JP2565572B2 - ピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼおよびその製造方法 - Google Patents

ピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼおよびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は新規なピリミジンヌクレオシドホスホリラー
ゼおよびその製造方法に関する。
(従来の技術) ピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼは、医薬品と
して注目されている核酸の製造に有用な酵素である。
これまでに、ピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼ
に関する報告は次のようなものがある。
1.P.P.Saunders,B.A.Wilson and G.F.Saunders.,J.Bio
l.Chem.244,3691(1967) 2.E.W.Yamada.,J.Biol.Chem.243,1649(1968) 3.J.J.Scocca.,J.Biol.Chem.246,6606(1971) (発明が解決しようとする課題) しかし、前述のピリミジンヌクレオシドホスホリラー
ゼは耐熱性が低いものであった。
本発明者らはこれまでに知られているピリミジンヌク
レオシドホスホリラーゼより、耐熱性にすぐれ、反応速
度が速い新規な酵素を提供することを目的として、鋭意
研究を進めた。
(問題点を解決するための手段) 本発明のピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼは以
下の性質を有する。
作用:ピリミジンヌクレオシド+リン酸塩基+リボ
ース−1−リン酸 基質特異性:シチジン、シトシン、およびその誘導体
以外のピリミジンヌクレオシドと塩基に対して作用す
る。
至適pHおよび安定pH 至適pHはpH7〜11 pH4.5〜10.5において70℃の処理を30分しても失活しな
い。
至適温度および作用適温の範囲 至適温度;70℃ pH7.0において50〜70℃では60分処理をしても安定 pH7.0、70℃における半減期;15.1時間 pH、温度などによる失活の条件: pH7.0、80℃で処理したとき60分で失活する。
阻害、活性化および安定化 特別な活性化剤や安定化剤を必要としない。塩化マンガ
ンにより阻害を受ける。
分子量:85000(TSKゲルG-3000SWによるゲル過法) サブユニットの分子量 54000(SDS電気泳動法) 本発明のピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼは至
適pHおよび安定pH、至適温度および作用適温の範囲にお
いて、これまでに知られているものと性質を異にしてい
る。
次に本発明の酵素の製造法について説明する。
本発明において用いられる該酵素生産菌の好ましい例
として本発明者らによって土壌中より分離されたバチル
ス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermop
hilus)JTS859がある。この菌株は、通商産業省工業技
術院微生物工業研究所に寄託されており、その寄託番号
は、微工研菌寄第9666号(FERM P−9666)である。
この菌株の菌学的性質をバージェイズ・マニュアル第
2巻に準じて検討した結果を以下に示す。
1.形態 桿菌:5.4〜6.5μm×0.7〜0.9μm 楕円形の胞子形成:2.0〜2.3μm×1.1〜1.2μm、1細
胞に1個、位置は末端 2.培養的性質 NB培地:62℃、2日間培養 平板上:白色僅かに黄色を含む。光沢あり、不透明、盛
り上がらない。コロニーの形は円形波状 スラント上:白色僅かに黄色を含む。光沢あり、不透
