JP2541001Y2 - 動物の貧血判定用の識別スティック - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、動物、特に母豚や母牛などの家畜の母体の
貧血状態を判定するために用いる識別スティックに関す
る。

（従来の技術） 従来、母豚や母牛などの動物の貧血状態を客観的に判
定する方法としては、採血によりヘモグロビン濃度を測
定する方法、例えばヘモグロビン・メーターによる判定
方法があった。

しかし、採血による方法には手間がかかる問題があ
る。

仮に逐一採血するとしても、家畜としての母豚等は家
舎内の狭い環境で飼育されているので、採血のために保
定されると、更にストレスを受ける。

そのため、飼料の摂取量が低下したり、発情期の戻り
が悪くなったりして、妊娠回数の減少や、流産、子の虚
弱化等の問題が発生することがあった。

そこで、採血によらないで貧血状態を判定する手段と
して、実開昭58−147501号公報「血色測定器」は、光を
プローブとして、皮膚に照射した光の皮下組織からの反
射によってヘモグロビン濃度を測定する手段を開示して
いる。

しかし、これは、装置が大がかりになり、家畜の貧血
状態を簡便に判定するという現実問題には不向きであ
る。

次に、からだの特定部位の色調から貧血状態を判定す
る方法がある。

動物、特に母豚や母牛などの母体の場合は、膣前庭部
の色を調べるのが有効である。この部位の色とヘモグロ
ビン濃度とを対応させる色見本を用いて、貧血状態を判
定する方法が考えられる。

血液に関する色の変化を段階的に示す色見本に関して
は、実開平１−135359号公報「呈色比較判定器の色見本
貼着ホイール」、実開昭62−91684号公報「色見本カタ
ログ」、特開昭62−2929号公報「比色ゾンデ」に記述が
ある。

しかし、実開平１−135359号公報「呈色比較判定器の
色見本貼着ホイール」が示す色見本は、円形に配列され
ていて、これが全体装置に組み込まれている。そのた
め、この色見本部分を母豚等の体内に挿入して膣前庭部
の色と比較することはできない。

実開昭62−91684号公報「色見本カタログ」が示す色
見本は、細巾帯状のシートに直列に配列されたものであ
る。そのため、この場合も、色見本部分を母豚等の体内
に挿入して膣前庭部の色と比較することは甚だ困難であ
る。仮に、この色見本の構成を生体に応用して用いたと
しても、使い勝手が芳しくなく非現実的である。

また、特開昭62−2929号公報「比色ゾンデ」が示す色
見本も、直列に配列されていて、内視鏡を併用するもの
なので、家畜の貧血状態を簡便に判定するには不向きで
ある。

（考案が解決しようとする課題） そこで、本考案は、上記の問題点に鑑み創出されたも
のであり、母豚等に採血等に伴うストレスを与えないで
ヘモグロビン濃度を測定して貧血状態を簡便に判定する
手段を得ることを目的とする。

（課題を解決するための手段） この目的を達成する本考案の動物の貧血判定用の識別
スティックは、動物の膣前庭部の粘膜色と比較して貧血
状態を判定するものであって、膣前庭部に挿入しやすい
ように先端部が円弧状に形成された細長形状の複数枚の
板片と、これら板片を軸支し収納する、板片とほぼ同形
状のケース本体とから構成され、各板片の前記先端部に
は、動物の膣前庭部の粘膜におけるヘモグロビン濃度の
違いによる色と対応する色がそれぞれ段階的に付され、
ケース本体には、各板片を摘み出しやすいように切り欠
きが形成されているものである。

（作用） 母豚等の膣前庭部の粘膜色と本考案の識別スティック
の各板片の色とを比較し、色が一番近い板片を選定し
て、血液中のヘモグロビン濃度を推測する。そして、こ
のヘモグロビン濃度から貧血の度合を判定する。

