JP2562383Y2 - 燃料噴射ポンプ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は燃料噴射ポンプにかかるもので、とくにデリ
バリバルブのシート径を工夫した燃料噴射ポンプに関す
る。

［従来の技術］ 従来から、燃料噴射ポンプと、この燃料噴射ポンプを
噴射ノズルに結合する噴射管との間にデリバリバルブを
設けることにより、燃料圧送時には燃料噴射ポンプと噴
射管とを連通し、燃料圧送終了後には燃料噴射ポンプと
噴射管との間の連通を遮断して所定の残圧を維持し、つ
ぎの燃料圧送の際の燃料噴射ポンプの圧送開始と噴射ノ
ズルからの噴射開始との時間的おくれを少なくするよう
にしている。また、上記噴射管内における燃料噴射終了
後の残圧を制御することにより、燃料噴射切れを向上さ
せ、また後もれや二次噴射などの異常噴射を防止するた
めに上記デリバリバルブに燃料の吸戻し機能をもたせ、
さらにこうした機能を増強するために燃料噴射ポンプに
は等圧弁と呼ばれる燃料圧力制御装置を組み込んでい
る。たとえば、特開平2-1225959号にその開示がある。

従来からの燃料噴射ポンプにおけるこうした等圧弁装
置について第３図ないし第５図にもとづいて概説する。

第３図は、燃料噴射ポンプ１のデリバリバルブホルダ
２部分を示す要部縦断面図であって、このデリバリバル
ブホルダ２は、その上端に燃料出口３を有していて噴射
管４を介し噴射ノズル５に接続してある。

上記デリバリバルブホルダ２の下部には、デリバリバ
ルブシート６を固定する。このデリバリバルブシート６
の中央軸方向に形成したデリバリバルブ収容孔７にデリ
バリバルブ８のロッド部９を上下往復摺動可能に収納し
てある。デリバリバルブ８は、上記ロッド部９と、シー
ト部10と、円筒部11とを有している。ロッド部９には複
数の羽根部12（第４図参照）を放射状に突設することに
より上記デリバリバルブ収容孔７内においてデリバリバ
ルブシート６との間に燃料吐出用通路13を形成してあ
る。この燃料吐出用通路13は燃料が圧送されてくる分配
通路14と連通している。

デリバリバルブ８の上記円筒部11の上部にデリバリバ
ルブセットスプリング15を当接し、その付勢力により、
デリバリバルブ８のシート部10をデリバリバルブシート
６のシート面16に常時押し付けている。

上記デリバリバルブ８の円筒部11内には等圧弁収納室
17を形成し、この等圧弁収納室17内に等圧弁装置18をデ
リバリバルブ８と同軸上に収納する。等圧弁収納室17と
分配通路14とを連通する燃料戻し用通路19をロッド部９
に形成する。

上記等圧弁装置18は、等圧弁ホルダ20と、ボールバル
ブ21と、等圧弁スプリングシート22と、等圧弁セットス
プリング23とを有している。等圧弁ホルダ20は等圧弁シ
ート部24およびオリフィス25を有するとともに、ほぼ円
筒状にこれを形成してある。

第５図に示すように、等圧弁スプリングシート22に
は、その周面に等角度間隔（たとえば、120度間隔）
で、連通用の切欠き26を複数個（たとえば三個）形成す
ることにより、ボールバルブ21が開弁したときにオリフ
ィス25と等圧弁収納室17とを連通可能としている。

等圧弁ホルダ20の下部をデリバリバルブ８の円筒部11
内に圧入固定し、等圧弁ホルダ20の底部および等圧弁セ
ットスプリング23をこのシート用内底面8Aに当接させる
ものである。

こうした構成において燃料の吐出時には、燃料の分配
通路14からの燃料圧力がデリバリバルブセットスプリン
グ15の付勢力に打ち勝ったときに、デリバリバルブ８の
シート部10がデリバリバルブシートのシート面16を離れ
るものである。また、燃料吐出終了後の燃料吸戻し時に
は反射圧が等圧弁セットスプリング23の付勢力つまり等
圧弁装置18の開弁圧に打ち勝ったときに、ボールバルブ
21が等圧弁シート部24から離れるものである。

