JP2617144B2 - ハロゲン化有機化合物のプラズマ分解処理方法 - Google Patents

ハロゲン化有機化合物のプラズマ分解処理方法

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JP2617144B2 JP2096248A JP9624890A JP2617144B2 JP 2617144 B2 JP2617144 B2 JP 2617144B2 JP 2096248 A JP2096248 A JP 2096248A JP 9624890 A JP9624890 A JP 9624890A JP 2617144 B2 JP2617144 B2 JP 2617144B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、ハロゲン化有機化合物をプラズマによって
分解処理する方法に関する。
(従来の技術) ハロゲン化有機化合物の大気中への放出は成層圏のオ
ゾン層の破壊の要因であると言われている。(M.J.Moli
na and F.S.Rowland,Nature 249,pp.810〜812)オゾン
層の破壊は太陽光の紫外線の吸収を減少させるため地上
での環境が大きく変化すると考えられる。従って、ハロ
ゲン化有機化合物の放散量を削減するためハロゲン化有
機化合物代替物の開発、ハロゲン化有機化合物の回収再
利用、ハロゲン化有機化合物の分解固定化についての研
究開発が行なわれている。現在すでに市中に存在するハ
ロゲン化有機化合物や今後生産されるハロゲン化有機化
合物の放散を防ぐためにはハロゲン化有機化合物を分解
し固定化する必要がある。
ハロゲン化有機化合物の分解固定化には高温のプラズ
マでハロゲン化有機化合物を分解処理する高温法と常温
で試薬を用いて分解処理する低温法とがある。低温法で
は大量の試薬が必要とされ処理速度も遅いため巨大な装
置が必要とされるためコストが高い。
一方高温法では高エネルギー密度のプラズマを用いる
ことにより高い処理速度が期待できる。若林氏(T.Waka
bayashi et al.,Proc.9th Int.Sympo.Plasma chem.,pp.
L111(1989))らが用いた方法を第5図で説明する。フ
ローコントローラー(1)によりアルゴンガスと、フロ
ーコントローラー(2)により水素ガスまたは酸素ガス
と、フローコントローラー(3)で供されるアルゴンキ
ャリアガスとともに水蒸気蒸発器(5)により蒸発させ
た水蒸気と、フローコントローラー(4)で供給される
アルゴンガスとともにハロゲン化有機化合物蒸発器
(6)により蒸発させたハロゲン化有機化合物とを混合
した原料を流量計(7)を通し高周波プラズマトーチ
(8)に供給する。プラズマトーチではこれらの原料は
原子状に分解し一部は電離することによりプラズマを形
成する。プラズマを冷却器(9)により冷却した後集塵
機(10)ですす状の生成物を回収する。集塵後のガスを
水酸化ナトリウム水溶液を含むバブリング槽(11)およ
び生石灰を充填した吸着塔(12)に通すことにより塩酸
などのハロゲン水素化物を除去する。バブリング槽や吸
着塔での圧損を補うためブロアー(13)で排気を行な
う。
プラズマを用いる方法は反応器の体積が小さいにも関
わらず処理速度が大きいため設備消却の負担が小さい方
法である。しかし、プラズマを発生させるために電力を
多量に必要とする。したがって、用いられたエネルギー
を回収することによりエネルギー効率を向上することが
望まれている。
さらにはプラズマ中で一旦原子状に分解した塩素、弗
素や臭素がプラズマ尾炎部または下流部で炭素と再結合
することにより再度ハロゲン化有機化合物が生成するこ
とを防がなければならない。しかし第5図で示される方
法では以下の二つの問題によりハロゲン化有機化合物の
再生成を防げない。第一に装置上の制約により水素及び
酸素を同時に供給できない上、水蒸気とともに水素また
