示す図面について説明する。第1
図においてAに示す如く、まず素材1が準備される。素
材1としては、フュエルインジェクタ用のコアーとして
必要な磁気特性を有する材料が用いられる。例えば、電
磁快削ステンレス鋼(米国特許No.USP4714502に示され
たもの)が用いられる。あるいは、米国の鋼材規格にお
けるAISI405の鋼材に相当する電磁ステンレス鋼が用い
られる。上記のAISI405の鋼材は約13%のクロムを含
む。上記素材1の形態は例えば図示の如きコイル状であ
る。またシュウ酸被膜処理がなされている。
上記コイル状の素材1は所定の長さに切断されて、第
1図Bに示される如き丸棒状のワークピースW1となる。
次に上記ワークピースW1はすえ込み加工がなされる。こ
の加工によって、上記切断の工程において生じた素材の
だれ即ちシェアードループが除去される。上記ワークピ
ースW1にはまた、一端の周縁3に丸みを付ける加工がな
されて、第1図Cの如きワークピースW2となる。更にそ
のワークピースW2には他端の周縁4に丸みを付ける加工
がなされて、第1図Dの如きワークピースW3となる。こ
れらの丸みを付ける加工は、次の研摩工程においてばり
が生ずることを防止する為に行なう。この加工は例えば
上記すえ込み加工と同時に行なわれる。
上記すえ込み加工と丸みを付ける加工とは、例えば第
2図の如きトランスファーホーマーを用いて連続的に行
なわれる。しかし各々の加工を夫々独立した装置で行な
ってもよい。
尚第2図、第5〜25図に示される種々の部材におい
て、夫々均等の機能を有する部材には、同一の数字符号
に各部材が第1図のC〜Pのいずれのワークピースを作
る為に用いられる部材であるかを示す為の英文字(第1
図のC〜L〜Pに示されたワークピースと対応する英文
字c〜L〜p)が夫々添えられた符号を付す。そして本
説明の中においては各々の部材についての重複する説明
を省略する。
以下上記第2図の装置による上記加工について説明す
る。上記コイル状の素材1は図示外の材料送りローラに
よって第2図の切断装置31に送られる。即ち、素材1は
第2図の下方から上方へ向けて送り込まれ、ベース32に
取付けてあるクイル33から突出する。突出した素材1は
丸カッタ35を通ってストッパ34で止まる。次にカッタ35
は矢印方向に前進移動せられる。その結果、上記突出し
た素材1は切断されて、所定長さの丸棒状のワークピー
スW1となる。上記カッタ35はプッシャー装置36の上まで
前進する。するとプッシャー装置36におけるプッシャー
ピン37がワークピースW1をカッタ35から押し出す。押し
出されたワークピースW1は予め待機しているチャック38
によって保持される。次に上記チャック38はワークピー
スW1をダイケース39cに取付けてあるダイ40cの前面側に
運ぶ。ダイ40cはそれのダイキャビティの底に、丸み成
形部41cを有する。上記運ばれたワークピースW1は、上
記ダイ40cのキャビティ内に入れられる。次にパンチホ
ルダ42cに保持されているパンチ43cが前進し、ワークピ
ースW1をダイ40cの孔内に押し込む。その結果、ワーク
ピースW1はキャビティ内にすえ込まれる。またそのすえ
込みの結果、一端の周縁3に上記丸み成形部41cによっ
て丸みが付けられ前記ワークピースW2となる。尚上記パ
ンチホルダ42cは図示外の移動ラムに周知の如く取付け
てある。次にパンチ43cが後退後、ノックアウトプラン
ジャ44cが上記ワークピースW2をダイ40cのキャビティか
ら押し出す。押し出されたワークピースW2は再びチャッ
ク38に保持される。チャック38はワークピースW2を一端
と他端の位置が反対になるよう180°反転させる。そし
てそれを次のダイ40dの前面側に運ぶ。運ばれたワーク
ピースW2はダイ40dによってすえ込み加工される。即ち
ダイ40dのキャビティ内に入れられ、パンチ43dによって
ダイ40dのキャビティ内にすえ込まれる。その結果、丸
み成形部41dによって他端の周縁4に丸みが付けられ、
前記ワークピースW3となる。次にパンチ43dが後退後、
ノックアウトプランジャ44dがワークピースW3をダイ40d
のキャビティから押し出す。押し出されたワークピース
W3は次工程に運ばれる。
上記ワークピースW3は両端面5,6が軸線と垂直な状態
に研摩されて、第1図EのワークピースW4となる。この
研摩は、両端面5,6において脱落し易くなっている凹凸
を除去する為に行なう。その凹凸は前記素材1の切断の
結果できたものである。また脱落とは、ワークピースを
第1図のF〜Kに示される形状に加工する工程において
端面5,6からパンチが押込まれるときに、そのパンチに
よってそれらの端面から剥離されることを言う。尚その
剥離があると、剥離した粒子が上記パンチによって形成
される孔の内面に軽く喰い込んだままに残る。それらの
粒子は、インジェクタの組立を行なうとき、あるいは完
成したインジェクタを使用しているときなどに脱落し、
ノズル詰りなどの問題を引き起こす。しかしそのような
凹凸が除去される為、上記問題の発生は無い。
また上記研磨によって、多数のワークピースW4の長さ
が揃う。多数のワークピースW3は前記すえ込みによって
太さが揃っている。従って長さが一定になったワークピ
ースW4は重量が一定となっている。
