JP2521240B2 - プロモ―タ― - Google Patents

プロモ―タ―

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JP2521240B2
JP2521240B2 JP6281492A JP28149294A JP2521240B2 JP 2521240 B2 JP2521240 B2 JP 2521240B2 JP 6281492 A JP6281492 A JP 6281492A JP 28149294 A JP28149294 A JP 28149294A JP 2521240 B2 JP2521240 B2 JP 2521240B2
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galactosidase
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yeast
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雅彦 田村
健一 橋爪
紀児 小川
邦康 後藤
孝之 小幡
昌道 原
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KOKUZEICHO CHOKAN
Nippon Tensai Seito KK
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KOKUZEICHO CHOKAN
Nippon Tensai Seito KK
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    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P20/00Technologies relating to chemical industry
    • Y02P20/50Improvements relating to the production of bulk chemicals
    • Y02P20/52Improvements relating to the production of bulk chemicals using catalysts, e.g. selective catalysts

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  • Bakery Products And Manufacturing Methods Therefor (AREA)
  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はサッカロマイセス・オレ
アギノーサス(Saccharomycesoleag
inosus)より抽出したα−ガラクトシダーゼ遺伝
子のプロモーターに関するものである。
【0002】本発明は、α−ガラクトシダーゼ遺伝子の
構造解明にも成功したものであって、本発明に係るプロ
モーター配列とともに分泌配列及び構造遺伝子をベクタ
ーに導入し、得られた組換えプラスミドを用いることに
より、α−ガラクトシダーゼの大量生産はもとより他の
異種蛋白を効率よく分泌させる技術にも応用することが
できるものである。
【0003】
【従来の技術】α−ガラクトシダーゼは、メリビオース
やラフィノースの様なα−ガラクトシドに作用して糖鎖
の非還元末端のα−ガラクトシドを分解する酵素であっ
て、甜菜糖製造工業においては糖液中に含有するラフィ
ノースが蔗糖の結晶作用を阻害するなど製糖作業に有害
物となっていることより、アブシディアあるいはモルチ
ェレラ等の糸状菌菌体含有のα−ガラクトシダーゼを利
用して糖液中のラフィノースの分解除去を行い、製糖作
業の改善、砂糖収量歩留りの向上を図っている。
【0004】一方、製パン業におけるパン用酵母に使用
されているサッカロマイセス・セレビシエ(S.cer
evisiae)の培養に用いる糖質源は甘蔗糖蜜、甜
菜糖蜜などの糖蜜が用いられているが、甜菜糖蜜にあっ
ては、その中に非発酵性糖分を含むため、含有する全糖
質分を発酵原料に利用することができない。
【0005】また近年の製糖技術の発達に伴いこれら糖
蜜中の発酵性糖分は減少傾向にあり、パン用酵母の培養
には好ましくない無機、有機化合物の濃度が高くなって
いる。
【0006】前記甜菜糖蜜中における非発酵性糖分は主
にラフィノースであるが、パン用酵母サッカロマイセス
・セレビシエはこれを資化できないため、甜菜糖蜜を使
用する場合、ラフィノースの糖分利用について、1/3
発酵といわれているものしか行われていない。すなわ
ち、ラフィノースはガラクトース、グルコース、フラク
トースからなる3糖類であるが、これに対してサッカロ
マイセス・セレビシエは、グルコースとフラクトースの
結合は切るがガラクトースとグルコースからなるメリビ
オースを残しているものである。
【0007】本発明は、このような技術の現状におい
て、α−ガラクトシド結合を切断する酵素であるα−ガ
ラクトシダーゼの効率的利用を遺伝子レベルでとらえ且
つそれにはじめて成功したものである。
【0008】α−ガラクトシダーゼまたはメリビアーゼ
の遺伝子に関し、サッカロマイセス・カールスベルゲン
シス(Saccharomyces carlsber
gensis)由来のものは最近になってその構造が解
明されてはいるが(特表昭62−502025号)、本
発明に係るサッカロマイセス・オレアギノーサス(Sa
ccharomyces oleaginosus)由
来のα−ガラクトシダーゼ遺伝子とは、後記するところ
からも明らかなようにその構造が相違しており、両者は
全く別異のものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記酵母由
来のα−ガラクトシダーゼ遺伝子の解明を目的としてな
されたものであるが、その最終目標のひとつは、ラフィ
ノースを含有する糖蜜を充分に発酵資化しうるパン酵母
の開発、つまり特にビート糖蜜培地を用いても充分に培
養しうるパン酵母の開発である。
【0010】またそれに関連して、本発明は、ビート糖
液中に存在するラフィノースを分解してビート糖の収率
を高めるために従来用いられていた糸状菌に代りうる新
しい菌体を開発することもその最終目標とするものであ
る。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記最終目標
を達成するのに適した微生物を遺伝子工学的手法によっ
て創製することとし、その過程において、上記目的を達
成するのに成功したものである。
