JP2573401B2 - セメント系硬化体の抵抗性試験方法 - Google Patents

セメント系硬化体の抵抗性試験方法

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Description

【発明の詳細な説明】 《産業上の利用分野》 この発明は、コンクリートなどのセメント系硬化体の
抵抗性試験方法に関し、特に、硬化体の化学的変質に対
する抵抗性試験方法に関する。
《発明の背景》 コンクリートなどのセメント系硬化体は、酸や塩に晒
されると、化学的な変質が発生し、その強度などが劣化
することが知られている。
ところで、セメント系硬化体に対する酸や塩などの化
学的侵食機構は、極めて複雑であり、いまだその解明が
充分とは言えないが、従来、以下に説明する化学抵抗試
験が行われていた。
この試験では、まず、型枠内にコンクリートなどセメ
ント系混合物を打ち込み、その後脱型し、材令14日まで
湿潤養生したものをさらに14日間相対湿度50%の室内で
乾燥して供試体を得る。
そして、供試体の重量,長さ,動弾性係数などを測定
した後、15%の硫酸ナトリウム溶液中に28日間浸漬し、
その後24時間空気中で乾燥し、再び重量などを測定し、
硫酸ナトリウムに浸漬する前後での測定値の差から抵抗
性を判断する。
しかしながら、このような抵抗性試験方法では、測定
期間が非常に長くかかるという問題がある。
また、上記試験方法では、高濃度の硫酸ナトリウム中
に供試体を浸漬するので、その化学作用が必ずしも実際
の低濃度の場合と一致しないという問題点も指摘されて
いる。
この発明は、このような背景に鑑みてなされたもので
あり、その目的とするところは、測定時間が短縮できる
とともに、しかも、浸蝕液の濃度が実際の条件に近い状
態で試験することができるセメント系硬化体の抵抗性試
験方法を提供することにある。
《課題を解決するための手段》 上記目的を達成するために、本発明は、コンクリート
などのセメント系硬化体の化学的変質に対する抵抗性試
験方法において、前記セメント系硬化体を柱状に形成す
るとともに、この硬化体を電解液が収納された一対の容
器に挟み込むようにしてその両端をそれぞれの容器内に
露出させるとともに、前記容器内に一対の電極をそれぞ
れ設置してこれらの電極間に直流電源を接続し、前記直
流電源の負荷側が接続された前記容器の電解液中に硫酸
イオンや塩素イオンなどの前記硬化体の化学的柱状を変
質させる負イオンを含有させることを特徴とする。
《発明の作用効果》 上記構成の抵抗性試験方法によれば、直流電圧が印加
された一対の電極間にセメント系硬化体を設置すると、
電極間に加えられている電圧により、硬化体中に含まれ
ているカルシウイオンが、負極側に吸引され、電解質中
に溶出される。
一方、負極側の電解液中に含まれている硫酸イオンや
塩素イオンなどの硬化体の化学的性状を変質させる負イ
オンは、直流電源の正極側に吸引され、硬化体中に浸透
していき、セメント硬化体を水に溶解しやすいものに変
質させる。
このときのカルシウムイオンの溶出の度合いや、硫酸
イオンや塩素イオンの浸透の度合いは、電極間の電流電
圧にほぼ比例するので、所定期間硬化体を電解液中に設
置した後、溶出したカルシウムイオンの量を計測するこ
と、および、硬化体中の硫酸ないしは塩素イオンの浸透
範囲を分析することにより、硬化体の化学的抵抗性が判
断できる。
《実施例》 以下、この発明の好適な実施例について添付図面を参
照にして詳細に説明する。
第1図は、この発明にかかるセメント系硬化体の抵抗
性試験方法の一実施例を示している。
同図に示す試験方法では、電解液として水が収納され
た容器1と、蒸溜水に500PPmの硫酸イオンを含むように
した硫酸ナトリウムを添加した電解液が収容された容器
2と、直径が5cmで高さが1cmの円柱状のモルタル製の試
験体Xとを準備した。
試験体Xは、NO.1〜NO.3の3つを準備し、これらのそ
れぞれをその両端面が露出するようにして塩ビ製の支持
体2に埋め込んで、これをそれぞれの端面が容器1,2内
に露出するようにして設置した。
そして、試験体Xの各露出面に対向するようにして炭
素製の一対の電極3,4を設置し、一方の電極3を直流電
