JP2575767B2 - 木材の材質改良方法 - Google Patents

木材の材質改良方法

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JP2575767B2 JP62333404A JP33340487A JP2575767B2 JP 2575767 B2 JP2575767 B2 JP 2575767B2 JP 62333404 A JP62333404 A JP 62333404A JP 33340487 A JP33340487 A JP 33340487A JP 2575767 B2 JP2575767 B2 JP 2575767B2
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Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は木材の材質を改良する方法に関する。
従来技術とその問題点 従来の木材の材質を改良する方法としては、木材が有
する生長応力などの内部応力を除去するとともに、ヤニ
の浸みだしを防止し、製材品の歩留りを改善するため、
木材を加熱処理することが広く行なわれている。そし
て、加熱処理の方法としては、例えば、木材を高温雰囲
気中で一定時間保持する方法がある。
しかしながら、前述の方法は高い断熱性を有する木材
を、その表面から伝導熱が加熱するものであるので、木
材の内部まで加熱するのに長時間を要するとともに、そ
の表面から内部までの温度傾斜が大きく、均一加熱が困
難であった。このため、内部応力を十分に除去できない
とともに、ヤニの浸みだしを完全に防止できず、製材品
の歩留まりが悪かった。
しかも、木材を、例えば、高温蒸気中に保持したり、
熱風を吹き付けて加熱する方法では、加熱温度のコント
ロールが難しく、木材表面が変質,変色するという問題
点があった。
問題点を解決するための手段 本発明にかかる木材の材質改良方法は、前記問題点を
解決するため、耐熱性防水シートで密封された含水率が
繊維飽和点以下で気乾含水率以上の木材を誘電加熱する
工程からなるものである。
木材はその樹種を問わず、その形状は丸太,角材,板
材であってもよい。
含水率は、木材の内部応力を除去する場合には少なく
とも気乾含水率以上の含水率状態で誘電加熱することが
必要で、好ましくは繊維飽和点よりも若千低い含水率で
あればよい。
そして、少なくとも気乾含水率以上の含水率状態で誘
電加熱する方法としては、木材内部の水分が外部に蒸発
しないように、例えば、木材の表面を耐熱性防水シート
で被覆する方法が考えられる。前記耐熱性防水シートと
しては、例えば、ポリプロピレン、ポリエステルなどか
らなるシートが挙げられる。
なお、木材の含水率が気乾含水率以下のときは、例え
ば、木材を水中に浸漬し、加圧注入、減圧注入または両
者を併用して含水率を高めてもよい。
一方、木材表面におけるヤニの浸みだしを防止する場
合には、40℃以上の温度で所定の時間、誘電加熱すれば
よい。
なお、前記含水率とは、木材の全乾重量に対する木材
に含まれる水の重量をパーセントで示したものをいい、
全乾重量とは、乾燥機内(100℃〜105℃)で恒量になっ
た木材の重量をいう。また、前記繊維飽和点とは、細胞
内腔や空隙に自由水は存在しないが、木材繊維の細胞壁
内に飽和量の結合水が存在するときの含水率をいい、気
乾含水率とは、長期間、大気の温湿度条件下にある木材
が有する一定範囲の含水率をいい、土地,季節によって
変動する。
実施例1 幅20cm、厚さ1.5cmからなる1枚の長尺な板状イゲム
材(ポドカルプス)を適宣カットして長さ90cmの試験片
を得た。そして、注入処理機により、前記試験片に水を
約700mmHgで15分間の減圧注入した後、15気圧で30分間
の加圧注入し、ついで、含水率の均一化を図るため、前
記試験片を水中に常圧で3日間以上浸漬した。そして、
前記試験片を水中から取り出し(含水率80%〜130
%)、その全表面をポリエステルからなる耐熱性防水シ
ート(厚さ0.15mm)で被覆した後、前記試験片の埋設孔
に温度センサーを埋設してシールした。
次に、前記試験片に高周波(13.56MHz、3KW)を照射
し、2時間で内部温度を100℃とした後、内部温度100℃
の状態を4時間維持した。
そして、加熱処理した前記試験片を自然冷却し、前記
耐熱性防水シートを取り除いて人工乾燥を行なった。前
記人工乾燥は乾球温度60℃、乾・湿球温度差8℃の熱気
乾燥で、試験片を含水率12%まで乾燥した。
最後に、前記サンプル幅方向に2分割し、常温で21日
間放置した後、切断面に幅方向におけるたわみ(クルッ
ク)を測定した。