【0012】そこで先ず、本発明者らは、上記のような
糖資源として、糖蜜中に含まれている非発酵性糖分、特
にラフィノースについて注目し、パン酵母と同属の酵母
中より抽出したα−ガラクトシダーゼ発現に関与してい
る遺伝子をプラスミドベクターに挿入した組換えDNA
を得、この組換えDNAをサッカロマイセス・セレビシ
エに導入して形質転換すれば非発酵性糖分のラフィノー
スも資化し得るパン用酵母となし得るので、本発明者ら
は、先ずはじめに、このパン用酵母に導入し得るプラス
ミドを開発することとした。
【0013】そして酵母におけるα−ガラクトシダーゼ
遺伝子を求めて、本発明者らは酵母中よりラフィノース
発酵性の強い菌株について順次スクリーニングを行った
結果、サッカロマイセス・オレアギノーサス(S.ol
eaginosus)にその存在を認め、α−ガラクト
シダーゼ遺伝子を抽出する菌株としてサッカロマイセス
・オレアギノーサスIFO 1998を選択した。以下
本発明について詳細に説明する。
【0014】まずα−ガラクトシダーゼの発現に関与し
ている遺伝子を含有するDNAの調製について述べる
と、サッカロマイセス・オレアギノーサスは通常の酵母
培養法により培養して培養物を得ることができる。培養
する培地としてはYPD培地(酵母エキス1%、ペプト
ン2%、グルコース2%)などが使用できる。
【0015】このようにして得られた培養物は、通常3
000rpmで3分間程度遠心集菌し、サッカロマイセ
ス・オレアギノーサスの菌体を得る。
【0016】得られた菌体から、例えばロドリゲスらの
方法第167頁〜第169頁(Rodoriguez
and Tait:Recombinant DNA
Techniques (Addison−Wesle
y Pub.Co.)(1983))により、染色体D
NAを得ることができる。
【0017】ついでこの染色体DNAは、突出末端を生
じさせる製限酵素Bam HI(日本ジーン製)または
Bam HIとアイソシゾマーである制限酵素Sau
3AI(日本ジーン製)で部分分解し、部分分解DNA
を得る。
【0018】このようにして得た部分分解DNAは、調
製用電気泳動装置ELFEシステム(Genofit
製)を使用し、アガロース電気泳動法により分画して、
サッカロマイセス・オレアギノーサスより抽出したα−
ガラクトシダーゼの発現に関与している遺伝子を含む分
画した部分分解DNAを得る。
【0019】次に本発明において用いることができるベ
クターDNAとしては、酵母と大腸菌の両方を形質転換
できるシャトルベクターを使用するもので、例えばプラ
スミドベクターYEp 13(James,R.Bro
ach et.al.:GENE Vol.8 121
−133(1979))などが好ましい。
【0020】上記シャトルベクターYEp 13のテト
ラサイクリン耐性遺伝子部位に唯一存在する制限酵素B
am HI切断部位を、制限酵素Bam HI(日本ジ
ーン製)を用い、酵素濃度2〜3units/ベクター
1μg、温度37℃で1時間以上作用させて切断し、ベ
クターDNAを得る。次いでDNAリガーゼを作用させ
た場合、ベクター自身での自己環状化を防ぐため、切断
したベクターをアルカリフォスファターゼで処理し、D
NAの5′末端の燐酸基を除去する。使用できるアルカ
リフォスファターゼには、BAP(Bacterial
Alkaline Phosphatase)あるい
はCIP(Calf Intestinal Phos
phatase)がある。
【0021】CIP(ベーリンガーマンハイム製)を、
切断したベクターDNAに酵素濃度0.003unit
s/ベクター1μg、温度45℃で1時間作用させた
後、同量の酵素を再添加し、温度45℃で1時間作用さ
せ、5′末端の脱燐酸を行なったベクターDNAを得
る。
【0022】次いで先に述べたサッカロマイセス・オレ
アギノーサスより抽出したα−ガラクトシダーゼの発現
に関与する遺伝子を含有する部分分解DNA(以下パッ
センジャーDNAという)とベクターDNAを混合し
て、DNAリガーゼを用いて組換え体DNAを作成す
る。例えばDNAライゲーションキット(宝酒造製)を
使用した場合、DNA混合溶液1容に対し4〜5倍容の
A液と1容のB液を添加混合し、温度16℃で30分か
ら12時間保温して作用させ、反応後にイソプロパノー
ル沈殿として組換え体DNAを回収する。
【0023】この組換え体DNAを用いて、大腸菌AG
IあるいはSCS1(いずれもフナコシ薬品より購入)
等の形質転換を塩化カルシウム/塩化ルビジウム法によ
り行い、組換え体DNAの増幅を行い、増幅した組換え
体DNAはアルカリSDS法により抽出する。
【0024】この組換え体DNAを用いてサッカロマイ
セス・セレビシエ例えばDBY 746株の形質転換を
行い、形質転換した菌体はグルコース1%、ラウシル、
トリプトファン、ヒスチジンを各々24ppm含むMM
寒天培地に塗沫し、通常30℃、好ましくは25℃でコ
ロニーが形成するまで培養した後α−ガラクトシダーゼ
生産株を検出し得ることができる。
【0025】この組換え体DNAによる酵母の形質転換
はプロトプラスト法、アルカリ金属法等によって行うこ
とができる。
【0026】また、α−ガラクトシダーゼ生産株の検出
には指示薬を用いる方法が適宜使用される。例えば指示
薬としては、X−α−gal(5‐ブロモ−4−クロロ
−3−インドリル−α−D−ガラクトピラノシド)を用
い、このX−α−gal(和光純薬製)を200ppm
含む軟寒天MM培地を重層すれば、コロニーが染色され
るので目的菌株を検出することができる。
【0027】上記の様にして得られたサッカロマイセス
・オレアギノーサスより抽出したα−ガラクトシダーゼ
の発現に関与する遺伝子を含有するパッセンジャーDN
AをベクターDNAに挿入した組換え体DNAにより形
質転換されてα−ガラクトシダーゼを生産する酵母につ
いて、これを培養することにより酵素を発現せしめる。
【0028】そしてこの発現したα−ガラクトシダーゼ
について、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動を行っ
た後、ニトロセルロース膜にブロッティングし、抗α−
ガラクトシダーゼ血清と結合したものをプロテインA法
により分子量を測定したところ、62,000付近と検
出され、サッカロマイセス・オレアギノーサスの生産す
るα−ガラクトシダーゼの分子量と一致し、他の生化学
的性質も一致した。
【0029】また、α−ガラクトシダーゼを発現した酵
母を形質転換したサッカロマイセス・オレアギノーサス
より抽出したパッセンジャーDNAを組込んだYEp
13組換え体ベクターは、発現した酵母よりこれを抽出
して大腸菌に導入し、大腸菌形質転換体を得たが、それ
