JP2585409B2 - 超電導マグネット装置、その冷却システム及びこれらを備えた磁気浮上走行装置 - Google Patents

超電導マグネット装置、その冷却システム及びこれらを備えた磁気浮上走行装置

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JP2585409B2
JP2585409B2 JP63316414A JP31641488A JP2585409B2 JP 2585409 B2 JP2585409 B2 JP 2585409B2 JP 63316414 A JP63316414 A JP 63316414A JP 31641488 A JP31641488 A JP 31641488A JP 2585409 B2 JP2585409 B2 JP 2585409B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、磁気浮上走行装置に用いられる超電導マグ
ネツト装置、および当該超電導マグネツト装置を搭載し
た磁気浮上走行装置に関する新たな提案である。
さらに、本発明は前記超電導マグネツト装置の実用上
に必要な巻線仕切板の構造と、前記巻線を冷却する冷却
装置に関する新らたな提案である。
〔従来の技術〕
超電導線を用いて巻線を構成し、その巻線を冷却容器
内に納めた超電導マグネツト装置を車体に搭載し、地上
に敷設される地上コイルとの間に磁気反発力、又は磁気
吸引力を作用させて、軌道上を高速走行する磁気浮上走
行装置は、その実用化に向けて研究が進められている所
である。
而して、この種磁気浮上走行装置は軽量化と大きな磁
気量を電流によつて生じさせる必要があることから電力
損失のない超電導線を用いたマグネツト装置が有効な手
段として研究されているが、この超電導線は、温度や振
動,熱等の擾乱によつて突然、常電導に転移(通称クエ
ンチ現象という。以下単にクエンチという)をする現象
がある。
従来から、このクエンチが起きても、安全に列車を制
御する手段が種々検討され、提案されている。
例えば、特開昭54−132917号によれば、車体に搭載し
た超電導マグネツト装置の1つがクエンチした場合、こ
れを検出して車体のバランスを保つ目的で、対象な位置
にある他の超電導マグネツト装置を強制的に消磁して安
全に停車させる案が提案されている。
さらに、特開昭57−21601号によれば、走行体の滑
行、支持に使用する非常用スキツドの滑走面を、構造的
に接極子レールの形状変更によつて形成し、電磁石の浮
上力消失時にも走行体を軌道上で安定させて、安全に滑
走、支持するようにした案が提案されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、従来のこの種磁気浮上走行装置におけ
る超電導マグネツト装置のクエンチ対策は、安全上の見
地から、走行装置のバランスの問題や、緊急停止時の安
定についての解決策が提案されているもので、クエンチ
により消磁してしまつた超電導マグネツト装置が一転し
て走行装置の安定性を損ねる原因を作つてしまう欠点を
完全には解決していない。すなわち、磁気反発力を利用
して高速で走行する装置は、軽量で大きな磁気反発力を
安定して発揮し得る超電導マグネツト装置が必要な訳だ
が、クエンチした超電導マグネツト装置は、永久電流が
消費されてしまい、磁気反発力がなくなるため、反転し
て走行装置の重量として作用してしまう。この重量は、
高速走行中の車体にダイレクトなアンバランス要素とし
て影響を及ぼすもので、しかも、超電導を利用している
関係上、いつ発生するか解らないクエンチの問題で、高
速走行する車体をバランスだけで維持しようとする考え
は、安全性を十分に満足できない。さらに、クエンチを
起した時に緊急停止して、クエンチした超電導マグネツ
ト装置を再起動させることは、駅の近くや、保修設備の
充実している走行軌道システムでない限り、再冷却,再
励磁に長時間を要し、実用化の阻害原因になつている。
