JP2527895B2 - 衛星管制方法 - Google Patents

衛星管制方法

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JP2527895B2 JP4333179A JP33317992A JP2527895B2 JP 2527895 B2 JP2527895 B2 JP 2527895B2 JP 4333179 A JP4333179 A JP 4333179A JP 33317992 A JP33317992 A JP 33317992A JP 2527895 B2 JP2527895 B2 JP 2527895B2
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史武 沢田
浩 中村
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    • B64G1/00Cosmonautic vehicles
    • B64G1/22Parts of, or equipment specially adapted for fitting in or to, cosmonautic vehicles
    • B64G1/24Guiding or controlling apparatus, e.g. for attitude control
    • B64G1/242Orbits and trajectories

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  • Aviation & Aerospace Engineering (AREA)
  • Control Of Position, Course, Altitude, Or Attitude Of Moving Bodies (AREA)
  • Radio Relay Systems (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、衛星管制方法に関し、
特に静止軌道上の同一経度位置に複数の静止衛星を安全
に配置するための衛星管制方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】地球の赤道上空約36000kmの軌道
は、この軌道上に衛星を配するとその衛星の角速度が地
球自転の角速度に一致して、その衛星が見かけ上静止し
て見えるために、静止軌道と称される軌道である。この
静止軌道に配される人工衛星は静止衛星と称され、近年
通信,放送,気象などの各分野において世界的に多用さ
れているが、静止軌道は有限であって、現在では各国
毎,企業毎等に特定の実質的同一経度位置が適切に割当
てられてその経度位置での運用が義務づけられている。
【0003】ここに、特定の実質的同一経度位置とは図
1に示すように、ある経度(我国の放送衛星用の割当て
は東経110°)および緯度0°の位置を中心として東
西南北方向に±0.1°の領域であって、静止軌道上で
は東西南北方向に約150kmの領域であり、これに地
球半径方向に約50kmの厚みを持たせた略直方体の空
間内での静止衛星の運用が義務づけられているのであ
る。近年の通信,放送の分野における衛星の需要増大は
著しいものがあり、従って上記特定の空間(以下同一経
度位置という)に複数の衛星を衝突や同一経度位置から
の離脱なく安全に管制できるようにすることが強く要望
されている。
【0004】現在、我国では放送用に2基の静止衛星が
同一経度(東経110°)位置に配置されており、稼動
している。
【0005】図2はその経度分離方式の説明図である。
ここで、Ethは地球、EおよびWで示す矢印はそれぞ
れ東方向および西方向を示している。a′およびb′
は、それぞれ、稼動機の衛星およびバックアップ機の衛
星の存在範囲であって、これら2つの衛星は、東経11
0°近傍の領域は共有するものの、それぞれ東経110
°より−0.1°の領域および+0.1°の領域内に概
ね存在するよう同期をとって制御されている(なお、図
1では見易くすために範囲a′,b′を地球の半径方向
(図の上下方向)にずらして描いているが、実際にはこ
れら範囲の地球半径方向のずれはない)。
【0006】a′,b′の領域において、〜は衛星
の位置を示している。このように静止衛星の位置が変わ
