JP2024521894A - RNA誘導型CasΩヌクレアーゼ並びに診断及び治療におけるその使用 - Google Patents

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ベイゼル,チェイス
ジャクソン,ライアン
ドミトレンコ,オレグ
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ヘルムホルツ-ツェントルム フュア インフェクツィオンスフォルシュンク ゲーエムベーハー
ユタ ステート ユニバーシティ
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本発明は、CasΩヌクレアーゼと少なくとも1種の標的RNAへの結合のために設計された少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとを含む複合体に基づく、dsDNA、ssDNA、及びRNAから選択される核酸分子のRNA誘導型切断方法に関する。標的RNA分子に結合した本発明の複合体、及び核酸分子を切断するための対応する系、並びにそれらの診断的及び治療的使用が更に提供される。
【選択図】なし

Description

本発明は、CasΩヌクレアーゼと少なくとも1種の標的RNAへの結合のために設計された少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとを含む複合体に基づく、dsDNA、ssDNA、及びRNAから選択される核酸分子のRNA誘導型切断方法に関する。標的RNA分子に結合した本発明の複合体、及び核酸分子を切断するための対応する系、並びにそれらの診断的及び治療的使用が更に提供される。
ほとんど全ての古細菌及び約半分の細菌は、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)-CRISPR関連遺伝子(Cas)適応免疫系を有し、これは原核生物をウイルス及び核酸ゲノムを有する他の外来の侵入者から保護する。CRISPR-Cas系は、エフェクター複合体の組成に従ってクラス1及び2に機能的に分類される。クラス2は、シングルエフェクターヌクレアーゼからなり、ゲノム編集の実施は、通常、II型、V型、及びVI型CRISPR-Cas系が含まれるクラス2 CRISPR-Cas系を利用することにより達成されてきた。II型及びV型は主にDNAを標的とするために使用される一方で、VI型は、RNAを標的とするためにのみ用いられる(例えば、非特許文献1を参照のこと)。
II型及びV型Casエフェクターヌクレアーゼの標的DNA認識の最初の工程は、一般的にプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)に依存しており、エフェクターヌクレアーゼは、タンパク質-DNA相互作用によりPAM配列に直接的に結合し、その後に下流のDNA配列を解離させる。次いで、エフェクタータンパク質は、DNA標的の一方の鎖とCRISPR RNA(crRNA)のガイド部分との間の塩基対形成の程度を調べる。2つの間の相補性が十分であれば標的の切断が引き起こされる。PAM配列は、系の間だけでなく、他の類似のヌクレアーゼ間でも大きく異なることが既知であり、Casタンパク質を遺伝子操作して、PAM認識を変化させることができることが示されている(非特許文献2)。一部のII型及びV型シングルエフェクターヌクレアーゼ、例えば、C.ジェジュニ(C. jejuni)Cas9、N.メニンギチディス(N. meningitidis)Cas9、S.アウレウス(S. aureus)Cas9、難培養性古細菌由来のCas12f1、及びCas12gは、DNAを標的とすることに加えて、ssDNA及び/又はRNAも標的とすることが示されている(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6)。これらの場合、PAMは必要とされなかった。S.ピロゲネス(S. pyogenes)Cas9(SpyCas9)等の一部のヌクレアーゼは、そのままではssDNA又はRNAを標的とすることができなかったが、二本鎖PAM領域を生じさせるために、オリゴヌクレオチドを提供することにより、SpyCas9が一本鎖の標的に結合し、それを切断することが可能となった(非特許文献7)。
レプトトリキア・シャーイイ(Leptotrichia shahii)のCas13a(以前はC2c2)等のCas13タンパク質は、DNAではなくRNAに結合し、これを切断し、PAMではなくプロトスペーサー隣接部位(PFS)に結合する。in vivo研究は、標的エレメントに隣接する反復配列との相補性(タグ:アンチタグ対形成)が拡張された標的RNAが、VI-A型Cas13a系によるRNA切断を劇的に低減することができることを示し、Cas13aの自己及び非自己RNA標的を標的とし、自己と非自己RNA標的を区別する能力の基礎をなす分子原理を明らかにした(非特許文献8)。