らの菌株は後記するように微生物工業技術研究所(現生
命工学工業技術研究所)にそれぞれ寄託されている。
【0030】上記したように、本発明によれば大腸菌形
質転換体が作成できるだけでなく、本発明のサッカロマ
イセス・オレアギノーサスより抽出したα−ガラクトシ
ダーゼの発現に関与する遺伝子を含有するパッセンジャ
ーDNAを含むDNAは、サッカロマイセス・セレビシ
エを始めYEp 13の持つ2μm DNA複製開始点
を利用しプラスミドの複製を行える酵母及びその他の微
生物に導入して形質転換することができ、それぞれの形
質転換体を得ることができる。
【0031】そして本発明においては、これらの形質転
換体には、単離した形質転換体自体のほか、それを培養
して得た培養液及び/又は菌体含有物等の培養物、これ
らを濃縮、乾燥、又は希釈した処理物が広く包含され
る。
【0032】これらの形質転換体を適宜培養すれば、α
−ガラクトシダーゼが菌体外及び/又は菌体内に産生さ
れるので、酵素製法における常法にしたがって、酵素含
有物、酵素液、粗製酵素等としてこれを採取し、必要あ
れば精製して純粋な酵素として分離すれば、α−ガラク
トシダーゼが得られる。
【0033】このように本発明に係る形質転換体は、α
−ガラクトシダーゼ産生能にすぐれているので、ラフィ
ノースやメリビオースを分解ないし発酵せしめることが
でき、ガラクトース及びグルコースとすることができ
る。また、例えばS.セレビシエ等にあっては、グルコ
ースとフラクトースの結合も本来切断しうるものである
ので、この形質転換体を用いた場合には、メリビオース
はもとよりラフィノースも完全に3種類の単糖に分解す
ることができる。換言すればメリビオース、ラフィノー
スからガラクトース、グルコース、更にはフラクトース
を製造することができるのである。
【0034】上記のほか、この形質転換体の有用な応用
としては特にビート糖液の処理が挙げられる。ビート糖
液には砂糖の結晶作用を阻害する有害物質としてラフィ
ノースが含有されているのであるが、糖液をこの形質転
換体で処理すれば、それが産生するα−ガラクトシダー
ゼの作用によってラフィノースが分解除去されるため、
製糖作業が向上し砂糖の収率も大幅に増加する。
【0035】また、従来、ビート廃糖蜜やビート糖洗液
その他ビート工場からの廃水にはラフィノースといった
難発酵性ないしは非発酵性糖が含まれているが、本発明
を利用すれば上記したような形質転換体を用いて廃糖
蜜、又はそれを含んだ廃水を処理することが可能とな
り、公害防止技術としても本発明はすぐれている。もち
ろん、ビート糖蜜やその関連廃水のみでなく、ラフィノ
ースやメリビオース等α−ガラクトシド結合を有する糖
類を含有する廃水であればすべての廃水も本発明によっ
て有効に処理することができる。
【0036】そのうえ、廃糖蜜は、バイオテクノロジー
や発酵工業において培地として多用されるものである
が、従来、パン酵母はラフィノースを1/3しか発酵す
ることができないため、ラフィノースを含有する甜菜糖
蜜はパン酵母の培養には適していなかった。しかしなが
ら、本発明に係る形質転換体で廃糖蜜を予じめ処理して
おいたり、あるいは本発明にしたがって形質転換したパ
ン酵母を使用したりすれば、甜菜糖蜜もパン酵母用の好
適培地として充分に使用することができる。このように
して甜菜糖蜜を処理しておけば、パン酵母のみならずα
−ガラクトシダーゼを有しない微生物であっても、これ
を甜菜糖蜜で充分効率的に生育、培養することができる
のである。
【0037】更にまた本発明においては、上記のように
してS.オレアギノーサスIFO1998よりクローニ
ングしたα−ガラクトシダーゼ遺伝子について、ディレ
ーションプラスミドを用いる方法を利用してその構造を
解明し、塩基配列を決定するのに成功したものである。
【0038】すなわち、先ずはじめにDNA発現用のベ
クター(YEp 13等)に挿入されているDNA断片
をシークエンス用ベクターにつなぎ換える。ここに、シ
ークエンス用ベクターは、外来DNAを組み込むために
そのベクターをただ1ヶ所切断する制限酵素の切断点を
複数個連ねた構造(マルチクローニングサイト)を持
ち、挿入された外来DNAをM13ファージ粒子に組み
込ませて培地中に放出するためのDNA配列と、外来D
NAを鋳型としてシークエンス反応を行うための相補鎖
の合成開始部位(プライマー)等を備えたベクターであ
る。
【0039】シークエンス用ベクターとしては、pUC
118、pUC119といったpUC系ベクターのほか
に、pB1uescript等が知られているが、本発
明における塩基配列の決定には後者のベクターを用い
た。
【0040】塩基配列の決定はシークエンス用ベクター
につなぎかえられたDNA断片の一端から順に行うが、
一度に読み取れる範囲は最大で400ベースなので、読
み取るDNAを一端から順に300ベース程度ずつ何段
階か欠失させたプラスミド(ディレーションプラスミ
ド)を作成しなければならない。
【0041】このようにして多数のディレーションプラ
スミドを作成した後、オートシークエンサーでデータを
読み取りこれらをつなぎ合わせて、α−ガラクトシダー
ゼ遺伝子のプロモーター、分泌配列、構造遺伝子のすべ
てを含む塩基配列を決定し、図3、図4、図5に示すよ
うな結果を得た。
【0042】これらの塩基配列は、S.カールスベルゲ
ンシス由来のメリビアーゼ遺伝子のそれとは異なること
も明らかにされ(図6〜図12、図14)、本発明に係
るα−ガラクトシダーゼ遺伝子が新規物質であることも
確認された。
【0043】本発明にしたがってα−ガラクトシダーゼ
遺伝子を利用することによって、前記したようにα−ガ
ラクトシダーゼ関連の各種の有効利用の途が拓けるほ
か、この遺伝子には菌体外に蛋白質を分泌するためのシ
グナル配列が含有されているので、この分泌能力を利用
した異種蛋白分泌ベクターも構築することができ、各種
の蛋白質の大量生産に本発明を利用することも可能であ
る。
【0044】
【実施例】以下実施例を挙げて、本発明をさらに具体的
に説明する。
【0045】(1)酵母染色体DNA(パッセンジャー
DNAの調製) サッカロマイセス・オレアギノーサスIFO 1998
株をYPD培地(酵母エキス1%、ペプトン2%、グル
コース2%)500mlに接種し、温度30℃で約36
時間振とう培養し、培養物を得た。この培養物を3,0
00rpmで3分間遠心分離処理し、得られた湿潤菌体
を20mlのSB液(0.2M Tris. Cl、1
M Sorbitol、0.1M EDTA、0.1M
2−mercaptoethanol、pH7.5)
に懸濁し、これに細胞壁溶解酵素ザイモリエース20−
T(生化学工業製)をTEN液(10mM Tris.