るのは、次の理由による。すなわち、静止軌道上にある
衛星は見かけ上静止位置を保つのであるが、実際には地
球が真球でないこと、地球の重力分布が一様でないこと
等の影響により配置経度に応じた所定のレートでドリフ
トが生じる。そして東経110°の位置では略西方向に
ドリフトするのである(位置〜)。そこで、の位
置においてEWマヌーバと称する軌道修正を施す。これ
は、地球方向に向けて衛星が移動するよう、すなわち軌
道半径が小さくなるようジェット噴射により衛星の速度
を減速させる制御であり、これにより衛星はの位置に
向かって移動する。すると軌道半径が小となるので、衛
星の角速度が地球自転角速度に比して大となり、衛星は
略東方向に向けて変位して行き(位置〜)、当初の
軌道半径に到達した位置からは略西方向へのドリフト
が生じる。このように、経度分離されて配された衛星を
それぞれ所定領域a′,b′に存在するよう制御する方
式を経度分離方式と称するのである。なお、これら衛星
の移動の1サイクル(マヌーバ周期)はほぼ7〜14日
で運用されている。
【0007】複数の衛星を管制する軌道制御技術として
は、他に、1989年11月に仏国ツールーズで開催さ
れた「スペースダイナミクスに関するCNES国際シン
ポジウム」において、M.C.Ecksteinらによ
って提起された論文“COLOCATION STRA
TEGY AND COLLISION AVOIDA
NCE FOR THE GEOSTATIONARY
SATELLITES AT 19 DEGREES
WEST”に述べられた「軌道面・離心率分離方式」
と称されるものがある。この方式は、衛星軌道を3次元
的に捉え、衛星の軌道面の赤道面からの傾きの方向や大
きさを表わす軌道傾斜角ベクトル(iベクトル)を衛星
毎に定める所謂軌道面分離を行うとともに、実際には楕
円である衛星軌道の直径方向を表わす離心率ベクトル
(eベクトル)の向きを衛星毎に定めて所謂離心率分離
を行うものであり、この方式によれば衛星軌道を3次元
的に分離して衝突の危険性を著しく低減できる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】これら従来の衛星管制
方法にはそれぞれ次に述べるような問題点があった。
【0009】まず、経度分離方式については、そもそも
同一経度位置での東西方向の幅が有限であるので、配置
する衛星の数が増す程、各衛星に割当てられる領域が狭
小となり、その分衝突の危険性が増大する。また、その
領域内での移動の1サイクルが短くなるので、頻繁なE
Wマヌーバを施さなければならず、運用者の負担が大き
くなる。すなわち、経度分離方式では同一経度位置に配
置できる衛星の数が限られ、需要増大に伴う静止衛星の
多数配置の要請に十分に応えることができないのであ
る。
【0010】一方、軌道面・離心率分離方式を提唱した
上記論文には、4つの衛星を当該方式を用いて配置する
場合が示され、それら離心率ベクトルおよび軌道傾斜角
ベクトルをそれぞれのベクトル平面上90°の角度をも
って分離することについて述べられている。さらにn個
の衛星を配置する場合には離心率ベクトルおよび軌道傾
斜角ベクトルをベクトル平面上等角度となるように分離
すればよいと一般化しているが、衛星の個数が増すほど
衛星間の最接近距離が小となる旨が述べられている。す
なわち、上記論文では、軌道面・離心率分離方式を採る
場合、離心率ベクトルおよび軌道傾斜角ベクトルは極力
分離すべしとの提案がなれていると言うことができる。
【0011】しかしながら、宇宙空間においては、地球
の重力分布,太陽や月の重力の作用,太陽風などの種々
の要因により離心率ベクトルが変化する。かかる変化が
生じても当初設定された衛星間の分離角度を保持できる
のであればさほど問題はないが、変化の状態は全衛星に
ついて一様でなく、当初の分離角度が大であるほど衛星
間の分離角度の設定値からのずれが大きくなる傾向が見
られる。従って、離心率ベクトルを大きく分離させた管
制方法においては、離心率ベクトルの分離角度を保持す
るために管制が複雑となるので運用負荷が増大するのみ
ならず、マヌーバを施す頻度が高くなり、燃料消費もそ
れにつれて増大する。燃料が枯渇して姿勢制御,マヌー
バ等による軌道管制が不能になったときに人工衛星の寿
命が尽きると言えることから、上記問題にて提唱された
方式では衛星をできる限り長期間運用することについて
