JP2582037B2 - 鋳造方法 - Google Patents

鋳造方法

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JP2582037B2
JP2582037B2 JP5298435A JP29843593A JP2582037B2 JP 2582037 B2 JP2582037 B2 JP 2582037B2 JP 5298435 A JP5298435 A JP 5298435A JP 29843593 A JP29843593 A JP 29843593A JP 2582037 B2 JP2582037 B2 JP 2582037B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は鋳造方法、特に、固相と
液相とが共存する半溶融鋳造材料を用いて鋳造を行う方
法に関する。
【0002】このような半溶融鋳造材料を用いる理由
は、合金設計および形状に関する自由度が大きいことに
ある。
【0003】
【従来の技術】従来、この種鋳造方法としては、自立す
る短柱状固体鋳造材料を誘導加熱して固相と液相とが共
存する半溶融鋳造材料を調製し、次いで半溶融鋳造材料
を把持して移送することにより鋳型の装入口内に設置
し、その後半溶融鋳造材料を、装入口に連なるゲートを
通過させて成形用キャビティ内に加圧充填する、といっ
た方法が知られている(特公平2−7748号公報参
照)。
【0004】この場合、生産性向上の観点から、半溶融
鋳造材料を自立状態に維持し、またその鋳造材料を直接
把持して移送するようにしているので、半溶融鋳造材料
における固相の体積分率Vfは75〜90%と高く設定
され、また固体鋳造材料外周面にはデンドライト層が存
在する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記の
ように固相の体積分率Vfが高く、またデンドライト層
が存在する場合には、半溶融鋳造材料をキャビティ内に
加圧充填する際、液相が優先的にゲートを通過するた
め、装入口内に残留する半溶融鋳造材料において、その
固相の体積分率Vfは、デンドライト層の破砕片が混じ
ることもあって当初よりも一層高くなる。その結果、装
入口のゲート入口近傍において、半溶融鋳造材料の詰ま
りが発生して鋳物に欠けを生じたり、また液相の優先的
なゲート通過に伴いキャビティ内における半溶融鋳造材
料の充填圧力が変動するため鋳物に偏析を生じ易い、と
いった問題がある。
【0006】本発明は前記に鑑み、固体鋳造材料の材質
を特定すると共にその固体鋳造材料におけるデンドライ
ト層の厚さtと半溶融鋳造材料における固相の体積分率
Vfとの関係を特定することによって、半溶融鋳造材料
の自立および直接把持による移送を可能にし、またその
成形性を良好にした前記鋳造方法を提供することを目的
とする。
【0007】また本発明は、半溶融鋳造材料における固
相の体積分率Vfを従来法に比べて大幅に低下し得るよ
うにして、その成形性を向上させ、また半溶融鋳造材料
の倒れを回避すると共にその把持による移送を可能にし
た前記鋳造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】第1発明に係る鋳造方法
は、自立する短柱状固体鋳造材料を加熱して、固相と液
相とが共存する半溶融鋳造材料を調製し、次いで前記半
溶融鋳造材料を把持して移送することにより鋳型の装入
口内に設置し、その後前記半溶融鋳造材料を、前記装入
口に連なるゲートを通過させて成形用キャビティ内に加
圧充填するに当り、前記固体鋳造材料はAl合金より構
成され、その固体鋳造材料外周面のデンドライト層の厚
さtをX軸に、また前記半溶融鋳造材料における固相の
体積分率VfをY軸にそれぞれとったとき、前記デンド
ライト層の厚さtが0mm≦t≦10mmにおいて、前記固
相の体積分率Vfを(−3.125t+60)%≦Vf
≦(−4.16t+95)%に設定することを特徴とす
る。
【0009】また第2発明に係る鋳造方法は、短柱状固
体鋳造材料を筒状ホルダ内に収めて、それら固体鋳造材
料および筒状ホルダを自立させる工程と、その筒状ホル
ダ内の前記固体鋳造材料を加熱して、固相と液相とが共
存する半溶融鋳造材料を調製する工程と、前記筒状ホル