本発明は、かかる欠点を解決する目的で、超電導マグ
ネツト装置がクエンチを発生しても、その超電導マグネ
ツト装置の磁気反発力がなくならない工夫をして、高速
で走行する装置を少なくとも最寄の駅まで、安全に到着
させることのできる超電導マグネツト装置、及び当該装
置を構成した磁気浮上走行装置およびその制御方法を提
案するものである。
さらに、本発明の超電導マグネツト装置の実用化に不
可欠な、超電導線の巻線仕切板、および冷却方式を提案
するものである。
〔課題を解決するための手段〕
上記目的を解決する手段として、本発明の超電導マグ
ネツト装置は定常時に使用する一方の主要な超電導巻線
と、非常時に使用する他方の補助の超電導巻線の組合せ
で成る巻線構成を採用し、しかもその各々の巻線を相互
誘導作用を誘起し合える位置関係に配置するとともに、
各々の巻線を熱的に独立した冷却容器内に納めた上、そ
の冷却容器内を各々独立して冷却する冷却装置を設ける
ことにより達成した。
さらに、上記組合せられた定常時と非常時の超電導巻
線はその各々の巻線が励磁される永久電流を適正な値に
して使用することにした。
そして、前記の組合せられた定常時と非常時の超電導
巻線は、各々の巻線間で作用し合う相互誘導作用が、あ
る値以上の相互誘導作用を及ぼし合うように係合係数を
考慮した配置が選択された。
さらに、前記の定常時に使用される主要な超電導巻線
と、非常時に使用される補助の超電導巻線は、その巻線
の材質を異ならせて巻回作製し、定常時に使用する超電
導巻線と非常時のそれをそれぞれの特性を考慮して、組
合せることがおこなわれるようにした。
そして、前記の定常時に使用される主要な超電導巻線
と非常時に使用される補助の超電導巻線の配置は、相互
の巻線間の熱伝達を遮蔽する能力をもつた、非磁性の仕
切板を介して隣接する形で構成することにした。
最後に、上記の如き構成の超電導マグネツト装置を走
行装置に搭載する場合は、その搭載する走行装置の車体
への配置を適正に選択しておこなつた。
そして、走行装置に搭載される超電導マグネツト装置
は、その構成される定常時に使用する主要な超電導巻線
と非常時に使用する補助の超電導巻線の内の後者が、走
行装置が走行する軌道に敷設された地上コイルに近い側
に構成するようにした。
〔作用〕
上記構成による超電導マグネツト装置は、定常時に使
用する一方の主要な超電導巻線が、クエンチを起した場
合、そのクエンチによつて生ずる減衰電流の減衰時定数
を適当に決めることによつて相互誘導作用を起し得る位
置に配置された他方の非常時に使用する補助の超電導巻
線に電圧が誘起され、その電圧に見合つた電流が発生す
るので、当該超電導マグネツト装置としての発生磁気量
を維持することが可能になる。そして、この種超電導マ
グネツト装置を搭載した磁気浮上走行装置は、定常時に
使用する主要な超電導巻線の一つが高速走行中にクエン
チを起しても、ただちに非常時に使用する補助の超電導
巻線が誘起されて、浮上走行に必要な磁気量を維持して
くれるため、バランスを損うことなく、最寄の駅、また
は保修施設まで高速走行を継続できる。
なお、従来に比べて、超電導巻線が二つ以上の組合せ
になる関係上、重量が増加する傾向にあるが、実施例で
も説明する如く、各々の超電導巻線の設計にともない、
単純に倍増することはない。
それにも増して、クエンチにともなう停車−再励磁−
運転を繰返すことになる可能性のある欠点を解決する本
発明は、リニアモータカーの実現に向けた優れた効果を
発揮できる。
〔実施例〕
以下、図面に従つて本発明を説明する。
第1図,第2図は本発明の超電導マグネツト装置の原
理を説明するための図面である。
本発明の超電導マグネツト装置1は、定常時に使用す
る主要な超電導巻線2(以下単に主巻線という)と、そ
の主巻線2と組合せて使用される非常時に使用する補助
の超電導巻線3(以下単に補助巻線という)を備え、そ
の各々の主巻線2と補助巻線3は、独立した永久電流ス
イツチ4,4′と、独立した外部抵抗5,5′と、独立した励
起電流供給端子6,6′を備えている。そして、主巻線2
