JP2530716B2 - 電路保護素子 - Google Patents

電路保護素子

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JP2530716B2
JP2530716B2 JP13528389A JP13528389A JP2530716B2 JP 2530716 B2 JP2530716 B2 JP 2530716B2 JP 13528389 A JP13528389 A JP 13528389A JP 13528389 A JP13528389 A JP 13528389A JP 2530716 B2 JP2530716 B2 JP 2530716B2
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    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01HELECTRIC SWITCHES; RELAYS; SELECTORS; EMERGENCY PROTECTIVE DEVICES
    • H01H37/00Thermally-actuated switches
    • H01H37/02Details
    • H01H37/32Thermally-sensitive members
    • H01H37/323Thermally-sensitive members making use of shape memory materials

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  • Breakers (AREA)
  • Thermally Actuated Switches (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、電路に流れる過電流を検出して電路遮断機
構を動作させるための電路保護素子に関するものであ
り、回路遮断器等に用いられるものである。
[従来の技術] 過電流や短絡電流等の事故電流から負荷を保護するた
めの回路遮断器等においては、事故電流を検出して、電
路を遮断するように動作する電路保護素子が内蔵されて
いる。この種の素子としては、既に種々の形式のものが
提案されている。
第2図はバイメタル方式を用いた従来例を示す。これ
は熱膨張係数の小さい金属1と熱膨張係数の大きい金属
2とを貼り合わせたバイメタル3を用いて、このバイメ
タル3に事故電流が流れると、その発熱によりバイメタ
ル3が矢印で示す方向に撓み、その結果、このバイメタ
ル3と対向配置された周知のラッチ機構乃至引き外し機
構(図示せず)を作動させて、回路を遮断させるように
なっている。しかし、このようなバイメタル方式では、
単一の事故電流に対してしか、その保護機能を発揮でき
ないという欠点がある。
また、第3図はオイルダッシュポットを用いた従来例
であり、過電流が流れたときにはプランジャ4が徐々に
上方へ移動し、上部に達したときに可動鉄片4′が蓋部
5に吸着され、一方、短絡電流が流れたときには可動鉄
片4′が直接吸着され、これによりラッチ機構を作動さ
せるようになっているが、この構成においては、吸引力
が小さく、高速性に欠けるため、短絡電流に対して十分
な保護が望めないという問題がある。また、吸引力が小
さいため、回路遮断器のラッチ機構に負担が掛かり、小
型化にも限界がある。
一方、特開昭57−148858号、同60−221922号及び同62
−76123号公報には、形状記憶合金を用いて過電流及び
短絡電流を共に検出できるようにした電路保護素子が開
示されている。しかしながら、本公報では、形状記憶合
金を電路保護素子に応用するときに問題となる合金自体
の信頼性、特に動作温度の変動等については開示されて
いない。また、動作が保証される環境温度の範囲や、動
作温度に関係する相変態温度等についても全く言及され
ていない。信頼性の高い電路保護素子として実用化する