上記研摩は、例えば第3、4図に示される研摩装置を
用いて行なう。多数のワークピースW3は送り込み装置45
のシュート46の上に整列される。整列されたワークピー
スW3は押え体47,47′によって押えられている。押え体4
7,47′が夫々矢印のように作動することによって、ワー
クピースW3はキャリヤ48に多数形成されている凹状の素
材保持部49に一つずつはめ込まれる。はめ込まれたワー
クピースW3は押え用の索体50によって押えられて、保持
部49からの脱落が防止される。索体50としては例えばチ
ェーンが用いられる。そのチェーン50は多数のスプロケ
ット51〜54に掛けられており、キャリヤ48の回動に伴な
い移動する。保持部49に保持されたワークピースW3は、
キャリヤ49の回動に伴ない二つの回転砥石55,56の間に
入る。そしてそれらの砥石55,56によって両端面5,6が研
摩され、第1図Eに示されるワークピースW4となる。ワ
ークピースW4はキャリヤ48の回動によって符号57で示さ
れる場所に至る。そこでワークピースW4は索体50の押え
から解放され、キャリヤ48から離脱し、排出シュート5
7′を通して排出される。
上記両端面5,6の研摩は一方ずつ行なっても良い。ま
た研摩に代えてシェービング加工によりそれらの端面の
凹凸の除去が行なわれる場合もある。
上記研摩加工を終えたワークピースW4は、洗浄がなさ
れて、表面に付着している切り削や油が除去される。
洗浄を終えたワークピースW4は、次に第1図のF〜I
に示されるような形状への塑性加工を経て、Jに示され
る形状のワークピースW9にされる。F〜Jに示される形
状への塑性加工の各々は冷間鍛造加工機によって行なわ
れる。例えば第5〜9図に示される5つのステーション
を持ったトランスファーホーマーによって行なわれる。
上記ホーマーは、上記の5つのステーションを有するダ
イブレスト30と、そのダイブレスト30に向けて進退自在
のラムとを備える。ラムがダイブレスト30に向け進退す
ることによって、各ステーションでの後述の如き加工が
同時的に行なわれる。尚上記各加工は、夫々個別の鍛造
プレスで行なうこともできる。
上記ワークピースW4は先ずFに示されるような形状の
ワークピースW5にされる。ワークピースW5は、一方の端
面の中央部に凹部11が形成されている。他方の端の周縁
12には丸みが付けられて先端がやや細く絞られている。
上記凹部11はセンターとも呼ばれ、次工程でパンチの押
込をするときのパンチのガイドとなるものである。また
上記周縁12の丸みは次工程での絞り加工を容易化する為
のものである。
これらの加工は、第5図に示されるステーションで行
なわれる。上記ワークピースW4はダイ40fのキャビティ
に入れられ、パンチ43fがそのワークピースW4に押し付
けられる。この場合、ノックアウトプランジャ44fはワ
ークピースW4の端面の位置決を行なう。上記パンチ43f
の押付の結果、ワークピースW4は上記凹部11が形成され
ると共に、ダイ40fのキャビティの底の丸み成形部41fに
よって上記周縁12に丸みが付けられてワークピースW5と
なる。その後、パンチ43fが退けられ、ワークピースW5
がノックアウトプランジャ44fによってキャビティから
押し出される。
次に上記ワークピースW5は、第1図のGに示されるよ
うにフィルタ取付孔13と細径部14が成形されてワークピ
ースW6となる。
これらの加工は、第6図に示されるステーションにお
いて、ダイ40g、パンチ43g、ノックアウトプランジャ44
g等を用いて前記の工程と同様に行なわれ、ワークピー
スW6ができ上がる。この加工の場合、上記凹部11はワー
クピースW5に対するパンチ43gの位置決めを行なう。そ
の結果、フィルタ取付孔13は偏心することなく正しくワ
ークピースW5の中心に形成される。尚ストリッパスリー
ブ59gはパンチ43gをガイドし、その前進を真直ぐならし
める。またパンチ43gがダイ40gから後退する場合、上記
ストリッパスリーブ59gはワークピースW6を押さえて、
ワークピースW6がパンチ43gにくっついたままダイ40gか
ら抜き出されることを防ぐ。このストリッパスリーブ59
gはパンチ43gが後退した後、後退する。
上記加工の場合、ワークピースW5はシェアードループ
が既に除去されている。この為、細径部14の先端面が傾
斜することは僅少である。
次に上記ワークピースW6は、第1図のHに示されるよ
うに鍔204が成形されてワークピースW7となる。また、
このワークピースW7には、フィルタ取付孔13の開口部の
周縁16の矯正加工と、孔底の周縁17の角度の修正と、次
工程の為の凹部即ちガイド用のセンター18の形成とが同
時に行なわれている。
これらの加工は第7図に示されるステーションにおい
て行なわれる。このステーションには、ダイブレスト30
にダイ40hが備わっている他に、ラムにもう一つのダイ6
0hが備わっている。このダイ60hはラムに取付けられた
ダイホルダ61hに固定してある。第10〜12図に明示され
るように、上記各々のダイ40h,60hにおけるキャビティ
は、大きい直径の鍔成形用凹部62,64と、小さい直径の
ワークの周囲保持用凹部63,65とを夫々含む。凹部62の
底面66は全体に平担に形成されている。凹部64の底面67
