JP2600073B2 - フローインジェクション分析システム及びそれによる分析方法 - Google Patents

フローインジェクション分析システム及びそれによる分析方法

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義人 碇山
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  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は,フローインジェクション分析装置及びそれ
による分析方法に関する。特に,ミクロ電極を用い,流
体中の特定の物質を迅速に,高感度かつ連続的に測定す
るフローインジェクション分析装置と分析方法に関す
る。
[従来の技術] 従来,フローインジェクション分析方法は,分析対象
が流路にそって流れるようにし,その流路に沿って電気
化学的にセンサと酵素センサを設け,相互作用を避けな
がら,測定分析するものである(特開昭59年133455
号)。また,流路にそって測定妨害物質検知用の作用電
極を設けて,バイオセンサで測定分析するものが提案さ
れている(特開昭和61年3047号)。然し乍ら,これらに
使用されるバイオ電極は,従来使用されてきた下記に説
明するような電極であり,従来のバイオ電極の下記に説
明する基本的な欠点を有するものであり,基本的な問題
を解決した電極は見当らないものであった。
即ち,白金や炭素表面に酵素や抗体,微生物等を密着
固定化したバイオセンサが種々の化学物質,生体物質を
迅速且つ連続的に測定できることは既に知られている
が,このようなバイオセンサにおいては,生体機能物質
は一つの方法では生体機能物質を含有した膜を別途調整
しておき,これを電極上に貼り付けるものであり,他の
方法では表面を化学処理した電極に酵素等を塗布し,酵
素等と表面との間に共有結合を形成せしめるなどの方法
によって固定化されてきた。然し乍ら,バイオセンサの
性能は,再現性,耐久性,高感度,応答速度等によって
評価されるが,前者の方法では応答速度の点で難があ
り,後者の方法では固定化密度を大きくすることが困難
であった。また,いずれの方法においても,固定化には
数段階の繁雑な工程を必要とし,また,一つのセンサ上
に数種類の生体機能物質電極を取り付けた多機能センサ
とするには困難があった。
また,従来の固定化酵素電極は,クラーク型酸素電
極,或いは平板状の白金表面に酵素固定化膜を装着した
構造を有している。そして,その作製法としては,別途
調製した固定化酵素膜を電極に貼り合わせる方法,表面
を化学処理した平滑な白金電極に酵素を塗布し固定化す
る方法などがある。然し乍ら,このような方法では微小
化が困難である。一方,この微小化技術として最近注目
されているものが半導体集積化技術がある。この半導体
技術を用いる方法では,数mmのサイズの酵素電極も作製
できるが,電位検出法であるために,感度および応答な
どの面で満足のゆく結果が得られていない上に,現在得
られるサイズ以下のミクロ化もかなり困難視されてい
る。
[発明が解決しようとする問題点] 上記のような状況において,本発明者らは,従来のフ
ローインジェクション分析と異なり,従来のセンサの有
する難点を克服することを目的に,新規なミクロ電極を
フローセル中の作用電極として用い,迅速かつ高感度で
測定することのできるフローインジェクション分析装置
及び分析方法を提供することを目的とする。
本発明においては,微小電極表面に微粒子を形成する
ことにより電極表面を見掛けの電極表面の数千倍にした
結果,高い分解能を有し応答速度は非常に速いにもかか
わらず,作製されるミクロ酵素電極は、S/N比のすぐれ
た出力を示し,その結果検出感度を容易に上げることの
できるバイオセンサ電極をフローセル中の作用電極とし
て用いることにより,広い濃度範囲にわたり,高い分解
能を有するフローインジェクション分析方式を提供する
