JP2573905B2

JP2573905B2 - 揺動型ベーンポンプ

Info

Publication number: JP2573905B2
Application number: JP6019198A
Authority: JP
Inventors: 富治渡部; 俶郎近藤; 博巳白井; 暎二松本
Original assignee: KANCHI KOWAN GIJUTSU KENKYU SENTAA; NARASAKI SEISAKUSHO KK
Current assignee: KANCHI KOWAN GIJUTSU KENKYU SENTAA; NARASAKI SEISAKUSHO KK
Priority date: 1994-02-16
Filing date: 1994-02-16
Publication date: 1997-01-22
Anticipated expiration: 2012-01-22
Also published as: JPH07224768A

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、振子式発電装置等に用
いられる揺動型ベーンポンプに関する。

【０００２】

【従来の技術】海岸に打ち寄せる波の力を利用して発電
を行う振子式波力発電装置(以下発電装置と称す)とし
て、例えば図１に示されるものがある。

【０００３】この発電装置は、海岸近くの海底に設置さ
れており、コンクリート製のケーソン(１)と、このケー
ソン(１)の内部の空所(２)内に設置され、波力により揺
動する振子(３)と、この振子(３)に一体的に固定された
軸(６)と、この軸(６)を軸支する軸受(４)と、軸(６)に
連結されたポンプ(５)とから主として成る。

【０００４】ケーソン(１)の空所(２)に進入した入射波
のエネルギーにより、振子(３)が揺動し、この揺動運動
すなわち軸(６)の回転運動は、ポンプ(５)により流体エ
ネルギーに変換され、ポンプ(５)から遠くに設置された
発電機(図示せず)を駆動するようになっている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】振子(３)は、実際には
波周期Ｔ＝４〜８秒、波高Ｈ＝１〜３ｍの波により揺動
されるので、軸(６)の平均回転速度ｎ≒１〜４ｒｐｍと
なる。従って、これにより駆動されるポンプ(５)は極め
て低い回転速度で運転されることになり、下記の条件を
満たすことが要求される。

【０００６】(ａ)必要なパワー(吐出流量)を得るには、
押しのけすなわち排除容積(一回転あたりの流量)が大き
いこと。

【０００７】(ｂ)高速ポンプでは問題にならない程度の
微量の漏れが、微速ポンプでは容積効率の低下を引き起
こす程重大なものとなり、しかもポンプの寸法が大きい
ことにより、漏れ量も大きくなり易いので、極めてシー
ル性に優れていなければならないこと。

【０００８】(ｃ)設置環境(波の荒い海岸)は過酷である
ので、メンテナンスの不要な、高信頼性を有すること。

【０００９】(ｄ)ポンプ製造および設置コストはできる
だけ低いこと。

【００１０】本発明は、このような要求に鑑みてなされ
たもので、作動流体の圧力を利用して、シールブロック
をケースに押しつけることにより、シールブロックの固
定手段を簡素化しうるようにした揺動型ベーンポンプを
提供することを目的としている。

【００１１】また、本発明は、シール性を改善すること
により、作動効率をよくするとともに、シール部材の耐
久性を向上しうるようにした揺動型ベーンポンプを提供
することを目的としている。

【００１２】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の揺動型ベーンポンプは、回転軸に連結され
たロータと、前記ロータを収納するケースと、前記ロー
タから延び、ケース内周面上を摺動する少なくとも２つ
のベーンと、ロータとケースとベーンとから成る空間を
分割する少なくとも２つのシールブロックと、ケースと
ロータとの間の空間に充填された作動流体とを備え、前
記シールブロックは、ロータの回転軸線に対して垂直な
断面がほぼ三角形であり、底部がケース内周面に嵌合さ
れ、頂部がロータ外周面上を摺動し、ケース側が大気圧
に維持され、かつ次の式、

【数２】 (ここで２ｂは断面の底部の幅であり、ｈは断面の高さ
である)を満たすことを特徴としている(請求項１)。

【００１３】また、本発明の揺動型ベーンポンプは、次
のような構成を採用したことを特徴としている。 (1) シールブロックの頂部に、ロータ外周面に接触する
直線状のシール部材が嵌合されていること(請求項２)。 (2) ロータ端面に、リング状のシール部材が嵌合され、
ベーン端面には直線状のシール部材が嵌合され、両シー
ルの交点には両シール部材間をシールする可撓性シール
部材が設けられていること(請求項３)。 (3) ベーンの頂部に、直線状のシール部材が嵌合され、
この直線状シール部材と前記ベーン端面に嵌合されたシ
ール部材との交点には可撓性シール部材が設けられてい
ること(請求項４)。 (4) シール部材は、ロータまたはベーンとシール部材と
の間に嵌合されたスプリングにより外方に押圧されてい
ること(請求項５)。 (5) 可撓性シール部材以外のシール部材が、硬質のもの
であること(請求項６)。