源5の正極側に、他方の電極4を直流電源5の負極側に
それぞれ接続した。
このとき、容器2側の電極4が直流電源5の負極側に
なるように接続する。
この試験で準備した各試験体Xの種類は、水センメト
比が0.65のポルトランドセメントを用いたもの(NO.
1)、水セメント比が0.40のポルトランドセメントを用
いたもの(NO.2)、水セメント比が0.40の耐硫酸塩セメ
ントを用いたもの(NO.3)の3種類で、試験開始時期の
材令は4週間の湿潤養生とした。
直流電源5の電圧は、25Vの定電圧とした。
そして、直流電圧を3日および7日印加した後の容器
1内のカルシウムイオンの溶出量を化学分析法で測定す
るとともに、7日後の硫酸イオンの浸透範囲をXMA(X
線マイクロアナライザー)で測定した。
以下に示す表1がこの試験によって得られた結果であ
る。
上記構成の抵抗性試験方法では、直流電圧が印加され
た一対の電極3,4間にモルタル製の試験体Xを設置する
と、電極3,4間に加えられている電圧により、試験体X
中に含まれているカルシウムイオンが、負極側に吸引さ
れ、容器2側の電解質中に溶出される。
一方、容器2の電解液中に含まれている硫酸イオン
は、正極側の電極3に吸引され、試験体X中に浸透して
いき、セメント硬化体をより一層溶解しやすいものに変
質させる。
このときのカルシウムイオンの溶出の度合いや、硫酸
イオンの浸透の度合いは、電極3,4間の直流電圧にほぼ
比例するとともに、それを一定にした場合には、試験体
Xの性状によって溶出ないしは浸透範囲が異なり、表1
に示す結果では、硫酸イオンに対する性状が強化されて
いるNO.3の試験体が3日後ないしは7日後のカルシムイ
オンの溶出量が少なく、また、硫酸イオンの浸透範囲も
他の試験体に比べて少なくなっており、本発明の抵抗性
試験方法の有効性を示唆している。
なお、上記試験では、容器2中の電解液中に500ppmの
硫酸イオンを含ませた場合を示したが、この発明の実施
はこれに限られることはなく、例えば、自然界に存在す
る硫酸イオンの濃度に一致させるとか、あるいは、これ
よりも大きい値、例えば、5000ppm程度までにすること
もできる。
また、セメント系硬化体はモルタルだけでなくコンク
リートなどセメントの水和反応で硬化したものであれば
試験できる。
さらに、負極側の容器2内に含有させるイオンは、硫
酸だけでなく、塩素イオンなどセメント系硬化体の化学
的性状に変質を及ぼす負イオンであれば上記と同様に試
験できる。
《発明の効果》 以上実施例で詳細に説明したように、本発明にかかる
セメント系硬化体の抵抗性試験方法によれば、セメント
系硬化体の化学的性状に変質を与える負イオンを極微量
電解液中に含ませることにより、硬化体がこれに対する
抵抗性をどの程度有しているか短時間に知ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明にかかるセメント系硬化体の抵抗性試
験方法の実施状態の説明図である。 1,2……容器 3,4……電極 5……直流電源 X……試験体(セメント系硬化体)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】コンクリートなどのセメント系硬化体の化
    学的変質に対する抵抗性試験方法において、前記セメン
    ト系硬化体を柱状に形成するとともに、この硬化体を電
    解液が収納された一対の容器に挟み込むようにしてその
    両端をそれぞれの容器内に露出させるとともに、前記容
    器内に一対の電極をそれぞれ設置してこれらの電極間に
    直流電源を接続し、前記直流電源の負荷側が接続された
    前記容器の電解液中に硫酸イオンや塩素イオンなどの前
    記硬化体の化学的性状を変質させる負イオンを含有させ
    ることを特徴とするセメント系硬化体の抵抗性試験方
    法。
JP19760490A 1990-07-27 1990-07-27 セメント系硬化体の抵抗性試験方法 Expired - Lifetime JP2573401B2 (ja)

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