ためには、これらの合金特性、特に使用する相変態機構
の特定が非常に重要である。
[発明が解決しようとする課題] 形状記憶合金を電路保護素子に使用する場合において
は、形状記憶合金の特性として、次のような特性が望ま
れる。
(a)動作の繰り返し信頼性が高いこと。すなわち、発
生荷重や相変態温度が繰り返し動作により変動しないこ
と。
(b)動作温度が60℃〜90℃の範囲内で設定できるこ
と。
(c)動作が保証される温度範囲が−10℃〜60℃である
こと、したがって、この範囲内の任意の温度から加熱を
開始したときに、相変態開始温度(As点)が一定である
こと、及びこの範囲内の温度で素子が初期状態にあり、
動作していないこと。
(d)温度ヒステリシスが小さいこと(概略10deg以下
であること)。
実用化されている形状記憶合金には、大別してニッケ
ル−チタニウム系と、銅系(CuZn,CuZnAl等)がある。C
u系は信頼性や耐食性の点でニッケル−チタニウム系よ
りも劣り、信頼性の要求される電路保護素子に応用する
には、ニッケル−チタニウム系の方が良いと判断でき
る。このニッケル−チタニウム系において、形状記憶合
金の形状変化に関与する相変態機構には、マルテンサイ
ト相変態とR相変態がある。
マルテンサイト相変態では、歪みを大きく取ることが
でき、したがって、発生荷重も大きいが、繰り返し動作
の信頼性が低い。例えば、発生荷重を例に取れば、1回
目と2回目とでは、発生荷重が約5%低下する例もあ
る。また、変態温度も繰り返し動作させていると変動
し、このため動作温度が変動することになる。
R相変態では、歪みは約1%以下の状態でしか使用で
きず、したがって、マルテンサイト相変態に比較して、
発生荷重を大きく取ることはできないが、繰り返し信頼
性が良いという利点がある。ところが、このR相変態に
おいて、動作温度を60℃以上に設定すると、必然的にマ
ルテンサイト相の相変態開始温度(Ms点)が−10℃以上
となる。このため、形状記憶合金を加熱するときに、そ
の加熱開始温度によって、相の状態が異なり、発生する
荷重の立ち上がり温度(As点)が異なることになり、結
果として動作温度が異なることになる。したがって、動
作を保証される環境温度の範囲を−10℃〜60℃とするこ
とができない。
また、特開昭53−138071号公報には、ニッケル−チタ
ニウム−銅系を含む種々の形状記憶合金を使用した熱電
型開閉器が開示されている。しかしながら、本公報の熱
電型開閉器は、形状記憶合金に直接通電して加熱する形
式(いわゆる直熱形)であり、第2図の従来例と同様に
単一の事故電流に対してしか、その保護機能を発揮でき
ない。また、合金の信頼性等についても記述はない。
本発明は上述のような点に鑑みてなされたものであ
り、その目的とするところは、繰り返し動作による相変
態温度の変動が少なく、動作が安定で信頼性が高く、使
用できる環境温度の範囲が広く、短絡電流及び過電流の
検出が共に可能な電路保護素子を提供することにある。
[課題を解決するための手段] 本発明にあっては、上記の課題を解決するために、電
路に流れる電流を通電されるヒータコイルと、ヒータコ
イルに過電流が流れたときにヒータコイルの発生する熱
により電路遮断機構を動作させるように形状変化する形
状記憶合金と、ヒータコイルに短絡電流が流れたときに
ヒータコイルの発生する磁界により電路遮断機構を動作
させるように駆動される磁性材料とを備える電路保護素
子において、形状記憶合金はニッケル−チタニウム−銅
系(Ni−Ti−Cuの3元合金、さらに添加物を含む4元以
上の合金)の形状記憶合金であり、且つ、形状記憶合金
の形状変化に関与する相変態機構がオーソロミック相
(斜方晶)変態であることを特徴とするものである。
さらに、前記オーソロミック相変態を生じさせると共
に合金の加工性の観点から、銅が6〜12原子%、チタニ
ウムが49〜51原子%、残りニッケルの3元合金に組成を
限定し、動作の信頼性をさらに向上させるために、素線
に冷間加工を施し、材料の再結晶温度以下の低温で形状
