JP2025071663A - 3-ヒドロキシ安息香酸類の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】バイオマス資源を用いた3-ヒドロキシ安息香酸類の製造方法を提供する。
【解決手段】下記の一般式(1)で表される2-ヒドロキシテレフタル酸類を、特定のアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は前記特定のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチド又はこれを生産する微生物と接触させる工程を含む、下記の一般式(2)で示される3-ヒドロキシ安息香酸類の製造方法。
Figure 2025071663000010

〔式中、R及びRは同一又は異なっていてもよく、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、アミノ基又はカルボキシ基を示す。〕
【選択図】なし

Description

本発明はバイオマス資源を用いて3-ヒドロキシ安息香酸類を製造する方法に関する。
3-ヒドロキシ安息香酸は液晶素材の構成モノマーや農薬の中間体等として使用される工業的に有用な物質である。現在、3-ヒドロキシ安息香酸は安息香酸をスルホン化したのちアルカリ溶融する方法で製造されることが知られている。
一方、廃棄された化学素材を新たな化学品原料へと変換するケミカルリサイクルに関する技術が近年盛んに開発されている。中でもテレフタル酸はポリエチレンテレフタレートの構成モノマーなどとして大量に使用されることから、テレフタル酸を原料として3-ヒドロキシ安息香酸を得ることができれば、化学素材の再生可能性を高めることや、3-ヒドロキシ安息香酸の新たな供給方法を提供することにつながる。
これまでに、テレフタル酸に対してヒドロキシラジカルが反応することで2-ヒドロキシテレフタル酸が生成することが知られている(非特許文献1)。このことから、2-ヒドロキシテレフタル酸の1位のカルボキシ基を選択的に脱炭酸することで3-ヒドロキシ安息香酸が得られると考えられるが、そのような反応はこれまでに報告されていない。
金属型デカルボキシラーゼは、亜鉛、マンガン、マグネシウム等の二価金属イオンを活性中心に持つ脱炭酸酵素で、オルト位に水酸基を有する安息香酸類に対して活性中心の金属イオンが錯形成することにより脱炭酸反応を触媒することが知られている(非特許文献2)。
しかしながら、斯かる金属型デカルボキシラーゼが2-ヒドロキシテレフタル酸を基質として、その選択的な脱炭酸反応を触媒することはこれまでに知られていない。
Tsutomu Hirakawa et al., Langmuir 2002, 18, 3247-3254 Stefan E. Payer et al., Adv. Synth. Catal. 2019, 361, 2402-2420
本発明は、バイオマス資源を用いた3-ヒドロキシ安息香酸類の製造方法を提供することに関する。
本発明者らは、金属型デカルボキシラーゼ活性を有する特定のポリペプチドが2-ヒドロキシテレフタル酸に対して1位選択的な脱炭酸活性を示し、当該ポリペプチド又はこれを生産する微生物を用いることにより、効率よく3-ヒドロキシ安息香酸類が製造可能であることを見出した。
本発明は以下に係るものである。
下記の一般式(1):
Figure 2025071663000001
〔式中、R及びRは同一又は異なっていてもよく、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、アミノ基又はカルボキシ基を示す。〕
で表される2-ヒドロキシテレフタル酸類を、下記(A)~(E):
(A)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチド、
(B)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号4で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチド、
(C)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号6で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチド、
(D)配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号8で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチド、
(E)配列番号10で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号10で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチド、
から選ばれるポリペプチド又はこれを生産する微生物と接触させる工程を含む、下記の一般式(2):
Figure 2025071663000002
〔式中、R及びRは前記と同じものを示す。〕
で示される3-ヒドロキシ安息香酸類の製造方法。
本発明の方法によれば、バイオマス資源を用いて3-ヒドロキシ安息香酸類を効率よく製造することができる。
本発明において、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列の同一性は、Lipman-Pearson法(Science,1985,227:1435-1441)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGENETYX Ver.12のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。
