JP2666537B2 - 組織選択加熱装置 - Google Patents

組織選択加熱装置

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JP2666537B2 JP2212116A JP21211690A JP2666537B2 JP 2666537 B2 JP2666537 B2 JP 2666537B2 JP 2212116 A JP2212116 A JP 2212116A JP 21211690 A JP21211690 A JP 21211690A JP 2666537 B2 JP2666537 B2 JP 2666537B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本願発明は、特定部位の一部の組織のみを高精度に選
択して正確な温度に加熱又は加温し得るようにした組織
選択加熱装置に関するものである。
(従来の技術) 最近の医療機関では、一般に磁気共鳴画像診断装置
(略してMRI)と呼ばれる画像診断装置が多く使用され
るようになっている。
この磁気共鳴画像診断装置は、核物理現象としての核
磁気共鳴(いわゆるNMR)を利用したもので、人間の細
胞の原子核に所定の周波数の電磁波を照射し、その共鳴
現象をコンピュータを使用した画像処理システムによっ
て映像化することによって人体の細胞の原子レベルでの
病理状態を視覚的に診断できるようにしたものである。
人体の細胞を構成する原子の大部分は水素原子(H)で
あるが、その原子核(1H)は、分かり易く言うと極く小
さな磁石と同じであって、通常の状態では自転し首振り
運動を続けている。ところが、これを強力な磁場の中に
置くと、当該各原子核(1H)は上記磁場の方向に全てが
向きをそろえる。
そして、その状態においては該磁場の方向と直角な方
向から電磁波(ラジオ波)を照射すると、上記各原子核
は特定の周波数の電圧信号を出して、その位置を知らせ
る。そこで、該電圧信号をキャッチして画像を構成し、
疾患を診断するというメカニズムとなっている。
上記磁気共鳴画像診断装置の開発以前には、一般にX
線を使用した断層撮影装置,いわゆるX線CTと呼ばれる
ものが用いられていたが、磁気共鳴画像診断装置の場合
には該X線CTの場合と異なり、一般に人体に無害とされ
ている電磁波を用いるためにX線CTのような放射線被曝
の恐れがなく安全性が高い。また、診断機能の点でも優
れている。
すなわち、磁気共鳴画像診断装置では異常細胞と正常
細胞との違いを原子核レベルで把えることができるの
で、病巣の存在する部分を極めて明瞭にとらえることが
できる。例えば、人体のガン細胞中の水素原子核は一般
に正常細胞中のそれよりも密度が高い。また、同ガン細
胞中の水分子と正常細胞中の水分子とは動きが全く違
う。さらに磁気共鳴後の水素原子核が元の状態に戻る時
間も異なる。
したがって、このような違いを原子核の反応によって
追跡すれば、末だ具体的に病変として現れていない段階
ででも正確に病気を診断する手掛かりをつかむことがで
きる。
一方、以上のようにして発見された例えばガン細胞の
除去等の治療について、最近ではレーザメスを使用して
患部の組織を瞬間的に焼き切って破壊し、蒸発させてし
まう外科的な手術も多く施されるようになっている。該
治療方法では、切除と同時にレーザ光による高い光熱に
より周囲の血管が焼き固められてしまうので出血量も少
なくて済む。また、仮に切口にガン細胞があったとして
も上記光熱により死滅し、しかも上記の如く血管が凝固
するので手術後の血流によりガン細胞が体内に拡散され
るという欠点もなく、転移を生じにくいというメリット
がある。特に胃ガンなどの場合には、内視鏡のファイバ
ースコープにより、レーザ光を体内の患部に導いて、目
的の部位(患部)に正確に照射するようにすれば切開手
術を必要とせず、しかも患部周囲の組織破壊も最も小さ
い形でガン細胞の除去を図ることができる。
しかし、上記レーザメスによる組織破壊の治療は、何
れにしても外部のレーザ光源部から患部までレーザ光を
導くことが必要であり、患部が胃などと異なって内視鏡
等を使用し得ない閉体内にある場合などには採用するこ
とができない。つまり、完全な意味での無侵襲治療は不
可能である。
このため、最近では例えば特開昭60−55967号公報に
示されているように、閉体内のガン組織に対し、外部か
ら超音波やマイクロ波を照射してガン細胞を加熱するこ
とによって衰退、死滅させるハイパーサーミアと称され
る温熱治療方法も研究されている。
一般にガン細胞は、例えば人体の体温36℃よりも高い
40℃〜50℃程度に所定時間以上保持されると、正常な代
射活動が不可能となって死滅する。上記温度治療は、こ
の点に着目して研究、開発されているものであり、既に
数種類の実製品も提供されている。
(発明が解決しようとする課題) しかし、例えば上記超音波エネルギーを利用したもの
では、音の圧力波を縦波として人体内を伝搬させる時
の、同人体内での粘性や散乱などによる超音波のエネル
ギー損失による発熱を利用したものであるから、正確に
患部のみで発熱を生じさせるということができず、正常
組織をも損傷させてしまう問題を抱えている。
また、超音波の伝搬部に組織上の密度差があると、界
面反射を生じてしまい、深層部まで十分な超音波の伝達
が行えない問題もある。
したがって、患部位置によっては必ずしも十分な治療
効果を上げることができない。
次に、上記マイクロ波を利用した誘導加熱方式による
ものでは、人体の内部に交流電流を流し、患部の電気抵
抗に応じたジュール熱によって加熱するものであるか
ら、やはり、患部だけを正確に加熱することはできず、