ダを把持して前記半溶融鋳造材料を鋳型の装入口近傍に
移送する工程と、前記筒状ホルダ内から半溶融鋳造材料
を離脱させて前記装入口内に設置する工程と、前記半溶
融鋳造材料を、前記装入口に連なるゲートを通過させて
成形用キャビティ内に加圧充填する工程とを用いること
を特徴とする。
【0010】
【作用】第1発明において、デンドライト層の厚さtが
比較的厚い場合には固相の体積分率Vfは低く設定さ
れ、一方、デンドライト層の厚さtが比較的薄いか、ま
たはそのデンドライト層が無い場合には固相の体積分率
Vfは高く設定される。
【0011】したがって、前者においては、デンドライ
ト層の保形能により、また後者においては固相量の増加
に伴う保形能により半溶融鋳造材料の自立および直接把
持による移送が可能である。一方、成形性は、前者の場
合、固相の体積分率Vfが低く、また後者の場合、デン
ドライト層が薄いか、或は無いので、良好となる。
【0012】デンドライト層の厚さt=0とは、固体鋳
造材料に切削加工を施してデンドライト層を除去した場
合に該当する。厚さtがt>10mmでは、デンドライト
層を破砕するために過大な加圧力を必要とするので、設
備コスト上好ましくない。
【0013】また、固相の体積分率VfがVf<(−
3.125t+60)%では半溶融鋳造材料における液
相の溶け出し量が多くなるためその自立を維持すること
ができず、一方、Vf>(−4.16t+95)%では
成形性が悪化して装入口内で半溶融鋳造材料の詰まりが
発生する。
【0014】第2発明において、固体鋳造材料を筒状ホ
ルダ内で加熱すると、半溶融鋳造材料における固相の体
積分率Vfを下げても、その液相の外部への漏出を防止
することができ、またその半溶融鋳造材料の倒れを阻止
することができる。これは、歩留りの向上および液相の
漏出による加熱装置の損傷防止をもたらす。
【0015】また固相の体積分率Vfの低い半溶融鋳造
材料でも筒状ホルダを把持して、安定、且つ確実に移送
することが可能である。
【0016】さらに、加熱および移送中において、筒状
ホルダによる保温効果が得られるので、半溶融鋳造材料
調製のための加熱時間の短縮および半溶融鋳造材料の均
熱度の向上が図られる。
【0017】その上、高温下での成形が可能であるか
ら、半溶融鋳造材料を連続的にゲートを通過させ、また
キャビティ内における半溶融鋳造材料の充填圧力を安定
させることが可能である等、半溶融鋳造材料の成形性を
向上させて欠け、偏析等のない高品質な鋳物を得ること
ができる。この高温下での成形は、鋳造材料の材質選定
幅を拡張する、といった効果をもたらす。
【0018】
【実施例】
〔実施例I〕図1は加圧鋳造装置の概略を示す。その加
圧鋳造装置の鋳型1は、水平な固定金型2と、それと対
向して上下方向に移動する可動金型3とよりなり、両型
2,3により断面円形の成形用キャビティ4およびその
一端に連通するゲート5が形成され、そのゲート5は固
定金型2の半溶融鋳造材料用装入口6に連通する。固定
金型2に、装入口6に連通するスリーブ7が設けられ、
そのスリーブ7に装入口6に挿脱される加圧プランジャ
8が摺動自在に嵌合される。
【0019】表1は、固体鋳造材料を構成するAl合金
の組成を示す。
【0020】
【表1】
【0021】固体鋳造材料は、Al合金組成の溶湯を用
い、電磁攪拌連続鋳造法の適用下で製造された長尺材よ
り切出されたもので短柱状をなす。
【0022】表2は、各種固体鋳造材料A〜Dに関する
外周面のデンドライト層の厚さt、直径および長さを示
す。デンドライト層の厚さ変化は、その鋳造条件を変え
ることによってなされ、またデンドライト層よりも内側
の部分は等軸晶化されている。したがって、半溶融鋳造
材料における固相は球状をなす。
【0023】
【表2】
【0024】デンドライト層の厚さtがt=0である固
体鋳造材料Dは、固体鋳造材料Cの外周面に切削加工を
施してデンドライト層を除去したものである。
【0025】図2に示すように、加熱テストを行うべ
く、誘導加熱装置における昇降自在の支持台9上に固体
鋳造材料Aを立設し、その支持台9を上昇させて固体鋳
造材料Aを加熱コイル10内に設置した。次いで、固体
鋳造材料Aを周波数 1kHz、出力 37kWの条件
で加熱して半溶融鋳造材料A(固体鋳造材料と同一符号
を用いる。これは以下同じ)を調製し、その際、加熱温
