JP2689314B2 - 内燃機関のエンジンブレーキ装置 - Google Patents

内燃機関のエンジンブレーキ装置

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JP2689314B2
JP2689314B2 JP7017354A JP1735495A JP2689314B2 JP 2689314 B2 JP2689314 B2 JP 2689314B2 JP 7017354 A JP7017354 A JP 7017354A JP 1735495 A JP1735495 A JP 1735495A JP 2689314 B2 JP2689314 B2 JP 2689314B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、多気筒の内燃機関と
して、特にV型8気筒の内燃機関に好適したエンジンブ
レーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】このエンジンブレーキ装置の中には圧縮
圧力開放式エンジンブレーキ装置が知られている。この
種のエンジンブレーキ装置は、車両のブレーキング時、
各気筒の排気弁をその気筒の圧縮行程の上死点近傍で開
弁させるようにしたものであり、このようなタイミング
で排気弁が開弁されると、各気筒はエアコンプレッサと
して機能することから、内燃機関は吸収馬力を発生し、
これにより、エンジンブレーキが働くことになる。
【0003】ここで、前記エンジンブレーキ装置の構成
を説明すると、この装置は、気筒毎にその排気弁を駆動
するスレーブシリンダと、このスレーブシリンダに液圧
通路を介して接続されたマスタシリンダとを備えてお
り、このマスタシリンダは他の気筒の排気弁を排気行程
中に開弁させる排気側開弁機構と連動して作動されるよ
うになっている。即ち、排気側開弁機構がカム軸のカム
によって往復動されるプッシュロッドと、このプッシュ
ロッドの往復動により揺動されて、その他の気筒の排気
弁を開弁させるロッカアームとを備えて構成されている
場合、マスタシリンダのマスタピストンはプッシュロッ
ドにより駆動されるようになっている。
【0004】マスタシリンダがプッシュロッドにより駆
動されると、マスタシリンダ内にて周期的に立上げられ
た圧力はスレーブシリンダに伝達されることで、そのス
レーブシリンダのピストンロッドが往復動され、このピ
ストンロッドの往復動により、排気弁が開閉されること
になる。なお、各気筒毎にその排気弁と組をなし且つマ
スタシリンダと協働するプッシュロッドは、その排気弁
を圧縮行程の上死点近傍で開弁させるため、タイミング
的に適合した他の排気弁における排気側開弁機構のプッ
シュロッドとなっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前述したエ
ンジンブレーキ装置は、マスタシリンダの駆動機構とし
て他の排気弁の排気側開弁機構を利用する構成上、その
エンジンブレーキ装置は直列6気筒の内燃機関に適用さ
れる。即ち、直列6気筒の内燃機関にあっては、その6
気筒を前後3個ずつのグループに分けてみたとき、その
点火順序の関係から、各グループ中、1つ気筒の排気弁
と組をなすマスタシリンダは、他の2個の気筒のうちで
一方の気筒における排気弁の排気側開弁機構、即ち、そ
のプッシュロッドと組み合わすことができる。
【0006】しかしながら、内燃機関がV型8気筒であ
る場合、その点火順序の関係から、4個の気筒を含む片
側バンクにおいて、各気筒毎の排気弁と組をなすマスタ
シリンダと他の気筒の排気側開弁機構との組合せを考え
てみたとき、これら組合せの全てをタイミング的にマッ
チさせることはできない。このため、前述したようなエ
ンジンブレーキ装置はV型8気筒の内燃機関に適用する
ことができない。