上記の場合と同様に正常組織を損傷する問題がある。
(課題を解決するための手段) 本願の請求項1〜3記載の各発明は、それぞれ上記従
来の問題を解決することを目的としてなされたものであ
って、各々次のような課題解決手段を備えて構成されて
いる。
(1) 請求項1記載の発明の課題解決手段 該請求項1記載の発明の組織選択加熱装置は、全体の
組織中の特定の組織部を当該組織を形成する核種又は原
子核を取り巻く環境構造の差違によって判別特定する組
織特定手段と、該組織特定手段によって特定された特定
の組織部に静磁場を与える静磁場形成手段と、該静磁場
形成手段によって形成された静磁場中に於ける上記組織
特定手段によって特定された特定の組織部に対して電磁
波を照射する電磁波照射手段とを備えてなる組織選択加
熱装置において、上記組織特定手段により判別特定され
た組織とその他の組織の各々の核磁気共鳴スペクトルを
測定する核磁気共鳴スペクトル測定手段を設け、上記電
磁波照射手段は、当該核磁気共鳴スペクトル測定手段に
より測定された2種の核磁気共鳴スペクトルに基いて上
記特定の組織では核磁気共鳴吸収されるがその他の組織
では核磁気共鳴吸収されない電磁波の波長を求め、該波
長の電磁波を照射するように構成されている。
(2) 請求項2記載の発明の課題解決手段 該請求項2記載の発明の組織選択加熱装置は、不対電
子を有する分子成分を含んで形成された全体の組織中の
特定の組織部を当該組織を形成する分子中の上記不対電
子を取り巻く環境構造の差違によって判別特定する組織
特定手段と、該組織特定手段によって特定された特定の
組織部に静磁場を与える静磁場形成手段と、該静磁場形
成手段によって形成された静磁場中に於ける上記組織特
定手段によって特定された特定の組織部に対してマイク
ロ波を照射するマイクロ波照射手段とを備えてなる組織
選択加熱装置において、上記組織特定手段により判別特
定された組織とその他の組織の各々の電子スピン共鳴ス
ペクトルを測定する電子スピン共鳴スペクトル測定手段
を設け、上記電磁波照射手段は、当該電子スピン共鳴ス
ペクトル測定手段により測定された2種の電子スピン共
鳴スペクトルに基いて上記特定の組織では電子スピン共
鳴吸収されるがその他の組織では電子スピン共鳴吸収さ
れないマイクロ波の波長を求め、該波長のマイクロ波を
照射するように構成されている。
(3) 請求項3記載の発明の課題解決手段 請求項3記載の発明の組織選択加熱装置は、核スピン
量子数が1以上の原子核を有する組織中の特定の組織部
を当該組織を形成する核種又は原子核を取り巻く環境構
造の差違によって判別特定する組織特定手段と、該組織
特定手段によって特定された特定の組織部に静磁場を与
える静磁場形成手段と、該静磁場形成手段によって形成
された静磁場中に於ける上記組織特定手段によって特定
された特定の組織部に対して電磁波を照射する電磁波照
射手段とを備えてなる組織選択加熱装置において、上記
組織特定手段による判別特定された組織とその他の組織
の各々の核四極子共鳴スペクトルを測定する核四極子共
鳴スペクトル測定手段を設け、上記電磁波照射手段は、
当該核四極子共鳴スペクトル測定手段により測定された
2種の核四極子共鳴スペクトルに基いて上記特定の組織
では核四極子共鳴吸収されるがその他の組織では核四極
子共鳴吸収されない電磁波の波長を求め、該波長の電磁
波を照射するように構成されている。
(作 用) (1) 請求項1記載の発明の作用 上記のように、先ず請求項1記載の発明の組織選択加
熱装置の構成では、例えばMRI等の磁気共鳴画像診断装
置よりなる組織特定手段を用いて、人体等の全体の組織
中の特定の組織部を、該組織を形成する核種又は原子核
を中心としてその周囲の環境構造の差違によって正確に
判別特定し、該特別特定された組織部に対し所定のレベ
ルの静磁場中において当該特定された組織部によっての
み核磁気共鳴吸収されて熱交換される一方、その他の組
織部では核磁気共鳴吸収されない電磁波の波長を上記各
組織の核磁気共鳴スペクトルを測定することによって正
確に求め、その上で当該特定の組織部に該波長の電磁波
を照射して効果的に発熱させるようになっている。
以上のように、核磁気共鳴スペクトルを測定すると、
例えば脳腫瘍のような正常組織に対して極めて極限度が
高い病変部の代謝特性等の分析も可能となり、電磁波の
共鳴吸収波長の決定を極めて高精度に行うことが可能と
なる。
したがって、上記発熱は上記組織特定手段によって特
定されたガン細胞等の特異組織部でのみより正確に生
じ、他の組織部では生じないようになる。
(2) 請求項2記載の発明の作用 次に、請求項2記載の発明の組織選択加熱装置の構成
では、例えばMRI等の磁気共鳴画像診断装置よりなる組
織特定手段を用いて、人体等の不対電子を有する分子に
よって形成された全体の組織中の特定の組織部を、該組
織を形成する分子中の不対電子を中心としてその周囲の
環境構造の差違によって正確に特別特定し、該判別特定
された組織部に対し所定レベルの静磁場中において当該
特定された組織部によってのみ電子スピン供給吸収され
て熱交換される一方、その他の組織部では電子スピン共
鳴吸収されないマイクロ波の波長を上記各組織の電子ス
ピン共鳴スペクトルを測定することによって正確に求
め、その上で当該特定の組織部に該波長のマイクロ波を
照射して効果的に発熱させるようになっている。
以上のように、電子スピン共鳴スペクトルを測定する
と、例えば脳腫瘍のような正常組織に対して極めて限極
度が高い病変部の代謝特性等の分析も可能となり、マイ
クロ波の共鳴吸収波長の決定を極めて高精度に行うこと
が可能となる。
したがって、上記発熱は上記組織特定手段によって特
定されたガン細胞等の特異組織部でのみ、より正確に生