と補助巻線3は、熱を伝えにくく、しかも磁気的には非
磁性と称される性質を備えた仕切板7を介して、相互誘
導作用を誘起し合える配置で構成され、しかも各々の巻
線は独立して冷却媒体が供給される冷却容器8,8′に収
納されている。9,9′は、その冷却容器に冷媒を供給循
環する冷却装置を表わしている。
10は、本発明の超電導マグネツト装置1が、磁気浮上
走行装置に搭載されて用いられる時、当該磁気浮上走行
装置の軌道に敷設される地上コイルを表現したものであ
る。
磁気浮上走行装置に搭載された例を使用して、以下に
本発明による超電導マグネツト装置の原理を説明する。
主巻線2は、冷却装置9,9′から供給される液体ヘリ
ウム等の冷却媒体を用いて、当該巻線2を超電導臨界温
度まで冷却する。その状態で励起電流供給端子6から、
別に設けられている外部電源を使用して、一定の励起電
流が与えられる。そして、主巻線2が定められた励起電
流値に達した所で、永久電流スイツチ4を閉じて、超電
導状態にある当該巻線2を、電気的にポテンシヤルを保
つた状態にする。この状態の主巻線2が、地上コイル10
との間で、磁束を切る方向の運動エネルギーを生ずる
と、電磁誘導作用にもとづいて、当該主巻線2は、永久
電流スイツチ4で閉じられた回路で電流が流れ、Φ=NI
(Nは巻回数)に相当する磁束を発生する。
この磁束が、地上コイル9との間で磁気反発力を発生
し、超電導マグネツト装置が地上コイルと離反しようと
する力となつて作用する。この力が、磁気浮上走行装置
の浮上力として作用するものである。
所で、主巻線2が、超電導線で製作されているこの種
装置は、当該超電導線がクエンチを発生する可能性を常
に有している。そして一度クエンチを生ずると、当該主
巻線2内で保持されていた電流は、抵抗分によつて急激
に熱として消費され、主巻線2が発生していた磁束が消
滅してしまう。所が、主巻線2のクエンチによる電流消
費は、主にそのクエンチによつて生ずる超電導巻線の抵
抗分と、外部抵抗5の値によつて時間的な調整が可能で
あること、及びその時定数の中で消費される電流は、当
然それにともなう磁束の減衰変化現象をともなうことは
一般的に知られている。
この電流消費にともなう磁束の減衰現象は、主巻線2
と相互誘導作用を及ぼし合える位置に配置された補助巻
線3に、その磁束の減衰現象を防ごうとする方向の誘起
電力を発生させることになる。ただし、この作用は、補
助巻線3が、主巻線2のクエンチによつて生ずる熱の影
響や、比較的急峻な減衰現象となる当該主巻線2の磁束
変化の影響を受けてもその変化に耐え得る性質と形状を
有して製作されていることが必要なことは云うまでもな
い。
この様に、主巻線2のクエンチにともなう磁束の減衰
現象を利用して、補助巻線3に誘起電圧を発生させる
と、その電圧に見合つた値で、非常巻線3内に電流が誘
起される。すなわち、第2図にグラフで表示したよう
に、主巻線2の永久電流モードITは、クエンチの発生前
に、ある定められた値を維持しているが、クエンチの発
生TZと同時に巻線をもたせられた時定数に従つて減衰を
始める。すると、その主巻線2と相互誘導作用を及ぼし
合える位置に配置された補助巻線3の永久電流モードI
E1は、その誘導作用にともなう誘起電流が発生するもの
である。IE2は、補助巻線3が主巻線2と同様に、しか
も、当該、主巻線2との間で永久電流モード値に差を持
たせて、あらかじめ励起電流が与えられている場合の相
互誘導による誘起電流の変化する状態を示している。I
T2は、主巻線2の時定数を変更した場合の減衰特性であ
る。発明者等の試算で主巻線2と、補助巻線3の配置を
適切に設計し、しかも各々の巻線の熱的影響を防いで相
互誘導作用を実験的に誘起させた所、巻線形状,巻回
数,電流密度を設定し巻線相互間のギヤツプを、10mmか
ら100mmまで変化させて、相互の巻線間の結合係数を算
出した結果0.6〜0.2の範囲で十分な相互誘導作用が存在
することが確認できた。
この結果をあてはめれば、巻線形状,巻回数,電流密