は酸素を同時に供給していないこと。第二に、水蒸気及
びハロゲン化有機化合物の供給速度は厳密に制御されて
いないこと。このためプラズマで一度原子状に解離して
も再度ガス状のハロゲン化有機化合物やすす状の重合体
が生成することがある。そのため集塵機(10)が必要と
されている。このような場合本分解プロセスの本来の目
的が達成されないばかりでなく集塵機(10)より上流部
に熱回収装置を設置してもすす状の生成物のため熱回収
装置の安定な運転は困難である。
ハロゲン化有機化合物がプラズマ尾炎部または下流部
で生成することを防ぐために、プラズマ尾炎部に大量の
水を吹き込み原子状の塩素、弗素や臭素を水中に固定す
る方法が考えられる。しかし、この方法では排熱の回収
は全く期待できない。すなわちプラズマの発生・維持に
用いる電力を低エネルギー密度の熱という形で捨てるこ
とになる。
本プロセスではバブリング槽において効率よく排ガス
を処理することが望まれる。このためには処理すべき塩
素、弗素及び臭素原子は水への溶解度の限界が小さい分
子状ハロゲンガスではなく例えば塩化水素、弗化水素や
臭化水素などの親水性の分子として存在することが望ま
れる。もし分子状のハロゲンガスが生成する場合には、
バブリング槽内の水を頻繁に取り替える必要があるが、
第5図に示されるように吸収塔(12)が必要とされる。
(発明が解決しようとする課題) 本発明はかかる現状に鑑み、プラズマ処理後のガスを
急冷せずかつハロゲン化有機化合物の再結合を防止しな
がら高温の排ガスを熱回収装置に導き、熱回収装置の効
率を低下させないために熱回収装置にすす状の付着物の
付着を防止し、プラズマ分解プロセスに於て安定に熱回
収を行なうことを目的とする。
さらに本発明は分子状ハロゲンの生成を防止し塩化水
素、弗化水素や臭化水素などの親和性の分子として生成
させバブリング槽にて効率的に除去することを目的とす
る。
(課題を解決するための手段) 本発明者らは上記の目的を達成するべく種々実験、検
討を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち、第一にハロゲン化有機化合物のプラズマ分
解処理プロセスに於て熱回収装置を設置し熱回収効率を
測定することによりすす状の付着物が熱回収装置壁に付
着する際には熱回収効率が低下することを見出した。ま
たこのすす状の付着物はハロゲン化有機化合物の重合体
であった。
さらにプラズマ中で原子状に分解した原料が冷却過程
でガス状のハロゲン化有機化合物重合体に再結合した場
合は、その一部はすす状のハロゲン化有機化合物重合体
になることが見出された。すなわちすす状のハロゲン化
有機化合物重合体が生成するときには排ガス中にはたと
えばCF4などのガス状ハロゲン化有機化合物が生成して
いる。したがって、すす状のハロゲン化有機化合物重合
体の生成はガス状のハロゲン化有機化合物の生成を検出
することでモニターが出来ることを見出した。
排ガスを質量分析する装置を用いて、排ガス中にガス
状のハロゲン化有機化合物が生成しない原料組成を見出
した。これは同時にすす状のハロゲン化有機化合物重合
体が生成しない条件でもある。これが条件1である。
同様に原料組成と分子状ハロゲンの生成との関係を調
査し例えばCl2などの分子状ハロゲンが生成しない条件
を見出した。すなわち、これが条件2である。
第一の発明は上記の知見に基づいてなされたもので、
つまり本発明は、単一種のハロゲン化有機化合物と添加
物をプラズマ中に供給し分解処理する方法に於て、単位
時間に供給する原料中の炭素、酸素、塩素、弗素、臭素
及び水素原子の比率が以下の二つの条件式を満たすよう
に原料供給装置を制御してハロゲン化有機化合物のプラ
ズマ分解処理を行い、同時にプラズマの尾炎部から下流
部に熱回収装置を設置し熱回収を行なうことを特徴とす
るハロゲン化有機化合物のプラズマ分解処理方法であ
る。