本発明の文脈において、標的RNAからの隣接配列の除去は切断活性を消失させ、したがって、隣接配列はCasΩを活性化させ、また(ガイドRNAタグとの相補性の欠如とは対照的に)特定の配列を必要とするようである。この隣接配列の役割は、多サブユニットエフェクターをコードするIII型CRISPR-Cas系で報告されたrPAM(RNA PAM)に最も密接に関連する(非特許文献9を参照のこと)。したがって、本発明の文脈において、rPAMという用語は、CasΩを活性化するために必要とされる、RNA標的に隣接する配列を指す。本発明者らはCasΩをCas12a2とも称する。
Cas12ヌクレアーゼ(V型CRISPR-Cas系の範囲内)は、DNAを認識及び切断し、これにより、ssDNAの分解を誘発することが既知である。CRISPR-Cas9系の開発以来、プレボテラ属及びフランキセラ属由来のCRISPR1(Cpf1、Cas12aとしても既知)及びCas14(Cas12fに近年分類された)が含まれる、様々なCRISPR系が細菌及び古細菌において同定された。これらの系は、各ツールが固有の有用性を有する多様なゲノム編集ツールボックスを構成する。CRISPRゲノム編集ツールは、遺伝子標的化ガイドRNA及びCasエンドヌクレアーゼからなる。これらの2つの構成要素は、リボ核タンパク質(RNP)複合体を形成し、これはプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)が付随している標的配列を認識し、その後、プロトスペーサー領域の内側又は外側のいずれかでの二本鎖切断(DSB)を誘発する。
特許文献1は、本発明によるCasΩに相当するCas12a(V型)が含まれる、Cas12a(Cpf1)酵素を記載している。
近年、Cas12aが、ssDNA又はdsDNAのいずれかのcrRNAにより媒介される特異的な結合時に非特異的な一本鎖DNA(ssDNA)も分解させることが発見された。最近では、FRET及びクライオEM実験により、Cas12aが、RuvCドメインへの曝露に至る標的への結合の間に一連のチェックポイントを受け、RuvCドメインが、最初に非標的鎖、次いで、標的鎖を切断することにより、ほどかれたdsDNA標的をまず切断し、その後に活性化状態を維持し、これにより、無差別なssDNA切断を可能にすることが実証された(非特許文献10)。特許文献2は、ssDNAのその付随的分解に基づくCas12aの診断的使用を記載している。
Smith CWら(非特許文献11において)は、標的検出時のCas12aのトランス切断活性を調べるためのdsDNA基質(プローブ-フル)を報告している。異なるdsDNA特徴を有するCas12a基質の多様なセットが設計され、蛍光分光法を使用して研究された。彼らは、ニックのないプローブ-フルが、ニックを有する形態よりも良好なトランス切断性能を示したことを確認した。塩濃度、標的濃度、及びミスマッチ(許容性?)が異なる実験条件を試験して、プローブ性能を評価した。Cas12aの活性は、タバコカーリーシュートウイルス(TCSV)又はB型肝炎ウイルス(HepBV)に対するcrRNAを使用することにより、それぞれTCSV又はHepBVゲノムから複製されたdsDNA骨格用にプログラム化された。オンターゲット活性がわずか10 pMのdsDNA標的の検出をもたらした一方で、オフターゲット活性は、1 nMの対照DNAであっても観察されなかった。彼らは、Cas12aのトランス切断がssDNA基質に限定されず、Cas12aベースの診断をdsDNA基質に拡張することができることを実証した。
特許文献3、特許文献4、特許文献5、及び特許文献6は、付随的なRNアーゼ活性を有するRNA標的ヌクレアーゼとしてのCas13a(C2c2)、診断的使用のための系及び方法を開示している。
Baisong, T.ら(非特許文献12において)は、シングルエフェクタータンパク質を特徴とするクラス2 クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)-Cas系がII型、V型、及びVI型に更に細分され得ることを開示している。II型CRISPRエフェクタータンパク質Cas9の遺伝子編集における配列特異的ヌクレアーゼとしての応用はDNA操作の分野に革命をもたらした。同様に、VI型エフェクタータンパク質のCas13は、RNA操作の便利なツールを提供する。加えて、V型CRISPR-Cas系は、多数のサブタイプ及び多様な機能を有する更なる有益な資源である。彼らは、その概説において、これまでに同定されたV型ファミリーの全てのサブタイプを要約している。現時点でV型ファミリーにより示されている機能に基づいて、彼らは、全ての主要なメンバーについて機能原理、現在の応用状況、及びバイオテクノロジーの開発展望を紹介することを試みている。
米国特許第9790490号 米国特許出願公開第20200399697号 米国特許第10337051号 米国特許第10494664号 米国特許第10266887号 米国特許第20180340219号