難があると言える。
【0012】本発明は、以上の問題点に鑑み、同一経度
位置に多数の衛星を安全に配置できるようにすることを
目的とする。
【0013】本発明の他の目的は、同一経度位置に多数
の衛星を管制する場合、衛星管制の運用負荷を軽減する
とともに管制するに要する燃料消費を抑制することにあ
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】そのために、本発明は、
静止軌道上の実質的同一経度位置の空間内に複数の人工
衛星を配置するための衛星管制方法において、前記複数
の人工衛星のうちいずれの2衛星についても、衛星軌道
の軌道傾斜角ベクトルを分離するとともに、配置された
人工衛星のドリフトを修正するためのマヌーバ周期にわ
たって、一定以上の衛星間距離を保ち得、かつ配置当初
からの分離角のずれが小さくなるように前記衛星軌道の
離心率ベクトルを分離して前記複数の人工衛星を配置す
る。
【0015】また、本発明は、静止軌道上の実質的同一
経度位置の空間内に3基以上の人工衛星を配置するため
の衛星管制方法いおいて、前記3基以上の人工衛星のう
ち少なくともいずれかの2衛星について、経度の分離を
行い、かつ衛星軌道の軌道傾斜角ベクトルを分離すると
ともに、配置された人工衛星のドリフトを修正するため
のマヌーバ周期にわたって、一定以上の衛星間距離を保
ち得、かつ配置当初からの分離角のずれが小さくなるよ
うに前記衛星軌道の離心率ベクトルを分離して前記3基
以上の人工衛星を配置する。
【0016】
【0017】
【0018】
【作用】本発明によれば、軌道傾斜角ベクトルの分離を
行うとともに、マヌーバによってドリフトの修正がなさ
れるまでの期間にわたって衝突の危険のない衛星間距離
を保ち得、かつ分離角のずれが少ないため頻繁なマヌー
バまたは大幅な調整を伴うマヌーバを要することのない
比較的小さな離心率ベクトルの分離角を用いるので、安
全に、かつ運用負荷や燃料消費の大幅な増大を来すこと
なく多数の衛星を衛星を静止軌道上の実質的同一経度位
置の空間内に配置することができる。また、3基以上の
衛星を配置するにあたり、少なくともいずれかの2衛星
の関係について上記したような軌道傾斜角ベクトルおよ
び離心率ベクトルの分離に加え、経度分離を行うこと
で、一層多数の衛星を安全に、かつ運用負荷等の大幅な
増大を伴うことなく配置を行うことができる。
【0019】また、3基以上の衛星配置にあたり、軌道
面・離心率分離方式と経度分離方式とを併用することに
よって、いずれかの方式を採る場合より多数の衛星を安
全に配置できる。
【0020】
【実施例】以下、図面を参照して本発明を詳細に説明す
る。
【0021】まずここで、人工衛星の飛行経路を表わす
パラメータである軌道要素について述べる。この軌道要
素を表現する方法の1つにケプラー軌道要素がある。こ
のケプラーの軌道要素には軌道長半径a(km)、離心
率e、軌道傾斜角i(度)、昇交点赤経Ω(度)、近地
点引数ω(度)および平均近点離角m(度)(または真
近点離角θ(度))の6種類があり、これらをある時刻
Tの軌道6要素と称する。
【0022】図3を用いてこれら要素の定義を述べれば
以下の通りである。
【0023】ア)軌道長半径 衛星が軌道上で最も地球に近い所を通過する点を近地点
と呼び、最も遠い点を遠地点と呼ぶ。それぞれの点の地
心からの距離をrp ,ra とすると、軌道長半径aは
【0024】
【数1】a=(rp +ra )/2 で表す。
【0025】イ)離心率 離心率は楕円のつぶれ方を表す無次元の数であり、
【0026】
【数2】e=ra /a−1 で与えられる。
【0027】eは0≦1であり、e=0は円軌道を意味
する。静止軌道に近いためには、eは非常に小さい値で
なければならない。
【0028】ウ)軌道傾斜角および昇交点赤経 軌道面の方向はiとΩで表される。軌道面とx−y平面
のなす角がiであり、0°≦i≦180°である。静止
軌道に近いときは、i≒0°である。昇交点は南から北
へ動く場合の軌道と赤道面との交点である。x軸と昇交
点の間の角が、昇交点赤経Ωであり、0°≦i≦360
°または−180°≦i≦−180°で定義される。
【0029】エ)近地点引数および平均近点離角 近地点引数ωは、昇交点を基準にした軌道面内における
楕円の方向を与える。また、平均近点離角mとは、一定
角速度で公転し、実際の衛星と同時に近地点を通過する
