JP2024534392A - 少なくとも1つの目的の分析物を判定するための方法 - Google Patents

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Figure 2024534392000001
本発明は、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための方法に関する。本発明は更に、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための試料要素、インレット、組成物、キット及びこれらの使用に関する。
【選択図】図1

Description

発明の分野
本発明は、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための方法に関する。本発明は更に、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための試料要素、インレット、組成物、キット及びこれら使用に関する。
発明の背景
マトリックス支援イオン化に関連するイオン化のプロセスは、レーザ支援イオン化(MALDI/SALDI)、マトリックス支援イオン化(MAI)及び/又は周囲電圧支援イオン化であり得る。MAIは、液体/固体支持媒体を使用して結晶性マトリックス成分(複数可)、例えば3-NBN又は2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)をそれぞれの分析物と混合し、質量分析計のキャピラリ、例えば質量分析計の加熱キャピラリの入口の近くにそれをもたらすイオン化法である。
イオン化プロセスは、分析物と共にマトリックス成分を質量分析計入口に移すことによって行われる。
しかしながら、これらの方法は、自動化された(磁気)ビーズ取り扱いワークフローと完全に適合する必要はない。現在のMAI化合物は限られており、したがってより多くの物質クラスが望まれる。
したがって、上記の課題を克服することが当該技術分野において緊急に必要とされている。
本発明の目的は、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための方法を提供することである。本発明は更に、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための試料要素、インレット、組成物、キット及びこれら使用に関する。
この目的は、独立請求項の主題によって解決される。更なる実施形態は、従属請求項に従う。
以下では、本発明は以下の態様に関する。
第1の態様では、本発明は、試料中の少なくとも1つの分析物を判定するための方法であって、以下の工程:
a)少なくとも1つの分析物、少なくとも1つの微粒子、少なくとも1つのイオン化マトリックス、及び基材表面を有する基材を提供する工程、
b)分析物を、少なくとも1つの微粒子表面を有する微粒子とインキュベートする工程であって、分析物が微粒子の表面に吸着され、分析物-微粒子複合体が形成される、分析物を、少なくとも1つの微粒子表面を有する微粒子とインキュベートする工程、
c)分析物-微粒子複合体をイオン化マトリックスと接触させて、マトリックス:分析物-微粒子試料を形成する工程、
d)基材表面上にマトリックス:分析物-微粒子試料を提供する工程、
e)少なくとも分析物をイオン化する工程であって、イオン化が機械的イオン化である、少なくとも分析物をイオン化する工程、
f)イオン移動度分光法及び/又は質量分析によって分析物を判定する工程
を含む、方法に関する。
第2の態様では、本発明は、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための本発明の第1の態様の方法の使用に関する。
第3の態様では、本発明は、少なくとも1つの分析物を判定するための、かつ請求項1~6のいずれかに記載の方法を実行するのに適した試料要素であって、
- 基材表面と、
- 基材表面上に配置され、マトリックス支援イオン化を使用するためのイオン化マトリックスと、
- 基材表面上に配置された分析物-微粒子複合体と、を含み、
- イオン化マトリックスが、サルサラート、3-ニトロベンゾニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、2-ニトロベンゾニトリル、5-メチル-2-ニトロベンゾニトリル、クマリン、メチル-2-メチル-3-ニトロベンゾエート、メチル-5-ニトロ-2-フロエート、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール)、3-ニトロベンズアルデヒド、6-ニトロ-o-アニソニトリル、無水フタル酸、又はそれらの混合物からなる群から選択され、
- イオン化マトリックス及び/又は分析物-微粒子複合体が結晶化されており、
- 分析物-微粒子複合体の微粒子が磁性であり、
- 分析物-微粒子複合体とイオン化マトリックスとが互いに接触している、試料要素に関する。
第4の態様では、本発明は、少なくとも1つの分析物を判定するための本発明の第3の態様のインレットの使用に関する。
第5の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の方法を実行するのに適しており、かつ質量分析計若しくはイオン移動度分光計への、又は切断された試料入り口及びフィルタを備える質量分析計若しくはイオン移動度分光計の検出器へのイオン輸送に適した、インレットに関する。
第6の態様では、本発明は、少なくとも1つの分析物を判定するための本発明の第4の態様のインレットの使用に関する。
第7の態様では、本発明は、イオン化マトリックスを含む真空イオン化又はインレットイオン化のための組成物であって、イオン化マトリックスが、サルサラートを含むか、又はサルサラートからなる、組成物に関する。
第8の態様では、本発明は、少なくとも1つの分析物を判定するための本発明の第7の態様の組成物の使用に関する。
第9の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の方法における、又は本発明の第1の態様の方法を実施するのに適した、本発明の第7の態様のキットに関する。
第10の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の方法における本発明の第7の態様のキットの使用に関する。
図1は、試料中の少なくとも1つの分析物を判定するための方法、特にマトリックスイオン化微粒子ワークフローの概略説明を示す。 図2は、試料中の少なくとも1つの分析物を判定するための方法、特にマトリックスイオン化微粒子ワークフローの概略説明を示す。 図3a)~d)は、ガラスプレート上にスポットされた磁気分離後の1μLの残留液体のMSスペクトル(相対存在量対時間及び相対存在量対m/z)を示す。 図3a)~d)は、ガラスプレート上にスポットされた磁気分離後の1μLの残留液体のMSスペクトル(相対存在量対時間及び相対存在量対m/z)を示す。 図4a)~d)は、イオン化マトリックスとしての再結晶化3-NBN及び分析物-微粒子-複合体としての分析物担持微粒子の混合物1μLのMSスペクトルを示す。 図4a)~d)は、イオン化マトリックスとしての再結晶化3-NBN及び分析物-微粒子-複合体としての分析物担持微粒子の混合物1μLのMSスペクトルを示す。 図5は、試料中の少なくとも1つの分析物を判定するための方法、特にマトリックスイオン化微粒子ワークフローの概略説明を示す。 図6a)~d)は、イオン化マトリックスを添加した、かつイオン化マトリックスを含まない三角形フィルタに吸引された分析物-微粒子複合体(ビーズ-分析物分散液)のMSスペクトルを示す。 図6a)~d)は、イオン化マトリックスを添加した、かつイオン化マトリックスを含まない三角形フィルタに吸引された分析物-微粒子複合体(ビーズ-分析物分散液)のMSスペクトルを示す。 図7a)及びb)は、イオン化マトリックスを添加した及び欠落した分析物-微粒子複合体(ビーズ-分析物分散液)三角形フィルタのMSスペクトルを示す。 図8は、試料中の少なくとも1つの分析物を判定するための方法、特にマトリックスイオン化微粒子ワークフローの概略説明を示す。 図9a)~d)は、予備結晶化イオン化マトリックス(例えば、3-NBNマトリックス)を含む又は含まないロイシン-エンケファリン被覆微粒子のMSスペクトルを示す。 図9a)~d)は、予備結晶化イオン化マトリックス(例えば、3-NBNマトリックス)を含む又は含まないロイシン-エンケファリン被覆微粒子のMSスペクトルを示す。 図10a)及びb)は、予備結晶化イオン化マトリックス(例えば、3-NBNマトリックス)を含む又は含まないロイシン-エンケファリン被覆微粒子のMSスペクトルを示す。 図11a)~d)は、予備結晶化イオン化マトリックス(例えば、3-NBNマトリックス)を含む又は含まないロイシン-エンケファリン被覆微粒子のMSスペクトルを示す。 図11a)~d)は、予備結晶化イオン化マトリックス(例えば、3-NBNマトリックス)を含む又は含まないロイシン-エンケファリン被覆微粒子のMSスペクトルを示す。 図12は、サルサラートのイオン化マトリックスを含む異なる化合物のイオン化マトリックス/分析物イオン化を示す。 図13は、MAI代替物として異なるニトロベンゼン反応生成物を示す。 図14は、質量分析計へのイオン輸送のためのインレットを示す。 図15a1)~d2)は、濾過材料の使用がある又はない、質量分析計へのイオン輸送のためのインレットを使用したロイシン-エンケファリン被覆微粒子の抽出イオンモビログラム並びにMSスペクトルを示す。 図15a1)~d2)は、濾過材料の使用がある又はない、質量分析計へのイオン輸送のためのインレットを使用したロイシン-エンケファリン被覆微粒子の抽出イオンモビログラム並びにMSスペクトルを示す。 図15a1)~d2)は、濾過材料の使用がある又はない、質量分析計へのイオン輸送のためのインレットを使用したロイシン-エンケファリン被覆微粒子の抽出イオンモビログラム並びにMSスペクトルを示す。 図15a1)~d2)は、濾過材料の使用がある又はない、質量分析計へのイオン輸送のためのインレットを使用したロイシン-エンケファリン被覆微粒子の抽出イオンモビログラム並びにMSスペクトルを示す。
発明の詳細な説明
本発明を以下に詳細に説明する前に、本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態及び例に限定されず、これらは変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図しないことも理解されるべきである。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当該技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。
いくつかの文献が本明細書で引用されている。本明細書に引用されている各文献(全ての特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、説明書等を含む)は、上記であろうと以下であろうと、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。このように組み込まれた参照の定義又は教示と、本明細書に引用された定義又は教示との間に矛盾がある場合には、本明細書の本文が優先する。
以下、本発明の各要素について説明する。これらの要素は特定の実施形態と共に列挙されているが、これらは任意の方法及び任意の数で組み合わせて追加の実施形態を作成することができることを理解されたい。種々の説明された実施例及び好ましい実施形態は、本発明を明示的に説明された実施形態のみに限定するように解釈されるべきではない。この記載は、明示的に記載された実施形態を任意の数の開示及び/又は好ましい要素と組み合わせる実施形態を支持し、かつ包含するものと理解されるべきである。さらに、本出願に記載されている全ての要素の任意の順列及び組合せは、文脈が別段の意味を示さない限り、本出願の説明によって開示されていると考えるべきである。
定義
「備える(comprise)」という単語、並びに「備える(comprises)」及び「備えること(comprising)」のような変形は、記載された整数若しくはステップ又は整数若しくはステップのグループの包含を意味するが、いかなる他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップのグループの除外を意味しないことが理解されよう。
以下で使用される「有する(have)」、「含む(comprise)」、若しくは「含む(include)」という用語、又はそれらの任意の文法上の変形は、非排他的に使用される。よって、これらの用語は、これらの用語によって導入された特徴に加えて、この文脈で説明されている存在物に更なる特徴が存在しない状況と、1つ以上の追加の特徴が存在する状況との両方を指す場合がある。例として、「AはBを有する」、「AはBを備える」及び「AはBを含む」という表現は、双方とも、B以外に、他の要素がAに存在しない状況(すなわち、Aが単独でかつ排他的にBからなる状況)、及び、B以外に、要素C、要素C及びD、更には更なる要素等、1つ以上の更なる要素がエンティティAに存在する状況を指す場合がある。
さらに、特徴又は要素が1回又は複数回存在し得ることを示す「少なくとも1つ」又は「1つ以上」という用語、あるいは同様の表現が、典型的には、それぞれの特徴又は要素を導入するときに一度だけ使用されることに留意されたい。以下では、ほとんどの場合、それぞれの特徴又は要素を指すとき、それぞれの特徴又は要素が1回又は1回を超えて存在し得るという事実にもかかわらず、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」という表現は繰り返されない。