Koonin EV and Makarova KS Origins and evolution of CRISPR-Cas systems Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci. 2019 May 13;374(1772):20180087 Collias, D., Beisel, C.L. CRISPR technologies and the search for the PAM-free nuclease. Nat Commun 12, 555 (2021). https://doi.org/10.1038/s41467-020-20633-y RNA-dependent RNA targeting by CRISPR-Cas9. Elife. 2018;7:e32724 DNase H Activity of Neisseria meningitidis Cas9. Mol Cell. 2015;60(2):242-255 Programmed DNA destruction by miniature CRISPR-Cas14 enzymes Functionally diverse type V CRISPR-Cas systems. Science. 2019;363:88-91 Programmable RNA recognition and cleavage by CRISPR/Cas9. Nature. 2014;516(7530):263-266 Wang B, Zhang T, Yin J, Yu Y, Xu W, Ding J, Patel DJ, Yang H. Structural basis for self-cleavage prevention by tag:anti-tag pairing complementarity in type VI Cas13 CRISPR systems. Mol Cell. 2021 Mar 4;81(5):1100-1115.e5. doi: 10.1016/j.molcel.2020.12.033. Epub 2021 Jan 19. PMID: 33472057 Elmore JR, et al. Bipartite recognition of target RNAs activates DNA cleavage by the Type III-B CRISPR-Cas system. Genes Dev. 2016 Feb 15;30(4):447-59. doi: 10.1101/gad.272153.115. Epub 2016 Feb 4. PMID: 26848045; PMCID: PMC4762429 Swarts DC, Jinek M. Mechanistic Insights into the cis- and trans-Acting DNase Activities of Cas12a. Mol Cell. 2019 Feb 7;73(3):589-600.e4. doi: 10.1016/j.molcel.2018.11.021. Epub 2019 Jan 10. PMID: 30639240; PMCID: PMC6858279 Probing CRISPR-Cas12a Nuclease Activity Using Double-Stranded DNA-Templated Fluorescent Substrates. Biochemistry. 2020 Apr 21;59(15):1474-1481. doi: 10.1021/acs.biochem.0c00140. Epub 2020 Apr 7. PMID: 32233423; PMCID: PMC7384386 The Versatile Type V CRISPR Effectors and Their Application Prospects, Frontiers in Cell and Developmental Biology, Vol. 8, 2021, p. 1835, DOI: 10.3389/fcell.2020.622103
本発明の目的は、分子診断並びに遺伝子編集及び遺伝子治療の分野のための、上記に由来する更なるツールを提供することである。他の目的及び利点は、添付の実施例を参照して本明細書を更に検討することにより明らかとなるであろう。
本発明の第1の態様において、本発明の目的は、dsDNA、ssDNA、及びRNAから選択される核酸分子を切断する方法であって、a)少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素を提供する工程と、b)少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAを提供する工程と、c)少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素と少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとの間で複合体を形成させる工程と、d)c)の複合体を少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAに基づいて標的RNAに結合させる工程と、e)dsDNA、ssDNA、及びRNAから選択される上記核酸分子を少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素により切断する工程とを含み、上記少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAが、標的RNAと少なくとも90%相補的なガイド配列を含む、方法を提供することにより達成される。
