本開示を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する形態は、本開示を実施する場合に想定される例示的な一形態である。したがって、本開示の範囲は、以下に例示する形態には限定されない。
1.第1実施形態
図1は、本開示の第1実施形態に係る電力システム100の構成を例示するブロック図である。電力システム100は、電力系統10との間で電力(交流電力)を授受するシステムである。電力系統10は、例えば、火力発電所または原子力発電所等の発電設備(図示略)により生成された電力を、事業設備または一般家庭等の需要家に供給するための配電系統または送電系統である。
図1に例示される通り、電力システム100は、蓄電システム20と制御システム30とを具備する。蓄電システム20は、放電(すなわち電力系統10に対する給電)および充電(電力系統10からの受電)が可能な電力設備である。なお、電力システム100は、複数の蓄電システム20を含んでもよい。電力システム100が複数の蓄電システム20を含む形態においては、以下に例示する構成および動作が各蓄電システム20について採用される。
蓄電システム20は、蓄電装置21と調整装置22と変圧装置23とを具備する。蓄電装置21は、直流電力を放電および充電する系統用蓄電池である。蓄電装置21の種類は任意であるが、例えばリチウムイオン電池またはナトリウム硫黄電池等の2次電池が、蓄電装置21として例示される。なお、蓄電装置21は、複数の蓄電池により構成されてもよい。
調整装置22は、蓄電装置21の放電および充電を制御するPCS(Power Conditioning System)である。具体的には、調整装置22は、蓄電装置21が放電または充電する直流電力と、変圧装置23が変圧する交流電力とを相互に変換する電力変換装置である。変圧装置23は、交流電圧の電圧を変換する。
制御システム30は、蓄電システム20(蓄電装置21)を制御するコンピュータシステム(PMS:Power Management System)である。具体的には、制御システム30は、蓄電装置21が放電または充電すべき電力の電力値(以下「個別指令値B」という)を蓄電システム20に指令する。蓄電システム20の調整装置22は、個別指令値Bに相当する直流電力の放電または充電を蓄電装置21に実行させる。以上の説明の通り、制御システム30は、蓄電装置21(蓄電システム20)を制御する。
図2は、制御システム30の構成を例示するブロック図である。図2に例示される通り、制御システム30は、制御装置31と記憶装置32と表示装置33と通信装置34とを具備する。なお、制御システム30は、単体の装置により実現されるほか、相互に別体で構成された複数の装置でも実現される。
制御装置31は、制御システム30の各要素を制御する単数または複数のプロセッサで構成される。具体的には、例えばPLD(Programmable Logic Device)、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の1種類以上のプロセッサにより、制御装置31が構成される。
記憶装置32は、制御装置31が実行するプログラムと、制御装置31が使用するデータとを記憶する単数または複数のメモリである。記憶装置32は、例えば磁気記録媒体または半導体記録媒体等の公知の記録媒体で構成される。複数種の記録媒体の組合せにより記憶装置32が構成されてもよい。制御システム30に対して着脱される可搬型の記録媒体が、記憶装置32として利用されてもよい。
表示装置33は、制御装置31による制御のもとで各種の画像を表示する。表示装置33は、例えば液晶パネルまたは有機EL(Electroluminescence)パネル等の表示パネルで構成される。