は周囲の部分が斜面68となっている。上記両底面66,67
には、夫々内周側の部分69,70に、多数の細かい凹溝や
凸条が、第13、14図に示されるように同心円状に形成し
てある。これらは後から詳しく述べるように、ワークピ
ースの材料の塑性流動に抵抗を与える。
該ステーションにおけるワークピースの加工は以下の
通りである。ワークピースW6の一端部はダイ40hの凹部6
3に装着される。次にダイ60hがパンチ43hと共にダイ40h
に向け前進する。この前進により、パンチ43hの先部が
フィルタ取付孔13に嵌合すると共に、凹部65がワークピ
ースW6の他端部に被さる。上記フィルタ取付孔13に対す
るパンチ43hの嵌合は、鍔204の成形中でのフィルタ取付
孔13の変形防止の為である。上記ダイ60hの前進が継続
し、ワークピースW6はその中間部が第10図のように圧縮
され始める。圧縮されたワークピースW6の中間部の材料
は、塑性流動によって凹部62,64の底面66,67に沿って半
径方向に進行する。各底面66,67における内周側の部分6
9,70は上記のように凹溝や凸条が形成されて、上記材料
の進行方向に粗面になっている。それらの粗面は上記材
料の流動に対し抵抗を与え、流動速度を抑制する。上記
部分70の幅(半径方向の寸法)は部分69のそれよりも大
きくしてある。従ってその部分70による上記抑制の度合
は、部分69によるそれよりも大きい。この為、第11図に
示されるように、底面69に沿った材料の進行に比べ底面
70に沿った材料の進行が遅れる。上記底面70に沿った上
記材料の進行が更に進むと、流動する材料が斜面68にさ
しかかる。斜面68では一般に材料の進行が速く進む。従
って、第12図に示されるようにダイ60hの前進が完了し
たときには、底面66に沿って流れてきた材料の先端と、
底面67に沿って流れてきた材料の先端とがほぼ同時に、
ダイ40hの前面71とダイ60hの前面72とが合さる場所に到
達する。このような状態で鍔204の成形が行なわれる
為、鍔204の外形は上記両底面66,67の形状通りに正確に
仕上る。しかも、上記両ダイ40h,60hの前面71,72相互の
すき間へ材料が流出することによるフラッシュの形成も
ない。尚上記各底面66,67に沿った材料の進行速度が上
記のように適切に制御されるよう、上記部分69,70の幅
が選定される。他の手段としては、凹溝や凸条の大き
さ、あるいは配列のピッチを、部分69と部分70とで違え
てもよい。
上記粗面となっている部分69,70がいずれも底面66,67
において内周側の部分であることは次のような利点をも
もたらす。材料が底面66,67に沿って流動するとき、底
面の内周側の部分ほど流動速度が速い。また流動によっ
て材料が底面に対し滑ると、そこでの摩擦による大きな
発熱がある。その発熱の程度は、材料を溶融させ、溶融
した材料が底面に溶着するほどである。しかし上記部分
69,70では材料が凹凸に食い込む為、滑りが防止され
る。しかも部分69,70は内周側にある為、上記流動速度
が最も速い部分即ち発熱が最も大きくなる部分でその発
熱が防止される。その結果、上記溶着が防止される。尚
上記粗面を構成する凹溝や凸条は、同心円状以外の形状
に形成してもよい。例えば螺旋状でもよい。
上記鍔204の成形の場合、ダイホルダ61hの先端部がダ
イケース39hに形成されているガイド用の凹部74に嵌合
しその前進が案内される。その結果、両ダイ40h,60hが
正しく芯合せされ、鍔204の寸法精度が高まる。
上記のような鍔204の成形と並行して、上記パンチ43h
によって上記周縁16,17の加工が行なわれ、ピアサ73hに
よってセンター18の成形がなされる。上記成形後、ダイ
60hやパンチ43hが後退される。このときストリッパスリ
ーブ59hは前記スリーブ59gと同様の機能を果たす。その
後、スリーブ59hが退けられ、更にピアサ73hによって、
成形されたワークピースW7が押し出される。
次に上記ワークピースW7は、第1図のIに示されるよ
うに、小孔即ちばね装入孔19が成形されてワークピース
W8となる。
この加工は第8図に示されるステーションにおいて行
なわれる。このステーションでは、ダイケース39iがダ
イスリーブ76i内に矢印方向の進退を自在に納められ、
ばね77iにより図における上方へ向けての付勢力を受け
ている。ワークピースW7はダイ40iのキャビティに装着
される。ダイ60i及びパンチ43iがダイ40iに向け前進す
ると、ワークピースW7は両ダイ40i,60iに保持され、か
つパンチ43iがフィルタ取付孔13内に侵入する。この侵
入はフィルタ取付孔13の変形防止の為である。ダイ60i
が引き続き前進してダイ40iを押すと、ダイケース39iは
ばね77の付勢力に抗して後退する。その結果、ピアサ78
iがワークピースW7に対し相対的に入り込み、ばね装入
孔19が成形され、ワークピースW8ができ上がる。成形完
了後、パンチ43iやダイ60iが後退され、更にストリッパ
スリーブ59iも退けられる。その後、ノックアウトスリ
ーブ79iによってワークピースW8がダイ40iから押し出さ
れる。
次にワークピースW8は第1図のJに示されるように、
フィルタ取付孔13の孔底に次工程で用いられる受型のサ