じ、他の組織部では生じないようになる。
(3) 請求項3記載の発明の作用 さらに、請求項3記載の発明の組織選択加熱装置の構
成では、例えばMRI等の磁気共鳴画像診断装置よりなる
組織特定手段を用いて、核スピン量子数が1以上の原子
核を有する組織中の特定の組織部を、該組織を形成する
原子核を中心としてその周囲の環境構造の差違によって
正確に判別特定し、該判別特定された組織部に対し所定
レベルの静電磁中において当該特定された組織部によっ
てのみ核四極子共鳴吸収されて熱交換される一方、その
他の組織部では核四極子共鳴吸収されない電磁波の波長
を、各組織の核四極子共鳴スペクトルを測定することに
よって正確に求め、その上で当該特定の組織部に該波長
の電磁波を照射して効果的に発熱させるようになってい
る。
以上のように、核四極子共鳴スペクトルを測定する
と、例えば脳腫瘍のような正常組織に対して極めて限局
度が高い病変部の代謝特性等の分析も可能となり、電磁
波の共鳴吸収波長の決定を極めて高精度に行うことが可
能となる。
したがって、上記発熱は上記組織特性手段によって特
定されたガン細胞等の特異組織部でのみより正確に生
じ、他の組織部では生じないようになる。
(発明の効果) したがって、本願の請求項1〜3記載の各発明の組織
選択加熱装置によると、その何れにあっても目的とする
特定の組織部のみを特に正確に加熱することができる加
熱装置を提供することができるようになり、例えば先に
従来技術に関連して述べたガン治療用の温熱装置として
構成した場合にも従来のような問題は生じない。
従って、ガン細胞の中でも、例えば脳腫瘍のような非
常に限局度の高い病変が存在する場合にも他の非病変部
に影響を与えることなく、有効な治療を施すことが可能
となる。
(実施例) (1) 第1実施例 先ず第1図〜第6図は、本願発明の第1実施例にかか
る組織選択加熱装置の構成並びに作用を示している。
この第1実施例の組織選択加熱装置は、加熱システム
として核磁気共鳴吸収による加熱方式を採用して構成さ
れている。
そこで、先ず該核磁気共鳴吸収による加熱の原理につ
いて説明しておく。
核磁気共鳴吸収というのは、一般には核磁気共鳴現象
(NMR)の分析、測定法として知られているものである
が、要するに、核磁気共鳴に伴うエネルギー損失、すな
わち、共鳴時に生じる電磁波の吸収を意味するものであ
る。
多くの原子核はスピン角運動量を有し、このスピン角
運動量も量子化され、該スピン量子数をIとするスピン
角運動量は となる。ここでは主として水素原子核(1H)を取り上げ
るが、この場合は核スピン量子数IはI=1/2である。
空間のある方向のスピン角運動量も量子化される。
磁場が加えられないときは、略同数の+1/2と−1/2の
状態の核があり、そのエネルギー準位は第2図に示すよ
うに同じである。ところが、上記水素原子核(1H)を所
定の強さ磁場B0の中に置くと、第3図のように該磁場の
強さに比例して上記+1/2と−1/2との2つの状態(右回
りと左回り)の原子核は、その±1/2のエネルギー準位
間に2μB0のエネルギー準位差ができる(但しμは磁界
の影響によって生じる磁気モーメントである)。該磁場
を加えた場合の水素原子核(1H)の磁場方向のスピン角
運動成分は、+1/2(h/2π)、または−1/2(h/2π)で
ある。
つまり、原子核は+1/2(h/2π)のスピン角運動量を
もち、したがって、磁気モーメントをもつので、磁場が
加えられると上述のように2つの異なったエネルギー準
位をもつことになる。
そして、上記のように磁場印加後、一定の時間が経過
すると、やがて次式に基づいて決定されるボルツマン分
布にしたがって各スピン核(スピン角運動量をもつ原子
核)はエネルギー準位の低い+1/2のスピン核(白丸)
が多くなって第4図に示すように熱平衡状態(速度分布
が時間に関係なく一定となった状態)になる。
Ne/Nb=eXP(−ΔE/KT) N:核の個数 ΔE:エネルギー準位差〔J〕 K:ボルッマン定数(1,380×10-23〔J・K-1〕)T:絶対
温度〔K〕 次に、該熱平衡状態において、例えば上記2μB0のエ
ネルギーに相当する周波数νの電磁波(数十MH程度の
ラジオ波)を照射する。
この時、次式の条件を充足すると第5図のようにエネ
ルギー準位面の遷移+1/2→−1/2が起こる。
hν=2μB0 但し、 h:プランク定数(6.626176×10-34J) ν0:電磁波の周波数(振動数) この現象が核磁気共鳴吸収と呼ばれるものであり、こ
の時に電磁波のエネルギーは先ず格子の運動エネルギー
をへて次に当該格子を構成している分子系の熱エネルギ
ーに変換され、発熱する。従って、この熱によって当該
原子によって構成されている組織部分を加熱することが
できることになる。しかも、この際の核磁気共鳴周波数
は、同一核種でも、その原子核を取り巻く環境(例えば
分子構造など)により異なるので、任意の構造の分子を
選択的に加熱することも可能となる。例えば脂肪の水素
原子1Hと水の水素原子1Hとでは共鳴周波数νが約3ppm
異なるために、それらを選択的に加熱することができる
訳である。
(1)対象例:対象核種・・・プロトン(1H) (2)対象条件:磁場強度Bo=8T 周囲温度=37℃ 先ず1原子核当りの吸収エネルギーをΔEとすると、
ΔEは、 ΔE=2μBo =2.260258×10-25 [J] (但し、μ=1.1412661×10-26[JT−1])となる。
次に、水素原子(1H)1モル中の基底状態(+1/2の
エネルギー準位)の原子核の個数をNbとすると、Nbは、 Nb=NA/{1+(Ne+Nb)} =3.011103×1023個 (但し、NA=6.022045×1023) となる。