Cl、1mM EDTA、10mM NaCl、pH
7.5)に3mg/mlの濃度で溶解した物を1ml加
え、30℃で時々攪拌して1時間保温する。
【0046】これを遠心集菌し、再びこの菌体に20m
lのSB液を加え均一に混合し、次いで、この混合物に
TEN液20ml、リボヌクレアーゼ溶液(0.1M
Na−acetate、0.3M EDTA、pH
4.8にリボヌクレアーゼA(シグマ製)を10mg/
ml溶解し、沸とう水中で10分間加熱したもの)0.
25ml及び界面活性剤SDS(和光純薬)の20%水
溶液2mlを加え2時間静かに振とう処理し、さらにプ
ロナーゼ溶液(TEN液にプロナーゼE(科研化学製)
を2mg/ml溶解し、37℃で15分間保温したも
の)を0.5ml添加し、37℃で時々攪拌しながら2
時間保温した。ついで、これを65℃に昇温し、30分
間静置し、ついで室温まで冷却する処理で溶液中のRN
A、蛋白質の分解を行った。次にフェノール処理、クロ
ロホルム処理を行った後、液量の2.5倍のエタノール
を加え混合、氷中に静置し糸状に沈殿したDNAを採取
した。採取したDNAは、再びTEN液25mlに溶解
してリボヌクレアーゼ溶液0.05ml加え37℃で1
時間処理し残存したRNAを分解し、フェノール処理、
クロロホルム処理を行い、リボヌクレアーゼを除いた
後、前記同様のエタノール沈殿によって酵母染色体DN
Aを得た。
【0047】次いで制限酵素Bam HIとアイソシゾ
マーである制限酵素Sau 3AIを用いた部分分解に
よるパッセンジャーDNAの調製条件は、モレキュラー
・クローニング第282頁〜第285頁記載の段階希釈
法(Maniatis T.et.al.:Molec
ular cloning(Cold SpringH
arbor Laboratory),1982)によ
り、酵素添加量をDNA 1μg当り Bam HIは
2.31 units、Sau 3AIは0.127u
nitsと決定し、37℃で1時間作用させ、各々の認
識部位を切断させた後、反応液を常法通りフェノール処
理、クロロホルム処理、エタノール沈殿処理し、部分分
解DNAを330μg調製し、これを分取用電気泳動装
置ELFEシステム(Genofit製)により分画し
た。
【0048】分画後、4フラクションおきに5μlずつ
採取し、アガロース電気泳動を行い分画された大きさを
確認し、適当なDNAの長さごとにまとめてフェノール
処理、クロロホルム処理の後、エタノール沈殿処理を行
い、部分分解DNAを回収し、パッセンジャーDNAと
した。分画した長さと収量を下記表1に第1表として示
す。
【0049】
【表1】
【0050】(2) ベクターDNAの調製とベクター
DNAとパッセンジャーDNAのライゲーション シャトルベクターYEp 13に対して、ベクター1μ
g当り2unitsのBam HIを37℃で1晩作用
させてYEp 13の制限酵母Bam HI部位を完全
に切断し、常法通りフェノール処理、クロロホルム処
理、エタノール沈殿処理した後、このBam HIで切
断されたDNA断片の自己環状化を防止するため、 モ
レキュラー・クローニング第133頁〜第134頁記載
の方法(Maniatis T.et.al.:Mol
ecular clrning (Cold Spri
ng Harbor Laboratory),198
2)により、CIP処理を行いベクターDNAを調製し
た。
【0051】さらにこのベクターDNAは、前記(1)
において得たパッセンジャーDNAとともにDNAライ
ゲーションキット(宝酒造製)を使用してライゲーショ
ンを行い、2つのDNAを反応連結させた。ついで反応
液1容に対し5M塩化ナトリウム0.25容とイソプロ
パノール0.75容を添加しイソプロパノール沈殿によ
って組換え体ベクターを得た。
【0052】(3)組換え体ベクターの調製 上記ライゲーションにより作成した組換え体ベクター
は、大腸菌AG1(フナコシ薬品(株)により入手)を
使い、モレキュラー・クローニング第252頁〜第25
3頁記載の塩化カルシウム/塩化ルビジウム法(Man
iatis T.et.al.:Molecular
cloning(Cold SpringHarbor
Laboratory),1982)により、形質転
換菌AG1とした。
【0053】ついで、この形質転換菌をアンピシリン
(シグマ製)40ppmを添加したLB培地(トリプト
ン1%、酵母エキス0.5%、塩化ナトリウム2%、p
H7.5)5mlで37℃で1晩培養した後、この1m
lを40ppmのアンピシリンを含むLB培地1Lに接
種し、37℃で3〜4時間攪拌しつつ、OD550=0.
