JP2594787B2 - う蝕予防剤 - Google Patents

う蝕予防剤

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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明はう蝕(虫歯)の形成に大きく関与しているス
トレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus muta
ns)に代表される口腔内細菌に対して優れた抗菌活性を
示し、且つ口腔内微生物が関与し歯垢の原因となる水に
不溶性のグルカン(デキストラン)形成を抑制しうる、
う蝕予防剤に関する。
<従来の技術> 従来、口腔内細菌を抑制する薬剤としては、クロルヘ
キシジン、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸
ブチル、安息香酸ナトリウム等の殺菌剤及びペニシリ
ン、テトラサイクリン等の抗生物質の使用が知られてい
る。
<発明が解決しようとする問題点> しかしながら、公知の殺菌剤や抗生物質は投与方法、
投与量によって口腔内及び腸内細菌の撹拌により、自然
生態系の細菌バランスを破壊し、人体に副作用を惹起す
る問題があった。
<発明の目的> 本発明の目的は、う蝕菌(虫歯菌)であるストレプト
コッカス・ミュータンス菌の増殖を有効に抑え、且つ歯
垢の原因となる水に不溶性のグルカン(デキストラン)
形成抑制に有効なう蝕予防剤を提供することにある。
<問題点を解決するための手段> 本発明によれば、ホップ抽出異性化物及び該異性化物
の金属塩からなる群より選択された少くとも一種を有効
成分として含有することを特徴とするう蝕予防剤が提供
される。
以下本発明につき更に詳細に説明する。
一般的にう蝕(虫歯)形成の原因としては歯質(Teet
h)と基質(Substrate)とミュータンス菌(St.mutan
s)とを挙げることができ、この3つの要因が同時に存
在するとき、う蝕(虫歯)が発生するとされている。
う蝕(虫歯)形成のメカニズム(Miller説)は、例え
ば糖類の中で蔗糖を基質(Substrate)とした場合、こ
の蔗糖がミュータンス菌(St.mutans)の産出するグル
コシルトランスフェラーゼ(酵素)によって水に不溶性
で粘着性のグルカン(デキストラン)に変化し、歯質
(Teeth)の表面に歯垢を形成する。この歯垢の中では
嫌気状態となり乳酸菌等の微生物が繁殖し、醗酵が進み
乳酸等の有機酸が生成してpHが低下し、歯のエナメル質
を脱灰しう蝕(虫歯)を形成するとされている。
本発明者等は蝕菌(虫歯菌)であるストレプトコッカ
ス・ミュータンス菌(St.mutans)の増殖を抑え、且つ
歯垢の原因となる水に不溶性のグルカン(デキストラ
ン)形成抑制に有効である物質を探索した結果、ホップ
抽出物、ホップ抽出異性化物、該異性化物の金属塩又は
これらの2種以上の混合物、特にホップ抽出異性化物、
該異性化物の金属塩又はこれらの混合物が有効であるこ
とを見出した。
ホップ(Humnlus lupulus L.)とは桑科に属する宿根
多年性、雌雄異株の蔓性植物である。本発明に使用され
るホップ抽出物の抽出方法としては、例えばホップ毬花
をヘキサン抽出、液体炭酸ガス抽出及び超臨界(炭酸ガ
ス)抽出等の方法で抽出することができる。このホップ
抽出物としてはα酸、β酸及びα酸とβ酸の混合物等が
ある。α酸としては、例えばフムロン、コフムロン、ア
ドフムロン、ポストフムロン、プレフムロン等を挙げる
ことができ、β酸としては、例えばルプロン、コルプロ
ン、アドルプロン等を挙げることができる。
次にホップ抽出異性化物の異性化方法としては、例え
ばホップ抽出物であるα酸を麦汁煮沸させるか若しくは
炭酸アルカリ処理することで異性化することができる。
このホップ抽出異性化物としては、例えばα酸から抽出
したイソ−α酸等を挙げることができ、このイソ−α酸
には、例えばシス−イソフムロネス、トランス−イソフ
ムロネス、シス−アロイソフムロネス及びトランス−ア
ロイソフムロネス等を挙げることができる。
更に該異性化物をアルカリ処理することにより金属塩
とすることができ、この金属塩としては例えばナトリウ
ム塩及びカリウム塩等を好ましく挙げることができる。
ホップ抽出異性化物、該異性化物の金属塩又はこれら
の混合物は、既にビール醸造過程でビールにホップ特有
の苦味を附与する為に添加されている人体に安全な公知
物質であるが、この様にストレプトコッカス・ミュータ
ンス菌(St.mutans)の生育を阻害し、且つグルカン形