そして、プロトン1モル当りの吸収エネルギーE1は、 E1=ΔE×Nb =0.0680587 [J] となる。
従って、単位時間当りの発熱量Q1は、 Q1=E1×Nb/NA/T1であり、 例えばT1=0.5秒とすると、 Q1=0.0680605[W] また、T1=10-6秒とすると、 Q1=34.0303[KW] の発熱量となる。
上記T1は、スピン−格子緩和時間と呼ばれ、核磁気共
鳴吸収による電磁波のエネルギーが熱エネルギーに変換
される際の時定数であり、原子核を囲む環境構造により
異なる。一般的には、略0.5秒とされているが、10-6
程度に短縮することも可能である。
さらに、1kg当りの発熱量Qは、 Q=1000×Q1×(α/M) [J] α:1分子当りの対象原子核の数 M:分子量 となる。
そして、T1=0.5秒、T1=10-6秒として各々例えば
(I)水、(II)脂肪、(III)タンパク質、(IV)糖
を上記核磁気共鳴吸収により具体的に加熱した場合の発
熱量は、各々次のようになる。
(I)水を加熱した場合 a)T1=0.5秒とした場合 Q2=7.55[W] b)T1=10-6とした場合 Q2=0.99[MW] (II)脂肪を加熱した場合 a)T1=0.5秒とした場合 Q3=8.6[W] b)T1=10-6とした場合 Q3=4.29[MW] (α/M≒0.126) (III)タンパク質を加熱した場合 a)T1=0.5秒とした場合 Q4=1.98[W] b)T1=10-6とした場合 Q4=3.78[MW] (但しα/M≒0.029) (IV)糖を加熱した場合 a)T1=0.5秒とした場合 Q5=4.56[W] b)T1=10-6とした場合 Q5=2.28[MW] (但しα/M≒0.067) 以上の(I)〜(IV)各ケースの発熱量を対比して見
れば明らかなように、時定数T1が短くなるほど発熱量は
大きくなる。従って、該時定数T1を加熱対象に合わせて
制御するようにすると、任意の加熱温度のコントロール
が可能となる。
次に、上記核磁気共鳴吸収の原理を採用した組織選択
加熱装置は、例えば第1図のように具体的に構成され
る。
第1図において、符号1は印加電流の値iを変えるこ
とによって任意の大きさの磁場を形成することができる
電磁石であり、必要に応じて常伝導又は超伝導何れかの
方式のものが使用される。該電磁石1は、十分なシール
ド技術を施した上で装置本体部にスリーブ状に組み込ま
れている。
該スリーブ状の電磁石1の内側には、例えば数十MHz
前後の周波数帯域の電磁波(ラジオ波)を中心部O−
O′方向に向けて送信するための電磁波送信アンテナ2
が設けられている。
一方、符号3は上述した周波数帯域の電磁波を発生す
る電磁波発生器(発振器)であり、その出力端子は増幅
器4を介して上記電磁波送信アンテナ2に接続されてい
る。
他方、符号5が加熱対象となる実験用サンプル部材
(試料)であり、該サンプル部材5は上記電磁石1およ
び送信アンテナ2の中央部に嵌挿された状態で保持され
る。
以上の構成において、上記電磁石1により上記サンプ
ル部材5に対して例えば6テスラ(60KG)〜8テスラ
(80KG)の磁場をかけ、該状態において上記電磁波送信
アンテナ2から例えば数十MHz前後の電磁波を発射して
上記サンプル部材5に照射すると、上述したように、h
νo=2μBoの条件が成立した時に核磁気共鳴吸収によ
って上記±1/2のエネルギー準位間の遷移が生じ、吸収
された電磁波のエネルギーが格子のエネルギーを経て格
子を構成している分子系のエネルギーに変換されて発熱
する。そして、その熱によってサンプル部材5を所定の
温度に加熱することができる。
次に、上記の組織選択加熱装置を使用して例えば人体
組織中のガン細胞を死滅させる場合の治療方法ないし治
療システムについて第6図のフローチャートを参照して
説明する。
すなわち、先ず最初にステップS1で、先にも述べた周
知のMRI装置を使用して患部をイメージングし、続くス
テップS2で、その結果に基き患部のガン組織の存在を確
認する。
次にステップS3に進み上記ステップS2で確認されたガ
ン組織の核磁気共鳴スペクトル(NMRスペクトル)を求
める。該核磁気共鳴スペクトルは、上述したように、上
記ガン組織に対して所定の強さの静電磁を印加した状態
で所定の周波数の電磁波を照射し、核磁気共鳴を生じた
させた時の受信器側振動電圧の変化、つまりNMRスペク
トルを意味する。このスペクトルは、同じ水素原子でも
異なった結合状態下にあれば吸収線の位置を異にして表
われる。
さらに、続くステップS4で上述したガン組織を除く正
常組織部の同様の核磁気共鳴スペクトルを求める。
そして、さらにステップS5に進み、上記2種のスペク
トルからガン組織では吸収するが、正常組織では吸収さ
れない電磁波の波長を求める。
続いて、ステップS6に進み、上述した第1図の組織選
択加熱装置を駆動し、上記スペクトルに見合った所定強
度の静磁場内で上記正常組織では吸収されないが上記ガ
ン組織で良く吸収される波長の電磁波を上述したガン組
織に照射する。その結果、同ガン組織の部分で当該波長
の電磁波エネルギーが吸収されて発熱し、同ガン組織を
例えば50℃程度に加熱して組織を形成している蛋白質を
熱変性させて死滅させる。そして、やがて十分に熱変性
が進行してガン細胞が死滅すると、該熱変性の進行によ
り吸収波長が変化するようになるので、それ以上の電磁
波の吸収は起こらず、温度上昇は停止する。
ところで、上記本実施例の組織選択加熱装置は、該装
置を加熱手段として用いることによって、例えば以下に
述べるようなサンプル部材5の種類を異にする各種の有
用なる応用装置No1〜No33を構成することができる。