5〜0.6まで培養した後、クロラムフェニルコール
(シグマ製)を200ppm添加して再び37℃で14
〜15時間攪拌しつつ培養を続けたあと、3000rp
m、10分の遠心で集菌し、モレキュラー・クローニン
グ第368頁〜369頁記載のアルカリSDS法(Ma
niatis T.et.al.:Molecula
clonig(Cold Spring Harbor
Laboratory),1982)の試薬量を50
倍に変更して粗組換え体ベクターを抽出した。
【0054】これを超遠心機で精製した後、セントリコ
ン10(アミコン社製)で脱塩し、エタノール沈殿を行
い精製組換えべクターを得た。増幅し超遠心で精製した
組換え体ベクターの種類と使用したパッセンジャーDN
Aの対応関係を、下記表2に第2表として示す。
【0055】
【表2】
【0056】(4)酵母の形質転換及びα−ガラクトシ
ダーゼ生産株の検出 サッカロマイセス・セレビシエDBY746(α接合
型、trpl his3leu2 ura3)をYPD
培地50ml中で5×107個/mlとなるまで振とう
培養し3,000rpm、3分間で遠心集菌を行い、T
E緩衝液で洗浄した。
【0057】ついで菌体を4mlの酢酸リチウム中に懸
濁し30℃で45分振とうした後1.5mlのエッペン
ドルフチューブに100μlずつ分注し、これに(3)
記載の精製したサッカロマイセス・オレアギノーサスに
より抽出したα−ガラクトシダーゼの発現に関与する遺
伝子を含む部分分解DNAを組み込んだ組換え体ベクタ
ーを10μg添加して30℃で30分振とうし、ついで
70%PEG4000を110μl添加し1時間静置し
た後、42℃で5分間熱処理して、サッカロマイセス・
セレビシエ内に組換え体ベクターを導入した。次いで室
温で放冷し、上澄を遠心分離で除き、菌体は滅菌水で洗
浄して形質転換を終了した。
【0058】次いで形質転換酵母菌体は、グルコース1
%、ウラシル、トリプトファン、ヒスチジンを24pp
m添加したMM寒天培地に適宜希釈して塗沫して30℃
で培養を行い、生育してきたコロニーに200ppmの
X−α−galと1%のメリビオースを含む軟寒天MM
を5ml重層すると、α−ガラクトシダーゼを生産する
菌株は、X−α−galを分解しコロニーが青色に染色
したことによって検出した。α−ガラクトシダーゼを発
現させることのできた組換え体ベクターの菌株名と得ら
れた発現株数を、下記表3に第3表として示す。
【0059】
【表3】
【0060】前記により検出したX−α−galを分解
する菌株は、各プレートより各1株を釣菌し、単コロニ
ーに分離して20mlのMM培地で30℃、2日間振と
う培養し、遠心によって集菌し、一旦滅菌水で洗浄後、
SMバッファー(1M Sorbitol、0.1M
2−mercaptoethanol)5mlに懸濁
し、37℃で10分間振とうして遠心集菌してこれをl
ysisバッファー(1M sorbitol、50m
M Tris・Cl、10mM EDTA、pH7.
5、Zymolyase 20−T 100units
/ml)5mlに懸濁してスフェロプラストが生成する
まで37℃に保温し、その後Sol.II(0.2N N
aOH、1%SDS)200μlを加えて溶菌し、3M
酢酸ナトリウム(pH5.0)を150μlを添加混合
して−20℃に10分置いた後15,000rpmで1
0分間遠心分離した。
【0061】上澄液にはα−ガラクトシダーゼを発現す
るために必要なDNA配列をパッセンジャーDNAとし
て持つ組換え体ベクターが抽出されているのでフェノー
ル処理、クロロホルム処理、エタノール沈殿処理によっ
て回収する。
【0062】上記によって得た組換え体ベクターを使用
し、大腸菌SCS1(フナコシ薬品より購入)の形質転
換を行い8処理について形質転換体を得ることができた
ので、その結果を下記表4に第4表として示す。
【0063】
【表4】
【0064】また、上記形質転換体はアンピシリン耐性
を持つ物であったことで、形質転換で導入された組換え
体ベクターはYEp 13を作用した組換えベクターで
あることが確認できた。
【0065】この結果、サッカロマイセス・オレアギノ
ーサスより抽出のα−ガラクトシダーゼの発現に関与す
る遺伝子を含むパッセンジャーDNAを組み入れた組換
え体ベクター名は、その発現した酵母名をとってYEB
8−1と命名し、それによって形質転換した大腸菌形質
転換体は、それぞれ、E.coli B8−1(微工研
菌寄第10811号)、同様にE.coli B6−1
(YEB6−1形質転換体)(微工研菌寄第10808
号)、同様にE.coli S4−1(YES4−1形
質転換体)(微工研菌寄第10807号)、同様にE.