ポート孔20が形成される。またばね装入孔19の孔底に凹
部即ちセンター21が形成されてワークピースW9となる。
これらの加工は第9図に示されるステーションで行な
われる。ワークピースW8はダイ40jのキャビティに装着
される。次にダイ60j及びパンチ43jがダイ40jに向け前
進する。この前進により、パンチ43jがフィルタ取付孔1
3に侵入し、またダイ60jがワークピースW8に被さる。尚
もダイ60iの前進が続くと、ばね装入孔19の孔底がピア
サ78jに押し当たる。その結果、ピアサ78jによってセン
ター21が形成される。またパンチ43jの先端はフィルタ
取付孔13の孔底に押し当たり、サポート孔20が形成され
る。然る後、ダイ60j、パンチ43j、スリーブ59j等が後
退され、出来上がったワークピースW9がノックアウトス
リーブ79jによって押し出される。
以上のように形成されたワークピースW9には、洗浄
と、焼鈍と、表面硬化処理が施される。洗浄はワークピ
ースW9に付着している油を除去する為に行なう。油が付
着したまま焼鈍すると、油が炭化し、カーボンがワーク
ピースW9に焼付く。しかし油が予め除去される為、その
ようなカーボンの焼付が防止される。焼鈍は、上記F〜
Jの加工によって硬化しているワークピースW9の各部を
軟化させる為に行なう。この軟化により、後に述べるス
リーブ挿通孔の穿孔が容易となる。焼鈍は例えば750℃
で3時間程行なう。無酸化焼鈍が好ましい。表面硬化処
理の目的は後に述べるスリーブ挿通孔の穿孔工程の説明
で明らかになる。尚その処理は、例えばショットブラス
ト加工によって行なう。
表面硬化処理を終えたワークピースW9は、更に第1図
のK〜Pに示される各形状への加工がなされて、フュエ
ルインジェクタ用のコアー202となる。K〜Pの加工の
各々は冷間鍛造加工機、例えば第15、17〜20図に示され
る5つのステーションを持ったトランスファーホーマー
によって行なわれる。上記ホーマーは、上記の5つのス
テーションを有するダイブレスト80と、そのダイブレス
ト80に向けて進退自在のラムとを備える。ラムがダイブ
レスト80に向け進退することによって、各ステーション
での後述の如き加工が同時的に行なわれる。尚上記各加
工は、夫々個別の鍛造プレスで行なうこともできる。
上記ワークピースW9は先ず第1図Kに示されるような
スリーブ挿通孔210が形成されたワークピースW10とな
る。その形成は、挿通孔の孔底に薄い部分27が残存する
状態に行なう。尚符号28は上記スリーブ挿通孔210の形
成のときに材料の塑性流動によってできたチップ状のス
ラグを示す。
この加工は第15、16図に示されるステーションで行な
われる。第15図に示されるように、ワークピースW9はダ
イ40kのキャビティに装着されると共に、フィルタ取付
孔13には受型82が位置する。またダイ60kがワークピー
スW9の細径部14に被せられる。このようにしてワークピ
ースW9の周囲がダイ40k,60kによって保持される。上記
受型82はインサートパンチとも呼ばれ、中空に形成され
ている。インサートパンチ82の先端部の外形は第21図に
示されるように細く絞られて細径部83となっている。そ
の細径部83はワークピースW9の凹部20にぴったりと嵌合
する。細径部83の先端面84は環状の当面となっている。
当面84に囲まれた内側は、上記スラグ28の受入が可能な
凹部85となっている。この凹部85は有底でもよい。この
ような受型82によって、ワークピースW9における軸線方
向の一方の面が受けられる。
上記の状態において、パンチ43kがワークピースW9に
第16、22図に示す如く押込まれ、スリーブ挿通孔210が
形成される。この過程でパンチ43kによって排斥された
材料の一部は、インサートパンチ82の側へ塑性流動す
る。その流動はインサートパンチ82の外側及び内側へ向
かう。外側へ向かう流動によって、第16及び22図に示す
如く、ワークピースW9はノックアウトスリーブ79kの側
に伸びる。伸びた先端はノックアウトスリーブ79kに当
り、そこで伸長は止まる。一方、内側へ向かう流動によ
ってインサートパンチ82の凹部85にスラグ28が押し出さ
れる。このようにしてワークピースW9はスリーブ挿通孔
210を持ったワークピースW10となる。ワークピースW10
の成形が終わると、パンチ43k及びダイ60kが後退され、
続いてストリッパスリーブ59kが後退される。然る後、
ノックアウトスリーブ79kによってワークピースW10がダ
イ40kから押し出される。
上記パンチ43kがワークピースW9に押し込まれる過程
におけるワークピースの材料の塑性流動について、第24
図に基づき詳細に説明する。P1で示されるようにパンチ
43kがワークピースW9に押し込まれ始める。このときパ
ンチ43kによって押しのけられたワークピースの材料
は、インサートパンチ82の側に僅かに流れ、B1で示すよ
うに、凹部85への僅かな材料28の押出がある。しかし押
しのけられた材料のほとんどは矢印A1で示されるように
後方へ向けて流動する。その結果、細径部14の長さが矢
印A1方向に伸びる。この場合、細径部14の伸長に伴な
い、ストリッパスリーブ59kは細径部14の先端に押され