本発明の第2の態様において、本発明の目的は、CasΩヌクレアーゼと少なくとも1種の標的RNAへの結合のために設計された少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとを含む複合体を提供することにより達成される。上記ガイドRNAと少なくとも90%相補的なガイド配列を有する標的RNA分子に更に結合しており、上記標的RNAが、好ましくは少なくとも1つのRNAプロトスペーサー隣接モチーフ(rPAM)と隣接している、本発明による複合体が好ましい。一実施の形態において、rPAMは、好ましくは標的の3’末端と隣接しており、Aリッチ配列である。別の実施の形態において、rPAMは、5’-BAAA-3’である。
本発明の第3の態様において、本発明の目的は、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAを検出する方法であって、上記方法が、a)少なくとも1種のssDNA、dsDNA、又はRNAレポーター核酸を上記細胞、組織、細胞核、及び/又は試料に提供する工程と、b)好ましくは上記のような本発明によると、上記細胞、組織、細胞核、及び/又は試料を、少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素と少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとの間の少なくとも1種の複合体と接触させる工程であって、上記少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAが、標的RNAに少なくとも90%相補的なガイド配列を含む、工程と、c)上記少なくとも1種のssDNA、dsDNA、又はRNAレポーター核酸の切断、分割、及び/又はニッキングを検出する工程であって、少なくとも1種のレポーター核酸の上記切断を検出することにより、上記細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における上記少なくとも1種の標的RNAが検出される、工程とを含む、方法を提供することにより達成される。
本発明の第4の態様において、本発明の目的は、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの発現を調節する方法であって、上記少なくとも1種の標的RNAが、mRNA、非コードRNA、及びウイルスRNA分子から選択され、上記方法が、a)好ましくは上記のような本発明によると、上記細胞、組織、細胞核、及び/又は試料を、少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素と少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとの間のb)少なくとも1種の複合体と接触させる工程であって、上記少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAが、少なくとも1種の標的RNAに少なくとも90%相補的なガイド配列を含む、工程と、c)少なくとも1種の標的RNAにb)の複合体を結合させ、これにより、少なくとも1種の標的RNAの安定性、プロセシング、局在、又は翻訳を変化させる工程とを含み、これによって、c)における結合により、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの発現が調節される、方法を提供することにより達成される。
本発明の第5の態様において、本発明の目的は、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの配列を編集する方法であって、上記少なくとも1種の標的RNAが、mRNA、非コードRNA、及びウイルスRNA分子から選択され、上記方法が、a)好ましくは上記のような本発明によると、上記細胞、組織、細胞核、及び/又は試料を、少なくとも1種のRNA修飾酵素と複合体を形成した、改変されており、触媒活性のない少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素と、少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとの間のb)少なくとも1種の複合体と接触させる工程であって、上記少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAが、少なくとも1種の標的RNAに少なくとも90%相補的なガイド配列を含む、工程と、c)少なくとも1種の標的RNAにb)の複合体を結合させ、上記少なくとも1種のRNA修飾酵素により少なくとも1種の標的RNAを編集する工程とを含む、方法を提供することにより達成される。