ことを目的とする。本発明は,電極表面が微粒子状であ
るために充分の量の生体機能物質を電極の深部まで浸漬
固定化でき,導電性微粒子物質の空隙に生体機能物質を
直接固定化したミクロ電極を利用しているために,高い
分析精度と,すぐれた使用安定性とセンサ保存安定性を
有するフローインジェクション分析システムを提供する
ことを目的とする。更に,本発明は,極めて高速の生体
成分のフロー計測が可能になるフローインジェクション
によるバイオ分析システムを提供することを目的とす
る。また,本発明は,白金黒化の技術を用いているの
で,ミクロ電極は,円板状,球状,チューブ状などの多
様な形状にできるので,測定対象に合ったフロー計測シ
ステムにすることのできるものを提供することを目的と
する。ミクロ電極は極めて小さいために,試料量も少な
くてすみ,分析装置全体も小型にでき,そのために連続
測定では1分間に数百検体以上の処理もできる分析装置
を提供することを目的とする。更に,本発明は電極のア
レイ化,多機能化が容易で多成分系のフロー分析などに
も適用できるバイオ分析装置を提供することを目的とす
る。本発明のバイオ分析装置は,ポテンシオメトリ方式
の測定にも使用できるものである。
[発明の構成] [問題点を解決するための手段] ここに、本発明の要旨とするものは、生体機能物質
を、電気化学還元反応により得られた金属粒子層中に含
浸処理することにより、一体化させて得た金属微粒子表
面層を有する生体機能物質固定化微小電極を、フローイ
ンジェクション分析の作用電極として用い、測定対象流
体の流れる流路のフローセルに沿い、参照電極と対極と
ともに設けたことを特徴とするフローインジェクション
分析装置を提供する。そして、その金属微粒子表面層に
更に高分子物質を含浸せしめ、不溶性高分子薄膜を、該
金属微粒子表面上に固定化された生体機能物質表面の上
に、形成し、安定化したものを用いると更に好適であ
る。また、本発明は、生体機能物質を、電気化学還元反
応により得られた金属微粒子層中に含浸処理することに
より、一体化させて得た金属微粒子表面層を有する生体
機能物質固定化微小電極を、フローインジェクション分
析の作用電極として用い、測定対象流体の流れる流路の
フローセルに沿い、発生する電極のピーク値を測定する
ことにより、対象物質の濃度を決定することを特徴とす
るフローインジェクション分析方法を提供する。その金
属微粒子表面層に更に高分子物質を含浸せしめ、不溶性
高分子薄膜を、該金属微粒子表面上に固定化された生体
機能物質表面の上に、形成し、安定化したものをフロー
インジェクション分析方法に用いると、好適である。
この生体機能物質を,導電性物質の微粒子と一体化さ
せる処理方法は,一つは微小導電性物質の表面に導電性
物質の微粒子を電気化学的に析出させながら,生体機能
物質を吸着させるという一工程で成され,或いは他の処
理方法は電気化学的に析出させた導電性微粒子物質を,
該生体機能物質の溶液に浸漬し,該生体機能物質を微粒
子内部に取り込んだ後,或いは表面に付着せしめた後,
直接該生体機能物質同志を架橋するか或いは微粒子表面
に高分子薄膜を形成することにより被覆することで該生
体機能物質の溶出を防止するという2工程処理で成され
る。この該生体機能物質と導電性物質との一体化により
作製されたバイオ電極は,非常に微細なサイズででき,
且つ,その機能は大きなバイオ電極と同じ能力を有する
ことのできるもので,その構造は導電性微粒子表面層を
有し,生体機能物質の固定化された微小電極である。こ
のバイオ電極を,本発明ではミクロ電極と称する。即
ち,本発明はこのような生体機能物質固定化ミクロ電極
をフローインジェクション分析の作用電極として利用
し,フローセル中に設け,それに一定電位をかけてお
き,対象微量反応物質が流れてきたときに,応答性よく
発生する電流値を測定し,それから,対象微量物質の濃
度を高速度,且つ高精度で決定することができることを
見出したものである。