通信装置34は、外部装置との間で有線または無線により信号を送受信する。例えば、通信装置34は、図1の管理システム40と通信する。管理システム40は、例えば卸電力市場または需給調整市場等の各種の電力市場における電力の取引を管理するコンピュータシステム(EMS:Energy Management System)である。通信装置34は、管理システム40から送信された電力指令値Aを受信する。電力指令値Aは、電力系統10との間で授受されるべき電力の合計値である。制御システム30は、電力指令値Aに応じた個別指令値Bを算定し、当該個別指令値Bを蓄電システム20に送信する。なお、管理システム40は、電力システム100の要素として解釈されてもよい。
通信装置34は、例えば専用線等の通信網(図示略)を介して蓄電システム20(具体的には調整装置22)と通信する。具体的には、通信装置34は、個別指令値Bを蓄電システム20に送信する。また、通信装置34は、蓄電装置21の健全度H(t)を蓄電システム20から受信する。健全度H(t)は、蓄電装置21の初期的な電力容量に対する任意の時刻tの電力容量の比率である。なお、健全度H(t)は、例えば蓄電装置21の保守作業(例えば修理または交換)における充放電試験により測定されて蓄電システム20から制御システム30に送信される。例えば年単位で実施される保守作業毎に健全度H(t)が測定される。また、充放電試験により測定された健全度H(t)が記憶装置32に記憶される構成において、制御装置31は、記憶装置32から健全度H(t)を取得してもよい。
図3は、蓄電装置21の健全度H(t)の時間変化である。図3の運用期間Pは、蓄電装置21の使用が想定される期間である。具体的には、運用期間Pは、時間軸上の稼動始点t0から満了時点Tまでの所定長(例えば20年)の期間である。稼動始点t0は、蓄電装置21の稼動が開始される時点である。満了時点Tは、運用期間Pが満了する時点である。満了時点Tの到来(すなわち運用期間Pの満了)により、例えば蓄電装置21の交換等が実施される。
図3に例示される通り、蓄電装置21の健全度H(t)は、運用期間Pの稼動始点t0における数値H(t0)を最大値Hmaxとして、運用の過程において経時的に低下する。最大値Hmaxは、例えば100%である。蓄電装置21の設計の場面では、仮想的な時間変化Vrefとして図3に例示される通り、運用期間Pの満了時点Tにおいて健全度H(t)が最小値Hminに到達するように(H(T)=Hmin)、健全度H(t)が経時的に変化することが想定される。健全度H(t)の最小値Hminは、例えば70%である。
しかし、健全度H(t)の実際の時間変化Vは、蓄電装置21の運用方法または設置環境等の様々な事情に影響される。したがって、健全度H(t)の実際の時間変化Vは、設計上の時間変化Vrefとは相違する。具体的には、図3の例示の通り、運用期間Pの満了時点Tにおいて健全度H(t)が最小値Hminを上回る場合がある(H(T)>Hmin)。すなわち、健全度H(t)について最小値Hminまで充分に余裕がある状態で運用期間Pが満了する場合がある。運用期間P内において蓄電装置21をさらに有効に活用できれば、電力系統10との間の電力授受による収益をさらに見込むことが可能である。
以上の事情を考慮して、第1実施形態の制御システム30は、運用期間Pの満了時点Tにおいて健全度H(t)が最小値Hminに到達しないことが見込まれる場合に、蓄電装置21の運用サイクル数Nを運用期間P内の途中の時点において増加させることで、健全度H(t)の時間変化Vを設計上の時間変化Vrefに近付ける。
運用サイクル数Nは、単位期間(例えば1日)内における蓄電装置21の放電および充電のサイクルの回数の上限値である。すなわち、運用サイクル数Nは、放電および充電の組が単位期間内に反復される回数の上限値を意味する。具体的には、運用サイクル数Nは、充電率(SOC:State of Charge)の最小値から最大値までの区間のうち一部の区間における放電および充電(充電深度)を、充電率の最小値から最大値までの充電と、充電率の最大値から最小値までの放電との組を1サイクルとして換算した等価的または仮想的な回数(等価サイクル数)である。
図4は、合計サイクル数Mおよび充電率(SOC)の時間変化に関する説明図である。合計サイクル数Mは、蓄電装置21が運用される過程におけるサイクル数の合計値である。図4には、運用サイクル数Nが数値N1に設定された場合における合計サイクル数Mおよび充電率の時間変化と、運用サイクル数Nが数値N2に設定された場合における合計サイクル数Mおよび充電率の時間変化とが図示されている。運用サイクル数Nの数値N2は数値N1を上回る。例えば、数値N1は「1」に設定され、数値N2は「1.2」に設定される。