2XC<XO (条件1) 2(XO−2XC)+XCl+XF+XBr<XH (条件2) ここで、XCは単位時間当りに供給する原料中の炭素原
子のモル数。
XOは単位時間当りに供給する原料中の酸素原子のモル
数。
XClは単位時間当りに供給する原料中の塩素原子のモ
ル数。
XFは単位時間当りに供給する原料中の弗素原子のモル
数。
XBrは単位時間当りに供給する原料中の臭素原子のモ
ル数。
XHは単位時間当りに供給する原料中の水素原子のモル
数。
ここでハロゲン化有機化合物とはCCl3F(フロン1
1)、CCl2F2(フロン12)、C2Cl3F3(フロン113)、C2C
l2F4(フロン114)、C2ClF5(フロン115)などの俗称フ
ロンと呼ばれる化合物、CF2BrCl(ハロン1211)、CF3Br
(ハロン1301)、CF4Br2(ハロン2402)などの俗称ハロ
ンと呼ばれる化合物を含む。さらには揮発性の有機化合
物であるC2Cl3H、C2Cl4、CCl4、C2Cl3H3、C2Cl2H4、C2C
lH3、CClH3、trans−1,2−C2Cl2H2、cis−1,2−C2Cl
2H2、C2Cl2H2なども含む。さらには1,1,2−C2Cl2H4、1,
1−C3Cl2H6などの有機化合物なども含む。これに加えこ
れらの重合体で通称テフロンと呼ばれるものなどの粒径
5μm前後の粉末をも含む。また本発明で用いる添加物
とは水または水蒸気、水素、及び酸素である。処理すべ
きハロゲン化有機化合物と添加物とを総称して原料と呼
ぶ。
さらに、ハロゲン化有機化合物分解プロセスにおいて
被分解物として単一種のハロゲン化有機化合物でなく例
えばCCl3FとCHCl3との混合物などの混合物を分解するこ
とにより第二の発明に到った。すなわち第一の発明は被
処理物の組成が既知であるときに有効であるが被処理物
の組成が未知の場合あらかじめ原料の供給比率を決める
ことはできない。
しかし、第一の発明にいたる上で条件1が満たされて
いないときには排ガス中にはたとえばCF4などのハロゲ
ン化有機化合物が含まれており、条件2が満たされてい
ないときにはたとえばCl2などの分子状ハロゲンが含ま
れていることが発見されていた。そこで排ガスを質量分
析しフィードバックする事であらかじめ原料の組成が未
知であろうとも条件1及び条件2を満たすように原料供
給速度を制御できることを発見した。
第二の発明は上記の知見に基づいてなされたものでつ
まり本発明は、ハロゲン化有機化合物と添加物をプラズ
マ中に供給し分解処理する方法に於て、プラズマ分解処
理後のガスをサンプリングし、サンプリングしたガス中
にガス状のハロゲン化有機化合物が検出されるときには
原料に含まれる酸素の割合を増加し、かつサンプリング
したガス中に分子状ハロゲンガスが検出されるときには
原料中に含まれる水素の割合を増加してハロゲン化有機
化合物のプラズマ分解処理を行い、同時にプラズマの尾
炎部から下流部に熱回収装置を設置し熱回収を行なうこ
とを特徴とするハロゲン化有機化合物のプラズマ分解処
理方法である。
(作 用) 以下に詳細に本発明を説明する。
第1の発明で用いた装置を第1図に示す。フローコン
トローラー(26)によりアルゴンボンベ(21)からのア
ルゴンガスと、フローコントローラー(27)により水素
ボンベ(22)からの水素ガスと、フローコントローラー
(28)により酸素ボンベからの酸素ガスと、フローコン
トローラー(29)により水蒸気蒸発器(24)から蒸発さ
せた水蒸気と、フローコントローラー(30)によりハロ
ゲン化有機化合物供給装置(25)から供給されるハロゲ
ン化有機化合物蒸気とを配管(31、32)に供給する。水
素と酸素を同時に用いるときには、安全のため配管を2
系統以上準備しプラズマトーチ(32)までは水素と酸素
とを分離して供給することが望ましい。また第5図と異
なり水蒸気及びハロゲン化有機化合物に対して独立のフ
ローコントローラーを用い、これらの流量は独立に制御
される。これを自動制御するためには単にフローコント
