JP2559969B2 - 熱可塑性合成樹脂管の熱時耐圧力測定方法及び同測定装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、例えば地中配管のラ
イニング材として使用されるような塩化ビニル樹脂管そ
の他の熱可塑性合成樹脂管の熱時耐圧力を調べるための
測定方法及びそれに用いる耐圧力測定装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】近時、上下水道をはじめ、電力配線、通
信配線等のケーブル類の敷設用の地中管路について、長
年月の経過によりそれらに亀裂、損傷を生じた場合、既
設管路をそのまま利用しながら、その内部に合成樹脂管
を内張り状態にライニングして補修、補強する所謂ライ
ニング工法が注目を浴び、一部実用化されるに至ってい
る。

【０００３】上記のようなライニング工法は、ライニン
グ材として塩化ビニル樹脂管等の熱可塑性合成樹脂管を
用い、これを加熱軟化状態にして既設配管の中に挿入し
たのち、一端から加圧蒸気を導入して内圧を負荷するこ
とにより、樹脂管を加熱膨張させ、既設管内面に密接せ
しめ、その後冷却媒体を用いてそのまま固化せしめるも
のである。

【０００４】従って、このようなライニング用に使われ
る樹脂管においては、加熱膨張時に周壁が均一に膨張し
て著しい扁肉状態を生じることがないことはもとより、
それ以上に、加熱膨張時に亀裂発生とか破断を生じるお
それのあるような強度上の欠陥部分を有しないこと、等
の特に良好な熱時耐圧力を保有することが強く求められ
る。

【０００５】ところが実際上、押出成形法等によって連
続的に生産される熱可塑性合成樹脂管は、押出成形条件
の変動、製造後の管理条件の変化、その他外的要因等々
により、均一かつ良好な熱時耐圧力を保有しない樹脂管
を発生することが起こり得る。

【０００６】このため、ライニング用樹脂管について
は、その実用使用に先だって、製造ロット毎にその一部
分をサンプリングし、予めその熱時耐圧力を検査してお
くことが必須不可欠である。加熱膨張して使用するよう
な他の用途の樹脂管についても同様である。

【０００７】従来、かかる樹脂管の熱時耐圧力の測定，
検査は、例えば次のような方法によって行われていた。

【０００８】即ち、添附図３に示すように、検査対象と
する所定長さに切断した熱可塑性合成供試管（20）の両
管端に、合成ゴム等の弾性体からなる栓体（21）（21）
を嵌合して密栓し、供試管（20）の両端部を針金等の締
付部材（22）を用いて上記栓体（21）（21）の周りに緊
密に固縛固定したのち、一方の栓体（21）に設けた蒸気
導入口（23）から供試管（20）内に加圧蒸気を導入し
て、供試管（20）を加熱膨張せしめることにより、その
扁肉状態の発生の有無等を調べるという手法で行われて
いた。また、この際、蒸気圧の導入に伴う内圧増大によ
り、栓体（21）（21）が外れるのを防止するための安全
対策として、両栓体（21）（21）の外面に支持枠（24）
（24）を配置し、これらをボルト・ナット等の連結具
（25）で連結することにより、両栓体（21）（21）間の
間隔を規制するものとしていた。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
ような従来の熱時耐圧力測定方法によるときは、次のよ
うな問題点があった。

【００１０】先ず第一に、供試管（20）は、加圧蒸気の
導入により、周方向とともに長さ方向にも伸長する。と
ころが、該供試管（20）は栓体（21）（21）によって両
端を支持されているだけであり、しかも両栓体間の距離
が規定されているため、加熱軟化に伴って供試管（20）
に不規則な変形、とくに蛇行状の変形を発生する。そし
て、このことが原因で、締付部材（22）による供試管
（20）の締付部分の一部に、内圧負荷の増大に伴って局
部的な応力集中が発生し、その部分での樹脂管の破断、
蒸気洩れ等を発生して正確な耐圧力測定が困難になる事
態を発生することがあった。

【００１１】また、特に強度欠陥部分が内在するような
供試管（20）の場合、検査時に蒸気圧の増大によって供
試管の一部に亀裂等を発生すると、その破損部分から内
圧が一気に外部に吹き出す所謂爆裂現象を発生するおそ
れがあり、作業者に対する危険度も大きかった。

