JP2699565B2 - 燃料噴射ポンプ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は、燃料噴射ポンプのエア抜きに関する。

［従来の技術］ 燃料噴射ポンプは、内燃機関に組み付ける際、内部の
空気を抜くエア抜きの作業が行われる。

エア抜きの作業は、一般にフィードポンプに付設され
たプライミングポンプを操作することによって行われ
る。プライミングポンプは、操作されると、燃料を供給
通路を介してポンプエレメントの燃料プランジャ室内へ
送るものである。

一方、供給通路に設けられたオーバーフローバルブの
開弁圧は、吐出通路に設けられたデリバリバルブの開弁
圧よりも低く設定されている。

このため、プライミングポンプによって燃料を燃料噴
射ポンプ内へ圧送すると、燃料が内部の空気を圧縮し、
圧縮された空気は開弁圧の低いオーバーフローバルブか
ら排出される。

［発明が解決しようとする課題］ 一般に、燃料噴射ポンプの燃料吐出口は、燃料噴射ポ
ンプの上端に設けられている。このため、デリバリバル
ブのプランジャ室側の吐出通路内は、エア抜きを行って
も空気が抜けない。

このため、燃料噴射ポンプの始動開始直後の数ストロ
ークは、燃料噴射ポンプの吐出口から空気が吐出され
る。つまり、従来の燃料噴射ポンプは、燃料噴射ポンプ
のエア抜き後における内燃機関の始動性が悪い問題点を
備えていた。

本発明の目的は、エア抜き時にデリバリバルブのプラ
ンジャ室側の空気も排出し、エア抜き直後から確実に燃
料の吐出を行う燃料噴射ポンプの提供にある。

［課題を解決するための手段］ 上記の目的を達成するために、本発明の燃料噴射ポン
プは、次の技術的手段を採用する。

燃料噴射ポンプは、プランジャの往復運動によって、
プランジャ室内に導かれた燃料の圧送を行うポンプエレ
メントと、前記プランジャ室に連通する供給通路内の圧
力が設定圧力に達したとき開弁するオーバーフローバル
ブと、前記プランジャ室に連通する吐出通路に設けられ
たデリバリバルブとを具備する。

そして、前記デリバリバルブは、エア抜き時に前記供
給通路を介して前記プランジャ室内に燃料を供給した
際、供給される燃料の圧力によって前記オーバーフロー
バルブよりも先に開弁するように設けられる。

［作用］ エア抜きを行うために、プライミングポンプなどを操
作して、供給通路よりプランジャ室内へ燃料の圧送を行
う。すると、供給通路、プランジャ室、およびデリバリ
バルブのプランジャ室側内の空気は、供給された燃料に
よって圧縮される。

ここで、少なくともエア抜き時は、デリバリバルブが
オーバーフローバルブよりも先に開弁する。このため、
燃料の供給によって圧縮された空気は、デリバリバルブ
よりも排出される。そして、空気の排出後、デリバリバ
ルブより燃料が流出し、エア抜きが完了する。

［発明の効果］ 本発明は、以上の作用で説明したように、エア抜きを
行うことにより、デリバリバルブより燃料が流出する。
これは、プランジャ室、およびデリバリバルブのプラン
ジャ室側の吐出通路に燃料が満たされたことを意味す
る。

このため、燃料噴射ポンプは、エア抜き直後から確実
に燃料の吐出を行い、エア抜き後における内燃機関の始
動性が向上する。

［実施例］ 次に、本発明の燃料噴射ポンプを、図に示す一実施例
に基づき説明する。

（第１実施例の構成） 第１図は列型燃料噴射ポンプの断面図を示す。

列型燃料噴射ポンプ１は、気筒毎にポンプエレメント
２を備えたポンプである。各ポンプエレメント２は、フ
ィードポンプ（図示しない）より送られてきた燃料を圧
縮し、内燃機関（図示しない）の各燃料室に取り付けら
れた噴射ノズル（図示しない）へ噴出する。

燃料噴射ポンプ１は、大別してポンプエレメント２、
駆動手段３、噴射量調節手段４、これらを収納するポン
プハウジング５からなる。

ポンプエレメント２は、駆動手段３によって往復駆動
されるプランジャ６と、このプランジャ６を収納する筒
状のシリンダ７とからなる。

プランジャ６は、上側に傾斜したコントロールグルー
ブ８が形成されている。このコントロールグルーブ８
は、内部に開成された孔（図示しない）を介してプラン
ジャ６の上端と連通している。