本発明において、アミノ酸配列及びヌクレオチド配列に関する「少なくとも90%の同一性」とは、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらにより好ましくは98%以上、なお好ましくは99%以上の同一性をいう。
本発明において、「1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加、又は挿入されたアミノ酸配列」とは、1個以上20個以下、好ましくは1個以上15個以下、より好ましくは1個以上10個以下、より好ましくは1個以上8個以下、より好ましくは1個以上5個以下、さらにより好ましくは1個以上3個以下のアミノ酸が欠失、置換、付加、又は挿入されたアミノ酸配列をいう。また、「1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、付加、又は挿入されたヌクレオチド配列」とは、1個以上60個以下、好ましくは1個以上45個以下、より好ましくは1個以上30個以下、より好ましくは1個以上24個以下、より好ましくは1個以上15個以下、さらにより好ましくは1個以上9個以下のヌクレオチドが欠失、置換、付加、又は挿入されたヌクレオチド配列をいう。本発明において、アミノ酸又はヌクレオチドの「付加」には、配列の一末端及び両末端へのアミノ酸又はヌクレオチドの付加が含まれる。
斯かる欠失、置換、挿入、付加等の変異の導入は、例えば部位特異的な変異導入法等により、対象の塩基配列に変異を導入することにより実施できる。
本発明において、遺伝子に関する「上流」及び「下流」とは、該遺伝子の転写方向の上流及び下流をいう。例えば、「プロモーターの下流に配置された遺伝子」とは、DNAセンス鎖においてプロモーターの3’側に該遺伝子が存在することを意味し、遺伝子の上流とは、DNAセンス鎖における該遺伝子の5’側の領域を意味する。
本発明において、プロモーター等の制御領域と遺伝子の「作動可能な連結」とは、遺伝子と制御領域とが、該遺伝子が該制御領域の制御の下で発現し得るように連結されていることをいう。遺伝子と制御領域との「作動可能な連結」の手順は当業者に周知である。
本発明において、「外来遺伝子」とは、細胞に外部から導入された外因性の遺伝子である。外来遺伝子は、それが導入された細胞と同種の生物由来であっても、異種の生物由来(すなわち異種遺伝子)であってもよい。
本発明の3-ヒドロキシ安息香酸類の製造方法は、下記の一般式(1):
Figure 2025071663000003
〔式中、R及びRは同一又は異なっていてもよく、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、アミノ基又はカルボキシ基を示す。〕
で表される2-ヒドロキシテレフタル酸類を、下記(A)~(E):
(A)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチド、
(B)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号4で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチド、
(C)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号6で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチド、
(D)配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号8で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチド、
(E)配列番号10で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号10で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチド、
から選ばれるポリペプチド又はこれを生産する微生物と接触させる工程を含む、下記の一般式(2):
Figure 2025071663000004
〔式中、R及びRは前記と同じものを示す。〕
で示される3-ヒドロキシ安息香酸類の製造法である。
式(1)又は(2)において、R、Rで示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。
炭素数1~4のアルキル基としては、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等が挙げられ、より好ましくはメチル基、エチル基である。
炭素数1~4のアルコキシ基としては、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられ、より好ましくはメトキシ基である。
、Rはそれぞれ、水素原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、フッ素原子又はメチル基であるのがより好ましく、R及びRが共に水素原子であるのがさらに好ましい。
原料として用いる2-ヒドロキシテレフタル酸類は、市販品を用いてもよく、また、例えば、水中でテレフタル酸とヒドロキシラジカルを共存させること等により製造することができる。ヒドロキシラジカルの生成方法は特に限定されず、例えば、水中にて酸化チタンに対して光照射を行う事(Ken-ichi Ishibashi et al., Electrochem. Commun. 2 2000, 207-210)等により生成することができる。