ような、仮想衛星の近点角をいう。一方、平均近点離角
に対し、真近点離角θは、衛星の軌道における真の位置
を与えるものである。
【0030】両者の間には、次のような関係がある。
【0031】
【数3】θ−m≒2e・sin m なお、軌道決定における暫定軌道要素の表示に上記ア〜
エのケプラー要素を用いると、静止軌道はe=0,i=
0であるのでΩ,ωが不定になる。そこで、ケプラー要
素の代りに、次の変形ケプラー要素を用いることがあ
る。
【0032】
【数4】
【0033】ここで、図4を用いて軌道面・離心率分離
方式を詳述する。当該方式は、軌道面a,bの傾斜角と
その方向(すなわち昇交点Ωa,Ωb)を適切に定め、
軌道面a,bの分離角ΔΩを得ることにより、衛星軌道
を緯度方向に分離する軌道面分離方式と、軌道が楕円で
あることを利用して楕円のふくらみの方向(離心率ベク
トルの方向、すなわち地心から近地点Pa,Pbへの方
向)と大きさとを適切に定め、離心率ベクトルの分離角
ΔEを得ることにより衛星軌道を半径方向に分離する離
心率分離方式とを組合せたものである。
【0034】M.C.Ecksteinらの上記論文に
よれば、前述したようにΔΩおよびΔEが分離されてい
るほど好ましく、そのために複数の衛星の軌道傾斜ベク
トルおよび離心率ベクトルをベクトル平面上等角度の位
置とすること、すなわち4衛星の場合にはΔE,ΔΩを
90°とすることを提唱しているが、分離角度が大きく
なる程衛星の運用負荷および燃料消費量が増大しうるこ
とについては前述した通りである。
【0035】そこで、本発明者らは、まず、軌道面・離
心率分離方式等について2衛星の衛星間距離や離心率ベ
クトル,軌道傾斜角ベクトルの推移を検定すべくシミュ
レーションを行った。シミュレーションには本出願人に
おいて開発した軌道計算プログラムを用いた。
【0036】図5はそのプログラムの概要を示す。これ
を用いて2衛星の軌道予測を行う場合には、まず2衛星
(衛星A,B)についてある時刻の軌道6要素等のデー
タの入力と計算期間の指定とを行い、その指定期間にお
ける太陽,月の位置などの天文歴情報や、地球の重力分
布および太陽輻射圧等、衛星の運用に影響を及ぼし得る
ファクタを格納したデータベースから所要の情報を取出
しつつ、当該計算期間における時々刻々の衛星位置を計
算して、それぞれの中間ファイルに格納する。
【0037】次に、この位置データをもとに指定された
期間の衛星間の距離を計算し、結果をグラフ出力すると
ともに各時刻の数値をリストに印字出力する。また、最
接近距離を正確に求めるため、上記の計算での衛星間距
離の最小値の前後の時間についてより細かな時間間隔で
衛星位置の計算を再度実行し、これをもとに再度衛星間
の距離を計算して真の最接近距離とその時刻を求め、グ
ラフおよびリストにこれを出力する。また、同様にiベ
クトル、eベクトルの変化もグラフ出力することができ
る。
【0038】以下にこのプログラムを用いて行ったシミ
ュレーションの内容を示す。
【0039】シミュレーションP:現行の管制方式であ
る経度分離方式の下で擬似的に経度差を小さくした場合 東経110°の赤道上空に配された我国の2基の放送衛
星BS−3aおよびBS−3bの実データをもとに初期
値の経度差をパラメータとし、0°,0.001
°,0.005°,0.01°,0.02°,
−0.001°および−0.005°の7つの場合に
ついてシミュレーションを行った。シミュレーション期
間は1992年2月29日午前9時より同年3月14日
午前9時までの14日間とした。
【0040】ここに、1992年2月29日午前9時現
在のの場合の軌道6要素および擬似的な経度位置(L
NG)は次の通りであった。
【0041】 BS-3a BS-3b a (KM) 42164.8970 42165.0063 e 0.0002813409 0.0002712615 i (DEG) 0.0282 0.0543 Ω (DEG) 208.3645 223.1382 ω (DEG) 131.8696 120.9545 θ (DEG) 287.8748 284.0162 LNG (DEG) 110.0461 110.0461 そして、〜の各場合に対応させてBS−3aのθの
値を変化させた。なお、この場合離心率ベクトルの角度
差は、両衛星についてのΩ+ωの差、すなわち約4°で
ある。
【0042】図6は本シミュレーションによる〜の