本発明者らは,以前白金黒化技術と酵素の電気化学的
吸着技術を利用することにより,多孔質導電性物質と生
体機能物質を一体化するこに成功し,これにより作製し
たバイオ電極について,特許出願した(特開昭和63年第
222256号及び特開昭63年223556号)。このミクロ電極
は,高速応答性を有し,高感度のものである。
本発明者らは,更に研究を進めて,このすぐれた特性
のミクロ電極を利用して,極微量の試料中の微量成分を
フローインジェクション法で分析できるバイオ分析シス
テムと分析方法を見出したものである。
本発明に利用するこのミクロ電極は,電極自身と酵素
分子が一体化した構造のものである。即ち,白金黒粒子
層は酵素の固定化担体であるだけでなく,トランスジュ
ーサとしても役割するものである。即ち,このミクロ電
極においては,トランスジューサの表面積を数百倍以上
にできるために,このミクロ電極は,電極サイズはミク
ロの範疇に入り,分解能にすぐれているが,同時に,微
粒子電極の巨大な表面積を利用することにより,S/N比の
高いマクロ電極としての特性も有することのできたもの
である。
このミクロ電極においては,電極と酵素が一体化され
た構造のために,所定電位をかけて生成する過酸化水素
を効率よく酸化することができる。そのために,このミ
クロ電極をバッチ式でテストをすると,ミクロ電極によ
るセンサは,ピーク電流値に達するまでに3秒以内と速
い応答性を有し,グルコース濃度1μM程度から10mM程
度の広い範囲にわたり優れた直線性を有することが明ら
かにされた。
従って,本発明者らはこのすぐれた特性のミクロ電極
を利用して,フローインジェクション法で,微量対象物
質を分析するフローインジェクション分析装置と分析方
法を見出したものである。即ち,このミクロ電極を作用
電極として,フローセル中に設置し,微量対象物質を適
当な液に溶解させて,或いは,液中に存在する微量特定
物質を,極めて迅速に測定できるバイオセンシングシス
テムが得られたものである。
本発明に利用する生体機能を有するミクロ電極は,白
金などからなる微小な平板微粒子電極(例えば,径:1μ
m〜500μm)の表面に酵素などの生体機能物質を含浸
させた導電性物質微粒子層を有する構造の電極である。
特に,白金の電気化学析出による白金黒表面層を有する
電極は,水素還元の触媒活性が高いことで知られている
が,本発明のように白金黒を生体機能物質の担体とする
ことは,従来行なわれておらず(白金板を腐食により多
孔質にしてそれに酵素などを架橋剤でつなく固定化法が
あるが),更に本発明による白金黒微粒子のサイズを電
析技術的にコントロールして,生体機能物質を包括し,
固定化する方法は従来なかったものである。即ち,本発
明による生体機能物質の直接固定化方法は,従来化学試
薬(架橋剤)を使用しなければならなかった担体結合法
ではなく,化学処理なしでも生体機能物質の直接固定化
が電気化学的に行なえるものである。
本発明に利用するミクロ電極の1つの作製方法は,例
えば,白金黒などの多孔質導電性物質と生体機能物質を
一体化させ,或いは,金属塩を電解還元(電析)させ
て,導電性微粒子(多孔質)物質とともに生長しつつあ
る電極に生体機能物質を電着するものである。具体的に
は,一つの方法は,例えば,微小白金電極上に白金微粒
子を形成させつつ,生体機能物質を該微粒子内の細孔に
取り込んでいくことにより作製できる。細孔の大きさ及
び固定化される生体機能物質の量は,電流密度,電析時
間などを調整することによってコントロールできる。こ
のようにして得られた固定化生体機能物質電極の機能
は,長期にわたり保持できるものである。
また,他のミクロ電極の作製方法は,2段階処理によっ
て,ミクロ電極を作製するものであり,例えば,細い白
金線(一般的には,導電性物質)の上に白金黒などの導
電性微粒子層を作製し,その中に生体機能物質を固定化
するものである。具体的には,導電性物質微粒子層を形
成された電極を,生体機能物質の水溶液中に浸漬し,或