図4に例示される通り、運用サイクル数Nが数値N2に設定された場合の合計サイクル数Mは、運用サイクル数Nが数値N1に設定された場合の合計サイクル数Mを上回る。また、運用サイクル数Nが数値N2に設定された場合におけるSOCの変動回数は、運用サイクル数Nが数値N1に設定された場合におけるSOCの変動回数を上回る。したがって、運用サイクル数Nが数値N2に設定された蓄電装置21を利用した電力取引により管理者(例えば売電事業者)が取得可能な収益は、運用サイクル数Nが数値N1に設定された場合に取得可能な収益を上回る。すなわち、運用期間P内において運用サイクル数Nを増加させることで、管理者の収益を増加させることが可能である。
図5は、制御システム30の機能的な構成を例示するブロック図である。制御装置31は、記憶装置32に記憶されたプログラムを実行することで、蓄電システム20を制御するための複数の機能(情報取得部51,演算処理部52,表示制御部53)を実現する。
情報取得部51は、運用期間P内の特定の時点t(以下「対象時点X」という)における蓄電装置21の健全度H(X)を取得する。具体的には、情報取得部51は、蓄電システム20から送信された健全度H(X)を通信装置34により受信する。なお、情報取得部51は、蓄電システム20から受信した情報を利用して健全度H(X)を算定してもよい。また、保守作業中の充放電試験により測定された健全度H(t)が記憶装置32に記憶される形態において、情報取得部51は、後述の管理処理(図7)の実行時に、対象時点Xにおける健全度H(X)を記憶装置32から取得してもよい。以上の例示の通り、情報取得部51による健全度H(X)の取得は、通信装置34による健全度H(X)の受信のほか、例えば、健全度H(X)の算定と、記憶装置32からの健全度H(X)の読出とを含む。
演算処理部52は、情報取得部51が取得した蓄電装置21の健全度H(X)に応じて運用サイクル数Nの数値N2を算定する。数値N2は、運用期間P内の対象時点X以降に蓄電装置21の運用に適用されるべき運用サイクル数Nの数値である。すなわち、蓄電装置21の運用サイクル数Nは、対象時点Xにおいて既定の数値N1から数値N2に更新される。演算処理部52による数値N2の算定について以下に詳述する。
図3における容量劣化D(t)は、蓄電装置21における容量の低下量である。具体的には、容量劣化D(t)は、以下の数式(1)で表現される通り、運用期間Pの稼動始点t0における健全度H(t0)(=Hmax)と、時点tにおける健全度H(t)との差分である。図3には、運用期間Pの満了時点Tにおける容量劣化D(T)と、対象時点Xにおける容量劣化D(X)とが図示されている。
図3に例示される通り、運用期間P内の任意の時点tにおける容量劣化D(t)は、サイクル劣化Dc(t)と保存劣化Ds(t)とを含む。具体的には、容量劣化D(t)は、サイクル劣化Dc(t)と保存劣化Ds(t)との総和である(D(t)=Dc(t)+Ds(t))。蓄電装置21のサイクル劣化Dc(t)は、以下の数式(2)で表現され、保存劣化Ds(t)は以下の数式(3)で表現される。
数式(2)の記号αは、容量劣化D(t)に対するサイクル劣化Dc(t)の比率を意味し、0以上かつ1以下の所定値に設定される。同様に、数式(3)の記号(1-α)は、容量劣化D(t)に対する保存劣化Ds(t)の比率を意味し、0以上かつ1以下の所定値に設定される。
容量劣化D(t)のうちのサイクル劣化Dc(t)は、蓄電装置21による放電および充電の反復により発生する健全度H(t)の低下である。すなわち、サイクル劣化Dc(t)は、運用サイクル数N(または合計サイクル数M)に依存する電力容量の劣化である。具体的には、サイクル劣化Dc(t)は、時点tにおける合計サイクル数Mの平方根に比例するという関係がある。したがって、運用期間P内の対象時点Xにおけるサイクル劣化Dc(X)は、以下の数式(4)で表現される。