各場合の衛星間距離の推移をプロットしたものであり、
各場合において一点鎖線の円内に示すように、2衛星の
接近が認められる。
【0043】シミュレーションQ1:軌道面・離心率分
離方式の第1例として、上記Pに対して離心率ベクトル
の角度差を30°拡げた場合 BS−3bの近地点引数ωを150.9545、近地点
離角θを254.0162とした。そして、シミュレー
ションPと同様に〜の初期値の経度差をパラメータ
としてシミュレーションを行った。
【0044】図7は本シミュレーションによる〜の
各場合の衛星間距離の14日間の推移をプロットしたも
のであり、各場合について2衛星は略5km以上の距離
を安定的に保っていることがわかる。
【0045】シミュレーションQ2:軌道面・離心率分
離方式の第2例として、上記Q1に対して離心率eの値
を3a,3bともに若干大きくするとともに、軌道傾斜
角ベクトルの角度差を30°に拡げ軌道面分離をより明
確にした場合 BS−3a,Bs−3bともにeを0.00035とし
た。また、BS−3bのΩを238.3645°、ωを
135.7282、θを254.0162とした。そし
て、シミュレーションPと同様に〜の初期値の経度
差をパラメータとしシミュレーションを行った。
【0046】図8は本シミュレーションによる〜の
各場合の衛星間距離の推移をプロットしたものであり、
各場合について2衛星は略8km以上の距離を安定的に
保っていることがわかる。
【0047】シミュレーションQ3:軌道面・離心率分
離方式の第3例として、上記シミュレーションQ2の
の場合に対し、離心率ベクトルの角度差をパラメータと
して変化させた場合 角度差を(イ)30°,(ロ)60°,(ハ)90°,
(ニ)120°および(ホ)180°としてシミュレー
ションを行った。
【0048】図9は本シミュレーションによる(イ)〜
(ホ)の各場合の衛星間距離の推移をプロットしたも
の、図10は同じく離心率ベクトルの推移(成長)をプ
ロットしたものである。図9から、離心率ベクトルの角
度差が大きいほど衛星間距離を大きく安定的に保つこと
ができることがわかるが、一方図10から明らかなよう
に離心率ベクトルの推移(成長の方向)がほぼ等しいた
めに、当初の角度差(ΔE)と2週間経過後の角度差
(ΔE′)とを比較すると、当初の角度差が大であるほ
どその角度差が維持できなくなることがわかる。
【0049】シミュレーションR:離心率は分離するが
軌道面を同一にした場合 上記シミュレーションQ2に対して衛星BS−3aおよ
びBS−3bのi,Ωの値を同一にした。すなわち、B
S−3bのiを0.0282、Ωを208.3645、
ωを165.7282、θを254.0162とした。
そして、シミュレーションPと同様に〜の場合の初
期値の経度差をパラメータとしシミュレーションを行っ
た。
【0050】図11は本シミュレーションによる〜
の各場合の衛星間距離の推移をプロットしたものであ
り、離心率を分離するのみでは2衛星の接近またはその
傾向が認められることがわかる。
【0051】以上は本発明者らが行ったシミュレーショ
ンのうちの数例であるが、本発明者らはシミュレーショ
ンを考察して次の如き結論を得た。
【0052】(1) 軌道面・離心率分離を行うこと
で、衛星間距離を安定的に一定距離に保ち得ることが検
証された。
【0053】(2) シミュレーションQ1,Q2よ
り、2衛星の離心率ベクトルを上掲論文にて提唱された
如く極力角度差を持たせたものとするのではなく、比較
的小さな角度差、例えば30°程度としても2週間(1
4日間)にわたって衛星間距離を安定して5〜7km以
上に保つことができることが確認された。これは、例え
ば春分点方向をX、赤道面内においてX方向に直交する
方向をY、極方向をZとする座標系において、2衛星間
のX,YまたはZ方向の座標成分のいずれかに安定した
相対的偏位差が存在するためであり、本発明者らは別途
行ったシミュレーションによりこれを確認した。
【0054】(3) シミュレーションQ3より、2衛
星の離心率ベクトルの角度差のずれ量は、当初設定した
角度差が大であるほど増す傾向が確認されたので、角度
差は上掲論文の如く極力大とするよりもむしろ小である
方が軌道管制のための燃料節約の点からも好ましい。
【0055】(4) 離心率分離を適用するには離心率
の大きさは適度に大きい方が衛星間距離を保てる(0.
