JP2576719Y2 - 電磁コイル付被膜物理蒸着装置 - Google Patents

電磁コイル付被膜物理蒸着装置

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JP2576719Y2
JP2576719Y2 JP1992004641U JP464192U JP2576719Y2 JP 2576719 Y2 JP2576719 Y2 JP 2576719Y2 JP 1992004641 U JP1992004641 U JP 1992004641U JP 464192 U JP464192 U JP 464192U JP 2576719 Y2 JP2576719 Y2 JP 2576719Y2
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護 木幡
邦夫 澁木
義之 佐藤
秀樹 中森
泰 熊谷
和徳 山口
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Nanotec Corp
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Description

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本考案は、PVD装置(物理蒸着
装置)として用いることができ、特にイオンプレーティ
ング装置において、金属の蒸発とイオン化を個別に制御
することができる電磁コイル付被膜物理蒸着装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、ハイス、超硬合金、サーメット、
セラミック焼結体等の基材に被膜を形成させるイオンプ
レーティング装置としては、電子加熱を行うために、或
は低電圧高電流のアーク放電型の電子ビームを集束させ
るために、電磁コイルを用いた装置が知られており、そ
の代表的な装置として、米国特許第4555611号
及び米国特許第419175号には、図3に示すよう
に、反応容器1の外周に電磁コイル2を備えた被覆処理
装置が、特開平2−239558号公報には、プラズ
マ室内に電子サイクロトロン共鳴条件を満たす磁界をか
ける電磁コイルを設けたプラズマCVD装置が、特開
平1−205519号公報には、電子ビームが被蒸着物
等の外乱により、電子ビームの照射位置がシフトしたと
きに、照射位置を修正するための電磁コイルを設けた真
空蒸着装置が示されている。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】しかしながら、上記
米国特許公報に記載された装置では、低電圧大電流のア
ーク放電型電子ビーム5による金属の蒸発とイオン化を
個別に制御することが困難であるため、この電子ビーム
を基板のイオン衝撃洗浄(イオンボンバード)に利用す
るためには、反応容器1内に放電電極5及び坩堝4のほ
かに補助電極を設ける必要があり、この場合、電磁コイ
ル2が反応容器1内につくる磁場(a及びb)は一様磁
界にしかならなかった。
【0004】また上記の装置は、マイクロ波(周波数
2.45GHz )によって発生させたプラズマに875ガ
ウスの磁界密度をかけ、電子をサイクロン共鳴させ、か
つこれを基板に引き込むための装置であり、電子を収束
するためのものではない。また上記の装置は、電子ビ
ームの照射位置のシフトを修正することはできるが、電
子ビームを収束させることはできない。
【0005】本発明は、上記課題を解決するためになさ
れたものであって、反応容器内のプラズマ、電子、イオ
ン等のビームを収束又は発散させることができ、かつこ
れらのビームの進行方向の角度を変更させることができ
る装置であり、このようにビームを調節することによ
り、金属の蒸発とイオン化を個別に制御することができ
る被膜物理蒸着装置の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本考案は、反応容器の底
面の径より大きい径の第1電磁コイルを反応容器の外周
に備え、反応容器の底面の径より小さい径の第2電磁コ
イルを金属蒸発用坩堝及び/又は金属蒸発手段の周囲に
備え、かつ該第1電磁コイル及び該第2電磁コイルの電
流をそれぞれ個別に調整する電流制御手段を備えた電磁
コイル付被膜物理蒸着装置に関する。
【0007】
【実施例】本考案の被膜物理蒸着装置は、図1に示すよ
うに、反応容器1の底面の径より大きい径の第1電磁コ
イル2と、反応容器1の底面の径より小さい径の第2電
磁コイル3を備える。
【0008】本考案に用いる第1電磁コイル2を設ける
位置としては、反応容器1の外周であれば特に制限はな
いが、反応容器1の底面に対し垂直に磁界を発生するよ
うに配設するのが好ましい。
【0009】本考案に用いる第2電磁コイル3を設ける
位置は、金属蒸発用坩堝4及び/又は、電子銃、アーク
放電電極等の金属蒸発手段5の周囲である。ここで周囲
とは、金属蒸発用坩堝4及び/又は金属蒸発手段5の近
傍に磁界を発生させるように金属蒸発用坩堝4及び/又
は金属蒸発手段5を囲む位置である。また第2電磁コイ
ル3を設ける位置としては、反応容器1の底面に対し垂
直に磁界を発生するように配設するのが好ましい。
【0010】本考案の装置に備える第1電磁コイル2及
び第2電磁コイル3の数は、それぞれ少なくとも1つ備
えていればよいが、複数個備えた装置が好ましく、例え
ば図1及び図2に示すように、第1電磁コイル2を2
つ、第2電磁コイル3を金属蒸発手段5と金属蒸発用坩
堝4の周囲に設けた装置を挙げることができる。
【0011】また、本考案に用いる第1電磁コイル2及
び第2電磁コイル3の電流を、それぞれ個別に調整する
電流制御手段6を備える。さらに、コイルの極性を変更
する極性反転手段7及びコイルを反応容器1の底面に対
し垂直に移動させる平行移動手段8を備えるのが好まし
い。
【0012】本考案に用いる電流制御手段6としては、
第1電磁コイル2及び第2電磁コイル3に流れる電流を
制御することができればよく、例えばサイリスタ制御、
トランジスタ制御等を挙げることができ、中でも好まし
いのはサイリスタ制御である。
【0013】本考案に用いる極性反転手段7としては、
例えば、マグネットスイッチやリレー等を用いた反転手
段を挙げることができる。本考案に用いる平行移動手段
8としては、反応容器1の底面に対し垂直に移動させる
ことができれば特に制限はなく、例えば、従来から用い
られている、通称送りネジ(JIS B 0102に記
載のウォームギヤと歯車の組合わせ)と電動モータとを
組合わせたものを挙げることができる。
【0014】本考案の装置においては、例えば図1に示
すように、第1電磁コイル2と金属蒸発用坩堝4の周囲
に設けた第2電磁コイル3との極性を極性反転手段7で
反対にし、電流制御手段6で第1電磁コイル2及び第2
電磁コイル3の電流を調整することにより、反応容器1
内に発生した磁界aにより、蒸発した金属をイオン化す
るのに十分なビーム電流を確保することができ、また、