度を適切な値に設定することによつて今主巻線を549ア
ンペア、補助巻線を200アンペアで永久電流モードと
し、主巻線の時定数を4秒になるように設計した上で、
当該主巻線2を強制的にクエンチさせた場合巻線相互間
のギヤツプ、及び標遊損を考慮しても主巻線2の電流減
衰現象にともなつて、補助巻線3に誘起される永久電流
モードは520アンペア〜300アンペアに上昇することにな
る。
この試算から主巻線と補助巻線の各々の自己インダク
タンスをL1,L2とする時、その巻線相互の誘導インダク
タンスは 以上になる様にすれば、十分な結合係数を保持し得るこ
とも判明した。
以上説明してきた、主巻線2と補助巻線3の組合せか
ら成る超電導マグネツト装置は、具体的には第3図に示
す如く構成される。
図は、装置の巻線構成部分のみを断面して表わしたも
ので、図において符号が同一のものは既に説明して来た
符号と同じものを示している。
主巻線2に、仕切板7を隔てて補助巻線3が配置され
る。そして、これらの各々の巻線は仕切板7で相互に気
密に保たれた上、当該仕切板に固着されて冷却容器8,
8′に独立して納められる。この仕切板7の構造につい
ては後述する。11は補強梁で、前記仕切板7と、冷却容
器8,8′を機械的に支えている。当然、この補強梁11
は、巻線が有する磁気的な力を超電導マグネツト装置と
して、ひいては磁気浮上走行装置として、機械的に支え
る役目を持つている。12は真空容器で、本発明の超電導
マグネツト装置の巻線部の外形を構成する。13は真空容
器の一部に構成された取付台部である。
この種構造の超電導マグネツト装置1は、他に冷却媒
体を冷却容器8,8′内に供給,回収する配管や、主巻線
2,補助巻線3に励起電流を供給する配線等が構成される
が、本図ではそれらを省略した。このような構造の超電
導マグネツト装置によれば、主巻線2にクエンチが発生
した場合、仕切板7で隔てられて隣接されている補助巻
線3に、非磁性の仕切板7が障害にならないで、十分な
相互誘導作用を及ぼし合うことが可能になる。そしてこ
の種構造の超電導マグネツト装置は、すでに説明した
が、主巻線2に発生したクエンチによつて生ずる熱的な
障害を、補助巻線3に伝えないこと、そして相互誘導作
用を誘起し合える位置に配置することが必要である。
第4図は、主巻線2と補助巻線3間に構成される仕切
板7の一例である。この仕切板7は、すでに述べたよう
に非磁性で、かつ熱の伝達を妨げる機能を備えている必
要がある。
図の仕切板7は、上記必要性から、巻線同士が対抗す
る面7a,7bを有し、その面の間を、千鳥状に一体化され
た支持梁7cの組合せで構成した。而して、その支持梁が
重なり合つて一体化されるために形成される空隙7dは、
当該仕切板7の縁部7eが露される雰囲気、具体的には真
空の状態を維持することができるように適当な数の穴7p
が穿けられて、断熱効果をさらに高く保つ工夫が施され
る。
この種構造の仕切板は、例えば繊維強化樹脂材等を用
いて、成型加工で製作され、設計製作上の計算値から、
標準形の型材を必要数重ねて一体化することで完成する
ことができる。
第5図は、第4図に仕切板を具体的に主巻線2と補助
巻線3の間に配置した状態を表現した断面図で符号は、
すでに説明して来たものと同一である。この図では、標
準形の仕切板7が6枚重ね合せられている。
第6図は、仕切板7の他の実施例を示したもので、主
巻線2と補助巻線3が納められる冷却容器8,8′と一体
に構成した場合を表わしている。
具体的には、冷却容器8,8′の端部を突出させた仕切
連結部8aを形成し、当該仕切連結部8aに仕切板助材7Fを
溶接して一体化し、断熱用の空隙7dを形成したものであ
る。この空隙7dも仕切板助材7Fに穿けられた穴7pによつ
て、外部と連通し真空になる様に構成される。
この種構造の場合、冷却容器も含めて、材料はステン
レス鋼等の非磁性で、かつ溶接が可能なものを選択する
ことがなされる。
以上、仕切板7について実施例を基に説明したが、こ
の仕切板7はその両面に構成される主巻線2と補助巻線
