JP2671013B2 - アルカリ型のニッケル又はニッケル合金メッキにおけるニッケルイオンの供給方法 - Google Patents

アルカリ型のニッケル又はニッケル合金メッキにおけるニッケルイオンの供給方法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、高耐蝕性被膜を形成することができる電気
メッキ方法として広く利用されているアルカリ型のニッ
ケル又はニッケル合金メッキ方法におけるニッケルイオ
ンの供給方法に関するものである。
〔従来の技術〕
ニッケルのメッキ方法、例えばアルカリ型の亜鉛−ニ
ッケル合金メッキ方法は、特開昭62−238387号公報、同
62−240788号公報、同63−53285号公報及び東京都立工
業技術センター発行の「新しい防食メッキ技術」(昭和
62年11月)などに開示されている。ところが、直接電解
溶解法によりメッキ槽の陽極としてニッケル陽極を用い
てニッケルイオンを供給する方法ではニッケルイオンの
供給が十分でなく、メッキ浴内のイオンバランスを損な
うので、これらのメッキ方法では、ニッケルの無機塩を
メッキ浴に添加する方法を採用している。
しかし、メッキ浴にニッケルの無機塩を添加すると、
ニッケルイオンの消費に伴って対イオン、例えば、NiSO
4ではSO4 2-、NiCl2では2Cl-、NiCO3ではCO3 2-などがメ
ッキ浴中に蓄積されて電流効率を低下させ、又メッキ条
件の変動をもたらすので、得られるメッキの外観が低下
するといった問題が生じていた。このような問題に加え
て該塩を直接メッキ浴に添加すると、一時的に水酸化物
の沈澱が生じてメッキ不良をも生じていた。さらに、ニ
ッケル陽極を使用してニッケルイオンを得る方法に比べ
て、該方法ではコストアップになるという問題もあっ
た。
一方、ニッケルの無機塩の代わりにニッケルの有機酸
塩を使用することも考えられるが、該有機酸塩は不安定
であり、安定してニッケルイオンをメッキ浴に供給でき
ないという問題があった。
〔発明が解決しようとする課題〕
従って、本発明はアルカリ型のニッケルまたはニッケ
ル合金メッキを行うにあたり、メッキ性能に悪影響を与
えることなく、効率よくニッケルイオンをメッキ浴に供
給する方法を提供することを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、メッキ浴に供給するべきニッケルイオン
を、メッキ槽とは別の補助電解槽において、特定の電解
液を用いたニッケル陽極の電解溶解により調製し、これ
をメッキ浴に供給すると上記課題を効率よく解決できる
との知見に基づいてなされたのである。
即ち、本発明は、ニッケル陽極と不溶性陰極とを備
え、かつ陰イオン交換膜で陽極室と陰極室とに区切られ
た補助電解槽において、少なくとも一種のヒドロキシカ
ルボン酸を含有するが、脂肪族アミンを含有しない電解
液を用いて電解を行ってニッケルを電解溶解し、得られ
た溶解液を、ニッケルイオン、ヒドロキシカルボン酸及
び脂肪族アミンを含有するアルカリ型のメッキ浴を収容
してなるニッケル又はニッケル合金メッキ用のメッキ槽
に供給することを特徴とする該メッキ槽へのニッケルイ
オンの供給方法を提供する。
本発明でニッケルイオンを調製するための補助電解槽
は、陰イオン交換膜で陽極室と陰極室とに区切られてい
る。これは、ニッケル陽極から電解液中に溶解したニッ
ケルイオンが陰極へ移動し、陰極表面に析出するのを防
ぐためのものであり、該目的を達成できる限り、どのよ
うな陰イオン交換膜をも使用することができる。該陰イ
オン交換膜としては、例えば旭硝子(株)のセレミオン
AMV、徳山ソーダ(株)のネオセプターAM3などがあげら
れ、特にセレミオンAMVなどを用いるのが好ましい。
本発明では上記補助電解槽にニッケル陽極と不溶性陰
極とを設置する。ここで、ニッケル陽極としては、例え
ば、厚さ5〜30mmのニッケル板を用いるのがよく、不溶
性陰極としては、ステンレス板、カーボン板等を用いる
のがよい。