いは,それを塗布することにより含浸せしめ,次に生体
機能物質のわずかな溶出を防止し,かつ抗血栓性を付与
するために,アルブミンやヘパリンなどの高分子物質を
その上に含浸せしめ,これを架橋剤により不溶性化し,
不溶性高分子薄膜を形成したものである。このようにし
て作製したミクロ電極は,酵素を高分子中に包括固定化
されており,所謂,包括固定化法を金属電極系に適用し
たものと考えることができるが,形成高分子膜は,厚さ
数百Å程度以下の薄膜に仕上げることができ,高分子膜
の存在が,生体機能物質の生体機能の発現の阻害要因に
なることはないものである。
従って,上記のように作製されるミクロ電極のサイズ
は,白金線の直径に依存し細い白金線を用いると,従来
考えられない程度の極小サイズのバイオ電極が得られ
る。ミクロンオーダーのサイズのバイオ電極の作製も容
易であり,この場合,医療などへの応用,例えば身体内
に埋め込んで使用する場合,都合が良く,また,極小サ
イズの電極では,サンプル室の非常に小さい分析装置を
作製でき,微量サンプルの分析が可能になり,また,迅
速測定,高い応答性の分析装置が得られる。更に,比較
的に大きなサイズの電極を作製すると,大きな検出出力
が得られる分析装置を作製できる。
このミクロ電極において,白金黒電極は,円板状,球
状,チューブ状などの多様な形状に形成でき,測定対
象,測定状況及び条件に応じて,適宜に最も適する形状
にすることができるものである。
ミクロ電極において,電極として利用する物質は,白
金以外に,金,他の貴金属,或いは炭素即ち,グラッシ
イ炭素,グラファイト等を基板として,その上に白金
黒,金微粒子,貴金属微粒子,導電性金属酸化物微粒子
の微粒子層を生体機能物質とともに形成したものある。
即ち,以上のミクロ電極の作製において,最初の導電
性物質と,その上に析出すべき微粒子の(即ち多孔質
の)導電性物質,即ち,微粒子金属とは同じ材料である
必要性はなく,例えば,グラファイトの上に白金黒の析
出を行なわせた構造のものでもよい。また,白金の代わ
りに,金,ロジウムなどの「導電性物質」を多孔質導電
性物質として使用出来,「導電性物質」の微粒子層を導
電性物質表面に形成することができるものは,他に障害
のない限り,好適に本発明において使用できる。
更に,本発明により利用するミクロ電極は,蛋白質,
多糖類などの高分子物質を塗布し架橋剤で架橋した薄膜
を形成し,生体適合性の付与,性能の維持,生体機能物
質の溶出を最少にすることもできる。
ここにおいては,「生体機能物質」とは,酵素,抗体
に代表されるもので,各種の触媒,微生物菌体,増殖微
生物,オルガネラ,抗原,抗体,ハプテンなどを含むも
のである。
また,本発明に利用するバイオ電極を被覆するために
付加的に使用できる高分子物質には,アルブミンなどの
蛋白質,イオン交換樹脂,或いはヘパリンなどの多糖類
などが挙げられる。架橋剤としては,使用する高分子物
質に対して適する架橋剤があり,例えば,アルブミンに
対しては,グルタールアルデヒド,また,カルボジイミ
ド,マレイミド架橋剤などが用いられる。
以上において,ミクロ電極における多孔質(微粒子)
導電性物質の析出法は,電解析出で説明したが,無電解
法で行なうこともできることは明らかである。
本発明による分析法は,高速応答で,高感度,且つ,
小型のバイオセンシングシステムが実用化されたもので
あり,バイオセンサのミクロ化,多機能化などの多項目
計測が要求される臨床化学分析,携帯型の健康監視シス
テムの開発に,極めて重要な技術となろう。
第1図は,フローインジェクションによる本発明の分
析装置を断面図で示すものである。測定対象の微量物質
を含有する測定液1を,入口2から注入し,ミクロ電極
3を備える流路5を通り,参照電極6と対極7を備える
流路を通り,流体試料1の微量成分を分析するものであ
る。本発明によるミクロ電極は,細い白金線上に生体機
能物質と白金黒を一体化形成した構造のものであるか
ら,非常に微小なサイズのデバイスにでき,例えば,ミ
