JP2704992B2 - 高速ポンプのインデューサ装置 - Google Patents

高速ポンプのインデューサ装置

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JP2704992B2
JP2704992B2 JP3067007A JP6700791A JP2704992B2 JP 2704992 B2 JP2704992 B2 JP 2704992B2 JP 3067007 A JP3067007 A JP 3067007A JP 6700791 A JP6700791 A JP 6700791A JP 2704992 B2 JP2704992 B2 JP 2704992B2
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謙二郎 上條
亮平 橋本
豊彦 太田
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科学技術庁航空宇宙技術研究所長
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、液体を高加圧する高速
ポンプの吸込み性能を維持させるためのインデューサ装
置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ロケットエンジン用など、高圧の液体水
素或いは液体酸素を供給する装置としては、高速にて回
転駆動されるポンプが使用されている。そしてこのよう
な高速ポンプには、その吸込み性能を維持させるため
に、インデューサ装置を備えるようにしている。
【0003】図7に示すように、従来この種のインデュ
ーサ装置1は、軸流型の羽根車2を有して成り、タービ
ン3にて駆動される遠心型の高速ポンプ(ターボポン
プ)4の吸込口5に設けられている。高速ポンプ4のイ
ンペラ6は、タービン3の翼車7と同軸上に回転軸8で
連結され、その延長軸9に、羽根車2が取り付けられて
いる。
【0004】この羽根車2は、本体ケーシング10と一
体的に形成された直管状のケーシング11によりその流
路が区画され、その入口側12の端部には液体水素など
の極低温の液体が収容されたタンク13が接続されてい
る。そして高温高圧のガスの作用でタービン3が回転さ
れてインペラ6が回転駆動されると、これと同期して羽
根車2も回転することで、タンク13からの液体を適宜
昇圧させて高速ポンプ4の吸込口5まで導き、引き続い
てインペラ6の高速回転により、例えば 2Kg/cm2 程度
の液圧のものを 300Kg/cm2 まで加圧して吐出し、ロケ
ットエンジン(図示せず)等に供給するようになってい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、ロケットに
搭載する場合のタンク13に貯留する液体の圧力は、で
きるだけ低いものにすることが望ましい。これは、液圧
が低ければタンク13は強度的に弱い簡便なものにでき
ると共に、ガスが少量で足りることによるものである。
しかしながらこの液圧、すなわち入口圧力Pを低下させ
ていくと、インデューサ装置1の羽根車2については、
部分的なガス化により旋回キャビテーションが発生する
という問題があった。
【0006】図8に示すように、この旋回キャビテーシ
ョンは、ある程度まで入口圧力Pを下げていくと発生し
(図中×印にて示す)、インデューサ装置1による所定
の圧力上昇が低下する他、羽根車2或いはケーシング1
1,10に対する径方向の振動が生じてしまう。なおこ
の圧力上昇度の変化は、さらに入口圧力Pを下げるとガ
ス化が進むために、一時的に昇圧機能が回復するように
見えるが(図中○印にて示す)、その後は全く昇圧不能
となる、という経過を辿る。
【0007】この旋回キャビテーションの発生原因は、
正のマスフローゲインファクター(インデューサ入口付
近の前キャビティ体積の流量変化に対する変化割合)が
存在することにある。すなわち流量が増えるとキャビテ
ィ体積が増加、または流量が増えるとキャビティ体積が
減る場合に発生する。このような旋回キャビテーション
による振動は、回転軸8を通って軸受14に伝わること
でその機能に悪影響を与え、ポンプ寿命を低下させる原
因となると共に、タンク13に収容する液体圧力(入口
圧力P)の低減を図る上で大きな障害となっていた。
【0008】そこで本発明は、上記事情に鑑み、旋回キ
ャビテーションによる振動を防止できるインデューサ装