さらに、以下において使用される場合、「好ましくは」、「より好ましくは」、「特に」、「より詳しくは」、「具体的には」、又は「より具体的には」という用語、あるいは同様の用語は、代替の可能性を制限することなく、任意の特徴に関して使用される。よって、これらの用語によって導入される特徴は、任意選択的な特徴であり、いかなる方法によっても特許請求の範囲を制限することを意図したものではない。本発明は、当業者が認識するように、代替の特徴を使用して実行されてもよい。同様に、「本発明の実施形態では」又は同様の表現によって導入される特徴は、本発明の代替の実施形態に関していかなる制限も伴わず、本発明の範囲に関していかなる制限も伴わず、そのようなやり方で導入される特徴を本発明の他の任意の特徴又は任意ではない特徴と組み合わせる可能性に関していかなる制限も伴わない任意の特徴であるように意図される。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、別途内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
比率、濃度、量、及び他の数値データは、「範囲」の形式で本明細書に表す又は提示することができる。このような範囲の形式は、便宜上及び簡潔にするために単に使用されているに過ぎないことが理解され、したがって、その範囲の境界として明示的に列挙されている数値を含むだけではなく、各数値及び部分範囲があたかも明示的に列挙されているかのごとく、その範囲内に包含される個々の数値又は部分範囲の全てを含むことを柔軟に解釈するべきである。例示として、「4%~20%」の数値範囲は、4%~20%という明示的に列挙されている値を含むだけではなく、表示されている範囲内の個々の値及び部分範囲を含むと解釈されるべきである。したがって、この数値範囲には、4、5、6、7、8、9、10、...18、19、20%等の個々の値、及び4~10%、5~15%、10~20%等の部分範囲が含まれる。この同じ原理は、最小値又は最大値を列挙する範囲にも適用される。さらに、このような解釈は、その範囲の幅又は記載されている特性にかかわらず、適用すべきである。
「約」という用語は、数値に関連して使用される場合、示された数値よりも5%小さい下限値を有し、かつ示された数値よりも5%大きい上限値を有する範囲内の数値を包含することを意味する。
本開示の文脈において、「分析物」、「分析物分子」又は「目的の分析物(複数可)」という用語は、互換的に使用されて、質量分析によって分析される化学種を指す。質量分析によって分析されるのに適した化学種、すなわち分析物は、生体内に存在する任意の種類の分子であり得、核酸(例えば、DNA、mRNA、miRNA、rRNA等)、アミノ酸、ペプチド、タンパク質(例えば、細胞表面受容体、サイトゾルタンパク質等)、代謝産物又はホルモン(例えば、テストステロン、エストロゲン、エストラジオール等)、脂肪酸、脂質、炭水化物、ステロイド、ケトステロイド、セコステロイド(例えば、ビタミンD)、別の分子の特定の修飾に特徴的な分子(例えば、タンパク質上の糖部分又はホスホリル残基、ゲノムDNA上のメチル残基)、若しくは生体によって内在化された物質(例えば、治療薬、乱用薬物、毒素等)、又はそのような物質の代謝物が挙げられるが、これらに限定されない。このような分析物は、バイオマーカーとして役立つことがある。本発明の文脈において、「バイオマーカー」という用語は、生物系の生物学的状態の指標として使用される前記系内の物質を指す。
目的の分析物又は分析物は、生物学的試料又は臨床試料に存在し得る。「試料又は生物学的試料又は臨床的試料」という用語は、本明細書において互換的に使用され、組織、器官若しくは個体の部分又は片を指し、通常、組織、器官又は個体の全体を表すことが意図されているこのような組織、器官又は個体よりも小さい。分析に際して、生物学的試料又は臨床的試料は、組織の状態、又は器官若しくは個体の健康若しくは疾患状態に関する情報をもたらす。生物学的試料又は臨床試料の例は、以下に限定されないが、血液、血清、血漿、滑液、髄液、尿、唾液及びリンパ液等の液体試料、又は乾燥血液スポット及び組織抽出物等の固体の生物学的試料又は臨床試料を含む。生物学的試料又は臨床的試料のさらなる例は、細胞培養物又は組織培養物である。
本明細書で使用される場合、「分析物を判定すること、又は少なくとも1つの分析物を判定すること」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別な又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、任意の試料中の少なくとも1つの分析物の定量的及び/又は定性的決定を指し得る。試料中の分析物の定量的及び/又は定性的決定は、少なくとも1つの測定工程、並びに少なくとも1つの調製工程及び/又は少なくとも1つの分析工程等の更なる工程を含み得る検出プロセスの結果又は中間結果であり得る。検出プロセスの一部として、少なくとも1つの測定値、具体的には試料中の分析物の有無、濃度又は量に関する測定値を生成してもよい。
本明細書で使用される場合、「提供する」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別な又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、1つ以上の必要な対象を利用可能にするプロセスを指し得るが、これに限定されない。
本明細書で使用される場合、「微粒子」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味又は特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、顕微鏡サイズの任意の粒子状物質を指し得る。微粒子は、100nm~100μm、具体的には200nm~50μmの範囲の平均径を有し得る。微粒子はビーズと呼ばれることもある。微粒子は、球状又は球形であり得る。しかしながら、球状又は球形の形状からのわずかな派生が可能であり得る。微粒子のサイズは、動的光散乱によって決定することができる。
上に概説したように、微粒子は、少なくとも1つの微粒子表面を有する。本明細書で使用される場合、「微粒子表面」及び/又は「基材表面」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその一般的かつ普通の意味が与えられるべきであり、特殊な意味又は特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されるものではないが、外部から任意の物体を区切る領域全体を指し得る。したがって、本体、例えば微粒子及び/又は基材は、複数の表面を有し得る。具体的には、微粒子は、表面に囲まれたコアを有してもよい。表面及びコアは、異なる材料を含んでもよい。さらに、表面及びコアは異なる特性を有してもよい。例えば、コアは磁性体であってもよい。表面は、微粒子がそのような分子を含む試料とインキュベートされる場合、分子、例えば広範囲の極性分子から無極性分子を捕捉するように構成され得る。
本明細書で使用される場合、「インキュベーション」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特殊又は特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも2つの物質の混合及び/又は少なくとも1つの物質の別の物質への添加を指し得る。具体的には、固体又は粒子状物質を液体試料に添加及び/又は混合してもよい。添加及び/又は混合のプロセスとは別に、インキュベーションは、インキュベーション時間と呼ばれる期間を更に含み得る。インキュベーション時間中、2つの物質の一方は、2つの物質の他方の表面に吸着され得る。インキュベーション時間中、例えば所望の吸着を促進するために、温度及び/又は他の条件等の更なる条件を選択し得る。したがって、工程b)において、微粒子を試料に添加してもよく、任意に、試料と混合してもよい。工程b)において、試料は、1秒~60分、好ましくは1分~30分、最も好ましくは3分~12分のインキュベーション時間で微粒子と共にインキュベートされ得る。しかしながら、他の持続時間も実現可能であり得る。
本明細書で使用される場合、「表面に吸着される」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別な又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、気体又は液体の一部を形成する原子、イオン又は分子が固体又は粒子状物質の物体の表面に蓄積するプロセスの結果を指し得る。最初に気体又は液体全体に分布し得る原子、イオン又は分子は、吸着の過程で固体物質又は粒子状物質の表面によって引き付けられ得る。
本明細書で使用される場合、「分析物-微粒子複合体」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別な又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定されないが、少なくとも1つの微粒子及び少なくとも1つの分析物、具体的には1つの微粒子及び複数の分析物を含む集合を指し得る。複合体を形成する微粒子と分析物、具体的には被検物質とは可逆的に会合していてもよい。したがって、複合体の成分は、少なくとも特定の条件下で、複合体を残すか、複合体から解離し得る。分析物-微粒子複合体は、微粒子と分析物との間の少なくとも1つの引力に基づいて形成され得る。特に、引力は、微粒子の表面と分析物との間に作用し得る。したがって、最初に試料中、具体的には試料の液相中に分布し得る分析物は、微粒子の表面での吸着の過程で蓄積し得る。引力は、ファンデルワールス力及び静電引力を含み得る。他の引力も実現可能である。例えば、引力は、特に免疫ビーズ及び分析物が分析物-微粒子複合体を形成する場合、共有結合を含み得る。具体的には、分析物-微粒子複合体の形成の一部として、微粒子と分析物との間、具体的には微粒子の表面と分析物との間に少なくとも1つの化学結合が形成され得る。分析物-微粒子複合体は、分析物担持微粒子と呼ばれることもある。
本明細書で使用される場合、「接触させる」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特殊な意味又は特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、特に、限定されないが、マトリックス:分析物-微粒子試料を形成するための分析物-微粒子複合体とイオン化マトリックスとの間の直接的又は間接的な接続を指し得る。接触はまた、共結晶化及び/又はイオン化マトリックスとの混合のいずれかによって記載され得る。
本明細書で使用される場合、「その逆」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別な又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、特に、限定されないが、溶解した分析物-微粒子複合体のイオン化マトリックスへの添加を指し得る。あるいは、イオン化マトリックスを溶解した分析物-微粒子複合体に添加することができる。
本明細書で使用される場合、「機械的イオン化」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別な又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、特に、限定されないが、機械的プロセスによってイオン化エネルギーを生成するプロセスを指し得る。追加的又は代替的に、この用語は、特に、限定されないが、マトリックスへの機械力の誘導によって以前に生成された、マトリックスから分析物へのエネルギーの移動を指し得る。この機械力は、それぞれの結晶の剪断力及び/又は摩擦発光によって引き起こされ得る。
本明細書で使用される場合、「摩擦発光マトリックス」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特殊な意味又は特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、特に、限定されないが、マトリックスが機械的に引き離され、引き裂かれ、引っ掻かれ、押しつぶされ、又は擦られたときに放電を発生させたか、又はエネルギー放電若しくは放電を発生させたマトリックスを指し得る。
本明細書で使用される場合、「不均一固相液相(heterogenic solid liquid phase)」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特別な又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、特に、限定されないが、結晶相又は半結晶相の存在を指し得る。
本明細書で使用される場合、「自動的に(automatically)」又は「自動化された/自動(automated)」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその通常及び通例の意味が与えられるべきであり、特別な又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、具体的には、限定はされないが、特には手動の動作及び/又はユーザとの相互作用を必要とせずに少なくとも1つのコンピュータ及び/又はコンピュータネットワーク及び/又は機械によって完全に実行されるプロセスを指し得る。
「完全に自動化された」という用語は、手動の動作及び/又はユーザとの相互作用なしに、少なくとも1つのコンピュータ及び/又はコンピュータネットワーク及び/又は機械によって完全に実行されるプロセスを指し得る。