て後退する。パンチ43kがP2で示されるように鍔204の付
近まで押し込まれる過程でも同様である。即ちワークピ
ースW9の材料は矢印A2で示されるように主として後方へ
向けて流動し、凹部85への材料28の押出はB2の如く小さ
い。パンチ43kが鍔204の根元近くまで至ると、後方へ向
けての材料の流動はなくなる。P2の後、P3で示されるよ
うにパンチ43kが鍔204の部分を通過するころから、イン
サートパンチ82の側へ向けての材料の流れが大きくな
る。その結果、凹部85への材料28の流出がB3の如く大き
くなる。パンチ43kがP4,P5で示されるように更に前進す
ると、上記凹部85内への材料28の流出がB4,B5の如く更
に増大する。パンチ43kがP5で示す所定の深さの位置ま
で至ると、パンチ43kの押込は終了される。尚パンチ43k
が鍔204の箇所を通過するとき、ワークピースW9の材料
は矢印A2′,A3で示す如く鍔204に向けても流動する。こ
の流動により鍔204はダイ40k,60kの各キャビティの内面
にぴったりと押し付けられる。
上記パンチ43kの押込が行なわれる過程において、ダ
イ60kの後退は完全に防止されている。従って上記材料
が矢印A1,A2で示す如く後方へ流動しても、それに引か
れてダイ60kが後退することはない。その結果、鍔204と
ダイ60kの間にすき間ができてそこへ材料が膨れ出る事
故は生じない。
ワークピースW9の断面積は鍔204の前後で大きく変わ
っている。従って、パンチ43kがP2からP4で示されるよ
うに鍔204の部分を通過するとき、パンチ43kに引張りや
圧縮の応力が加わる。これらの応力が過大であると、パ
ンチ43kが折損する。しかしパンチ43kの押込によるワー
クピースW9の材料の圧縮の力の大半は、インサートパン
チ82の凹部85内に材料が流出することに費やされる。そ
の為パンチ43kに加わる応力は小さい。従って、パンチ4
3kの折損の可能性は極めて少ない。また上記応力が小さ
い為、形成されたスリーブ挿通孔210は軸線方向にわた
る内径の変化が殆んどない。
またワークピースW9において細径部14以外の部分は、
その断面積がパンチ43kの断面積に比べて非常に大き
い。従って、パンチ43kが押し込まれたときの上記部分
の断面減少率は小さい。一般に、断面減少率が小さいと
材料の塑性流動が起こりにくい。すると材料の圧縮圧力
が高まり、パンチには遠心性の作用が及ぶ。即ち、パン
チ43kには、それをワークピースW9の軸線から横へずら
す力が及ぶ。しかし本実施例では、インサートパンチ82
の凹部85に材料の一部28が流出することによって、ワー
クピースW9の材料の圧力が逃がされる。この為、上記遠
心性の作用の発生が防止される。このことは、スリーブ
挿通孔210を偏心させる作用を消滅させるに役立つ。
上記インサートパンチ82の先端の細径部83の外周面
は、前記工程で形成されたサポート孔20の内周面にすき
間なくぴったりと宛がわれている。従って上記凹部85に
押し出される材料28がパンチ82に半径方向外向きの大き
な力を及ぼしても、その力はサポート孔20の内周面で受
けられる。更にワークピースW9を介してダイ40kで受け
られる。その結果、インサートパンチ82の破損が防止さ
れる。
インサートパンチ82の先端の受面84は皿状に形成され
て、インサートパンチ82の軸線と直交する面に対し角度
α(例えば15°)を有している。この角度は、パンチ43
kの先端面における外周部分86の傾斜角度と同じにして
ある。上記のような角度αがある結果、上記パンチ43k
の押込によって排斥される材料は、インサートパンチ82
の凹部85に向けて円滑に流れる。その流れによって、パ
ンチ43kの求心性が高まる。このことは、スリーブ挿通
孔210を芯精度高く形成するに役立つ。即ちスリーブ挿
通孔210を偏心なく形成するに役立つ。またスリーブ挿
通孔210が芯精度高く形成されると、受面84と先端面86
との間に残存するウェブ27は、全周にわたって均一な厚
みとなる。この均一性は、次の工程におけるスラグ28の
除去を容易にする。
上記パンチ43kによるスリーブ挿通孔210の穿孔の場合
において、パンチ43kの押込の深さは次のように定め
る。
パンチ43kを押し込んでいく過程で、パンチ43kの先端
面86と受型82の受面84との距離が極度に近くなってくる
と、パンチ43kが通って形成された孔の内周面におい
て、上記先端面86と受面84との間に残る部分27に近接し
た箇所で、材料の破断が生じ始める。破断部分は材料の
組織が不連続となっている。そのような部分は、材料の
粒子が大きく、かつ脱落し易い。脱落した粒子は前述の
ような問題を引き起こす。従って、破断が生じ始める以
前の深さでパンチ43kの押し込みを終える必要がある。
しかし残った部分27は次の工程で打ち抜かねばなら
ぬ。打ち抜きに要する力は、部分27の厚みが薄い程小さ
くて足りる。従ってパンチの押込深さは、上記部分27の
厚みが薄くなるよう出来るだけ深くするのが良い。
また打抜を行なうとそこに破断面ができる。この破断
面は、上記部分27が薄くされている程そこに大きな応力
が加わっている為、粒状性が細かい。反対に、厚い程そ
こに加わっている応力が小さい為、粒状性が粗い。粒状
性が細かい破断面は上記の如き粒子の脱落が起り難い。