00035程度以上)。
【0056】(5) 軌道面・離心率分離を行った上
で、できるだけ経度差をもたせると、より安全である。
【0057】(6) 離心率のみ分離しても軌道面が同
一の場合、接近が発生し危険性が増すので、軌道面分離
を行うべきであるが、軌道傾斜角ベクトルの角度差は上
掲論文のように必ずしも大とするのではなく、適切に大
きさ,角度を定めればよい。
【0058】上述したシミュレーションならびにそれら
より得た結論に基づいて、本発明者らは以下のようない
くつかの複数衛星の管制方法を提案する。
【0059】第1は、図12(A)に示すように、所定
方向、例えば衛星の初期配置時の太陽赤経(ある日時の
太陽の位置を、地心を原点とする慣性座標系上で春分点
を基準とする経度方向の角度として表わしたもの)の方
向を基準に選び、離心率ベクトルが当該方向となる軌道
をとる衛星bを配置するとともに、離心率ベクトルが当
該方向とベクトル平面上進み方向および/または遅れ方
向に適当な分離角を隔てたものである軌道をとる第2の
衛星aおよび/または第3の衛星cを、基準方向につい
て例えば対称に(すなわちほぼ等角度に)配置するもの
である。そして、衛星数を3基からさらに増す場合に
は、ベクトル平面上の衛星aに対する進み方向および/
または衛星bに対する遅れ方向にさらに適当な分離角を
隔てて第4の衛星pおよび/または第5の衛星qを配置
し、さらに必要に応じて衛星を同様に配置して行けばよ
い。
【0060】第2は、図12(B)に示すように、基準
方向には衛星を配置せず、ベクトル平面上その基準方向
をはさんで適当な分離角を隔てた離心率ベクトルの2衛
星a,bを例えば対称に配置するものである。そして、
衛星数を2基からさらに増す場合には、ベクトル平面上
の衛星aに対する進み方向および/または衛星bに対す
る遅れ方向にさらに適当な分離角を隔てて第3の衛星p
および/または第4の衛星qを配置し、さらに必要に応
じて衛星を同様に配置して行けばよい。
【0061】これらにおける離心率ベクトルの分離角
は、上掲論文で提唱された如く極力大きい角度とすべし
とすることとは思想を全く異にする。すなわち、本発明
では、マヌーバによって軌道の調整がなされるまでの周
期(通常は2週間程度)である所定期間にわたって衝突
の危険のない安全な距離を保ち得、かつその分離角のず
れが少なく、頻繁な調整もしくはマヌーバ時期における
大幅な調整を施さなくても足りる分離角をもって衛星を
配置するのである。また、軌道傾斜角ベクトルの分離角
についても、必ずしも極力大とする必要はなく、シミュ
レーション結果から明らかなように、適度に軌道面が分
離されていればよいとするのである。
【0062】上述シミュレーションQ3では、2衛星の
離心率ベクトルの分離角を30°〜180°とし、これ
が30°でも本発明の思想を具現化できるとの結論を得
たが、本発明者らは同様の条件で離心率ベクトルの分離
角を5°刻みで10°〜25°に変化させてシミュレー
ションを行った。その結果を図13(A)〜(D)に示
す。さらに、そのシミュレーションで得た2衛星の最接
近距離Rkmと、上記シミュレーションQ3で得た2衛
星の最接近距離Rkmとを角度に対応させて図14に示
すようにプロットした。この図より、分離角と最接近距
離とは略線形の関係にあり、シミュレーションQ3で述
べたような条件下では、例えば分離角を10°程度とし
ても十分であることがわかる。すなわち、離心率ベクト
ルの分離角は、安全な距離を安定して保つことができ、
分離角のずれを少なくすることができれば、マヌーバ周
期,軌道傾斜角ベクトルの分離角その他の所要のファク
タに応じて適宜設定できるのである。また、3以上の衛
星について分離角を均一なものとしなくてもよい。
【0063】本発明者らはさらに、軌道面・離心率分離
を行うと同時に経度分離を行う方式を提起する。これは
軌道傾斜角ベクトルおよび離心率ベクトルを分離した各
位置に対し、図2に示したように経度を分離してそれぞ
れ複数の衛星を配置するものである。すなわち、この場
合衛星は、軌道面・離心率分離した位置の数に、経度分
離した位置の数を乗じた個数だけ配置できる。そして、
各衛星間の関係で言えば、いずれか2衛星は、軌道傾斜
角ベクトルおよび離心率ベクトルの分離を行って軌道の
緯度分離および半径分離はなされるが経度は分離されて
いない関係、軌道の経度分離はなされるが緯度分離およ