磁界aと磁界bの相互作用により、金属蒸発用坩堝4近
傍の磁場を弱め、金属蒸発を抑制することができる。
【0015】また、第1電磁コイル2とアーク放電陰極
(金属蒸発手段5)の周囲に設けた第2電磁コイル3と
の極性を極性反転手段7で反対にし、電流制御手段6で
第1電磁コイル2及び第2電磁コイル3の電流を調整す
ることにより、磁界aと磁界cの相互作用により、放電
陰極の放電プラズマ中の陽イオンによる局部スパッタリ
ングを低減することができる。
【0016】さらに、例えば図2に示すように、2つの
第1電磁コイル2の極性を極性反転手段7で反対にする
ことにより、磁界d及び磁界eにより磁場圧が発生し、
該磁場圧によりシート状のプラズマが形成され、基板の
電子加熱又はイオンボンバードの電離密度を制御するこ
とができる。また、電流制御手段6で第1電磁コイル2
及び第2電磁コイル3にそれぞれ設けた電流制御手段6
で電流を調整することにより、或はウォームギヤ付平行
移動手段8でウォームギヤにかみ合った歯車付第1電磁
コイル2を電動モータ(図示しない)で移動させること
により、シート状のプラズマを移動させることができ、
基板の電子加熱又はイオンボンバードを制御することが
できる。
【0017】また、本考案の被膜物理蒸着装置において
は、反応容器1内の雰囲気を冷却する強制冷却手段を備
えたものが好ましく、強制冷却手段を備えることによ
り、基材に被膜を形成させた後、その基材を取り出すま
での時間を短縮することができる。
【0018】本考案に用いる強制冷却手段としては、図
2に示すように、例えば排気管9、熱交換器10、ルー
ツブロア11及び導入管12で構成することができる。
このような強制冷却手段を備えた装置では、窒素ガス、
ヘリウム、アルゴン等の冷却ガスを、ルーツブロア11
で導入管12を通して反応容器1内に導入する。このと
き反応容器1内の圧力が、反応容器1内のガスの熱伝導
によって高まり、かつ冷却ガスにより雰囲気ガスが冷却
されるので基材が効率的に冷却される。
【0019】次に、冷却ガスは、排気管9を通して反応
容器1から排出され、熱交換器10に導かれる。冷却ガ
スは、熱交換器10で冷却された後、再びルーツブロア
11に戻って撹拌され、次いで導入管12を通して反応
容器1内に再導入され、基材を冷却する。強制冷却手段
には、排気管9又は導入管12の中間にダストフィル
タ、弁等を設けてもよい。
【0020】被膜形成試験 従来から用いられている電磁コイル付きイオンプレ
ーティング装置を用い、反応容器(直径(外寸)900
mm、高さ(外寸)800mm)内に、被覆基材として高速
度鋼製ドリル(直径7mm)を上下方向に2段積みに、ま
たJIS K 10相当の超硬合金製スローアウェイチ
ップ(SNGA120408)を上下方向に25段積み
にし、電子加熱工程、Tiイオンボンバード工程、Tiコー
ティング工程及びTiN コーティング工程を表1に示す条
件で行い、窒化チタン被膜を形成させた。
【0021】
【表1】
【0022】その結果、反応容器内の上下における加熱
温度等の違いから、得られた被膜の残留応力及び密着性
にバラツキがあった。また、スローアウェイチップのす
くい面における窒化チタン被膜のスクラッチ強度は5〜
10kgの範囲でバラツキがあり、下記の切削テストにお
ける損傷量の比較でも2倍のバラツキがあった。また、
高速度鋼製ドリルの切削テストにおいてもチップの損傷
量に2倍のバラツキがあった。
【0023】切削テスト 被削材:S48C 切削速度:150m/min 送り:1.5mm/rev 切込み:1.5mm 切削油:なし 切削時間:15分間
【0024】 図2に示す第1電磁コイル及び第2コ
イルをそれぞれ2個備えた本考案の電磁コイル付被膜物
理蒸着装置を用い、前記と同様にして高速度鋼製ドリ
ル及びスローアウェイチップを設置した。電子加熱工
程、Tiイオンボンバード工程、Tiコーティング工程及び
TiN コーティング工程を表2に示す条件で窒化チタン被
膜を形成させる際、反応容器内の上下段において加熱ム
ラが生じないように、2つの第1電磁コイルの極性を変
えてシート状のプラズマを発生させ、かつ2つの第1電
磁コイルの電流値に差をつけながらシート状のプラズマ
を5分間反応容器内で上下させながら被膜を形成させ
た。
【0025】
【表2】
【0026】その結果、得られた窒化チタン被膜は、基
材を設置した同一の段内及び上下段に関わらず、被膜の
残留応力及び密着性にバラツキが無かった。また、スロ
ーアウェイチップのすくい面における窒化チタン被膜の
スクラッチ強度は、同一の段内及び上下段において、1
2〜13kgと殆どバラツキがなく、被膜の密着性も優れ
ていた。さらに、上述の切削テスト条件における同一の
段内及び上下段のチップの損傷は、殆ど差がみられなか
った。
【0027】
【考案の効果】本考案によると以下に示す効果を奏す
る。 (1) 第1電磁コイルと第2電磁コイルから発生する磁場
の極性を反転させ、また平行移動手段で第1電磁コイル
を移動させることができるので、反応容器内に発生する
プラズマ、電子、イオン等のビームを収束又は発散さ
せ、かつこれらのビームの進行方向や進行角度を変更さ
せることができる。
【0028】(2) 上記(1) のようにしてビームを調節す
ることができるので、金属の蒸発とイオン化を個別に制
御することができるとともに、金属のイオン化等のラジ
カル反応を促進することができる。
【0029】(3) 上記(1) のようにしてビームを調節す
ることができるので、反応容器内における基材設置場所
が、中心部、外周部、上段、中段及び下段の別なく、基
材上に形成した被膜の膜質、膜厚及び密着性のバラツキ
を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の装置を例示する概念図である。
【図2】本考案の装置を例示する概念図である。
【図3】従来の装置を例示する概念図である。
【符号の説明】
1・・・・反応容器 2・・・・第1電磁コイル 3・・・・第2電磁コイル 4・・・・金属蒸発用坩堝 5・・・・金属蒸発手段 6・・・・電流制御手段 7・・・・極性反転手段 8・・・・平行移動手段
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 木幡 護 神奈川県川崎市幸区塚越1丁目7番地 東芝タンガロイ株式会社内 (72)考案者 澁木 邦夫 神奈川県川崎市幸区塚越1丁目7番地 東芝タンガロイ株式会社内 (72)考案者 佐藤 義之 神奈川県川崎市幸区塚越1丁目7番地 東芝タンガロイ株式会社内 (72)考案者 中森 秀樹 千葉県柏市根戸282−1 ライオンズマ ンション北柏第2棟605号 (72)考案者 熊谷 泰 埼玉県志木市本町6−26−9 エスポワ ール101 (72)考案者 山口 和徳 東京都板橋区蓮沼町9番地4号 (56)参考文献 特開 昭54−52685(JP,A) 特開 昭61−119669(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C23C 14/00 - 14/58