【００１４】

【作用】ロータの回転軸線に対して直角をなすシールブ
ロックの断面形状をほぼ三角形(台形を含む)とするとと
もに、その底部を大気圧に維持し、頂部をロータの外周
面に摺動させ、かつそのシールブロックの底部の幅２ｂ
と高さｈとの関係を、上記のように設定することによ
り、シールブロックの左右の作動流体の圧力の差によ
り、シールブロックはケース側に押圧され、ケースに強
固に固定されるので、シールブロックの固定手段を簡素
化することができる(請求項１)。

【００１５】また、シールブロックの頂部に、ロータ外
周面に接触する直線状のシール部材を設けたり(請求項
２)、ロータ端面にリング状のシール部材を、ベーン端
面に直線状のシール部材を、また両シール部材の交点に
両シール部材間をシールする可撓性シール部材をそれぞ
れ設けたり(請求項３)、ベーンの頂部に直線状のシール
部材を、またこの直線状シール部材とベーン端面に嵌合
されたシール部材との交点に可撓性シール部材を設けた
り(請求項４)、シール部材を、ロータまたはベーンとシ
ール部材との間に嵌合されたスプリングにより外方に押
圧したり(請求項５)、又は可撓性シール部材以外のシー
ル部材を硬質のものとしたり(請求項６)することによ
り、シール性が改善され、作動効率がよくなるととも
に、シール部材の耐久性が向上する。

【００１６】

【実施例】以下、添付図面を参照して、本発明を波力発
電装置に適用した例について説明する。

【００１７】この波力発電装置は、図１に示すようにコ
ンクリート製のケーソン(１)と、このケーソン(１)の内
部の空所(２)内に設置され、波力により揺動する振子
(３)と、この振子(３)に一体的に固定された軸(６)と、
この軸(６)を軸支する軸受(４)と、軸(６)に連結された
揺動型ベーンポンプ(以下単にポンプという)(５)とから
主として成る。

【００１８】ケーソン(１)の空所(２)に進入した入射波
のエネルギーにより、振子(３)が揺動し、この揺動運動
すなわち軸(６)の回転運動は、ポンプ(５)により流体エ
ネルギーに変換され、ポンプ(５)から遠くに設置された
発電機(図示せず)を駆動するようになっている。

【００１９】次に図２〜図４を参照する。この図には振
子(３)が固定された軸(６)と、これに連結されたポンプ
(５)の縦断面図が示されている。軸(６)は、一端と中間
部にて軸受体(4a)および(4b)内にそれぞれ設けられた軸
受(4A)および(4B)に回転自在に軸支されている。軸(６)
の他端には、後述する揺動形ポンプ(５)が連結されてい
る。

【００２０】ポンプ(５)は、図３および図４に詳細に示
されるように、主に、ほぼ円筒状のケース(10)と、軸
(６)に一体的に固定されケース(10)の内で回転自在に配
されたロータ(７)と、ロータ(７)から半径外方向に延
び、頂部がケース(10)の内周面上をシール状態で摺動す
る少なくとも２つのベーン(８)と、ロータ(７)とケース
(10)とベーン(８)との間に形成された空間を２つの空間
に分割する断面ほぼ三角形(台形を含む)のシールブロッ
ク(９)とから主として成り、上記空間には作動流体、例
えば油が充填されている。

【００２１】軸受(4A)および(4C)は、ロータ(７)をケー
ス(10)の中心に支持するためのものであり、ケース(10)
は軸受体(4a)の嵌合部(4e)に回転自在に嵌合されている
が、キー(4f)により回転不能にされている。これはポン
プ(５)の設置を容易にするためのものである。このよう
な配置の結果、軸(６)のための３つの軸受(4C)、(4A)、
(4B)は、同一直線状に配置され、ポンプ(５)はこじれを
生じることなくスムーズに回転可能となっている。

【００２２】本実施例では断面台形とした実質的には三
角形のシールブロック(９)は、ケース(10)の内周面に形
成された溝(11)に嵌合されており、図２に示すように軸
(６)に沿って配列されたボルト(12)により固定されてい
る。

【００２３】シールブロック(９)により分割された一方
の空間に開口するポート(13a)と、他方の空間に開口す
るポート(13b)がケース(10)の端面に形成されている。
ロータ(７)が図２の時計回り方向に回転すると、作動油
が図２中の矢印で示す方向にこのポート(13a)を介して
押し出され、これと同時にポート(13b)を介して作動油
が吸入される。ロータ(７)が逆方向に回転すると、図示
した方向と逆方向に作動油が流れる。こうして遠隔点に
設置された発電機(図示せず)を駆動し、発電を行うよう
になっている。