び半径分離はされていない関係、または、図15に示す
ように軌道が緯度,半径および経度のすべてについて分
離された関係をとることになる。
【0064】なお、この方式の場合、軌道傾斜角ベクト
ルおよび離心率ベクトルの分離角を図12(A),
(B)に関連して述べたように定めることもできる。
【0065】以上に基づく複数(3基以上)の衛星の具
体的な管制方法のモデルの数例を示す。なお、それらは
あくまでも例であって、本発明の思想を逸脱しない範囲
で種々の配置をとりうるのは言うまでもない。
【0066】図16は経度を分離せずに軌道面・離心率
分離方式のみを得る場合の一例として、図12(A)に
ついて説明した方式を用いて3衛星を配置する場合を示
し、同図(A)は衛星a,bおよびcの14日間にわた
る経度運用の説明図、同図(B)は同じく離心率ベクト
ルの遷移図、同図(C)は同じく軌道傾斜角ベクトルの
遷移図である。なお、同図(A)は衛星a,bおよびc
がすべて110°±0.1°内の同一経度範囲で運用さ
れることを説明するためのもので、それぞれの軌道に基
づく実際の位置をプロットしたものではない。
【0067】本例の場合、衛星aとbとの関係、衛星b
とcとの関係、および衛星aとcとの関係のすべてにつ
いて軌道面・離心率分離方式が採られることになる。
【0068】図17は軌道面・離心率分離方式と経度分
離方式とを併用する場合の一例として、図12(A)に
ついて説明した方式と図2について説明した方式とを用
いて4衛星を配置する場合を示し、同図(A)は14日
間にわたる衛星aおよびxとbおよびyとの経度運用の
説明図、同図(B)は同じく衛星aおよびbとxおよび
yとの離心率ベクトルの遷移図、同図(C)は同じく衛
星aおよびbとxおよびyとの軌道傾斜角ベクトルの遷
移図である。なお、同図(A)は、衛星aおよびbの組
と衛星xおよびyの組とが同一経度位置でそれぞれ異な
った範囲で運用されることを説明するためのもので、各
衛星の軌道に基づく実際の位置をプロットしたものでは
ない。
【0069】本例の場合、衛星aとbとの関係、および
衛星xとyとの関係では軌道面・離心率分離のみがなさ
れ、衛星aとxとの関係および衛星bとyとの関係では
経度分離のみがなされ、衛星aとyとの関係および衛星
bとxとの関係では軌道面・離心率分離および経度分離
の双方がなされている。
【0070】図18は軌道面・離心率分離方式と経度分
離方式とを併用する場合の一例として、図12(A)に
ついて説明した方式と図2について説明した方式とを用
いて6衛星を配置する場合を示し、同図(A)は14日
間にわたる衛星aおよびxとbおよびyと、cおよびz
との経度運用の説明図、同図(B)は同じく衛星a,b
およびcとx,yおよびzとの離心率ベクトルの遷移
図、同図(C)は同じく衛星a,bおよびcとx,yお
よびzとの軌道傾斜角ベクトルの遷移図である。なお、
同図(A)は、衛星a,bおよびcの組と衛星x,yお
よびzの組とが同一経度位置でそれぞれ異なった範囲で
運用されることを説明するためのもので、各衛星の軌道
に基づく実際の位置をプロットしたものではない。
【0071】本例の場合、衛星a,bおよびcの相互関
係および衛星x,yおよびzの相互関係では軌道面・離
心率分離のみがなされ、衛星aとxとの関係、衛星bと
yとの関係および衛星cとzとの関係では経度分離のみ
がなされ、その他の関係では軌道面・離心率分離および
経度分離の双方がなされている。
【0072】図19は本発明を実施するにあたっての管
制システムの一例を示す。この図に示すように、本発明
を用いて複数衛星を管制する場合には、まず本管制方法
に従って複数衛星についての離心率ベクトル,軌道傾斜
角ベクトルおよび経度の制御目標値を定め、管制制御計
算機に軌道制御コマンドを作成する。次に無線管制設備
およびアンテナを介し、計算機上の軌道制御コマンドを
各衛星に送信する。そして、各衛星は、その軌道制御コ
マンドに従ってスラスタ噴射を行い、目標とする軌道を
飛行するよう制御を行うのである。
【0073】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
同一経度位置に多数の衛星を安全に配置できるととも
に、衛星管制に要する燃料消費を抑制することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】静止衛星の軌道上の保持範囲を説明するための