本発明の第6の態様において、本発明の目的は、疾患の予防及び/又は処置に使用される、例えば、感染症及び/又は増殖性障害等の遺伝的障害、例えば、癌、真菌感染症、原生動物感染症、細菌感染症、及び/又はウイルス感染症の予防及び/又は処置に使用される、本発明による複合体を提供することにより達成される。
本発明の第7の態様において、本発明の目的は、望ましくない細胞を特異的に不活性化する方法であって、上記細胞を本発明による複合体と接触させる工程を含み、上記ガイドRNAが不活性化されるべき上記望ましくない細胞用に特異的に選択される、方法を提供することにより達成される。本方法は、好ましくは、本発明による方法を使用して未編集のままである細胞を選択するために使用され得る。
本発明の第8の態様において、本発明の目的は、疾患、例えば、感染症及び/又は増殖性障害等の遺伝的障害、例えば、癌、真菌感染症、原生動物感染症、細菌感染症、及び/又はウイルス感染症、自己免疫疾患を予防及び/又は処置する方法であって、かかる処置を必要とする対象に有効量の本発明による複合体を投与することを含む、方法を提供することにより達成される。
本発明の第9の態様において、本発明の目的は、調製物から望ましくない汚染物質、例えば、真菌、原生動物、細菌、及び/又は、ウイルス汚染を除染する方法であって、有効量の本発明による複合体を上記調製物に適切に適用し、これにより、望ましくない汚染物質を除去及び/又は低減することを含む、方法を提供することにより達成される。
本発明の第10の態様において、本発明の目的は、dsDNA、ssDNA、及びRNAから選択される核酸分子を切断するための、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAを検出するための、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの発現を調節するための、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの配列を編集するための、望ましくない細胞若しくはウイルスを特異的に不活性化するための、又は調製物から望ましくない汚染物質を除染するための、本発明による複合体の使用を提供することにより達成される。
CasΩがクラス2 V型CRISPR-Casヌクレアーゼ内で3つの異なるクレードを形成することを示す図である。SmCasΩ、SuCasΩ、及びca40CasΩの代表的ヌクレアーゼにより代表される3つの異なる単系CasΩクレードを含む、クラス2 V型CRISPR-Casタンパク質配列の最尤推定系統樹を作成した。CasΩヌクレアーゼは、Cas12aと最終共通祖先を共有していない。 CRISPR-SuCasΩヌクレアーゼにおけるRuvC-IモチーフからRuvC-IIIモチーフまでの間のアミノ酸保存性を示す図である。SuCasΩ系統クレードのヌクレアーゼオーソログは、例えば、Cas12a等の非CasΩヌクレアーゼと比較して複数の保存されたアミノ酸モチーフの挿入を含む、RuvC-I触媒モチーフからRuvC-II触媒モチーフまでの間の独特のアミノ酸組成を示す。さらに、SuCasΩオーソログは、Cas12a等の非CasΩヌクレアーゼと比較したアミノ酸の欠失を含む、RuvC-II触媒モチーフからRuvC-III触媒モチーフまでの間の独特のアミノ酸組成を示す。相対エントロピーをビットで示す。高いエントロピーは、16個のSuCasΩオーソログのアラインメントに基づいて所与のアミノ酸がオルソロガスモチーフに存在するという高い確実性を示す。 同上 同上 同上 同上 同上 CRISPR-SmCasΩヌクレアーゼにおけるRuvC-IモチーフからRuvC-IIIモチーフまでの間のアミノ酸保存性を示す図である。SmCasΩ系統クレードのヌクレアーゼオーソログは、例えば、Cas12a等の非CasΩヌクレアーゼと比較して複数の保存されたアミノ酸モチーフの挿入を含む、RuvC-I触媒モチーフからRuvC-II触媒モチーフまでの間の独特のアミノ酸組成を示す。さらに、SmCasΩオーソログは、Cas12a等の非CasΩヌクレアーゼと比較したアミノ酸の欠失を含む、RuvC-II触媒モチーフからRuvC-III触媒モチーフまでの間の独特のアミノ酸組成を示す。相対エントロピーをビットで示す。高いエントロピーは、36個のSmCasΩオーソログのアラインメントに基づいて所与のアミノ酸がオルソロガスモチーフに存在するという高い確実性を示す。 CRISPR-ca40CasΩヌクレアーゼにおけるRuvC-IモチーフからRuvC-IIIモチーフまでの間のアミノ酸保存性を示す図である。ca40CasΩ系統クレードのヌクレアーゼオーソログは、例えば、Cas12a等の非CasΩヌクレアーゼと比較して複数の保存されたアミノ酸モチーフの挿入を含む、RuvC-I触媒モチーフからRuvC-II触媒モチーフまでの間の独特のアミノ酸組成を示す。