【0007】この発明は上述した事情に基づいてなされ
たもので、その目的とするところは、V型8気筒の内燃
機関への適用が可能となる内燃機関のエンジンブレーキ
装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は、一対のバン
クに4個ずつの気筒を備えたV型8気筒の内燃機関に適
用したものであって、この発明の請求項1のエンジンブ
レーキ装置は、各気筒の排気弁と組み合わされ、その排
気弁を駆動して開弁させるスレーブシリンダと、スレー
ブシリンダに液圧通路を介して接続されたマスタシリン
ダと、ブレーキング時、マスタシリンダを駆動し、スレ
ーブシリンダを介して各気筒の排気弁をその気筒の圧縮
行程の上死点近傍で開弁させる駆動機構とを備えてお
り、この駆動機構は、両バンクを対象とした気筒の着火
順序でみて、5着火先行する同一バンク内の他の気筒の
吸気弁を吸気行程中に開弁させる吸気側開弁機構及び3
着火先行する同一バンク内の他の気筒の排気弁を排気行
程中に開弁させる排気側開弁機構の一方と連動する機構
から実現されている。
【0009】請求項2のエンジンブレーキ装置は駆動機
構の一部が、両バンクを対象とした気筒の着火順序でみ
て5着火先行する同一バンク内の他の気筒の吸気弁を吸
気行程中に開弁させる吸気側開弁機構と連動する機構で
あり、残りの駆動機構は両バンクを対象として気筒の着
火順序でみて3着火先行する同一バンク内の他の気筒の
排気弁を排気行程中に開弁させる排気側開弁機構と連動
する機構からなっている。
【0010】請求項3のエンジンブレーキ装置の場合、
前述した一部の駆動機構の数は残りの駆動機構の数を上
回るものとなっている。
【0011】請求項4のエンジンブレーキ装置は、両バ
ンクのうち一方の第1バンクに両バンクを対象として気
筒の着火順序でみて着火が連続する第1及び第2気筒
と、第1及び第2気筒のうちで着火が先行する第1気筒
に対し前記着火順序でみて2着火先行する第3気筒と、
第2気筒に対し着火順序が2着火遅れる第4気筒とが含
まれ、そして、他方の第2バンクに着火順序でみて第4
気筒の着火と第3気筒の着火との間で連続して着火され
る第5気筒及び第6気筒と、第2気筒の着火と第4気筒
の着火との間にて着火される第7気筒と、第3気筒の着
火と第1気筒の着火との間にて着火される第8気筒とが
含まれる内燃機関に適用されている。この場合、請求項
4のエンジンブレーキ装置の場合、第1気筒に対応する
マスタシリンダの駆動機構は第4気筒の吸気側開弁機構
と連動し、第2気筒に対応するマスタシリンダの駆動機
構は第3気筒の排気側開弁機構と連動し、第3気筒に対
応するマスタシリンダの駆動機構は第2気筒の吸気側開
弁機構と連動し、第4気筒に対応するマスタシリンダの
駆動機構は第3気筒の吸気側開弁機構と連動し、第5気
筒に対応するマスタシリンダの駆動機構は第8気筒の吸
気側開弁機構と連動し、第6気筒に対応するマスタシリ
ンダの駆動機構は第7気筒の排気側開弁機構と連動し、
第7気筒に対応するマスタシリンダの駆動機構は第6気
筒の吸気側開弁機構と連動し、第8気筒に対応するマス
タシリンダの駆動機構は第7気筒の吸気側開弁機構と連
動するものとなっている。
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【作用】請求項1のエンジンブレーキ装置によれば、各
気筒の排気弁と組をなすマスタシリンダの駆動機構は、
両バンクを対象とした着火順序でみて、5着火先行する
同一バンク内の他の気筒の吸気側開弁機構、又は、その
着火順序でみて3着火先行する同一バンク内の他の気筒
の排気側開弁機構と連動し、その気筒の排気弁を開弁さ
せる。
【0019】請求項2のエンジンブレーキ装置によれ
ば、各気筒の排気弁と組をなす駆動機構の一部は、着火
順序でみて5着火先行する同一バンク内の他の気筒の吸
気側開弁機構と連動してその気筒の排気弁を開弁させ、
