JP2584461B2 - 単結晶の引き上げ方法及びその装置 - Google Patents

単結晶の引き上げ方法及びその装置

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、結晶成分融液に浸した種結晶の所定面に単
結晶を育成する単結晶の引き上げ方法及びその装置に関
する。
[従来の技術] 従来の単結晶を製造する方法としてはCZ法(チョクラ
ルスキー法)が知られており、この方法は結晶成分融液
に浸した種結晶の所定面に単結晶を育成させつつ単結晶
を引き上げる方法である。このような方法による単結晶
の製造装置は、結晶成分融液を満たす石英製るつぼと、
るつぼ内の融液を加熱すべくるつぼの周側部のまわりに
設けられた環状の炭素製ヒータと、このヒータに直流電
流を流す電源とからなる。
[発明が解決しようとする課題] しかしながら、従来の装置においては、ヒータによっ
て加熱された融液に熱対流が生じ、るつぼの周側部を介
して融液に伝達される熱が熱対流によって融液全体に伝
わり融液の温度分布が均一化される傾向にあるが、満足
のいく程度ではない。
本発明の目的は、融液を撹拌することによって融液内
の温度分布を均一化し得る単結晶の製造装置を提供する
ことにある。
[問題点を解決する手段] 本発明によれば、前記目的は、加熱された結晶成分融
液から単結晶を引き上げるに際して、単結晶の引き上げ
軸のまわりに回転する回転磁界と、水平磁界発生手段に
よる水平磁界との合成磁界を融液に印加し、前記合成磁
界による磁束を構成する磁力線の少なくとも一部を前記
引き上げ軸を通ると共に水平方向に伸長させることを特
徴とする単結晶の引き上げ方法、及び結晶成分融液を満
たした石英製るつぼと、融液に水平磁界を印加する一対
の電磁コイルと、前記るつぼ内の融液を加熱すべく前記
るつぼの周側部のまわりに設けられた炭素製ヒータと、
前記ヒータに電流を流す電源とからなり、前記ヒータ
は、前記周側部のまわりにほぼ等間隔で配列されると共
に、前記るつぼの径方向軸のまわりにループを描くルー
プ状のヒータ分割体の複数からなり、前記電源は、前記
ヒータ分割体の夫々に加えられる電流によって生起する
複数の磁束ベルトの合成ベクトルが前記るつぼの長手軸
のまわりに回転するように前記ヒータ分割体の夫々に互
いに位相の異なる交流電流を加える交流電源からなるこ
とを特徴とする単結晶の引き上げ装置によって達成され
る。
[作用] 本発明の方法によれば、加熱された結晶成分融液から
単結晶を引き上げるに際して、単結晶の引き上げ軸のま
わりに回転する回転磁界と、水平磁界発生手段による水
平磁界との合成磁界を融液に印加し、前記合成磁界によ
る磁束を構成する磁力線の少なくとも一部を前記引き上
げ軸を通ると共に水平方向に伸長させることにより融液
を連れ回りさせ、上記の合成磁界により融液をさらに効
果的に撹拌することによって融液全体の温度分布の均一
化を促進することができる。
また、当該磁束は交流電流による誘導磁界によって生
起されるので、融液をうず電流損失による発熱によって
加熱し得、その結果融液の温度分布の均一化をさらに促
進し得る。
本発明の方法による磁束を発生させる回転磁界の回転
速度としては、単結晶の引き上げ軸のまわりに連れ回り
する融液の回転数が1rpm〜8rpmとなるように選択される
のが好ましい。
本発明の装置によれば、ヒータ分割体の夫々に加えら
れる交流電流によって生起する複数の磁束の合成ベクト
ルがるつぼの長手軸のまわりに回転する回転磁界によ
り、るつぼ内の融液を連れ回りさせ、また融液を効果的
に撹拌することによって融液全体の温度分布の均一化を
促進し得、加えてヒータ分割体の夫々に加えられる電流
によって生起する複数の磁束のベクトルの合成ベクトル
が、るつぼの長手軸のまわりに回転するようにヒータ分
割体の夫々に互いに位相の異なる交流電流が加えられる
が故に、るつぼ内の融液をうず電流損失による発熱によ
って加熱し得、その結果融液の温度分布をさらに促進し
得る。
本発明の装置による交流電源としては、互いに隣接し
たヒータ分割体の2つに加えられる交流電流の位相差が