【００１２】更には、連結部材（25）によって検査可能
な供試管（20）の長さが規制されるため、種々の長さの
供試管（20）を検査することができず、また、締付部材
（22）による締付力の適否が測定結果にも影響を及ぼす
ことも相俟って、測定検査者に熟練を要し、かつ作業性
に劣るというような難点もあった。

【００１３】この発明は、上記のような問題点に鑑み、
従来の方法に較べてより一層簡易かつ正確、しかも安全
に樹脂管の熱時耐圧力を測定検査しうる方法とそれに用
いる装置を提供することを目的とする。

【００１４】

【課題を解決するための手段】この発明は、金属製の与
圧管を用い、その外側に樹脂製供試管を嵌め合わせた態
様で該供試管の加熱膨張検査を行うようにしたものであ
る。

【００１５】即ち、この発明の１つは、両管端が閉鎖さ
れかつ胴部周壁に多数の蒸気導通孔が設けられた金属製
の与圧管を用意し、該与圧管の外周にその外径より内径
が相対的に大きい熱可塑性合成樹脂管からなる供試管を
緩く套嵌状態に被覆装着すると共に、両端部において上
記与圧管の外周面との間を密閉状態にして締着固定した
のち、上記与圧管内にその一端部から蒸気を加圧導入し
て前記供試管を加熱膨張せしめ、その耐圧力を測定する
ことを特徴とする熱可塑性合成樹脂管の熱時耐圧力測定
方法を要旨とするものである。

【００１６】また、この発明の第２は、上記の方法に用
いる測定装置であり、熱可塑性合成樹脂管からなる供試
管の内径より外径を相対的に小とした金属製の与圧管
と、該与圧管の外周に緩く套嵌状態に被覆装着される前
記供試管の両端部を上記与圧管の外周面に密閉状態に固
定する締圧封止手段とを具備し、前記与圧管は、両管端
が端面板によって閉鎖されると共に、胴部外周に多数個
の蒸気導通孔が設けられ、かつ少なくとも一方の端部に
内部加圧蒸気を導入する蒸気導入管が設けられてなるこ
とを特徴とするものである。

【００１７】好ましい実施態様の１つとして、上記与圧
管は、樹脂供試管の長さ方向の熱時伸長に対応しうるよ
うに、それ自体を供試管に追従して伸縮自在なものとし
ても良い。

【００１８】また、樹脂製供試管のより一層正確な熱時
耐圧力測定を行いうるものとするべく、与圧管の一端部
に、供試管内底部に溜まるドレーンを排出する排出管を
具備せしめたものとすることが推奨される。該ドレーン
排水管は、一端が与圧管の下部周壁から外方に突出して
供試管内に臨むドレーン入口を形成し、中間部が与圧管
内を通って、他端が与圧管の端部から外部に開口された
開閉自在な吐出口を形成するものとして構成される。

【００１９】

【実施例】以下、この発明の実施例を、図１及び図２に
基いて説明する。

【００２０】図１において、（１）は測定用治具として
の与圧管、（２）は測定対象とする熱可塑性合成樹脂製
の供試管であり、与圧管（１）は供試管（２）の内径よ
り５．０〜５０．０ｍｍ程度相対的に小さい外径を有す
るものが用いられる。

【００２１】与圧管（１）は鋼管その他の金属製のもの
であり、両管端が端面板（1a）（1b）によって閉鎖され
ると共に、長さ方向の中間部において、胴部周壁（1c）
に多数の蒸気導通孔（３）が穿設形成されている。蒸気
導通孔（３）は、例えば孔径８〜１５ｍｍ程度に形成す
るのが好適であり、与圧管（１）の周方向に５〜１０
個、長さ方向に８０〜１５０ｍｍ程度のピッチで形成さ
れる。具体的な一例を挙げると、外径１４０ｍｍ、肉厚
４．５ｍｍ、長さ１．５００ｍｍの与圧管（１）におい
て、蒸気導通孔（３）は、孔径１２ｍｍ、周方向に等配
に８個、長さ方向のピッチ１００ｍｍに設定される。

【００２２】与圧管（１）は、その一端部に蒸気導入管
（４）を有する。該蒸気導入管（４）は、一方の端面板
（1a）を貫通して与圧管（１）の内外に連通し、外方の
一端は図示しないスチーム供給源に接続して、与圧管内
に所定圧力の蒸気を導入するものである。