記憶のための熱処理を行い、合金内部に加工歪を残した
状態で使用することを第2の特徴とする。
また、本発明のその他の特徴は、形状記憶合金の動作
温度が上昇するように、形状記憶合金に予めバイアスば
ねにより応力を付与された状態で使用することにある。
[作用] 本発明者らは、種々の形状記憶合金の相変態について
検討した結果、ニッケル−チタニウム−銅系で出現する
オーソロミック相変態が電路保護素子に要求される形状
記憶合金の特性を全て満足することを発見した。すなわ
ち、ニッケル−チタニウム−銅系の形状記憶合金におけ
るオーソロミック相変態では、従来の材料にはない次の
3つの特性を同時に満たすことができる。
疲労がなく、信頼性が高い。繰り返し動作試験の結
果、相変態温度の変動は僅かである。これは、昇温・降
温時のヒステリシスがマルテンサイト相変態では約30℃
と大きいが、オーソロミック相変態では約5〜10℃と小
さく、このことが疲労を小さくしているものと考えられ
る。
動作温度を60℃以上に設定できる。相変態温度は、形
状記憶合金の組成や熱処理温度に依存するが、これらの
条件を適当に選ぶことにより、動作温度を60℃以上に設
定できる。
−10℃〜60℃の温度範囲を保証できる。ニッケル−チ
タニウム−銅系では、マルテンサイト相の相変態開始温
度(Ms点)が−10℃以下となるため、−10℃〜60℃の範
囲内の任意の温度で加熱を開始しても、オーソロミック
相変態のみとなり、形状記憶合金の相変態開始温度(As
点)は一定となる。
以上の〜の条件がニッケル−チタニウム−銅系で
のみ満たされる理由について、さらに詳しく述べる。
オーソロミック相変態をする記憶合金としては、ニッ
ケル−チタニウム−銅系及びニッケル−チタニウム−パ
ラジウム系の各合金がある。ここで、ニッケル−チタニ
ウム−パラジウム系合金は高価なパラジウムを成分とし
て含むので、コスト的に実用化は困難である。
ニッケル−チタニウム−銅系合金には、ニッケル−チ
タニウム−銅の3成分系合金と、ニッケル−チタニウム
−銅にさらにニオブ、ホウ素等の第4元素を添加した4
成分系合金があるが、本用途に用いる形状記憶合金とし
ては、ニッケル−チタニウム−銅系の3元合金で、銅が
6〜12原子%、チタニウムが49〜51原子%、残りがニッ
ケルの組成が適正である。いずれも相変態様式は、オー
ソロミック(斜方晶)変態であり、オーソロミック相
(低温相)とB2相(高温相)とに変態する。
以下、上記組成の限定理由について述べると、銅が6
原子%以下ではオーソロミック相変態とならず、また12
原子%以上になると、加工性が劣化して伸線加工が困難
となる。また、チタニウムが49原子%以下又は51原子%
以上になると、記憶合金の必要条件である金属間化合物
生成の組成範囲を外れ、形状記憶現象がなくなる。
さらに、繰り返しによる劣化特性改善のため、すなわ
ち信頼性の向上のために、素線に冷間加工を施し、再結
晶温度以下の温度で形状記憶のための熱処理を施すこと
が有効である。このことは、合金に加工歪を残留させた
状態で使用することを意味し、こうすることにより、さ
らに信頼性を向上させることができる。ここで、熱処理
温度は350〜500℃が望ましい。350℃以下であると形状
記憶が十分でなく、500℃以上になると再結晶温度を越
える結果、繰り返しによる劣化が大きくなる。また、冷
間加工率は加工前後による断面の減面率で表現して10〜
40%が適正である。10%以下では劣化特性の改善効果が
なく、40%以上になると伸線加工が困難となる。
さらに望ましい組成、熱処理温度、及び冷間加工率に
ついて述べると、組成は銅9.0±1原子%、チタニウム4
9.4〜50.5原子%、残りニッケルとし、熱処理温度は450
±20℃、冷間加工率は15〜30%とするのが望ましい。
素子の動作温度は先述のように高い方が、また、繰り
返し信頼性は高い方が良い。しかし、動作温度に関連す
る相変態温度と材料の劣化特性はトレードオフの関係に
ある(第6図、第7図参照)ことが判明し、本発明では
両者を勘案し更に限定を加えたものである。