上記(A)~(E)で示されるポリペプチド(「本発明のポリペプチド」と称す)は、2-ヒドロキシテレフタル酸に対して1位のカルボキシ基を選択的に脱炭酸する、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有する。
(A)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、リゾビウム・エスピー(Rhizobium sp.)由来γ-レゾルシン酸デカルボキシラーゼとして知られているペプチドであり、
(B)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、ポラロモナス・エスピー(Polaromonas sp.)由来γ-レゾルシン酸デカルボキシラーゼとして知られているペプチドであり、
(C)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、クタネオトリコスポロン・モニリフォルメ(Cutaneotrichosporon moniliiforme)由来サリチル酸デカルボキシラーゼとして知られているペプチドであり、
(D)配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)由来2,3-ジヒドロキシ安息香酸デカルボキシラーゼとして知られているペプチドであり、
(E)配列番号10で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、スフィンゴモナス・パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)由来5-カルボキシバニリン酸デカルボキシラーゼとして知られているペプチドのL34N変異体である。
なお、γ-レゾルシン酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.103)はγ-レゾルシン酸のカルボキシル基を脱炭酸し、レゾルシノールを生成する反応を触媒する酵素であり、
サリチル酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.91)はサリチル酸のカルボキシル基を脱炭酸し、フェノールを生成する反応を触媒する酵素であり、
2,3-ジヒドロキシ安息香酸デカルボキシラーゼ(EC4.1.1.46)は2,3-ジヒドロキシ安息香酸の1位のカルボキシル基を脱炭酸しカテコールを生成する反応を触媒する酵素であり、
5-カルボキシバニリン酸デカルボキシラーゼは、5-カルボキシバニリン酸の5位のカルボキシル基を脱炭酸しバニリン酸を生成する反応を触媒する酵素である(Applied and Environmental Microbiology Volume 68, Issue 9, 4407-4415)。
上記本発明のポリペプチドとしては、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性の点から、(C)~(E)で示されるポリペプチドが好ましく、(C)で示されるポリペプチドがより好ましい。
本発明のポリペプチドにおいて、配列番号2、4、6、8又は10で示されるアミノ酸配列との同一性は、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらにより好ましくは98%以上、なお好ましくは99%以上である。
配列番号2又は4で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列の例としては、配列番号2、4、6、8又は10で示されるアミノ酸配列に対して1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、付加、又は挿入されたアミノ酸配列が挙げられる。
上記ポリペプチドのアミノ酸配列に対してアミノ酸の欠失、置換、付加、又は挿入等の変異を導入する方法としては、例えば、該アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列に対してヌクレオチドの欠失、置換、付加、又は挿入等の変異を導入する方法が挙げられる。ヌクレオチド配列への変異導入の手法としては、例えば、エチルメタンスルホネート、N-メチル-N-ニトロソグアニジン、亜硝酸等の化学的変異原又は紫外線、X線、ガンマ線、イオンビーム等の物理的変異原による突然変異誘発、部位特異的変異導入法、Dieffenbachら(Cold Spring Harbar Laboratory Press,New York,581-621,1995)に記載の方法、等が挙げられる。部位特異的変異導入の手法としては、Splicing overlap extension(SOE)PCR(Horton et al.,Gene 77,61-68,1989)を利用した方法、ODA法(Hashimoto-Gotoh et al.,Gene,152,271-276,1995)、Kunkel法(Kunkel,T.A.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1985,82,488)等が挙げられる。あるいは、Site-Directed Mutagenesis System Mutan-SuperExpress Kmキット(タカラバイオ社)、Transformer(商標) Site-Directed Mutagenesisキット(Clonetech社)、KOD-Plus-Mutagenesis Kit(東洋紡社)等の市販の部位特異的変異導入用キットを利用することもできる。
2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性は、後述する実施例に示すとおり、例えば2-ヒドロキシテレフタル酸を、本発明のポリペプチド又はこれを産生する微生物と接触させ、生成する3-ヒドロキシ安息香酸量をHPLC等により測定することによって決定することができる。