クロンオーダーのサイズにできるために,図示のフロー
セルも非常に微細なものにできる。
即ち,本発明のバイオセンシングシステムは,生体機
能物質電極,例えば酵素電極として利用するとき,試料
量も少なくてすみ,分析装置自体を小型化できる。更
に,連続測定では,1分間に数百検体以上の処理ができる
ものである。
また,本発明におけるバイオ分析システムでは,ボテ
ンシオメトリ方式の測定もできる。
本発明によるフローインジェクション分析法は,バイ
オセンサのミクロ化,多機能化などの多項目計測が要求
される臨床化学分析,携帯型の健康監視システムの開発
に役立つ極めて重要な技術の一つである。即ち,高速応
答性,高感度を有するバイオ検出装置が,困難視されて
いたが,本発明により,それが可能になるものである。
即ち,本発明で得られたフローインジェクション分析シ
ステム及び分析方法は高感度で,しかも迅速な応答を示
すことが明らかである。
次に,本発明について実施例により更に詳細に説明す
るが,本発明はそれによって限定されるものではない。
[実施例1] 製造方法 本発明に用いる酵素固定化電極(ミクロ電極)の作製
方法を示す。先ず,直径10μm〜3000μmの6種の微小
白金線の端面を,アルミナパウダーで研磨し,微小白金
電極とした。次に,0.5M硫酸水溶液中で銀/塩化銀電極
を参照電極として,該白金電極に電位+1.3Vから−0.25
Vの範囲で100mV/秒の走査速度で電位走査を30分間行な
った。この電極を300ppmの酢酸鉛含有の3%塩化白金酸
溶液中に浸し,電流値−50μAで10分間白金黒の電気化
学析出を行なった。析出した白金黒層の厚さは,約数μ
mであった。
次に,得られた白金黒析出電極を25℃で60秒間風乾さ
せた後に,0.5M硫酸水溶液中で銀/塩化銀電極を参照電
極として該白金黒析出電極を−0.3Vに30分間保持し,白
金黒析出電極から水素を発生させた。
この白金黒電極を20℃で60秒間風乾された後に,5500
単位のグルコースオキシダーゼを含有する燐酸緩衝液
(pH6.8)1mlに20分間浸漬した。再度風乾した後,得ら
れた酵素固定化微小電極(ミクロ電極)を0.1M燐酸緩衝
液中で一昼夜攪拌し洗浄し,ミクロ電極を得た。
このミクロ電極を作用電極として用い,第1図のごと
き構造のミクロデバイスを作製した。即ち,フローイン
ジェクション測定系において,測定対象液1は入口2よ
り流れ込み,ミクロ電極3を備える通路5を通る。参照
電極6として銀/塩化銀電極を用い,対極7としてステ
ンレスブロック電極を用いて構成した。
[実施例2] グルコース濃度の測定 第1図に示すようなフローインジェクション測定シス
テムに対して,エルマ社製のシングルポンプ(ER−8711
タイプ)を用いて,測定対象流体を流す。利用ミクロ電
極は,最小直径10μmから最大直径3mmの範囲で6種類
の電極を用いた。対極としてステンレスブロック電極を
用い,参照電極としては銀/塩化銀電極を用いた。ミク
ロ電極に0.6Vの電位を印加し,生成する過酸化水素を酸
化する。移動相溶液としては,0.1M燐酸緩衝液(pH6.8)
を用い,各種の濃度のグルコース含有試料(5μl)を
注入した。流速は0.4ml/分から1.8ml/分の範囲とした。
直径100μmの白金線上に形成した白金黒グルコース
オキシダーゼ電着ミクロ電極を用いて,グルコース(10
mM)を注入すたときの応答を第2図に示す。図示のよう
に,試料注入後3秒で電流がピーク値を示す。10秒以内
で元の電流値に戻った。
次に,対象物質を間隔をおいて,連続的に注入したと
きのこのミクロ電極の応答を観察すると,第2図に示す
ような応答が見られた。即ち,1分間に9個の試料の割合
で連続的に注入したところ,個々の試料注入に対するピ
ーク電流は,他の試料に対する応答ピークから完全に分
離されていることが分かった。即ち,1試料の測定が約7
秒間で完了することが分かった。このように一試料の測