ローラーとしてマスフローコントローラーを用いればよ
いが、例えば水蒸気蒸発器(24)で発生する水蒸気の量
が安定しない場合がある。したがって、フローコントロ
ーラーでの流量を示す信号を回線(37)でコンピュータ
(38)に接続しコンピュータで条件1及び条件2が満た
されるようにフローコントローラーに対し支持信号を回
線(39)を通して指示することが望ましい。
プラズマトーチ(33)では原料は原子状に分解し一部
は電離することによりプラズマを形成する。プラズマト
ーチから排出されたガスを熱回収装置(34)により熱回
収しバブリング槽(35)に通すことにより塩酸、弗酸や
臭素酸などのハロゲン水素化物を除去する。バブリング
槽での圧損を補うためブロアー(36)で排気を行なう。
本発明で処理するハロゲン化有機化合物とはCCl3F
(フロン11)、CCl2F2(フロン12)、C2Cl3F3(フロン1
13)、C2Cl2F4(フロン114)、C2ClF5(フロン115)な
どの俗称フロンと呼ばれる化合物、CF2BrCl(ハロン121
1)、CF3Br(ハロン1301)、CF4Br2(ハロン2402)など
の俗称ハロンと呼ばれる化合物を含む。さらには揮発性
の有機化合物であるC2Cl3H、C2Cl4、CCl4、C2Cl3H3、C2
Cl2H4、C2ClH3、CClH3、trans−1,2−C2Cl2H2、cis−1,
2−C2Cl2H2、C2Cl2H2なども含む。さらには1,1,2−C2Cl
2H4、1,1−C3Cl2H6などの有機化合物なども含む。これ
に加えこれらの重合体で通称テフロンと呼ばれるものな
どの粒径5μm前後の粉末をも含む。
ここで、供給速度管理の観点から分解すべきハロゲン
化有機化合物は2種類に分類できる。第一は単位重量中
に含まれる炭素原子の数の4倍と、単位重量中に含まれ
る塩素、弗素及び臭素などのハロゲン原子の総量とが等
しい場合である(以下第一の場合と呼ぶ)。第二は単位
重量中に含まれる炭素原子の数の4倍が、単位重量中に
含まれる塩素、弗素、臭素などのハロゲン原子の総量よ
りも多い場合である(以下第二の場合と呼ぶ)。
重合体をプラズマ分解する際の装置の概略図を第2図
に示す。この場合、第1図に示されるハロゲン化有機化
合物供給装置(25)及びそのフローコントローラー(3
0)の代わりに、粉末を搬送するガスのフローコントロ
ーラー(40)を有し、粉末供給器(41)から配管(42)
を通してプラズマトーチ(33)に重合体粉末を供給す
る。この際粉末供給器(41)は供給速度が制御できるも
のでなければならない。粉末の供給速度はコンピュータ
(38)と信号回線(37、39)を通して制御されることが
望ましい。
本発明で用いる添加物とは水または水蒸気、水素、及
び酸素である。ハロゲン化有機化合物が第一の場合には
添加物としてこれらの中から水素を含む二以上を用いな
ければならない。第二の場合には添加物として酸素のみ
及び水素のみを選択することはできないが、水または水
蒸気のみを選択できる。さらに、第二の場合には、もし
水または水蒸気のみを用いれば、条件2は任意の供給速
度で満たされるため条件1のみの制御でよい。
本発明で用いるプラズマは熱プラズマであることが好
ましい。なぜならコールドプラズマでは供給したハロゲ
ン化有機化合物が原子状に解離しないためである。
プラズマを発生させるガスとしてはアルゴンが通常用
いられるが本プロセスでは酸素、水素、及び水蒸気(ま
たは水)を大量に用いることが望ましい。なぜならば、
条件1及び条件2で示されるようにこれらを大量に用い
ればハロゲン化有機化合物が大量に処理できるからであ
る。したがって、可能ならばアルゴンを用いず水蒸気
(または水)のみ、水蒸気と水素、水蒸気と酸素、また
は水素と酸素でプラズマを発生することが最も望まし
い。
プラズマの尾炎部から下流部とは熱回収装置がプラズ
マにより損傷しない程度の下流部を指す。熱回収装置の
材質は耐酸性に優れているものが望ましい。