対象時点Xは、年単位の数値で表現される。したがって、数式(4)における平方根の内部(N1・365・X)は、稼動始点t0(t=0)から対象時点Xまでの期間において、数値N1の運用サイクル数Nにより蓄電装置21を稼動した場合の合計サイクル数Mを意味する。数式(4)の記号C1は比例係数である。数式(4)の変形により、比例係数C1を表現する以下の数式(5)が導出される。
他方、容量劣化D(t)のうちの保存劣化Ds(t)は、蓄電装置21の放電および充電によらず経時的に進行する健全度H(t)の低下である。すなわち、保存劣化Ds(t)は、運用サイクル数N(または合計サイクル数M)に依存しない電力容量の劣化である。具体的には、保存劣化Ds(t)は、蓄電装置21の運用時間(保存日数)の平方根に比例する。したがって、運用期間P内の対象時点Xにおける保存劣化Ds(X)は、以下の数式(6)で表現される。
数式(6)における平方根の内部(365・X)は、稼動始点t0(t=0)から対象時点Xまでの日数を意味する。数式(6)の記号C2は比例係数である。数式(6)の変形により、比例係数C2を表現する以下の数式(7)が導出される。
前述の通り、運用期間Pの対象時点Xにおいて運用サイクル数Nが数値N1から数値N2に増加する場合を想定すると、運用期間Pの満了時点Tにおけるサイクル劣化Dc(T)は、以下の数式(8)で表現される。
数式(8)における平方根の内部の第1項(N1・365・X)は、前述の通り、運用期間Pのうち稼動始点t0から対象時点Xまでの期間において、数値N1の運用サイクル数Nにより蓄電装置21を稼動した場合の合計サイクル数Mを意味する。また、数式(8)における平方根の内部の第2項(N2・365・(T-X))は、運用期間Pのうち対象時点Xから満了時点Tまでの期間(時間長:T-X)において、数値N2の運用サイクル数Nにより蓄電装置21を稼動した場合の合計サイクル数Mを意味する。すなわち、数式(8)における平方根の内部は、運用期間Pの全体にわたる合計サイクル数Mに相当する。
また、運用期間Pの満了時点Tにおける保存劣化Ds(T)は、以下の数式(9)で表現される。
運用期間Pの満了時点Tにおける容量劣化D(T)は、蓄電装置21の運用サイクル数Nが対象時点Xにおいて数値N1から数値N2に増加した場合に運用期間Pの満了時点Tに予想される蓄電装置21の電力容量の低下量である。以下の数式(10)で表現される通り、満了時点Tにおける容量劣化D(T)は、所定の許容値Dmaxを超過しない必要がある。
許容値Dmaxは、図3に例示される通り、蓄電装置21の健全度H(t)の設計上の時間変化Vrefにおける満了時点Tでの容量劣化D(T)を意味する。すなわち、許容値Dmaxは、運用期間Pの稼動始点t0における健全度H(t0)(すなわち最大値Hmax)と、設計上の時間変化Vrefにおける満了時点Tでの健全度H(T)(すなわち最小値Hmin)との差分である(Dmax=Hmax-Hmin)。
数式(5)の比例係数C1が適用された数式(8)のサイクル劣化Dc(T)と、数式(7)の比例係数C2が適用された数式(9)の保存劣化Ds(T)とが加算された容量劣化D(T)が許容値Dmaxを超過しないという数式(10)の条件から、運用サイクル数Nの変更後の数値N2が充足すべき条件を表す以下の数式(11)が導出される。
図5の演算処理部52は、数式(11)を満たす最大値を運用サイクル数Nの変更後の数値N2として算定する。すなわち、演算処理部52は、蓄電装置21の運用サイクル数Nが対象時点Xにおいて数値N1から数値N2に増加した場合に運用期間Pの満了時点Tに予想される蓄電装置21の容量劣化D(T)が許容値Dmaxを超過しないように、蓄電装置21の健全度H(X)に応じて数値N2を算定する。具体的には、演算処理部52は、運用期間Pの満了時点Tにおけるサイクル劣化Dc(T)と、満了時点Tにおける保存劣化Ds(T)との総和が許容値Dmaxを超過しないように、運用サイクル数Nの数値N2を算定する。