coli S7−1(YES7−1形質転換体)(微工
研菌寄第10809号)、同様にE.coli S7−
2(YES7−2形質転換体)(微工研菌寄第1081
0号)として微生物工業技術研究所(現 生命工学工業
技術研究所)に寄託してある。
【0066】なお、酵母菌株B8−1、B8−11、B
8−13、B8−14は同一の組換えプラスミドによる
形質転換体であったのでYEB8−1による大腸菌形質
転換体E.coliB8−1を代表とした。
【0067】これら形質転換体に挿入されているパッセ
ンジャーDNAの制限酵素地図を図1に示した。図中の
B、E、P、S、Xは、それぞれの次の制限酵素による
切断位置を示す。 B:Bam HI,E:Eco RI,P:Pst
I,S:Sau 3AI,X:Xba I
【0068】(5)形質転換体によるα−ガラクトシダ
ーゼの生産、及びこのα−ガラクトシダーゼとサッカロ
マイセス・オレアギノーサスの生産するα−ガラクトシ
ダーゼの同一性の確認。 組換え体ベクターにより形質転換した酵母を用いてα−
ガラクトシダーゼを生産せしめ、この酵母が生産したα
−ガラクトシダーゼとサッカロマイセス・オレアギノー
サスの生産したα−ガラクトシダーゼが同一であること
を確認するため、ウェスタンブロッティングを行い、プ
ロテインA法で検出した。試料には(4)項においてα
−ガラクトシダーゼの発現のあった形質転換酵母の培養
を行った上清とサッカロマイセス・オレアギノーサスを
形質転換体と同様にして培養したものをセントリコン1
0(アミコン製)で約400倍に脱塩濃縮したものを使
用した。
【0069】これらの試料の蛋白質をローリー法(E.
F.Hartree:Analytical Bioc
hemistry,48,422−427(197
2))により求め、12%SDS−ポリアクリルアミド
電気泳動を行った。泳動は20穴のコームを使ったゲル
の右端から分子量マーカー(オリエンタル酵母製)、形
質転換酵母培養液8点、サッカロマイセス・オレアギノ
ーサス培養液の順に1レース当り2μg添加し、同じサ
ンプルを同じ順番に残りの穴に添加した。泳動終了後ゲ
ルを半分に切り、一方を通常通り染色し、他の一方はエ
レクトロブロッティングを行いニトロセルロースメンブ
レンに蛋白を転写した。その結果を図2に示す。図中の
数字はそれぞれ次のことを表わす。 1:分子量マーカー、2:B8−1、3:B8−11、
4:B8−13、5:B8−14、6:S4−1、7:
S7−1、8:S7−1、9:B6−1、10:S.o
leaginosus IFO 1998
【0070】上記の結果から明らかなように、通常の染
色を行ったものは多数のバンドが検出されたが抗α−ガ
ラクトシダーゼ血清と反応したものはただ1つのバンド
のみが検出され、両者を比較した結果同一のものと判定
された。
【0071】(6)形質転換酵母の醗酵力試験 形質転換酵母として(4)項で述べた組換えベクターY
EB8−1を組み込んだサッカロマイセス・セレビシエ
DBY 746を使用し、次の条件で発酵力試験を行っ
た。
【0072】好気的培養の結果 0.5%グルコース、0.5%メリビオースを炭素源と
したMM培地を使用し、サッカロマイセス・セレビシエ
DBY 746に組換えベクターYEB8−1を組み込
んだ場合と、組み込まない場合で振とう培養を行い収量
と残存糖分の分析を行った。この際、それぞれの菌株の
要求する核酸、アミノ酸は24ppm添加した。結果は
下記表5に第5表として示す。
【0073】
【表5】
【0074】上記の結果からも明らかなように、パン酵
母を、ビート糖蜜等ラフィノース、メリビオース含有糖
液を使用して培養しても、これらの糖を充分に資化し、
培養、増殖できることが判る。
【0075】発酵試験の結果 前記において好気的培養した菌体を使用して発酵試験を
行った。
【0076】発酵培地I:ビート糖蜜10%(発酵性糖
分)、0.1Mクエン酸ナトリウムバッファー(pH
5.5)200ml 発酵培地II:ビート糖蜜10%(発酵性糖分)、要求す
るアミノ酸、核酸を添加したMM培地200ml 接種菌体量:形質転換体〜1.37×105個 非転換体〜1.37×105
【0077】発酵試験は2週間行い、炭酸ガス発生量と
残存糖分組成を分析した。その結果及び使用した糖蜜の
糖分組成、発酵終了時の残存糖分組成、炭酸ガス発生量
(CO2 g)を下記表6に第6表として示す。この表
のとおり、形質転換酵母にあっては、明らかにα−ガラ
クトシダーゼによりメリビオース発酵が行われ、炭酸ガ
ス発生量も多く、非形質転換酵母に比べ高い発酵力を示
した。
【0078】
【表6】
【0079】したがって、本発明によれば、メリビオー
スやラフィノース等α−ガラクトシド含有物、例えばビ
ート廃糖蜜、ビート糖洗液その他ビート糖製造工場やビ
ート処理工場からの廃液、を有利に処理することができ
る。また、ビート廃糖蜜に予じめ本発明に係る形質転換
体を作用せしめてガラクトースとグルコースの結合を切
断しておけば、ケーン廃糖蜜と同様に使用することがで
き、各種発酵培地として有効に利用することができる。
【0080】(7)α−ガラクトシダーゼ遺伝子の構造 i)ディレーションプラスミドの作成 シークエンス用ベクターとしてpBluescript
を用い、先に得たα−ガラクトシダーゼ遺伝子を含むD
NA断片を再クローニングした。
【0081】このようにして再クローニングしたpBl
uescriptを制限酵素NotI及びSacIで処
理した。次いで、Kilo−Sequence用ディレ
ーションキット(宝酒造製)を利用して、先ずExoII
Iで処理した。ExoIIIは、DNAの5′末端側が平滑
末端もしくは突出末端の場合にのみ、相補DNA鎖を
3′から5′末端側へ削り取って行く。したがって、制
限酵素NotI及びSacIでプラスミドを二重切断し
ておけばSacIは5′陥没末端を形成するので、5′
突出末端を形成するNotI側のみが削り取られた。
【0082】次にMBヌクレアーゼ(Mung Bea
n ヌクレアーゼ)で処理し、1本鎖DNA部分を切除
し平滑末端にした。しかしMBヌクレアーゼだけでは完
全に平滑化できない場合があるので、Klenow F
