JP2576960Y2 - 多気筒エンジン用クランク軸 - Google Patents
多気筒エンジン用クランク軸Info
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- JP2576960Y2 JP2576960Y2 JP1990038706U JP3870690U JP2576960Y2 JP 2576960 Y2 JP2576960 Y2 JP 2576960Y2 JP 1990038706 U JP1990038706 U JP 1990038706U JP 3870690 U JP3870690 U JP 3870690U JP 2576960 Y2 JP2576960 Y2 JP 2576960Y2
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- Japan
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- crankpin
- quenching
- deformation
- center
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Description
【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、多気筒エンジン用クランク軸に関するもの
である。
である。
（従来の技術） 例えば、自動車用のエンジンにおいて、製造コストの
低減を図るために、ダクタイル鋳鉄製のクランクシャフ
トが提唱されている。
低減を図るために、ダクタイル鋳鉄製のクランクシャフ
トが提唱されている。
従来のこの種クランクシャフトの一例を、便宜的に本
考案の一実施例を示す第１図を援用して説明すると、図
中符号10はダクタイル鋳鉄製のクランクシャフトを総括
的に示し、同クランクシャフトは、クランクピン部12
と、ジャーナル部14と、上記ピン部12及びジャーナル部
14を結合するウエブ部16とからなり、一部のウエブ部16
にはバランスウエイト18が一体的に形成されている。上
記ピン部12には、略軸線方向に延在した重量軽減用の鋳
抜き孔20が形成され、同鋳抜き孔20にはオイル通路を穿
設するための橋絡部22が設けられている。また、上記ジ
ャーナル部14の端部からウエブ部16にわたって、同じく
重量軽減用の鋳抜き孔24が形成されている。
考案の一実施例を示す第１図を援用して説明すると、図
中符号10はダクタイル鋳鉄製のクランクシャフトを総括
的に示し、同クランクシャフトは、クランクピン部12
と、ジャーナル部14と、上記ピン部12及びジャーナル部
14を結合するウエブ部16とからなり、一部のウエブ部16
にはバランスウエイト18が一体的に形成されている。上
記ピン部12には、略軸線方向に延在した重量軽減用の鋳
抜き孔20が形成され、同鋳抜き孔20にはオイル通路を穿
設するための橋絡部22が設けられている。また、上記ジ
ャーナル部14の端部からウエブ部16にわたって、同じく
重量軽減用の鋳抜き孔24が形成されている。
上記ピン部12及びジャーナル部14の外周摺動面の耐摩
耗性を向上すると共に疲労強度を改善するために、ピン
部12の軸部12a及び同軸部に隣接するフィレット部12bに
夫々高周波焼入れが施され、同様にジャーナル部14の軸
部14a及び同軸部に隣接するフィレット部14bにも夫夫高
周波焼入れが施されている。通常の場合、上記軸部12a
及び14aには、夫々３〜5mm程度の深さの焼入れが全周に
わたり実質的に均等に行なわれ、また上記フィレット部
12b及び14bには、夫々２〜3.5mm程度の深さの焼入れが
全周にわたり実質的に均等に施される。
耗性を向上すると共に疲労強度を改善するために、ピン
部12の軸部12a及び同軸部に隣接するフィレット部12bに
夫々高周波焼入れが施され、同様にジャーナル部14の軸
部14a及び同軸部に隣接するフィレット部14bにも夫夫高
周波焼入れが施されている。通常の場合、上記軸部12a
及び14aには、夫々３〜5mm程度の深さの焼入れが全周に
わたり実質的に均等に行なわれ、また上記フィレット部