本発明のポリペプチドは、(A)~(E)から選ばれるポリペプチドをコードする遺伝子を導入した組換え微生物を培養することによって製造することができる。
(A)~(E)から選ばれるポリペプチドをコードする遺伝子としては、好適には下記(a)~(e)から選ばれるポリヌクレオチドが挙げられる。
(a)配列番号1で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、配列番号1で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
(b)配列番号3で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、配列番号3で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
(c)配列番号5で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、配列番号5で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
(d)配列番号7で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、配列番号7で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
(e)配列番号9で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、配列番号9で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
ここで、(a)配列番号1で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドは、Rhizobium sp.由来γ-レゾルシン酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子として知られており、
ここで、(b)配列番号3で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドは、Polaromonas sp.由来γ-レゾルシン酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子として知られており、
ここで、(c)配列番号5で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドは、Cutaneotrichosporon moniliiforme由来サリチル酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子として知られており、
ここで、(d)配列番号7で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドは、Aspergillus oryzae由来2,3-ジヒドロキシ安息香酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子として知られており、
ここで、(e)配列番号9で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドは、Sphingomonas paucimobilis由来5-カルボキシバニリン酸デカルボキシラーゼとして知られているペプチドのL34N変異体をコードする遺伝子として知られている。
配列番号1、3、5,7又は9で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列の例としては、配列番号1、3、5,7又は9で示されるヌクレオチド配列に対して1又は数個のヌクレオチドが欠失、置換、付加、又は挿入されたヌクレオチド配列が挙げられる。ヌクレオチド配列にヌクレオチドの欠失、置換、付加、又は挿入等の変異を導入する方法は、上述したとおりである。上記ポリヌクレオチドは、1本鎖若しくは2本鎖の形態であり得、又はDNAであってもRNAであってもよい。該DNAは、cDNA、化学合成DNA等の人工DNAであり得る。
また当該ポリヌクレオチドは、オープンリーディングフレーム(ORF)に加えて、非翻訳領域(UTR)のヌクレオチド配列を含んでいてもよい。また当該ポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチド産生用の形質転換体の種にあわせて、コドン至適化されていてもよい。各種生物が使用するコドンの情報は、Codon Usage Database([www.kazusa.or.jp/codon/])から入手可能である。
斯かる(a)~(e)から選ばれるポリヌクレオチドを微生物に導入する手段としては、例えば、各ポリヌクレオチドを含有するベクター又はDNA断片を宿主微生物(親株)に導入することが挙げられる。
ここで、各ポリヌクレオチドを含有するベクターは発現ベクターであり、好ましくは該ポリヌクレオチドを宿主微生物に導入することができ、かつ宿主内で該ポリヌクレオチドを発現することができる発現ベクターである。また、該ベクターは、好ましくは当該ポリヌクレオチド、及びこれと作動可能に連結された制御領域を含む。該ベクターは、プラスミド等の染色体外で自立増殖及び複製可能なベクターであってもよく、又は染色体内に組込まれるベクターであってもよい。
ここで、「作動可能な連結」とは、遺伝子と制御領域とが、該遺伝子が該制御領域の制御の下で発現し得るように連結されていることをいう。遺伝子と制御領域との「作動可能な連結」の手順は当業者に周知である。