シリンダ７は、上側に、フィードホール10を備えてい
る。このフィードホール10は本発明の供給通路の一部を
なすもので、フィードポンプからシリンダ７の周囲へ燃
料を供給するフューエルチャンバ11（フィードホール10
とともに供給通路を構成する）と、シリンダ７の内部の
プランジャ室12とを連通するものである。そして、フィ
ードホール10は、フューエルチャンバ11の燃料をシリン
ダ７内に導く供給口の役割を果たすとともに、圧送終了
時にプランジャ室12の燃料をフューエルチャンバ11へ排
出する排出口の役割を果たす。

シリンダ７の上方には、プランジャ６によって圧送さ
れた燃料を吐出口13へ導く吐出通路14を備える。この吐
出通路14には、デリバリバルブ15が配されている。デリ
バリバルブ15は、吐出口13へ導かれた燃料がプランジャ
室12へ逆流するのを防ぐ作用と、噴射ノズルの後漏れを
防ぐ吸い戻し作用とを行う逆止弁で、デリバリバルブス
プリング16によって、プランジャ６側に付勢されてい
る。なお、デリバリバルブ15の開弁圧力は、デリバリバ
ルブスプリング16によって設定されている。

駆動手段３は、カムシャフト17、タペット18、プラン
ジャスプリング19からなる。カムシャフト17は、内燃機
関によって回転駆動される。タペット18は、カムシャフ
ト17のカムの動きに追従して、プランジャ６を押し上げ
るものである。プランジャスプリング19は、プランジャ
６およびタペット18を押し下げるものである。このた
め、カムシャフト17が回転すると、カムの軌跡に沿って
プランジャ６が往復運動する。

噴射量調節手段４は、プランジャ６を回転させて、プ
ランジャ６が上昇する際、コントロールグルーブ８とフ
ィードホール10とが一致するまでの有効ストロークを調
節するものである。噴射量調節手段４は、コントロール
ラック20、コントロールスリーブ21、カップリング22か
らなる。コントロールラック20は、ガバナ（図示しな
い）に連結し、内燃機関の回転速度等に応じてコントロ
ールスリーブ21を回転させるものである。カップリング
22は、プランジャ６の往復運動を妨げることなくプラン
ジャ６を回転させるものである。

ポンプハウジング５は、上記各部を収納、保持し、内
部を保護する金属製の容器である。

ポンプハウジング５は、内部に上述のフューエルチャ
ンバ11を備える。このフューエルチャンバ11には、オー
バーフローバルブ23が設けられている。オーバーフロー
バルブ23は、燃料の噴射が停止し、内燃機関が回転して
いる際など、フューエルチャンバ11内の圧力が上昇した
際に、内部を保護する目的で、フューエルチャンバ11内
の燃料を外部へ放出するための逆止弁である。

オーバーフローバルブ23は、フューエルチャンバ11に
連通する穴24内に螺着されるバルブケース25を備える。
このバルブケース25は、内部にフューエルチャンバ11内
の燃料をポンプハウジング５の外部へ導く排出通路26を
備える。排出通路26は、外部に向かう途中で一旦大径と
なる段部27を備える。段部27は、オーバーフローバルブ
23のバルブシートで、球状の弁体28がオーバーフロース
プリング29によって押し付けられている。なお、弁体28
およびオーバーフロースプリング29は、バルブケース25
の端部の挿入穴30より排出通路26内に収納され、挿入穴
30をボルト31によって塞ぐことによって、排出通路26内
に保持される。そして、オーバーフローバルブ23の開弁
圧は、オーバーフロースプリング29によって、設定され
ている。そして、本実施例のオーバーフローバルブ23の
開弁圧は、デリバリバルブ15の開弁圧よりも高く設定さ
れている。

（実施例の作動） 次に、本発明にかかる実施例の作動を簡単に説明す
る。

燃料噴射ポンプ１が組立てられ、車両に搭載された際
は、フューエルチャンバ11、プランジャ室12に空気が入
っている。そこで、図示しない燃料配管を燃料噴射ポン
プ１のフィードポンプに取り付け、フィードポンプに付
設された手動のプライミングポンプを操作する。する
と、燃料は、図示しないホロースクリュよりフューエル
チャンバ11内に流入し、フィードホール10を通って、プ
ランジャ室12内に達する。プライミングポンプを操作し
続けると、燃料の通路となる部分の内圧が上昇する。本
実施例では、デリバリバルブ15の開弁圧が、オーバーフ
ローバルブ23の開弁圧よりも低く設定されている。この
ため、燃料噴射ポンプ１内の圧力上昇によって、デリバ
リバルブ15が開弁する。