12b及び14bには、夫々２〜3.5mm程度の深さの焼入れが
全周にわたり実質的に均等に施される。
上記ピン部及びジャーナル部14の外周面に高周波焼入
れを行なうことによって、焼入れ層内に高硬度のマルテ
ンサイト組織が析出して耐摩耗性の向上が達成されると
共に、析出するマルテンサイト組織の体積膨張が周囲の
他の組織により抑制又は拘束されることによって圧縮応
力が発生し疲労強度の改善が達成されるのである。
れを行なうことによって、焼入れ層内に高硬度のマルテ
ンサイト組織が析出して耐摩耗性の向上が達成されると
共に、析出するマルテンサイト組織の体積膨張が周囲の
他の組織により抑制又は拘束されることによって圧縮応
力が発生し疲労強度の改善が達成されるのである。
さて、ピン部12の軸部12a及びフィレット部12bに、夫
々全周にわたり略均等な深さの高周波焼入れを施した場
合、ピン部12の両側のジャーナル部14の中心線Ｐ−Ｐと
Ｑ−Ｑとが、第１図に誇張して点線Ｐ′−Ｐ′及びＱ′
−Ｑ′で示されているように、クランク軸10の中心線Ｏ
−Ｏから遠ざかるにつれて拡開するように傾斜する焼入
れ変形が発生する。
々全周にわたり略均等な深さの高周波焼入れを施した場
合、ピン部12の両側のジャーナル部14の中心線Ｐ−Ｐと
Ｑ−Ｑとが、第１図に誇張して点線Ｐ′−Ｐ′及びＱ′
−Ｑ′で示されているように、クランク軸10の中心線Ｏ
−Ｏから遠ざかるにつれて拡開するように傾斜する焼入
れ変形が発生する。
各ピン部12とその両側のジャーナル部14との間で上記
のような焼入れ変形が発生する理由は、ピン部12のクラ
ンク軸中心線Ｏ−Ｏから遠い部分、即ち鋳抜き孔20の外
方部分は剛性が小さく、従って焼入れ層に発生するマル
テンサイト組織の体積膨張に対する周辺組織の拘束力が
相対的に小さく、上記中心線Ｏ−Ｏに平行な方向への比
較的に大きな伸びが許容されるのに対し、同ピン部12の
クランク軸中心線Ｏ−Ｏに近い部分、即ち鋳抜き孔20の
内方部分は、隣接するウエブ部16の存在のために相対的
に剛性が著しく大きく、従って焼入れ層に発生するマル
テンサイト組織の体積膨張に対する周辺組織の拘束力が
大きいために降伏によりクランク軸中心線Ｏ−Ｏに平行
な方向への伸びが抑制され又は拘束されることに基づく
ものと推認される。この結果、ピン部12のクランク軸中
心線Ｏ−Ｏから遠い外方部分が、同中心線Ｏ−Ｏに近い
内方部分より相対的に大きく伸びることによって、両側
のジャーナル部14の中心線Ａ−ＡとＢ−Ｂとが、中心線
Ｏ−Ｏから遠ざかるに従い拡開するような焼入れ変形が
生起するものと考えられる。
のような焼入れ変形が発生する理由は、ピン部12のクラ
ンク軸中心線Ｏ−Ｏから遠い部分、即ち鋳抜き孔20の外
方部分は剛性が小さく、従って焼入れ層に発生するマル
テンサイト組織の体積膨張に対する周辺組織の拘束力が
相対的に小さく、上記中心線Ｏ−Ｏに平行な方向への比
較的に大きな伸びが許容されるのに対し、同ピン部12の
クランク軸中心線Ｏ−Ｏに近い部分、即ち鋳抜き孔20の
内方部分は、隣接するウエブ部16の存在のために相対的
に剛性が著しく大きく、従って焼入れ層に発生するマル
テンサイト組織の体積膨張に対する周辺組織の拘束力が
大きいために降伏によりクランク軸中心線Ｏ−Ｏに平行
な方向への伸びが抑制され又は拘束されることに基づく
ものと推認される。この結果、ピン部12のクランク軸中
心線Ｏ−Ｏから遠い外方部分が、同中心線Ｏ−Ｏに近い
内方部分より相対的に大きく伸びることによって、両側
のジャーナル部14の中心線Ａ−ＡとＢ−Ｂとが、中心線
Ｏ−Ｏから遠ざかるに従い拡開するような焼入れ変形が
生起するものと考えられる。
ところで、第４図（Ａ）に概念的に示した４気筒エン
ジン用のクランク軸10における第１乃至第４クランクピ
ン部12に、夫々実質的に同一の深さの高周波焼入れを施
して同クランク軸の焼入れ変形態様を調べたところ、次
のとおりであった。先づ、焼入れ前のクランク軸10にお
いて、第２及び第３クランクピン部12間のジャーナル14
即ち中央ジャーナル又は第３ジャーナルの中心Ｎは、ク
ランク軸中心線Ｏ−Ｏ上にあり、勿論同中心線Ｏ−Ｏは