すなわち、相変態温度の高温化のためには、熱処理温
度は高い方が良く、また、劣化を少なくするためには熱
処理温度は低い方が良く、適正値は450±20℃である。4
70℃を越えると、形状記憶合金の繰り返し時の出力劣化
が大きくなり(第7図参照)、430℃以下であると、相
変態温度が低くなる。そして、この処理温度のとき組成
は銅が8±1原子%、チタニウムが49.4〜50.5原子%、
残りニッケルで相変態温度は上昇する(第6図、第9図
〜第11図参照)。
さらに、冷間加工率は概略15〜30%が望ましい。15%
以上の加工で劣化特性の改善効果が完全となり、また、
加工率0%のとき出現していた2段変態が15%以上の加
工で消滅し、1段変態のみとなるからである。また、30
%以上の加工では加工硬化が大きくなる結果、熱処理前
の巻線加工がやりにくくなる。
また、本発明の他の特徴は、動作温度が上昇するよう
に、予め形状記憶合金に応力を付与した状態で使用する
ことにある。すなわち、形状記憶合金の相変態温度は応
力下において上昇する性質を本発明者らは見出だし、こ
の性質を積極的に利用したものである。
ニッケル−チタニウム−銅系のオーソロミック相変態
において、種々の応力下での相変態温度を測定したとこ
ろ、応力依存性が0.06℃/MPaと大きく、Ni−Ti合金の約
2倍であることが判明した(Ni−Ti合金の場合、0.03℃
/MPa)。この性質を積極的に利用し、第1図に示すよう
に、形状記憶合金ばね8とバイアス付与ばね12を組み合
わせることにより、動作温度を上昇させることができ、
また、バイアス付与ばね12の出力荷重を変えることによ
り、電路保護素子の動作温度を調整することが可能であ
る。
先述の望ましい組成及び加工率を持った材料を望まし
い温度で処理した記憶合金を用いるとき、形状記憶合金
に付与するばねせん断応力は20〜250MPaが適正である。
20MPa以下では動作温度が60℃以下となり、温度保証範
囲(−10〜60℃)内で動作することになり不適である。
また、250MPa以上になると高温相の応力−歪み特性が比
例関係でなくなり(フックの法則を外れる)、ばね設計
の精度が悪くなる。同様に、ばねせん断歪みは1.2%以
下が適正である。1.2%を越えると、劣化がやや大きく
なり、繰り返し動作時の信頼性が低下する。
[実施例] 第1図は本発明の一実施例の断面図である。図におい
て、10は磁性材料よりなるヨークであり、このヨーク10
内にはコイル筒11が配され、コイル筒11の周囲には、ヒ
ータコイル9が巻回されている。このヒータコイル9に
は、電路に流れる電流が通電される。コイル筒11の内部
には、磁性材料よりなるプランジャー7が上下動自在に
貫挿されている。プランジャー7の上端部は、負荷レバ
ー6と係合している。この負荷レバー6は、所定の荷重
が加わると、回路遮断器のラッチ機構(図示せず)を作
動させて、電路を遮断させるようになっている。プラン
ジャー7の下端部には、太径のフランジ7aが形成されて
いる。プランジャー7のフランジ7aとヨーク10の上片10
aとの間には、形状記憶合金ばね8が配されている。こ
こで、形状記憶合金は高温で成形しておけば、その成形
時の形状を記憶しており、常温で変形させておいても温
度が上昇すれば、その形状が高温成形時の形に戻る性質
を有するものであり、形状記憶合金ばね8は、このよう
な形状記憶合金をばね状に成形したものである。また、
プランジャー7のフランジ7aとヨーク10の下片10bとの
間には、バイアス付与ばね12が配されている。形状記憶
合金ばね8は、このバイアス付与ばね12にて付勢され
て、定歪み状態(拘束状態)で使用されている。コイル
筒11の底部、すなわち、プランジャー7と対向する側に
は、ヨーク10の下片10bに固定された固定鉄心13が配さ
れている。
ヒータコイル9に定格電流の105〜125%の電流(すな
わち過電流)が流れると、ヒータコイル9が発熱し、形
状記憶合金ばね8の温度を上昇させる。形状記憶合金ば
ね8の温度が上昇し、その相変態開始温度(As点)を越