さらに、ca40CasΩオーソログは、Cas12a等の非CasΩヌクレアーゼと比較したアミノ酸の欠失を含む、RuvC-II触媒モチーフからRuvC-III触媒モチーフまでの間の独特のアミノ酸組成を示す。相対エントロピーをビットで示す。高いエントロピーは、15個のca40CasΩオーソログのアラインメントに基づいて所与のアミノ酸がオルソロガスモチーフに存在するという高い確実性を示す。 CasΩがin vitroでRNAを認識し、RNA、ssDNA、及びdsDNAを切断することを示す図である。精製されたSuCasΩ及び設計されたガイドRNA(crRNA)を、非標識の標的又は非標的RNA、並びに標識された非標的一本鎖DNA(ssDNA)、二本鎖DNA(dsDNA)、及び一本鎖RNA(ssRNA)と組み合わせた。(A)RNA標的の存在下でのみ、SuCasΩは、非標的ssDNA、dsDNA、及びssRNAを分解した。(B)非標的RNAの存在では、SuCasΩは、ssDNA、dsDNA、及びssRNAを分解しなかった。この活性(特にRNA標的の認識及び付随的なdsDNA分解)は、完全にCRISPRヌクレアーゼに固有の活性である。 RNAにより誘発されるCasΩによるin vitroでのDNA分解がRuvCドメインに依存することを示す図である。SuCasΩを、DNA切断に関連するRuvCモチーフ内の2つの部位で変異させた。切断アッセイを前の図で説明したように実施した。この例では、RuvCドメインを変異させることにより、RNAにより誘発されるdsDNAの分解が生じなくなった。 CasΩがin vitroでのRNA標的認識後にssDNAを分解することを示す図である。RNAにより誘発されるSuCasΩ活性を、ssDNAを用いてin vitroで試験した。ssDNAを蛍光検出のためのフルオロフォアで標識した。結果は、作動されたSuCasΩによってssDNAも分解されることを示す。標的ssDNA及びdsDNAは、SuCasΩ活性を誘発しなかった。 CasΩがin vitroでのRNA標的認識後にプラスミドDNAを分解することを示す図である。RNAにより誘発されるSuCasΩ活性を、プラスミドDNAを用いてin vitroで試験した。アガロースゲル上で核酸生成物を泳動し、臭化エチジウムで染色することによりプラスミドを検出した。結果は、作動されたSuCasΩによってプラスミドDNAも分解されることを示す。 CasΩが大腸菌(E. coli)において標的認識後に増殖を障害することを示す図である。SuCasΩの活性を、標的プラスミド又は任意のプラスミドで選択することなく評価した。(A~B)crRNAプラスミド及び標的/非標的プラスミドをすでに有する細胞にSuCasΩプラスミドを形質転換したときの形質転換減少倍率。異なるPAM及びrPAM及び標的ミスマッチを、標的プラスミドでの選択有り又は無しで試験した。rPAMを、Cas12aのPAMと対応するようにDNA逆相補体として報告する(例えば、5’-GAAA-3’ rPAMを、5’-TTTC-3’として報告する)。標的プラスミドで選択しない場合であっても、SuCasΩは、プラスミド形質転換を低減したが、Cas12aは低減しなかった。(C)異なる選択条件下で異なるヌクレアーゼを発現する大腸菌細胞の増殖の評価。選択抗生物質の非存在下であってもSuCasΩ及びLsCas13aは、増殖を低減したが、LbCas12aは低減しなかった。LsCas13aは、標的認識時に付随的に細胞RNAを分解し、これにより、増殖に対する同様の効果を生じることが知られている。さらに、大腸菌におけるCasΩによる標的化は、SOS反応、細胞毒性、及びDNAの喪失を誘発することが示されている。他のヌクレアーゼと比較したSuCasΩによる標的化の影響を、大腸菌で更に評価した。(D)GFP発現を駆動するrecAプロモーターを使用したSOS反応の測定。全て選択抗生物質の非存在下で、GFP蛍光をヌクレアーゼ及びガイドRNAの4時間の誘導後に測定した。SuCasΩのみが非標的対照と比較してSOS反応を有意に誘発した。(E)細胞形態及びDNA含有量の評価。細胞をDNA結合色素であるDAPIで染色し、フローサイトメトリー解析により評価した。SuCasΩによる標的化を用いた細胞のみが、集団の分岐を引き起こし、一部の細胞は糸状になり、一方で他の細胞は小さくなり、DNA含有量が減少していた。両方が広範囲なDNA損傷を反映している。 同上 同上 TXTLにおいてCasΩヌクレアーゼがRNAにより誘発される付随的な活性を示すことを示す図である。RNAにより誘発されるSuCasΩ及びSmCasΩ活性を、蛍光GFPレポーターをコードする非標的プラスミドDNAを用いた無細胞転写/翻訳(TXTL)反応で試験した。SuCasΩ及びSmCasΩヌクレアーゼ及びcrRNAを、プラスミドから発現させた。標的RNAは、反応において別個のプラスミドから発現せたか、又は発現させなかった。結果は、CasΩヌクレアーゼによるRNA認識が、GFPを発現する非標的レポータープラスミドの付随的な分解に起因するGFP蛍光の減少をもたらすことを示す。 SuCasΩが標的RNA分子を検出することができることを示す図である。