具体的なベクターの例としては、例えば、pBluescript II SK(-)(Stratagene)、pUC18/19、pUC118/119等のpUC系ベクター(タカラバイオ)、pET系ベクター(タカラバイオ)、pGEX系ベクター(GEヘルスケア)、pCold系ベクター(タカラバイオ)、pHY300PLK(タカラバイオ)、pUB110(Mckenzie,T.et al.,1986,Plasmid 15(2):93-103)、pBR322(タカラバイオ)、pRS403(Stratagene)、pMW218/219(ニッポンジーン)、pRI909/910等のpRI系ベクター(タカラバイオ)、pBI系ベクター(クロンテック)、IN3系ベクター(インプランタイノベーションズ)、pPTR1/2(タカラバイオ)、pDJB2(D.J.Ballance et al.,Gene,36,321-331,1985)、pAB4-1(van Hartingsveldt W et al.,Mol Gen Genet,206,71-75,1987)、pLeu4(M.I.G.Roncero et al.,Gene,84,335-343,1989)、pPyr225(C.D.Skory et al.,Mol Genet Genomics,268,397-406,2002)、pFG1(Gruber,F.et al.,Curr Genet,18,447-451,1990)等が挙げられる。
また、本発明の前記ポリヌクレオチドは、これを含むDNA断片として構築されていてもよい。該DNA断片としては、例えば、PCR増幅DNA断片及び制限酵素切断DNA断片が挙げられる。好ましくは、該DNA断片は、前記ポリヌクレオチド、及びこれと作動可能に連結された制御領域を含む発現カセットであり得る。
上記ベクター又はDNA断片に含まれる制御領域は、該ベクター又はDNA断片が導入された宿主細胞内で本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現させるための配列であり、例えばプロモーターやターミネーター等の発現調節領域、複製開始点等が挙げられる。該制御領域の種類は、ベクター又はDNA断片を導入する宿主微生物の種類に応じて適宜選択することができる。必要に応じて、該ベクター又はDNA断片はさらに、抗生物質耐性遺伝子、アミノ酸合成関連遺伝子等の選択マーカー(例えば、アンピシリン、ネオマイシン、カナマイシン、クロラムフェニコールなどの薬剤の耐性遺伝子)を有していてもよい。
本発明の前記ポリヌクレオチドと上記制御領域や、マーカー遺伝子配列との連結は、上述したSOE-PCR法などの方法によって行うことができる。ベクターへの遺伝子配列の導入手順は、当該分野で周知である。プロモーター領域、ターミネーター、分泌シグナル領域等の制御領域の種類は、特に限定されず、導入する宿主に応じて、通常使用されるプロモーターや分泌シグナル配列を適宜選択して用いることができる。
該制御領域の好適な例としては、野生型に比較して発現を強化できる強制御領域、例えば公知の高発現プロモーターであるT7プロモーター、lacプロモーター、tacプロモーター、trpプロモーター等が例示されるが、これらに特に限定されない。
上記ベクター又はDNA断片に含まれる目的のポリヌクレオチド及び制御領域は、宿主の核に導入されてもよいが、宿主ゲノムに導入されてもよい。あるいは、上記ベクター又はDNA断片に含まれる目的のポリヌクレオチドを、宿主ゲノムに直接導入して、該ゲノム上の高発現プロモーターと作動可能に連結させてもよい。ポリヌクレオチドをゲノムに導入する手段としては、相同組換え法が挙げられる。
上記宿主細胞へのベクター又はDNA断片の導入には、一般的な形質転換法、例えばエレクトロポレーション法、トランスフォーメーション法、トランスフェクション法、接合法、プロトプラスト法、パーティクル・ガン法、アグロバクテリウム法等を用いることができる。
目的のベクター又はDNA断片が導入された組換え微生物は、選択マーカーを利用して選択することができる。例えば、選択マーカーが抗生物質耐性遺伝子である場合、該抗生物質添加培地で細胞を培養することで、目的のベクター又はDNA断片が導入された形質転換細胞を選択することができる。また例えば、選択マーカーがアミノ酸合成関連遺伝子である場合、該アミノ酸要求性の微生物株に遺伝子導入した後、該アミノ酸要求性の有無を指標に、目的のベクター又はDNA断片が導入された微生物株を選択することができる。あるいは、PCR等によって組換え株のDNA配列を調べることで目的のベクター又はDNA断片の導入を確認することもできる。
以上の手順で、宿主微生物株に、本発明の前記ポリヌクレオチドが導入された組換え微生物を作製することができる。当該組換え微生物は本発明の2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ生産能を有している。
宿主(親株)として用いる微生物は、真菌、酵母、放線菌、大腸菌、枯草菌等、いずれを用いてもよいが、大腸菌、酵母、放線菌が好ましい。放線菌としてはコリネ型細菌として定義されている一群の微生物(Bergey's Manual of Determinative Bacteriology、Vol. 8、599(1974))が好ましく、具体的には、コリネバクテリウム属菌、ブレビバクテリウム属菌、アースロバクター属菌、マイコバクテリウム属菌、ロドコッカス属菌、ストレプトマイセス属菌、マイクロコッカス属菌等が挙げられる。このうち、好ましくはコリネバクテリウム属菌(例えば、コリネバクテリウム グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、コリネバクテリウム エフィシェンス(Corynebacterium efficiens)、コリネバクテリウム アンモニアゲネス(Corynebacterium ammoniagenes)、コリネバクテリウム ハロトレランス(Corynebacterium halotolerance)、コリネバクテリウム アルカノリティカム(Corynebacterium alkanolyticum)、コリネバクテリウム クレナタム(Corynebacterium crenatum)、コリネバクテリウム クルジラクチス(Corynebacterium crudilactis)、コリネバクテリウム カルナエ(Corynebacterium callunae)等)であり、より好ましくはコリネバクテリウム グルタミカムである。