3が生ずる磁気力を補強梁11を経て取付台部に伝える約
目を受持つか否かによつて、相当の機械的な強度で差が
ある。さらに主巻線2と補助巻線3間に設計上要求され
る磁気的な結合係数を満すために必要なギヤツプの値に
よつても、その構成は適切なものを選択することが大切
である。
そのようなことを考慮すれば、第5図の実施例は仕切
板7に荷重が加わらない場合に採用し得るものであり、
第6図のそれは、荷重に耐え得る構造にすることができ
ることになろう。
第7図は、既に説明してきた超電導マグネツト装置の
冷却システムを説明するための概略構成図である。
図において、81は冷媒供給装置、82は凝縮器、83は逆
止弁、84は安全弁である。すでに説明したものと同一の
ものは、同じ符号を用いて説明する。
本図では、主巻線2と補助巻線3を各々独立した冷却
容器8,8′内に納めた超電導マグネツト装置1を、4台
集中して一台の冷媒供給装置で冷却している例である。
冷媒供給装置81からは、各々に独立して配管に逆止弁
83を介して、超電導マグネツト装置の各々の冷却容器8,
8′内に例えばヘリウムの液体が供給される。このヘリ
ウム液は、ほぼ常圧で供給されるため、冷却容器で蒸発
し、その蒸気は、別に設けた吸気配管を用いて、凝縮器
82に回収され、再び液化されて冷媒供給装置に戻され
る。このサイクルを繰返すことにより、主巻線2と補助
巻線3は、超電導臨界温度に維持される。
而して、今主巻線2が突然クエンチした状態を考える
と、その巻線に生ずる熱は相当量になる。
そして、その熱によつて蒸発する冷媒も増大する。こ
の時、その蒸発分を凝縮器82が全て回収することは不可
能である。そこで個々の巻線を納めた冷却容器には、そ
れぞれに安全弁84が設けられ、クエンチにともなう急激
な冷媒の蒸発による圧力上昇を、安全に回避する機能が
付加されている。さらに、この冷却システムの大切な機
能はクエンチを起した主巻線2が発生する熱による影
響、具体的にはその熱によつて蒸発する冷媒が他の正常
な巻線を冷却している系統に流入しないように、独立し
た配管と、必要ならば容量を十分に備えた冷媒供給装置
の組合せを工夫した点にある。独立した配管は、それぞ
れが逆止弁83を備えることで、冷媒の逆流を止めること
ができる。
また、必要ならば、逆止弁は、電磁弁の如き締切弁を
並設し、巻線のクエンチを検出する機能を付加して、当
該巻線の納められた冷却容器への冷媒供給(吸気側も含
めて)を遮断する機能を備えても良い。
以上説明した本発明の超電導マグネツト装置は既に説
明したように、超電導線が有しているクエンチを一方の
巻線に発生したとしても、その巻線と相互誘導作用を作
用し合せる位置に配置された他方の巻線が、少なくとも
磁気力を保持し、しかも、その磁気力を相互誘導作用の
原理で、増大して発生させられるようになるため、従来
の磁気浮上走行装置にはない。浮上力の持続を達成する
ことができるものである。
以下に本発明の超電導マグネツト装置を搭載したまつ
たく新しい磁気浮上走行装置を説明する。
第8図は、磁気浮上走行装置を正面から見て、断面し
たものである。
この磁気浮上走行装置の構成は、従来から提案されて
いるものと変らない。ただし、浮上走行に必要な超電導
マグネツト装置は、本発明提案の主巻線と補助巻線を備
えたもので搭載されている。
図において、100は走行車体で、地上に設けられた軌
道101内に置かれ、地上コイル10,推進地上コイル102
と、走行車体100に搭載された超電導マグネツト装置1
の電磁誘導作用と、磁気反発力を利用して走行する。10
3は車輪,104は走行車体の床面、105は座席である。冷媒
供給装置や、配管、検出機能等の補機106類は前述の床
面104の下に納められる。
この種磁気浮上走行装置は第9図に示す如く一般的に
は数両の車両を連結した構成で使用される。図は先頭車
両110と後尾車両120の間に中間車両130を二両連結した
例を示している。
而して、本発明による磁気浮上走行装置は、先に説明
した超電導マグネツト装置1を、先頭車両110と後尾車