一定の値となるようにヒータ分割体の夫々に交流電流を
加えるように構成されるのが好ましい。これによって、
磁束の回転速度を一定とし得る。
本発明の装置によるヒータの数、並びに交流電流の周
波数及び相数は、合成ベクトルの回転によってるつぼの
長手軸のまわりに連れ回りする融液の回転速度が1rpm〜
8rpmとなるように選択されるのが好ましい。特にヒータ
の数が12個であり、交流電流が商用周波数の三相交流か
らなるのが好ましい。
また、本発明の方法及び装置による交流電流として
は、周波数変換器によって商用周波数の交流電流を適宜
な周波数の交流電流に変換されたものでもよい。これに
よって、融液の回転速度を調節し得る。
[具体例] 以下に添付第1図を参照して本発明の装置の1具体例
について説明する。
不純物を含有するシリコン多結晶融液1は、支持部2
に載せられた365cm径の石英ガラス製るつぼ3に満たさ
れており、また融液1はるつぼ3の周側部のまわりに設
けられた環状の炭素製ヒータ4によって加熱される。さ
らに、融液1の対流を磁気粘性力によって阻止するため
に水平方向磁界を融液1に印加する一対の電磁コイル5
が環状の保温手段6を介してヒータ4の周側部のまわり
に設けられている。単結晶7は引き上げ手段8によっ
て、下端面が融液1の液面9に浸されて固液界面10が形
成されるように吊り下げられており、また、固液界面10
における融液1の結晶化に伴なって固液界面10が液面9
に接するように引き上げ手段8によって引き上げられ
る。
さらに、単結晶7は、融液1の対流の一部を構成する
液面9における径方向内側への融液1の流れを阻止すべ
く、引き上げ手段8によって融液1に対して相対的に所
定の回転方向11に回され、一方るつぼ3は、融液1中の
酸素濃度を増加させるために、るつぼ駆動手段12によっ
て融液1に対して相対的に所定の回転方向13に回され
る。
るつぼ3は、融液1の結晶化に伴なって融液1が減少
したときに、るつぼ駆動手段12によってヒータ4と液面
9との相対位置関係が一定となるように上昇させられ
る。
単結晶の7の引き上げに伴なって融液1が減少したと
きに、融液1の不純物濃度が高くなるのを阻止するため
に、細粒状の無添加シリコン多結晶14を落下口15を介し
て液面9に落下させる供給手段16がるつぼ3の上方に設
けられている。供給手段16は、単位時間当たりの単結晶
の結晶化量をFp(g/sec)、不純物の融液1対する不縮
物偏析係数Keとして、液面9に供給されるシリコン多結
晶14の単位時間当たりの供給量Fa(g/sec)を Fa=Fp・(1−Ke) となるように制御する図示しない制御手段によって制御
される。
また落下口15は、単結晶7の外周面とるつぼ3の内周
面との間の中央よりるつぼ3側において液面9にシリコ
ン多結晶14を落下させるように構成されている。ここ
に、供給手段16は、透明石英ガラス製のV型溝で構成さ
れた落下口15と、シリコン多結晶14の夫々の粒子を落下
口15に一列に整列させるべく落下口15を振動させための
図示しない線型型電歪式電磁振動手段とからなる。ま
た、制御手段は、落下口15を単位時間当たりに通過する
シリコン多結晶14の粒子の数と夫々の粒径とを光電的に
測定し、単位時間当たりに落下口15を通過するシリコン
多結晶14の粒子の供給量を算定する図示しない手段と、
単位時間当たりの単結晶の引き上げ長さから単位時間当
たりに結晶化する結晶化量を算定する図示しない手段
と、算定された供給量が算定された結晶化量に等しくな
るように電磁振動手段とからなる。
第2図に詳細に示されるように、ヒータ4は、円筒状
に配列された炭素製のヒータ分割体21〜32からなる。ヒ
ータ分割体21〜32の夫々は、長さ340mm,幅50mm,板厚18m
mであり、かつその中央に下端から上方に延びる幅4mm,
長さ280mmのスリット41が形成され、その横断面は円弧
をなしている。また、ヒータ分割体21〜32の夫々の下端
部42が外周部が適宜に削られており、内周部は、外周部
で削られた厚み分を補って通電時に下端部42において局
部加熱が起らないように板厚が十分に確保されている。
