JP2598726B2 - 動物細胞培養用添加剤 - Google Patents

動物細胞培養用添加剤

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徹 田中
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、動物細胞培養用添加剤
に関し、更に詳細には、基礎的培地に添加することによ
り培養細胞の増殖を促進させ、生細胞数割合の増加、培
養細胞減少の防止、培養期間の短縮、高密度化培養又は
血清等の天然栄養物の添加量の減少効果を示す動物細胞
培養用添加剤に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来、
動物細胞の培養に広く使用されている培地としては、基
礎的培地、例えば RPMI 1640培地、MEM培地、ダルベ
ッコ改変MEM培地、イスコフ培地、ハムのF-12培地、
又はこれらの混合液等に血清を添加したものが挙げられ
る。また、血清としては、ウシ胎児血清、仔ウシ血清、
ウマ血清などが用いられている。
【0003】しかしながら、この動物細胞の培養に関し
ては、今なお不明な点が多く、必ずしも全ての動物細胞
が培養できるわけではなく、また、培養が可能であって
も増殖の速度が遅いこと、高密度に培養できないことな
どの問題が残されている。
【0004】これらのうち、特に培地への血清類、殊に
ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum;以下、「FBS」
という)の必要性が重要な問題として挙げられる。すな
わち、動物細胞培養時には、多くの場合、多量のFBS
を必要とするが、FBSは、資源的に貴重である、高価
である、天然品ゆえにロットごとに差がある、保存安定
性に欠ける、さらに高分子量の不明成分も多く、培養液
中の有用成分との分離が困難であるなどの多くの問題を
有している。これらの問題を解決するため、すでに多く
の研究がなされており、例えば卵黄リポ蛋白(York Lip
oprotein;以下、「YLP」という)等の添加物の開発
(日本農芸化学会昭和61年度大会講演要旨集 p.600)
や、無血清培地の開発も進められている。
【0005】しかし、これらFBS代替物は、FBSと
比較して、必ずしも充分な効果を得ることが困難であ
り、FBSの代替又はFBSの使用量を減ずることがで
きるような新たな動物細胞培養用添加剤の開発が望まれ
ていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】かかる実情において、本
発明者らは鋭意研究を行った結果、5−アミノレブリン
酸又はその塩を動物細胞培養液に添加すれば、細胞の増
殖を促進することができることを見出し、本発明を完成
した。
【0007】すなわち、本発明は、5−アミノレブリン
酸又はその塩を含有することを特徴とする動物細胞培養
用添加剤を提供するものである。
【0008】本発明の動物細胞培養用添加剤の有効成分
として用いられる5−アミノレブリン酸又はその塩は、
除草剤及び殺虫剤として有用であることが知られており
(特表昭61-502814 号、特開平2-138201号)、また、鉛
中毒患者の血液中や尿中の5−アミノレブリン酸又はそ
の塩の濃度が上昇すること等も、古くから臨床事実とし
て知られているが、培養細胞の増殖促進作用を有するこ
とは全く知られていない。
【0009】5−アミノレブリン酸又はその塩は、公知
の化合物であり、化学合成、微生物による生産、酵素に
よる生産のいずれの方法によっても製造することができ
る。微生物又は酵素による生産方法を用いる場合、その
生産物は、動物細胞に対して有害な物質を含まない限
り、分離精製することなくそのまま用いることができ
る。
【0010】5−アミノレブリン酸の塩としては、例え
ば塩酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、プロピ
オン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、クエン酸塩、フマル酸
塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩等の酸付加塩及びナトリ
ウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の金属塩が挙げら
れる。なお、これらの塩は使用時において水溶液として
用いられ、その作用は、5−アミノレブリン酸の場合と
同一である。5−アミノレブリン酸とその塩は、それぞ
れ単独でも、又はこれらの2種以上を混合して用いるこ
ともできる。
【0011】本発明の動物細胞培養用添加剤は、5−ア
ミノレブリン酸又はその塩以外に、タンパク、ホルモ
ン、ビタミン、アミノ酸、有機酸、糖類、重金属等を必
要に応じて添加することができる。また、FBS、YL
P等の他の栄養剤と組み合わせて用いることもでき、組
み合わせによりさらに効果を高めたり、或いは、一定効
果を得るための5−アミノレブリン酸又はその塩の添加
量を減ずることができる。
【0012】本発明の動物細胞培養用添加剤の剤型とし
ては、粉末、粒剤、液剤等が挙げられるが、これらの剤
型とするには、溶剤、分散媒、増量剤等を動物細胞の増
殖に悪影響のない範囲で用い、常法に従って製造するこ
とができる。