「部分的に自動化された」という用語は、少なくとも1つのコンピュータ及び/又はコンピュータネットワーク及び/又は機械によって、手動の動作及び/又はユーザとの相互作用の助けを借りて実行されるプロセスを指し得る。好ましくは、「部分的に自動化された」とは、ユーザとの手動の動作及び/又は相互作用が全プロセスの最大で50%又は40%又は30%又は20%又は10%又は5%であり、プロセスの残りが少なくとも1つのコンピュータ及び/又はコンピュータネットワーク及び/又は機械によって実行されることを意味することができる。「少なくとも1つのコンピュータ及び/又はコンピュータネットワーク及び/又は機械によって」とは、このプロセスがユーザとの手動のアクション及び/又は相互作用なしに実行されることを意味することができる。
「質量分析(Mass Spectrometry)」(「Mass Spec」又は「MS」)、又は「質量分析決定(mass spectrometric determination)」、又は「質量分析(mass spectrometric analysis)」という用語は、化合物をその質量によって同定するために使用される分析技術に関する。MSは、その質量電荷比又は「m/z」に基づいてイオンをフィルタにかける、検出する、かつ測定する方法である。MS技術は、概して、(1)化合物をイオン化して荷電化合物を形成すること;及び、(2)荷電化合物の分子量を検出し、質量電荷比を計算することを含む。化合物は、任意の好適な手段によってイオン化されて、検出され得る。「質量分析計」は、一般に、イオン化装置及びイオン検出器を含む。一般に、1つ以上の目的の分子がイオン化されて、続いて、このイオンは、質量分析機器に導入されて、この機器において、磁場及び電場の組み合わせにより、イオンは、質量(「m」)及び電荷(「z」)に依存して空間の経路をたどる。「イオン化」又は「イオン化」という用語は、1つ以上の単位に等しい正味電荷を有する分析物イオンを生成するプロセスを指す。負イオンは1ユニット以上の正味の負電荷を有するものであり、正イオンは1ユニット以上の正味の正電荷を有するものである。MS方法は、陰イオンが発生してこれが検出される「陰イオンモード」、又は陽イオンが発生してこれが検出される「陽イオンモード」のどちらか一方で行うことができる。
「タンデム質量分析」又は「MS/MS」は、分析物のフラグメンテーションが段階間で生じる、質量分析の選択の複数工程を含む。タンデム質量分析計では、イオンをイオン源で生成し、質量分析の第一段階(MS1)で質量電荷比により分離する。特定の質量電荷比(前駆イオン又は親イオン)のイオンが選択され、フラグメントイオン(娘イオン)が、衝突誘起解離、イオン分子反応、又は光解離によって生成される。次いで、得られたイオンを分離し、質量分析の第二段階(MS2)で検出する。
質量分析計は、わずかに異なる質量のイオンを分離して検出するので、所与の元素からなる異なる同位体を容易に区別する。したがって、質量分析は、以下に限定されないが、低分子量の分析物、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質を含めた、分析物の正確な質量決定及び特徴づけにとって重要な方法である。その用途は、タンパク質及びその翻訳後修飾の同定、タンパク質複合体、そのサブユニット及び機能的相互作用の解明、並びにプロテオミクスにおけるタンパク質の全測定を含む。質量分析によるペプチド又はタンパク質のデノボ配列決定は、通常、アミノ酸配列のこれまでの知識なしに実施することができる。
MSにおけるほとんどの試料ワークフローは、更に、試料調製及び/又は濃縮工程を含み、例えば目的の分析物(複数可)は、ガス又は液体クロマトグラフィを用いてマトリクスから分離する。通常、質量分析測定の場合、以下の3つの工程が行われる:
1.目的の分析物を含む試料が、例えばマトリックス支援イオン化(MAI)によってイオン化される。
2.イオンをその質量及び電荷に応じて分類し、分離する。例えば、高電場非対称波形イオン移動度分光法(FAIMS)をイオンフィルタとして使用し得る。
3.次に、分離したイオンは、例えば、多重反応モード(MRM)で検出され、結果がチャートに表示される。
「マトリックス支援イオン化又はインレットイオン化」という用語は、大気圧(AP)からAP領域を質量分析装置の真空に接続する加熱インレット管への分析物及びマトリックス試料の粒子の移動を含む低フラグメンテーション(ソフト)イオン化技術を意味することができる。
「高磁場非対称波形イオン移動度分光法(FAIMS)」は、気相イオンを強電界及び弱電界での挙動によって分離する大気圧イオン移動度技術である。
「多重反応モード」又は「MRM」は、前駆イオン及び1つ以上のフラグメントイオンが選択的に検出される、MS機器の検出モードである。
質量分析決定は、ガスクロマトグラフィ(GC)、液体クロマトグラフィ(LC)、特にHPLC、及び/又はイオン移動度に基づく分離技法等のクロマトグラフィ法を含めた追加の分析法と組み合わされてもよい。好ましい実施形態では、質量分析決定は、ガスクロマトグラフィ(GC)、液体クロマトグラフィ(LC)、特にHPLC等のクロマトグラフィ法、及び/又はイオン移動度に基づく分離技術を含む追加の分析方法を含まない。
質量分析による分析前に、試料は、試料及び/又は分析物に特有の方法で前処理されてもよい。本開示の文脈において、「前処理」という用語は、質量分析による所望の分析物の後の分析を可能にするために必要な任意の手段を指す。前処理手段としては、典型的には、固体試料の溶出(例えば、乾燥血液スポットの溶出)、全血試料への溶血試薬(hemolizing reagent:HR)の添加、及び尿試料への酵素試薬の添加が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、内部標準(ISTD)の添加は、試料の前処理と見なされる。
「溶血試薬」(HR)という用語は、試料中に存在する細胞を溶解する試薬を指し、本発明の文脈では、溶血試薬、特に、限定されるものではないが、全血試料中に存在する赤血球を含む血液試料中に存在する細胞を溶解する試薬を指す。周知の溶血試薬は水(HO)である。溶血試薬のさらなる例としては、脱イオン水、高浸透圧(例えば8M尿素)を有する液体、イオン液体、及び種々の洗浄剤が挙げられるが、これらに限定されない。
通常、「内部標準」(ISTD)は、質量分析検出のワークフローに施すと、目的の分析物と類似の特性を示す、既知量の物質である(すなわち、任意の前処理、濃縮及び実際の検出工程を含む)。ISTDは目的の分析物と同様の特性を呈するが、目的の分析物とは明確に区別できる。例示すると、ガス又は液体クロマトグラフィのようなクロマトグラフ分離の間、ISTDは、試料からの目的の分析物とほぼ同じ保持時間を有する。したがって、分析物及びISTDの両方が同時に質量分析計に入る。ISTDは、しかしながら、試料からの目的の分析物とは異なる分子量を呈する。これにより、異なる質量/電荷(m/z)比を用いて、ISTDからのイオンと分析物からのイオンとを質量分析で区別することができる。両方をフラグメンテーションに供し、娘イオンを得る。これらの娘イオンは、互いのm/z比及びそれぞれの親イオンによって区別することができる。結果として、ISTD及び分析物からのシグナルの別個の決定及び定量化を実施することができる。ISTDは既知量で添加されているので、試料からの分析物のシグナル強度は、特定の定量的量の分析物に帰属し得る。かくして、ISTDの添加は、検出された分析物の量の相対的比較を可能にし、分析物(複数可)が質量分析計に到達した際、試料中に存在する目的の分析物(複数可)の明白な同定及び定量化を可能にする。典型的には、必ずしもそうではないが、ISTDは目的の分析物の同位体標識されたバリアントである(例えば、H、13C、又は15N等の標識を含む)。
前処理に加えて、試料はまた、1つ以上の濃縮工程に供され得る。本開示の文脈において、「第1の濃縮プロセス」又は「第1の濃縮ワークフロー」という用語は、試料の前処理の後に行われ、初期試料に対して濃縮された分析物を含む試料を提供する濃縮プロセスを指す。第1の濃縮ワークフローは、化学沈殿(例えば、アセトニトリルを使用する)又は固相の使用を含み得る。適切な固相としては、固相抽出(SPE)カートリッジ、及びビーズが挙げられるが、これらに限定されない。ビーズは、非磁性、磁性、又は常磁性であり得る。ビーズは、目的の分析物に特異的であるように異なるようにコーティングされてもよい。コーティングは、意図される用途、すなわち意図される捕捉分子に応じて異なり得る。どのコーティングがどの分析物に適しているかは当業者に周知である。ビーズは、様々な異なる材料で作られてもよい。ビーズは、様々なサイズを有してもよく、細孔を含む又はそれを含まない表面を備えてもよい。ビーズは免疫官能化されてもよい。
本開示の文脈において、「第2の濃縮プロセス」又は「第2の濃縮ワークフロー」という用語は、試料の前処理及び第1の富化プロセスの後に行われ、初期試料及び第1の濃縮プロセス後の試料に対して濃縮された分析物を含む試料を提供する濃縮プロセスを指す。
「クロマトグラフィ」という用語は、液体又はガスによって運ばれる化学混合物が、静止した液相又は固相の周り又は上を流れる際に化学成分の異なる分布の結果として成分中に分離される、プロセスを指す。本発明の実施形態では、方法又は試料要素又はデバイス又はキットは、それぞれクロマトグラフィ工程及びクロマトグラフィユニットを含まない。
「液体クロマトグラフィ」又は「LC」という用語は、細かく分かれた物質のカラム又は毛管路を通って流体が均一に浸透する際に、流体溶液の1つ以上の成分を選択的に遅延させるプロセスを指す。遅延は、この流体が固定相(複数可)に対して移動する際の、1つ以上の固定相とバルク流体(すなわち、移動相)との間の混合物成分の分布に起因する。固定相が移動相よりも高い極性である(例えば、移動相としてトルエン、固定相としてシリカ)方法は順相液体クロマトグラフィ(normal phase liquid chromatography:NPLC)と呼ばれ、固定相が移動相よりも低い極性である(例えば、移動相として水-メタノール混合物、固定相としてC18(オクタデシルシリル))方法は逆相液体クロマトグラフィ(reversed phase liquid chromatography:RPLC)と呼ばれる。
「高速液体クロマトグラフィ」又は「HPLC」とは、圧力下において固定相、典型的には高密度に充填されたカラムに移動相を通すことによって分離の程度が増加する、液体クロマトグラフィの方法を指す。典型的に、カラムには、不規則又は球形の粒子、多孔質モノリシック層、又は多孔質膜で構成される固定相が充填されている。HPLCは、歴史的に、移動相及び固定相の極性に基づいて2つの異なるサブクラスに分けられる。固定相が移動相よりも高い極性である(例えば、移動相としてトルエン、固定相としてシリカ)方法は順相液体クロマトグラフィー(NPLC)と呼ばれ、反対の(例えば、移動相として水-メタノール混合物、固定相としてC18(オクタデシルシリル))方法は逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)と呼ばれる。マイクロLCとは、典型的には1mm未満、例えば約0.5mmの狭い(norrow)内径を有するカラムを用いるHPLC法を指す。「超高速液体クロマトグラフィ」又は「UHPLC」とは、120MPa(17,405lbf/in2)又は約1200気圧の圧力を用いるHPLC法を指す。ラピッドLCとは、上記のような内径であり、長さが2cm未満、例えば1cmの短いカラムを用いて、上記のような流量及び上記のような圧力を加えるLC法を指す(マイクロLC、UHPLC)。短いラピッドLCプロトコルは、単一の分析カラムを用いるトラッピング/洗浄/溶出工程を含み、1分未満の非常に短い時間でLCを実現する。
さらに、親水性相互作用クロマトグラフィ(hydrophilic interaction chromatography:HILIC)、サイズ排除型LC、イオン交換型LC、及びアフィニティ型LCがよく知られている。
LC分離は、並列に配置された複数のLCチャネルを含むシングルチャネルLC又はマルチチャネルLCであってもよい。LCにおいて、分析物は、当業者に一般的に知られているように、それらの極性又はログP値、サイズ、又は親和性に従って分離され得る。
本明細書で使用される場合、「イオン移動度分光法」という用語は、広義の用語であり、当業者にとってのその通常の慣習的な意味が与えられるべきであり、特殊又は特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、特に、限定されないが、分析物イオンの移動度特性に基づいて、電界中及び少なくとも1つの緩衝ガスの存在下でイオンを分離するためのデバイスを指し得る。
本明細書で使用される場合、「結晶化された」という用語は、広義の用語であり、当業者にその通常の慣習的な意味を与えられるべきであり、特別な又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は具体的には、限定されないが、異なる分析物分子をそれらの構造に更に含むことができる過飽和液体溶液からの分子の高度に組織化された固体構造の形成を指し得る。
本明細書で使用される場合、「予備結晶化された」という用語は、広義の用語であり、当業者にその通常の慣習的な意味を与えられるべきであり、特別な又はカスタマイズされた意味に限定されるべきではない。この用語は、特に、限定されないが、分析物-ビーズ混合物への添加前のイオン化マトリックスの結晶化プロセスを指し得る。
実施形態では、「結晶化された」及び「予備結晶化された」という用語は互換的に使用することができる。