実質的に一直線をなしている。次に、クランク軸10の中
央部分のクランクピン即ち第２及び第３クランクピン部
12のみに高周波焼入れを施したところ、各クランクピン
部12の上述した焼入れ変形によって、クランク軸中心線
が、第２図に示されているように、折れ線の中心線O1−
ｒ−Ｎ−ｓ−O1となり、中心Ｎに対しクランク軸両端が
Y1だけ変位した。（なお、中心Ｎはクランク軸10の長さ
方向の中央にはなく、中心Ｎから図中左側即ちファン側
のクランク軸の長さと、右側即ちフライホイール側の長
さとが僅かに異るので、図示のように焼入れ変形後の中
心線O1−O1は、焼入れ前の中心線Ｏ−Ｏに対し多少傾く
こととなり、また上記偏位量Y1は、クランク軸両端の偏
位量の略平均値となる。）同様にして、クランク軸10の
中央部分から遠い第１及び第４クランクピン部12のみに
高周波焼入れを施した場合、各クランクピン部の上述し
た焼入れ変形によって、クランク軸中心線が、第３図に
示されているように、折れ線O2−ｔ−Ｎ−ｕ−O2とな
り、中心Ｎに対しクランク軸両端が上記Y1とは反対方向
にY2だけ変位した。
ジン用のクランク軸10における第１乃至第４クランクピ
ン部12に、夫々実質的に同一の深さの高周波焼入れを施
して同クランク軸の焼入れ変形態様を調べたところ、次
のとおりであった。先づ、焼入れ前のクランク軸10にお
いて、第２及び第３クランクピン部12間のジャーナル14
即ち中央ジャーナル又は第３ジャーナルの中心Ｎは、ク
ランク軸中心線Ｏ−Ｏ上にあり、勿論同中心線Ｏ−Ｏは
実質的に一直線をなしている。次に、クランク軸10の中
央部分のクランクピン即ち第２及び第３クランクピン部
12のみに高周波焼入れを施したところ、各クランクピン
部12の上述した焼入れ変形によって、クランク軸中心線
が、第２図に示されているように、折れ線の中心線O1−
ｒ−Ｎ−ｓ−O1となり、中心Ｎに対しクランク軸両端が
Y1だけ変位した。（なお、中心Ｎはクランク軸10の長さ
方向の中央にはなく、中心Ｎから図中左側即ちファン側
のクランク軸の長さと、右側即ちフライホイール側の長
さとが僅かに異るので、図示のように焼入れ変形後の中
心線O1−O1は、焼入れ前の中心線Ｏ−Ｏに対し多少傾く
こととなり、また上記偏位量Y1は、クランク軸両端の偏
位量の略平均値となる。）同様にして、クランク軸10の
中央部分から遠い第１及び第４クランクピン部12のみに
高周波焼入れを施した場合、各クランクピン部の上述し
た焼入れ変形によって、クランク軸中心線が、第３図に
示されているように、折れ線O2−ｔ−Ｎ−ｕ−O2とな
り、中心Ｎに対しクランク軸両端が上記Y1とは反対方向
にY2だけ変位した。
すべてのクランクピン部12に高周波焼入れを行った結
果は、上記第２図及び第３図に示した変形態様をスーパ
ーポーズしたものとなり、これを線図的にまとめたもの
が第４図（Ｂ）及び（Ｃ）に示されている。第４図
（Ｂ）の中心線Ｏ−Ｏの上側に実線の折れ線O2−Ｎ−O2
で第１及び第４クランクピン部12に焼入れを施したとき
のクランク軸中心線の変形態様が示され、また中心線Ｏ
−Ｏの下側に実線の折れ線O1−Ｎ−O1で中央部分の第２
及び第３クランクピン部12に焼入れを施したときのクラ
ンク軸中心線の変形態様が示されている。後者の変形量
Y1と前者の変形量Y2とは変形方向が反対で、Y1はY2の略
２倍である。次に、第４図（Ｃ）には、すべてクランク
ピン部に焼入れを施したときのクランク軸中心線の最終
の変形態様が折れ線O3−Ｎ−O3で示されており、この最
終のクランク軸中心線を示す折れ線O3−Ｎ−O3は、第４
図（Ｂ）の中心線変形状態を示す折れ線O2−Ｎ−O2とO1
−Ｎ−O1とをスーパーポーズしたものである。この図に
示されているように、複数のクランクピン部を有する多
気筒エンジンの各クランクピン部に実質的に同一深さの
高周波焼入れを施した場合、クランク軸中央部分のクラ
ンクピン部の変形が、それより遠いクランク軸端部側の
クランクピン部の変形より大きく影響して、最終的に大
きなクランク軸変形が発生することが確認された。
果は、上記第２図及び第３図に示した変形態様をスーパ
ーポーズしたものとなり、これを線図的にまとめたもの