上記の組換え微生物を炭素源、窒素源、無機塩類等を含有する任意の培地で培養し、当該微生物中に本発明のポリペプチドを生成、蓄積させ、当該微生物から当該ポリペプチドを採取することにより本発明のポリペプチドを取得することができる。また、本発明のポリペプチドを細胞外に分泌するよう構築された組換え微生物を培養し、培養上清中に本発明のポリペプチドを生成、蓄積させ、当該培養上清から当該ポリペプチドを採取することにより本発明のポリペプチドを取得することもできる。
本発明において、3-ヒドロキシ安息香酸類の製造は、2-ヒドロキシテレフタル酸類と本発明のポリペプチド又はこれを生産する上記の微生物と接触させることにより行われる。
ここで、本発明のポリペプチドを用いる場合、ポリペプチドは、当該ポリペプチドを産生する微生物を培養した培地成分等を含有したポリペプチド含有水性液体又はそれを乾燥したものでもよいが、これらを含有していない実質的にポリペプチド自体から構成されるものでもよい。ポリペプチドとしては、例えば、上述した組換え微生物を培養後、必要に応じて菌体を破壊した後、菌体を除去して製造されたポリペプチド含有水性液体を固定化したもの、若しくはポリペプチド含有水性液体を粉末化したものを使用できる。
固定化したポリペプチドとしては、ポリペプチドをシリカ、セライト、珪藻土、パーライト、ポリビニールアルコール、陰イオン交換樹脂、フェノール吸着樹脂、疎水性担体、陽イオン交換樹脂、キレート樹脂等の担体に固定化したものが挙げられる。粉末のポリペプチドは、ポリペプチド含有水性液体をスプレードライ、フリーズドライ、溶剤沈澱後の乾燥等の方法で乾燥、粉末化したものが挙げられる。
本発明のポリペプチドと2-ヒドロキシテレフタル酸類との接触条件は、特に制限されないが、通常20℃~50℃で、5分~72時間、好ましくは1時間~60時間、より好ましくは1時間~24時間、必要に応じ撹拌又は振とうしながら行うことができる。
微生物を用いる場合、2-ヒドロキシテレフタル酸類との接触は、2-ヒドロキシテレフタル酸類を添加した培地で上述した組換え微生物を培養することにより行うことができる。
組換え微生物を培養する培地は、炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、組換え微生物の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。炭素源としては、例えば、グルコース等の糖類、グリセリン等のポリオール類、エタノール等のアルコール類、またはピルビン酸、コハク酸もしくはクエン酸等の有機酸類を使用することができる。また、窒素源としては、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、大豆粕アルカリ抽出物、メチルアミン等のアルキルアミン類、またはアンモニアもしくはその塩等を使用することができる。その他、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛等の塩類、特定のアミノ酸、特定のビタミン、消泡剤等も必要に応じて使用してもよい。
培養は、通常、10℃~40℃で、6時間~72時間、好ましくは9時間~60時間、より好ましくは12時間~48時間、必要に応じ撹拌または振とうしながら行うことができる。また、培養中は必要に応じてアンピシリンやカナマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
反応系からの3-ヒドロキシ安息香酸類の回収及び精製方法は特に制限されない。すなわち、周知のイオン交換樹脂法、沈澱法、晶析法、再結晶法、濃縮法その他の方法を組み合わせることにより実施できる。
例えば、組換え微生物を用いた製造においては、菌体を遠心分離等で除去した後、カチオン及びアニオン交換樹脂でイオン性の物質を除き、濃縮すれば3-ヒドロキシ安息香酸類を取得することができる。培養物中に蓄積された3-ヒドロキシ安息香酸類は、そのまま単離することなく用いてもよい。
上述した実施形態に関し、本発明においては更に以下の態様が開示される。
<1>下記の一般式(1):
Figure 2025071663000005
〔式中、R及びRは同一又は異なっていてもよく、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、アミノ基又はカルボキシ基を示す。〕
で表される2-ヒドロキシテレフタル酸類を、下記(A)~(E):
(A)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらにより好ましくは98%以上、なお好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチド、
(B)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号4で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらにより好ましくは98%以上、なお好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチド、
