JP2507146Y2 - 紙 帙 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この考案は、重要書類、特に、古
文書、歴史的貴重文献の原本の長期管理、または永久保
存に使用する表紙、即ち、紙帙に関するものである。

【０００２】

【技術的背景】紙は、和紙、洋紙を問わず現代、アルカ
リ性あるいは中性をその用途目的に沿って生産するもの
を除き、一般汎用紙は太古の昔より酸性である。

【０００３】このため、生産時から、大なる時間を経た
ものは、使用、不使用を問わず酸化して物質的に劣化の
一途をたどり、自然に自己破壊を生じ、所謂ボロボロと
なり、再読操作の作業によって、尚一層の破壊現象を促
進し、原形を留めなくなることは周知の事実である。

【０００４】

【従来の技術】重要書類、古文書、歴史的貴重文献等の
原本の長期あるいは永久保存するための表紙構造は、古
代には木製の板を用いて、これを紐綴により一冊形態に
して保管保存し、特に永久保存を旨とする場合には、そ
の保管形態における雰囲気の湿度調整を主にして、酸化
作用による劣化現象の促進を遅滞させ、その手段として
永久保存の古文書等の重要書類、貴重文献においては、
季節を選定した「虫干し」と称する自然乾燥作業を行っ
ている。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】永久保存を目的とする
重要書類は、長期保管による自然劣化の進行状態を遅滞
させるために前記した湿度調整手段によって行っている
ものの、それでも自然劣化を完全防止させることは不可
能で、単に劣化速度を僅かに抑制するに留まり、その手
段の一例として前記「虫干し」等を行うものであるが、
該「虫干し」等の作業によって反って外力による破損の
進行につながるおそれが多分に含まれる。

【０００６】この考案は、紙類、特に重要書類、貴重文
献等の長期保存に生ずる自然劣化の進行度合いを、前記
湿度調整手段に一助する保存形態時に、原本の保護なら
びに隔離作用によって虫害の伝播を防止するとともに、
該原本の劣化形態の一つである酸化速度を抑制させるこ
とを主目的とするものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】この考案は、上記の目的
を達成させるための手段として、第１の考案は、通気性
を有し、剛性に富む中性で硬質の厚紙あるいは中性の段
ボール紙を同形の方形にした２枚の表紙主体を用意し、
それぞれの表紙主体の両側辺に接近する位置で、且つ、
上下両端部近傍に紐挿通孔を穿設し、２本の綴紐のそれ
ぞれを上下各紐挿通孔に表面方向から裏側へ、裏側から
表面へ、そして他方の表紙主体にも前記と同一綴紐を表
面方向から裏側へ、そして裏側から表面へと横行推進さ
せ、上下同等関係を形成するように綴じ込んで成るもの
である。

【０００８】第２の考案は、通気性を有し、かつ、剛性
に富む硬質の厚紙あるいは段ボール紙を方形にして芯材
とし、その表面を該芯材よりも薄い表皮紙で全面を被覆
貼接するとともに、裏面の全面積には中性紙からなる裏
表紙を、中性あるいは、中性に近似し、爾後変質が認め
られない接着剤をもって貼着して表紙主体を形成し、こ
れら同形で２枚の表紙主体を用意し、それぞれの表紙主
体の両側辺に接近する位置で、且つ、上下両端部近傍に
紐挿通孔を穿設し、２本の綴紐のそれぞれを上下各紐挿
通孔に表面方向から裏側へ、裏側から表面へ、そして他
方の表紙主体にも前記と同一綴紐を表面方向から裏側
へ、そして裏側から表面へと横行推進させ、上下同等関
係を形成するように綴じ込んで成るものである。

【０００９】第３の考案は、裏表紙とともに芯材を中性
にして成るものである。

【００１０】第４の考案は、紙帙を構成する表皮紙、芯
材ならびに裏表紙をともに中性にして成るものである。

【００１１】第５の考案は、挾接しようとする積層書類
の厚さに対応する寸法を幅寸法とし、且つ、表紙主体の
丈寸法と同等寸法の見出用背板を表紙主体と同構成にし
て設け、その両側で、且つ、上下位置に紐挿通孔を、両
隣に位置させる表紙主体に穿設した紐挿通孔と同位に穿
設し、これを、２枚の表紙主体の中間に位置させ、２本
の綴紐で接続して成るものである。