反対に、粗い破断面は脱落が起り易い。この点からも上
記部分27の厚みは薄いのが好ましい。
更にまた、打抜いた部分は、後述の内面仕上がなされ
ても、そこは粒子の脱落の可能性が無にはならない。こ
の為、その部分は前記スリーブ211を位置させる為の利
用が不能となる。この点からも上記部分27の厚みは薄い
のが好ましい。尚種々のフュエルインジェクタメーカの
規格では、利用が不能な範囲の寸法の許容限度がある。
例えば2mmや1.2mmなど。
これらの理由から、パンチの押込の深さは、パンチ43
kが通ってできた孔の内周面において材料の組織の連続
性が保たれ得る範囲で、パンチの先端面86と受型82の受
面84との間の距離ができるだけ小さくなるよう、極力深
くするのが好ましい。
次に、インサートパンチ82における凹部85の内径につ
いて述べる。内径の一つの好ましい値は、パンチ43kの
外径の例えば85%程である。この内径がパンチ43kの外
径に比べてあまり小さいと、上記凹部85への材料28の押
出に大きい力を要する。従ってパンチ43kに加わる負荷
が大きくなり、その折損を起こし易くなる。また押し出
された材料28の長さが長くなる為、インサートパンチ82
の破損を生じ易くなる。これらの理由から、その内径は
パンチ43kの外径の70〜80%以上にすると良い。反対に
内径が大きいと、上記部分27の厚みが未だ大きくても前
記の如きスリーブ挿通210の内面における破断が生じ始
める。この為、上記部分27を大きな厚みで残さねばなら
ぬ。従って、上記内径は、パンチ43kの外径の90〜95%
以下にすることが好ましい。しかし、スリーブ挿通孔21
0の内面において上記利用不能な部分の長さが長くて良
い場合は、上記内径はパンチ43kの外径と同径であるこ
とも可能である。
上記スリーブ挿通孔210の成形が行なわれる場合、ワ
ークピースW9は前述の硬化処理によって表面が硬化され
ている。従ってパンチ43kが押し込まれるときの材料の
塑性流動による摩擦によって、ワークピースW9の外周面
がダイ60kや40kの内面に溶着することが防止される。ま
たその硬化処理がショットブラスト加工により行なわれ
て、ワークピースW9の表面には細かな凹凸ができてい
る。この為、ワークピースW9の表面はダイ60kや40kの内
面に対する実質的な接触面積が比較的小さくなってい
る。これらのことにより、パンチ43kの押し込みが完了
した後におけるダイ60kの後退は容易であり、ダイ40kか
らのワークピースW10の押出も容易である。
上記のようにしてスリーブ挿通孔210が穿孔されたワ
ークピースW10は、スリーブ挿通孔210の孔底に残存した
部分27と押出されたスラグ28の除去が行なわれ、第1図
Lの如きワークピースW11となる。
上記作業は第17図に示されるステーションにおいて、
前記第8図のステーションの場合と均等の作用で行なわ
れる。即ち、ワークピースW10がダイ40Lのキャビティに
装着される。次にストリッパスリーブ59L及び前記とは
異なるもう一つの筒状の受型87即ち筒状のインサートパ
ンチがダイ40Lに向けて前進する。この前進によって、
スリーブ59LはワークピースW10の端に、受型87はフィル
タ取付孔13の孔底に夫々当接する。当接後それらはワー
クピースW10を押す。するとピアサ78LがワークピースW1
0のスリーブ挿通孔210に相対的に入り込み、スリーブ挿
通孔210の孔底に残存している薄肉部分27及びスラグ28
を打ち抜く。上記打抜の後、スリーブ59L及びインサー
トパンチ87が後退される。その後ノックアウトスリーブ
79Lが、上記打抜の完了したワークピースW11をダイ40L
から押し出す。尚打ち抜かれてパンチ87内に入った打抜
物(スラグ28及び部分27)は、スラグノック88によって
除去される。
上記打抜が完了したワークピースW11においては、第2
5図に示されるように、打ち抜かれた部分の内周面29
は、破断されたままの粗面となっている。また前記パン
チ43kによって穿孔されたスリーブ挿通孔210の内周面と
の間に段差89ができている。従って、次に上記内周面29
が第1図のM及び第26図に示されるように矯正される。
この矯正は第18図に示されるステーションにおいて行
なわれる。ワークピースW11はダイ40mのキャビティに装
着され、ダイ60mで押えられる。次にパンチ43mのテーパ
部90が上記内周面29に押し当てられる。その結果上記内
周面29は第26図に示す如き平滑なテーパ面91となる。こ
のテーパ面91の形成範囲は、スリーブ挿通孔210におい
て前記の利用不能な範囲の許容限度内に納まるように定
める。上記テーパの角度は例えば6°である。他には1
°〜10°程度の範囲が好ましい。上記テーパ面91は、フ
ュエルインジェクタの組立の場合においてフィルタ取付
孔13からスリーブ挿通孔210に向けてばね207やスリーブ
211を差込む場合に、その差込を容易化するガイドとし
て機能する。上記矯正が完了したワークピースW12は、
パンチ43mやダイ60mの後退の後、ノックアウトスリーブ
79mによってダイ40mから押し出される。
尚上記加工の場合、パンチ43mの先端のストレート部9
2や、ピアサ78mの先端のストレート部93が、スリーブ挿