(No1) 上記装置を用いて、生体中のエイズウイルス
を加熱殺傷することにより、エイズを治療する装置。
(No2) 上記装置を用いて、血管中の粥腫流動性を向
上させることにより、動脈硬化を治療する装置。
(No3) 上記装置を用いてアミノ酸組成の変化したエ
ラスチンを選択的に加熱して殺傷し、動脈硬化を治療す
る装置。
(No4) 上記装置を用いて、病原体(原虫、細菌、リ
ケッチア、クラミジア、ウイルス)を加熱殺傷すること
によってインフルエンザなどの感染症を治療する装置。
(No5) 上記装置を用いて、病原体の生産物(毒素な
ど)を加熱殺傷することにより細菌性食中毒などの病気
を治療する装置。
(No6) 上記装置を用いて、病原体を抗原として、生
体が生産した抗体を加熱することにより、病原体を温
め、殺傷するエイズなどの病気の治療装置。
(No7) 上記装置を用いて、自己免疫疾患(膠原病な
ど)により正常な組織を抗原として生産された抗体を加
熱することにより抗体を殺傷する治療装置。
(No8) 上記装置を用いて、生体に投与した薬物の活
性を高めることにより病気を治療する装置。
(No9) 上記装置を用いて、生体に抗体した薬物を覆
っている物質を加熱して溶かすことにより、病巣で薬物
を放出させ病気を治療する装置。
(No10) 上記装置を用いて、生体に抗体した磁性物質
を加熱することにより、病巣を加熱し、病気を治療する
装置。
(No11) 上記装置を用いて、正常組織を適度に暖める
ことにより、組織の増殖を促進して病気に対する抵抗力
や自然治癒能を高め病気を治療する装置。
(No12) 上記装置を用いて、特定のホルモンの分泌組
織を暖め、ホルモンの分泌を促進することにより、下垂
体性小人症などのホルモン分泌不足に起因する病気を治
療する装置。
(No13) 上記装置を用いて、ホルモン分泌組織を加熱
し、障害を与えることにより、ホルモンの分泌を抑制し
て末端肥大症などのホルモン分泌過剰に起因する病気を
治療する方法。
(No14) 上記装置を用いて、神経を適度に加温する事
により、緊張をやわらげる装置。
(No15) 上記装置を用いて、血管(または血液)を暖
めることにより、血行をよくして痔核や、しもやけなど
のうっ血を除去する装置。
(No16) 上記装置を用いて、生体中の粘膜を暖め、粘
膜過敏性を低下させることにより、(鼻アレルギーや下
痢などの)病気を治療する装置。
(No17) 偶発的体温低下(Accidental hypothermia)
などにより低下した体温を上記装置を用いて、皮膚のや
けどを防止しながら体内を暖める装置。
(No18) 上記装置を用いて、体温調節機能が低下した
患者の体温を制御する装置。
(No19) 上記装置を用いて、関節を暖めながら運動が
できる関節リウマチ治療装置。
(No20) 上記装置を用いて、正常組織の温度の低下を
防ぐ装置。
(No21) 上記装置を用いて、低温保存中の生体組織に
おいて生命の維持に必要な部分のみを保温することによ
り、組織機能を有した状態で長時間保存する装置。
(No22) 上記装置を用いて、DNAやRNAの特定の部分を
選択的に加熱して切断する装置。
(No23) 上記装置を用いて、遺伝子の二重鎖中の任意
の箇所を加熱することにより、その部分の水素結合を除
き、部分的に一重鎖にする装置。
(No24) 上記装置を用いて、冷凍保存された生体組織
を解凍する際に、その構成成分を任意の順に解凍するこ
とにより、解凍の際の生体組織の損傷を低減させる装
置。
(No25) 上記装置を用いて、低温にして活性を低下さ
せた遺伝子の一部を加熱し活性化させることにより、特
定の遺伝子の有する機能のみを発現させる装置。
(No26) 上記装置を用いて、低温にして増殖を抑制し
た遺伝子の一部を加熱することにより、遺伝子の特定の
部分を増殖させる装置。
(No27) 上記装置を用いて、低温にして増殖を抑制し
た遺伝子の一部を加熱することにより、加熱した箇所の
クローニングを促進させ、必要な構造のみを持った遺伝
子を生産する装置。
(No28) 上記装置を用いて、遺伝子の一部分を加熱、
損傷させることにより、その部分が有する機能の発現を
抑制させる装置。
(No29) 上記装置を用いて、タンパク質と遺伝子の混
合物中のタンパク質のみを加熱することによりタンパク
質のみを殺傷する装置。
(No30) 上記装置を用いて、機能の違う複数の制限酵
素を別々に加温し、活性化させることにより、遺伝子操
作の順番を任意に設定できる装置。
(No31) 上記装置を用いて、機能の違う複数の制限酵
素をそれぞれ別々に加熱殺傷する事により、遺伝子操作
の順番を任意に設定できる装置。
(No32) 上記装置を用いて、混合物中の任意の成分の
みを加熱し、相変化を起こさせることにより、その成分
を取り除き、精製する装置。
(No33) 上記装置を用いて、混合物中の任意の成分の
みを加熱することにより、周囲では化学反応を起こさず
に目的成分のみで化学反応を起こさせる装置。
(2) 第2実施例 次に第7図〜第11図は、本願発明の第2実施例に係る
組織選択加熱装置の加熱原理を示している。
この実施例の組織選択加熱装置は、加熱システムとし
て電子スピン共鳴吸収による加熱方式(ESR)を採用し
て構成されている。
そこで、先ず第1実施例の場合同様に電子スピン共鳴
吸収による加熱の原理について説明して置く。
電子スピン共鳴(ESR)吸収というのは、一般には電
子スピン共鳴の分析測定法として知られているものであ
れば、要するに電子スピン共鳴に伴うエネルギー損失、
すなわち共鳴時の電磁波の吸収を意味するものである。
電子スピン共鳴(ESR)には、通常試料の磁性によっ
て(a)常磁性共鳴、(b)強磁性共鳴、(c)反強磁