定の完了に要する時間を応答時間として,各種サイズの
ミクロ電極に対する応答時間を測定した。この結果を第
1表に示す。
その結果,グルコース測定に要する時間は,ミクロ電
極の大きさに密接に関係することが示された。即ち,白
金線直径10μmから3mmの範囲のものの上にグルコース
オキシダーゼ含有白金黒を形成した各種のサイズのミク
ロ電極を用いて応答速度を調べたところ,下記の第1表
に示すような結果が得られた。
第1表からミクロ電極の直径が小さい程,測定所要時
間が短いことが明らかである。例えば,直径500μmの
ミクロ電極では,グルコースの測定に要する時間が10秒
であったのに対して,直径10μmのミクロ電極では5秒
に短縮されることが分かった。以上の結果は,ミクロ電
極の直径を小さくすることにより,高速の測定が可能で
あることを示している。
次に,移動相溶液の流速を変えてグルコース濃度の測
定に要する時間及びピーク電流を観察した。その結果,
グルコース濃度測定に要する時間は,その流速が速い程
短くなること,及びピーク電流の大きさは,流速が速い
程小さくなることが明らかにされた。これは,酵素反応
が充分に速いときに,グルコース液の拡散が律速であ
り,流速が速い程ピーク電流が大きくなくと考えられる
が,ピーク電流は流速の増大とともに小さくなることが
観測された。このことから,グルコースオキシダーゼの
反応が律速であることが考えられる。観測されたグルコ
ース濃度とピーク電流との関係を第3図に示す。第3図
から,50μM−10mMの範囲のグルコース濃度に対して,
ピーク電流とグルコース濃度は比例関係があることが明
らかにされた。
このことにより,本発明によるフローインジェクショ
ン分析システムは,50μMから10mM或いは50mMまでとい
う広い範囲にわたり,グルコース測定試料を希釈するこ
となしで測定できることが明らかにされた。
[実施例3] 本発明のシステムの安定性試験及び保存性試験 上記のように製作されたミクロ電極を繰り返し使用し
て,その結果を観察した。1時間に約600個の試料を連
続的に注入したところ,測定初期のピーク電流と1時間
後即ち,600回試料注入した後のピーク電流とがほとんど
同一の値を示した。本発明によるフローインジェクショ
ン分析システムでは,グルコースに対する応答出力が安
定していることが明らかである。
次に,本発明のフローインジェクション分析システム
を用いてグルコース濃度を測定した時の変動係数を求め
てみた。その結果を上記の第1表に示した。ミクロ電極
の径が3mmの場合を除いて,変動係数は1%以内であ
り,極めて精度の良好な測定ができることが分かった。
また,本発明によるフローインジェクション分析装置
の安定性を1ケ月にわたり調べた結果,1ケ月後もピーク
電流値の低下がほとんど認められなかった。
[発明の効果] 本発明によるフローインジェクション分析装置及び分
析方法により次のような顕著な技術的効果が得られた。
第1に,測定対象微量物質を高速に応答性よく,感度よ
く分析できるフロー計測が可能になった。
第2に,酵素など生体機能物質を安定して包括固定化し
たミクロ電極を用いることにより,分析精度が極めて高
く使用安定性のよいフローインジェクション分析システ
ムが提供できる。
第3に,更に生体機能物質の固定化が高いミクロ電極を
用いるために,酵素の保存安定性の極めてすぐれたフロ
ーインジェクション分析システムを提供できた。
第4に,グルコース濃度50μMから50mMという広い範囲
ですぐれた直線性を示す分析方法を提供する。
第5に,使用のミクロ電極は白金黒化技術で製作可能で
あるので,円板状,球状,チューブ状などの多様な形状
にでき,そのために,バイオセンサとしてもその他のバ
イオ機能手段にも利用できる。
第6に,使用安定性の極めてすぐれたフローインジェク
ション分析システムが提供された。
第7に,酵素センサの保存性,安定性のきわめてすぐれ
たフローインジェクション分析装置が提供された。
第8に,ミクロ電極は極めて小さいために,サンプル量