通孔210内に差込まれる。これらの部分92,93は、上記テ
ーパの加工の場合におけるスリーブ挿通孔210の縮小変
形を防止する。
次に、ワークピースW12は、上記打抜や内周面の矯正
などの加工がなされている結果、スリーブ挿通孔210の
寸法精度が低下している恐れがある。そこでそのような
スリーブ挿通孔210の寸法精度を規格値まで向上させる
為にマスターパンチがスリーブ挿通孔210に通される。
その作業を終えたワークピースW13が第1図のNに示さ
れる。
上記作業は、第19図に示されるステーションで行なわ
れる。即ち、ワークピースW12はダイ40n,60nによって保
持され、マスターパンチ95がスリーブ挿通孔210に通さ
れる。尚マスターパンチ95はその先端にテーパ部96を介
して滑らかに連らなるやや細径のさぐり部97を有する。
このさぐり部97はパンチ95をスリーブ挿通孔210内へス
ムーズに案内する。その結果、スリーブ挿通孔210の内
面の傷つきが防止される。尚この工程は省略される場合
もある。
次に上記ワークピースW13には、第1図Pに示される
ように、鍔204に回り止用の多数のV型溝98が形成され
ると共に、フィルタ取付孔13の仕上げ加工が行なわれ、
コアー202が完成する。
上記加工は第20図に示されるステーションで行なわれ
る。このステーションにおけるダイ60pは、V型溝を成
形する為の多数の凸部が、鍔204を受け入れる為のキャ
ビティに形成してある。上記凸部がワークピースW13の
鍔204に押し付けられることによって上記V型溝98の形
成がなされる。
次に第27乃至第30図には本発明のもう一つの実施例が
示される。この実施例では、スリーブ挿通孔の穿孔が前
実施例とは反対の側から行なわれる。
即ち、前述のHまでの工程と同様にして鍔204の成形
がなされたワークピースに対しては、第27図のJ′に示
されるように細径部114の先端面に受型のサポート孔120
が、フィルタ取付孔113の孔底に凹部即ちセンター121が
夫々成形される。これらの成形がなされたワークピース
W109は、前実施例と同様に、洗浄、焼鈍、表面硬化処理
がなされた後、K′に示されるように、フィルタ取付孔
113の側からスリーブ挿通孔210が穿孔される。
上記穿孔は第28、29図のように行なわれる。先ずワー
クピースW109の周囲がダイ140k,160kによって保持され
る。またサポート孔120には受型182の先端の細径部183
が宛がわれ、サポート孔120の周囲におけるワークピー
スW109の端面には受型182先端の段部とノックアウトス
リーブ179kの先端面が宛がわれる。この状態において、
第29図に示される如くパンチ143kが、フィルタ取付孔11
3の凹部121から鍔204の位置を越えて押し込まれる。こ
の押し込みにより、受型182の凹部185内にスラグ128が
押し出される。
上記加工を終えたワークピースW110は、次に第27図の
L′に示されるように、スリーブ挿通孔210の孔底の残
存物が打ち抜かれてワークピースW111となる。
上記打抜は、第30図に示されるように行なわれる。上
記ワークピースはダイ140L及び160Lで保持され、ワーク
ピースの端面は第2の受型187及びノックアウトスリー
ブ179Lで受けられる。この状態で、パンチ143Lによって
孔底の残存物即ち薄板状に残存した部分127やスラグ128
が打ち抜かれる。
次に上記ワークピースW111は、第27図のM′に示され
る如くばね挿入用の小孔119が形成される。小孔119の形
成によって、上記残存物の破断された面129は平滑面と
なる。上記小孔119の形成を終えたワークピースW112
は、次の工程において、前実施例と同様にマスターパン
チの挿通や、鍔204に対するV型溝の成形がなされてコ
アーとなる。
〔発明の効果〕
以上のように本発明は、棒状のワークピースを圧縮し
て塑性変形による鍔を形成した後、ワークピースにパン
チを押込んでスリーブ挿通孔を形成することを特長とす
る。従って挿通孔形成後は挿通孔を塑性変形させる恐れ
はなく、孔の直進的形状を維持できる効果がある。
また本発明はワークピースを受止める受型には凹部を
備えさせている。従ってワークピースに一方からパンチ
を押込むとワークピースにおける一部の材料は他方の受
型の凹部に向けて塑性流動する特長がある。これによ
り、パンチに対する抵抗力は上記塑性流動する分だけ弱
まる。その結果、上記パンチは、ワークピースの鍔のあ
る部分を含めて挿通孔の全域を一気に連続して通過する
ことができる。
このように本発明は鍔を有するワークピースに対して
挿通孔の全域に渡ってパンチを連続して押込みできるよ
うにしたので、コアーの挿通孔の全域の内面は滑らかに
仕上がる。しかもパンチを挿通孔の全域に渡って連続的
に通過させることを可能にするので、孔あけに要する工
数も少なくなる。従ってコアーの製造コストを低減でき
る有用性もある。
【図面の簡単な説明】
図面は本願の実施例を示すもので、第1図は、素材の切
断により棒状のワークピースが形成され、さらにそのワ
ークピースに種々の加工がなされてコアーが仕上るまで
の過程での形状の変化を順に示す図、第2図は第1図の
B、C、Dに示されるワークピースの成形を行なう為に
用いられる装置の断面図、第3図はワークピースの端面