性共鳴などに分けられる。物質の分子やイオンに不対電
子(不対電子とは、要するに電子対を形成していない電
子であって、奇電子とも呼ばれる)があると、電子の磁
気モーメントβと外部磁場Boとの相互作用により+βBo
と−βBoの2種のエネルギー準位を生じ、上述した核磁
気共鳴の場合のNMRスペクトルと同様のものができる。
これが電子スピン共鳴(ESR)と呼ばれるものである。
上記電子の磁気モーメントβは、上述した核磁気共鳴に
おける原子核の磁気モーメントμの場合に比べて遥かに
大きいから共鳴による吸収波長はマイクロ波領域にな
る。
例えば希土類金属を構成する常磁性の分子は、不対電
子のスピン運動量のために分子全体として所定の大きさ
の磁気モーメントをもつ。例えばラジカル(不対電子を
有した反応性に富む分子断片)は、一個の不対電子をも
つので分子全体として磁気モーメントβをもつ。
先ず、サンプル部材(試料)5中のラジカルが、第7
図のように相互に十分に離れていて各々の磁気モーメン
トβoが乱雑な配向をとっていると、集団(分子)全体
としては磁気モーメントβを持たない。
ところが、上記サンプル部材5を磁場Bo中に置くと、
上記ラジカルの磁気モーメントβoは、第8図に示すよ
うに上記磁場Boに平行か、反平行となる。そして、磁場
Boの強度に比例して第9図に示すように上記ラジカルの
エネルギー準位にgβBoの準位差を生じることになる
(g・・・分光学的分離定数)。
そして、上記のように磁場印加後、一定の時間が経過
すると、やがて次式に基いて決定されるボルツマン分布
に従って各ラジカルはエネルギー準位の低い+1/2のス
ピンのラジカルが多くなって第10図に示すように熱平行
状態になる。
Ne/Nb=exp(ΔE/KT) N:ラジカルの個数 ΔE:エネルギーの準位差[J] K:ボルツマン分布(1.380×10-23[J・K-1])T:絶対
温度[K] 次に、該熱平行状態において、例えば上記gβBoのエ
ネルギーに相当する周波数νの電磁波(数十MH程度の
ラジオ波)を照射する。
この時、次式の条件を充足すると第11図のようにエネ
ルギー準位面の遷移+1/2→−1/2が起こる。
hν=gμB0 但し、h:プランク定数(6.626176×10−34[Js]) ν0:電磁波の周波数(振動数) この現象が電子スピン共鳴吸収と呼ばれるものであ
り、この時に電磁波のエネルギーは先ず格子の運動エネ
ルギーをへて次に当該格子を構成している分子系の熱エ
ネルギーに変換され、発熱する。従って、この熱によっ
て当該分子によって構成されている組織部分を加熱する
ことができることになる。
しかも、この際の電子スピン共鳴周波数は、分子中の
不対電子の位置や、その不対電子を取り巻く環境(例え
ば分子構造など)により異なるので、任意の構造の分子
を選択的に加熱することも可能となる。
ここで、上記第1実施例の場合と同じように電子スピ
ン共鳴吸収による発熱量を概算して見る。
(1)対象例:対象分子・・・O2 (2)対象条件:磁場強度Bo=8T(テスラ) 周囲温度=37℃ 先ず上記O2の1個当りの吸収エネルギーをΔEとする
と、O2は2個の不対電子を含むためΔEは、 ΔE=2×gβBo =2.974592×10-22 [J] (但し、g=2.002319、β=9.284832×10-24[J
T-1]) となる。
次に、O21モル中の基底状態(+1/2のエネルギー準
位)の不対原子の個数をNbとすると、Nbは、 Nb=2×NA/{1+(Ne+Nb)} =6.126854×1023個 (但し、NA=6.022045×1023) となる。
そして、O2分子1モル当りの吸収エネルギーE1は、 E1=ΔE×Nb =91.120438 [J] となる。
従って、単位時間当りの発熱量Q1は、 Q1=E1×Nb/NA/T1であり、 例えばT1=0.5秒とすると、 Q1=92.72[W] また、T1=10-3秒とすると、 Q1=46.36[kw] となる。
上記T1は、電子スピン共鳴吸収による電磁波のエネル
ギーが熱エネルギーに交換される際の時定数であり、分
子を囲む環境構造により異なる。一般的には、略0.5秒
とされているが、上述のように10-3秒程度に短縮するこ
とも可能である。
そして、T1=0.5秒、T1=10-3秒として各々例えば1
(kg)あたり、(I)32gの酸素分子O2を含む組織、(I
I)320mgの酸素分子O2を含む組織のそれぞれを加熱した
場合の同1(kg)当りの発熱量Q2は、次のようになる。
(I)1kgあたり32gの酸素分子O2を含む組織を加熱した
場合 a)T1を0.5秒とした場合 Q2=92.72[W] b)T1を10-3秒とした場合 Q2=46.36[kw] (II)1kgあたり320mgの酸素分子O2を含む組織を加熱し
た場合 a)T1を0.5秒とした場合 Q3=0.9272[W] b)T1を10-3秒とした場合 Q3=927.2[W] 以上に説明した実施例の組織選択加熱装置は、特に電
子スピンによるものであるために、磁気モーメントβが
大きく、また照射される電磁波も波長が1mm以下のマイ
クロ波であるので、吸収によるエネルギー損失は高い。
そのため発熱量も大きい。
従って、本実施例の組織選択加熱装置によっても上述
した第1実施例のものと同様のガン治療装置(第1図、
第6図参照)や、また同No1〜No33に列挙した各種の応
用装置をより有効に実現することができる。
中でも、本実施例の装置の場合には、特に不対電子に
よる電子スピン共鳴を利用しているから、放射線照射や
不純物の添加によって本来不対電子を生じる点欠陥を有
する固体金属の同点欠陥を加熱溶融して修復する場合の
修復装置として適している。