えると、形状記憶合金ばね8は急激にプランジャー7を
押し下げる方向に変形しようとする。しかし、形状記憶
合金ばね8は拘束状態であるため、プランジャー7の変
位は生じない。そして、この荷重が負荷レバー6の一定
の荷重とバイアス付与ばね12の発生荷重の和よりも大き
くなったときに、負荷レバー6に連結された回路遮断器
のラッチ機構が外れ、電路を遮断する。また、短絡電流
が流れたときには、ヒータコイル9から発生する電磁吸
引力によりプランジャー7が下方の固定鉄心13に吸引さ
れ、負荷レバー6を押し下げて、ラッチ機構を外し、電
路を遮断する。
このような構造にすると、短絡電流及び過電流検出機
構の一体化、及び、ばね状とした形状記憶合金の発生荷
重と変位が大きいことによるメカのシンプル化が可能と
なり、結局、機器の小形化が可能となる。また、ダッシ
ュポットと比較して、短絡時の吸引力が大きいことによ
り、高速応答性が達成でき、その他、交流と直流で兼用
化できる、姿勢による影響が無いという利点がある。
試料1(実施例) ニッケル−チタニウム−銅系の3元組成の合金線を、
治具に巻き付けてコイルばね状に成形し、拘束状態で熱
処理を行った。このようにして得られた形状記憶合金ば
ねを、所定の歪み量となるように拘束し、温度を変化さ
せて、温度−荷重特性を測定した。第4図は銅が9.2原
子%、チタニウムが49.4原子%、残りがニッケルの3元
合金で熱処理温度を500℃、冷間加工率を27%とした場
合の温度−出力荷重特性を示す図である。図中、As点及
びAf点はそれぞれ高温相への相変態開始温度及び相変態
終了温度を示し、Ms点及びMf点はそれぞれ低温相(オー
ソロミック相)への相変態開始温度及び相変態終了温度
を示す。第4図より、動作が保証される環境温度の範囲
内で最低の温度−10℃(S点)から加熱を開始しても、
他の温度36℃(S′点)から加熱を開始しても、発生荷
重の立ち上がり温度である相変態開始温度(As点)は約
60℃で一定であることが分かる。また、本合金のDSCで
の測定結果を第5図(a),(b)に示す。同図(a)
は昇温時、同図(b)は降温時の測定結果を示す。−50
℃から100℃の温度範囲で加熱、冷却してもピークは各
々1つしか検出されない。これは、この温度範囲で相変
態様式が1つであることを示し、したがって相変態開始
温度も一定となる。以上のことは、動作保証される環境
温度の範囲を−10℃〜60℃のように広く取れることを意
味する。
第6図は、種々の組成のニッケル−チタニウム−銅合
金について、熱処理温度を変化させ、相変態開始温度
(第4図のAs点)を調べた結果を示している。なお、冷
間加工率は27%であり、一定としている。第6図より、
550℃までは熱処理温度が高くなるにしたがって、相変
態開始温度は上昇することが分かる。
また、熱処理温度が500℃のときのヒステリシスを第
1表に示す。ヒステリシスは、昇温時と降温時の温度幅
であり、(As+Af−Ms−Mf)/2で計算できる。
第1表より銅の含有率が高くなるにしたがって、ヒス
テリシスは減少することが分かる。何れの組成でもオー
ソロミック相変態の特徴である5〜10degのヒステリシ
スを満足しており、このことより相変態様式がオーソロ
ミック相変態であり、また、本用途への要求特性を満た
していることが分かる。なお、マルテンサイト相変態で
は、第16図に示すように、ヒステリシスが約30degであ
る。
次に、繰り返し動作の信頼性について相変態温度を挟
む2つの温度の間でヒートサイクル試験を実施し、試験
前後の相変態温度(As点)の変化及び出力の変化率を調
べた結果を第7図に示す。ヒートサイクル試験は、T1
85℃(30分)とT2=0℃(30分)の間で、一定歪みで拘
束し、1000回の昇温と降温を繰り返した。形状記憶合金
は、銅が6.1原子%及び9.2原子%の銅−ニッケル−チタ
ニウム合金であり、冷間加工率は27%とし、熱処理温度
の影響を調べるために、種々の温度で熱処理した。図
中、白丸○と黒丸●は銅が6.1原子%の合金の相変態温
度の変化と出力変化率をそれぞれ示しており、白い三角