両120に設けたことを特徴としている。
磁気浮上走行装置において、走行中の車体に加わる力
は、進行方向の加速度と、曲がる時に作用する遠心力が
その最も大きなものである。而して、これらの力はすべ
て車両に搭載され、適当な位置に配置された超電導マグ
ネツト装置1と、軌道に設けられた地上コイル10の間に
生ずる磁気反発力によつてバランスを保つように設計さ
れる。そして前記超電導マグネツト装置がクエンチによ
り磁気反発力を失つた場合、その部分で、それまで作用
していた力がなくなるため、車両はバランスを崩す訳で
ある。
この様なアンバランスの発生において、最つとも、急
激に影響が表われる所は連結された複数の車両の内で、
先頭又は後尾に位置する所が厳しい。なぜならば、中間
車両130は、他の車両110、及び130の両端に結合されて
おり、その結合手段が適当に選択されていることによつ
て、前述のクエンチによる浮上力の消失を、連結部を介
して他の車両に分散することが可能である。
それに対して先頭車両110の超電導マグネツト装置に
クエンチが発生した場合、それにともなう力のアンバラ
ンスは、そのまま先頭車両110の方向性を崩す結果を起
す危険性を有している。
そこで、本発明は先に提案した超電導マグネツト装置
1を、前述の危険を解決する上で最つとも効果的な先頭
車両110と後尾車両120に搭載した。
第9図は、先頭車両110,後尾車両120に各々4個の超
電導マグネツト装置を搭載した例を示している。
第10図は、第9図の先頭車両110を拡大して表現した
もので、車両110に2ケの台車111,112を設け、当該台車
に各々2ケの超電導マグネツト装置1を搭載した。
而して、この様に車両に搭載される超電導マグネツト
装置は、その装置内に配置される超電導巻線の配置も工
夫した。それは、先に説明した主巻線2と補助巻線3の
配置を、軌道の推進地上コイルに近い側を補助巻線3と
し、遠い側に主巻線2を設けるものである。この配置
は、相互誘導作用により永久電流値の増大を可能にした
配置を有している超電導マグネツト装置は、その増大に
よる補正分で、クエンチ前の主巻線2が発揮している値
を100%満足することは、不可能だからである。
第11図,第12図は、先に提案した超電導マグネツト装
置を磁気浮上走行装置に搭載することを考慮して改良し
た例を示す図面である。
第11図は車両への取付台部13に、主巻線2をレースト
ラツク型に配置し、当該主巻線に内接する形で、補助巻
線3を複数個(図面では3個)構成した。
この構成は、超電導マグネツト装置の厚さ寸法を押え
て製作できる効果があるが、反面独立した冷却システム
の構成が複雑になる。
第12図は、取付台部13に主巻線2,補助巻線3を同心円
状に複数個構成したもので、前述の例の変形である。
第13図は、先に提案した超電導マグネツト装置を搭載
した磁気浮上走行装置に要求されるであろう保護方法を
新らたに提案し、説明するための回路構成図である。
既に提案した超電導マグネツト装置は、主巻線又は補
助巻線のクエンチが発生しても、そのことによる磁気浮
上力の消滅という最悪の事態は回避できる。そのため、
磁気浮上走行装置は継続して軌道上を走行することにな
ろう。しかしながら、クエンチを起した超電導巻線を、
そのまま放置して走行を継続したのでは、次のクエンチ
を同じ超電導マグネツト装置で発生した場合に磁気浮上
走行装置としてのバランスを崩すことになる。このよう
な危険を回避するためには、磁気浮上走行装置の運行を
司どる所で、クエンチが発生した超電導マグネツト装置
を認識し、継続して走行する磁気浮上走行装置の停止
と、保修を、どこでいつおこなうべきかの判断を先行し
て実行できる保護方法が要求されることになる。
本図は、その保護方法を提案しているもので、超電導
マグネツト装置1の主巻線2,補助巻線3の各々にクエン
チを検出するセンサー200が設けられる。このセンサー2
00の出力は、判別装置201でクエンチを発生した巻線を
判別し、その判別信号を送受信装置202に伝えて、制御