なお、一回の燃料吐出流量は、デリバリバルブ８のリ
フト量と、そのシート部10がシート面16から離れたとき
の間の流路断面積との積で表される。

しかして、最近の燃料噴射ポンプ１の高圧化および高
速化にともなってデリバリバルブ８のリフト量が従来の
場合に比較して大きくなり、燃料吐出後、シート部10が
シート面16とシートする前にシート部10とシート面16と
の間から大部分の燃料が抜け、結果として残圧がなくな
り噴射間４内が負圧となって、その内部にキャビテーシ
ョンエロージョンが発生してしまうという問題がある。

こうした問題に対する対策として、デリバリバルブセ
ットスプリング15のセット力を強化することや、ストッ
パー等（図示せず）によってデリバリバルブ８のバルブ
リフトを抑え、残圧を維持可能とすることが考えられる
が、上述のような高圧化状態にあってはこうした対応に
よっても当該問題を解決することができない。

もちろん、デリバリバルブ８やデリバリバルブシート
６全体を大きく形成することにより高圧化に対応するこ
とは可能であるが、燃料噴射ポンプ１全体の設計変更を
余儀なくされ、コストアップは必定である。

［考案が解決しようとする課題］ 本考案は以上のような諸問題にかんがみなされたもの
で、従来からの構成ないし部品の大幅な変更を必要とせ
ずに改善のコストを抑え、バルブリフトをそれほど大き
くすることなく、デリバリバルブのシート前のシート部
からの逆流を減少させ、ひとまわり上のバルブ径を有す
る燃料噴射ポンプの性能を発揮可能な燃料噴射ポンプを
提供しようとするものである。

［課題を解決するための手段］ すなわち本考案は、デリバリバルブシートに形成した
デリバリバルブ収容孔内において摺動させることにより
燃料出口を開閉するデリバリバルブと、このデリバリバ
ルブに設ける等圧弁装置とを有する燃料噴射ポンプであ
って、上記デリバリバルブがシートする上記デリバリバ
ルブシートのシート面の開口径を上記デリバリバルブ収
容孔内の燃料吐出用通路の径より大きくすることができ
る大径部を該デリバリバルブシートに形成するととも
に、上記デリバリバルブのシート部をこの大径部に臨ま
せ、さらにこの大径部を上記燃料吐出用通路に臨ませる
ことにより上記デリバリバルブのシート部が燃料圧力を
直接受けることができるようにするとともに、上記デリ
バリバルブの上記シート部から上記燃料吐出用通路方向
に延びて形成されているロッド部の、上記大径部の区間
内における、その中心からの最大半径をその軸方向に沿
って一定としたことを特徴とする燃料噴射ポンプであ
る。

［作用］ 本考案による等圧弁装置においては、デリバリバルブ
シートに形成したデリバリバルブ収容孔内においてシー
ト面部分の開口径のみを大きくすることにより、この部
分の流路断面積をより大きくすることとしたので、従来
に比較して小さなバルブリフトによっても必要な燃料吐
出流量を確保することが可能となった。

しかも、高圧化ないし高速化に対応するために設計変
更を必要とする部分は、デリバリバルブシートの上記シ
ート面部分のみでよく、デリバリバルブおよび等圧弁装
置その他はこれを一切変更することなく従来の部品を流
用可能であり、コストアップの問題もない。

［実施例］ つぎに本考案の一実施例による燃料噴射ポンプ30を、
第１図および第２図にもとづき説明する。ただし第３図
ないし第５図に示した構成と同様の部分については同一
符号を付し、その詳述はこれを省略する。

この燃料噴射ポンプ30において従来の前記燃料噴射ポ
ンプ１と異なる構成は、デリバリバルブシート６のシー
ト面16に相当するそのシート面31部分にある。

すなわちとくに第２図に拡大して要部のみを示すよう
に、デリバリバルブ８のシート部10がシート可能なシー
ト用傾斜面32を残し、シート面31の開口径Ｄをデリバリ
バルブ収容孔７の他の部分、つまりその上流側に位置す
る燃料吐出用通路13の直径ｄより大きく形成することに
よって大径部33を形成してある。

また、この大径部33の深さＨはこれを任意に設定す
る。

こうした構成において、分配通路14から高圧燃料が圧
送され、デリバリバルブ８のシート部10がシート用傾斜
面32からリフトして吐出が開始するときに、シート部10
とシート用傾斜面32との間の流路断面積は従来のシート
面16との間の流路断面積よりも大きくなるので、同一の
燃料吐出流量を確保するために、デリバリバルブ８のリ
フト量は小さくてよくなるものである。つまり、デリバ
リバルブ８そのものの径を大きくすることなく、ひとま
わり上のサイズの燃料吐出性能を発揮可能である。