明、盛り上がらない。生育は中程度 3.生化学的性質 1 グラム染色 陽性 2 嫌気的培養 育成せず 3 運動性 あり、周毛 4 オキシダーゼ 陽性 5 カタラーゼ 陽性 6 ゼラチンの液化 液化能あり 7 リトマスミルク 凝固させる 8 OFテスト 醗酵タイプ 9 V−Pテスト 陰性 10 グルコースからのガスの発生 発生せず 11 グルコースからの酸の産生 産生した 12 アラビノースからの酸の産生 産生せず 13 マニトールからの酸の産生 産生した 14 キシロースからの酸の産生 産生せず 15 サブロ−培地での生育 スラント 生育した 液体 生育した 16 0.001%リゾチーム下での生育 生育せず 17 0.02%アジ化物下での生育 生育せず 18 7%NaCl下での生育 生育せず (2%まで生育した) 19 カゼインの加水分解 分解能あり 20 デンプンの加水分解 分解能あり 21 ジヒドロキシアセトンの生成 生成せず 22 エッグヨーク試験 生育せず 23 クエン酸の利用 陰性 24 インドールの産生 陽性 25 ウレアーゼ活性 陰性 26 フェニルアラニンの脱アミノ化 陰性 27 アルギニンデヒドロラーゼ活性 陽性 28 チロシンの分解 陰性 29 レバン産生 陰性 30 硝酸塩の還元 陽性 31 硝酸ナトリウムの脱窒能 陰性 32 硫化水素の生成 陽性 33 無機窒素源の利用 NO3を唯一の窒素源として 生育した NH4を唯一の窒素源として 生育した 34 GC含量 47.3% 35 生育温度 40〜71℃で生育 最適 60〜68℃ 36 pH範囲 pH5.7〜8.5 最適pH6.0〜7.0 以上の性質に基づき、本株菌はバチルス・ステアロサ
ーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)と同定
される。
上記株菌の培養は、バチルス・ステアロサーモフィル
スの通常行われる条件で良い。好ましくは培地に窒素源
として、トリプトン、ペプトンまたはカザミノ酸を、炭
素源としてグルコースまたはスクロースを含み、さらに
酵母エキスと塩化ナトリウムを含む培地を用い、60〜65
℃、180〜220rpmで振とう培養するか、通気攪拌培養に
よる条件が良い。
また、本発明における使用菌としては、バチルス・ス
テアロサーモフィルスJTS859だけでなく、バチルス属に
属する前記した機能を持つピリミジンヌクレオシドホス
ホリラーゼを生産する微生物であればすべて用いること
ができる。
培養物よりピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼを
採取する方法は定法に従って行えば良い。一例として、
集菌した菌体を破壊した後、熱処理、アセトン処理、pH
処理を順次ほどこし、ついでDEAE(ジエチルアミノエチ
ル)陽イオン樹脂カラム、ブチル基疎水クロマトカラ
ム、およびゲル過を行う方法を示すことができる。
本発明のピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼを用
い、ピリミジン塩基とリボース−1−リン酸からピリミ
ジンヌクレオシドを効率よく製造することができる。以
下、本発明の実施例を示し、さらに詳しく説明する。
(実施例1)バチルス・ステアロサーモフィルス(Baci
llus.stearothermophilus)JTS859の培養、集菌 ペプトン20g、イーストエキス10g、グルコース3g、塩
化ナトリウム3gおよび水1よりなるpH6.0の培地を用
いた。この培地2lにバチルス・ステアロサーモフィルス
JTS859の胞子3.2×107個を添加し、攪拌翼(直径60mm、
上下部各6枚)を有するジャーファメンターを用い、攪
拌翼を680rpmで回転させつつ、通気量1.5vvm、培養温度
65℃、pH5.9〜6.2で8時間培養した。
培養終了後、菌体を遠心分離(10000g,4℃,15分)に
より集菌した。
(実施例2)酵素の分離精製 得られた湿菌160gを20mMリン酸カリウム(pH7.0、以
下「緩衡液」という)に懸濁し、ダイノミル(Willy A.