「臨床診断システム」は、in vitro診断のための試料の分析専用の実験室自動化機器である。臨床診断システムは、必要に応じて、かつ/又は所望の実験室ワークフローに従って、異なる構成を有してもよい。追加の構成は、複数の機器及び/又はモジュールを互いに結合することによって得ることができる。「モジュール」は、専用機能を有する、臨床診断システム全体よりサイズが典型的には小さい作業セルである。この関数は分析的であってもよいが、分析前又は分析後であってもよく、又は分析前関数、分析関数又は分析後関数のいずれかに対する補助関数であってもよい。特に、モジュールは、例えば試料の前分析及び/又は分析及び/又は後分析工程を行うことによって、試料処理ワークフローの専用タスクを実行するための1つ以上の他のモジュールと協働するように構成することができる。特に、臨床診断システムは、特定の種類の分析、例えば臨床化学、免疫化学、凝固、血液学、液体クロマトグラフィ分離、質量分析等のために最適化されたそれぞれのワークフローを実行するように設計された1つ以上の分析機器を備えることができる。したがって、臨床診断システムは、1つの分析機器、又はそれぞれのワークフローを有するそのような分析機器のいずれかの組み合わせを備えることができ、前分析及び/又は後分析モジュールは、個々の分析機器に結合されるか、又は複数の分析機器によって共有され得る。あるいは、分析前及び/又は分析後の機能は、分析機器に組み込まれたユニットによって実施されてもよい。臨床診断システムは、試料及び/又は試薬及び/又はシステム流体のピペッティング及び/又はポンピング及び/又は混合のための液体処理ユニット等の機能ユニット、並びに選別、保存、輸送、識別、分離、検出のための機能ユニットも備えることができる。臨床診断システムは、目的の分析物を含む試料の自動調製のための試料調製ステーション、任意に複数のLCチャネルを含む液体クロマトグラフィ(LC)分離ステーション、及び/又は任意に調製された試料をLCチャネルのいずれか1つに入力するための試料調製/LCインターフェースを備えることができる。臨床診断システムは、それぞれが試料調製工程の予め定義されたシーケンスを含み、目的の分析物に応じて完了のために予め定義された時間を必要とする予め定義された試料調製ワークフローに試料を割り当てるようにプログラムされたコントローラを更に備えることができる。臨床診断システムは、質量分析計(MS)及びLC分離ステーションを質量分析計に接続するためのLC/MSインターフェースとを更に備え得る。
「試料調製ステーション」は、1つ以上の分析装置又は分析装置内のユニットに結合した分析前モジュールであり、試料中の妨げとなるマトリクス成分を除去又は少なくとも低減し、かつ/又は試料中の目的の分析物を濃縮することを目的とした一連の試料処理工程を実行するように設計される。このような処理工程は、試料又は複数の試料について順次、並列、又は時差をつけた様相で実行される以下の処理作業、すなわち流体のピペット操作(吸引及び/又は送出)、流体の圧送、試薬との混合、特定の温度での培養、加熱又は冷却、遠心分離、分離、フィルタ処理、ふるい分け、乾燥、洗浄、再懸濁、分取、移送、保管、のうちの1つ以上を含み得る。
臨床診断システム、例えば試料調製ステーションはまた、新しい試料調製開始シーケンスが開始される前に複数の試料を受け取るためのバッファユニットを備えてもよく、試料は個別にランダムにアクセス可能であってもよく、その個々の調製は試料調製開始シーケンスに従って開始されてもよい。
臨床診断システムは、より簡便で信頼性が高く、したがって臨床診断に適した質量分析を利用する。特に、質量分析へのオンライン結合を可能にしながら、ランダムアクセス試料調製及びLC分離を用いてハイスループット、例えば最大100試料/時間以上を得ることができる。さらに、プロセスを完全に自動化して、歩留まりを向上させ、必要な技能のレベルを下げることが可能である。
「キット」は、少なくとも1つの試薬、例えば障害の処置のための薬品、又は本発明のバイオマーカー遺伝子若しくはタンパク質を特異的に検出するためのプローブを含む、任意の製品(例えば、パッケージ又は容器)である。キットは、好ましくは、本発明の方法を実施するためのユニットとして、奨励、流通、又は販売される。典型的には、キットは、バイアル、チューブ等の1つ以上の容器手段を密接に閉じ込めて受け入れるように区画化された担体手段を更に含むことができる。特に、容器手段の各々は、第1の態様の方法で使用される別個の要素のうちの1つを備える。キットは、反応触媒を含むがこれに限定されない1つ以上の他の試薬を更に備えてもよい。キットは、緩衝液、内部標準、希釈剤、フィルタ、針、注射器、及び使用説明を伴う添付文書を含むがこれらに限定されない、さらなる材料を含む1つ以上の他の容器を更に備えてもよい。標識は、組成物が特定の用途に使用されることを示すために容器上に提示され得、in vivo使用又はin vitro使用のいずれかに関する指示も示し得る。コンピュータ・プログラム・コードは、光記憶媒体(例えば、コンパクトディスク)等のデータ記憶媒体若しくはデバイス上に、又はコンピュータ若しくはデータ処理でデバイスに直接提供されてもよい。その上キットは、較正目的のために、本明細書の別の箇所に記載されるようなバイオマーカーの標準量を含み得る。
実施形態
第1の態様では、本発明は、試料中の少なくとも1つの分析物を判定するための方法であって、以下の工程:
a)少なくとも1つの分析物、少なくとも1つの微粒子、少なくとも1つのイオン化マトリックス、及び基材表面を有する基材を提供する工程、
b)分析物を、少なくとも1つの微粒子表面を有する微粒子とインキュベートする工程であって、分析物が微粒子の表面に吸着され、分析物-微粒子複合体が形成される、分析物を、少なくとも1つの微粒子表面を有する微粒子とインキュベートする工程、
c)分析物-微粒子複合体をイオン化マトリックスと接触させて、マトリックス:分析物-微粒子試料を形成する工程、
d)基材表面上にマトリックス:分析物-微粒子試料及び/又はマトリックス:分析物試料を提供する工程、
e)少なくとも分析物をイオン化する工程であって、イオン化が機械的イオン化状態である、少なくとも分析物をイオン化する工程、
f)イオン移動度分光法及び/又は質量分析によって分析物を判定する工程
を含む、方法に関する。
本発明者らは、驚くべきことに、本発明の主題、特に本発明の第1の態様による方法が、上述の欠点を克服するための単純で堅牢な方法を示すことを見出した。
マトリックスイオン化の原理は、固体二重担持ワークフローが適用される場合にも機能する。驚くべきことに、本発明者らは、分析物が固体支持体、特に微粒子に吸着され、イオン化マトリックスが微粒子と共に固体、好ましくは基材、例えば紙組織上にある(例えば、紙の場合、分析物が装填された微粒子と結晶性イオン化マトリックス成分とを同時に吸引する)場合でも、イオン化プロセスは依然として多種多様な分析物に対して機能していることを見出した。
この方法には、微粒子から分析物を脱離させるための溶出工程が不要であるという利点がある。分析物が担持された微粒子は洗浄することができ、分析物が担持された微粒子は、(予備結晶化された)イオン化マトリックスと共に紙組織に吸い込まれる。紙組織上の微粒子を乾燥させて保存し、後で分析することができる。これを乾燥ビーズスポットと呼ぶことができる。
本発明の第1の態様では、試料中の少なくとも1つの分析物を判定するための方法が開示される。
工程a)により、少なくとも1つの分析物、少なくとも1つの微粒子、少なくとも1つのイオン化マトリックス、及び基材表面を有する基材が提供される。
工程b)により、分析物と、少なくとも1つの微粒子表面を有する微粒子とがインキュベートされる。したがって、分析物は微粒子の表面に吸着され、分析物-微粒子複合体が形成される。これに関連して、発現は、複数の分析物-微粒子複合体が形成されることを理解することができる。これは、工程b)において、試料は、少なくとも1つの表面を有する微粒子と共にインキュベートされ得て、それにより、分析物が微粒子の表面に吸着され、分析物-微粒子複合体が形成される。
本発明の第1の態様の実施形態では、微粒子は、疎水性化合物、親水性化合物、免疫化学化合物からなる群から選択される化学物質によって修飾され得る。
第1の態様の実施形態では、疎水性化合物は、例えば、カルボン酸基及び/又はアルキル基を有する化合物である。
第1の態様の実施形態では、親水性化合物は、例えばヒドロキシ官能基を有する化合物である。
第1の態様の実施形態では、免疫化学化合物は、例えば、特異的抗体を有する化合物である。
第1の態様の実施形態では、微粒子は、磁性粒子である。
第1の態様の実施形態では、微粒子は、コーティングされた磁性粒子であり、コーティングはガラスコーティング又はポリマーコーティングである。
第1の態様の実施形態では、微粒子は、抗体を固定化するための免疫ビーズである。
第1の態様の実施形態では、微粒子は、タンパク質コーティングされた、例えばストレプトアビジンコーティングされた磁気ビーズである。
第1の態様の実施形態では、微粒子は、磁性微粒子;シリカ微粒子;メラミン樹脂微粒子;ポリ(スチレン)系微粒子;ポリ(メチルメタクリレート)微粒子からなる群から選択される。
特に、微粒子又は微粒子(複数)は、磁性微粒子、具体的には磁性コアと改質表面とを有する磁性微粒子;シリカ微粒子、具体的には、シリカコアと改質表面とを有するシリカ微粒子;メラミン樹脂微粒子、具体的には、メラミン樹脂核と改質表面とを有するメラミン樹脂微粒子;ポリ(スチレン)系微粒子、具体的にはポリ(スチレン)コアと改質表面とを有するポリ(スチレン)系微粒子;ポリ(メチルメタクリレート)微粒子、具体的には、ポリ(メチルメタクリレート)コアと改質表面とを有するポリ(メチルメタクリレート)微粒子からなる群から選択され得る。しかしながら、他の粒子も実現可能であり得る。メラミン樹脂微粒子は、500nm~20μm、好ましくは2μm~4μm、最も好ましくは3μmの平均径を有し得る。ポリ(スチレン)系微粒子は、500nm~50μm、好ましくは2μm~4μm、最も好ましくは3μmの平均径を有し得る。ポリ(メチルメタクリレート)微粒子は、500nm~50μm、好ましくは2μm~4μm、最も好ましくは3μmの平均径を有し得る。磁性微粒子の改質表面は、改質ポリ(スチレン)表面であってもよく、磁性微粒子は、5μm~50μm、好ましくは10μm~30μm、最も好ましくは20μmの平均径を有してもよい。磁性微粒子の改質表面はシリカ表面であってもよく、磁性微粒子は、100nm~1000nm、好ましくは200nm~500nm、最も好ましくは300nmの平均径を有してもよい。シリカ微粒子の改質表面は、シアノプロピルシラン官能基化表面であってもよく、シリカ微粒子は、5μm~100μm、好ましくは20μm~80μm、最も好ましくは40μmの平均径を有してもよい。また、他の寸法も実現可能であり得る。
第1の態様の実施形態では、微粒子は、磁性粒子である。
第1の態様の実施形態では、微粒子は、ポリマー表面及び少なくとも1つの磁性コアを含む磁性粒子であり、ポリマー表面は高架橋ポリマーを含み、磁性粒子は、ISO 13320に従って決定される場合、5~40マイクロメートルの範囲の粒径を有する。「ポリマー表面」という用語については、「ポリマーマトリックス」を使用することもできる。
第1の態様の実施形態では、ポリマー表面は、ISO 15901-3に従って決定される場合、100nmより小さい、好ましくは50nm以下の孔径を有する孔を含む。
第1の態様の実施形態では、粒子は、ISO 9277に従って決定される場合、50~2500m/gの範囲のBET比表面積を有する。
第1の態様の実施形態では、磁性粒子は、少なくとも1Am/kg、好ましくは少なくとも10Am/kgの飽和磁化を有する。
第1の態様の実施形態では、少なくとも1つの磁性コアは、少なくとも1つの磁性ナノ粒子、好ましくは少なくとも1つの酸化鉄ナノ粒子、より好ましくはFeナノ粒子を含む。
第1の態様の実施形態では、磁性コアは、少なくとも1つのナノ粒子と、コーティングC1とを含み、より好ましくは少なくとも1つのナノ粒子と、コーティングC1とからなる。
第1の態様の実施形態では、少なくとも1つの磁性コアは、超粒子を含み、好ましくは超粒子からなり、任意にコーティングC1を含む。
第1の態様の実施形態では、少なくとも1つのコーティングC1は、界面活性剤(tensides)、シリカ、シリケート、シラン、ホスフェート、ホスホネート、ホスホン酸及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される。
第1の態様の実施形態では、ポリマー表面は、架橋剤である少なくとも1つのモノマー構成要素の存在下で適切なモノマー構成要素を共重合することを含む方法によって得られる又は得ることができるコポリマーを含み、好ましくは全てのモノマー構成要素の5~90体積%が架橋剤、より好ましくはジビニルベンゼンである。
第1の態様の実施形態では、微粒子は超磁性である。
第1の態様の実施形態では、高架橋ポリマーは、高架橋によって製造することができ、高架橋は、ルイス酸からなる群から選択され、好ましくはFeCl、ZnCl、AlCl、BF、SbCl、SnCl、TiCl、SiCl及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される触媒、より好ましくはFeCl若しくはZnCl、又はそれらの混合物の存在下で行われる。
第1の態様の実施形態では、方法は、以下の工程:
b1)試料の更なる成分からの分析物-微粒子複合体、具体的には分析物-微粒子複合体を分離する工程、及び
b2)試料の更なる成分を分析物-微粒子複合体から、具体的には分析物-微粒子複合体から除去する工程
を更に含み得る。
第1の態様の実施形態では、方法は、以下の工程:
b3)分析物-微粒子複合体、具体的には分析物-微粒子複合体を洗浄する工程
を含み得る。
具体的には、分析物-微粒子複合体を溶媒又は洗浄溶媒で洗浄してもよい。洗浄溶媒の組成は、分析物が微粒子に結合したままであるように選択され得る。洗浄溶媒は、脱イオン水であってもよく、脱イオン水を含んでもよい。さらに、洗浄溶媒は、水、1つ以上の緩衝塩、1つ以上のpH調整添加剤及び/又は1つ以上の有機溶媒の混合物を含んでもよい。有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリルからなる群から選択され得る。有機溶媒の含有量は、0体積%~10体積%であってもよい。工程b3)は、少なくとも2回、好ましくは少なくとも3回繰り返されてもよい。
工程c)により、分析物-微粒子複合体をイオン化マトリックスと接触させて、マトリックス:分析物-微粒子試料を形成する。