これに対し、残りの駆動機構は、着火順序でみて3着火
先行する同一バンク内の他の気筒の吸気側開弁機構と連
動してその気筒の排気弁を開弁させる。
【0020】請求項3のエンジンブレーキ装置によれ
ば、同一バンク内の他の気筒の吸気側開弁機構と連動す
る駆動機構は、同一バンク内の他の気筒の排気側開弁機
構と連動する駆動機構よりも多くなっている。
【0021】請求項4のエンジンブレーキ装置が適用さ
れる内燃機関は、一方の第1バンクに第1〜第4気筒を
有し、他方の第2バンクに第5〜第8気筒を有してお
り、そして、両バンクを対象とした気筒の着火順序は
第1気筒、第2気筒、第7気筒、第4気筒、第5気筒、
第6気筒、第3気筒及び第8気筒の順に設定されてい
る。この場合、第1バンク内の第1、第2、第3及び第
4気筒の排気弁と組をなす駆動機構は、第4気筒の吸気
側開弁機構、第3気筒の排気側開弁機構、第2気筒の吸
気側開弁機構及び第3気筒の吸気側開弁機構とそれぞれ
連動し、その排気弁を開弁させ、第2バンク内の第5、
第6、第7及び第8気筒の排気弁と組をなす駆動機構
は、第8気筒の吸気側開弁機構、第7気筒の排気側開弁
機構、第6気筒の吸気側開弁機構及び第7気筒の吸気側
開弁機構とそれぞれ連動し、その排気弁を開弁させる。
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【実施例】図1を参照すると、V型8気筒の内燃機関が
概略的に示されており、この内燃機関は左右のバンク
1,2に気筒を4個ずつ備えている。右バンク1の気筒
には♯1,♯3,♯5,♯7の番号がそれぞれ割当られ
ており、左バンク2の気筒には♯2,♯4,♯6,♯8
の番号がそれぞれ割当られている。
【0026】内燃機関には圧縮圧力開放式エンジンブレ
ーキ装置が組み込まれており、このエンジンブレーキ装
置について以下、図2を参照しながら説明する。図2
中、参照符号3は内燃機関の1つの気筒を示しており、
この気筒3内にはピストン4が嵌合されており、このピ
ストン4は気筒3のシリンダボア内に燃焼室5を形成し
ている。気筒3には、燃焼室5に開口する吸気ポート及
び排気ポートがそれぞれ設けられており、これら吸気ポ
ート及び排気ポートは吸気弁6及び排気弁7によってそ
れぞれ開閉可能となっている。
【0027】排気弁7における弁ステム8の近傍には、
スレーブシリンダ9が配置されていおり、このスレーブ
シリンダ9は、そのシリンダ穴内に嵌合されたスレーブ
ピストン10を備えている。このスレーブピストン10
はピストンロッド11を有し、このピストンロッド1は
シリンダ穴から排気弁7側に突出し、その下端が排気弁
7における弁ステム8の上端に近接して位置付けられて
いる。
【0028】スレーブシリンダ9のシリンダ穴内には、
スレーブピストン10によって圧力室12が区画して形
成されており、この圧力室12はマスタシリンダ13の
圧力室14に液圧通路15を介して接続されている。マ
スタシリンダ13はスレーブシリンダ9と同様に、その
シリンダ穴に嵌合されたマスタピストン16を備え、こ
のマスタピストン16がシリンダ穴内に圧力室14を形
成している。
【0029】マスタシリンダ13は、内燃機関の吸気側
又は排気側開弁機構の上方に配置されている。これら吸
気側及び排気側開弁機構は同一の機構であるので、ここ
では、吸気側及び排気側に関係なく、その開弁機構につ
いて説明する。この実施例の場合、開弁機構はロッカア
ーム17を備えており、このロッカアーム17は内燃機
関のシリンダヘッドにブラケットを介して回動自在に支
持されている。ロッカアーム17はアーム部18と、こ
のアーム部18とは反対側に突出した駆動部19とを有
しており、この駆動部19には駆動ロッド20が貫通し
て取付けられている。この駆動ロッド20は、マスタピ
ストン16の駆動機構としても機能する。即ち、駆動ロ
ッド20の上端は、マスタピストン16に当接されてお