さらに、下端部42の夫々には炭素製の端子43が夫々設け
られており、端子43を介してヒータ分割体21〜32の夫々
に加熱用の電流が加えられる。そして、分割体21〜32の
夫々は、図示しない電気的絶縁部材によって、隣接する
分割体21〜32どうしの間隔がほぼスリット41の幅と同じ
になるように機械的に結合されている。
次に、ヒータ分割体21〜32の夫々に加えられる加熱用
の交流電流について第3図によって以下に説明する。
第3図においては、ヒータ分割体21〜32を一巻きコイ
ルとして図示する。
60Hz三相交流電源44から3つの位相U,V,Wを有する交
流電流(電圧52V,電流1450V)がヒータ分割体21〜32の
夫々の端子43に加えられ、さらに詳しくは、位相Uの交
流電流はヒータ分割体21,24,27,30に、位相Vの交流電
流はヒータ分割体22,25,28,31に、位相Wの交流電流は
ヒータ分割体23,26,29,32に加えられる。したがってヒ
ータ分割体21〜32の夫々において生起される磁束の合成
ベクトルは、ヒータ4の長手軸のまわりに回転速度900r
pmで回転する。ここに、合成ベクトルの回転方向はるつ
ぼ3の回転方向と同一である。磁束の合成ベクトルはる
つぼ3内の融液1に加えられ、融液1は磁束の合成ベク
トルの回転に連れて3rpmで回転する。その結果、融液1
が撹拌されることによって融液1全体の温度分布の均一
化が促進される。融液1の回転が下がるのは主としてる
つぼ3と融液1との粘性抵抗によるものである。
また、磁束の合成ベクトルが回転する時に、磁束の合
成ベクトルと融液1との回転速度との差によって融液1
内にうず電流が発生し、うず電流損失による発熱によっ
て融液1が加熱される。その結果、融液1全体の温度分
布の均一化がさらに促進される。
もちろん、ヒータ分割体21〜32の夫々には適宜な電流
が流れるので、ヒータ分割体21〜32の夫々において抵抗
発熱し、この熱によってるつぼ3内の融液1が加熱され
るのは言うまでもない。
[実施例] 三相交流ヒータによる本発明の装置の1具体例と直流
ヒータによる従来の装置とを用いて、下記の条件によっ
て各々直径100mmの単結晶を50mm引き上げ(方位100)る
と、粒状多結晶シリコンの融解時間は、粒状多結晶シリ
コンの投入速度が0.5g/secの場合、従来の装置では4
秒、本発明の装置では瞬時であり、当該投入速度が2g/s
ecの場合、従来装置では20秒、本発明の装置では6秒で
ある。これによれば、交流ヒータによる本発明の装置を
用いた方が、粒状多結晶シリコンの融解時間が短かい。
ここに、るつぼ内の融液の回転速度は、本発明の装置で
は+6rpm(融液の上から見て時計回りをプラスとする、
以下同様)、従来の装置では2rpmである。
但し、上記以外の条件は、本発明の装置及び従来の装
置の双方について同一であり、例えば粒状多結晶シリコ
ンの粒径は400〜1000ミクロン、粒状多結晶シリコンの
投入時間は1分間、るつぼ径は12インチ、多結晶シリコ
ンの初期充填量は15Kg、るつぼ回転速度は+5rpm、単結
晶回転速度は、−15rpmである。
次に、三相交流ヒータによる本発明の装置の一具体例
と直流ヒータによる従来の装置とを用いて、下記の条件
によって、各々直径130mmの単結晶を引き上げ(方位10
0)ると、第4図に示される結果を得る。第4図におい
て、横軸の結晶成長率とは、従来の装置による単結晶の
直胴部の長さを1とした時の単結晶の直胴部の長さの比
であり、縦軸の不純物濃度比とは、直胴部の上端におけ
る不純物濃度を1とした時の直胴部の各位置における不
純物濃度の比である。第4図によれば、本発明の装置に
よる単結晶の方が、不純濃度を1に保持し得る単結晶の
直胴部の長さを従来の装置による単結晶に比べて約2.3
倍とし得る。
但し、上記以外の条件は、本発明の装置及び従来の装
置の双方について同一であり、例えばるつぼの直径は16
インチ、るつぼの高さは265mm、多結晶シリコンの初期
充填量は20Kg、ドーパントはP、電気抵抗値の制御目標
値は6Ωcmである。さらに、本実施例において、単結晶