【００２３】また、与圧管（１）の他端部には、内圧調
整用の排気管（10）と凝縮水を排出するドレーン排水管
（５）とが設けられている。上記排気管（10）は圧力調
整弁（10a ）を有し、与圧管（１）内の圧力を調整可能
とするものである。一方上記排水管（５）は、供試管
（２）内の内底部に溜る凝縮水を必要に応じて排出する
ものであり、一端は与圧管（１）の端部周壁を貫通して
外方に突出し、供試管（２）の内底面に臨むドレーン入
口（5a）を形成すると共に、中間部は与圧管（１）内を
通り、他端が端面板（1b）を水平に貫通して外部に突出
した吐出口（5b）を形成している。（６）はこの吐出口
（5b）を開閉するドレーン用自動排出弁である。

【００２４】与圧管（１）の両端部外側には締圧封止手
段（７）を具備する。該手段は、与圧管（１）の外側に
被装される供試管（２）の両端部内面と与圧管（１）の
外面との間に介在して両者間を密閉する環状パッキング
（８）と、該パッキングの外側から供試管（２）を締圧
固定するバンド部材あるいは針金等の固縛部材（９）と
からなる。

【００２５】上記において、合成樹脂管の加熱耐圧力の
測定は次の如くして行なう。

【００２６】先ず、上記樹脂管からなる所定長さの供試
管（２）を与圧管（１）の外側に套嵌状態に緩く嵌め合
わせ、その両端部をパッキング（８）（８）の位置にお
いて外側から固縛部材（９）で固縛することにより、供
試管（２）の両端部を与圧管（１）外周面に気密状態に
固定する。

【００２７】次いで、蒸気導入口（４）から与圧管
（１）内に所定圧力の高温蒸気、例えば圧力０．５ｋｇ
／ｃｍ² の蒸気を導入する。ちなみに、このときの蒸気
温度は１１１℃である。この導入された蒸気は与圧管
（１）の胴周壁の蒸気導通孔（３）を通って供試管
（２）内に充満する。従って、上記操作と同時に排気管
（10）から管内空気を逃出せしめることにより、供試管
（２）内を上記蒸気で置換し、該供試管（２）を所定温
度に加熱軟化させることができる。

【００２８】次いで、排気管（10）からの逃出空気量を
調節することで、管内を昇圧し、供試管（２）を加熱状
態のもとに膨張させる。この際供試管（２）は、加熱軟
化によって撓曲変形を生じ易い状態になるが、与圧管
（１）が内側からバックアップ部材として作用すること
と、該与圧管（１）の周壁に均等に分布する蒸気導通孔
（３）からの蒸気圧により、供試管（２）は有害なほど
の著しい蛇行変形を生じることなく、図１に鎖線で示す
ように全体がほぼ均一に外方に向って膨張し、軸線方向
の伸長分も上記膨張をもって吸収される。

【００２９】また、蒸気の導入による供試管（２）の膨
張時において、該管（２）内で凝縮する水は、ドレーン
排水管（５）を通じて連続的に管外に排出するものと
し、凝縮水との接触による供試管（２）の局部冷却を防
ぐものとすることが望ましい。このために、測定中は与
圧管（１）を含む装置全体を長さ方向に若干傾斜させ、
排水管（５）を下方に位置せしめるものとすることが好
ましい。

【００３０】そこで、上記の加熱膨張状態を所定時間保
持したのち、要すれば蒸気導入管（４）から冷却空気を
導入して全体を冷却する。

【００３１】そして、上記膨張時における供試管（２）
からの蒸気洩れの有無を監視検査すると共に、冷却後に
おいて、与圧管（１）から取外し、供試管（２）の周方
向及び長さ方向での肉厚分布の変化を調べると共に、ま
た亀裂や局部破壊の発生の有無等を調査し、当該供試管
（２）の熱時耐圧力を測定する。

【００３２】なお、上記測定装置において、供試管
（２）の長さが与圧管（１）の長さに対して相対的に短
いものである場合には、その長さに対応して与圧管
（１）の端部側の一列ないし複数列の蒸気導通孔（３）
を適宜の栓体を用いて閉鎖することにより、与圧管
（１）の実効長さを供試管（２）の長さに対応させて上
記同様の熱時耐圧力測定を行うものである。

【００３３】図２は、与圧管（11）の変形例を示す。該
与圧管（11）は、長さ方向の中間部において軸線方向に
胴部が分割されており、その分割体相互が凹凸嵌合によ
るすべり継手（12）を介して接続されることにより、与
圧管自体が長さ方向に伸縮自在に構成されたものであ
る。この場合、供試管（２）の加熱膨張時の長さ方向の
伸長に伴って、与圧管（11）も追従伸長する。このた
め、供試管（２）の熱時耐圧力をより一層正確かつ高い
精度に測定することができる。