【００１２】

【作用】長期保管あるいは永久保存しようとする重要書
類、貴重文献等の必要数を積層して一個体にまとめ上
げ、その表・裏となる最上面ならびに最下面に対し、綴
紐で２枚一体に綴じられた表紙主体のそれぞれを、前記
積層した厚さ寸法を間隙寸法として包み込むようにして
当接し、且つ、上下位置における綴紐を同位置同志を締
結して保存形態とするものである。

【００１３】表紙主体において、中性紙を素材とする剛
性に富む硬質板あるいは段ボール紙の単材とすることを
基本とし、また、これらを芯材の裏表紙あるいは表裏に
化粧を施す際、また、中性紙あるいは中性紙以外を芯材
として用いた際でも、少なくとも、裏表紙だけでも中性
紙としたことによって積層した書類の最上面および最下
面の外側に接する異構成物質が、該被保存書類の特性で
ある酸性に対し中性であるから、少なくとも保存開始時
以上の酸化を防止し、従って、劣化進度を阻止できるも
のである。

【００１４】また、表紙主体に挾設する積層書類の厚さ
に対応する寸法の見出用背板を、双方の表紙主体間に、
該表紙主体と同様に綴紐を係合挿通し、その内面の裏表
紙が綴り込み書類の積層側面に当接することにより、そ
の当接箇所の酸化進行を抑制する。

【００１５】この見出用背板の目的は、その名称の通り
表皮側には、綴り込み書類の名称、分類名を明記し、一
般書籍と同様に多数を起立並列させた時点で内容の判別
に便するようにしたものである。

【００１６】

【考案の実施例】次に、この考案の実施例を図とともに
説明すれば、上記の目的を達成させるための手段とし
て、通気性を有し、剛性に富む中性で硬質の厚紙あるい
は中性の段ボール紙を同形の方形にした２枚を表紙主体
Ａとして用意し、それぞれの表紙主体Ａの両側辺に接近
する位置で、且つ、上下両端部近傍に紐挿通孔５を穿設
し、２本の綴紐６のそれぞれを上下各紐挿通孔５に表面
方向から裏側へ、裏側から表面へ、そして他方の表紙主
体Ａにも前記と同一の綴紐６を表面方向から裏側へ、そ
して裏側から表面へと横行推進させ、上下同等関係を形
成するように綴じ込んで成るものである。

【００１７】また、前記剛性に富む中性の硬質の厚紙あ
るいは中性の段ボール紙以外で、通気性を有し、剛性に
富む硬質の厚紙あるいは段ボール紙を方形にして芯材１
とし、その表面を該芯材１よりも薄い表皮紙２で全面を
被覆貼接するとともに、裏面の全面積には中性紙からな
る裏表紙３を、中性で爾後変質が認められない、例え
ば、その一例として、吟生麸等より精製した中性の接着
剤４をもって貼接して表紙主体Ａを形成し、これら同形
で２枚の表紙主体Ａ、Ａを用意し、それぞれの表紙主体
Ａの両側辺に接近する位置で、且つ、上下両端部近傍に
紐挿通孔５を穿設し、例えば平打ち綾織の綴紐６の２本
をもってそれぞれを各々の上下各紐挿通孔５、５に表面
方向から裏側へ、裏側から表面へ、そして他方の表紙主
体Ａにも前記と同一綴紐６を表面方向から裏側へ、そし
て裏側から表面へと横行推進させ、上下同等関係を形成
するように綴じ込んで成るものである。

【００１８】また、他の実施例として、裏表紙３ととも
に芯材１を中性にして成るものである。

【００１９】更に他の実施例として、紙帙を構成する表
皮紙２、芯材１ならびに裏表紙３をともに中性にして成
るものである。

【００２０】更にまた他の実施例として、挾接しようと
する綴り込み書類７の厚さに対応する寸法を幅寸法と
し、且つ、表紙主体Ａの丈寸法と同等寸法の見出用背板
８を表紙主体Ａと同構成にして設け、その両側で、且
つ、上下位置に紐挿通孔５を、両隣に位置させる表紙主
体Ａに穿設した紐挿通孔５と同位に穿設し、これを、２
枚の表紙主体Ａの中間に位置させ、２本の綴紐６で接続
して成るもので、その表面の表皮紙２には表紙主体Ａの
表皮紙２上とともに見出し９を設けて成るものである。