置を提供すべく創案されたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、液体
水素などの液体を高加圧する高速ポンプの吸い込み性能
を維持させるべく数万回転/分で回転される羽根車を有
、その羽根車に発生する旋回キャビテーションを抑制
するためのインデューサ装置において、上記羽根車の流
路を区画するケーシングの入口側に、上記羽根車を囲む
区間の内径D よりも大きな内径D でなる拡径部を設
けると共にその拡径部と上記羽根車を囲む区間との間
に、これらを滑らかに接続する傾斜面部を形成した高速
ポンプのインデューサ装置である。
【0010】また、請求項2の発明は、上記拡径部の内
が、上記羽根車を囲む区間の内径 と、該区間
の内壁から上記羽根車の先端までの隙間の径方向の距離
Dsとを加算した値である請求項1記載の高速ポンプの
インデューサ装置である。
【0011】
【0012】
【作用】上記構成によって、拡径部を通った液体は、
斜面部に沿って円滑に流れ、羽根車に取り込まれる際
に、羽根車に発生する旋回キャビテーションと主流とな
る液体の流れとの相互干渉を弱め、実質的に旋回キャビ
テーションを抑制する。
【0013】また拡径部の内径を所定の加算した値とし
構成によって、確実に旋回キャビテーションが抑制さ
れる。
【0014】
【0015】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面に従って説
明する。
【0016】図1乃至図3は、本発明に係わる高速ポン
プのインデューサ装置の一実施例を示したものである。
【0017】このインデューサ装置は、従来同様に液体
水素などの液体を高加圧する高速ポンプ21の吸込口2
2側に備えられていると共に、軸流型の羽根車23及び
その流路を区画するケーシング24とで構成され、この
ケーシング24の入口側25に、羽根車23を囲む区間
26の内径D2 よりも大きな内径D1 で成る拡径部27
が設けられて構成されている。
【0018】高速ポンプ21は、回転軸28の一端に固
定されたインペラ29と、回転軸28の他端に固定され
たタービン30の翼車31と、これらインペラ29及び
翼車31を収容すると共にその流路を適宜区画する本体
ケーシング32とを備えて構成され、回転軸28は軸受
33を介して本体ケーシング32に回転自在に支持され
ている。
【0019】羽根車23は、回転軸28と同軸上に且つ
インペラ29を越えて延長された延長軸34の端部35
に、三枚のスクリュー状の羽根板36が取り付けられて
成り、インペラ29と同期して高速回転することで、入
口側25からの液体を延長軸34及びケーシング24に
沿って軸方向下流側に送り出すようになっている。
【0020】ケーシング24は、本体ケーシング32と
一体的に形成され、インペラ29の吸入口22の部分か
ら略直管状に延長されている。すなわちその外径寸法は
一定になっていると共に、羽根車23を囲む区間26か
ら下流側の吸入口22までは、一定の内径D2 を有した
同径部37として形成されている。
【0021】そして本発明の特長となる拡径部27は、
羽根板36の前端38近傍の位置から、ケーシング24
の入口端39に至るまで形成されている。特に本実施例
にあっては、拡径部27の内径D1 は、同径部37の内
径D2 に羽根車23との隙間S、すなわち同径部37の
内径D2 と羽根車23の外径Dtとの差を加えた値以上
に形成されている。
【0022】言い換えると、羽根車23の流路を区画す
るケーシング24のうち、羽根車23よりも上流側の区
間40の内径D1 を、羽根車23を囲む区間26の内径
2 と、この区間26の内壁41から羽根車23の先端
42までの隙間Sの径方向距離Dsとを加算した値
(和)以上としている。
【0023】この関係を数式で表わすと次のようにな
る。
【0024】D1 ≧D2 +(D2 −Dt)=D2 +Ds ここにD1 :羽根車よりも上流側の区間(拡径部)の内
径 D2 :羽根車を囲む区間(同径部)の内径 Dt:羽根車の外径 Ds:羽根車を囲む区間(同径部)の内壁から羽根車の
先端までの隙間の径方向距離 本実施例にあっては、拡径部27の拡径寸法(D1 −D
2 )を隙間寸法Dsに等しく、すなわちD1 =D2 +D
sとした。
【0025】また羽根車23よりも上流側の区間40で
ある拡径部27と、羽根車23を囲む区間26である同
径部37との間に、これらを滑らかに接続する傾斜部面
部43が形成されている。
【0026】このほかケーシング24の入口端39に
は、液体貯留用のタンク或いはその管(図示せず)にボ