が第４図（Ｂ）及び（Ｃ）に示されている。第４図
（Ｂ）の中心線Ｏ−Ｏの上側に実線の折れ線O2−Ｎ−O2
で第１及び第４クランクピン部12に焼入れを施したとき
のクランク軸中心線の変形態様が示され、また中心線Ｏ
−Ｏの下側に実線の折れ線O1−Ｎ−O1で中央部分の第２
及び第３クランクピン部12に焼入れを施したときのクラ
ンク軸中心線の変形態様が示されている。後者の変形量
Y1と前者の変形量Y2とは変形方向が反対で、Y1はY2の略
２倍である。次に、第４図（Ｃ）には、すべてクランク
ピン部に焼入れを施したときのクランク軸中心線の最終
の変形態様が折れ線O3−Ｎ−O3で示されており、この最
終のクランク軸中心線を示す折れ線O3−Ｎ−O3は、第４
図（Ｂ）の中心線変形状態を示す折れ線O2−Ｎ−O2とO1
−Ｎ−O1とをスーパーポーズしたものである。この図に
示されているように、複数のクランクピン部を有する多
気筒エンジンの各クランクピン部に実質的に同一深さの
高周波焼入れを施した場合、クランク軸中央部分のクラ
ンクピン部の変形が、それより遠いクランク軸端部側の
クランクピン部の変形より大きく影響して、最終的に大
きなクランク軸変形が発生することが確認された。
勿論、上記第２図ないし第４図は上述したクランク軸
の焼入れ変形態様を、説明の便宜のために実際より誇張
して示したものであるが、この焼入れ変形量が、焼入れ
後に行なわれる研磨作業の加工代を超えると、もはや使
用不能の不良品となる。そして従来は、上記ピン部の高
周波焼入れによって、かなりの割合で不良品が発生し、
結局クランク軸の製造コストの増大を招いていたのであ
る。
の焼入れ変形態様を、説明の便宜のために実際より誇張
して示したものであるが、この焼入れ変形量が、焼入れ
後に行なわれる研磨作業の加工代を超えると、もはや使
用不能の不良品となる。そして従来は、上記ピン部の高
周波焼入れによって、かなりの割合で不良品が発生し、
結局クランク軸の製造コストの増大を招いていたのであ
る。
なお、通常ジャーナル部14の軸部14a及びフィレット
部14bにも、全周にわたり実質的に均等な深さの高周波
焼入れが夫々施されるが、何れもクランク軸中心線Ｏ−
Ｏの周りに剛性の不均衡が殆どないため、焼入れによっ
て析出するマルテンサイト組織の体積膨張に対する拘束
性が全周にわたり実質的に均等であり、従ってクランク
軸の焼入れ変形に格別の悪影響を与えない。
部14bにも、全周にわたり実質的に均等な深さの高周波
焼入れが夫々施されるが、何れもクランク軸中心線Ｏ−
Ｏの周りに剛性の不均衡が殆どないため、焼入れによっ
て析出するマルテンサイト組織の体積膨張に対する拘束
性が全周にわたり実質的に均等であり、従ってクランク
軸の焼入れ変形に格別の悪影響を与えない。
（考案が解決しようとする課題） 本考案は、上記事情に鑑み創案されたもので、クラン
ク軸のピン部外周面に高周波焼入れを施すことによって
生起する上述した焼入れ変形を効果的に低減することに
より不良品の発生を少くし、ひいてはクランク軸の製造
コストを低減することを目的とするものである。
ク軸のピン部外周面に高周波焼入れを施すことによって
生起する上述した焼入れ変形を効果的に低減することに
より不良品の発生を少くし、ひいてはクランク軸の製造
コストを低減することを目的とするものである。
（課題を解決するための手段） 上記目的を達成するため、本考案は、３個以上のクラ
ンクピン部を具え、同クランクピン部の外周面に夫々高
周波焼入れを施したものにおいて、クランク軸の長手方
向中央部分に位置するクランクピン部の焼入れ深さを、
同ピン部より長手方向端部側に位置するクランクピン部
の焼入れ深さより小さくしたことを特徴とする多気筒エ
ンジン用クランク軸を提案するものである。
ンクピン部を具え、同クランクピン部の外周面に夫々高
周波焼入れを施したものにおいて、クランク軸の長手方
向中央部分に位置するクランクピン部の焼入れ深さを、
同ピン部より長手方向端部側に位置するクランクピン部
の焼入れ深さより小さくしたことを特徴とする多気筒エ
ンジン用クランク軸を提案するものである。
（作用） 本考案によれば、クランク軸長手方向中央部分のクラ