り、その下端の半球部は、プッシュロッド21の上端に
設けた受け部に係合されている。プッシュロッド21は
下方に向けて延び、その下端がバルブリフタ22を介し
て内燃機関に於けるカム軸23のカム24に係合されて
いる。
【0030】一方、ロッカアーム17のアーム部18の
先端は、図示しないけれども、所定の気筒の吸気弁6又
は排気弁7の弁ステムと係合されるようになっている。
従って、カム軸23、つまり、カム24の回転により、
プッシュロッド21が往復動してロッカアーム17が揺
動されると、このロッカアーム17のアーム部18によ
り、前記所定の気筒の吸気弁6又は排気弁7はその弁ば
ね(図示しない)の付勢力に抗し、内燃機関における所
定の行程で押し開かれることになる。
【0031】また、プッシュロッド21の往復動に伴い
マスタシリンダ13のマスタピストン16が駆動される
と、マスタシリンダ13の圧力室14の圧力はマスタピ
ストン16によって周期的に加圧され、そして、圧力室
14内の圧力は液圧通路15を通じてスレーブシリンダ
9の圧力室12に伝達される。従って、この圧力室12
内の圧力もまた周期的に加圧されることから、スレーブ
ピストン10、即ち、ピストンロッド11はその復帰ば
ね25の付勢力を利用して往復動され、これにより、前
述したロッカアーム17の働きとは独立して、排気弁7
を押し開くことができる。
【0032】液圧通路15は、図示しないけれども圧液
源に接続されており、この圧液源と液圧通路15との間
には制御弁が介挿されている。この制御弁は常開の弁で
あり、通常は液圧通路15を低圧側に開放している。従
って、制御弁が開かれている限り、プッシュロッド21
によりマスタシリンダ16が駆動されても、圧力室14
及び圧力室12内の圧力が立上げられることはない。そ
れ故、この場合、スレーブピストン10は停止したまま
に維持される。しかしながら、車両のブレーキイング時
に制御弁が閉じられると、圧力室14から圧力室12ま
での液圧回路が閉じた回路となり、前述したプッシュロ
ッド21の往復動により、排気弁7が押し開かれること
になる。
【0033】この実施例の場合、内燃機関は♯1,♯
2,♯7,♯3,♯4,♯5,♯6,♯8の気筒の順序
で点火(着火)されるようになっており、各気筒におけ
る吸気弁6及び排気弁7の開弁時期、つまり、そのリフ
トのタイミングは図3及び図4に示されるものとなる。
図3及び図4に於いて、横軸はカム軸23の1回転分を
示しており、また、各気筒毎にその吸気弁及び排気弁の
リフト線図を接続する縦ラインはその気筒の上死点TD
Cを示している。従って、各気筒の上死点TDCの順序
からも、各気筒の点火順序は明らかである。
【0034】この実施例の場合には、上述した点火順序
を考慮して、左右のバンク1,2の各気筒の排気弁と組
をなすマスタシリンダ13が同一のバンク内における他
の気筒の吸気側開弁機構又は排気側開弁機構のプッシュ
ロッド21によって駆動されるようになっており、その
組合せは図1に示されている。図1中、各バンクの気筒
には各気筒の側方にその吸気側及び排気側開弁機構のプ
ッシュロッド21が小円によって夫々示されており、こ
こで、In側のプッシュロッド21は吸気側開弁機構のプ
ッシュロッドを表し、Ex側のプッシュロッド21は排気
側開弁機構のプッシュロッドを表している。そして、各
気筒毎のマスタシリンダ13と吸気側又は排気側開弁機
構つまりそのプッシュロッド21との組合せは矢印で表
されている。
【0035】図1から明らかなように右バンク1におけ
る♯1の気筒の排気弁7と組をなすマスタシリンダ13
は、同一バンク内にある♯3の気筒における吸気側開弁
機構のプッシュロッド21によって駆動され、また、♯
3の気筒の排気弁7と組をなすマスタシリンダ13は、
♯1の気筒における排気側開弁機構のプッシュロッド2
1によって駆動されるようになっている。そして、♯5