説明図である。
【図2】現行の管制方法である経度分離方式の説明図で
ある。
【図3】衛星の軌道要素の説明図である。
【図4】本発明管制方法に係る軌道面・離心率分離方式
の説明図である。
【図5】本発明管制方法を提起するにあたって用いた2
衛星間の距離等を計算するためのプログラムの概要を示
すフローチャートである。
【図6】軌道傾斜角ベクトルおよび離心率ベクトルをほ
とんど分離しない場合の衛星間距離の推移のシミュレー
ション結果を示す図である。
【図7】図6に対し、離心率ベクトルの角度差を拡大し
た場合の衛星間距離の推移のシミュレーション結果を示
す図である。
【図8】図6に対し、離心率ベクトルおよび軌道傾斜角
ベクトルの角度を拡大した場合の衛星間距離の推移のシ
ミュレーション結果を示す図である。
【図9】図8に対し、離心率ベクトルの角度差を種々変
化させた場合の衛星間距離の推移のシミュレーション結
果を示す図である。
【図10】同じく離心率ベクトルの成長のシミュレーシ
ョン結果を示す図である。
【図11】図8に対し、軌道傾斜角ベクトルを同一とし
た場合の衛星間距離の推移のシミュレーション結果を示
す図である。
【図12】(A)および(B)は本発明による衛星配置
の2例を説明するためのベクトル平面上の離心率ベクト
ル分離方法の説明図である。
【図13】(A)〜(D)は図8に対し離心率ベクトル
の角度差をさらに変化させた場合の衛星間距離の推移の
シミュレーション結果を示す図である。
【図14】離心率ベクトルの角度差と2衛星の最接近距
離との関係をプロットした図である。
【図15】軌道が緯度,半径および経度のすべてについ
て分離された状態の説明図である。
【図16】(A),(B)および(C)は、本発明の具
体的な管制方法のモデルの一例として、それぞれ3衛星
の経度運用,離心率ベクトルの推移および軌道傾斜角ベ
クトルの推移の説明図である。
【図17】(A),(B)および(C)は、同じく他の
例として、それぞれ4衛星の経度運用,離心率ベクトル
の推移および軌道傾斜角ベクトルの推移の説明図であ
る。
【図18】(A),(B)および(C)は、同じくさら
に他の例として、それぞれ6衛星の経度運用,離心率ベ
クトルの推移および軌道傾斜角ベクトルの推移の説明図
である。
【図19】本発明を実施するための管制システムの一例
を示す図である。
【符号の説明】
Eth 地球 Pa,Pb 近地点 Ωa,Ωb 昇交点 a,b,c,p,q,x,y,z 人工衛星
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 寺田 茂 東京都渋谷区神南2−2−1 日本放送 協会内 (56)参考文献 特開 平2−128996(JP,A) 特公 昭63−19400(JP,B2)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 静止軌道上の実質的同一経度位置の空間
    内に複数の人工衛星を配置するための衛星管制方法にお
    いて、 前記複数の人工衛星のうちいずれの2衛星についても、
    衛星軌道の軌道傾斜角ベクトルを分離するとともに、配
    置された人工衛星のドリフトを修正するためのマヌーバ
    周期にわたって、一定以上の衛星間距離を保ち得、かつ
    配置当初からの分離角のずれが小さくなるように前記衛
    星軌道の離心率ベクトルを分離して前記複数の人工衛星
    を配置することを特徴とする衛星管制方法。
  2. 【請求項2】 静止軌道上の実質的同一経度位置の空間
    内に3基以上の人工衛星を配置するための衛星管制方法
    において、 前記3基以上の人工衛星のうち少なくともいずれかの2
    衛星について、経度の分離を行い、かつ衛星軌道の軌道
    傾斜角ベクトルを分離するとともに、配置された人工衛
    星のドリフトを修正するためのマヌーバ周期にわたっ
    て、一定以上の衛星間距離を保ち得、かつ配置当初から
    の分離角のずれが小さくなるように前記衛星軌道の離心
    率ベクトルを分離して前記3基以上の人工衛星を配置す
    ることを特徴とする請求項1に記載の衛星管制方法。
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