【0013】5−アミノレブリン酸及びその塩は、極め
て毒性の低い天然物であり、動物細胞によって速やかに
吸収利用され、通常、動物細胞培養後に残留することは
なく、また、仮に残留しても毒性の問題はない。しか
し、必要な場合には、例えばダウエックス2(ダウ社
製)等のイオン交換樹脂などの吸着剤を用いて、残存す
る5−アミノレブリン酸又はその塩を選択的に除去する
ことができる。
【0014】本発明の動物細胞培養用添加剤の使用濃度
は、5−アミノレブリン酸換算で培地当たり、0.001 〜
100 μg/ml、好ましくは0.01〜10μg/mlである。特に培
地中の濃度が 100μg/mlを超えると、細胞生育に阻害が
生ずるので好ましくない。
【0015】動物細胞培養は、通常、その培養期間が短
いため、本発明の動物細胞培養用添加剤は、培養初期の
添加で充分な効果が得られるが、大量培養装置等を用い
て長期にわたって培養する場合、連続的に培養する場
合、或いはより大きな効果を得たい場合などには、複数
回の添加や連続的な添加が有効である。この場合、培地
中での濃度が一定量を超えないように管理することが必
要である。
【0016】なお、本発明の動物細胞培養用添加剤の適
用対象となる動物細胞としては、特に限定されないが、
例えばヒト急性リンパ芽球性白血病(T細胞)由来細胞
(MOLT-4)、ヒトバーキットリンパ腫由来細胞(Raj
i)、ヒト子宮頸部癌由来細胞(HeLa)、マウス骨髄腫
由来細胞(P3/NSI/1-Ag4-1;P3X63Ag8.653;SP2/0-Ag1
4)等が挙げられる。
【0017】
【発明の効果】本発明の動物細胞培養用添加剤は、動物
細胞の培養時に基礎的培地に添加するだけで極めて簡便
に使用することができ、培養細胞の増殖を促進させ、生
細胞比率の増加、培養細胞減少の防止、培養期間の短
縮、高密度化培養及び添加する血清等の栄養剤の添加量
の減少効果に優れたものである。
【0018】
【実施例】次に、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に
説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるもので
はない。 実施例1 シャーレ(35mmφ×10mm)に、基礎的培地である RPMI1
640培地を2ml、5−アミノレブリン酸(5−ALA)
を0(無添加)、0.03μg/ml及び 0.1μg/mlとなるよう
に添加し、MOLT-4細胞(ヒト急性リンパ芽球性白血病由
来細胞)を1.3×105 個/mlとなるよう添加した。細胞
添加時の生細胞数の割合は、81.2%であった。これをイ
ンキュベーターにて、5% CO2−空気、37℃で培養し
た。そして、2日後、3日後及び4日後にサンプリング
し、全細胞数及びトリパンブルー染色法で生細胞数を計
測し、さらにこれらより、生細胞比率(%)を求めた。
結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】表1から明らかなように、 RPMI 1640培地
のみでは全細胞数は急速に減少しているが、これに5−
アミノレブリン酸を添加した場合、一部には増殖効果も
見られる等、減少速度が大幅に遅くなっており、生細胞
比率も増加している。このように、本発明の動物細胞培
養用添加剤は、培養細胞に対して良好な効果を示してい
る。
【0021】実施例2 RPMI 1640培地にFBSを10%添加する以外は実施例1
と同様にして、培養を行った。結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】表2から明らかなように、本発明の動物細
胞培養用添加剤を添加することにより、細胞の増殖効果
が認められ、また、生細胞比率も増加した。5日後の生
細胞数を比較すると、5−ALA濃度が0.03μg/ml及び
0.1μg/mlの場合、無添加の場合より35%もの大幅な生
細胞数の増加が見られ、本発明の動物細胞培養用添加剤
の効果が極めて大きいことが認められた。
【0024】実施例3 下記に示すRDF培地にFBSを10%添加すること及び
マウス骨髄腫由来細胞(P3X63Ag8.653)を用いる以外は
実施例1と同様にして、培養を行った。結果を表3に示
す。 (RDF培地の処方) RPMI 1640 培地(粉末)(大日本製薬) 5.46g DMEM培地(粉末)(大日本製薬) 3.5 g ハムのF-12培地(粉末)(大日本製薬) 3.71g HEPES(和光純薬) 1.19g 硫酸ストレプトマイシン(森永製菓) 0.1 g力
価 結晶ペニシリンG・カリウム(森永製菓) 10万単位 以上を蒸留水に溶かして1000mlとし、孔径0.22μm のフ
ィルターを用いて濾過滅菌して用いる。
【0025】
【表3】
【0026】表3から明らかなように、本発明の動物細
胞培養用添加剤を用いることにより、細胞の増殖効果が
認められた。この場合、4日後に細胞数がピークに達し
ており、本剤の使用により、生細胞比率から分かるよう
に、細胞の減少が抑えられている。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 5−アミノレブリン酸又はその塩を含有
    することを特徴とする動物細胞培養用添加剤。
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