の気筒の排気弁7と組をなすマスタシリンダ13は♯1
の気筒における吸気側開弁機構のプッシュロッド21に
よって駆動され、また、♯7の気筒の排気弁7と組をな
すマスタシリンダ13は♯5の気筒における吸気側開弁
機構のプッシュロッド21によって駆動されるようにな
っている。
【0036】これに対し、左バンク2における♯2の気
筒の排気弁7と組をなすマスタシリンダ13は、同一バ
ンク内にある♯4の気筒における吸気側開弁機構のプッ
シュロッド21によって駆動され、また、♯4の気筒の
排気弁7と組をなすマスタシリンダ13は♯8の気筒に
おける吸気側開弁機構のプッシュロッド21によって駆
動されるようになっている。そして、♯6の気筒の排気
弁7と組をなすマスタシリンダ13は♯2の気筒におけ
る吸気側開弁機構のプッシュロッド21によって駆動さ
れ、また、♯8の気筒の排気弁7と組をなすマスタシリ
ンダ13は♯4の気筒における排気側開弁機構のプッシ
ュロッド21によって駆動されるようになっている。
【0037】上述した組合せを気筒の点火順序に従って
表に示せば以下の通りとなる。
【0038】
【表1】バンク 点火気筒 対象プッシュロッド 先行着火数 右 #1(3or7) #3のIn 5 左 #2(8or4) #4のIn 5 右 #7(1or5) #5のIn 5 右 #3(2or6) #1のEx 3 左 #4(7or3) #8のIn 5 右 #5(4or8) #1のIn 5 左 #6(5or1) #2のIn 5 左 #8(6or2) #4のEx 3 表1中、先行着火数とは、両バンクを対象とした気筒の
点火順序でみて、点火気筒の点火と対象プッシュロッド
側の気筒の点火との間の着火間隔を着火数で示したもの
であり、また、点火気筒の()内の数字は請求項に記載
の気筒番号を示している。より詳しくは、()内の数字の
うちorの前の数字は右バンク1を第1バンクした場合の
気筒番号を示し、orの後の数字は左バンク2を第1バン
クとした場合の気筒番号を示している。 表1から明らか
なように右バンク1内の#1,#3,#5,#7の気筒
と組をなすマスタシリンダ13は同一バンク内の他の気
筒の吸気側開弁機構又は排気側開弁機構のプッシュロッ
ド21と連動するものとなっており、そして、吸気側開
弁機構と連動する気筒(一部の駆動ロッド20)の数
は、排気側開弁機構と連動する気筒(残りの駆動ロッド
20)の数よりも多いことが分かる。
【0039】上述した各気筒における吸気弁及び排気弁
のリフト特性は図3及び図4にそれぞれ示されている。
図3、図4及び表1から明らかなように気筒が圧縮行
程の上死点TDCにあるとき、その気筒と組をなす同一
バンク内の他の気筒の吸気弁6又は排気弁7はその上死
点TDCの近傍にて、即ち、許容範囲内の僅かな回転角
度差を存して全開となっている。ここで、吸気弁6及び
排気弁7の全開位置とは、図5に示すように吸気弁6及
び排気弁7における開弁期間でのほぼ中間の位置を表し
ている。
【0040】従って、点火気筒が圧縮行程の上死点TD
Cの近傍にあると、その点火気筒と組をなす他の気筒の
吸気側又は排気側開弁機構のプッシュロッド21は、点
火気筒と組をなすマスタピストン16をほぼその最大ス
トロークまで押し上げた状態にあるので、このとき、車
両がブレーキング時にあって、前述した制御弁が閉じら
れていれば、そのマスタシリンダ16の駆動はスレーブ
ピストン10を介し、その点火気筒の排気弁7を開弁さ
せることになる。即ち、この実施例によれば、V型8気
筒の内燃機関においても、前述したエンジンブレーキ装
置を適用でき、その内燃機関にエンジンブレーキを働か
せることが可能となる。
【0041】また、この実施例のエンジンブレーキ装置
は特別な機構を内燃機関に付加する必要もないので、構
造が複雑化するようなこともない。この発明は上述した
一実施例に制約されるものではなく、種々の変形が可能