本発明の第1の態様の実施形態では、工程c)は、
c1)溶媒に溶解した分析物-微粒子複合体を提供すること、次いで
c2)溶解した分析物-微粒子複合体にイオン化マトリックスを添加するか、又はその逆にして、マトリックス:分析物-微粒子試料を形成すること、次いで
c3)マトリックス:分析物-微粒子試料を基材表面に塗布することであって、工程c2)のイオン化マトリックスが結晶化されるか、又はさらなる溶媒に溶解され、溶媒及びさらなる溶媒は同じであっても異なっていてもよい、マトリックス:分析物-微粒子試料を基材表面に塗布すること
を含む。
本発明の第1の態様の実施形態では、工程c)は、
c4)溶媒に溶解した分析物-微粒子複合体を提供すること、次いで
c5)溶解した分析物-微粒子複合体を基材表面に塗布すること、次いで、
c6)溶解した分析物-微粒子複合体にイオン化マトリックスを添加して、マトリックス:分析物-微粒子試料を形成することであって、工程c6)においてイオン化マトリックスが結晶化されるか、又はさらなる溶媒に溶解され、溶媒及びさらなる溶媒は同じであっても異なっていてもよい、溶解した分析物-微粒子複合体にイオン化マトリックスを添加して、マトリックス:分析物-微粒子試料を形成すること
を含む。
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン化マトリックスは、少なくとも工程c)で結晶化される。
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物-微粒子複合体は、工程c)において流体状態にあり、かつ/又は工程f)を実行することによって固体状態にある。
工程d)により、マトリックス:分析物-微粒子試料が基材表面上に提供される。
工程e)により、少なくとも分析物がイオン化される。イオン化は、機械的イオン化である。
本発明の第1の態様の実施形態では、工程e)のイオン化は、剪断力を含むか若しくは剪断力からなる機械力によって誘導され、かつ/又は機械的イオン化は機械刺激によって誘導され、好ましくは機械刺激は摩擦発光である。
本発明の第1の態様の実施形態では、工程e)のイオン化は機械的イオン化であり、機械的イオン化は剪断力及び/又は摩擦発光によって誘導される。
本発明の第1の態様の実施形態では、機械的イオン化は、好ましくは剪断力を含むか又はそれからなる機械力によって誘導される。好ましくは、機械力は、それぞれの結晶の剪断力及び/又は摩擦発光によって引き起こされる。
本発明の第1の態様の実施形態では、機械的イオン化は機械刺激によって誘導され、好ましくは機械刺激は摩擦発光である。
本発明の第1の態様の実施形態では、機械的イオン化は、好ましくは剪断力を含むか若しくはそれからなる機械力によって誘導され、かつ/又は機械的イオン化は機械刺激によって誘導され、好ましくは機械刺激は摩擦発光である。
本発明の第1の態様の実施形態では、工程e)のイオン化は、マトリックス支援イオン化(MAI)、好ましくは固体二重担持マトリックス支援イオン化である。例えば、分析物は、固体支持体、特に微粒子に吸着され、イオン化マトリックスは、微粒子と共に固体、好ましくは基材、例えば紙組織上にある(例えば、紙の場合、分析物が装填された微粒子と結晶性イオン化マトリックス成分とを同時に吸引する)。
本発明の第1の態様の実施形態では、工程e)はレーザによっては誘導されない。
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン化マトリックスは摩擦発光マトリックスである。
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン化マトリックスは、サルサラート、3-ニトロベンゾニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、2-ニトロベンゾニトリル、5-メチル-2-ニトロベンゾニトリル、クマリン、メチル-2-メチル-3-ニトロベンゾエート、メチル-5-ニトロ-2-フロエート、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール)、3-ニトロベンズアルデヒド、6-ニトロ-o-アニソニトリル、無水フタル酸、又はそれらの混合物からなる群から選択される。
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン化マトリックスは、室温及び室内圧力で不均一固相液相にある。
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン化マトリックスは、大気圧以下のもとで、好ましくは固相から気相への相転移を受ける。
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン化マトリックスは、120℃未満の温度で大気圧以下のもとに置かれた場合に、好ましくは固相から気相への相転移を受ける。
本発明の第1の態様の実施形態では、イオン化マトリックスは、70℃未満の温度で大気圧以下のもとに置かれた場合に、好ましくは固相から気相への相転移を受ける。
本発明の第1の態様の実施形態では、工程d)は、マトリックス:分析物-微粒子試料を基材表面上にスポットとして配置することによって実行される。
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物は、生物学的組織、生物学的材料、食料品、ポリマー、絵画、古細菌学的人工物、人工骨、皮膚、尿又は血液を含む。
本発明の第1の態様の実施形態では、試料はギ酸(FA)を含む。
本発明の第1の態様の実施形態では、目的の分析物は、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、代謝物、ホルモン、脂肪酸、脂質、炭水化物、ステロイド、ケトステロイド、セコステロイド、別の分子の特定の修飾を特徴とする分子、生体によって内在化された物質、そのような物質の代謝物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
本発明の第1の態様の実施形態では、溶媒及び/又はさらなる溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、又はそれらの混合物である。
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物と微粒子とが共有結合して分析物-微粒子複合体を形成する。
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物はビタミンDであり、微粒子は免疫ビーズである。
本発明の第1の態様の実施形態では、質量分析計又はイオン移動度分光計は、インレットと、前記インレットの近くの領域とを含み、前記インレットの近くの前記領域は大気圧以下に維持される。
本発明の第1の態様の実施形態では、インレットは、少なくとも1つの分析物及び/又はマトリックス:分析物-微粒子試料が真空でチャンバに注入又は挿入され、任意に、加熱されて気化を達成するシステムである。
本発明の第1の態様の実施形態では、インレットは、切断された試料入口及びフィルタを含む。
本発明の第1の態様の実施形態では、フィルタは、ナイロンメッシュ、膜、金属グリッドである。原則として、フィルタのための他のポリマー材料、例えば、ポリエステルメッシュ、ポリ(テトラフルオロエチレン)フィルタ膜、ポリプロピレンフィルタ膜、ポリ(エーテルエーテルケトン)フィルタ膜を使用することができる。
本発明の第1の態様の実施形態では、フィルタは切断された試料入口の一部である。
本発明の第1の態様の実施形態では、フィルタは交換可能である。
本発明の第1の態様の実施形態では、フィルタは、イオン化マトリックス及び/又はマトリックス:分析物-微粒子試料及び/又は分析物-微粒子複合体でコーティングされている。
本発明の第1の態様の実施形態では、試料は、生物学的試料であり、生物学的試料は、血液、血清、血漿、唾液、眼水晶体液、脳脊髄液、汗、尿、乳、腹水、粘液、滑液、腹腔液、羊水、組織、細胞からなる群から選択される。
本発明の第1の態様の実施形態では、基材は、金属、紙、布、リボン、ガラス、プラスチック、ポリマー、ドデシル硫酸ナトリウムゲル、アガロースゲル、紙クロマトグラフィープレート、シリカプレート及び織布繊維からなる群から選択される。
本発明の第1の態様の実施形態では、基材は、プレート、例えばガラスプレート、又はフィルタ、例えば三角形フィルタである。
本発明の第1の態様の実施形態では、方法は自動化されており、好ましくは完全に又は部分的に自動化されている。
工程f)により、分析物は、イオン移動度分光法及び/又は質量分析によって判定される。
本発明の第1の態様の実施形態では、方法は、以下の工程:
g)工程d)による分析物-微粒子複合体とイオン移動度分光法若しくは質量分析との間に配置され、微粒子がイオ移動度分光法若しくは質量分析に入るのを防ぐためのフィルタを提供する工程、及び/又は
h)少なくとも工程b)の後に、好ましくは洗浄試薬として水を使用して、分析物-微粒子複合体を洗浄する工程
の少なくとも1つを更に含む。
本発明の第1の態様の実施形態では、フィルタは、微粒子の粒径よりも小さいメッシュサイズを有する。
第2の態様では、本発明は、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための本発明の第1の態様の方法の使用に関する。本発明の第1の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第2の態様に適用され、その逆もまた同様である。
第3の態様では、本発明は、少なくとも1つの分析物を判定するための、かつ本発明の第1の態様による方法を実行するのに適した試料要素であって、
- 基材表面と、
- 基材表面上に配置され、マトリックス支援イオン化を使用するためのイオン化マトリックスと、
- 基材表面上に配置された分析物-微粒子複合体と、を含み、
- イオン化マトリックスが、サルサラート、3-ニトロベンゾニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、2-ニトロベンゾニトリル、5-メチル-2-ニトロベンゾニトリル、クマリン、メチル-2-メチル-3-ニトロベンゾエート、メチル-5-ニトロ-2-フロエート、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール)、3-ニトロベンズアルデヒド、6-ニトロ-o-アニソニトリル、無水フタル酸、又はそれらの混合物からなる群から選択され、
- イオン化マトリックス及び/又は分析物-微粒子複合体が結晶化又は予備結晶化されており、
- 分析物-微粒子複合体の微粒子が磁性であり、
-分析物-微粒子複合体とイオン化マトリックスとが互いに接触している、試料要素に関する。本発明の第1の態様及び/又は本発明の第2の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第3の態様に適用され、その逆も同様である。
本発明の第3の態様の実施形態では、イオン化マトリックスは、レーザ又はレーザーイオン化技術、例えばMALDI又はSALDIによっては誘導されない。
第4の態様では、本発明は、切断された試料入口及びフィルタを含む質量分析計又はイオン移動度分光計へのイオン輸送のためのインレットに関する。本発明の第1の態様及び/又は本発明の第2の態様及び/又は本発明の第3の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第4の態様に適用され、その逆もまた同様である。
第5の態様では、本発明は、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための本発明の第4の態様のインレットの使用に関する。本発明の第1の態様及び/又は本発明の第2の態様及び/又は本発明の第3の態様及び/又は本発明の第4の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第5の態様に適用され、その逆もまた同様である。
本発明の第5の態様の実施形態では、インレットはデバイスの一部であり、好ましくはデバイスは臨床診断システムである。これは、デバイスがインレットを備えることを意味し得る。
本発明の第5の態様の実施形態では、臨床診断システムは試料調製ステーションを含む。
第6の態様では、本発明は、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための本発明の第5の態様のインレットの使用に関する。本発明の第1の態様及び/又は本発明の第2の態様及び/又は本発明の第3の態様及び/又は本発明の第4の態様及び/又は本発明の第5の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第6の態様に適用され、その逆もまた同様である。
第7の態様では、本発明は、イオン化マトリックスを含む真空イオン化又はインレットイオン化のための組成物であって、イオン化マトリックスが、サルサラートを含むか、又はサルサラートからなる、組成物に関する。本発明の第1の態様及び/又は本発明の第2の態様及び/又は本発明の第3の態様及び/又は本発明の第4の態様及び/又は本発明の第5の態様及び/又は本発明の第6の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第7の態様に適用され、その逆もまた同様である。
本発明の第7の態様の実施形態では、組成物は、マトリックス支援イオン化(MAI)用、好ましくは固体二重担持マトリックス支援イオン化用である。
本発明の第7の態様の実施形態では、サルサラートはCAS番号552-94-3を有する。
本発明の第7の態様の実施形態では、サルサラートは、以下の式:
Figure 2024534392000002
を有する。
本発明の第7の態様の実施形態では、組成物は、少なくとも1つの分析物を更に含む。