ンクピン部の焼入れ深さを、同ピン部より長手方向端部
側に位置するクランクピン部より浅くしたことによっ
て、上記中央部分のクランクピン部の焼入れ変形それ自
体を小さく抑え、クランク軸全体としての焼入れ変形量
を従来より低減し得たものである。
ンクピン部の焼入れ深さを、同ピン部より長手方向端部
側に位置するクランクピン部より浅くしたことによっ
て、上記中央部分のクランクピン部の焼入れ変形それ自
体を小さく抑え、クランク軸全体としての焼入れ変形量
を従来より低減し得たものである。
（実施例） 以下本考案の実施例を第１図について具体的に説明す
る。（なお従前の多気筒エンジン用クランク軸に関連し
て既に説明した事項については、再述を省略する。）本
考案によれば、第１図に示されているピン部12の端部12
aの焼入れ深さH1及びフィレット部12bの焼入れ深さH
2を、クランク軸10の中央部分におけるクランクピン部
では小さく、同ピン部より軸端側のクランクピン部では
相対的に大きくするものである。第４図（Ａ）に示した
４気筒エンジン用のダクタイル鋳鉄製クランク軸10の場
合、第２及び第３クランクピン部の焼入れ深さを、耐摩
耗性及び疲労強度に関し劣化が少い範囲で第１及び第４
クランクピン部の焼入れ深さより十分小さくし、一例と
して前者のピン部の焼入れ深さを軸部12aにおいて3mm、
フィレット部12bでは2mmとし、後者のピン部の焼入れ深
さを軸部12aにおいて5mm、フィレット部12bでは3mmとす
る。
る。（なお従前の多気筒エンジン用クランク軸に関連し
て既に説明した事項については、再述を省略する。）本
考案によれば、第１図に示されているピン部12の端部12
aの焼入れ深さH1及びフィレット部12bの焼入れ深さH
2を、クランク軸10の中央部分におけるクランクピン部
では小さく、同ピン部より軸端側のクランクピン部では
相対的に大きくするものである。第４図（Ａ）に示した
４気筒エンジン用のダクタイル鋳鉄製クランク軸10の場
合、第２及び第３クランクピン部の焼入れ深さを、耐摩
耗性及び疲労強度に関し劣化が少い範囲で第１及び第４
クランクピン部の焼入れ深さより十分小さくし、一例と
して前者のピン部の焼入れ深さを軸部12aにおいて3mm、
フィレット部12bでは2mmとし、後者のピン部の焼入れ深
さを軸部12aにおいて5mm、フィレット部12bでは3mmとす
る。
上記第２及び第３クランクピン部の焼入れ深さを小さ
くすることによって、焼入れ層内のマルテンサイト組織
の析出量が減少し、マルテンサイト組織の体積膨張に対
する周辺組織の抑制又は拘束性が当然減少するので、前
述した焼入れ変形発生のメカニズムから容易に理解され
るように、第１及び第４クランクピン部の焼入れ変形量
が著しく減少し、第４図（Ｂ）に点線の折れ線O4−Ｎ−
O4で示したように軸端部変形量がY1′となる。従って、
従来通りの深い焼入れを行った第１及び第４クランクピ
ン部の図中実線の折れ線O2−Ｎ−O2で示した焼入れ変形
と、上記第２及び第３クランクピン部の点線O4−Ｎ−O4
で示した焼入れ変形をスーパポーズすることによって、
すべてのクランクピン部に高周波焼入れを行ったクラン
ク軸10の最終的な中心線の形状が得られ、第４図（Ｃ）
に点線の折れ線O4−Ｎ−O4で示すようになる。上記クラ
ンク軸中心線を示した点線の折れ線O4−Ｎ−O4と、従来
のクランク軸中心線を示した実線の折れ線O3−Ｎ−O3と
の対比から明白なように、本考案によればクランク軸10
の焼入れ変形量が従来より大巾に低減されるので、研磨
不可能な不良品の発生が防止され、この結果、クランク
軸の製造コストが効果的に低減されることになる。
くすることによって、焼入れ層内のマルテンサイト組織
の析出量が減少し、マルテンサイト組織の体積膨張に対
する周辺組織の抑制又は拘束性が当然減少するので、前
述した焼入れ変形発生のメカニズムから容易に理解され
るように、第１及び第４クランクピン部の焼入れ変形量
が著しく減少し、第４図（Ｂ）に点線の折れ線O4−Ｎ−
O4で示したように軸端部変形量がY1′となる。従って、
従来通りの深い焼入れを行った第１及び第４クランクピ
