JP2500066B2 - 脂肪族ポリエ―テル誘導体 - Google Patents

脂肪族ポリエ―テル誘導体

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、推進薬、発射薬に使用
されるバインダーとして用いることのできる末端水酸基
を有する脂肪族ポリエーテルに関する。
【0002】
【従来の技術】固体推進薬は液体燃料に比べて長期保存
が可能であり、かつ即時発射が可能であるという利点を
有するので、軍用のロケット弾やミサイルに利用されて
いる。固体推進薬は酸化剤と燃料の各成分を混合して成
型した混成質系のコンポジット推進薬と、ニトログリセ
リンとニトロセルロースを主成分として不揮発性溶剤を
もちいた火薬であるダブルベース推進薬とに大別され
る。
【0003】コンポジット推進薬は、酸化剤として、過
塩素酸アンモニウムやニトラミン及び硝酸アンモニウム
等を、燃料としてポリブタジエン、ポリウレタン等を、
助燃剤としてアルミニウム粉末を用いて調製される。
性能の改善は、これら各成分の燃焼特性を改良、向上
させることにより達成できる。
【0004】しかし、前記物質により構成された推進薬
はすでに理論的に期待できる燃焼性能の約95%を達成
されているのが現状であり、これ以上の性能向上の余地
は少く高性能化のためのいくつかの高エネルギー物質の
応用が検討されている。酸化剤や助燃剤は安定性、安全
性の制約により、実用面では前記物質に限定されること
もあり、バインダーの主成分となるプレポリマー自体を
高エネルギー化した推進薬の研究がなされている。
【0005】米国特許426850号ではプレポリマー
として下記(化4)式で表されるアジド基を含有した末
端水酸基ポリエーテルが開示されている。
【0006】
【化4】
【0007】このポリエーテルは推進薬の性能向上のた
めアジド基を含有させることにより下記の利点を得てい
る。一つには、生成熱を高めることにより推進薬の推力
の向上、又同様に密度が高まることも推力の向上につな
がる。二つには、アジド基の分解に伴う窒素ガ
【0008】
【発明が解決しようとする課題】前記ポリエーテルは推
進薬の性能向上のため有効である。ところが、推進薬の
燃焼性能向上のため導入しようとするアジド基含有ポリ
マーは官能基が両末端の水酸基だけの2官能であり、通
常推進薬等を酸化剤とバインダー成分とで混合して熱硬
化させるためには、バインダー成分として、ポリエーテ
ルと硬化剤の他に3官能の架橋剤を併用する必要があっ
た。
【0009】この3官能の架橋剤を併用する場合、添加
量が増加するにつれてバインダーのエネルギーが相対的
に減少する。このエネルギー減少量を抑えるために、低
分子量の3官能架橋剤を使用される。低分子量体として
広く使われているトリメチロールプロパンは常温下固体
であり、他成分との溶解に加熱が必要なので組成(たと
えばニトログリセリンを含むもの)によってはかなり危
険性が高まり好ましくなく、実用に供する場合には非常
に問題があった。
【0010】本発明はこうした実情の下に、アジド基含
有ポリマ−のもつ性能を最大限活用すると共に、硬化に
対しても有効である固体推進薬用の脂肪族ポリエーテル
を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前記の問題
点を考慮して鋭意研究した結果、アジド基含有ポリマー
自体を多官能化することにより解決できることを見出
し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は(化
1)式に代表される側鎖のメチルアジド基及び少なくと
も1個のヒドロキシアルキル基を有する末端に水酸基を
有する脂肪族ポリエーテルである。
【0012】本発明の末端に水酸基を有する脂肪族ポリ
エーテル誘導体の典型例は、(化3)式で表されるポリ
マーである。本発明の末端に水酸基を有する脂肪族ポリ
エーテルは、一般に、側鎖にメチルアジド基を有する環
状モノマーあるいはクロロメチル基を有する環状モノマ
ーと側鎖にヒドロキシアルキル基を有する環状モノマー
とを通常の開環重合法を適用することにより、共重合さ
せることで得られる。重合触媒としてルイス酸としての
作用をもつ触媒、例えば、BF3 、BF3 ・エーテラー
トを用いることができる。AlCl3 、AlBr3 ,S
nCl4 ,FeCl3 、等共触媒として水、1.4−ブ
タンジオール等が加えられた系に環状モノマーを添加す
ることにより重合を促進させることが好ましい。
【0013】側鎖にメチルアジド基を有する環状モノマ
ーあるいはクロロメチル基を有する環状モノマーとして
は、3,3−ビスアジドメチルオキセタン、3−アジド
メチル−3−メチルオキセタン、エピクロルヒドリン等
を例示することができる。側鎖にヒドロキシアルキル基
を有する環状モノマーとしては、3−ヒドロキシメチル
−3−メチルオキセタン等が使用可能である。
【0014】側鎖にアジド基を含有するモノマーの合成
法を例示する。3,3−ビスアジドメチルオキセタンは
3,3−ビスクロロメチルオキセタンをNaN3 を用い
てアジド化することにより、3−アジドメチル−3−メ
チルオキセタンは市販の3−ヒドロキシメチル−3−メ
チルオキセタンのOH基をパラトルエンスルフォン酸ク
ロライドによりトシル化したのち、NaN3 によりアジ