ルトなどで締結させるためのフランジ44が形成されて
いる。また羽根車23とインペラ29との間には、イン
デューサ装置により昇圧された後の液体を適宜インペラ
29に導くための案内翼(静止翼)45及び、延長軸3
4を軸支するための軸受46が設けられている。
【0027】次に実施例の作用を説明する。
【0028】タービン30が高温高圧のガスの作用で回
転されると、これと同軸のインペラ29が回転駆動され
ると共に、羽根車23が回転される。この回転により、
タンクからの液体が適宜昇圧されて軸方向へ送り出さ
れ、高速ポンプ21の吸込口22まで導かれる。高速ポ
ンプ21は、インペラ29の高速回転により、高圧に加
圧して吐出する。
【0029】そして、羽根車23のケーシング24によ
って、羽根車23に相応する液体の流れ(主流)の他
に、拡径部27による増し分(D1 −D2 )の液体が入
り込むことで、この流れが、羽根車23に部分的に発生
する旋回キャビテーションを抑制する。すなわち図4に
示すように、従来は入口圧力Pがある程度低くなると旋
回キャビテーションが発生してインデューサ装置による
昇降機能が低下してしまったが(図中点線にて示す)、
拡径部27を経由して液体が流入するようになったこと
で旋回キャビテーションが抑えられ、インデューサ装置
の昇圧機能の極度な低下が防止されるものである(図中
一点鎖線にて示す)。
【0030】この旋回キャビテーション抑制の微視的な
メカニズムは不詳であるが、いずれにしても、隙間S側
に流れ込む増し分の液体が、特に有害な羽根車23の先
端42側に生ずる空洞と、液体の主流との相互干渉を弱
めるように作用するものと考えられる。
【0031】このように、ケーシング24の入口側25
に、羽根車23を囲む区間26の同径部37の内径D2
よりも大きな内径D1 で成る拡径部27を設けたので、
羽根車23に発生する旋回キャビテーションを抑制で
き、入口圧力Pの低い領域にあってもインデューサ装置
の昇圧機能を維持できると共に、軸受33,46及び高
速ポンプ21本体へ加わる振動を防止できる。すなわ
ち、液体の当初圧力を低減できることにより、これを収
容するタンク構造の簡便化が達成されると共に、高速ポ
ンプ21の耐久性向上に貢献できる。
【0032】特に本実施例では、拡径部27と同径部3
7との内径差(D1 −D2 )を、隙間Sの径方向距離D
s以上としたので、羽根車23の先端42付近に流れ込
ませる増し分の液体が必要かつ充分な量となり、有害な
旋回キャビテーションを確実に抑制できる。
【0033】また拡径部27と同径部37との間に、こ
れらを滑らかに接続する傾斜面部43を形成したので、
ケーシング24の内壁41に沿う増し分の液体の流れ
を、隙間S近傍の羽根車23へと滞りなく導くことがで
きる。
【0034】さらに本実施例は極めて簡単な構成なの
で、従来のインデューサ装置にも容易に採用でき、汎用
性に富み、極めて実際的である。
【0035】そして本発明者らは、本発明の作用効果を
確認すべく、インデューサ装置を備えた高速ポンプ21
の作動試験を行い、その振動を検出した。
【0036】この試験では、上記実施例に則ったインデ
ューサ装置と、比較のためにケーシングの内径が一定で
ある従来の構成とに対して行った。
【0037】上記実施例のインデューサ装置の各部寸法
及び高速ポンプ21の諸元は次の通りである。
【0038】Dt=150.0mm D1 =153.0mm D2 =151.5mm ポンプ回転数N=20,000回転/分 ポンプ流量Q=200 リットル/秒 また対比すべき従来構成の寸法は、D1 =D2 =151.5m
m とし、他の寸法などは本発明のものと同じにした。
【0039】この試験結果を、軸振動の振幅及び周波数
(回転数N)の試験時間毎の変化図として、図5(従
来)と図6(本発明)とに示す。
【0040】図5に示すように、従来の構成では、周波
数に比例して発生する振動(回転同期振動)Aのほか
に、その略1.2 倍の周波数(1.2 N)で発生する振動
(回転非同期振動)Bが現れている。これが、旋回キャ
ビテーションによる振動である。
【0041】これに対し図6の本発明の構成では、回転
非同期振動Bは消去されており、少なくとも旋回キャビ
テーションによる振動が抑えられたことがわかる。すな
わち本発明が、高速ポンプ21の有害な振動を防止する
インデューサ装置として極めて有用であることが実証さ
れた。
【0042】なお本実施例にあっては、ロケットエンジ
ン用の高速ポンプに適用したもので示したが、本発明は
同様にインデューサ装置を備えているポンプ、例えば消