ン部の図中実線の折れ線O2−Ｎ−O2で示した焼入れ変形
と、上記第２及び第３クランクピン部の点線O4−Ｎ−O4
で示した焼入れ変形をスーパポーズすることによって、
すべてのクランクピン部に高周波焼入れを行ったクラン
ク軸10の最終的な中心線の形状が得られ、第４図（Ｃ）
に点線の折れ線O4−Ｎ−O4で示すようになる。上記クラ
ンク軸中心線を示した点線の折れ線O4−Ｎ−O4と、従来
のクランク軸中心線を示した実線の折れ線O3−Ｎ−O3と
の対比から明白なように、本考案によればクランク軸10
の焼入れ変形量が従来より大巾に低減されるので、研磨
不可能な不良品の発生が防止され、この結果、クランク
軸の製造コストが効果的に低減されることになる。
なお、上述したクランクピン部に高周波焼入れを施す
ことによって生ずる焼入れ変形は、第１図に示したよう
なクランクピン部12に鋳抜き孔を具えたクランク軸にお
いて特に著しいが、クランクピン部に鋳抜き孔を具備し
ない鋳鉄製クランク軸は勿論、鋼製の鋳造クランク軸に
おいても、焼入れにより体積膨張を伴なうマルテンサイ
ト組織が生成して大なり小なり同様の焼入れ変形を起す
ので、これらにも本考案を有利に適用することができ
る。更に本考案は、上記実施例に例示した４気筒エンジ
ンのみならず、３気筒以上の多気筒エンジン用のクラン
ク軸に広く適用することができる。
ことによって生ずる焼入れ変形は、第１図に示したよう
なクランクピン部12に鋳抜き孔を具えたクランク軸にお
いて特に著しいが、クランクピン部に鋳抜き孔を具備し
ない鋳鉄製クランク軸は勿論、鋼製の鋳造クランク軸に
おいても、焼入れにより体積膨張を伴なうマルテンサイ
ト組織が生成して大なり小なり同様の焼入れ変形を起す
ので、これらにも本考案を有利に適用することができ
る。更に本考案は、上記実施例に例示した４気筒エンジ
ンのみならず、３気筒以上の多気筒エンジン用のクラン
ク軸に広く適用することができる。
（考案の効果） 叙上のように、本考案に係る多気筒エンジン用クラン
ク軸は、３個以上のクランクピン部を具え、同クランク
ピン部の外周面に夫々高周波焼入れを施したものにおい
て、クランク軸の長手方向中央部分に位置するクランク
ピン部の焼入れ深さを、同ピン部より長手方向端部側に
位置するクランクピン部の焼入れ深さより小さくしたこ
とを特徴とし、クランクピン部に高周波焼入れを施すこ
とに基因して発生するクランク軸全体としての焼入れ変
形を低減することによって、不良品の発生を効果的に防
止し、ひいてはクランク軸の製造コストを低減し得る実
用的効果を奏するものである。
ク軸は、３個以上のクランクピン部を具え、同クランク
ピン部の外周面に夫々高周波焼入れを施したものにおい
て、クランク軸の長手方向中央部分に位置するクランク
ピン部の焼入れ深さを、同ピン部より長手方向端部側に
位置するクランクピン部の焼入れ深さより小さくしたこ
とを特徴とし、クランクピン部に高周波焼入れを施すこ
とに基因して発生するクランク軸全体としての焼入れ変
形を低減することによって、不良品の発生を効果的に防
止し、ひいてはクランク軸の製造コストを低減し得る実
用的効果を奏するものである。
第１図は本考案の一実施例を示す要部側断面図、第２図
は従来の４気筒用クランク軸の第２及び第３クランクピ
ン部に高周波焼入れを施した場合のクランク軸の変形態
様を示した概略側面図、第３図は従来の４気筒用クラン
ク軸の第１及び第４クランクピン部に高周波焼入れを施
した場合のクランク軸の変形態様を示した概略側面図、
第４図（Ａ）は焼入れ前の４気筒用クランク軸の概略
図、第４図（Ｂ）は同クランク軸の第１及び第４クラン
クピン部と第２及び第３クランクピン部に夫々焼入れを
施した場合の変形態様を示した線図、第４図（Ｃ）は同
クランク軸のすべてのクランクピン部に焼入れを施した
場合の最終変形態様を示した線図である。 10……クランク軸、12……クランクピン部、14……ジャ
ーナル部。
は従来の４気筒用クランク軸の第２及び第３クランクピ
ン部に高周波焼入れを施した場合のクランク軸の変形態
様を示した概略側面図、第３図は従来の４気筒用クラン
ク軸の第１及び第４クランクピン部に高周波焼入れを施
した場合のクランク軸の変形態様を示した概略側面図、