も少なくてすみ,分析装置全体を小型化でき,更にその
ために,連続測定では1時間に数百検体以上の処理も容
易にできる。
第9に,電極のアレイ化,多機能化が容易で多成分系の
フロー分析などにおいて威力を発揮するシステムを提供
できる。
第10に,本発明の分析装置は,ポテンシオメトリ方式の
測定にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は,本発明によるフローインジェクション分析装
置の検出部の構造を示す説明図である。 第2図は,本発明によりグルコース含有試料を測定した
結果をその応答性で示すグラフである。 第3図は,本発明により測定されるときのグルコース濃
度と応答出力の関係を示すグラフである。 [主要な部分の符号の説明] 1……測定対象容液 2……入口 3……ミクロ電極 5……フローセル 6……参照電極 7……対極

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】生体機能物質を、電気化学還元反応により
    得られた金属粒子層中に含浸処理することにより、一体
    化させて得た金属微粒子表面層を有する生体機能物質固
    定化微小電極を、フローインジェクション分析の作用電
    極として用い、測定対象流体の流れる流路のフローセル
    に沿い、参照電極と対極とともに設けたことを特徴とす
    るフローインジェクション分析装置。
  2. 【請求項2】該金属微粒子表面層に更に高分子物質を含
    浸せしめ、不溶性高分子薄膜を、該金属微粒子表面上に
    固定化された生体機能物質表面の上に、形成し、安定化
    したことを特徴とする請求項1に記載のフローインジェ
    クション分析装置。
  3. 【請求項3】生体機能物質を、電気化学還元反応により
    得られた金属微粒子層中に含浸処理することにより、一
    体化させて得た金属微粒子表面層を有する生体機能物質
    固定化微小電極を、フローインジェクション分析の作用
    電極として用い、測定対象流体の流れる流路のフローセ
    ルに沿い、発生する電極のピーク値を測定することによ
    り、対象物質の濃度を決定することを特徴とするフロー
    インジェクション分析方法。
  4. 【請求項4】該金属微粒子表面層に更に高分子物質を含
    浸せしめ、不溶性高分子薄膜を、該金属微粒子表面上に
    固定化された生体機能物質表面の上に、形成し、安定化
    したことを特徴とする請求項3に記載のフローインジェ
    クション分析方法。
JP62304524A 1987-03-12 1987-12-03 フローインジェクション分析システム及びそれによる分析方法 Expired - Lifetime JP2600073B2 (ja)

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DE3852122T DE3852122T2 (de) 1987-03-12 1988-03-11 Immobilisierung von biofunktionellem material, daraus erzeugtes element und massnahme zu dessen verwendung.
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JPS5834355A (ja) * 1981-08-25 1983-02-28 Yanagimoto Seisakusho:Kk ツインエレクトロ−ド型ボルタンメトリ−検出システム
JPS58189549A (ja) * 1982-04-28 1983-11-05 Matsushita Electric Ind Co Ltd 酵素反応測定セル

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