本発明の第7の態様の実施形態では、組成物は、コーティングされた微粒子、好ましくは磁性粒子を更に含み、コーティングはガラスコーティング又はポリマーコーティングである。
本発明の第7の態様の実施形態では、組成物は、微粒子、好ましくは免疫ビーズを更に含む。
本発明の第7の態様の実施形態では、イオン化マトリックスと分析物のモル比は5:1~1x10:1である。
本発明の第7の態様の実施形態では、組成物は、マトリックス:分析物-微粒子試料又はマトリックス:分析物試料を含み、イオン化マトリックス:分析物試料又はマトリックス:分析物-微粒子試料は、大気圧以下に曝露された場合に固相にある。
本発明の第7の態様の実施形態では、イオン化マトリックスは、真空又はインレットイオン化を行う場合に結晶化される。
本発明の第7の態様の実施形態では、イオン化マトリックス:分析物-微粒子試料又はマトリックス:分析物試料は、好ましくはスポットとして基材上に配置される。
本発明の第7の態様の実施形態では、基材は、金属、紙、布、リボン、ガラス、プラスチック、ポリマー、ドデシル硫酸ナトリウムゲル、アガロースゲル、紙クロマトグラフィープレート、シリカプレート又は織布繊維からなる群から選択される。
本発明の第7の態様の実施形態では、組成物は溶媒を含む。
本発明の第7の態様の実施形態では、溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、又はそれらの混合物である。
本発明の第7の態様の実施形態では、マトリックス:分析物-微粒子試料又はマトリックス:分析物試料は、分析物及びイオン化マトリックス、並びに任意の微粒子を一緒に混合又は粉砕することによって調製される。
本発明の第7の態様の実施形態では、マトリックス:分析物-微粒子試料又はマトリックス:分析物試料は固体である。
本発明の第7の態様の実施形態では、固体試料は凍結状態にある。
本発明の第7の態様の実施形態では、マトリックス:分析物-微粒子試料又はマトリックス:分析物試料は、アンモニウム塩、金属塩、酸、塩基又は緩衝液を更に含む。
第8の態様では、本発明は、本発明の第7の態様の組成物の、好ましくは本発明の第1の態様の方法における使用に関する。本発明の第1の態様及び/又は本発明の第2の態様及び/又は本発明の第3の態様及び/又は本発明の第4の態様及び/又は本発明の第5の態様及び/又は本発明の第6の態様及び/又は本発明の第7の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第8の態様に適用され、その逆もまた同様である。
第9の態様では、本発明は、本発明の第1の態様による方法を実施するのに適したキットであって、
(A)イオン化マトリックスと、
(B)溶媒又はさらなる溶媒と、
(C)微粒子と、
(D)任意に、少なくとも1つの内部標準と
を備える。
本発明の第1の態様及び/又は本発明の第2の態様及び/又は本発明の第3の態様及び/又は本発明の第4の態様及び/又は本発明の第5の態様及び/又は本発明の第6の態様及び/又は本発明の第7の態様及び/又は本発明の第8の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第9の態様に適用され、その逆もまた同様である。
第10の態様では、本発明は、本発明の第1の態様による方法における本発明の第9の態様のキットの使用に関する。本発明の第1の態様及び/又は本発明の第2の態様及び/又は本発明の第3の態様及び/又は本発明の第4の態様及び/又は本発明の第5の態様及び/又は本発明の第6の態様及び/又は本発明の第7の態様及び/又は本発明の第8の態様及び/又は本発明の第9の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第10の態様に適用され、その逆もまた同様である。
さらなる実施形態では、本発明は、以下の態様に関する:
1.試料中の少なくとも1つの分析物を判定するための方法であって、以下の工程:
a)少なくとも1つの分析物、少なくとも1つの微粒子、少なくとも1つのイオン化マトリックス、及び基材表面を有する基材を提供する工程、
b)分析物を、少なくとも1つの微粒子表面を有する微粒子とインキュベートする工程であって、分析物が微粒子の表面に吸着され、分析物-微粒子複合体が形成される、分析物を、少なくとも1つの微粒子表面を有する微粒子とインキュベートする工程、
c)分析物-微粒子複合体をイオン化マトリックスと接触させて、マトリックス:分析物-微粒子試料を形成する工程、
d)基材表面上にマトリックス:分析物-微粒子試料及び/又はマトリックス:分析物試料を提供する工程、
e)少なくとも分析物をイオン化する工程であって、イオン化が機械的イオン化である、少なくとも分析物をイオン化する工程、
f)イオン移動度分光法及び/又は質量分析によって分析物を判定する工程
を含む、方法。
2.機械的イオン化が、好ましくは剪断力を含むか又は剪断力からなる機械力によって誘導される、態様1に記載の方法。
3.機械的イオン化が、機械刺激によって誘導され、好ましくは機械刺激が摩擦発光である、先行する態様のいずれかに記載の方法。
4.機械的イオン化が、蒸発又は昇華によっては誘導されない、先行する態様のいずれかに記載の方法。
5.自動化されている、先行する態様のいずれかに記載の方法。
6.工程e)におけるイオン化が、マトリックス支援イオン化(MAI)、好ましくは固体二重担持マトリックス支援イオン化である、先行する態様のいずれかに記載の方法。
7.工程e)が、レーザによって誘導されない、先行する態様のいずれかに記載の方法。
8.イオン化マトリックスが、少なくとも工程c)で結晶化される、先行する態様のいずれかに記載の方法。
9.イオン化マトリックスが、摩擦発光マトリックスである、先行する態様のいずれかに記載の方法。
10.工程c)が、
c1)溶媒に溶解した分析物-微粒子複合体を提供すること、次いで
c2)溶解した分析物-微粒子複合体にイオン化マトリックスを添加するか、又はその逆にして、マトリックス:分析物-微粒子試料を形成すること、次いで
c3)マトリックス:分析物-微粒子試料を基材表面に塗布することであって、工程c2)のイオン化マトリックスが結晶化されるか、又はさらなる溶媒に溶解され、溶媒及びさらなる溶媒は同じであっても異なっていてもよい、マトリックス:分析物-微粒子試料を基材表面に塗布すること
を含む、先行する態様のいずれかに記載の方法。
11.工程c)が、
c4)溶媒に溶解した分析物-微粒子複合体を提供すること、次いで
c5)溶解した分析物-微粒子複合体を基材表面に塗布すること、次いで、
c6)溶解した分析物-微粒子複合体にイオン化マトリックスを添加して、マトリックス:分析物-微粒子試料を形成することであって、工程c6)においてイオン化マトリックスが結晶化されるか、又はさらなる溶媒に溶解され、溶媒及びさらなる溶媒は同じであっても異なっていてもよい、溶解した分析物-微粒子複合体にイオン化マトリックスを添加して、マトリックス:分析物-微粒子試料を形成すること
を含む、先行する態様のいずれかに記載の方法。
12.方法が、以下の工程:
g)工程d)による分析物-微粒子複合体とイオン移動度分光法若しくは質量分析との間に配置され、微粒子がイオン移動度分光法若しくは質量分析に入るのを防ぐためのフィルタを提供する工程、及び/又は
h)少なくとも工程b)の後に、好ましくは洗浄試薬として水を使用して、分析物-微粒子複合体を洗浄する工程
の少なくとも1つを更に含む、先行する態様のいずれかに記載の方法。
13.フィルタが、微粒子の粒径よりも小さいメッシュサイズを有する、先行する態様のいずれかに記載の方法。
14.微粒子が、疎水性化合物、親水性化合物、免疫化学化合物からなる群から選択される化学物質によって修飾され得る、先行する態様のいずれかに記載の方法。
15.微粒子が、磁性粒子である、先行する態様のいずれかに記載の方法。
16.微粒子が、コーティングされた磁性粒子であり、コーティングがガラスコーティング又はポリマーコーティングである、先行する態様のいずれかに記載の方法。
17.微粒子が、抗体を固定化するための免疫ビーズである、先行する態様のいずれかに記載の方法。
18.微粒子が、タンパク質コーティングされた、例えばストレプトアビジンコーティングされた磁気ビーズである、先行する態様のいずれかに記載の方法。
19.分析物-微粒子複合体は、工程c)において流体状態にあり、かつ/又は工程f)を実行することによって固体状態にある、先行する態様のいずれかに記載の方法。
20.微粒子が、磁性微粒子;シリカ微粒子;メラミン樹脂微粒子;ポリ(スチレン)系微粒子;ポリ(メチルメタクリレート)微粒子からなる群から選択される、先行する態様のいずれかに記載の方法。
21.微粒子が、磁性粒子である、先行する態様のいずれかに記載の方法。
22.微粒子が、ポリマー表面(P)及び少なくとも1つの磁性コア(M)を含む磁性粒子であり、ポリマー表面は高架橋ポリマーを含み、磁性粒子は、ISO 13320に従って決定される場合、5~40マイクロメートルの範囲の粒径を有する、先行する態様のいずれかに記載の方法。
23.ポリマー表面が、ISO 15901-3に従って決定される場合、100nmより小さい、好ましくは50nm以下の孔径を有する孔を含む、先行する態様のいずれかに記載の方法。
24.粒子が、ISO 9277に従って決定される場合、50~2500m/gの範囲のBET比表面積を有する、先行する態様のいずれかに記載の方法。
25.磁性粒子が、少なくとも1Am/kg、好ましくは少なくとも10Am/kgの飽和磁化を有する、先行する態様のいずれかに記載の方法。
26.少なくとも1つの磁性コア(M)は、少なくとも1つの磁性ナノ粒子、好ましくは少なくとも1つの酸化鉄ナノ粒子、より好ましくはFe30 4ナノ粒子を含む、先行する態様のいずれかに記載の方法。
27.磁性コア(M)が、少なくとも1つのナノ粒子と、コーティングC1とを含み、より好ましくは少なくとも1つのナノ粒子と、コーティングC1とからなる、先行する態様のいずれかに記載の方法。
28.少なくとも1つの磁性コア(M)が、超粒子を含み、好ましくは超粒子からなり、任意にコーティングC1を含む、先行する態様のいずれかに記載の方法。
29.少なくとも1つのコーティングC1が、界面活性剤(tensides)、シリカ、シリケート、シラン、ホスフェート、ホスホネート、ホスホン酸及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される、先行する態様のいずれかに記載の方法。
30.ポリマー表面が、架橋剤である少なくとも1つのモノマー構成要素の存在下で適切なモノマー構成要素を共重合することを含む方法によって得られる又は得ることができるコポリマーを含み、好ましくは全てのモノマー構成要素の5~90体積%が架橋剤、より好ましくはジビニルベンゼンである、先行する態様のいずれかに記載の方法。
31.微粒子が超磁性である、先行する態様のいずれかに記載の方法。
32.高架橋ポリマーが、高架橋によって製造することができ、高架橋は、ルイス酸からなる群から選択され、好ましくはFeCl、ZnCl、AlCl、BF、SbCl、SnCl、TiCl、SiCl及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される触媒、より好ましくはFeCl若しくはZnCl、又はそれらの混合物の存在下で行われる、先行する態様のいずれかに記載の方法。
33.試料が生物学的試料であり、生物学的試料が、血液、血清、血漿、唾液、眼水晶体液、脳脊髄液、汗、尿、乳、腹水、粘液、滑液、腹腔液、羊水、組織、細胞からなる群から選択される、先行する態様のいずれかに記載の方法。
34.基材が、金属、紙、布、リボン、ガラス、プラスチック、ポリマー、ドデシル硫酸ナトリウムゲル、アガロースゲル、紙クロマトグラフィープレート、シリカプレート及び織布繊維からなる群から選択される、先行する態様のいずれかに記載の方法。
35.基材が、プレート、例えばガラスプレート、又はフィルタ、例えば三角形フィルタである、先行する態様のいずれかに記載の方法。
36.イオン化マトリックスが、サルサラート、3-ニトロベンゾニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、2-ニトロベンゾニトリル、5-メチル-2-ニトロベンゾニトリル、クマリン、メチル-2-メチル-3-ニトロベンゾエート、メチル-5-ニトロ-2-フロエート、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール)、3-ニトロベンズアルデヒド、6-ニトロ-o-アニソニトリル、無水フタル酸、又はそれらの混合物からなる群から選択される、先行する態様のいずれかに記載の方法。
37.イオン化マトリックスが、室温及び室内圧力で不均一固相液相にある、先行する態様のいずれかに記載の方法。
38.イオン化マトリックスが、大気圧以下のもと、好ましくは固相から気相への相転移を受ける、先行する態様のいずれかに記載の方法。
39.イオン化マトリックスが、120℃未満の温度で大気圧以下のもとに置かれた場合に、好ましくは固相から気相への相転移を受ける、先行する態様のいずれかに記載の方法。
40.イオン化マトリックスが、70℃未満の温度で大気圧以下のもとに置かれた場合に、好ましくは固相から気相への相転移を受ける、先行する態様のいずれかに記載の方法。
41.分析物が、生物学的組織、生物学的材料、食料品、ポリマー、絵画、古細菌学的人工物、人工骨、皮膚、尿又は血液を含む、先行する態様のいずれかに記載の方法。
42.試料が、ギ酸(FA)を含む、先行する態様のいずれかに記載の方法。
43.工程d)において、マトリックス:分析物-微粒子試料を基材表面上にスポットとして配置することによって実行される、先行する態様のいずれかに記載の方法。
44.目的の分析物が、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、代謝物、ホルモン、脂肪酸、脂質、炭水化物、ステロイド、ケトステロイド、セコステロイド、別の分子の特定の修飾を特徴とする分子、生体によって内在化された物質、そのような物質の代謝物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、先行する態様のいずれかに記載の方法。