数式(11)から理解される通り、容量劣化D(t)に対するサイクル劣化Dc(t)の比率αが小さいほど、運用サイクル数Nの変更後の数値N2を増加することが可能である。また、対象時点Xが満了時点Tに近いほど、運用サイクル数Nの変更後の数値N2を増加することが可能である。さらに、対象時点Xにおける健全度H(X)が稼動始点t0の健全度H(t0)(=Hmax)に近いほど、運用サイクル数Nの変更後の数値N2を増加することが可能である。
図5に例示される通り、演算処理部52は、運用サイクル数Nの変更後の数値N2を管理システム40に通知する。具体的には、演算処理部52は、通信装置34により数値N2を管理システム40に送信する。管理システム40は、運用サイクル数Nの変更後の数値N2に応じて電力指令値Aを設定する。例えば、管理システム40は、変更後の数値N2が大きいほど電力指令値Aを増加させる。
図5の表示制御部53は、以上に説明した処理の結果を表す画像を表示装置33に表示する。例えば、表示制御部53は、図6の参照画像G1を表示装置33に表示する。図6に例示される通り、参照画像G1は、健全度H(t)(SOH)について時間変化V1と時間変化V2とを表す画像である。
時間変化V1は、運用期間Pの全体にわたり蓄電装置21を数値N1の運用サイクル数Nで稼動した場合における健全度H(t)の時間的な変化を表す曲線である。他方、時間変化V2は、運用期間P内の対象時点X(現在)において運用サイクル数Nを数値N1から数値N2に増加した場合における健全度H(t)の時間的な変化を表す曲線である。
参照画像G1において、時間変化V1と時間変化V2とは対比的に表示される。すなわち、参照画像G1を視認する管理者は、時間変化V1と時間変化V2とを視覚的に対比可能である。具体的には、時間変化V1と時間変化V2とが並列に表示装置33に表示される。
以上の通り、第1実施形態においては、運用期間Pの全体にわたり運用サイクル数Nを数値N1に維持した場合の健全度H(t)の時間変化V1と、対象時点Xにおいて運用サイクル数Nを数値N2に増加した場合の健全度H(t)の時間変化V2とを、例えば蓄電装置21の管理者が直観的または視覚的に把握できる。
図7は、制御システム30が運用サイクル数Nを管理する動作(以下「管理処理」という)のフローチャートである。所定の周期(例えば1年)で対象時点Xが到来するたびに管理処理が実行される。管理処理の実行毎に運用サイクル数Nが累積的に更新される。
管理処理が開始されると、制御装置31(情報取得部51)は、対象時点Xにおける蓄電装置21の健全度H(X)を取得する(Sa1)。制御装置31(演算処理部52)は、前述の数式(11)の演算により運用サイクル数Nの数値N2を算定する(Sa2)。制御装置31(演算処理部52)は、通信装置34により管理システム40に数値N2を通知する(Sa3)。また、制御装置31(表示制御部53)は、図6の参照画像G1を表示装置33に表示する(Sa4)。管理処理の具体的な手順は以上の通りである。
以上に説明した通り、第1実施形態においては、運用期間Pの満了時点Tに予想される蓄電装置21の容量劣化D(T)が許容値Dmaxを超過しないように、対象時点Xにおける運用サイクル数Nの増加後の数値N2が算定される。したがって、運用期間P内の対象時点Xにおいて運用サイクル数Nを数値N1から数値N2に増加させることで、容量劣化D(T)が許容値Dmaxを超過しない範囲内で蓄電装置21を有効に活用できる。蓄電装置21の活用の結果、運用期間Pの全体にわたり数値N1の運用サイクル数で蓄電装置21を運用する場合と比較して、蓄電装置21を利用した電力取引による収益を増加させることが可能である。
第1実施形態においては特に、満了時点Tにおける容量劣化D(T)のうち運用サイクル数Nに依存するサイクル劣化Dc(T)と、容量劣化D(T)のうち運用サイクル数Nに依存しない保存劣化Ds(T)との総和が許容値Dmaxを超過しないように、数値N2が算定される。したがって、蓄電装置21の容量劣化D(t)としてサイクル劣化Dc(t)および保存劣化Ds(t)の一方のみが加味される構成と比較して、運用サイクル数Nの数値N2を高精度に算定できる。
2.第2実施形態