比較例1 前記実施例1の試験片を切り出した同一のイゲム材か
ら実施例1の試験片と同一寸法形状の試験片を切り出
し、温度センサーを取り付ける工程および高周波加熱す
る工程を除き、すべて同一の操作を加えることにより、
切断面の幅方向におけるたわみを測定した。
なお、後述する測定結果は、信頼性を高めるため、そ
れぞれ3枚の試験片の平均値を示す。
測定の結果、高周波加熱を施した実施例1のクルック
は0.4mmであったのに対し、高周波加熱を施さなかった
比較例1のクルックは1.7mmであった。
高周波加熱を施した実施例1のクルックが、高周波加
熱を施さなかった比較例1のクルックの約4分の1以下
であることから、高周波加熱により、木材の内部応力が
減少していることが判明した。
これは、以下に述べる理由によるものと考えられる。
木材は主としてセルロース、ヘミセルロースおよびリ
グニンから構成されている。そして、前記成分中のセル
ロースが細胞壁の骨格を形成するとともに、ヘミセルロ
ースおよびリグニンが骨格の間を埋める構造となってい
る一方、リグニンが主として細胞間層を形成している。
そして、前記リグニンは乾燥状態では約125℃以上でな
いと軟化しないが、高含水率状態では80℃ないし100℃
で軟化する。
このため、誘電加熱により、木材内部に位置する自由
水および結合水の温度が上昇し、水蒸気になると、リグ
ニンが軟化して生長応力を緩和するとともに、前記水蒸
気の蒸気圧で細胞壁や細胞間層に圧力が加わり、軟化し
たリグニンからなる細胞間層の周辺で微細な細胞壁破壊
が起こる。そして、この細胞壁破壊が木材の内部応力を
吸収,緩和し、木材の材質を改良するものと考えられ
る。
なお、前記実施例1および比較例1のそれぞれの試験
片を自動鋸盤で幅方向に2分割したとき、その切削音を
聞き比べたところ、両者の切削音が全く異なっていると
ともに、実施例1の切削抵抗が比較例1の切削抵抗より
も極めて小さかった。このことから、実施例1によれ
ば、木材の切削性も向上していることがわかった。
実施例2 著しく表面にヤニが浸みだしているメラピ材からなる
幅20cm、厚さ3cm、長さ100cmの試験片(含水率15%)に
高周波(13.56MHz、3KW)を照射し、2時間で内部温度
を100℃とした後、内部温度100℃の状態を4時間維持し
た。この後、試験片の表面を研摩し、温度60℃で24時間
放置しておき、ヤニの浸みだしを目視で観察した。
比較例2 前述の実施例2と同一の板材から実施例2の試験片と
ほぼ同一外形寸法を有する試験片を切り出し、高周波加
熱する工程を除き、実施例2と同一の操作を加えた後、
実施例2と同一条件でヤニの浸みだしを目視で観察し
た。
前述の実施例2および比較例2を観察したところ、比
較例2では試験片の表面に新たなヤニの浸みだしを確認
できたのに対し、実施例2では新たなヤニの浸みだしを
確認できなかった。
これは、誘電加熱により、木材内部のヤニが変質した
ためと考えられる。
なお、本実施例では、含水率15%の木材を使用した
が、誘電加熱でヤニの浸みだしを効果的に防止するため
には、木材の含水率が繊維飽和点以下であることが好ま
しい。これは、木材が高含水率である場合は、そこに含
まれるヤニが水分の影響で充分に変質しないと考えられ
るからである。
実施例3 (1)イゲム材からなる幅20cm、厚さ1.5cm、長さ400cm
の繊維飽和点以下の試験片(含水率約20%)の全表面を
ポリエステルからなる耐熱性防水シート(厚さ0.15mm)
で被覆した後、前記試験片の埋設孔に温度センサを埋設
してシールした。
次に、前記試験片に高周波(13.56MHz、3KW)を照射
し、2時間で内部温度を100℃とした後、内部温度100℃
の状態を2時間維持して加熱処理した。ついで、前記耐
熱性防水シートを取り除き、桟積みして48時間の自然乾
燥を行い、含水率9%としたイゲム材を幅33mmに縦わり
してサンプル(イ)を得た。
そして、前記サンプル(イ)の側端面の幅方向におけ
るたわみ(クルック)を測定した。
(2)前述の試験片と同一の材質からなり、同一の外形
寸法を有する繊維飽和点以上の試験片(含水率100%)
を耐熱性防水シートで被覆し、温度センサーを埋設した
後、前述の試験例と同一の条件で高周波を照射し、内部
温度100℃の状態を4時間維持して加熱処理した。つい
で、耐熱性防水シートを取り除き、太陽熱を利用した除
湿乾燥機で乾燥して含水率12%としたイゲム材を幅33mm
に縦わりしてサンプル(ロ)を得、前述と同様にたわみ
を測定した。
比較例3 (1) 実施例3(2)の試験片と同一の材質からな
り、同一外形寸法を有する試験片(含水率100%)を幅3
3mmに縦わりしてサンプル(ハ)とし、何ら操作を加え
ずにたわみを測定した。