ragmentで完全に平滑な2本鎖に修復し、ライゲ
ーションを行い閉環状のプラスミドとした。ここでEx
oIIIの作用時間を段階的に変えることにより、適当な
ディレーションを持ったプラスミドを作成した。
【0083】これらのプラスミドで大腸菌を形質転換
し、得られたコロニーから抽出したプラスミドの大きさ
を電気泳動で確認し、ディレーションプラスミドのスク
リーニングを行い、ディレーション系列を作成した。
【0084】ii)α−ガラクトシダーゼ遺伝子の構造 上記によって作成したディレーションプラスミドにより
読み取ったデータをつなぎ合わせて、α−ガラクトシダ
ーゼ遺伝子のプロモーター、分泌配列、構造遺伝子の全
てを含む塩基配列を決定した。このデータは、図3、図
4、図5に示した。
【0085】シークエンスデータの解析は、個々のディ
レーションプラスミドからオートシークエンサーで得ら
れたデータの接続を含め、DNA塩基配列の解析はDN
A解析用ソフトGENETYX(SDC製)を使用して
行った。 iii)ORF(オープンリーディングフレーム)の検索 シークエンスしたDNA配列の中からDNAの遺伝情報
がメッセンジャーRNAへ転写され蛋白へと翻訳される
部分であるORFを検索した。
【0086】DNAコードでは、メッセンジャーRNA
の転写開始部分はATG、転写停止部分は、TAG、T
GA、TAAのいずれかであるので、開始コード、停止
コードの検索を行ないORF決定を行った。
【0087】精製したα−ガラクトシダーゼ遺伝子の分
子量は62,500ダルトンであった。1kbDNAは
アミノ酸333個をコードでき、そのアミノ酸の分子量
はおよそ37,000ダルトンなので、およそ1,50
0塩基のORFが存在すると考えられた。
【0088】検索の結果、転写開始コードは図3〜図5
に示した塩基配列において521番目のATGであり、
転写停止コードは1934番目のTAAであること、そ
の長さは1413塩基でアミノ酸で翻訳された場合47
1残基であることが分かった。
【0089】iv)α−ガラクトシダーゼ遺伝子の相同性
の比較 すでに決定されているS.carlsbergensi
s及び今回決定したS. oleaginosusのα
−ガラクトシダーゼ遺伝子のORF部分を比較し、両者
の相同性を調べた。
【0090】DNAレベルでは94.3%の相同性(全
塩基に占める同一塩基の割合)があり、蛋白質レベルで
は471アミノ酸中17個が異なったアミノ酸で、相同
性は96.4%であった。アミノ酸組成と、それらから
推定される蛋白質の分子量は、下記の表7に第7表とし
て示した。
【0091】
【表7】
【0092】また、S.oleaginosusの1番
目から2850番目までをS. carlsberge
nsisのものと比較した結果は、図6〜図12として
示した。なお図中、上段(ファイル名:TAMEL
5)はS.oleaginosus及び下段(ファイル
名:SCMELICA)はS.carlsbergen
sisのα‐ガラクトシダーゼ遺伝子の塩基配列をそれ
ぞれ示した。同一の塩基はアステリクスで示し、またエ
クスクラメーションマークの下に示した数字はシークエ
ンスされた塩基の端からの番号である。
【0093】これらの結果から明らかなように、両者の
遺伝子は明らかに相違しており、本発明に係るα‐ガラ
クトシダーゼ遺伝子が新規な構造を有していることが確
認された。
【0094】v)α−ガラクトシダーゼ遺伝子のプロモ
ーターの構造 S.oleaginosusとS.carlsberg
ensisのα−ガラクトシダーゼ遺伝子のホモロジー
解析をプロモーター部分及び、ORFの一部ではあるが
シグナル配列部分について詳しく行った。
【0095】m−RNAへの転写を促進するとされるU
AS領域(Upstream Activating
Sequenceの略)に特徴的な塩基配列(図13の
UASの下に記載した配列のうち四角で囲った部分)が
開始コード(ATGのAを起点0ベースとする)より上
流−259から−206にかけて存在し、S.carl
sbergensisのUASより8ベース下流に存在
していた。
【0096】また、RNAポリメラーゼIIが転写開始部
位を認識するためのTATAボックスは、S.carl
sbergensisと同位置の−119、−110、
−63に存在していた。プロモーターの全塩基配列を図
18に示す。
【0097】vi)分泌配列(シグナル配列)の構造 蛋白を菌体外に分泌されるには、細胞膜の脂質の層を通
過する際の先導役の働きをする15〜30残基の疎水性
の蛋白質が、分泌される蛋白のN末端側に付着している
必要がある。
【0098】シークエンシングの結果、蛋白を分泌生産
するためのシグナル配列はS.carlsbergen
sisのシグナル配列(下段に示した)と比較して塩基
で4個、アミノ酸で2個の違いがあった。
【0099】図14には両者を並記し、同一塩基はアス
テリスク印で示した。
【0100】両者のシグナル配列を構成している18個
のアミノ酸とα−ガラクトシダーゼのN末端側12アミ
ノ酸を次に示したアミノ酸の親水性、疎水性のパラメー
ター(下記表8に示す第8表、正の値が大きくなる程、
疎水的である。)を用い、隣り合う5アミノ酸間の相加
平均をプロットしたのが図15である。図中、実線は
S.oleaginosus、破線はS.carlsb
ergensisを示し、双方重なり合う部分は実線で
示した。
【0101】
【表8】
【0102】S.carlsbergensisでIl
e(イソロイシン:疎水性)Ser(セリン:親水性)
の部分がS.oleaginosusでは2個のThr
(スレオニン:親水性)に置換されていることから疎水
性は低くなっている可能性はあるが、両者の分泌能力の
差はこのデータからは分からない。
【0103】vii)蛋白分泌用ベクターの構築 S.oleaginosusのα−ガラクトシダーゼに
は菌体外に蛋白質を分泌するためのシグナル配列が付加
しているので、本遺伝子のプロモーター、シグナル配列
以後に異種遺伝子を接続することで、異種遺伝子に由来
する蛋白質を分泌生産することが可能である。