Claims (3)

    (57)【実用新案登録請求の範囲】
  1. 【請求項1】 反応容器の底面の径より大きい径の第1
    電磁コイルを反応容器の外周に備え、反応容器の底面の
    径より小さい径の第2電磁コイルを金属蒸発用坩堝及び
    /又は金属蒸発手段の周囲に備え、かつ該第1電磁コイ
    ル及び該第2電磁コイルの電流をそれぞれ個別に調整す
    る電流制御手段を備えた電磁コイル付被膜物理蒸着装
    置。
  2. 【請求項2】 第1電磁コイル及び第2電磁コイルをそ
    れぞれ複数個備え、かつ各電磁コイルが反応容器の底面
    に対し垂直に磁界を発生するように配設された、請求項
    1記載の電磁コイル付被膜物理蒸着装置。
  3. 【請求項3】 第1電磁コイル及び第2電磁コイルのそ
    れぞれが個別に、コイルの極性を変更する極性反転手段
    及びコイルを反応容器の底面に対し垂直に移動させる平
    行移動手段を備えた、請求項1又は2記載の電磁コイル
    付被膜物理蒸着装置。
JP1992004641U 1992-02-07 1992-02-07 電磁コイル付被膜物理蒸着装置 Expired - Lifetime JP2576719Y2 (ja)

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JPH0566059U JPH0566059U (ja) 1993-08-31
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPS5452685A (en) * 1978-05-12 1979-04-25 Canon Inc Vacuum ionization plating method
JPS61119669A (ja) * 1984-11-15 1986-06-06 Kowa Eng Kk イオンプレ−テイング装置

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