この結果、フューエルチャンバ11、プランジャ室12の
空気、およびデリバリバルブ15のプランジャ室12側の空
気は、デリバリバルブ15を通って全て吐出口13から排出
され、燃料噴射ポンプ１内に燃料が充満する。

（実施例の効果） 本実施例により、プランジャ室12、およびデリバリバ
ルブ15のプランジャ室12側の吐出通路14に燃料を満たす
ことができるため、エア抜き直後から確実に燃料の吐出
を行う。この結果、エア抜き後における内燃機関の始動
性が、従来に比較して向上する。

（第２実施例） 第２図ないし第４図に第２実施例を示す。

本実施例は、オーバーフローバルブ23の開弁圧が、デ
リバリバルブ（第１実施例参照）よりも低い場合の実施
例である。本実施例のオーバーフローバルブ23は、バル
ブケース25と、挿入穴30に螺着されるボルト31との間
に、ワッシャ32を配したものである。本実施例のワッシ
ャ32は、第３図および第４図に示すように、ボルト31を
挿入穴30から外さずに着脱できるように、２分割されて
いる。なお、ワッシャ32は、エア抜き時は取り外され、
エア抜き終了後に取り付けられるものである。

ワッシャ32の厚みは、ワッシャ32がオーバーフローバ
ルブ23に取り付けられていない時にオーバーフロースプ
リング29がボルト31によって強く圧縮されてオーバーフ
ローバルブ23の開弁圧力をデリバリバルブよりも高く
し、逆にワッシャ32を取り付けた時にオーバーフロース
プリング29の圧縮力が弱められてオーバーフローバルブ
23の開弁圧力をデリバリバルブよりも低くするように設
定されている。

つまり、本実施例は、ワッシャ32なしの状態でエア抜
きを行うことにより、第１実施例同様、デリバリバルブ
から内部空気の排出が行われる。

エア抜き終了後は、ワッシャ32を取り付けることによ
り、オーバーフローバルブ23の開弁圧がデリバリバルブ
よりも低くなる。

（第３実施例） 第５図に第３実施例を示す。

本実施例は、第２実施例同様、オーバーフローバルブ
23の開弁圧が、デリバリバルブ（第１実施例参照）より
も低い場合の実施例である。

本実施例のオーバーフローバルブ23は、挿入穴30に螺
着されるボルト31の端部に棒状のピン33を設けたもので
ある。このピン33は、ワッシャ32を取り外して、ボルト
31をバルブケース25の締め付けることによって、弁体28
を段部27に押し付ける。

このため、エア抜き時に、ワッシャ32を外してボルト
31を締め付けることにより、オーバーフローバルブ23が
開弁しなくなり、この結果、デリバリバルブより内部空
気の排出が行われる。

エア抜き終了後は、ワッシャ32を取り付けることによ
り、弁体28はピン33による付勢が解かれ、オーバーフロ
ーバルブ23の開弁圧がデリバリバルブよりも低くなる。

（第４実施例） 第６図に第４実施例を示す。

本実施例は、第２、第３実施例同様、オーバーフロー
バルブ23の開弁圧が、デリバリバルブ（第１実施例参
照）よりも低い場合の実施例である。

本実施例のオーバーフローバルブ23は、ボルト31にオ
ーバーフロースプリング29の圧縮力を変化させる傘状の
ピストン34を設けたものである。このピストン34は、ボ
ルト31の軸芯に設けられた穴35に挿通されている。

一方、オーバーフローバルブ23は、エア抜き時にアダ
プタ36が装着される。このアダプタ36は、ボルト31の穴
35に挿通される押し棒37を備える。この押し棒37は、ア
ダプタ36をオーバーフローバルブ23に装着した際、ピス
トン34を押して、オーバーフロースプリング29を圧縮
し、オーバーフローバルブ23の開弁圧を、デリバリバル
ブの開弁圧よりも高くするものである。

エア抜き後は、アダプタ36をオーバーフローバルブ23
から外すことによって、ピストン34によるオーバーフロ
ースプリング29の圧縮力が弱まり、オーバーフローバル
ブ23の開弁圧がデリバリバルブの開弁圧よりも低くな
る。