45.溶媒及び/又は更なる溶媒が、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン又はそれらの混合物である、先行する態様のいずれかに記載の組成物。
46.分析物と微粒子とが共有結合して分析物-微粒子複合体を形成する、先行する態様のいずれかに記載の方法。
47.分析物がビタミンDであり、微粒子が免疫ビーズであるか、又は分析物がテストステロンであり、微粒子がビーズ、例えば免疫ビーズである、先行する態様のいずれかに記載の方法。
48.質量分析計又はイオン移動度分光計が、インレットと、前記インレットの近くの領域とを含み、前記インレットの近くの前記領域は大気圧以下に維持される、先行する態様のいずれかに記載の方法。
49.インレットが、少なくとも1つの分析物及び/又はマトリックス:分析物-微粒子試料が真空でチャンバに注入又は挿入され、任意に、加熱されて気化を達成するシステムである、先行する態様のいずれかに記載の方法。
50.インレットが、切断された試料入口及びフィルタを含む、先行する態様のいずれかに記載の方法。
51.フィルタが、ナイロンメッシュ、膜、金属グリッドである、先行する態様のいずれかに記載の方法。
52.フィルタが、切断された試料入口の一部である、先行する態様のいずれかに記載の方法。
53.フィルタが交換可能である、先行する態様のいずれかに記載の方法。
54.フィルタが、イオン化マトリックス及び/又はマトリックス:分析物-微粒子試料及び/又は分析物-微粒子複合体でコーティングされている、先行する態様のいずれかに記載の方法。
55.少なくとも1つの目的の分析物を判定するための、先行する態様のいずれかに記載の方法の使用。
56.少なくとも1つの分析物を判定するための、かつ先行する態様のいずれかに記載の方法を実行するのに適した試料要素であって、
- 基材表面と、
- 基材表面上に配置され、マトリックス支援イオン化を使用するためのイオン化マトリックスと、
- 基材表面上に配置された分析物-微粒子複合体と、を含み、
- イオン化マトリックスが、サルサラート、3-ニトロベンゾニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、2-ニトロベンゾニトリル、5-メチル-2-ニトロベンゾニトリル、クマリン、メチル-2-メチル-3-ニトロベンゾエート、メチル-5-ニトロ-2-フロエート、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール)、3-ニトロベンズアルデヒド、6-ニトロ-o-アニソニトリル、無水フタル酸、又はそれらの混合物からなる群から選択され、
- イオン化マトリックス及び/又は分析物-微粒子複合体が結晶化されており、
- 分析物-微粒子複合体の微粒子が磁性であり、
- 分析物-微粒子複合体とイオン化マトリックスとが互いに接触している、試料要素。
57.イオン化がレーザによっては誘導されない、態様56に記載の試料要素。
58.好ましくは先行する態様のいずれかに記載の方法において、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための、先行する態様のいずれかに記載の試料要素の使用。
59.先行する態様のいずれかに記載の方法を実行するのに適しており、かつ質量分析計若しくはイオン移動度分光計への、又は切断された試料入り口及びフィルタを備える質量分析計若しくはイオン移動度分光計の検出器へのイオン輸送に適した、インレット。
60.好ましくは先行する態様のいずれかに記載の方法において、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための、態様59のインレットの使用。
61.イオン化マトリックスを含む真空イオン化又はインレットイオン化のための組成物であって、イオン化マトリックスが、サルサラートを含むか、又はサルサラートからなる、組成物。
62.サルサラートが、下記式:
Figure 2024534392000003
を有する、態様61の組成物。
63.少なくとも1つの分析物を更に含む、先行する態様のいずれかに記載の組成物。
64.コーティングされた微粒子、好ましくは磁性粒子を更に含み、コーティングがガラスコーティング又はポリマーコーティングである、先行する態様のいずれかに記載の組成物。
65.微粒子、好ましくは免疫ビーズを更に含む、進行する態様のいずれかに記載の組成物。
66.組成物が、マトリックス支援イオン化(MAI)に使用される、先行する態様のいずれかに記載の組成物。
67.イオン化マトリックスと分析物のモル比が、5:1~1x10:1である、先行する態様のいずれかに記載の組成物。
68.マトリックス:分析物-微粒子試料又はマトリックス:分析物試料を含み、イオン化マトリックス:分析物試料又はマトリックス:分析物-微粒子試料が、大気圧以下に曝露された場合に固相にある、先行する態様のいずれかに記載の組成物。
69.イオン化マトリックスが、真空又はインレットイオン化を行う場合に結晶化される、先行する態様のいずれかに記載の組成物。
70.イオン化マトリックス:分析物-微粒子試料又はマトリックス:分析物試料が、好ましくはスポットとして基材上に配置される、先行する態様のいずれかに記載の組成物。
71.基材が、金属、紙、布、リボン、ガラス、プラスチック、ポリマー、ドデシル硫酸ナトリウムゲル、アガロースゲル、紙クロマトグラフィープレート、シリカプレート又は織布繊維からなる群から選択される、先行する態様のいずれかに記載の組成物。
72.組成物が、溶媒を含む、先行する態様のいずれかに記載の組成物。
73.溶媒が、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン又はそれらの混合物である、先行する態様のいずれかに記載の組成物。
74.マトリックス:分析物-微粒子試料又はマトリックス:分析物試料が、分析物及びイオン化マトリックス、並びに任意の微粒子を一緒に混合又は粉砕することによって調製される、先行する態様のいずれかに記載の組成物。
75.マトリックス:分析物-微粒子試料又はマトリックス:分析物試料が、固体である、先行する態様のいずれかに記載の組成物。
76.固体試料が、凍結状態である、先行する態様の組成物。
77.マトリックス:分析物-微粒子試料又はマトリックス:分析物試料が、アンモニウム塩、金属塩、酸、塩基又は緩衝液を更に含む、先行する態様のいずれかに記載の組成物。
78.好ましくは先行する態様のいずれかに記載の方法において、少なくとも1つの目的の分析物を判定するための、先行する態様の組成物の使用。
79.
(A)イオン化マトリックスと、
(B)溶媒又はさらなる溶媒と、
(C)微粒子と、
(D)任意に、少なくとも1つの内部標準と、
を備える、先行する態様のいずれかに記載の方法を実行するのに適したキット。
80.先行する態様のいずれかに記載の方法における、態様79のキットの使用。
以下の実施例は、本明細書で特許請求される発明を例示するために提供されるのであって、限定するものではない。
実施例1
第1の実施例として、試料中の少なくとも1つの分析物を判定するための方法を実施した。
図1は、試料中の少なくとも1つの分析物を判定するための方法、特にマトリックスイオン化微粒子ワークフローの概略説明を示す。モデル分析物、例えばロイシン-エンケファリンをウマ血清マトリックス(例えば、150μlのバルク体積)にピペットで入れる。したがって、ブランク測定のために、モデル分析物をHO/ACN(90/10、150μLのバルク体積)の溶液にピペットで入れる。微粒子、例えば磁気ビーズ粒子をウマ血清マトリックスを含有する試料に添加し、適切に混合する。分析物-微粒子複合体が形成される。10分のインキュベーション時間の後、分析物-微粒子複合体を溶媒、例えば水で2回洗浄する。したがって、例えば分散液としての一定量の残留分析物-微粒子複合体をガラスプレートに移し、イオン化マトリックスの溶液(例えば、3-ニトロベンゾニトリル、3-NBN)を添加する。続いて、少なくとも分析物及び/又はイオン化マトリックスと分析物-微粒子複合体との混合物をMSによって測定する。
実施例2
第2の実施例として、試料中の少なくとも1つの分析物を判定するための方法を実施した。
図2は、試料中の少なくとも1つの分析物を判定するための方法、特にマトリックスイオン化微粒子ワークフローの概略説明を示す。モデル分析物をウマ血清マトリックス(例えば、バルク体積150μl、H/ACN=90/10)にピペットで入れる。したがって、ブランク測定のために、モデル分析物をHO/ACN(90/10、150μLのバルク体積)の溶液にピペットで入れる。微粒子、例えば磁気ビーズ粒子をウマ血清マトリックスを含有する試料に添加し、適切に混合する。分析物-微粒子複合体が形成される。10分のインキュベーション時間の後、分析物-微粒子複合体を溶媒、例えば水で2回洗浄する。その後、ある量のイオン化マトリックス溶液(例えば、3-ニトロベンゾニトリル、3-NBN)を、例えば分散液として、洗浄した分析物微粒子複合体にピペットで入れる。イオン化マトリックス溶液及び分析物微粒子複合体を、反応容器内で共結晶化して、マトリックス:分析物微粒子試料を形成させる。一方では、分析物分子が分析物微粒子複合体から抽出され、他方では、分析物はイオン化マトリックス、例えば3-NBNと共結晶化する。分析物は、残留抽出液及び共結晶化マトリックス:分析物-微粒子試料又は分析物-微粒子複合体中でMSによって測定される。
図3a)~d)は、ガラスプレート上にスポットされた磁気分離後の1μLの残留液体の正イオン化モードでのMSスペクトル(相対存在量対時間及び相対存在量対m/z)を示す。ブランク実験(a)及び分析物実験(b)の総イオン電流の相対存在量を示す。ブランク(c)の対応するマススペクトルは、比較的低いシグナル強度で様々なバックグラウンドシグナルを示す。分析物実験(d)は、m/z 556でロイシン-エンケファリンの明確なシグナルを示す。したがって、イオン化マトリックス(例えば、3-ニトロベンゾニトリル、3-NBN)の添加により、モデル分析物は、さらなるイオン化エネルギーを使用せずに明確なMSシグナルを示した。スパイクされたモデル分析物を含まない試料は、イオン化マトリックスの添加後にシグナルを示さなかった。
図4a)~d)は、イオン化マトリックスとしての再結晶化3-NBN及び分析物-微粒子-複合体としての分析物担持ビーズの混合物1μLのMSスペクトルを示す。左側のブランク実験のスペクトルは、シクロスポリンA D10シグナルを示さない。分析物実験のスペクトルは、シクロスポリンA D10の[M+H]シグナルに対応するm/z 1213のシグナルを示す。m/z 1235の分析物シグナルは、シクロスポリンA D10の[M+Na]シグナルに対応する。磁性微粒子を試料の浄化及び分析物/マトリックスの分離に使用した。分析物:微粒子複合体の結晶化、その後の磁気分離及び分析物/マトリックス混合物の測定は、異なる分析物シグナルをもたらす。
図5は、試料中の少なくとも1つの分析物を判定するための方法、特にマトリックスイオン化微粒子ワークフローの概略説明を示す。モデル分析物をウマ血清マトリックスにピペットで入れる。微粒子としての磁気ビーズ粒子をウマ血清マトリックスを含有する試料に添加し、適切に混合する。10分のインキュベーション時間の後、分析物-微粒子複合体を溶媒、例えば水で2回洗浄する。最後の洗浄工程の後、三角形フィルタを残留分析物-微粒子複合体(ビーズ-分析物分散液)中に置き、分析物-微粒子複合体をフィルタ組織中に吸引する。イオン化マトリックス(例えば、3-ニトロベンゾニトリル、3-NBN、100mg/mL)をフィルタチップに添加し、イオン化マトリックスと分析物-微粒子複合体の混合物をMSによって測定する。
図6a)~d)は、イオン化マトリックス(a)及び(b))を添加した、並びにイオン化マトリックス(c)及び(d))を含まない三角形フィルタに吸引された分析物-微粒子複合体(ビーズ-分析物分散液)のMSスペクトルを示す。左側の分析物実験のスペクトルは、ロイシン-エンケファリンの[M+H]+シグナルに対応する、m/z 556.3で強いシグナルを示す。右側のブランク実験は、ロイシン-エンケファリンの対応するシグナルを示さず、バックグラウンドシグナルをほとんど示さない。分析物の固相微粒子試料抽出及びその後のイオン化マトリックスの添加は、分析物の異なるMSシグナルをもたらす。MSイオン化は、固体サブトラート上の固体微粒子から直接行われる。イオン化マトリックスを用いないブランク実験は、分析物シグナルを示さない。
図7a)及び図7b)は、イオン化マトリックスを添加した及び欠落した分析物-微粒子複合体(ビーズ-分析物分散液)三角形フィルタのMSスペクトルを示す。分析物-微粒子複合体(ビーズ-分析物分散液)を含まないブランク実験は、ロイシン-エンケファリンの対応するシグナルを示さず、バックグラウンドシグナルをほとんど示さない。両方のブランク実験(分析物なし(図6c及び図6d)及びイオン化マトリックスなし(図7a及び図7b))は、バックグラウンド分析物シグナルがなく、バックグラウンドノイズが極めて低いことを示した。
図8は、試料中の少なくとも1つの分析物を判定するための方法、特にマトリックスイオン化微粒子ワークフローの概略説明を示す。モデル分析物をウマ血清マトリックスにピペットで入れる。微粒子としての磁気ビーズ粒子をウマ血清マトリックスを含有する試料に添加し、適切に混合する。10分のインキュベーション時間の後、分析物-微粒子複合体を溶媒、例えば水で洗浄する。
第1の実施形態では、最後の洗浄工程の後、三角形フィルタを残留分析物-微粒子複合体(ビーズ-分析物分散液)中に置き、分析物-微粒子複合体をフィルタ組織中に吸引する。次いで、イオン化マトリックス(例えば、3-ニトロベンゾニトリル、3-NBN、100mg/mL)をフィルタチップに添加し、イオン化マトリックスと分析物-微粒子複合体の混合物をMSによって測定する。