Bachofen社製、スイス)で菌体を破壊した。緩衡液を添
加し、1400mlとした後、遠心分離(8300g、20分)を行
い、上清1300mlを得た。沈澱物は500mlの緩衡液で懸濁
し、ダイモミルで5分間処理した。緩衡液を添加し、10
30mlとした後、遠心分離(8300g、20分)を行い、上清9
90mlを得た。この上清990mlを先の上清1300mlと合わ
せ、63℃で1時間緩やかに攪拌した。ついで、遠心分離
(8300g、40分)を行い、上清2130mlを得た。
熱処理をした上清2130mlに、アセトン200mlを緩衡液2
00mlの混合溶液(−10℃)を添加した。さらに、−10℃
のアセトン1.8lを加え、5〜10℃で15分間攪拌した。つ
ぎに、遠心分離(9000g、5分)を行なった。得られた
上清に−10℃のアセトン2.5lを添加し15分間攪拌した
後、遠心分離(9000g、5分)を行ない沈澱物を得た。
この沈澱物を800mlの緩衡液に懸濁させアセトン処理済
みの酵素液850mlを得た。
アセトン処理済み酵素液850mlに1Mリン酸を加え、pH
を4.75として1時間0℃に保った。遠心分離(8900g、
1時間)を行い、上清を得た。この上清に1Mの水酸化カ
リウムを加え、pHを7.0に調整し840mlの酵素液を得た。
得られた酵素液840mlをDEAE Toyopearl 650M(東ソー
製)200mlを充填したカラム(Φ45×126mm)に添加し
た。ついで20mMのリン酸カリウム緩衡液(pH7.0)2lで
溶出を行い、ついで20mMリン酸カリウムと0.05M、0.1
M、0.15M、0.2M、0.5Mの塩化ナトリウムよりなるpH7.0
の溶液各1を順次用いて溶出を行った。
次に20mMリン酸カリウム、0.1M塩化ナトリウム溶液の
溶出画分1に本酵素活性を見出だした。得られた溶出
画分に同量の20mMリン酸カリウム溶液(pH7.0)を加え
た後、1M水酸化カリウム溶液でpH8.0にした。この溶液
をDEAE Toyopearl 650M(東ソー製)450mlを充填したカ
ラム(Φ31×53mm)に添加した。
さらに、20mMリン酸カリウムと50mM塩化ナトリウムよ
りなる溶液(pH8.0)1と、20mMリン酸カリウム溶液
と200mM塩化ナトリウムよりなる溶液(pH8.0)1とで
塩化ナトリウム濃度の増加するグラジエントを作り、溶
出し、176mlの活性画分を得た。
この画分に硫安27.9gを添加した後、水酸化カリウム
でpHを7.0に調節した。この溶液を、1.2M硫安と20mMリ
ン酸カリウムよりなる溶液(pH7.0)であらかじめ平衡
化したButyl toyopearl 650S(東ソー製)100ml(Φ16
×300mm)のカラムに添加し、1.2M硫安と20mMリン酸カ
リウムよりなる溶液(pH7.0)100mlで溶出した。
さらに、1.2M硫安と20mMリン酸カリウムよりなる溶液
250mlと20mMリン酸カリウム溶液(pH7.0)250mlとで硫
安濃度の減少するグラジエントを作り、溶出した。
活性画分75mlを分取し、20mMリン酸カリウム溶液に対
し透析後、限外過で14.2mlに濃縮した。
得られた活性区分14.2mlを0.2Mリン酸カリウム溶液
(pH7.0)に対して透析した後、限外過により7mlに濃
縮した。
得られた溶液を20mMリン酸カリウム溶液(pH7.0)で
平衡化したDEAE-5PW(東ソー製、Φ7.5×75mm)に添加
した。
次いで、20mMカリウムおよび50mM塩化ナトリウムより
なる溶液(pH8.0)と、20mMリン酸カリウムおよび225mM
塩化ナトリウムよりなる溶液(pH8.0)を用いて、塩化
ナトリウム濃度が増加するグラジエントにより流速1ml/
分で溶出した。
得られた溶液を0.2Mリン酸カリウム溶液(pH6.8)で
平衡化したTSKgel-G3000SW(東ソー製、Φ7.5×750mm)
に添加した。次いで、0.2Mリン酸カリウム溶液(pH6.