(C)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号6で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらにより好ましくは98%以上、なお好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチド、
(D)配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号8で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらにより好ましくは98%以上、なお好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチド、
(E)配列番号10で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号10で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上、さらに好ましくは97%以上、さらにより好ましくは98%以上、なお好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチド、
から選ばれるポリペプチド又はこれを生産する微生物と接触させる工程を含む、下記の一般式(2):
Figure 2025071663000006
〔式中、R及びRは前記と同じものを示す。〕
で示される3-ヒドロキシ安息香酸類の製造方法。
<2>前記(A)~(E)から選ばれるポリペプチドを生産する微生物が当該ポリペプチドをコードする遺伝子を導入した組換え微生物である、<1>の方法。
<3>(A)~(E)から選ばれるポリペプチドをコードする遺伝子が、好適には下記(a)~(e)から選ばれるポリヌクレオチドである、<2>の方法。
(a)配列番号1で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、配列番号1で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
(b)配列番号3で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、配列番号3で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
(c)配列番号5で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、配列番号5で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
(d)配列番号7で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、配列番号7で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
(e)配列番号9で示されるヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチド、配列番号9で示されるヌクレオチド配列と少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
<4>微生物が大腸菌、酵母又はコリネ型細菌である、<1>~<3>のいずれかの方法。
<5>3-ヒドロキシ安息香酸類を回収する工程を含む、<1>~<4>のいずれかの方法。
<6>一般式(1)及び(2)において、R及びRがそれぞれ水素原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、フッ素原子又はメチル基である、<1>~<5>のいずれかの方法。
<7>一般式(1)及び(2)において、R及びRが共に水素原子である、<1>~<6>のいずれかの方法。
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
試験例1 3―ヒドロキシ安息香酸の生産
<酵素液の調製>
Rhizobium sp.由来γ-レゾルシン酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子(配列番号1)、Polaromonas sp.由来γ-レゾルシン酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子(配列番号3)、Cutaneotrichosporon moniliiforme由来サリチル酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子(配列番号5)、Aspergillus oryzae由来2,3-ジヒドロキシ安息香酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子(配列番号7)、及びSphingomonas paucimobilis由来5-カルボキシバニリン酸デカルボキシラーゼのL34N変異体をコードする遺伝子(配列番号9)を、それぞれ市販の大腸菌発現ベクターであるpET21a(+)のNdeI部位とBamHI部位の間に挿入することにより、酵素発現用プラスミドpET21a-RhDC、pET21a-PoDC、pET21a-CmDC、pET21a-AoDC及びpET21a-SpDCを得た。なお、これらの遺伝子(配列番号1,3,5,7,9)は大腸菌にコドン最適化した配列であり、人工合成したものを用いた。各プラスミドを用いてECOS competent cell BL21(DE3)(ニッポン・ジーン)を形質転換し、LBAmp寒天培地に塗布した後、37℃で終夜静置し、得られたコロニーを試験株とした。また、同様にpET21aベクターを形質転換して得られたコロニーを対照株とした。菌株をそれぞれOXTBAmp培地(1Lあたり:Overnight Express TB medium(メルク) 60g,グリセリン 10mL,アンピシリンナトリウム 50μg)8mLに接種し、30℃で24時間培養した。培養液を遠心分離して得られた菌体をBugbuster Protein Extraction Reagent(Merck)1mLで懸濁し30℃で15分間振盪した後、遠心分離により不溶分を除去したものを酵素液とした。