ド化することにより容易に合成できる。
【0015】また、エピクロルヒドリンを用いる場合
は、重合してポリマーとしたのち、NaN3 によりアジ
ド化する方法によりメチルアジド基を導入することがで
きる。本発明のアジド基含有脂肪族ポリエーテルはプレ
ポリマーとして硬化性樹脂バインダーの一成分として用
いることができる。固体推進薬のバインダーとしての使
用方法として、本発明のアジド基含有脂肪族ポリエーテ
ルとイソシアネート、および必要により硬化後の樹脂に
伸びを与える可塑剤等を加えて、加熱により硬化可能な
バインダー組成分として液状成分を調製し、これに酸化
剤成分を加えて均一混合後、所定時間加熱硬化させるこ
とによる、硬化推進薬成形体の製造を例示することがで
きる。
【0016】この種の用途において、特に好ましい本発
明の脂肪族ポリエーテルは3−アジドメチル−3−メチ
ルオキセタンモノマーと、3−ヒドロキシメチル−3−
メチルオキセタンモノマーとを共重合することにより得
られるものが特に好ましい。アジド基を含有するポリマ
ー1分子内にヒドロキシル基が3以上ある構造とするこ
とが好ましい。
【0017】
【実施例】以下の実施例において得られたポリマ−の同
定方法は次の通りである。分子量はGPC(ゲルパーミ
エイションクロマトグラフィー)、分子構造については
核磁気共鳴装置、また水酸基の量についてはJIS K
−0070で示される水酸基価の試験による。
【0018】分子量の測定には、標準ポリマ−として市
販されているポリプロピレングリコールを用いて、カラ
ム中をテトラヒドロフランを用いて流し、得られた溶出
時間と分子量との関係に基いてポリマーの分子量を求め
た。
【0019】
【実施例1】アジドメチルメチルオキセタンを主成分と
するポリマ−を以下のように製造した。モノマーとして
3−アジドメチル−3−メチルオキセタン30モル、お
よび3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン2モ
ルを用いた。まず、1,4−ブタンジオール1molを
0℃以下に保ち、BF3 エーテル錯体4molをジクロ
ルメタンに混合したものを滴下し、攪拌後、3−アジド
メチル−3−メチルオキセタンと3−ヒドロキシメチル
−3−メチルオキセタンを160gのジクロルメタンと
混合した液を滴下し、0°〜10℃、5時間攪拌を行っ
た。
【0020】反応終了後、NaCl飽和溶液200gを
攪拌下投入したのち、分液ロートでジクロロメタン層を
採取し、メタノール中に投入し、液状沈殿物を得た。こ
の液状沈殿物の揮発分を除去した生成物は、核磁気共鳴
装置により解析結果下記(化5)式で表される構造をも
つ多官能ポリエーテルを含むポリマーの混合物であるこ
とが判明した。
【0021】
【化5】
【0022】このポリマーのl/mの比は、重合の際
に、3−アジドメチル−3−メチルオキセタンと3−ヒ
ドロキシメチル−3−メチルオキセタンのモル比を調整
することにより、ポリマー中の比を制御できることが判
明した。また、3−アジドメチル−3−メチルオキセタ
ンを先に重合させ、後から3−ヒドロキシメチル−3−
メチルオキセタンを反応槽に滴下し、重合させることに
より、ヒドロキシメチル基がほぼポリエーテル鎖の終端
にもつポリマーが得られた。
【0023】
【実施例2】実施例1の方法に準じて、3−アジドメチ
ル−3−メチルオキセタン(AMMO)と3−ヒドロキ
シメチル−3−メチルオキセタン(HMMO)を表1の
量比で重合させ、ポリマ−を得た。 OH当量の測定 JIS−K0070で示される水酸基価の試験方法によ
り得られた値をもとに数(1)により求めた数値 であり、OH基1ケあたりの分子量が判る。ポリマ−の
GPCでの分子量は2600〜約3000であった。
【0024】得られた〜のポリマ−に2官能のイソ
シアネートIPDi(イソホロンジイソシアネート)お
よび3官能のOH基をもつTMP(トリメチロールプロ
パン)を必要に応じ架橋剤として加え、温度60℃、7
日間の後の硬化状態を観察した。表2から明らかなよう
に、架橋剤を併用することなく硬化できることがわかっ
た。特に、表2中No.5、6のポリマーはTMPを溶
解させる必要がないことから、TMPの融点59℃以下
でも硬化反応を均一に行うことができ、実際50℃にお
いても硬化できた。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は側鎖にヒ
ドロキシルアルキル基を導入した多官能のアジド基含有
脂肪族ポリエーテルであるので架橋剤を併用しないでも
硬化できる。固体推進薬用の高エネルギーバインダーと
して使用できる。組成成分の一部にニトログリセリンな
どを併用する推進薬の調製においては、加温温度を低減
できることから、成形上、安全上大きな利点を有する。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 側鎖にメチルアジド基及び少なくとも1
    個のヒドロキシアルキル基を有する下記(化1)式で表
    される末端水酸基を有する脂肪族ポリエーテル。 【化1】 【化2】
  2. 【請求項2】 下記(化3)式で表される請求項1記載
    の末端水酸基を有するポリエーテル。 【化3】
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