第2の実施形態では、最後の洗浄工程の後、イオン化マトリックスを洗浄された分析物-微粒子複合体にピペットで入れ、三角形のフィルタをマトリックス:分析物-微粒子複合体及びイオン化マトリックスを含む分析物-微粒子試料に入れ、マトリックス:分析物-微粒子試料をフィルタ組織に吸引する。次いで、イオン化マトリックスと分析物-微粒子複合体との混合物をMSによって測定する。
図9a)~d)は、予備結晶化イオン化マトリックス(例えば、3-NBNマトリックス)を含む又は含まないロイシン-エンケファリン被覆微粒子のMSスペクトルを示す。イオン化マトリックス、例えば3-NBNの結晶化は、20μLのイオン化マトリックス、例えば3-NBN(ACN+0.1%ギ酸中100mg/mL)+10μL HOを混合することによって行った。10μLの予備結晶化されたイオン化マトリックス、例えば3-NBNのアリコートを最初に洗浄した分析物微粒子複合体に移し、三角形フィルタに充填した。左側の分析物実験のスペクトルは、ロイシン-エンケファリンの[M+H]シグナルに対応する、m/z 556.3で強いシグナルを示す。右側のブランク実験は、ロイシン-エンケファリンの対応するシグナルを示さず、バックグラウンドシグナルをほとんど示さない。
図10a)及びb)は、予備結晶化イオン化マトリックス(ここでは3-NBN)を含むロイシン-エンケファリン被覆微粒子のMSスペクトルを示す。3-NBNの結晶化は、20μLの3-NBN(ACN+0.1%ギ酸中100mg/mL)+10μLのHOを混合することによって行った。予備結晶化された3-NBNマトリックス10μLのアリコートを、分析物が装填された三角形のフィルタに移した。分析物実験のスペクトルは、ロイシン-エンケファリンの[M+H]シグナルに対応するm/z 556.3でのシグナルを示す。
図9及び図10は、イオン化マトリックスが、基材上に位置する分析物-微粒子複合体上に直接ピペットで注入されるか、又は洗浄された微粒子分散液に添加され、続いて基材上にロードされ得ることを示した。両方の経路が可能なワークフローである。イオン化マトリックスを用いない対応するブランク実験は、バックグラウンド及び分析物シグナルを示さなかった。
図11a)~d)は、予備結晶化イオン化マトリックス(ここでは3-NBN)を含むロイシン-エンケファリン被覆微粒子のMSスペクトルを示す。3-NBNの結晶化は、20μLの3-NBN(ACN+0.1%ギ酸中100mg/mL)+10μLのHOを混合することによって行った。予備結晶化された3-NBNマトリックス10μLのアリコートを、分析物が装填された三角形のフィルタに移した。左側の分析物実験のスペクトルは、ロイシン-エンケファリンの[M+H]シグナルに対応するm/z 556.3でのシグナルを示す。右側の3-NBNマトリックスを含まないブランク実験は、ロイシン-エンケファリンの対応するシグナルを示さず、バックグラウンドシグナルをほとんど示さない。
図12は、サルサラートのイオン化マトリックスを含むイオン化マトリックスとしての異なる物質のスクリーニングを示す。ロイシン-エンケファリンを100μg/mLの濃度でモデル分析物として使用した。イオン化マトリックスと分析物溶液とを混合し、MSにより直接測定した。マーキング(X)は、マトリックス及び/又は分析物単独のMSシグナルを表す。これは、サルサラートのイオン化マトリックスのみが、MSシグナル自体を妨害することなく分析物MSシグナルを示すことを意味する。
図13は、イオン化マトリックスとしての異なるニトロベンゼン反応生成物のスクリーニングを示す。ニトロベンゼン反応生成物を、分子1)~10)と共に構造A)~E)の対応する酸塩化物の縮合反応によって事前に調製した。イオン化マトリックスとして、全てのニトロベンゼン反応生成物を溶解した(ACN+0.1%ギ酸中100 mg/mL)。ロイシン-エンケファリンを100μg/mLの濃度でモデル分析物として使用した。モデル分析物溶液(1μl)を各イオン化マトリックス溶液(2yL)と混合し、共結晶化させ、MSによって測定した。マトリックス及び/又は分析物のMSシグナルは見えなかった。
図14は、質量分析計へのイオン輸送のためのインレットを示す。インレットは、切断された試料インレット及びフィルタを含む。フィルタは、微粒子がイオン移動度分光法又は質量分析に入るのを防ぐために、円錐形の切断されたインレットデバイスの試料インレットに配置される。工程d)による分析物-微粒子複合体は、フィルタ及び切断されたインレットデバイスの前に保持される。フィルタはバリアを形成する。フィルタは、ナイロンメッシュ、膜又は金属グリッドであり得る。フィルタは交換可能であり得る。フィルタの他の材料、例えば、ポリエステルメッシュ、ポリ(テトラフルオロエチレン)フィルタ膜、ポリプロピレンフィルタ膜又はポリ(エーテルエーテルケトン)フィルタ膜が可能である。図14に示すようなインレットの寸法は例であり、変更することができる。
図15a1)~d2)は、それぞれの抽出されたイオンモビログラム(図15a1)~15d1);ドリフト時間範囲0ms~10ms)、並びに濾過材料の有無にかかわらずイオン輸送のためのインレットを質量分析計に適用する、対応するフルスキャン質量スペクトル(図15a2)~15d2);m/z範囲200~900)を示す。
図15d1)及び図15d2)は、濾過材料(織ナイロンフィルタ、5μmメッシュサイズ、Repligen)と組み合わせて2μLの3-NBNマトリックス(ACN+0.1%ギ酸中100mg/mL)を含む1μLのロイシン-エンケファリン被覆微粒子懸濁液(1μg/mL水溶液100μLから得た)の結晶化スポットを分析して記録した。図15c1)及び図15c2)は、濾過材料なしで2μLの3-NBNマトリックス(ACN+0.1%ギ酸中100mg/mL)による1μLのロイシン-エンケファリン(1μg/mL)コーティング微粒子懸濁液の結晶化スポットを分析して記録した。比較のために、濾過材料なしでインレットを適用する3-NBNマトリックスの結晶化スポットのみを分析して、図15b1)及び図15b2)を記録した。さらに、3-NBNマトリックス(2μL、ACN+0.1%ギ酸中100mg/mL)を用いてロイシン-エンケファリン(1μLの1μg/mL水溶液)の結晶化スポットを分析して、図15a1)及び図15b1)を記録した。全てのスペクトルは、図14に示すイオン輸送用インレットで修正したSynapt G2Si質量分析計(Waters)でIMS-ToFモードで記録した。ソース温度を50℃に設定し、全ての結晶化試料を合計30秒間の分析時間にわたって測定した。窒素をIMSドリフトガスとして使用した。IMS波高及び波速度の設定は、それぞれ30V、800m/sであった。抽出されたイオンモビログラムは、m/z 556.3でロイシン-エンケファリン[M+H]シグナルを抽出することによって得られた。S/N比を決定するために、シグナル範囲は4.2ms~4.8 msの間に設定され、ノイズ範囲は1.0ms~3.8 msの間に設定された。図15c1)のロイシン-エンケファリン被覆微粒子から観察されたカウント数は、ロイシン-エンケファリン溶液自体と比較して明らかに増加した(図15a1))。図1b1)のブランク3-NBNマトリックス自体は、ロイシン-エンケファリン[M+H]シグナルの検出を示さないが、一定のノイズレベルを示す。試料とインレットとの間に濾過材料を適用すると、図15c2)と比較して図15d2)のマススペクトルのバックグラウンドシグナルが大幅に減少し、一方、図15c1)と比較して図15d1)の抽出イオンモビログラムのS/N比が大幅に増加する。
本特許出願は、欧州特許出願21197383.9号の優先権を主張し、この欧州特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
110 分析物
112 試料
114 イオン化マトリックス
116 容器
118 微粒子
120 微粒子の表面
122 分析物-微粒子複合体
124 マトリックス:分析物-微粒子試料
126 イオン移動度分光法及び/又は質量分析
128 基材表面

Claims (14)

  1. 試料(112)中の少なくとも1つの分析物(110)を判定するための方法であって、前記方法が、以下の工程:
    a)前記少なくとも1つの分析物(110)、少なくとも1つの微粒子(118)、少なくとも1つのイオン化マトリックス(114)、及び基材表面(128)を有する基材を提供する工程、
    b)前記分析物(110)を、少なくとも1つの微粒子表面(120)を有する前記微粒子(118)とインキュベートする工程であって、前記分析物が前記微粒子の表面(120)に吸着され、分析物-微粒子複合体(122)が形成される、前記分析物(110)を、少なくとも1つの微粒子表面(120)を有する前記微粒子(118)とインキュベートする工程、
    c)前記分析物-微粒子複合体(122)を前記イオン化マトリックス(114)と接触させて、マトリックス:分析物-微粒子試料(124)を形成する工程、
    d)前記基材表面(128)上に前記マトリックス:分析物-微粒子試料(124)を提供する工程、
    e)少なくとも前記分析物(110)をイオン化する工程であって、前記イオン化が機械的イオン化である、少なくとも前記分析物(110)をイオン化する工程、
    f)イオン移動度分光法及び/又は質量分析(126)によって前記分析物(110)を判定する工程
    を含む、方法。
  2. 前記機械的イオン化が、好ましくは剪断力を含むか若しくは剪断力からなる機械力によって誘導され、かつ/又は
    前記機械的イオン化が、機械的刺激によって誘導され、好ましくは前記機械刺激が摩擦発光であり、かつ/又は
    前記機械的イオン化が、蒸発若しくは昇華によっては誘導されない、
    請求項1に記載の方法。
  3. 工程e)における前記イオン化が、マトリックス支援イオン化(MAI)、好ましくは固体二重担持マトリックス支援イオン化である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記微粒子(118)が、磁性粒子又は免疫ビーズであり、
    前記微粒子(118)が磁性粒子である場合、前記微粒子(118)が、ガラスコーティング又はポリマーコーティングでコーティングされている、
    請求項1~3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記イオン化マトリックス(114)が、サルサラート、3-ニトロベンゾニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、2-ニトロベンゾニトリル、5-メチル-2-ニトロベンゾニトリル、クマリン、メチル-2-メチル-3-ニトロベンゾエート、メチル-5-ニトロ-2-フロエート、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール)、3-ニトロベンズアルデヒド、6-ニトロ-o-アニソニトリル、無水フタル酸、又はそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記少なくとも1つの分析物を判定するための、請求項1~5のいずれかに記載の方法の使用。
  7. 少なくとも1つの分析物を判定するための、かつ請求項1~5のいずれかに記載の方法を実行するのに適した試料要素であって、
    - 基材表面(128)と、
    - 前記基材表面(128)上に配置され、マトリックス支援イオン化を使用するためのイオン化マトリックス(114)と、
    - 前記基材表面(128)上に配置された分析物-微粒子複合体(122)と
    を含み、
    - 前記イオン化マトリックス(114)が、サルサラート、3-ニトロベンゾニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、2-ニトロベンゾニトリル、5-メチル-2-ニトロベンゾニトリル、クマリン、メチル-2-メチル-3-ニトロベンゾエート、メチル-5-ニトロ-2-フロエート、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、3-ニトロベンズアルデヒド、6-ニトロ-o-アニソニトリル、無水フタル酸、又はそれらの混合物からなる群から選択され、
    - 前記イオン化マトリックス(114)及び/又は前記分析物-微粒子複合体(122)が結晶化されており、
    - 前記分析物-微粒子複合体(122)の前記微粒子(118)が磁性であり、
    - 前記分析物-微粒子複合体(122)とイオン化マトリックス(114)とが互いに接触している、試料要素。
  8. 少なくとも1つの分析物を判定するための、請求項7に記載の試料要素の使用。
  9. 請求項1~5のいずれかに記載の方法を実行するのに適しており、かつ質量分析計若しくはイオン移動度分光計(126)への、又は切断された試料入り口及びフィルタを備える質量分析計若しくはイオン移動度分光計の検出器へのイオン輸送に適した、インレット。
  10. 少なくとも1つの分析物を判定するための、請求項9に記載のインレットの使用。
  11. イオン化マトリックス(114)を含む真空イオン化又はインレットイオン化のための組成物であって、前記イオン化マトリックス(114)が、サルサラートを含むか、又はサルサラートからなる、組成物。
  12. 少なくとも1つの分析物を判定するための、請求項11に記載の組成物の使用。
  13. (A)イオン化マトリックス(114)と、
    (B)溶媒又はさらなる溶媒と、
    (C)微粒子(118)と、
    (D)任意に、少なくとも1つの内部標準と、
    を備える、請求項1~12のいずれかに記載の方法を実行するのに適したキット。
  14. 請求項1~5のいずれかに記載の方法における請求項13に記載のキットの使用。
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