度を568〜600℃の範囲で変化させて固相の体積分
率Vfを種々変化させた。また加熱時間は7分間(一
定)とし、半溶融鋳造材料Aの温度分布を±3℃の範囲
内に収めた。
【0026】そして、各加熱温度毎に、半溶融鋳造材料
Aが自立状態を維持し得るか否かを観察し、また固相の
体積分率Vfを求めた。同様の加熱テストを、固体鋳造
材料B〜Dについても行った。
【0027】次に、成形テストを行うべく、前記同様の
固体鋳造材料A〜Dを用い、また前記同様の加熱処理を
行い、次いで、図3に示すように支持台9を下降させて
半溶融鋳造材料A〜Dを加熱コイル10外に出し、自立
状態を維持しているものを把持具11を介して、図1に
示すように、鋳型1の装入口6に装入し、加圧プランジ
ャ8の移動速度 0.07m/sec 、鋳型温度 250
℃、半溶融鋳造材料A〜Dのゲート通過速度 2m/se
c の条件で、半溶融鋳造材料A〜Dを加圧しつつゲート
5を通過させてキャビティ4内に高速層流逐次充填し
た。その後、加圧プランジャ8をストローク終端に保持
することによってキャビティ4内に充填された半溶融鋳
造材料A〜Dに加圧力を付与し、その加圧下で半溶融鋳
造材料A〜Dを凝固させて鋳物を得た。
【0028】表3は、前記加熱テストおよび成形テスト
結果を示す。表3において、「自立性」の欄は加熱テス
ト結果に該当し、「◎」印は半溶融鋳造材料において液
相の溶け出しが無く、その半溶融鋳造材料が自立状態を
確実に維持している場合を意味する。また「○」印は半
溶融鋳造材料において液相の溶け出しはあるが、その半
溶融鋳造材料が自立可能である場合を意味する。さらに
「×」印は半溶融鋳造材料において液相の溶け出し量が
多く、その半溶融鋳造材料が自立不可能であることを意
味する。
【0029】「成形性」の欄は、成形テスト結果に該当
し、「○」印は鋳造欠陥のない鋳物を得ることができる
場合を意味する。また「×」印は装入口6のゲート5入
口近傍において半溶融材料の詰まりが発生した場合を意
味する。さらに「−」印は、半溶融鋳造材料において液
相の溶け出し量が多いために把持具11による移送を行
うことができず、したがって成形作業を行うことができ
なかったことを意味する。
【0030】
【表3】
【0031】表3において、「自立性」の欄が「◎」印
または「○」印であり、且つ「成形性」の欄が「○」印
である場合が本実施例の範囲である。
【0032】前記同様の加熱テストおよび成形テスト
を、さらに他の固体鋳造材料を用いて行い、デンドライ
ト層の厚さtが0mm≦t≦10mmにおいて、半溶融鋳造
材料の自立性が前記「◎」印または「○」印の状態とな
り、また成形性が「○」印の状態となる固相の体積分率
Vfを求めたところ、図4の結果を得た。
【0033】即ち、図4において、固体鋳造材料外周面
のデンドライト層の厚さtをX軸に、また半溶融鋳造材
料における固相の体積分率VfをY軸にそれぞれとった
とき、デンドライト層の厚さtが0mm≦t≦10mmにお
いて、固相の体積分率Vfは(−3.125t+60)
%≦Vf≦(−4.16t+95)%に設定される。な
お、固相の体積分率VfがVf≧(−2.9t+75)
%において液相の溶け出しが無く、一方、Vf<(−
2.9t+75)%において、液相の溶け出しが発生す
る。図4には表3の各例を座標で示してある。
【0034】図4から明らかなように、デンドライト層
の厚さtが比較的厚い場合には固相の体積分率Vfは低
く設定され、一方、デンドライト層の厚さtが比較的薄
いか、またはそのデンドライト層が無い場合には固相の
体積分率Vfは高く設定される。
【0035】したがって、前者においては、デンドライ
ト層の保形能により、また後者においては固相量の増加
に伴う保形能により半溶融鋳造材料の自立および直接把
持による移送が可能である。一方、成形性は、前者の場
合、固相の体積分率Vfが低く、また後者の場合、デン
ドライト層が薄いか、或は無いので、良好となる。
【0036】〔実施例II〕図5は加圧鋳造装置の概略を
示す。その加圧鋳造装置の鋳型1は、垂直な固定金型2
と、それと対向して左右方向に移動する可動金型3とよ
りなり、両型2,3により断面円形の成形用キャビティ
4およびその下端に連通するゲート5が形成され、その
ゲート5は固定金型2の水平な半溶融鋳造材料用装入口