バブリング槽(35)内に塩基性水溶液は塩基性である
必要がある。すなわち、水酸イオン(OH-)をなるべく
多く含むことが望ましい。さらに陽イオンとしてはナト
リウムイオン(Na+)などが可能であるが、カルシウム
イオン(Ca2+)を含むことが望ましい。なぜならばガス
から吸収した弗素をCaF2として回収するためである。熱
回収しても熱によりバブリング槽中の水位が低下する場
合があるので、フロートを用いて水位を一定に保つよう
に水を自動供給することが望ましい。またバブリング槽
中ではつねに塩酸、弗酸や臭素酸を吸収するため水溶液
中の水酸イオンが減り、水素イオンが増加する。したが
って水酸イオン濃度を一定に保つため水溶液のpHを測定
しつつ水酸イオン濃度が低下したら自動的に塩基性物質
を投入することが望ましい。
またバブリング槽内の沈澱物を除去する装置としては
フィルターを有する循環器を用いる方法などが可能であ
る。除去装置としては1つを断続的に用いることも可能
であるが、複数の除去装置を交互に用いフィルターで水
溶液から除去した沈澱物を交互に取り除くことが望まし
い。
第二の発明で用いる装置を第3図に示す。本装置では
分解処理後の排ガスの一部をサンプリング管(43)によ
り質量分析器(44)に導き、質量分析器の信号を回線
(45)を通してコンピューター(38)におくる。コンピ
ューターではガス状のハロゲン化有機化合物及び分子状
のハロゲンガスがあるかを判断する。
ここで、もしハロゲン化有機化合物が検出されるとき
には条件1が満たされていないので、条件1の右辺(X
O)を増加させるか条件1の左辺(Xc)を減少させる。
すなわち、原料に含まれる酸素の割合を増加するとは、
信号回線(39)を通して、酸素のフローコントローラー
(28)に信号を与え酸素の供給速度を増加させるか、水
蒸気のフローコントローラー(29)に信号を与え水蒸気
の供給速度を増加させるか、ハロゲン化有機化合物のフ
ローコントローラー(30)に信号を与えハロゲン化有機
化合物の供給速度を減少させることである。
条件1の判定基準に用いられるガス状ハロゲン化有機
化合物とは、CCl4、CCl2F2、CClF3、CF4、C2Cl4、C2Cl3
F、C2Cl3F3などのことである。ここで例えば分解すべき
ハロゲン化有機化合物が単一種のCCl4であるときには分
解以前より原料中に弗素原子や臭素原子は含まれていな
いので、判定基準としては例えばCCl4などの弗素原子と
臭素原子を含まない分子を少なくとも一以上用いる必要
がある。同様に分解すべきハロゲン化有機化合物が例え
ば単一種のCF4であるときは分解以前より原料中に塩素
原子や臭素原子は含まれていないので、判定基準として
は例えばCF4などの塩素原子と臭素原子を含んでいない
分子を少なくとも一以上用いる必要がある。したがっ
て、頻繁に分解すべきハロゲン化有機化合物を替えると
きに同一の判定基準を用いるとしたら、少なくとも弗素
及び臭素原子を含まない分子と塩素及び臭素原子を含ま
ない分子と、塩素及び弗素原子を含まない分子との三以
上を判定基準に用いる必要がある。可能であるならば判
定基準に用いる分子の種類は多いことが好ましい。
一方、もし分子状ハロゲンガスが検出されるときには
条件2が満たされていないので条件2式の右辺を増加さ
せるか条件2式の左辺を減少させる。すなわち、原料に
含まれる水素の割合を増加するとは、信号回線(39)を
通して、水素のフローコントローラー(27)に信号を与
え水素の供給速度を増加させるか、酸素のフローコント
ローラー(28)に信号を与え酸素の供給速度を減少させ
ることである。さらには、処理すべきハロゲン化有機化
合物が第二の場合にはハロゲン化有機化合物のフローコ
ントローラー(30)に信号を与えハロゲン化有機化合物
の供給速度を減少させることも有効である。
条件2の判定基準に用いられる分子状ハロゲンガスと
は、Cl2、F2、Br2などのことである。さらにはClFなど