である。例えば、吸気弁及び排気弁に関する吸気側開弁
機構及び排気側開弁機構についてはプッシュロッドを備
えた図示のものに限らず、マスタシリンダ13を直接カ
ム24によって駆動するものであってもよい。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように、この発明の請求項
1のエンジンブレーキ装置によれば、各気筒の排気弁と
組をなし、スレーブシリンダを介して排気弁を開弁させ
るマスタシリンダの駆動機構を、両バンクを対象とした
気筒の着火順序でみて、5着火先行する同一バンク内の
他の気筒の吸気側開弁機構及び3着火先行する同一バン
ク内の他の気筒の排気側開弁機構と連動する機構として
あるので、駆動機構は適切なタイミングで排気弁を開弁
させることができ、エンジンブレーキを効果的に発生さ
せることができる。また、各気筒の吸気側及び排気側開
弁機構は内燃機関が本質的に備えているものであるか
ら、この種のエンジンブレーキ装置をV型8気筒の内燃
機関に適用するにあたり、発明のエンジンブレーキ装置
付加的な機構を必要とせず、よって、その構成が複雑
となることはない。
【0043】請求項2のエンジンブレーキ装置によれ
ば、駆動機構の一部は着火順序でみて5着火先行する同
一バンク内の他の気筒の吸気側開弁機構と連動し、残り
の駆動機構は着火順序でみて3着火先行する同一バンク
の他の気筒の排気側開弁機構と連動するものとしてある
ので、各気筒の排気弁は適切なタイミングで開弁され、
内燃機関のエンジンブレーキをより効果的に発揮させる
ことができる。
【0044】請求項3のエンジンブレーキ装置によれ
ば、吸気側開弁機構と連動する一部の駆動機構の数を排
気側開弁機構と連動する残りの駆動機構の数よりも多く
することで、各気筒の排気弁を適切なタイミングで開弁
させ、内燃機関のエンジンブレーキを効果的に発揮させ
ることができる。
【0045】そして、請求項4のエンジンブレーキ装置
によれば、一方の第1バンクの気筒が第1〜第4気筒、
他方の第2バンク内の気筒が第5〜第8気筒で表され、
そして、両バンクを対象とした気筒の着火順序が第1気
筒、第2気筒、第7気筒、第4気筒、第5気筒、第6気
筒、第3気筒、第8気筒の順序である場合、第1〜第4
気筒の排気弁に対応した駆動機構は、第4気筒の吸気側
開弁機構、第3気筒の排気側開弁機構、第2気筒の吸気
側開弁機構、第3気筒の吸気側開弁機構とそれぞれ連動
し、そして、第5〜第8気筒の排気弁に対応した駆動機
構は、第8気筒の吸気側開弁機構、第7気筒の排気側開
弁機構、第6気筒の吸気側開弁機構、第7気筒の吸気側
開弁機構とそれぞれ連動するものとなっており、この場
合、各排気弁は最適なタイミングで開弁され、内燃機関
のエンジンブレーキを更に効果的に発揮させることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】V型8気筒の内燃機関を概略的に示した平面図
である。
【図2】図1の内燃機関に適用される圧縮圧力開放式エ
ンジンブレーキ装置を概略的に示した構成図である。
【図3】右バンク内の各気筒の吸気弁及び排気弁のリフ
ト特性を示したタイミングチャートである。
【図4】左バンク内の各気筒の吸気弁及び排気弁のリフ
ト特性を示したタイミングチャートである。
【図5】1つの気筒の吸気弁及び排気弁の開弁期間を回
転角で示した図である。
【符号の説明】
1 右バンク 2 左バンク 3 気筒 4 ピストン 9 スレーブシリンダ 10 スレーブピストン 12 圧力室 13 マスタシリンダ 14 圧力室 16 マスタピストン 17 ロッカアーム 21 プッシュロッド 23 カム軸 24 カム

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一対のバンクに4個ずつの気筒を備えた
    V型8気筒の内燃機関において、 各気筒の排気弁と組み合わされ、前記排気弁を駆動して