△と黒い三角▲は銅が9.2原子%の合金の相変態温度の
変化と出力変化率をそれぞれ示している。チタニウムの
含有率は49.4〜50.0原子%、拘束時のせん断歪率は0.55
%であった。
第7図から明らかなように、熱処理温度を350〜500℃
に選ぶことにより、相変態開始温度の変化幅は1deg以下
であり、出力低下率も最大30%以下に抑えることができ
る。一方、熱処理温度が500℃を越えると、合金内部で
再結晶が開始され、繰り返し動作による劣化は大きくな
る。したがって、劣化防止の観点から熱処理温度は350
〜500℃とすることが望ましい。さらに、相変態温度の
高温化(第6図)及び劣化(第7図)の観点から450±2
0℃が望ましい。
第8図は冷間加工率を種々変化させて、相変態温度を
DSC法により調べた結果を示している。合金の組成は銅
が9.0原子%、チタニウムが50.5%、残りがニッケルと
し、熱処理条件は500℃で1時間とした。加工率10%以
上の冷間加工を施すと、相変態温度は一定になることが
わかる。残留加工歪が相変態温度に影響することを考え
ると、残留加工歪による劣化防止の効果を得るために
は、少なくとも相変態温度が一定になる10%以上、さら
に望ましくは15%以上の加工率が必要である。
第9図乃至第11図に上記組成で熱処理条件を450℃で
1時間とし、加工率を種々変化させたときの合金のDSC
特性を示す。上記各図において、図(a)は降温時、図
(b)は昇温時である。
加工率が0%のとき(第9図参照)には吸熱又は発熱
のピークが2つあり、15%のとき(第10図参照)には第
2段目のピークが不明瞭となり、27%のとき(第11図参
照)には完全に消滅していることが分かる。この第2段
目のピークは斜方晶(オーソロミック)−単斜晶変態と
考えられ、B2相−オーソロミック相変態のみとする観点
からも概略15%以上の加工が必要である。
次に種々の異なる歪み量にて測定を行うことにより、
せん断応力−せん断歪み−相変態温度の関係を調べた結
果を第12図に示す。合金組成は銅が9.0原子%、チタニ
ウムが50.5原子%、残りがニッケルとし、熱処理温度は
450℃、材料加工率は27%とした。第12図より、高温相
の応力−歪み関係は応力量250MPa、歪み量1.4%までは
比例関係にあり、フックの法則に従うことが分かる。ま
た、同時に負荷応力の上昇と共に、相変態終了温度(Af
点)が上昇していることが分かる。以上、第12図に示す
特性より形状記憶合金に付与するばねせん断応力は、動
作温度が60℃以上になる概略20MPaから応力−歪み関係
の比例限界である概略250MPaまでが適正である。
本実施例にあっては、バイアス付与ばね12により形状
記憶合金ばね8に予め応力を付与した状態で使用してい
る状態で使用しているので、形状記憶合金ばね8の動作
温度が上昇する。そして、このバイアス付与ばね12の発
生荷重を調整することにより、動作温度を調整すること
ができる。第9図〜第11図に示す特性から概略60〜80℃
の範囲で調整可能である。
このNi−Ti−cu合金は、第12図に示すように、低温相
の強度が非常に低いという第2の特徴(Ni−Ti合金と比
較して0.8%歪みで約1/10)を有する。高温相と低温相
の出力差を利用する本用途にとって、この材料上の特徴
は素子の出力を大きくできることを意味し、非常に有利
な特性である。
第13図は種々のせん断歪みで記憶合金を拘束し、ヒー
トサイクル試験を実施し、試験前後の相変態温度の変化
及び出力の変化率を調べた結果である。ヒートサイクル
試験はT1=100℃、T2=−20℃の間で1,000回の昇温と降
温を繰り返した。合金組成及び熱処理温度は第12図で述
べたものと同一である。歪み量が概略1.2%を越える
と、出力劣化が大きくなる傾向であり、1.2%以下の歪
み量で使用することが望ましいことが分かる。1.2%以
下の歪みでは、出力劣化が約15%、相変態温度の変化が
±1degであり、信頼性の高いことが分かる。
最後に、この形状記憶合金を第1図に示す構造の電路