本発明では、上記電極を備えた補助電解槽に電解液と
して、少なくとも一種のヒドロキシカルボン酸を含有す
るものを用いることを特徴とする。ここで、ヒドロキシ
カルボン酸は、ニッケルイオンの対陰イオンとなるもの
であり、ニッケルイオンを安定に水溶液中に存在させる
ことができる。該ヒドロキシカルボン酸としては、炭素
数4〜10、好ましくは炭素数4〜8のヒドロシキ多価カ
ルボン酸があげられる。具体的には酒石酸、リンゴ酸、
グルコン酸、クエン酸などである。これらヒドロキシカ
ルボン酸の電解液中の濃度は任意であるが、1.0モル/
以下、より好ましくは0.2〜0.7モル/とするのがよ
い。
本発明では、上記補助電解槽を用い、陽極電流密度1
〜5A/dm2となるように通電量を調整した電解温度30〜50
℃で電解を行い、陽極室のニッケルイオンの濃度が約20
%となったら電解を終了し、必要量の陽極液、すなわち
析出により消費されたニッケル量(g)を相当する陽極
液をメッキ槽に補給する。
尚、本発明で用いる補助電解槽の最低の大きさは、例
えば、メッキ槽の稼動量(Q)により決めることができ
る。即ち、メッキ槽の一日当たりの稼動量をQとし、補
助電解槽の容量をV()とし、 V=0.004×Q により補助電解槽の最低容量を決めることができる。
又、陰イオン交換膜の面積は、作業効率の点から電流密
度が3A/dm2以下に設定するのがよい。
上記補助電解槽で調製したニッケルイオンを含有する
電解液を供給する対象のメッキとしては、アルカリ型の
ニッケルメッキ、ニッケル−亜鉛合金メッキ、ニッケル
−銅合金メッキ、ニッケル−鉄合金メッキ、ニッケル−
コバルト合金メッキ、ニッケル−マンガン合金メッキ、
ニッケル−カドミウム合金メッキ、ニッケル−鉛合金メ
ッキ、ニッケル−スズ合金メッキ等があげられる。ここ
で、ニッケルメッキの場合には、メッキ槽の陽極として
不溶性電極が用いられるが、ニッケル−亜鉛合金メッキ
槽の場合には、陽極として亜鉛陽極が、また陰極に被メ
ッキ物がおかれ、陽極から亜鉛が供給される方式をとる
のがよい。
上記各メッキのうち、アルカリ型のニッケルメッキで
用いる典型的な浴組成及びアルカリ型のニッケル−亜鉛
合金メッキで用いる典型的な浴組成を次に例示する。
Niメッキ浴 NiSO4・6H2O=10〜50g/ NaOH=20〜150g/ ヒドロキシカルボン酸=5〜50g/ 脂肪族アミン=10〜80g/ Zn−Ni合金メッキ浴 ZnO=5〜20g/ NiSO4・6H2O=10〜50g/ NaOH=20〜150g/ ヒドロキシカルボン酸=5〜50g/ 脂肪族アミン=1〜20g/ 〔発明の効果〕 本発明のニッケルイオン供給方法によれば、簡易にニ
ッケルイオンをメッキ槽に供給することができ、且つニ
ッケルイオンの対イオンとしてメッキ槽に持ち込まれる
ヒドロキシカルボン酸イオンは、メッキ性能に悪影響を
与えることがないのでアルカリ型のニッケル、又はニッ
ケル合金メッキを長時間安定に行うことができる。
次に実施例により、本発明を説明するが、本発明はこ
れに限定されるものではない。
〔実施例〕
実施例1 第1図に示す供給システムにより、100のメッキ槽
にてアルカリ性ニッケル電気メッキを行った。第1図
中、1はメッキ槽、2はメッキ液、3はステンレス陽
極、4は被メッキ物であり、ニッケルイオンは補助電解
槽5から供給した。補助電解槽5中、6は電解液、7は
ニッケル陽極板、8はステンレス製陰極、9は陰イオン
交換膜である。補助電解槽5内の電解液6は濾過機10及
び熱交換機11を通って、メッキ槽1に導入される。
本実施例では、2000AHまでメッキ槽を稼動しニッケル
メッキを行った。
ニッケル金属を溶解する補助電解槽の容量は本槽の通
電電流20A、1日の稼動時間を10時間、稼動量Q=200AH
/日の条件より算出して、0.8とした。補助電解槽の電
解液に添加したヒドロキシカルボン酸は、酒石酸又は酒
石酸+クエン酸の混合物(モル比=1:1)であり、その
濃度は両者とも0.4モル/(混合物の場合0.2モル+0.