の複合分子も判定基準として可能である。頻繁に分解す
べきハロゲン化有機化合物を替えるときに同一の判定基
準を用いるとしたら、少なくともCl2、F2、Br2の三以上
を判定基準に用いることが望ましい。可能であるならば
判定基準に用いる分子の種類は多いことが好ましい。
排ガスのサンプリング位置は応答速度を高めるためプ
ラズマに近いことが望ましいがプラズマ尾炎部では非常
に高温であるためまだ反応が完結していないので避ける
ことが望ましい。逆にバブリング槽(35)出口でサンプ
リングする場合には応答速度が遅れる。
第二の発明で用いる装置では必ずしも全ての原料供給
装置にフローコントローラーを備える必要が無い。この
1例を第4図に示す。第4図ではプラズマトーチ(33)
として水プラズマトーチを用いている。水プラズマトー
チでは液体状の水をプラズマトーチに供給し供給された
水の一部はプラズマされるが残りはプラズマトーチを冷
却し水循環ポンプ(48)に回収される。このときプラズ
マに供給される水の量は入り側のフローメータ(46)と
出側のフローメーター(47)の差として知ることは出来
るが制御することはできない。しかし水素ガスのフロー
コントローラー(27)及び酸素のフローコントローラー
(28)を備えてあれば第二の発明で示される制御は可能
である。この組合せ以外にも酸素のフローコントローラ
ー(28)及びハロゲン化有機化合物のフローコントロー
ラー(30)を組み合わせることなどで酸素の割合を増加
させたり、水素の割合を増加させたりすることは可能で
ある。
以下に本発明の実施例を示す。
(実施例1) 第1図に示された装置を用いてハロゲン化有機化合物
のプラズマ分解を行なった。プラズマトーチ(33)とし
て高周波プラズマトーチを用いた。周波数は4MHzであ
る。高周波プラズマトーチによりアルゴンプラズマを発
生しプラズマ中に原料を供給し、10分間熱回収が安定す
るのを待ち、供給開始から10分経過後と1時間経過後に
熱量を測定した。高周波電源に供給した電力は70kwであ
り、プラズマ下流部に設置された熱回収装置では10分経
過後に18kw回収された。1時間後の熱回収量から熱回収
低下率(R)を求めた。被分解物がCCl3Fである場合の
原料の比率と1時間後の熱回収低下率の関係を第1表に
示す。ここで熱回収低下率(R)は以下の式で定義され
る。
第1表から熱回収低下率(R)が0になるためには、
条件1を満たす必要があることが分かる。なお、条件1
を満たしていないときには、CCl4、CCl2F2、CClF3、C
F4、C2Cl4、C2Cl3F、C2Cl3F3などが排ガス中に検知され
たが、条件1を満たすときには検知されなかった。被処
理物としてC2Cl3F3、CClF3、C2HCl3、CCl4を用いたとき
も同様に条件を満たさないときには熱回収率は低下し
た。
さらにバブリング槽通過後のガスを分析し条件2を満
たさないときには時刻の経過とともに塩素ガスが吸収さ
れなくなることが明らかとなった。逆に、条件1及び条
件2を同時に満たすとき長時間運転できた。特にバブリ
ング槽通過後のガス中に分子状のハロゲンガスが無いた
め吸着塔は必要とされなかった。
(実施例2) 第1図で示される装置を用いてハロゲン化有機化合物
のプラズマ分解処理を行なった。プラズマトーチ(33)
として直流プラズマ装置を用いた。プラズマトーチは市
販の溶射用直流プラズマトーチである。アルゴンプラズ
マを発生させた後、溶射粉体供給用ノズルから水蒸気、
水素または酸素を供給し直流電力を40kwとしてからハロ
ゲン化有機化合物を該ノズルから供給した。このとき供
給開始から10分経過後と1時間経過後に交換された熱量
を測定した。10分経過後には熱回収装置では14kw回収さ
れた。1時間後の熱回収低下率(R)を求めた。直流プ
ラズマを用いた場合でも条件1を満たしていれば熱回収
量から熱回収低下率(R)は0となった。
また条件2を満たしていないときには運転時刻の経過
とともにバブリング槽下流で分子状ハロゲンガスが検出