引き上げはアルゴン減圧雰囲気下において行なわれ、単
結晶の引き上げ速度は、1.2mm/minから直胴部終了時に
おける0.9mm/minまで直線的に変化するように制御され
る。さらに、単結晶の引き上げ時において、粒状多結晶
シリコンの供給量は、るつぼ内の融液の不純物濃度が一
定となるように制御されている。
[本発明の効果] 本発明によれば、加熱された結晶成分融液から単結晶
を引き上げるに際して、単結晶の引き上げ軸のまわりに
回転する回転磁界と、水平磁界発生手段による水平磁界
との合成磁界を融液に印加し、前記合成磁界による磁束
を構成する磁力線の少なくとも一部を前記引き上げ軸を
通ると共に水平方向に伸長させることにより融液を効果
的に撹拌し、融液全体の温度分布の均一化を促進し得
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の装置の一具体例の縦断面図、第2図
は、本発明の装置によるヒータの斜視図、第3図は本発
明の装置による交流電源とヒータ分割体との接続図、第
4図は本発明による効果を説明するグラフである。 1……結晶成分融液、3……るつぼ、4……ヒータ、5
……電磁コイル、7……単結晶、21〜32……ヒータ分割
体。

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】加熱された結晶成分融液から単結晶を引き
    上げるに際して、単結晶の引き上げ軸のまわりに回転す
    る回転磁界と、水平磁界発生手段による水平磁界との合
    成磁界を融液に印加し、前記合成磁界による磁束を構成
    する磁力線の少なくとも一部を前記引き上げ軸を通ると
    共に水平方向に伸長させることを特徴とする単結晶の引
    き上げ方法。
  2. 【請求項2】前記回転磁界は、交流電流による誘導磁界
    であることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の
    方法。
  3. 【請求項3】前記回転磁界の回転速度は、前記磁界の回
    転によって前記引き上げ軸のまわりに連れ回りする前記
    融液の回転速度が1rpm〜8rpmとなるように、選択される
    ことを特徴とする特許請求の範囲第2項に記載の方法。
  4. 【請求項4】結晶成分融液を満たした石英製るつぼと、
    融液に水平磁界を印加する一対の電磁コイルと、前記る
    つぼ内の融液を加熱すべく前記るつぼの周側部のまわり
    に設けられた炭素製ヒータと、前記ヒータに電流を流す
    電源とからなり、前記ヒータは前記周側部のまわりにほ
    ぼ等間隔で配列されると共に、前記るつぼの径方向軸の
    まわりにループを描く、ループ状のヒータ分割体の複数
    からなり、前記電源は、前記ヒータ分割体の夫々に加え
    られる電流によって生起する複数の磁束の合成ベクトル
    が前記るつぼの長手軸のまわりに回転するように前記ヒ
    ータ分割体の夫々に互いに位相の異なる交流電流を加え
    る交流電源からなることを特徴とする単結晶の引き上げ
    装置。
  5. 【請求項5】前記交流電源は、互いに隣接した前記ヒー
    タ分割体の2つに加えられる交流電流の位相差が一定の
    値となるように前記ヒータ分割体の夫々に交流電流を加
    えるべく構成されていることを特徴とする特許請求の範
    囲第4項に記載の装置。
  6. 【請求項6】前記合成ベクトルの回転によって前記長手
    軸のまわりに連れ回りする前記融液の回転速度が1rpm〜
    8rpmとなるように、前記ヒータ分割体の数、並びに前記
    交流電流の周波数及び相数が選択されることを特徴とす
    る特許請求の範囲第5項に記載の装置。
  7. 【請求項7】前記ヒータ分割体の数が12個であり、前記
    交流電流が商用周波数の三相交流からなることを特徴と
    する特許請求の範囲第6項に記載の装置。
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