防用ポンプやLNGポンプなどにも適用可能である。
【0043】
【発明の効果】以上要するに本発明によれば、次のよう
な優れた効果を発揮する。
【0044】(1)請求項1記載の構成によれば、羽根
車に発生する旋回キャビテーションを抑制でき、低い入
口圧力であっても昇圧機能を維持できると共に、有害な
振動を防止できる。また、液体がケーシングの内壁に沿
って隙間近傍の羽根車へと流れるのを円滑にできる。
【0045】(2) 請求項2記載の構成によれば、確実に
旋回キャビテーションを抑制できる。
【0046】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるインデューサ装置の一実施例を
示した側断面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】図1の全体を示した側断面図である。
【図4】本発明の作用効果を説明するための入口圧力と
インデューサ圧力上昇との関係図である。
【図5】本発明に対比される従来構成による軸振動の振
幅変化図である。
【図6】発明の構成による軸振動の振幅変化図である。
【図7】従来のインデューサ装置を備えた高速ポンプの
構成図である。
【図8】従来技術の課題を説明するための入口圧力とイ
ンデューサ圧力上昇との関係図である。
【符号の説明】
21 高速ポンプ 23 羽根車 24 ケーシング 25 入口側 26 羽根車を囲む区間 27 拡径部 40 羽根車よりも上流側の区間 41 内壁 42 羽根車の先端43 傾斜面部 S 隙間 D 羽根車よりも上流側の区間の内径 D 羽根車を囲む区間 Ds 羽根車を囲む区間の内壁から羽根車の先端までの
隙間の径方向距離
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−263300(JP,A) 特公 昭59−26800(JP,B2)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液体水素などの液体を高加圧する高速ポ
    ンプの吸い込み性能を維持させるべく数万回転/分で
    転される羽根車を有し、その羽根車に発生する旋回キャ
    ビテーションを抑制するためのインデューサ装置におい
    て、上記羽根車の流路を区画するケーシングの入口側
    に、上記羽根車を囲む区間の内径D よりも大きな内径
    でなる拡径部を設けると共にその拡径部と上記羽根
    車を囲む区間との間に、これらを滑らかに接続する傾斜
    面部を形成したことを特徴とする高速ポンプのインデュ
    ーサ装置。
  2. 【請求項2】 上記拡径部の内径 が、上記羽根車を
    囲む区間の内径 と、該区間の内壁から上記羽根車の
    先端までの隙間の径方向の距離Dsとを加算した値であ
    る請求項1記載の高速ポンプのインデューサ装置。
JP3067007A 1991-03-29 1991-03-29 高速ポンプのインデューサ装置 Expired - Lifetime JP2704992B2 (ja)

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JPH05332300A JPH05332300A (ja) 1993-12-14
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FR2765639B1 (fr) * 1997-07-04 2004-11-26 Europ Propulsion Equipement d'inducteur pour pompe a grande capacite d'aspiration
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FR3009586B1 (fr) * 2013-08-06 2015-08-28 Snecma Dispositif d'alimentation en ergol de moteur-fusee
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EP0286809B1 (en) * 1987-04-10 1991-10-16 Rockwell International Corporation Cavitation-resistant inducer

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