（実施例） 以下に、本考案の実施例を図面に基づいて説明する。
なお、ここでは、母豚用の識別スティックを例として挙
げて述べる。

第１図において、符号（１）〜（５）は先端が円弧状
に形成された細長形状の板片であり、本実施例のものは
５枚設けられている。（６）は板片とほぼ同形状に形成
されたケース本体であり、板片（１）〜（５）は、この
ケース本体（６）の軸（７）に軸支されて回動自在にな
っていて、図示のような状態から矢印（８）方向［時計
回転方向］に回動させるとケース本体（６）の内部
（９）に収納されるように構成されている。（10）は、
そのように収納された板片（１）〜（５）を摘み出し易
くするための切り欠きである。

各板片（１）〜（５）の前記先端部には、ヘモグロビ
ン濃度の違いに対応する色（11）〜（15）がそれぞれ段
階的に着色されている。各板片（１）〜（５）先端に着
色される色（11）〜（15）は、母豚の膣前庭部色と血中
ヘモグロビン濃度の関係を多数調べ、統計処理して、ヘ
モグロビン濃度の違いに対応する膣前庭部色を得たもの
である。

第２図は、各板片（１）〜（５）先端の色（11）〜
（15）と、ヘモグロビン濃度との関係をグラフ表示した
ものである。

本考案の識別スティックを用いるには、第３図に示す
ように、親指（16）と人差指（17）で母豚の陰部（18）
を開いて、できるだけ奥（膣前庭部）の粘膜色と板片
（１）〜（５）先端の色（11）〜（15）とを照らし合わ
せる。そして、粘膜色に最も近い板片を選定し、その板
片に対応するヘモグロビン濃度から、母豚の貧血の有無
や貧血度合を判定する。

例えば、第２図に示したような関係に着色した識別ス
ティックを用いる場合には、母豚の陰部（18）の色が色
（11）に一番近ければ、その母豚のヘモグロビン濃度は
およそ9.5g/dl以下、色（12）に一番近ければヘモグロ
ビン濃度はおよそ9.6〜10.5g/dlと推測できる。このよ
うに、色（11）〜（15）をそれぞれ、ヘモグロビン濃度
９、10、11、12、13g/dlに一対一対応させることができ
る。

なお、各板片（１）〜（５）先端の色（11）〜（15）
を、更に数段階に分けて着色してもよい。例えば、第１
図では、各板片（１）〜（５）先端の色（11）〜（15）
は、それぞれ更に３段階に分けて着色されている。

このように、着色を細分化すると、ヘモグロビン濃度
の測定をより精確にできるようになり、微妙な膣粘膜の
色調と照合し易くなるという効果がある。

以上、母豚用の識別スティックについて説明したが、
本考案の識別スティックは他の動物、特に母牛について
も同様に利用できるものである。

なお、母豚等が発情期にある時は粘膜色に変化が現れ
るので、ヘモグロビン濃度を推測しにくくなる。

（考案の効果） 以上何れにしても本考案の識別スティックによれば、
採血などの手間をかけずに、陰部色（膣前庭部色）を見
て板片の色と照らし合わせるだけの簡便な作業で、母豚
や母牛等のヘモグロビン濃度が推定でき、簡便に貧血の
度合を判定することができる。特に、先端が円弧状に形
成されたスティック状であるために、少々奥まった部位
でも、容易に用いることができる特徴がある。

しかも、採血をしないので、母豚等にストレスをかけ
ないで済むという効果もある。

【図面の簡単な説明】

第１図は識別スティックの正面図、第２図は各板片の色
とヘモグロビン濃度の関係を示すグラフ、第３図は識別
スティックの使用状態図である。 １〜５…板片、６…ケース本体、７…軸、11〜15…色

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】動物の膣前庭部の粘膜色と比較して貧血状
   態を判定するものであって、膣前庭部に挿入しやすいよ
   うに先端部が円弧状に形成された細長形状の複数枚の板
   片と、これら板片を軸支し収納する、板片とほぼ同形状
   のケース本体とから構成され、各板片の前記先端部に
   は、動物の膣前庭部の粘膜におけるヘモグロビン濃度の
   違いによる色と対応する色がそれぞれ段階的に付され、
   ケース本体には、各板片を摘み出しやすいように切り欠
   きが形成されていることを特徴とする動物の貧血判定用
   の識別スティック。