【００３４】

【発明の効果】この発明によれば、上述のように与圧管
の外側に熱可塑性合成樹脂管からなる供試管を套嵌状態
に装着して、与圧管側からの蒸気の導入により上記供試
管を加熱膨張せしめてその熱時耐圧力を測定するもので
あるから、加熱軟化時において供試管の徒らな蛇行変形
が与圧管によって規制される。このため、供試管の全体
が周方向に均等な膨張作用を受け、内圧負荷による局部
的な応力集中を生じることがなく、正確で精度の高い、
熱時耐圧力測定を行うことができる。

【００３５】また、供試管の膨張測定中において、強度
上の弱点部分を有するような供試管の場合、それに亀裂
や局部破壊を生じることがあるが、かかる損壊を生じた
場合にも、管内の高圧蒸気は一次的には与圧管の外面と
供試管の内面との間に存在する蒸気量をもってそれが外
部に逃出するだけであり、二次的に与圧管内の蒸気が蒸
気導通孔を経由して外部に逃出することとなる。従っ
て、与圧管が一種の緩衝部材として機能し、管内圧力が
一気に外部に吹き出す大きな爆裂現象の発生を防止でき
る。即ち、爆発速度を軽減でき、ひいては一層安全に測
定作業を行うことができる。

【００３６】更にまた、前述のように与圧管の長さの範
囲内であれば、供試管の長さが変化しても、適宜与圧管
の周壁の蒸気導通孔の一部を密栓閉塞して使用すること
で、その加熱耐圧力測定操作を何ら支障なく実行するこ
とができる。従って、検査に供する供試管の長さに制約
を受けることが少なく汎用性に優れると共に、供試管へ
の与圧管へのセッティング作業も含めて、測定作業が簡
単にでき、熟練を要しないし作業性が良い。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明による樹脂管の熱時耐圧力測定装置の
実施例を示す縦断面図である。

【図２】与圧管の変形例を示すその一部の断面図であ
る。

【図３】従来の樹脂管の熱時耐圧力測定装置を示す縦断
面図である。

【符号の説明】

１、11…与圧管 ２…樹脂製供試管 ３…蒸気導通孔 ４…蒸気導入管 ５…ドレーン排水管 ７…締圧封止手段 ８…パッキング ９…固縛部材 12…すべり継手

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 両管端が閉鎖されかつ胴部周壁に多数の
   蒸気導通孔が設けられた金属製の与圧管を用意し、 該与圧管の外周にその外径より内径が相対的に大きい熱
   可塑性合成樹脂管からなる供試管を緩く套嵌状態に被覆
   装着すると共に、両端部において上記与圧管の外周面と
   の間を密閉状態にして締着固定したのち、 上記与圧管内にその一端部から蒸気を加圧導入して前記
   供試管を加熱膨張せしめ、その耐圧力を測定することを
   特徴とする熱可塑性合成樹脂管の熱時耐圧力測定方法。
2. 【請求項２】 熱可塑性合成樹脂管からなる供試管の内
   径より外径を相対的に小とした金属製の与圧管と、該与
   圧管の外周に緩く套嵌状態に被覆装着される前記供試管
   の両端部を上記与圧管の外周面に密閉状態に固定する締
   圧封止手段とを具備し、 前記与圧管は、両管端が端面板によって閉鎖されると共
   に、胴部外周に多数個の蒸気導通孔が設けられ、かつ少
   なくとも一方の端部に内部加圧蒸気を導入する蒸気導入
   管が設けられてなることを特徴とする熱可塑性合成樹脂
   管の熱時耐圧力測定装置。
3. 【請求項３】 与圧管が、長さ方向において伸縮自在に
   構成されてなる請求項２記載の熱可塑性合成樹脂管の熱
   時耐圧力測定装置。
4. 【請求項４】 与圧管の端部に設けられたドレーン排水
   管を有し、該排出管は、一端が与圧管の下部周壁から外
   方に突出して供試管内に臨むドレーン入口を形成し、中
   間部が与圧管内を通って、他端が与圧管の端部から外部
   に開口された開閉自在な吐出口を形成してなる請求項２
   または３に記載の熱可塑性合成樹脂管の熱時耐圧力測定
   装置。