【００２１】

【考案の効果】この考案は以上のように、重要書類、貴
重文献等の長期保管あるいは歴史的貴重文献等における
永久保存しようとする書類を、前記保管ならびに保存す
る形態は、いずれも見出しを付した表紙を貼付するもの
であり、この表紙を空気が流通する、所謂呼吸する紙質
材を基礎素材とし、且つ、これを中性紙で構成すること
により、被綴じ込み書類が酸性である場合には、長期に
亘る保存期間の酸化による劣化を少なくとも、整理時よ
り、その進行を抑制して劣化現象を阻止することができ
るとともに、剛性を具備するところから、輪綴じ原本で
ありながら、これを縦型としての整理を可能とし、更
に、隣接書類に対して隔離作用を呈し、虫害の伝播の与
害、受害をも防止し得る等の効果あるものである。

【００２２】

【図面の簡単な説明】

【図１】綴り込み書類を挾設した紙帙全体の斜視図、

【図２】紙帙の見開き状態の平面図、

【図３】双方の表紙主体の表皮側を示す紙帙の平面図、

【図４】紙帙の斜視図、

【図５】見出用背板を装着した紙帙の斜視図、

【図６】表紙主体の部分的拡大断面図、

【図７】芯材の表裏両面に表皮紙ならびに裏表紙を張設
した表紙主体の部分的拡大断面図。

【００２３】

【符号の説明】

１ 芯材 ２ 表皮紙 ３ 裏表紙 ４ 接着剤 ５ 紐挿通孔 ６ 綴紐 ７ 綴じ込み書類 ８ 見出用背板 ９ 見出し Ａ 表紙主体

Claims (5)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 通気性を有し、剛性に富む中性で硬質
   の厚紙あるいは中性の段ボール紙を同形の方形にした２
   枚の表紙主体を用意し、それぞれの表紙主体の両側辺に
   接近する位置で、且つ、上下両端部近傍に紐挿通孔を穿
   設し、２本の綴紐のそれぞれを上下各紐挿通孔に表面方
   向から裏側へ、裏側から表面へ、そして他方の表紙主体
   にも前記と同一綴紐を表面方向から裏側へ、そして裏側
   から表面へと横行推進させ、上下同等関係を形成するよ
   うに綴じ込んで成ることを特徴とする紙帙。
2. 【請求項２】 通気性を有し、かつ、する剛性に富む
   硬質の厚紙あるいは段ボール紙を方形にして芯材とし、
   その表面を該芯材よりも薄い表皮紙で全面を被覆貼接す
   るとともに、裏面の全面積には中性紙からなる裏表紙
   を、中性あるいは、中性に近似し、爾後変質が認められ
   ない接着剤をもって貼着して表紙主体を形成し、これら
   同形で２枚の表紙主体を用意し、それぞれの表紙主体の
   両側辺に接近する位置で、且つ、上下両端部近傍に紐挿
   通孔を穿設し、２本の綴紐のそれぞれを上下各紐挿通孔
   に表面方向から裏側へ、裏側から表面へ、そして他方の
   表紙主体にも前記と同一綴紐を表面方向から裏側へ、そ
   して裏側から表面へと横行推進させ、上下同等関係を形
   成するように綴じ込んで成ることを特徴とする紙帙。
3. 【請求項３】 裏表紙とともに芯材を中性にして成る
   ことを特徴とする請求項２記載の紙帙。
4. 【請求項４】 紙帙を構成する表皮紙、芯材ならびに
   裏表紙をともに中性にして成ることを特徴とする請求項
   １、２または３記載の紙帙。
5. 【請求項５】 挾接しようとする積層書類の厚さに対
   応する寸法を幅寸法とし、且つ、表紙主体の丈寸法と同
   等寸法の見出用背板を表紙主体と同構成にして設け、そ
   の両側で、且つ、上下位置に紐挿通孔を、両隣に位置さ
   せる表紙主体に穿設した紐挿通孔と同位に穿設し、これ
   を、２枚の表紙主体の中間に位置させ、２本の綴紐で接
   続して成ることを特徴とする請求項１、２、３または４
   記載の紙帙。