6に連通する。固定金型2に、装入口6に連通するスリ
ーブ7が設けられ、そのスリーブ7に、装入口6に挿脱
される加圧プランジャ8が摺動自在に嵌合される。また
可動金型3に装入口6に臨むロッド挿通孔12が形成さ
れ、そのロッド挿通孔12に押出しロッド13が摺動自
在に嵌合される。
【0037】実施例Iと同様の固体鋳造材料A〜D(表
2参照)と、内径 81mm、外径86mm、長さ 105
mmで、且つ両端面を開放された半溶融鋳造材料用筒状ホ
ルダ14を用意した。筒状ホルダ14は、半溶融鋳造材
料の付着を防止すべく窒化ホウ素(BN)より構成され
ている。
【0038】図6に示すように、加熱テストを行うべ
く、固体鋳造材料Aを筒状ホルダ14内に収めてそれら
A,14を、誘導加熱装置における昇降自在の支持台9
上に、固体鋳造材料A周りに等しい間隙が形成されるよ
うに立設し、その支持台9を上昇させて固体鋳造材料A
および筒状ホルダ14を加熱コイル10内に設置した。
支持台9は、保温性の良いアルミナより構成されてい
る。次いで、固体鋳造材料Aを周波数 1kHz、出力
37kWの条件で加熱して半溶融鋳造材料Aを調製
し、その際、加熱温度を568〜600℃の範囲で変化
させて、固相の体積分率Vfを種々変化させた。また加
熱時間は7分間(一定)とし、半溶融鋳造材料Aの温度
分布を±3℃の範囲内に収めた。
【0039】そして、各加熱温度毎に、半溶融鋳造材料
Aにおける固相の体積分率Vfを求め、また室温まで空
冷後固体鋳造材料Aと筒状ホルダ14との接触状態を目
視観察した。固体鋳造材料Aの中には、図7に示すよう
に液相の溶け出し、または変形を生じて筒状ホルダ14
に接触しているものと、接触していないものとがあっ
た。同様の加熱テストを、固体鋳造材料B〜Dについて
も行った。
【0040】次に、成形テストを行うべく、前記同様の
固体鋳造材料A〜Dを用い、また前記同様の加熱処理を
行い、次いで、図8に示すように支持台9を下降させて
半溶融鋳造材料A〜Dおよび筒状ホルダ14を加熱コイ
ル10外に出し、自立状態を維持している筒状ホルダ1
4を把持具11により把持して90°回転させると共に
移送して、図9に示すように、筒状ホルダ14および半
溶融鋳造材料A〜Dの一部を鋳型1の装入口6口縁部に
装入した。この場合、固相の体積分率Vfの低い半溶融
鋳造材料でも筒状ホルダ14を把持して、安定、且つ確
実に移送することが可能である。
【0041】図10に示すように、押出しロッド13を
前進させ、半溶融鋳造材料A〜Dを装入口6内に押出し
て筒状ホルダ14から離脱させ、次いで筒状ホルダ14
を両金型2,3間から移動させて両金型2,3を閉じ
た。
【0042】その後、図11に示すように加圧プランジ
ャ8の移動速度 0.5m/sec 、鋳型温度 200
℃、半溶融鋳造材料のゲート通過速度 2m/sec の条
件で、半溶融鋳造材料A〜Dを加圧しつつゲート5を通
過させてキャビティ4内に高速層流逐次充填した。その
後、加圧プランジャ8をストローク終端に保持すること
によってキャビティ4内に充填された半溶融鋳造材料A
〜Dに加圧力を付与し、その加圧下で半溶融鋳造材料A
〜Dを凝固させて鋳物を得た。
【0043】この場合、半溶融鋳造材料A〜Dにおける
固相の体積分率Vfを低下させた高温下での成形が可能
であるから、半溶融鋳造材料A〜Dを連続的にゲート5
を通過させ、またキャビティ4内における半溶融鋳造材
料A〜Dの充填圧力を安定させることが可能である等、
半溶融鋳造材料A〜Dの成形性を向上させて欠け、偏析
等のない高品質な鋳物を得ることができる。
【0044】表4は、前記加熱テストおよび成形テスト
結果を示す。
【0045】表4において、「自立性」の欄は加熱テス
ト結果に該当し、「○」印は半溶融鋳造材料において液
相の溶け出しまたは変形が無く、その半溶融鋳造材料が
筒状ホルダ14に接触していない場合を意味する。また
「×」印は半溶融鋳造材料において液相の溶け出しまた
は変形が生じて、その半溶融鋳造材料が、図7に示すよ
うに筒状ホルダ14に接触している場合を意味する。
【0046】「成形性」の欄は成形テスト結果に該当
し、「○」印は鋳造欠陥のない鋳物を得ることができる
場合を意味する。また「×」印は装入口6のゲート5入
口近傍において半溶融材料の詰まりが発生した場合を意