本開示の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各態様において機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明と同様の符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
第1実施形態においては、容量劣化D(t)に対するサイクル劣化Dc(t)の比率αが所定値に設定された構成を便宜的に例示した。比率αは、実際には運用サイクル数Nに応じて変化する。以上の事情を考慮して、第2実施形態においては、運用サイクル数Nに応じて比率α(N)を制御する。
図8は、運用サイクル数Nと比率α(N)との関係を表すグラフである。図8に例示される通り、蓄電装置21の運用サイクル数Nに対してサイクル劣化Dc(t)の比率α(N)は単調増加するという傾向がある。具体的には、比率α(N)は、運用サイクル数Nを変数とする以下の数式(12)で近似的に表現される。
数式(12)における記号α(1)は、蓄電装置21を1サイクル/日の運用サイクル数N(N=1)で稼動した場合におけるサイクル劣化Dc(t)の比率α(N)である。演算処理部52は、数式(12)の演算により比率α(N)を算定する。すなわち、演算処理部52は、容量劣化D(t)に対するサイクル劣化Dc(t)の比率α(N)を、1サイクル/日に対応する比率α(1)と、蓄電装置21の現在の運用サイクル数Nとに応じた数値に設定する。
図9は、第2実施形態における管理処理のフローチャートである。図9に例示される通り、管理処理において対象時点Xの健全度H(X)を取得すると(Sa1)、制御装置31(演算処理部52)は、数式(12)の演算により比率α(N)を算定する(Sb1)。なお、健全度H(X)の取得(Sa1)と比率α(N)の算定(Sb1)との順序は反転されてもよい。
制御装置31(演算処理部52)は、比率α(N)を適用した数式(11)の演算により、運用サイクル数Nの数値N2を算定する(Sa2)。すなわち、数式(11)における比率αとして、運用サイクル数Nに応じた可変の比率α(N)が適用される。管理システム40に対する数値N2の通知(Sa3)、および、参照画像G1の表示(Sa4)は、第1実施形態と同様である。
第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第2実施形態においては、蓄電装置21における容量劣化D(t)に対するサイクル劣化Dc(t)の比率α(N)が、1サイクル/日の運用サイクル数Nに対応する当該比率α(1)と、蓄電装置21の運用サイクル数Nとに依存するという関係が考慮される。したがって、運用期間Pの満了時点Tにおける蓄電装置21の容量劣化D(T)を高精度に算定できる。
3.第3実施形態
図10は、第3実施形態における管理処理のフローチャートである。図10に例示される通り、運用サイクル数Nの変更後の数値N2を算定すると(Sa2)、制御装置31(演算処理部52)は、第1予測収益Y1と第2予測収益Y2とを算定する(Sc1)。
第1予測収益Y1は、運用期間Pの全体にわたり数値N1の運用サイクル数Nで蓄電装置21を稼動した場合に電力取引により管理者が取得可能な収益である。制御装置31(演算処理部52)は、数値N1を適用した所定の演算により第1予測収益Y1を算定する。
第2予測収益Y2は、対象時点Xにおいて運用サイクル数Nを数値N1から数値N2に増加した場合に運用期間P内の電力取引により管理者が取得可能な収益である。制御装置31い(演算処理部52)は、数値N1と数値N2とを適用した所定の演算により第2予測収益Y2を算定する。図4の説明から理解される通り、第2予測収益Y2は第1予測収益Y1を上回る(Y2>Y1)。
制御装置31(表示制御部53)は、参照画像G2を表示装置33に表示する(Sc2)。図11は、参照画像G2の模式図である。図11に例示される通り、参照画像G2は、第1予測収益Y1と第2予測収益Y2とを含む。具体的には、第1予測収益Y1と第2予測収益Y2とは、参照画像G2において対比的に表示される。例えば、第1予測収益Y1と第2予測収益Y2とは棒グラフにより表示される。したがって、参照画像G2を視認する管理者は、第1予測収益Y1と第2予測収益Y2とを視覚的に対比可能である。参照画像G1と参照画像G2とが表示装置33に並列または順次に表示される。また、参照画像G2は、第1予測収益Y1に対する第2予測収益Y2の増加率Uを含む。