(3) 第3実施例 上述した第1、第2実施例と同様の機能をもった組織
選択加熱装置は、さらに核四極子共鳴吸収の原理を採用
することによって構成することもできる。本第3実施例
の組織選択加熱装置は、このような観点から核四極子共
鳴吸収による加熱方式を採用して上述の2つの実施例の
ものと略同等の加熱効果を実現したものである。
核四極子共鳴(NQR)とは、先に第1実施例の説明中
において述べた核スピン量子数がIが1以上の原子核で
生じるもので、上述の核磁気共鳴における核磁気モーメ
ントμの代りに核四極子モーメントQを利用したことを
特徴とするものである。本来は静電相互作用によるエネ
ルギーの吸収である。
ここで、先ず核四極子モーメント(電気四極子モーメ
ント)とは、原子核の変形による電荷分布の球形からの
ずれに対応し、その演算子Qは、陽子iの極座標をri,
θi,φi、電荷をeとして、 Q=eΣ(3cos2θi−1)ri2 で定義され、核スピンがZ軸方向を向いている状態の波
動関数でQの期待値をとった<Q>がその値を表わす。
葉巻形のときは正(+)、円板形のときは負(−)とす
る。そして、その主軸は核スピン軸と一致する。核スピ
ンの量子数Iが0または1/2の核では<Q>=0とな
り、したがって偶−偶核の基底状態の<Q>は0であ
る。中性子および陽子の数が魔法数に値変いものでは非
常に小さく、魔法数の前では正、後では負の値をとる。
魔法数から離れると絶対値は大きくなり、とくに希土類
元素で大きい。たとえば175Luでは<Q>/e=7×10-24
cm2で、独立粒子模型で計算された値の約30倍であり、
集団模型によって説明される。原子核からの位置ベクト
ルrjの点にある電荷ejとその原子核との相互作用のうち
核四極子による部分は、核スピンをII、その量子数をI
として、 ejeQ{I(I+1)rj-3−3(rj・II)2rj-5}/2I(2I−1) で与えられ、これによって核スピン単位の分岐(遷移)
がおこる。
今例えば、核スピン量子数Iが1以上(I>1)の原
子としてアンモニアNH3の場合を例に取って説明する
と、該NH3中のチッ素原子14Nには、+1/4スピン核と−1
/2スピン核の2つの状態(右回りスピン、左回りスピ
ン)がある。そして、該14N原子核を上述と同様の静磁
場Bo中に置くと、上記2つの状態の核は、相互のエネル
ギー準位に0.75(Qq/h)の差を生じる(但し、eQqは核
四極子結合定数と呼ばれるものである)。
そして、やがて次の式で示されるようなボルツマン分
布を生じ、該ボルツマン分布に応じて第12図に示すよう
に、エネルギー準位の低い−1/2のスピンの原子核が多
くなって熱平衡状態となる。
Nb/Nb=exp(ΔE/KT) N:核の個数 ΔE:準位間のエネルギー差 [J] K:ボルツマン定数 (1.380662×10-23[JK-1]) T:絶対温度[K] 次に熱平衡状態において、次式に示すような上記0.75
eQqのエネルギーに相当する周波数νoの電磁波(ラジ
オ波)を照射する。
hνo=0.75eQq h:プランク定数(6.726176×10-34[Js]) その結果、上述した磁気モーメントの一種である核極
四極子モーメントと電磁波の交流磁場との相互磁気作用
により核極四極子共鳴吸収が起こり、上記熱平衡状態に
あったスピン核は−2/1の状態から+1/4の状態に第13図
のように遷移する。
そして、このようにして吸収された電磁波のエネルギ
ーは上記核磁気共鳴吸収、電子スピン共鳴吸収の場合と
同様に格子の運動エネルギーを経て該格子を構成してい
る分子系の熱エネルギーに変換されて発熱する。この場
合の核極四極子共鳴周波数は、同一核種でも、その原子
核を取り巻く環境(分子構造など)により異なるので、
任意の構造の分子を選択的に加熱することができる。
ここで、上述の場合同様に上記核四極子共鳴吸収によ
る発熱量を概算して見る。
(1)対象例:対象核種・・・NH3中の14N (2)対象条件:磁場強度Bo=8T(テスラ) 周囲温度=37℃ 先ず14N1原子核当りの吸収エネルギーをΔEとする
と、ΔEは、 ΔE=0.75eQq =1.5558×10-27 [J] (但し、eQq=2.0744×10-27[JT]) となる。
次に、14N1モル中の基底状態の原子核の個数をNbとす
ると、Nbは、 Nb=NA/{1+(Ne+Nb)} =3.011103×1023個 (但し、NA=6.022045×1023) となる。
そして、14Nプロトン1モル当りの吸収エネルギーE1
は、 E1=ΔE×Nb =0.0680587 [J] となる。
従って、上記1モルの単位時間当りの発熱量Q1は、 Q1=E1×Nb/NA/T1であり、 例えばT1=0.5秒とすると、 Q1=0.0680605[W] また、T1=10-6秒とすると、 Q1=234.23[kw] となる。
上記T1は、スピン−格子の緩和時間であり、核四極子
共鳴吸収による電磁波のエネルギーが熱エネルギーに変
換される際の時定数であり、原子核を囲む環境構造によ
り異なる。一般的には、略0.5秒とされているが、上記
の如く10-6秒程度に短縮することも可能である。
さらに、1kgあたり、(I)14gの窒素原子を含む組
織、(II)140mgの窒素原子を含む組織をそれぞれ加熱
した場合の同1kg当りの発熱量Q2は次のようになる。
(I)1kgあたり14gの窒素原子を含む組織を加熱した場
合 a)T1=0.5秒とした場合 Q2=0.0680605[W] b)T1を10-6秒とした場合 Q2=234.23[kw] (II)1kgあたり140mgの窒素原子を含む組織を加熱した
場合 a)T1を0.5秒とした場合 Q2=6.80605×10-4[W] b)T1を10-6秒とした場合 Q2=2.3424[W] そして、核四極子共鳴吸収による加熱原理を採用した