の研摩に用いられる装置の一部破断側面図、第4図は第
3図の装置におけるワークピースのキャリヤと砥石との
関係を示す一部破断図、第5、6、7、8及び9図は夫
々ワークピースを第1図のF、G、H、I、Jの形状に
成形する為に用いられる装置の断面図(いずれの図も成
形完了状態を示している)、第10、11及び12図は鍔の成
形過程を順に示す断面図、第13及び14図は、鍔成形用の
一対のダイにおける夫々のキャビティを示す平面図、第
15及び16図は、ワークピースを第1図のKの形状に成形
する為に用いられる装置の断面図、第17、18、19及び20
図は、夫々ワークピースを第1図のL、M、N、Pの形
状に成形する為に用いられる装置の断面図、第21及び22
図は夫々第15及び16図の要部を拡大して示す断面図、第
23図はワークピースと受型との関係の詳細を示す断面
図、第24図はワークピースにスリーブ挿通孔を形成する
場合におけるワークピースの材料の塑性流動を説明する
為の図、第25図は第17図の要部を拡大して示す断面図、
第26図は打抜による破断面の矯正終了状態を示す断面
図、第27図は他の実施例におけるワークピースの形状の
変化を示す断面図、第28及び29図は第27図の実施例にお
けるスリーブ挿通孔の形成過程を示す断面図、第30図は
第27図の実施例におけるスリーブ挿通孔の孔底の残存物
の打抜状態を示す断面図、そして、第31図はフュエルイ
ンジェクタの断面図である。 W1〜W13…ワークピース、204…鍔、210…スリーブ挿通
孔。

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】棒状のワークピースを軸線の方向に圧縮し
    て、そのワークピースの中間位置に鍔を形成するステッ
    プと、 上記鍔が形成されたワークピースの周囲をダイで保持す
    ることと、ワークピースにおいて軸線方向の一方の面
    を、端面の中央部がワークピースから流出するスラグを
    受入る為の凹部となっており、かつ、その周囲の部分が
    ワークピースを受ける為の面となっている受型で受ける
    こと、とを含むステップと、 パンチを、上記受型とは反対の側から、ワークピースに
    対し上記鍔の位置を越えて所定の深さまで連続して押し
    込むステップと、 上記パンチの押し込みによって穿孔された孔の底の残存
    物を他のパンチによって打ち抜くステップとを含むフュ
    エルインジェクタ用コアーの製造方法。
  2. 【請求項2】上記パンチの押込の深さは、パンチの進入
    により形成された孔の内周面でのワークピースの材料の
    組織の連続性を保ち得る範囲で、大きくすることを特徴
    とする請求項1記載のフュエルインジェクタ用コアーの
    製造方法。
  3. 【請求項3】上記鍔を形成するステップに先立って、棒
    状のワークピースの両端面においてそこの凹凸を除去す
    るステップを行なうことを特徴とする請求項1記載のフ
    ュエルインジェクタ用コアーの製造方法。
  4. 【請求項4】上記棒状のワークピースに鍔を形成するス
    テップは、一対のダイを用いて行われ、 しかも各々のダイは、 鍔成形用の凹部とその凹部の底の中央に設けたワークの
    周囲保持用の凹部とを有していると共に、鍔成形用の凹
    部の底面の一部は、その底面に沿ったワークピースの材
    料の塑性流動に抵抗を与える粗面になっており、 上記鍔を成形するステップは、 上記ワークピースの両端を上記両ダイのワークの周囲保
    持用の凹部によって夫々保持するステップと、 両ダイを相対的に近接移動させて、ワークピースの中間
    部の材料を上記両ダイの鍔成形用の凹部に塑性流動させ
    るステップとを含み、 しかも後者のステップでは、各ダイにおける上記底面の
    粗面によって材料の塑性流動に抵抗を与えることによっ
    て、一方の底面に沿って流動する材料の先端と、他方の
    底面に沿って流動する材料の先端とを、両ダイの各前面
    が合さる場所に同時に到達させることを特徴とする請求
    項1記載のフュエルインジェクタ用コアーの製造方法。
  5. 【請求項5】上記パンチを押し込むステップに先立っ
    て、ワークピースにおいて受型で受ける側の一端に、フ
    ィルタ取付孔を予め形成するステップを更に含むことを
    特徴とする請求項1記載のフュエルインジェクタ用コア
    ーの製造方法。
  6. 【請求項6】上記パンチを押し込むステップに先立っ
    て、ワークピースにおいてパンチを押し込む側の一端
    に、フィルタ取付孔を予め形成するステップを更に含む
    ことを特徴とする請求項1記載のフュエルインジェクタ
    用コアーの製造方法。
  7. 【請求項7】上記残存物の打抜の後、さらに別なパンチ
    を打抜によって生じた破断面に押し当てることによっ
    て、上記破断面をスリーブの挿入を案内する為のテーパ
    状の平滑面に変形させることを特徴とする請求項5記載
    のフュエルインジェクタ用コアーの製造方法。
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