成を抑制する効果は、従来全く知られていなかった。
本発明のホップ抽出異性化物、該異性化物の金属塩又
はこれらの混合物については、各製造業者により市販さ
れているが、それらの製品はいずれも本発明のう蝕予防
剤として使用できる。
本発明のう蝕予防剤の投与形態としては口腔中で比較
的滞留時間の長い錠菓、チューインガム、キャンデー及
びトローチ等に配合させるほか、歯磨、マウスウォッシ
ュ等の口腔清浄剤に配合しても使用できる。その配合量
は対象製品の形態、種類等によって必ずしも一様ではな
いが口腔用組成物中に0.01〜20重量%、好ましくは0.1
〜10重量%配合するのが一般的であり、この配合量にて
有効にう蝕予防効果を発現する。
<発明の効果> 本発明のう蝕予防剤は、人体に安全であるのみなら
ず、う蝕予防効果も極めて優れているので、その利用価
値は高いものである。
<処方例> 本発明のう蝕予防剤を配合した口腔用組成物の処方例
を下記に示す。
処方例−1 常法に従い、以下に示す組成のチューインガムを調製
した。成 分 重量% ガムベース 20 炭酸カルシウム 1 粉糖 35 マルトース 10 フルクトース 10 水アメ 15 香料 1 ホップ抽出異性化物(イソホプコン(IsoHOPCON)、 商品名、ホワイト・スティーブンソン・リミテッ ド(White Stevenson Limited)製) 0.5 水 残部 100% 処方例−2 常法に従い、以下に示す組成のマウスウォッシュを製
造した。成 分 重量% エタノール 20 サッカリン 0.5 グリセリン 50 ショ糖ラウリレート 2 香料 1 30%−ホップ抽出異性化物(イソホプコン(IsoHOP CON)、商品名、ホワイト・スティーブンソン・リ ミテッド(White Stevenson Limited)製) のカリウム塩水溶液 0.5 水 残部 100% <実施例> 次に実施例により本発明を更に詳細に説明する。な
お、以下の実施例において、ホップ抽出異性化物および
その塩は、イソホプコン(IsoHOPCON)(商品名、ホワ
イト、スティーブンソン・リミテッド(White Stevenso
n Limited)製)およびその塩を使用した。
実施例−1及び比較例−1 ショ糖2wt%添加のハートインフュージョンブイヨン
の液体培地に5wt%−アルコール溶液とした表1に記載
の試料をその濃度が0.1wt%となる様に添加し、これに
前培養しておいたストレプトコッカス・ミュータンス
(Streptococcus mutans)3125001株(血清型C)を白
金耳により37℃にて24時間培養した。次に培養液を撹拌
し、沈澱物を分散させた後、550nmにおける吸光度(濁
度)を測定し、ミュータンス菌によるグルカン形成量を
チェックした。またグルカン形成時にミュータンス菌に
よる糖醗酵が生起し、培地が酸性になることから、培養
液のpHも測定した。その結果を表−1に示した。なお、
歯垢形成量はコントロール(減菌水)を100%とした場
合の百分率で表わした。
表−1で示される様に、培地のpHの低下及びグルカン
形成は認められず、ミュータンス菌の増殖を抑制するの
に有効であることが明白である。
実施例−2及び比較例−2 実施例−1及び比較例−1に於て培地のpHの低下及び
グルカン形成が全く認められなかった表−1の試料につ
いて、実施例−1及び比較例−1と同じ培地及び同じ操
作方法で、各試料を希釈して抗菌性試験を実施し、各々
の物質の最低有効阻止濃度を測定した。最低有効阻止濃
度試験の評価法(判定法)は、実施例−1及び比較例−
1と同じく培地のpHの変化及びグルカン形成量で判定し
た。判定の結果、培地のpHの低下及びグルカン形成が全
く認められなかった試料は抗菌活性を有すると判定し、
その試験試料の最低有効濃度の逆数でもって抗ミュータ
ンス菌活性値とした。その結果を表−2に示す。
表−2より明らかな通り、ホップ抽出物、ホップ抽出
異性化物及びその金属塩はいずれも高活性を示すが、こ
れらのうちでも特にホップ抽出異性化物及びその金属塩
は、ホップ抽出物よりも高活性を示すことが明らかであ
る。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ホップ抽出異性化物及び該異性化物の金属
    塩からなる群より選択された少くとも一種を有効成分と
    して含有することを特徴とするう蝕予防剤。
  2. 【請求項2】前記異性化物の金属塩をナトリウム塩及び
    カリウム塩からなる群より選択することを特徴とする特
    許請求の範囲第1項記載のう蝕予防剤。
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