第3実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第3実施形態においては、運用期間Pの全体にわたり運用サイクル数Nを数値N1に維持した場合の第1予測収益Y1と、対象時点Xにおいて運用サイクル数Nを増加した場合の第2予測収益Y2とを、例えば蓄電装置21の管理者が直観的または視覚的に把握できる。
4.変形例
以上に例示した各態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
(1)第3実施形態においては、運用期間Pの全体にわたる第1予測収益Y1および第2予測収益Y2を表示装置33に表示したが、第1予測収益Y1および第2予測収益Y2が対象とする期間は、運用期間Pの全体に限定されない。例えば、運用期間P内における年単位の収益、または、運用期間Pのうち対象時点Xから満了時点Tまでの期間における収益が、第1予測収益Y1または第2予測収益Y2として算定されてもよい。
(2)第3実施形態においては、制御システム30(演算処理部52)が第1予測収益Y1および第2予測収益Y2を算定する構成を例示したが、第1予測収益Y1および第2予測収益Y2を算定する主体は制御システム30(制御装置31)に限定されない。例えば、制御システム30から通知された数値N2に応じて、管理システム40が第1予測収益Y1および第2予測収益Y2を算定してもよい。すなわち、第1予測収益Y1および第2予測収益Y2を算定する機能は、制御システム30から省略されてよい。
(3)第3実施形態においては、参照画像G1および参照画像G2の双方が表示装置33に表示される形態を例示したが、参照画像G2のみが表示される形態も想定される。すなわち、参照画像G1の表示は省略されてよい。
(4)前述の各形態に係る制御システム30の機能は、前述の通り、制御装置31を構成する単数または複数のプロセッサと、記憶装置32に記憶されたプログラムとの協働により実現される。以上に例示したプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。記録媒体は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、CD-ROM等の光学式記録媒体(光ディスク)が好例であるが、半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体も包含される。なお、非一過性の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く任意の記録媒体を含み、揮発性の記録媒体も除外されない。また、配信装置が通信網を介してプログラムを配信する構成では、当該配信装置においてプログラムを記憶する記録媒体が、前述の非一過性の記録媒体に相当する。
(5)本願における「第n」(nは自然数)という記載は、各要素を表記上において区別するための形式的かつ便宜的な標識(ラベル)としてのみ使用され、如何なる実質的な意味も持たない。したがって、「第n」という表記を根拠として、各要素の位置または順番等が限定的に解釈される余地はない。
5.付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
本開示のひとつの態様(態様1)に係る蓄電装置の制御方法は、制御システムが、運用期間内の対象時点における蓄電装置の健全度を取得し、前記蓄電装置の運用サイクル数が前記対象時点において第1値から第2値に増加した場合に前記運用期間の満了時点に予想される前記蓄電装置の容量劣化が許容値を超過しないように、前記蓄電装置の健全度に応じて前記第2値を算定する。以上の態様においては、運用期間の満了時点に予想される蓄電装置の容量劣化が許容値を超過しないように、対象時点における運用サイクル数の増加後の第2値が算定される。したがって、運用期間内の対象時点において運用サイクル数を第1値から第2値に増加させることで、容量劣化が許容値を超過しない範囲内で蓄電装置を有効に活用できる。蓄電装置の活用の結果、運用期間の全体にわたり第1値の運用サイクル数で蓄電装置を運用する場合と比較して、蓄電装置を利用した電力取引による収益を増加させることが可能である。