味する。さらに「−」印は、半溶融鋳造材料において液
相の溶け出し量が多いために把持具11による移送を行
うことができないか、または移送を行えたとしても押出
しロッド13が半溶融鋳造材料内に刺さってしまい筒状
ホルダ14からの離脱を行うことができず、したがって
成形作業を行うことができなかったことを意味する。
【0047】
【表4】
【0048】表4において、「自立性」の欄が「×」印
であり、且つ「成形性」の欄が「○」印である場合が本
実施例の範囲である。なお、表3と4とを比較すると、
例えば半溶融鋳造材料Aにおいて、加熱温度および固相
の体積分率Vfが同一であるにもかかわらず、「自立
性」に関するデータが異なるが、これは筒状ホルダ14
を使用しない場合と、筒状ホルダ14を使用してその保
温効果を受けた場合との差に起因する。
【0049】前記同様の加熱テストおよび成形テスト
を、さらに他の固体鋳造材料を用いて行い、デンドライ
ト層の厚さtが0mm≦t≦10mmにおいて、半溶融鋳造
材料の自立性が前記「×」印の状態となり、また成形性
が「○」印の状態となる固相の体積分率Vfを求めたと
ころ、図12の結果を得た。
【0050】即ち、図12において、固体鋳造材料外周
面のデンドライト層の厚さtをX軸に、また半溶融鋳造
材料における固相の体積分率VfをY軸にそれぞれとっ
たとき、デンドライト層の厚さtが0mm≦t≦10mmに
おいて、固相の体積分率Vfは25%≦Vf≦(−4.
16t+95)%に設定される。図12には表4の各例
を座標で示してある。
【0051】図12において、デンドライト層の厚さt
が0mm≦t≦10mmのとき、固相の体積分率Vfが(−
2.9t+75)%<Vf≦(−4.16t+95)%
の範囲に存する半溶融鋳造材料は液相の溶け出しまたは
変形を生じているものの、筒状ホルダ14を使用しなく
ても自立可能であるが、倒れを生じることもあるので、
筒状ホルダ14を使用した方が歩留りが向上する。
【0052】また、固相の体積分率Vfが25%≦Vf
≦(−2.9t+75)%の範囲に存する半溶融鋳造材
料は筒状ホルダ14を使用しなければ倒れを生じる。
【0053】図4と図12とを比較すると明らかなよう
に、筒状ホルダ14を用いると、それを用いない場合に
比べて固相の体積分率Vfの低い範囲、即ちVf<(−
3.125t+60)%において、成形可能領域を拡張
することができる。
【0054】また半溶融鋳造材料における固相の体積分
率Vfを下げても、筒状ホルダ14により液相の外部へ
の漏出を防止することができると共にその半溶融鋳造材
料の倒れを阻止することができる。これは、液相の漏出
による加熱装置の損傷防止および歩留りの向上をもたら
す。
【0055】次に、固体鋳造材料Cを用い、筒状ホルダ
14を使用した場合と、使用しなかった場合について固
相の体積分率VfがVf=50%の半溶融鋳造材料Cを
調製するために必要な加熱時間および入熱量を調べたと
ころ、表5の結果を得た。加熱前の固体鋳造材料Cの温
度は20℃であった。
【0056】
【表5】
【0057】表5から明らかなように、筒状ホルダ14
を使用すると、その筒状ホルダ14による保温効果が得
られるので、筒状ホルダ14を使用しない場合に比べて
半溶融鋳造材料調製のための加熱時間を短縮し、また入
熱量を低減することができ、その上、半溶融鋳造材料の
均熱度を向上させることができる。
【0058】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、固体鋳造
材料としてAl合金よりなるものを用いると共にその固
体鋳造材料におけるデンドライト層の厚さtと半溶融鋳
造材料における固相の体積分率Vfとの関係を前記のよ
うに特定することによって、鋳造品質の良好な鋳物を歩
留り良く量産することができる。
【0059】請求項2記載の発明によれば、請求項1記
載の発明の効果に加え、固相の体積分率Vfの低い範囲
において成形可能領域を拡張することができる、といっ
た効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】加圧鋳造装置の一例を示す縦断側面図である。
【図2】固体鋳造材料の加熱方式の一例を示す要部縦断
側面図である。
【図3】半溶融鋳造材料の移送開始時の一例を示す要部
縦断側面図である。