本実施例の組織選択加熱装置は、その具体的な装置構造
は上述した第1図のものと略同様のもので構成すること
ができ、またガンの治療装置として使用する時は上述の
第6図と同様の治療方法を採用すれば良い。
さらに、該核四極子共鳴吸収による組織選択加熱装置
の場合にも上記第1実施例の場合と同様のNo1〜No33の
例示のような各種の有用な応用装置を実現することがで
きる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本願発明の第1実施例に係る組織選択加熱装
置の構成を示す概略図、第2図は、本願発明の第1実施
例に係る組織選択加熱装置の加熱原理を説明する静磁場
を印加しない状態のスピン核配列図、第3図は、同組織
選択加熱装置の静磁場印加時におけるスピン核のエネル
ギー準位の変化と準位差を示す説明図、第4図は、同加
熱装置の上記静磁場印加状態におけるスピン核熱平衡状
態の説明図、第5図は、同加熱装置の電磁波を照射した
時のスピン核の遷移を示す説明図、第6図は、同第1実
施例の組織選択加熱装置をガンの治療装置に使用した時
の治療方法を示すフローチャート、第7図は、本願発明
の第2実施例に係る電子スピン共鳴吸収による組織選択
加熱装置の加熱原理を説明する静磁場を印加しない状態
の分子ラジカル配向図、第8図は、同静磁場印加状態の
分子ラジカル配向図、第9図は、同静磁場の印加による
エネルギー準位の変化と準位差を示す説明図、第10図
は、同静磁場の印加によるスピン核の熱平衡状態の説明
図、第11図は、電磁波照射時のスピン核遷移を示す説明
図、第12図、第13図は、各々本願発明の第3実施例に係
る核四極共鳴吸収による組織選択加熱装置の加熱原理を
示す第10図、第11図と同様の説明図である。 1……電磁石 2……電磁波送信アンテナ 3……電磁波発生器 4……増幅器 5……サンプル部材

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】全体の組織中の特定の組織部を当該組織を
    形成する核種又は原子核を取り巻く環境構造の差違によ
    って判別特定する組織特定手段と、該組織特定手段によ
    って特定された特定の組織部に静磁場を与える静磁場形
    成手段と、該静磁場形成手段によって形成された静磁場
    中に於ける上記組織特定手段によって特定された特定の
    組織部に対して電磁波を照射する電磁波照射手段とを備
    えてなる組織選択加熱装置において、上記組織特定手段
    により判別特定された組織とその他の組織の各々の核磁
    気共鳴スペクトルを測定する核磁気共鳴スペクトル測定
    手段を設け、上記電磁波照射手段は、当該核磁気共鳴ス
    ペクトル測定手段により測定された2種の核磁気共鳴ス
    ペクトルに基いて上記特定の組織では核磁気共鳴吸収さ
    れるがその他の組織では核磁気共鳴吸収されない電磁波
    の波長を求め、該波長の電磁波を照射するようになって
    いることを特徴とする組織選択加熱装置。
  2. 【請求項2】不対電子を有する分子成分を含んで形成さ
    れた全体の組織中の特定の組織部を当該組織を形成する
    分子中の上記不対電子を取り巻く環境構造の差違によっ
    て判別特定する組織特定手段と、該組織特定手段によっ
    て特定された特定の組織部に静磁場を与える静磁場形成
    手段と、該静磁場形成手段によって形成された静磁場中
    に於ける上記組織特定手段によって特定された特定の組
    織部に対してマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段
    とを備えてなる組織選択加熱装置において、上記組織特
    定手段により判別特定された組織とその他の組織の各々
    の電子スピン共鳴スペクトルを測定する電子スピン共鳴
    スペクトル測定手段を設け、上記電磁波照射手段は、当
    該電子スピン共鳴スペクトル測定手段により測定された
    2種の電子スピン共鳴スペクトルに基いて上記特定の組
    織では電子スピン共鳴吸収されるがその他の組織では電
    子スピン共鳴吸収されないマイクロ波の波長を求め、該
    波長のマイクロ波を照射するようになっていることを特
    徴とする組織選択加熱装置。
  3. 【請求項3】核スピン量子数が1以上の原子核を有する
    組織中の特定の組織部を当該組織を形成する核種又は原
    子核を取り巻く環境構造の差違によって判別特定する組
    織特定手段と、該組織特定手段によって特定された特定
    の組織部に静磁場を与える静磁場形成手段と、該静磁場
    形成手段によって形成された静磁場中に於ける上記組織
    特定手段によって特定された特定の組織部に対して電磁
    波を照射する電磁波照射手段とを備えてなる組織選択加
    熱装置において、上記組織特定手段により判別特定され
    た組織とその他の組織の各々の核四極子共鳴スペクトル
    を測定する核四極子共鳴スペクトル測定手段を設け、上
    記電磁波照射手段は、当該核四極子共鳴スペクトル測定
    手段により測定された2種の核四極子共鳴スペクトルに
    基いて上記特定の組織では核四極子共鳴吸収されるがそ
    の他の組織では核四極子共鳴吸収されない電磁波の波長
    を求め、該波長の電磁波を照射するようになっているこ
    とを特徴とする組織選択加熱装置。
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