（第５実施例） 第７図に第５実施例を示す。

本実施例は、第２ないし第４実施例同様、オーバーフ
ローバルブ23の開弁圧が、デリバリバルブ（第１実施例
参照）よりも低い場合の実施例である。

本実施例のオーバーフローバルブ23は、第４実施例の
ピストン34の端部に第３実施例に示したピン33を設けた
ものである。

つまり、エア抜き時は、オーバーフローバルブ23にア
ダプタ36が装着されて、弁体28がピン33によって段部27
に付勢され、オーバーフローバルブ23の開弁が規制され
る。そして、エア抜き後は、オーバーフローバルブ23か
らアダプタ36を外すことにより、ピン33による弁体28の
規制が外れ、オーバーフローバルブ23の開弁圧が、デリ
バリバルブよりも低くなる。

（第６実施例） 第８図に第６実施例を示す。

第８図はサプライ式燃料噴射ポンプ38の断面図を示
す。

サプライ式燃料噴射ポンプ38は、電磁弁39の開閉によ
り吐出燃料の調量を行うもので、吐出燃料は燃料の蓄圧
室（図示しない）へ送られる。本実施例のオーバーフロ
ーバルブ23にも、上記第１ないし第５実施例のいずれか
を適用することができる。

この結果、サプライ式燃料噴射ポンプ38は、エア抜き
直後から確実に燃料の吐出を行う。

（第７実施例） 第９図に第７実施例を示す。

サプライ式燃料噴射ポンプ（第６実施例参照）の上部
に設けられた電磁弁39は、フューエルチャンバ（第６実
施例参照）からプランジャ室（第６実施例参照）へ燃料
を送る供給通路の開閉を行うバルブ41を備える。バルブ
41は、アーマチュア42を備える。アーマチュア42は、ス
プリング43によってバルブ41が開弁するように付勢され
ている。アーマチュア42とスプリング43は、供給通路に
連通する室内44に収納される。

本実施例は、この室内44をドレンポート45を介して電
磁弁39の外部と連通させ、このドレンポート45をボルト
46によって塞いだものである。

このボルト46は、エア抜き時に外される。そして、プ
ライミングポンプを作動させ、ドレンポート45による内
部空気の排出が完了したらボルト46をするものである。

この状態では、デリバリバルブ（第６実施例参照）の
プランジャ６側の吐出通路（第６実施例参照）内の空気
は抜けていない。このため、ボルト46によってドレンポ
ート45を塞いだ後、プライミングポンプを作動させ、上
記第１ないし第５実施例のいずれかをオーバーフローバ
ルブ（図示しない）に適用し、デリバリバルブから内部
の空気の排出を行う。

本実施例は、第６実施例に比較して、エア抜きによる
内部空気の抜け度合いがさらに大きくなる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の第１実施例を示す列型燃料噴射ポンプ
の断面図である。 第２図ないし第４図は本発明の第２実施例を示すもの
で、第２図はオーバーフローバルブの断面図、第３図は
ワッシャの側面図、第４図はワッシャの正面図である。 第５図は本発明の第３実施例を示すオーバーフローバル
ブの断面図である。 第６図は本発明の第４実施例を示すオーバーフローバル
ブの断面図である。 第７図は本発明の第５実施例を示すオーバーフローバル
ブの断面図である。 第８図は本発明の第６実施例を示すサプライ式の燃料噴
射ポンプの断面図である。 第９図は本発明の第７実施例を示す電磁弁の断面図であ
る。 図中 １……燃料噴射ポンプ、２……ポンプエレメン
ト、６……プランジャ、10……フィードホール（供給通
路）、11……フューエルチャンバ（供給通路）、12……
プランジャ室、14……吐出通路、15……デリバリバル
ブ、23……オーバーフローバルブ

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】プランジャの往復運動によってプランジャ
   室内に導かれた燃料の圧送を行うポンプエレメントと、
   前記プランジャ室に連通する供給通路内の圧力が設定圧
   力に達したとき開弁するオーバーフローバルブと、前記
   プランジャ室に連通する吐出通路に設けられたデリバリ
   バルブとを具備する燃料噴射ポンプであって、 前記デリバリバルブは、 エア抜き時に前記供給通路を介して前記プランジャ室内
   に燃料を供給した際、 供給燃料の圧力によって前記オーバーフローバルブより
   も先に開弁するように設けられたことを特徴とする燃料
   噴射ポンプ。