8)を用い、流速0.5ml/分で溶出し、本発明のピリミジ
ンヌクレオシドホスホリラーゼ12.1mgを得た。
(実施例3)理化学的性質 作用および基質特異性 本発明のピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼ0.14
μgを含む20mMヌクレオシド20mMリン酸カリウム溶液
(pH7.0)250μlを60℃で20分間反応させ、生成した塩
基を定量した。結果を表1に示す。
また本発明のピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼ
0.14μg、20mM塩基、20mMリボース−1−リン酸および
20mMリン酸カリウムよりなる溶液(pH7.0)250μlを60
℃で20分間反応させ、生成したヌクレオシドを定量し
た。結果を表2に示す。
至適pHおよび安定pH 本発明のピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼ0.55
μgを含む20mM5−メチルウリジン、20mMリン酸カリウ
ム溶液(pH3.0〜13)1mlを60℃で20分間反応させ、生成
したヒポキサンチンを測定した。結果を図1に示す。
pH7から11.5の間において高い酵素活性が認められ
た。
安定pHを調べるために本発明のピリミジンヌクレオシ
ドホスホリラーゼ0.55μgを50μlの20mMクエン酸緩衡
液(20mMリン酸カリウムを含む)、20mMグリシン緩衡液
(20mMリン酸カリウムを含む)、20mMトリス・塩酸緩衡
液(20mMリン酸カリウムを含む)、20mMリン酸カリウム
緩衡液中各々70℃で30分間加熱処理した後、残存する酵
素活性を定量した。結果を図2に示す。
酵素活性はpH6.5〜10.5において、失活しなかった。
至適温度および作用適温の範囲 本発明のピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼ0.55
μgを含む20mM5−メチルウリジン、20mMリン酸カリウ
ム溶液(pH7.0)1mlを40〜80℃で反応させ、生成したヒ
ポキサンチンを定量した。結果を図3に示す。
70℃以下では温度が高いほど生成速度が速く、80℃で
は30分以内に酵素が失活した。
また、20mMリン酸カリウム溶液(pH7.0)中での酵素
の半減期は、図4に示すように70℃において15.1時間で
あった。
阻害、活性化および安定化 本発明のピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼ0.55
μgを含む20mM5−メチルウリジン、20mMリン酸カリウ
ム溶液と1mMの各種金属イオン溶液(pH7.0)1mlを60℃
で20分反応させ、生成したヒポキサンチンを定量した。
MgSO4・7H2O、HgCl2、CuSO4・5H2O、ZnSO4・7H2O、CH
2ICOOH、EDTA、パラクロロメルクリベンゾエイトでは阻
害は認められなかったが、MnCl2・4H2Oでは強い阻害が
認められた。
分子量 TSKゲルG-3000SW(東ソー製)によるゲル過法では8
5000であった。
SDS電気泳動法によるサブユニットの分子量は54000で
あった。
アミノ酸組成 アミノ酸アナライザー(日立製H835)により分析し
た。結果を表3に示す。
(発明の効果) 本発明のピリミジンヌクレオシドホスホリラーゼによ
り塩基より核酸を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のピリミジンヌクレオシドホスホリラー
ゼのpH依存性を示す図面である。 第2図は本発明のピリミジンヌクレオシドホスホリラー
ゼのpH安定性を示す図面である。 第3図は作用適温の範囲を示す図面である。 第4図は酵素活性の半減期を示す図面である。
フロントページの続き (72)発明者 三上 洋一 東京都港区虎ノ門2丁目2番1号 日本 たばこ産業株式会社内 審査官 谷口 博 (56)参考文献 J.Biol.Chem.第244巻第 13号P.3691−3697(1969)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】次の理化学的性質を有するピリミジンヌク
    レオシドホスホリラーゼ 作用:ピリミジンヌクレオシド+リン酸塩基+リボ
    ース−1−リン酸 基質特異性:シチジン、シトシン、およびその誘導体
    以外のピリミジンヌクレオシドと塩基に対して作用す
    る。 至適pHおよび安定pH: 至適pHはpH7〜11 pH6.5〜10.5において70℃の処理を30分しても失活しな
    い。 至適温度および作用適温の範囲: 至適温度は70℃、pH7.0において50〜70℃では60分処理
    をしても安定。 pH、温度などによる失活の条件: pH7.0、80℃で処理したとき60分で失活する。 阻害、活性化および安定化: 特別な活性化剤や安定化剤を必要としない。塩化マンガ
    ンにより阻害を受ける。 分子量:85000(TSKゲルG-3000SWによるゲルろ過法) サブユニットの分子量:54000(SDS電気泳動法)
  2. 【請求項2】バチルス属微生物を培養することを特徴と
    する請求項1に記載のピリミジンヌクレオシドホスホリ
    ラーゼの製造方法。
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