所203に伝え表示させる。また、判別装置201の出力は磁
気浮上走行装置のバランスを保つ機能を持つたバランス
装置204に伝えることで、例えばクエンチを発生した超
電導マグネツト装置の巻線とバランスする位置にある他
の超電導マグネツト装置の巻線を強制的にクエンチし、
磁気浮上走行装置全体の安定性を維持する構成にするこ
とも容易である。205はその強制クエンチ装置である。
さらに、超電導マグネツト装置のクエンチにもかかわ
らず走行を継続できる本発明装置では、バランス装置20
4による巻線の強制的なクエンチの手段を講じないで、
制御所における他の手段、例えば突出形式の安定翼と
か、走行速度の制御等の方法を採用することも可能であ
る。いずれにしても駅や保修施設のある場所まで走行装
置が到着すれば、クエンチの状態を取り除く処置をおこ
なうことになるが、そのための準備体制を走行装置の到
着前に済ませることができる効果は、この種磁気浮上走
行装置の安全性をきわめて高いものにすることのでき
る。
〔発明の効果〕
本発明で提案する超電導マグネツト装置によれば、そ
の装置を構成している超電導巻線の一方にクエンチが発
生しても、当該超電導マグネツト装置が完全に消磁して
しまうことがなく、磁気浮上走行装置に用いた場合には
当該走行装置の安定走行を保つ上で大きな効果を発揮す
る。
本発明で提案する前記の超電導マグネツト装置に用い
られる支切板によれば、クエンチの発生した超電導巻線
側の熱を、当該巻線と相互誘導作用を起し得る配置を成
した他方の超電導巻線に伝えないで済むため、先に提案
した超電導マグネツト装置を容易に構成することができ
る。
本発明で提案する前記の超電導マグネツト装置の冷却
システムは、当該装置の実用上必須のものる。
本発明で提案する磁気浮上走行装置は、前記の超電導
マグネツト装置の搭載しているためクエンチが発生して
も当該走行装置を緊急停止等の処置をおこなわないで継
続して安定走行させることができる。
本発明の磁気浮上走行装置の制御方法によればクエン
チを発生した超電導マグネツト装置の保修について事前
に準備を整えて待機することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の超電導マグネツト装置の構成を説明
する図、第2図は本発明の超電導マグネツト装置に構成
された主巻線と補助巻線の永久電流モードの変化を説明
するためのグラフ、第3図は、本発明の超電導マグネツ
ト装置の構造を表わした断面図である。 第4図は、先に提案した超電導マグネツト装置に用いら
れる本発明による仕切板の一実施例を示す断面斜視図、
第5図はその具体的な構成を表現した断面図、第6図は
仕切板の他の実施例を示す断面図である。 第7図は、先に提案した超電導マグネツト装置に必須な
本発明による冷却装置の構成を表わした概略構成図であ
る。 第8図は、先に提案した超電導マグネツト装置を搭載す
る本発明による磁気浮上走行装置の正面断面図、第9図
は同装置の平面図、第10図は同装置の先頭車両のみを表
現した平面図である。 第11図は、磁気浮上走行装置に搭載される本発明の超電
導マグネツト装置の外観に関する新らたな提案を説明す
るための図、第12図は同様の他の実施例を説明するため
の図である。 第13図は、先に提案した磁気浮上走行装置に用いられる
本発明による制御方法を説明するための回路図である。 1……超電導マグネツト装置、2……定常時に使用する
主な超電導巻線、3……非常時に使用する補助の超電導
巻線、4,4′……永久電流スイツチ、5,5′……外部抵
抗、6,6′……励起電流供給端子、7……仕切板、8,8′
……冷却容器、9……冷却装置、10……地上コイル、11
……補強梁、12……真空容器、13……取付台部、100…
…走行車体、101……軌道、106……補機、110……先頭
車両、120……後尾車両、130……中間車両、111……台
車、200……センサー、201……判別装置、202……送受