されるようになった。しかし条件2を満たしているとき
には分子状ハロゲンガスが検出されることはなかった。
(実施例3) 第2図に示される装置を用いてハロゲン化有機化合物
のプラズマ分解処理を行なった。プラズマトーチ(33)
としては高周波プラズマトーチを用いハロゲン化有機化
合物の重合体の分解を行なった。このとき重合体をプラ
ズマに供給するために平均粒径5μmまで粉砕し、粉砕
粉を粉末供給装置で供給した。アルゴンと水蒸気でプラ
ズマを発生し重合体粉末を供給速度3g/分で供給した。
水蒸気の供給速度が低く条件1が満たされないときには
ハロゲン化有機化合物が排ガス中に観測されたが、条件
1を満たすときには排ガス中にハロゲン化有機化合物は
観測されなかった。
また条件2を満たしていないときには運転時刻の経過
とともにバブリング槽下流で分子状ハロゲンガスが検出
されるようになった。しかし条件2を満たしているとき
には分子状ハロゲンガスが検出されることはなかった。
(実施例4) 第3図に示される装置を用いてハロゲン化有機化合物
のプラズマ分解処理を行なった。被分解物としてCCl3F
とCHCl3の1:1の混合物を用いた。
まず質量分析器(44)による分析機能を用いず第1図
に示されるように用いた。このとき混合比率が1:1を仮
定して条件1及び条件2を満たすように水素及び酸素を
供給した。運転初期には排ガス中に再結合したハロゲン
化有機化合物は検出されなかったが分子状ハロゲンガス
が検出されたが、時間の経過とともにハロゲン化有機化
合物および分子状ハロゲンガスは検出されなくなった。
この原因を調べるため被処理物の供給系統配管でサンプ
リングし質量分析を行なったところ運転初期にCl3Fの濃
度が高く次第にCHCl3の濃度が高くなった。すなわち蒸
気圧の高いCCl3Fが初期に供給されその後蒸気圧の低いC
HCl3が供給されるためマスフローメーターで制御しても
混合比は時間とともに変化することが明かとなった。
そこで排ガスを質量分析器(44)で常時分析しフィー
ドバック機能を働かせて分解を行なった。1時間連続運
転を行なったが排気ガス中にハロゲン化有機化合物は観
察されなかった。また分子状ハロゲンガスも同様であっ
た。
さらにCCl3F、C2Cl3F3、CClF3、C2HCl3及びCCl4を適
当に混合したものを分解した。このときも質量分析器か
らのフィードバックをかけることにより連続運転を行な
っても排ガス中に検出されるハロゲン化有機化合物はな
かった。また同様に分子状ハロゲンガスも検出されなか
った。
(実施例5) 第4図に示される装置を用いてハロゲン化有機化合物
の分解処理を行なった。ここではプラズマトーチ(33)
にチェコスロバキアで開発された溶射用水プラズマトー
チを用いた。水プラズマを発生させた後、溶射粉体供給
用ノズルから水素を供給し直流電力を170kwとしてから
ハロゲン化有機化合物を該ノズルから供給した。このと
き供給開始から10分経過後と1時間経過後に交換された
熱量を測定した。10分経過後には、プラズマ下流部に設
置された熱回収装置では35kw回収された。この場合には
第1図、第2図、第3図の装置で用いられている水蒸気
蒸発器(24)を用いないため全体としてのエネルギー効
果が優れていた。
(発明の効果) 以上述べたように本発明によれば、プラズマ処理後の
ガスを急冷せずかつハロゲン化有機化合物の再結合を防
止しながら高温の排ガスを熱回収装置に導き、熱回収装
置の効率を低下させないために熱回収装置にすす状の付
着物の付着を防止し、プラズマ分解プロセスに於て安定
に熱回収を行なうことが可能となった。
さらに本発明により分子状ハロゲンの生成を防止し塩
化水素、弗化水素や臭化水素などの親水性の分子として
生成させバブリング槽にて効率的に除去することが可能
となった。
以上によりハロゲン化有機化合物のプラズマ分解処理
プロセスを工業的に実施することが可能となり、産業上
の発展に貢献するところきわめて大である。