第４図（Ａ）は焼入れ前の４気筒用クランク軸の概略
図、第４図（Ｂ）は同クランク軸の第１及び第４クラン
クピン部と第２及び第３クランクピン部に夫々焼入れを
施した場合の変形態様を示した線図、第４図（Ｃ）は同
クランク軸のすべてのクランクピン部に焼入れを施した
場合の最終変形態様を示した線図である。 10……クランク軸、12……クランクピン部、14……ジャ
ーナル部。
Claims (1)
- 【請求項１】３個以上のクランクピン部を具え、同クラ
ンクピン部の外周面に夫々高周波焼入れを施したものに
おいて、クランク軸の長手方向中央部分に位置するクラ
ンクピン部の焼入れ深さを、同ピン部より長手方向端部
側に位置するクランクピン部の焼入れ深さより小さくし
たことを特徴とする多気筒エンジン用クランク軸
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP1990038706U JP2576960Y2 (ja) | 1990-04-11 | 1990-04-11 | 多気筒エンジン用クランク軸 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP1990038706U JP2576960Y2 (ja) | 1990-04-11 | 1990-04-11 | 多気筒エンジン用クランク軸 |
Publications (2)
| Publication Number | Publication Date |
|---|---|
| JPH03130424U JPH03130424U (ja) | 1991-12-27 |
| JP2576960Y2 true JP2576960Y2 (ja) | 1998-07-23 |
Family
ID=31546957
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
|---|---|---|---|
| JP1990038706U Expired - Lifetime JP2576960Y2 (ja) | 1990-04-11 | 1990-04-11 | 多気筒エンジン用クランク軸 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
| JP (1) | JP2576960Y2 (ja) |
Cited By (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2001234244A (ja) * | 2000-02-28 | 2001-08-28 | Toshiba Corp | ディーゼルエンジン用摺動部材 |
Family Cites Families (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JPS5969516A (ja) * | 1982-10-12 | 1984-04-19 | Fuji Denshi Kogyo Kk | クランクシヤフト |
| JPS63203226A (ja) * | 1987-02-19 | 1988-08-23 | Toyota Motor Corp | 高強度クランクシヤフトの製造方法 |
-
1990
- 1990-04-11 JP JP1990038706U patent/JP2576960Y2/ja not_active Expired - Lifetime
Cited By (1)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2001234244A (ja) * | 2000-02-28 | 2001-08-28 | Toshiba Corp | ディーゼルエンジン用摺動部材 |
Also Published As
| Publication number | Publication date |
|---|---|
| JPH03130424U (ja) | 1991-12-27 |
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