【図4】一例におけるデンドライト層の厚さと固相の体
積分率との関係を示すグラフである。
【図5】加圧鋳造装置の他例を示す縦断側面図である。
【図6】固体鋳造材料の加熱方式の他例を示す要部縦断
側面図である。
【図7】加熱冷却後の固体鋳造材料と筒状ホルダとの関
係を示す要部縦断側面図である。
【図8】半溶融鋳造材料の移送開始時の他例を示す要部
縦断側面図である。
【図9】半溶融鋳造材料の移送終了時を示す縦断側面図
である。
【図10】半溶融鋳造材料を鋳型の装入口に設置した状
態を示す縦断側面図である。
【図11】半溶融鋳造材料をキャビティ内に充填する状
態を示す縦断側面図である。
【図12】他例におけるデンドライト層の厚さと固相の
体積分率との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 鋳型 4 キャビティ 5 ゲート 6 装入口 8 加圧プランジャ 11 把持具 13 押出しロッド 14 筒状ホルダ A〜D 固体鋳造材料、半溶融鋳造材料
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 21/02 C22C 21/02

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 自立する短柱状固体鋳造材料(A〜D)
    を加熱して、固相と液相とが共存する半溶融鋳造材料
    (A〜D)を調製し、次いで前記半溶融鋳造材料(A〜
    D)を把持して移送することにより鋳型(1)の装入口
    (6)内に設置し、その後前記半溶融鋳造材料(A〜
    D)を、前記装入口(6)に連なるゲート(5)を通過
    させて成形用キャビティ(4)内に加圧充填するに当
    り、前記固体鋳造材料(A〜D)はAl合金より構成さ
    れ、その固体鋳造材料(A〜D)外周面のデンドライト
    層の厚さtをX軸に、また前記半溶融鋳造材料(A〜
    D)における固相の体積分率VfをY軸にそれぞれとっ
    たとき、前記デンドライト層の厚さtが0mm≦t≦10
    mmにおいて、前記固相の体積分率Vfを(−3.125
    t+60)%≦Vf≦(−4.16t+95)%に設定
    することを特徴とする鋳造方法。
  2. 【請求項2】 短柱状固体鋳造材料(A〜D)を筒状ホ
    ルダ(14)内に収めて、それら固体鋳造材料(A〜
    D)および筒状ホルダ(14)を自立させる工程と、そ
    の筒状ホルダ(14)内の前記固体鋳造材料(A〜D)
    を加熱して、固相と液相とが共存する半溶融鋳造材料
    (A〜D)を調製する工程と、前記筒状ホルダ(14)
    を把持して前記半溶融鋳造材料(A〜D)を鋳型(1)
    の装入口(6)近傍に移送する工程と、前記筒状ホルダ
    (14)内から半溶融鋳造材料(A〜D)を離脱させて
    前記装入口(6)内に設置する工程と、前記半溶融鋳造
    材料(A〜D)を、前記装入口(6)に連なるゲート
    (5)を通過させて成形用キャビティ(4)内に加圧充
    填する工程とを用いることを特徴とする鋳造方法。
  3. 【請求項3】 前記固体鋳造材料(A〜D)はAl合金
    より構成され、その固体鋳造材料(A〜D)外周面のデ
    ンドライト層の厚さtをX軸に、また前記半溶融鋳造材
    料(A〜D)における固相の体積分率VfをY軸にそれ
    ぞれとったとき、前記デンドライト層の厚さtが0mm≦
    t≦10mmにおいて、前記固相の体積分率Vfを25%
    ≦Vf≦(−4.16t+95)%に設定する、請求項
    2記載の鋳造方法。
  4. 【請求項4】 前記固体鋳造材料(A〜D)はAl合金
    より構成され、その固体鋳造材料(A〜D)外周面のデ
    ンドライト層の厚さtをX軸に、また前記半溶融鋳造材
    料(A〜D)における固相の体積分率VfをY軸にそれ
    ぞれとったとき、前記デンドライト層の厚さtが0mm≦
    t≦10mmにおいて、前記固相の体積分率Vfを25%
    ≦Vf≦(−2.9t+75)%に設定する、請求項2
    記載の鋳造方法。
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