2モル)である。
メッキ槽の陽極にはステンレスSUS314を使用し、下記
の条件で連続メッキした。
1)本槽(メッキ槽)の浴組成 NiSO4・6H2O=13.5g/ NaOH=100g/ TEPA〔テトラエチレンペンタミン〕=50g/ ヒドロキシカルボン酸=5g/ (2種類の場合はモル比で1:1) 光沢剤=4g/ 2)本槽の稼働条件 浴 温=25±5℃ 陰極電流密度=3A/dm2(平均) 陽極電流密度=3A/dm2(平均) ろ 過=連続ろ過 カソードロッカー=1m/min 3)補助電解槽の電解条件 浴 温=40±5℃ 陰極電流密度=3A/dm2 陽極電流密度=3A/dm2 通電量=0.6A 陽極室液量=0.4 (注)本槽へ添加した光沢剤は、Dipsol社IZ−260Sであ
る。
上記の条件で2000AH連続メッキ処理した場合のNi濃度
及びメッキ外観の安定性について従来法と比較した結
果、を表−1に示す。
実施例2 メッキ槽1内の陽極として亜鉛陽極板を用いた他は、
第1図に示すのと略同一の供給システムを用いて250
のジンケート型Zn−Ni合金めっきを5000AHまで連続的に
行い、補助電解槽よりニッケルイオンを供給した。
Ni金属を溶解する補助電解槽の容量は本槽の通電電流
50A、1日の稼動時間を10時間、稼動量Q=500AH/日の
条件で算出して2とした。補助電解槽の電解液に添加
したヒドロキシカルボン酸は酒石酸、グルコン酸、及び
酒石酸とグルコン酸の混合物の3種であり、その濃度は
いずれも0.4モル/(2種の場合はそれぞれ0.2モル/
)である。連続メッキ条件を次に示す。
1)本槽の浴組成 ZnO=10g/(Zn2+=8g/) NiSO4・7H2O=5.4g/(Ni2+=1.2g/) NaOH=120g/ PEHA=15g/ (注1)ヒドロキシカルボン酸=10g/ (注2)光沢剤=4g/ 2)本槽の稼働条件 浴 温=25±3℃ 平均陰極電流密度=2.5A/dm2 陽極電流密度=7A/dm2 ろ 過=連続ろ過 カソードロッカー=1m/min 3)補助電解槽の電解条件 浴 温=40±5℃ 陰極電流密度=3A/dm2 陽極電流密度=3A/dm2 通電量=1.4A 陽極室液量=1 (注)本槽へ添加した光沢剤はDipsol社IZ−260Sを使用
した。
上記の条件で5000AH連続メッキ処理した場合のNi濃
度、皮膜中へのNi率及びメッキ外観の安定性について従
来法と比較した結果を表−2に示す。
実施例3 第1図の供給システムと同様の供給システムを用い
て、100のメッキ槽にてアルカリ性Sn−Ni合金めっき
を2000AH連続して行った。
Ni金属を溶解する補助電解槽の容量は本槽の通電流20
A、1日の稼動時間を10時間、稼動量Q=200AH/日の条
件より算出して、0.8とした。補助電解槽の電解液に
は、ヒドロキシカルボン酸として酒石酸又はグルコン酸
を用い、両者とも濃度0.4モル/で行った。
メッキ槽の陽極にはSn板(99.9%)を使用し下記の条
件で連続的にメッキした。
1)本槽の浴組成 NiCl2・6H2O=21g/(Ni2+=5g/) NaSnO3=46g/(Sn4+=25g/) NaOH=40g/ TEPA〔テトラエチレンペンタミン〕=50g/ ヒドロキシカルボン酸=5g/ (注)光沢剤=6g/ 2)本槽の稼動条件 浴 温=40±5℃ 陰極電流密度=2A/dm2 陽極電流密度=2A/dm2 ろ 過=連続ろ過 カソードロッカー=1m/min 3)補助電解槽の電解条件 浴 温=40±5℃ 陰極電流密度=3A/dm2 陽極電流密度=3A/dm2 通電量=0.6A 陽極室液量=0.4 (注)本槽へ使用した光沢剤は、Dipsol社IZ−260Sを使
用した。
上記の条件で2000AH連続メッキ処理した場合のNi濃
度、皮膜中へのNi共析率及びメッキ外観の安定性につい
て従来法と比較した結果を表−3に示す。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明のニッケルイオン供給方法を行うため
の装置の概略図である。 図中、1はメッキ槽、2はメッキ液、3はステンレス陽
極、4は被メッキ物、5は補助電解槽、6は電解液、7
はニッケル陽極板、8はステンレス製陰極、9は陰イオ
ン交換膜である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ニッケル陽極と不溶性陰極とを備え、かつ
    陰イオン交換膜で陽極室と陰極室とに区切られた補助電
    解槽において、少なくとも一種のヒドロキシカルボン酸
    を含有するが、脂肪族アミンを含有しない電解液を用い
    て電解を行ってニッケルを電解溶解し、得られた溶解液
    を、ニッケルイオン、ヒドロキシカルボン酸及び脂肪族
    アミンを含有するアルカリ型のメッキ浴を収容してなる
    ニッケル又はニッケル合金メッキ用のメッキ槽に供給す
    ることを特徴とする該メッキ槽へのニッケルイオンの供
    給方法。
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