【0104】以下に、この分泌能力を利用した異種蛋白
分泌ベクターを設計した。
【0105】図16にはプロモーター領域、転写終結領
域に存在する各種制限酵素による切断地図を示した。
【0106】異種遺伝子産物を分泌発現させるには、α
−ガラクトシダーゼ遺伝子のORF中のシグナル配列以
後の構造遺伝子部分に異種遺伝子を組み込む必要があ
る。
【0107】そのためにはα−ガラクトシダーゼの構造
遺伝子を除去しなければならないので、シグナル配列の
中程に存在するSphIと停止コード部分に存在するA
flIIで切断した。
【0108】次いで、切除されたシグナル配列の修復と
異種遺伝子の挿入部位としての制限酵素切断部位の導入
及び、各導入部位に停止コードを対応させるためTAA
を1塩基ずつずらして設けた合成DNAを作成した(図
17)。
【0109】この合成DNAを構造遺伝子を切除したベ
クターにライゲーションし、異種蛋白分泌用ベクターを
構築した。このベクターを用いることにより異種遺伝子
で発現させることができる。
【0110】なお本明細書において各種操作を行うに当
り、その参考とした文献例は次のとおりである。 参考文献 ◎酵母のα−ガラクトシダーゼ遺伝子シークエンシング
に関して ・Liljestrom P.L.:Nucl.Aci
ds Res.13 7257−7268(1985) ・Sumner−Smith M et.al.:Ge
ne 36 333−340(1985) ◎一般的な遺伝子組換え技術に関して ・Maniatis T et.al.:Molecu
lar Cloning(Cold Spring H
arbo −r Laboratory) ・村松正実:実験医学(羊土社)(11) ◎遺伝子シークエンシングに関して ・Messing J.:Recombinant D
NA techniques 101(1983) ・M13ファージによるクローニングとDideoxy
シークエンス法(アマシャムジャパン) ◎蛋白質の親−疎水性について ・Doolittle R.F.et.al.:J.M
ol.Biol.157105−132(1982)
【0111】
【発明の効果】本発明にしたがってサッカロマイセス・
オレアギノーサスより抽出したα−ガラクトシダーゼの
発現に関与する遺伝子を含有するパッセンジャーDNA
を含むDNAは、サッカロマイセス・セレビシエを始め
YEp 13の持つ2μmDNA複製開始点を利用しプ
ラスミドの複製を行える酵母でα−ガラクトシダーゼ生
産能のない酵母に導入し形質転換した場合に、その形質
転換体にα−ガラクトシダーゼ生産能を付与することが
できる。
【0112】したがって本発明によれば、α−ガラクト
シダーゼの工業生産が可能となるばかりでなく、メリビ
オース、ラフィノースの発酵ないし分解も可能となり、
そのためにこれらの糖を含有する廃液処理も有利に行
え、また、ビート糖蜜を工業用培地として自由に使用す
ることもできる。
【0113】本発明によってα−ガラクトシダーゼ遺伝
子の構造が新たに解明されたので、本発明に係るプロモ
ーターを利用すれば、上記効果が更に増進されるだけで
なく、例えば上記したシグナル配列を利用すれば異種蛋
白分泌用ベクターも構築することができるので、各種の
異種蛋白の効率的製造も可能となる。
【0114】したがって本発明は、この面からしてもバ
イオテクノロジーに大きく貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】各組換え体プラスミドに挿入されているパッセ
ンジャーDNAの制限酵素地図を示す。
【図2】形質転換体の生産するα−ガラクトシダーゼと
サッカロマイセス・オレアギノーサスの生産するα−ガ
ラクトシダーゼの比較図である。
【図3】α−ガラクトシダーゼ遺伝子の塩基配列を示
す。
【図4】同上続きを示す。
【図5】同上続きを示す。
【図6】S.carlsbergensisのα−ガラ
クトシダーゼ遺伝子の塩基配列(下段)との相同性を比
較した図面である。
【図7】同上続きを示す。
【図8】同上続きを示す。
【図9】同上続きを示す。
【図10】同上続きを示す。
【図11】同上続きを示す。
【図12】同上続きを示す。
【図13】S.oleaginosusサッカロマイセ
ス・オレアギノーサスS.carlsbergensi
sのα−ガラクトシダーゼプロモーターの構造を図示し
たものである。
【図14】そのシグナル配列(上段)を図示するととも
に、S.carlsbergensisのシグナル配列
の塩基配列(下段)とを比較したものである。
【図15】親水−疎水プロット図である。
【図16】α−ガラクトシダーゼ構造遺伝子周辺部分の
制限酵素地図を示す。
【図17】合成DNAによる分泌ベクターの作成図であ
る。
【図18】本発明に係るプロモーターの全塩基配列を示
す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // A21D 8/04 A21D 8/04 (C12N 1/19 (C12N 1/19 C12R 1:865) C12R 1:865) (C12N 1/21 (C12N 1/21 C12R 1:19) C12R 1:19) (C12N 15/09 ZNA 1:85) C12R 1:85) ) (72)発明者 後藤 邦康 東京都北区滝野川2丁目6番30号 国税 庁醸造試験所内 (72)発明者 小幡 孝之 東京都北区滝野川2丁目6番30号 国税 庁醸造試験所内 (72)発明者 原 昌道 東京都北区滝野川2丁目6番30号 国税 庁醸造試験所内

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 図18に示す塩基配列を有する、サッカ
    ロマイセス・オレアギノーサスより抽出したα−ガラク
    トシダーゼ遺伝子のプロモーター。
  2. 【請求項2】 TATAボックスの少なくとも1つ及び
    /又はUAS領域を含んでなることを特徴とする請求項
    1に記載のプロモーター。
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