【００２４】シールブロック(９)には、このようなロー
タ(７)の回転により生じる吐出圧と吸い込み圧との差圧
(実際には２０〜３０ＭＰａとなる)が加わるので、この
差圧に耐える強度が必要である。しかしながらボルト(1
2)のみでは強度が不足であるので、次のようにこの差圧
を利用して溝(11)内にシールブロック(９)を押し付け、
嵌合固定するようになっている。このため、シールブロ
ック(９)の取り付け部すなわち底部のケース側には、空
間(14)が設けられ、この空間内の圧力は常に大気圧に維
持されるよう、通路(15a)、(15b)、(15c)を介してドレ
インポート(15)に接続されている。

【００２５】シールブロック(９)は、図４および図５に
詳細に示すように、軸(６)と直角をなす断面形状がほぼ
台形となっている。台形底部には、上記のように空間(1
4)が形成され、頂部には軸(６)方向に沿って直線状のシ
ール部材(20c)が嵌合されている。すなわちシールブロ
ック(９)は、図５に示すように、点(Ａ)、(Ｂ)で溝(11)
内に支持され、点(Ｃ)にロータ(７)とのシール部材(20
c)が設けられている。図２に示すようにロータ(７)が時
計回り方向に回転すると、シールブロック(９)(図２の
下方のシールブロック)は図５に示すように右側に高圧
力を受け、左側に低圧を受け、点(Ａ)と(Ｂ)を結ぶ面に
は前述のように大気圧を受ける。シールブロック(９)の
各部の寸法を図５に示すように表示すると、差圧(Ｐ)に
よりシールブロック(９)に作用する力(Ｆ)は、点(Ａ)と
(Ｃ)とを結ぶ直線の中点(Ｄ)に垂直に作用する。

【００２６】この作用線と直線(ＡＢ)との交点を(Ｅ)と
し、直線(ＡＥ)の長さを(ｌ)で示す。このとき、ｌ＜２
ｂであれば、シールブロック(９)は差圧力で溝(11)内に
押し付けられ安定となる。この関係は次のように示され
る。

【００２７】

【数３】

【００２８】すなわち、シールブロック(９)の取り付け
幅、すなわち底部の幅(２ｂ)と高さ(ｈ)の関係を、式
(５)の範囲内に選べば、シールブロック(９)は作用する
圧力の大きさに関係なく安定となる。従って、前述のボ
ルト(12)はシールブロック(９)を固定するだけで足り、
シールブロック(９)を上記のような寸法関係にするだけ
で、圧力に対し丈夫なシールブロック(９)が得られる。

【００２９】次に図４、図６および図７を参照して、ロ
ータ(７)およびベーン(８)に設けるシール手段について
説明する。

【００３０】このシール手段はロータ(７)の端面に設け
られたリング状シール部材(20r)と、ベーン(８)の端面
に設けられた直線状シール部材(20b)と、ベーン(８)の
頂部に設けられた直線状シール部材(20a)とを備える。
これらのシール部材(20a)(20b)(20r)は、金属または合
金等の硬質部材から構成することが好ましく、図６〜図
８に最良に示すように、ロータ(７)またはベーン(８)の
外周面に形成された溝(40)に嵌合され、内部に設けられ
た押圧手段(41)、例えばスプリングにより常時外方すな
わちケース(10)側に押圧され、シール性を改善してい
る。

【００３１】図６および図７に示すように、ロータ(７)
の端面におけるリング状シール部材(20r)とベーン端面
の直線状シール部材(20b)との交点(20j)には、図示する
ような可撓性材料、例えばゴム(天然または人造ゴムを
含む)から成るＯリング(54)と、これを貫通し、ヘッド
部で固定するピン(53)から成る交点用シール手段が設け
られている。

【００３２】ベーン(８)の端面の直線状シール部材(20
b)とベーン頂部の直線状シール部材(20a)との交点(20k)
には、上記と同じ可撓性材料から成る可撓性シール部材
(52a)が設けられている。

【００３３】このように硬質のシール部材の交点におけ
る隙間にも、可撓性シール部材を設け、可撓性シール部
材によるセルフシール作用を利用している。

【００３４】更に図８に示すように、シールブロック
(９)のシール部材(20c)の両端面にも可撓性シール部材
(52c)を設け、更にシール性を増している。

【００３５】

【発明の効果】本発明によると、次のような効果を奏す
ることができる。 (ａ) シールブロックの左右の作動流体の圧力の差によ
り、シールブロックはケース側に押圧され、ケースに強
固に固定されるので、シールブロックの固定手段を簡素
化することができる(請求項１)。