保護素子に組み込み、負荷レバー6の荷重を50g、バイ
アス付与ばね12の発生荷重を100gとし、動作試験を行っ
た。
第14図は、記憶合金とバイアスばねを組み合わせ、負
荷をかけた状態でヒートサイクル試験を行い、その前後
での素子(第1図参照)の温度−変位特性を示してい
る。記憶合金のコイル径はφ6、線径はφ0.6、巻数は
8.3ターン、自由高さは21.9mmとした。
合金組成、熱処理温度、材料加工率は第12図で述べた
ものと同一であり、動作時(ラッチ引き外し時、1.3mm
変位のとき)の記憶合金のせん断歪み量を1.0%とし
た。また、ヒートサイクル試験はT1=100℃、T2=−20
℃の間で1,000回の昇温と降温を繰り返した。
第14図(a)は初期、同図(b)はヒートサイクル後
の特性である。いずれも正常に動作し、初期での動作温
度(1.3mm変位のとき)は73.5℃であり、ヒートサイク
ル後では75℃であることが分かる。
このことは、繰り返しによる動作温度の変動は殆ど無
く(1.5deg)、信頼性が高いことを示している。また、
同時に動作温度は70℃以上であり、60℃に降温したとき
は変位0の初期状態に復帰していることが分かる。つま
り、動作温度及び保証温度範囲の目標値を満足している
ことが分かる。
試料2(比較例) ニッケル−チタニウム系の2元組成の合金線を用い
て、R相変態の試料2を試料1と同じ方法で作成し、温
度−荷重特性を測定した。第15図はR相変態の試料2に
ついての温度−荷重特性を示す図である。この試料2で
は、ある温度6℃(S点)から昇温すると、相変態開始
温度(As点)は約70℃であるのに対して、他の温度44℃
(S′点)から昇温すると、相変態開始温度(As点)は
約60℃であった。このため、動作保証されるべき温度範
囲内(−10〜60℃)で、加熱を開始する温度が異なる
と、発生荷重の立ち上がり点が大きく異なることにな
り、電路保護素子への適用は困難である。
試料3(比較例) ニッケル−チタニウム系の2元組成の合金線を用い
て、マルテンサイト相変態の試料3を試料1と同じ方法
で作成し、温度−荷重特性を測定した。第16図はヒート
サイクル試験前、第17図は300回のヒートサイクル試験
後(T1=100℃,T2=10℃)の温度−荷重特性をそれぞれ
示す図である。ヒートサイクル試験後で、As点は13℃低
くなり、また、発生荷重も大きく低下していることが分
かる。このことは、マルテンサイト相変態の試料3の信
頼性が低いことを意味し、電路保護素子への適用は困難
である。
試料4(比較例) 銅−アルミニウム系の形状記憶合金線を用いて試料を
作成した。定歪みにて拘束し、ヒートサイクル試験を実
施し、相変態温度(As点,℃)の変化を計測した。ヒー
トサイクルは相変態温度を挟む温度域であるT1=150
℃、T2=10℃とし、300回の昇温と降温を繰り返した。
結果を第2表に示す。
第2表から分かるように、300回のヒートサイクルで
相変態温度は10〜11℃高くなる。このことは、繰り返し
による信頼性が低いことを意味し、電路保護素子への適
用は困難である。
以上述べたことから明らかなように、ニッケル−チタ
ニウム−銅系のオーソロミック相変態を行う形状記憶合
金を用いた場合にのみ、本発明の電路保護素子は実現可
能である。
[発明の効果] 本発明の電路保護素子は、電路に流れる電流を通電さ
れるヒータコイルからの発熱又は発生磁界により形状記
憶合金又は磁性材料を駆動できるので、過電流と短絡電
流の検出が共に可能であり、2つの事故電流の検出機構
の一体化及び記憶合金の高出力化、高変位特性を生かし
たメカのシンプル化による小形化が可能であるという効
果があり、また、ニッケル−チタニウム−銅系で出現す
るオーソロミック相変態を用いたから、動作の繰り返し
による特性の変化が少なく、したがって、信頼性が高く
なるという効果があり、また、相変態開始温度が比較的
高いので、動作温度を実用温度範囲内とすることができ
るという効果があり、さらに、加熱を開始する温度によ
って異なる相変態が生じることはないので、動作が保証