(2) 前述と同じ試験片(含水率100%)を太陽熱を
利用した除湿乾燥機で乾燥することにより、含水率12%
としたイゲム材を幅33mmに縦わりしてサンプル(ニ)を
得、そのたわみを測定した。
サンプル(イ)のたわみの平均は4.2mm、サンプル
(ロ)のたわみの平均は5.5mm、サンプル(ハ)のたわ
みの平均は10.0mm、サンプル(ニ)のたわみの平均は1
3.1mmであった。
前述のたわみの平均値から明らかなように、実施例3
にかかるサンプル(イ)(ロ)が、比例3にかかるサン
プル(ハ)(ニ)よりも小さいことから、木材の内部応
力が高周波加熱で除去されていることがわかった。
なお、前述の各サンプルのたわみはサンプル数を30個
ないし40個とした場合の平均値である。
次に、各サンプルをたわみの大きさごとに分け、その
累積個数の全個数に対する割合をグラフ図にそれぞれ示
す。すなわち、グラフ図の横軸はサンプルを区分けする
場合のたわみの大きさを示し、縦軸はたわみの大きさご
とにサンプルを分け、累積したサンプル数の全個数に対
する割合を百分率で示したものである。
一般に、たわみ量が6mmないし9mm以上になると、製材
品として利用できないため、実用上、たわみが6mmない
し9mmまでの累積数が重要である。このため、たわみが6
mmないし9mmである場合を比べると、実施例3にかかる
サンプル(イ),(ロ)が比較例3にかかるサンプル
(ハ),(ニ)を上回っていることから、実施例3の歩
留まりが比較例3の歩留まりよりも良いことが確認でき
た。
また、実施例3にかかるサンプル(イ)がサンプル
(ロ)を上回っていることから、含水率20%のものが含
水率100%のものよりも歩留まりがよいことがわかっ
た。
含水率の高い木材が含水率の低い木材よりも歩留まり
が悪いのは、高周波で加熱処理した木材を所定の含水率
まで仕上げ乾燥する際に、仕上げ乾燥の収縮によって生
じる乾燥応力が大きいためであると考えられる。これに
対し、木材の含水率が低い場合、例えば、繊維飽和点よ
り若千低い場合に歩留まりが良いのは、高周波加熱で木
材の生長応力,乾燥応力が小さくなるとともに、木材を
仕上げ乾燥する際に生じる乾燥応力が、含水率の高い木
材を外部からの加熱で乾燥する場合のように大きくなら
ないためであると考えられる。
発明の効果 以上の説明から明らかなように、本発明によれば、耐
熱性防水シートで密封された木材を誘電加熱するので、
従来例よりも加熱時間が短いとともに、木材中の水分子
が加熱されて水蒸気となっても、外部に蒸発することな
く、細胞間のリグニン等の木材成分を均一に加熱して軟
化させ、木材細胞間、または、木材細胞壁を構成するセ
ルロースミクロフィブリルと、リグニンおよびヘミセル
ロースからなるマトリックスとの間に生じるすべり,変
形あるいは切断により、木材の内部応力を均一に緩和,
除去できる。
特に、本願発明にかかる耐熱性防水シートで密封され
た木材は繊維飽和点以下で気乾含水率以上の低含水率で
あるので、誘電加熱後に木材を使用に供する含水率まで
乾燥する必要が少なく、そのまま使用できるか、あるい
は、乾燥するとしても、簡単に乾燥できる。このため、
誘電加熱によって既存の生長応力および乾燥応力を除去
した後に仕上げ乾燥を行っても、新たに生じる乾燥応力
が極めて小さく、製材品の歩留まりを改善できるという
効果がある。
しかも、誘電加熱によれば、電圧調整だけで加熱温度
をコントロールできるので、加熱温度のコントロールが
容易になり、温度コントロールと困難性による木材の変
色,変質,割れ,くるいがなくなる。
さらに、本願にかかる木材の材質改良方法によれば、
木材内部に含まれているヤニが、木材表面に浸みださな
いので、木材の歩留まりがより一層向上するという効果
がある。
【図面の簡単な説明】
図は実施例3,比較例3の測定結果を示すグラフ図であ
る。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】耐熱性防水シートで密封された含水率が繊
    維飽和点以下で気乾含水率以上の木材を誘電加熱するこ
    とを特徴とする木材の材質改良方法。
  2. 【請求項2】前記誘電加熱が、高周波加熱であることを
    特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の木材の材質改
    良方法。
  3. 【請求項3】前記誘電加熱が、マイクロ波加熱であるこ
    とを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の木材の材
    質改良方法。
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