【図面の簡単な説明】
第1図は実施例1で用いた装置の概略図である。 第2図は実意例3で用いた装置の概略図である。 第3図は実施例4で用いた装置の概略図である。 第4図は実施例5で用いた装置の概略図である。 第5図は若林らが用いた装置の概略図である。 これらの図面の中で数字で示されている装置は以下もの
である。 1:アルゴンガス流量コントローラー、2:水素ガスまたは
酸素ガスの流量コントローラー、3:水蒸気キャリアガス
流量コントローラー、4:ハロゲン化有機化合物キャリア
ガス流量コントローラー、5:水蒸気蒸発器、6:ハロゲン
化有機化合物供給装置、7:流量計、8:プラズマ発生器、
9:冷却装置、10:集塵機、11:バブリング槽、12:吸着装
置、13:ブロアー、21:アルゴンボンベ、22:水素ボン
ベ、23:酸素ボンベ、24:水蒸気発生器、25:ハロゲン化
有機化合物供給装置、26:アルゴンガスマスフローコン
トローラー、27:水素ガスマスフローコントローラー、2
8:酸素ガスマスフローコントローラー、29:水蒸気マス
フローコントローラー、30:ハロゲン化有機化合物マス
フローコントローラー、31:原料供給管、32:原料供給
管、33:プラズマトーチ、34:熱回収装置、35:バブリン
グ槽、36:ブロアー、37:流量信号回線、38:プロセス制
御コンピューター、39:流量指示信号回線、40:粉末キャ
リアガスマスフローコントローラー、41:粉末供給装
置、42:粉末供給配管、43:排ガスサンプリング管、44:
質量分析装置、45:質量分析信号回線、46:トーチ供給水
流量計、47:トーチ戻り水流量計、48:水循環装置、49:
水補給
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−107387(JP,A) 特開 昭60−154200(JP,A) 特開 平2−131116(JP,A)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】単一種のハロゲン化有機化合物と添加物を
    プラズマ中に供給し分解処理する方法に於て、単位時間
    に供給する原料中の炭素、酸素、塩素、弗素、臭素及び
    水素原子の比率が以下の二つの条件式を満たすように原
    料供給装置を制御してハロゲン化有機化合物のプラズマ
    分解処理を行い、同時にプラズマの尾炎部から下流部に
    熱回収装置を設置し熱回収を行なうことを特徴とするハ
    ロゲン化有機化合物のプラズマ分解処理方法。 2XC<XO (条件1) 2(XO−2XC)+XCl+XF+XBr<XH (条件2) ここで、XCは単位時間当りに供給する原料中の炭素原子
    のモル数。 XOは単位時間当りに供給する原料中の酸素原子のモル
    数。 XClは単位時間当りに供給する原料中の塩素原子のモル
    数。 XFは単位時間当りに供給する原料中の弗素原子のモル
    数。 XBrは単位時間当りに供給する原料中の臭素原子のモル
    数。 XHは単位時間当りに供給する原料中の水素原子のモル
    数。
  2. 【請求項2】ハロゲン化有機化合物と添加物をプラズマ
    中に供給し分解処理する方法に於て、プラズマ分解処理
    後のガスをサンプリングし、サンプリングしたガス中に
    ガス状のハロゲン化有機化合物が検出されるときには原
    料に含まれる酸素の割合を増加し、かつサンプリングし
    たガス中に分子状ハロゲンガスが検出されるときには原
    料中に含まれる水素の割合を増加してハロゲン化有機化
    合物のプラズマ分解処理を行い、同時にプラズマの尾炎
    部から下流部に熱回収装置を設置し熱回収を行なうこと
    を特徴とするハロゲン化有機化合物のプラズマ分解処理
    方法。
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