【００３６】(ｂ) シール性が改善され、作動効率がよ
くなるとともに、シール部材の耐久性が向上する(請求
項２〜６)。

【００３７】(ｃ) 特に、ロータ端面にリング状のシー
ル部材を、ベーン端面に直線状のシール部材を、また両
シール部材の交点に両シール部材間をシールする可撓性
シール部材をそれぞれ設けたり(請求項３)、ベーンの頂
部に直線状のシール部材を、またこの直線状シール部材
とベーン端面に嵌合されたシール部材との交点に可撓性
シール部材を設けたり(請求項４)することにより、シー
ル部材相互の間の間隙をなくし、シール性をさらに向上
することができる。

【００３８】(ｄ) シール部材を、ロータまたはベーン
とシール部材との間に嵌合されたスプリングにより外方
に押圧することにより、シール部材が作動流体の圧力に
負けることなく、常時安定したシール性能を発揮するこ
とができる(請求項５)。

【００３９】(ｅ) 上記可撓性シール部材とスプリング
とを組み合わせることにより、可撓性シール部材の弾性
復元力が、スプリングの付勢力を助勢し、相乗効果を発
揮することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】従来技術を含む一般的な波力発電装置を示す略
斜視図である。

【図２】本発明に係わる波力発電装置用とした揺動形ベ
ーンポンプの一実施例を示す縦断正面図である。

【図３】図２のIII−III線に沿った縦断側面図である。

【図４】ロータ部分の斜視図である。

【図５】図３に示したシールブロックに加わる油圧力の
分布を模式的に示す説明図である。

【図６】ロータ部分の一部の拡大縦断正面図である。

【図７】図６のVII−VII線に沿った部分断面図である。

【図８】図６のVIII−VIII線に沿った部分断面図であ
る。

【符号の説明】 (１)ケーソン (２)空所 (３)振子 (４)(4A)(4B)(4C)軸受 (4a)(4c)軸受体 (4e)嵌合部 (4f)キー (５)ポンプ (６)軸 (７)ロータ (８)ベーン (９)シールブロック (10)ケース (11)溝 (12)ボルト (13a)(14b)ポート (14)空間 (15a)(15b)(15c)通路 (15)ドレインポート (20a)(20b)(20c)直線状シール部材 (20j)(20k)交点 (20r)リング状シール部材 (40)溝 (41)押圧手段(スプリング) (52a)(52c)可撓性シール部材 (53)ピン (54)Ｏリング (２ｂ)シールブロックの断面の底部の幅 (ｈ)シールブロックの断面の高さ

フロントページの続き (72)発明者松本暎二北海道室蘭市崎守町385番地株式会社楢崎製作所内

Claims

(57)【特許請求の範囲】

【請求項１】回転軸に連結されたロータと、前記ロー
タを収納するケースと、前記ロータから延び、ケース内
周面上を摺動する少なくとも２つのベーンと、ロータと
ケースとベーンとから成る空間を分割する少なくとも２
つのシールブロックと、ケースとロータとの間の空間に
充填された作動流体とを備え、前記シールブロックは、
ロータの回転軸線に対して垂直な断面がほぼ三角形であ
り、底部がケース内周面に嵌合され、頂部がロータ外周
面上を摺動し、ケース側が大気圧に維持され、かつ次の
式、【数１】 (ここで２ｂは断面の底部の幅であり、ｈは断面の高さ
である)を満たすことを特徴とする揺動型ベーンポン
プ。
【請求項２】シールブロックの頂部に、ロータ外周面
に接触する直線状のシール部材が嵌合されていることを
特徴とする請求項１記載の揺動型ベーンポンプ。
【請求項３】ロータ端面に、リング状のシール部材が
嵌合され、ベーン端面には直線状のシール部材が嵌合さ
れ、両シールの交点には両シール部材間をシールする可
撓性シール部材が設けられていることを特徴とする請求
項１または２記載の揺動型ベーンポンプ。
【請求項４】前記ベーンの頂部に、直線状のシール部
材が嵌合され、この直線状シール部材と前記ベーン端面
に嵌合されたシール部材との交点には可撓性シール部材
が設けられていることを特徴とする請求項１〜３のいず
れかに記載の揺動型ベーンポンプ。
【請求項５】前記シール部材はロータまたはベーンと
シール部材との間に嵌合されたスプリングにより外方に
押圧されていることを特徴とする請求項１〜４のいずれ
かに記載の揺動型ベーンポンプ。
【請求項６】可撓性シール部材以外のシール部材が、
硬質のものである請求項２〜５のいずれかに記載の揺動
型ベーンポンプ。