される動作範囲を広く取れるという効果がある。
また、形状記憶合金の動作温度が上昇するように、形
状記憶合金に予め応力を付与した状態で使用すれば、電
路保護素子の動作温度をさらに高く設定することができ
るという効果がある。
なお、本発明は電路保護素子に限定しているが、他に
センサを兼用したアクチュエータとしての用途も可能で
ある。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例の断面図、第2図は従来例の
一部破断正面図、第3図は他の従来例の要部破断正面
図、第4図乃至第14図は本発明の動作説明図、第15図乃
至第17図は従来例の動作説明図である。 7はプランジャー、8は形状記憶合金ばね、9はヒータ
コイル、12はバイアス付与ばねである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭53−28518(JP,A) 特開 昭53−138071(JP,A) 特開 昭56−153642(JP,A) 特開 昭57−148858(JP,A) 特開 昭57−189423(JP,A) 特開 昭60−128252(JP,A) 特開 昭60−221922(JP,A) 特開 昭60−230967(JP,A) 特開 昭61−147862(JP,A) 特開 昭62−76123(JP,A) 特開 平2−65028(JP,A) 実開 昭58−14641(JP,U) 実開 昭61−139552(JP,U) 実開 昭63−84840(JP,U)

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】電路に流れる電流を通電されるヒータコイ
    ルと、ヒータコイルに過電流が流れたときにヒータコイ
    ルの発生する熱により電路遮断機構を動作させるように
    形状変化する形状記憶合金と、ヒータコイルに短絡電流
    が流れたときにヒータコイルの発生する磁界により電路
    遮断機構を動作させるように駆動される磁性材料とを備
    える電路保護素子において、形状記憶合金はニッケル−
    チタニウム−銅系の形状記憶合金であり、且つ、形状記
    憶合金の形状変化に関与する相変態機構がオーソロミッ
    ク相変態であることを特徴とする電路保護素子。
  2. 【請求項2】ニッケル−チタニウム−銅系の形状記憶合
    金は、銅が6乃至12原子%、チタニウムが49乃至51原子
    %、残りニッケルの3元合金であることを特徴とする請
    求項1記載の電路保護素子。
  3. 【請求項3】前記3元合金に冷間加工を施し、合金の再
    結晶温度以下の温度で形状記憶のための熱処理を施し、
    合金内部に加工歪みを残した状態で使用することを特徴
    とする請求項2記載の電路保護素子。
  4. 【請求項4】熱処理温度が350乃至500℃であることを特
    徴とする請求項3記載の電路保護素子。
  5. 【請求項5】冷間加工率が10乃至40%であることを特徴
    とする請求項3記載の電路保護素子。
  6. 【請求項6】形状記憶合金は、動作温度が上昇するよう
    に予め応力を付与された状態で使用されることを特徴と
    する請求項1記載の電路保護素子。
  7. 【請求項7】銅が9.0±1原子%、チタニウムが49.4乃
    至50.5原子%、残りニッケルの組成であり、熱処理温度
    を450±20℃、冷間加工率を15乃至30%とすることを特
    徴とする請求項2又は4又は5記載の電路保護素子。
  8. 【請求項8】形状記憶合金に付与するばねせん断応力を
    20乃至250MPaの範囲とすることを特徴とする請求項7記
    載の電路保護素子。
  9. 【請求項9】形状記憶合金に付与するばねせん断歪みを
    1.2%以下としたことを特徴とする請求項7記載の電路
    保護素子。
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