態様1の具体例(態様2)において、前記制御システムが、さらに、前記運用期間の全体にわたり前記蓄電装置を前記第1値の運用サイクル数で運用した場合における前記健全度の時間変化と、前記対象時点において前記運用サイクル数を前記第1値から前記第2値に増加した場合における前記健全度の時間変化とを、表示装置に表示する。以上の態様によれば、運用期間の全体にわたり運用サイクル数を第1値に維持した場合の健全度の時間変化と、対象時点において運用サイクル数を増加した場合の健全度の時間変化とを、例えば蓄電装置の管理者が直観的または視覚的に把握できる。
態様2の具体例(態様3)において、前記制御システムが、さらに、前記運用期間の全体にわたり前記第1値の運用サイクル数で前記蓄電装置を稼動した場合における第1予測収益と、前記対象時点において前記運用サイクル数を前記第1値から前記第2値に増加した場合における第2予測収益とを算定し、前記第1予測収益と前記第2予測収益とを前記表示装置に表示する。以上の態様によれば、運用期間の全体にわたり運用サイクル数を第1値に維持した場合の第1予測収益と、対象時点において運用サイクル数を増加した場合の第2予測収益とを、例えば蓄電装置の管理者が直観的または視覚的に把握できる。
態様1から態様3の何れかの具体例(態様4)において、前記第2値の算定においては、前記容量劣化のうち前記満了時点におけるサイクル劣化と、前記容量劣化のうち前記満了時点における保存劣化との総和が前記許容値を超過しないように、前記第2値を算定する。以上の態様においては、容量劣化のうち運用サイクル数に依存するサイクル劣化と、容量劣化のうち運用サイクル数に依存しない保存劣化との総和が許容値を超過しないように、第2値が算定される。したがって、蓄電装置の容量劣化としてサイクル劣化および保存劣化の一方のみが加味される構成と比較して、運用サイクル数の第2値を高精度に算定できる。
態様4の具体例(態様5)において、前記第2値の算定においては、前記容量劣化に対する前記サイクル劣化の比率を、前記蓄電装置を1サイクル/日で稼動した場合における前記容量劣化に対する前記サイクル劣化の比率と、前記運用サイクル数とに応じた数値に設定する。以上の態様によれば、蓄電装置における容量劣化に対するサイクル劣化の比率が、1サイクル/日の運用サイクル数Nに対応する当該比率と、蓄電装置の運用サイクル数とに依存するという関係が考慮されるから、運用期間の満了時点における蓄電装置の容量劣化を高精度に算定できる。
本開示のひとつの態様(態様6)に係る制御システムは、運用期間内の対象時点における蓄電装置の健全度を取得する情報取得部と、前記蓄電装置の運用サイクル数が前記対象時点において第1値から第2値に増加した場合に前記運用期間の満了時点に予想される前記蓄電装置の容量劣化が許容値を超過しないように、前記蓄電装置の健全度に応じて前記第2値を算定する演算処理部とを具備する。
本開示のひとつの態様(態様7)に係るプログラムは、運用期間内の対象時点における蓄電装置の健全度を取得する情報取得部、および、前記蓄電装置の運用サイクル数が前記対象時点において第1値から第2値に増加した場合に前記運用期間の満了時点に予想される前記蓄電装置の容量劣化が許容値を超過しないように、前記蓄電装置の健全度に応じて前記第2値を算定する演算処理部、としてコンピュータシステムを機能させる。
第2予測収益Y2は、対象時点Xにおいて運用サイクル数Nを数値N1から数値N2に増加した場合に運用期間P内の電力取引により管理者が取得可能な収益である。制御装置31(演算処理部52)は、数値N1と数値N2とを適用した所定の演算により第2予測収益Y2を算定する。図4の説明から理解される通り、第2予測収益Y2は第1予測収益Y1を上回る(Y2>Y1)。