つまり、デリバリバルブ８のリフト量を小さくするこ
とにより、シート部10のシート面16へのシートまでの時
間を短縮し、その間にシート部10から逆流する流量を減
少させることができる。したがって、デリバリバルブホ
ルダ２内および噴射管４内を正圧に保ち、この状態で等
圧弁装置18が作動するため、噴射管４内の残圧を所定範
囲内に抑えその内部のキャビテーションエロージョンの
発生を防止することができる。またバルブリフトが少な
いので、シート部10の摩耗、デリバリバルブセットスプ
リング15のへたりを軽減可能である。

さらには、デリバリバルブシート６の加工部分はその
先端部分のみであるので、その機械的強度を損なうおそ
れはなく、強度上スペースを取ることができない部分に
使用することができるとともに、デリバリバルブ８その
他の部品は従来のものをそのまま流用可能である。

なお本考案においては、大径部の開口径を燃料吐出用
通路の直径よりも大きくすれば足りるものであって、デ
リバリバルブがリフトしたときにその流路断面積が大き
くなるようにデリバリバルブ収容孔の内壁をテイパー状
に構成することも可能である。さらに、デリバリバルブ
に設ける等圧弁装置の構成は任意とすることができる。

［考案の効果］ 以上説明したように本考案によれば、デリバリバルブ
シートのシート面部分の開口径を大きくするようにした
ので、大幅な設計変更を行なうことなく、デリバリバル
ブのリフト量を低く抑え、残圧を所定の範囲内に維持し
てキャビテーションエロージョンの発生を防止可能であ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例による燃料噴射ポンプ30のデ
リバリバルブホルダ２部分の要部縦断面図、 第２図は第１図のII-II線拡大断面図、 第３図は従来の燃料噴射ポンプ１のデリバリバルブホル
ダ２部分の要部縦断面図 第４図は第３図のIV線矢視図、 第５図は第３図のＶ−Ｖ線拡大断面図である。 １……燃料噴射ポンプ ２……デリバリバルブホルダ ３……燃料出口 ４……噴射管 ５……噴射ノズル ６……デリバリバルブシート ７……デリバリバルブ収容孔 ８……デリバリバルブ 8A……シート用内底面 ９……デリバリバルブ８のロッド部 10……デリバリバルブ８のシート部 11……デリバリバルブ８の円筒部 12……羽根部 13……燃料吐出用通路 14……分配通路 15……デリバリバルブセットスプリング 16……シート面 17……等圧弁収納室 18……等圧弁装置 19……燃料戻し用通路 20……等圧弁ホルダ 21……ボールバルブ 22……等圧弁スプリングシート 23……等圧弁セットスプリング 24……等圧弁シート部 25……オリフィス 26……連通用の切欠き 30……燃料噴射ポンプ 31……シート面 32……シート用傾斜面 33……大径部 Ｄ……シート面31の開口径 ｄ……デリバリバルブ収容孔７の他の部分（燃料吐出用
通路13）の直径 Ｈ……大径部33の深さ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平４−121455（ＪＰ，Ａ) 実開 昭64−21264（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭52−103213（ＪＰ，Ｕ)

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】デリバリバルブシートに形成したデリバリ
   バルブ収容孔内において摺動させることにより燃料出口
   を開閉するデリバリバルブと、 このデリバリバルブに設ける等圧弁装置とを有する燃料
   噴射ポンプであって、 上記デリバリバルブがシートする前記デリバリバルブシ
   ートのシート面の開口径を前記デリバリバルブ収容孔内
   の燃料吐出用通路の径より大きくすることができる大径
   部を該デリバリバルブシートに形成するとともに、前記
   デリバリバルブのシート部をこの大径部に臨ませ、さら
   に この大径部を前記燃料吐出用通路に臨ませることにより
   前記デリバリバルブのシート部が燃料圧力を直接受ける
   ことができるようにするとともに、 前記デリバリバルブの前記シート部から前記燃料吐出用
   通路方向に延びて形成されているロッド部の、前記大径
   部の区間内における、その中心からの最大半径をその軸
   方向に沿って一定としたことを特徴とする燃料噴射ポン
   プ。