<3-ヒドロキシ安息香酸の生産>
上記で得られた酵素液160μLに2-ヒドロキシテレフタル酸(東京化成工業)の1M Tris-HClバッファー(pH7.5)溶液(10g/L)40μLを添加した後、30℃で24時間静置した。反応後の上清60μLを0.1(v/v)%リン酸水溶液240μLと混合し、アクロプレップ96フィルタープレート(0.2μm, WWPTFE膜、日本ポール)を用いて不溶物の除去を行い高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供した。HPLCの装置は、Chromaster(日立ハイテクサイエンス)を用いた。分析カラムには、L-カラム ODS(4.6mm I.D.×150mm、化学物質評価研究機構)を用い、溶離液Aを0.1M リン酸二水素カリウムの0.1(v/v)%リン酸溶液、溶離液Bを70(v/v)%メタノールとし、流速1.0mL/分、カラム温度40℃の条件にてグラジエント溶出を行なった。3-ヒドロキシ安息香酸の検出にはUV検出器(検出波長300nm)を用い、標準試料「3-ヒドロキシ安息香酸(販売元コードH0205、東京化成工業)」を用いて濃度検量線を作製し、濃度検量線に基づいて定量した。
表1に示す通り、Rhizobium sp.由来γ-レゾルシン酸デカルボキシラーゼ、Polaromonas sp.由来γ-レゾルシン酸デカルボキシラーゼ、Cutaneotrichosporon moniliiforme由来サリチル酸デカルボキシラーゼ、Aspergillus oryzae由来2,3-ジヒドロキシ安息香酸デカルボキシラーゼ、及びSphingomonas paucimobilis由来5-カルボキシバニリン酸デカルボキシラーゼのL34N変異体は、2-ヒドロキシテレフタル酸と接触させることにより、3-ヒドロキシ安息香酸を生成した。
Figure 2025071663000007

Claims (6)

  1. 下記の一般式(1):
    Figure 2025071663000008
    〔式中、R及びRは同一又は異なっていてもよく、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、アミノ基又はカルボキシ基を示す。〕
    で表される2-ヒドロキシテレフタル酸類を、下記(A)~(E):
    (A)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチド、
    (B)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号4で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチド、
    (C)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号6で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチド、
    (D)配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号8で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチド、
    (E)配列番号10で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は配列番号10で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列からなり、2-ヒドロキシテレフタル酸デカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチド、
    から選ばれるポリペプチド又はこれを生産する微生物と接触させる工程を含む、下記の一般式(2):
    Figure 2025071663000009
    〔式中、R及びRは前記と同じものを示す。〕
    で示される3-ヒドロキシ安息香酸類の製造方法。
  2. 前記(A)~(E)から選ばれるポリペプチドを生産する微生物が当該ポリペプチドをコードする遺伝子を導入した組換え微生物である、請求項1記載の方法。
  3. 微生物が大腸菌、酵母又はコリネ型細菌である、請求項1又は2記載の方法。
  4. 3-ヒドロキシ安息香酸類を回収する工程を含む、請求項1~3のいずれか1項記載の方法。
  5. 一般式(1)及び(2)において、R及びRがそれぞれ水素原子、ヒドロキシ基、メトキシ基、フッ素原子又はメチル基である、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
  6. 一般式(1)及び(2)において、R及びRが共に水素原子である、請求項1~4のいずれか1項記載の方法。
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