    開弁させるスレーブシリンダと、 前記スレーブシリンダに液圧通路を介して接続されたマ
    スタシリンダと、 ブレーキング時、前記マスタシリンダを駆動して前記ス
    レーブシリンダを作動させ、前記各気筒の排気弁を
    筒の圧縮行程の上死点近傍で開弁させる駆動機構とを備
    えており、 前記駆動機構は、両バンクを対象とした気筒の着火順序
    でみて、5着火先行する同一バンク内の他の気筒の吸気
    弁を吸気行程中に開弁させる吸気側開弁機構及び3着火
    先行する同一バンク内の他の気筒の排気弁を排気行程中
    に開弁させる排気側開弁機構の一方と連動する機構であ
    ることを特徴とする内燃機関のエンジンブレーキ装置。
  2. 【請求項2】 一対のバンクに4個ずつの気筒を備えた
    V型8気筒の内燃機関において、 各気筒の排気弁と組み合わされ、前記排気弁を駆動して
    開弁させるスレーブシリンダと、 前記スレーブシリンダに液圧回路を介して接続されたマ
    スタシリンダと、 ブレーキング時、前記マスタシリンダを駆動して前記ス
    レーブシリンダを作動させ、前記各気筒の排気弁を各気
    筒の圧縮行程の上死点近傍で開弁させる駆動機構とを備
    えており、 前記駆動機構の一部は、両バンクを対象とした気筒の着
    火順序でみて5着火先行する同一バンク内の他の気筒の
    吸気弁を吸気行程中に開弁させる吸気側開弁機構と連動
    する機構であり、残りの駆動機構は両バンクを対象とし
    て気筒の着火順序でみて3着火先行する同一バンク内の
    他の気筒の排気弁を排気行程中に開弁させる排気側開弁
    機構と連動する機構であることを特徴とする 内燃機関の
    エンジンブレーキ装置。
  3. 【請求項3】 前記一部の駆動機構の数は残りの駆動機
    構の数を上回ることを特徴とする請求項2の内燃機関の
    エンジンブレーキ装置。
  4. 【請求項4】 両バンクのうち一方の第1バンクは、両
    バンクを対象として気筒の着火順序でみて着火が連続す
    る第1及び第2気筒と、前記第1及び第2気筒のうちで
    着火が先行する第1気筒に対し前記着火順序でみて2着
    火先行する第3気筒と、前記第2気筒に対し前記着火順
    序が2着火遅れる第4気筒とを含み、 他方の第2バンクは、前記着火順序でみて前記第4気筒
    の着火と前記第3気筒の着火との間で連続して着火され
    る第5気筒及び第6気筒と、前記第2気筒の着火と前記
    第4気筒の着火との間にて着火される第7気筒と、前記
    第3気筒の着火と前記第1気筒の着火との間にて着火さ
    れる第8気筒とを含んでおり、 前記第1気筒に対応するマスタシリンダの駆動機構は前
    記第4気筒の吸気側開弁機構と連動し、前記第2気筒に
    対応するマスタシリンダの駆動機構は前記第3気筒の排
    気側開弁機構と連動し、前記第3気筒に対応するマスタ
    シリンダの駆動機構は前記第2気筒の吸気側開弁機構と
    連動し、前記第4気筒に対応するマスタシリンダの駆動
    機構は前記第3気筒の吸気側開弁機構と連動し、前記第
    5気筒に対応するマスタシリンダの駆動機構は前記第8
    気筒の吸気側開弁機構と連動し、前記第6気筒に対応す
    るマスタシリンダの駆動機構は前記第7気筒の排気側開
    弁機構と連動し、前記第7気筒に対応するマスタシリン
    ダの駆動機構は前記第6気筒の吸気側開弁機構と連動
    し、前記第8気筒に対応するマスタシリンダの駆動機構
    は前記第7気筒の吸気側開弁機構と連動することを特徴
    する請求項3 の内燃機関のエンジンブレーキ装置。
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