信装置。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 滝沢 照広 茨城県日立市幸町3丁目1番1号 株式 会社日立製作所日立工場内 (72)発明者 黒石 一夫 茨城県日立市会瀬町2丁目9番1号 日 立サービスエンジニアリング株式会社内

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】超電導線で巻回された一方の巻線と、超電
    導線で巻回された他方の巻線と、前記各々の巻線を独立
    して納めた冷却容器に冷却媒体を供給する冷却装置と、
    前記各々の巻線を納めた冷却容器の間を非磁性で気密に
    仕切る仕切板と、を備え、前記各々の巻線が、相互誘導
    作用を誘起しあえる位置に配置構成されていることを特
    徴とする超電導マグネツト装置。
  2. 【請求項2】請求項1記載の定常時に使用する一方の巻
    線と、非常時に使用する他方の巻線が、特性の異なる超
    電導線を用いて製作されていることを特徴とする超電導
    マグネツト装置。
  3. 【請求項3】請求項1ないし2記載の一方の巻線を、定
    額電流近傍の永久電流モードで励磁し、他方の巻線を定
    額電流以下の永久電流モードで励磁して用いることを特
    徴とする超電導マグネツト装置。
  4. 【請求項4】請求項1記載の仕切板が、真空遮熱層を備
    えていることを特徴とする超電導マグネツト装置。
  5. 【請求項5】請求項1記載の冷却装置が、定常時に使用
    する一方の巻線の納まつた冷却容器と、非常時に使用す
    る他方の巻線の納まつた冷却容器に、独立して冷却媒体
    を供給することが出来る冷却媒体供給能力を備えている
    ことを特徴とする超電導マグネツト装置の冷却システ
    ム。
  6. 【請求項6】請求項1ないし4記載の超電導マグネツト
    装置を、複数の車両を連結した走行装置の先頭車両と、
    最後尾車両に搭載したことを特徴とする磁気浮上走行装
    置。
  7. 【請求項7】請求項6記載の磁気浮上走行装置に搭載さ
    れる超電導マグネツト装置が、車両の軌道に敷設された
    推進用地上コイル側から見て定常時に使用する一方の巻
    線を、非常時に使用する他方の巻線より遠方になるよう
    に配置構成したことを特徴とする磁気浮上走行装置用超
    電導マグネツト装置。
  8. 【請求項8】請求項6記載の磁気浮上走行装置に搭載さ
    れる超電導マグネツト装置が定常時に使用する巻線に内
    接して、非常時に使用する巻線を配置構成していること
    を特徴とする磁気浮上走行装置用超電導マグネツト装
    置。
  9. 【請求項9】超電導線で巻回された定常時に使用する一
    方の巻線と、超電導線で巻回された非常時に使用する他
    方の巻線と、前記各々の巻線を独立して納めた冷却容器
    に冷却媒体を供給する冷却装置と、前記各々の巻線を納
    めた冷却容器の間を非磁性でしかも熱を遮ぎつて気密に
    仕切る仕切板と、を備え、前記各々の巻線が、0.2以上
    の結合係数を維持して相互誘導作用を誘起しあえる位置
    に配置構成されていることを特徴とする超電導マグネツ
    ト装置。
  10. 【請求項10】冷却容器に納められた超電導線からなる
    第一の巻線、当該第一の巻線と相互誘導作用を誘起する
    位置関係を有し、冷却容器に納められた超電導線からな
    る第二の巻線を備え、前記第一及び第二の巻線は冷却容
    器を介して当該巻線が発生する磁気力を機械的に支える
    補強梁で支持され、当該補強梁が外部に固着するための
    取付台部に一体化されるとともに、前記冷却容器内には
    超電導線の臨界温度まで冷却できる冷却媒体を供給する
    冷却装置が接続されていることを特徴とする超電導マグ
    ネツト装置。
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