CasΩのこの特性は、未知の標的RNA濃度を有する試験試料中のcrRNAにより規定されるRNAの濃度を決定するために使用することができる。 SuCasΩ系統クレードのCasΩヌクレアーゼが、TXTLにおいてRNAにより誘発されるオンターゲット活性及び付随的なオフターゲット活性を示すことを示す図である。 SmCasΩ系統クレードのCasΩヌクレアーゼが、TXTLにおいてRNAにより誘発されるオンターゲット活性及び付随的なオフターゲット活性を示すことを示す図である。 ca40CasΩ系統クレードのCasΩヌクレアーゼが、TXTLにおいてRNAにより誘発されるオンターゲット活性及び付随的なオフターゲット活性を示すことを示す図である。 SuCasΩヌクレアーゼが、非標的化crRNAと比較して、標的化crRNAの存在下でT4バクテリオファージプラークの数を低減したことを示す図である。 核局在化配列(NLS)をN末端及びC末端(N-NLS及びC-NLS)に含有するca33CasΩ及びSuCasΩ等のCasΩヌクレアーゼが、TXTLにおいてRNAにより誘発されるオンターゲット活性及び付随的なオフターゲット活性を示すことを示す図である。 ca33CasΩの活性は、HEK293T細胞の相対的生存率を減少させたことを示す図である。 血球計数器のデータを示す図である(以下の実施例を参照のこと)。非形質導入細胞-DNAなしでリポフェクタミン処理されたHEK293細胞;対照-野生型(WT)SuCasΩと哺乳動物細胞のあらゆるものを標的としないスクランブルガイドとの組み合わせ;GAPDH-WT SuCasΩとGAPDH mRNAの3つの別個の領域を標的とするガイドとの組み合わせ;MALAT1-WT SuCasΩとMALAT1 mRNAの3つの別個の領域を標的とするガイドとの組み合わせ;及びGAPDH RuvC-SuCasΩのRuvC活性部位のE1070A変異体とGAPDH mRNAの3つの別個の領域を標的とするガイドとの組み合わせ。 血球計数器のデータを示す図である(以下の実施例を参照のこと)。対照-WT SuCasΩと哺乳動物細胞のあらゆるものを標的としないスクランブルガイドとの組み合わせ;GAPDH-WT SuCasΩとGAPDH mRNAの3つの別個の領域を標的とするガイドとの組み合わせ。 フローサイトメトリーデータを示す図である(以下の実施例を参照のこと)。対照-WT SuCasΩと哺乳動物細胞のあらゆるものを標的としないスクランブルガイドとの組み合わせ;GAPDH-WT SuCasΩとGAPDH mRNAの3つの別個の領域を標的とするガイドとの組み合わせ。 フローサイトメトリーデータを示す図である(以下の実施例を参照のこと)。対照-WT SuCasΩと哺乳動物細胞のあらゆるものを標的としないスクランブルガイドとの組み合わせ;GAPDH-WT SuCasΩとGAPDH mRNAの3つの別個の領域を標的とするガイドとの組み合わせ。 細胞数測定データを示す図である(以下の実施例を参照のこと)。対照-WT SuCasΩと哺乳動物細胞のあらゆるものを標的としないスクランブルガイドとの組み合わせ;GAPDH-WT SuCasΩとGAPDH mRNAの3つの別個の領域を標的とするガイドとの組み合わせ。
上記のように、本発明の第1の態様において、本発明の目的は、dsDNA、ssDNA、及びRNAから選択される核酸分子を切断する方法であって、a)少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素を提供する工程と、b)少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAを提供する工程と、c)少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素と少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとの間で複合体を形成させる工程と、d)c)の複合体を少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAに基づいて標的RNAに結合させる工程と、e)dsDNA、ssDNA、及びRNAから選択される上記核酸分子を少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素により切断する工程とを含む、方法を提供することにより達成される。好ましくは、少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAは、標的RNAと少なくとも90%相補的なガイド配列を含む。
本発明は、ガイドRNAを利用して、RNA PAM(rPAM)と隣接する相補的なRNA配列(複数の場合もある)を認識し、これにより、一本鎖DNA(ssDNA)、二本鎖DNA(dsDNA)及び、RNAが含まれる核酸の非特異的な分解(切断、分割、又はニッキング)をもたらす、本明細書においてCasΩと称される(またCas12a2とも称される)CRISPRヌクレアーゼによるRNA標的配列の検出に基づく。確立されたCasヌクレアーゼであるCas12aとの構造類似性を考慮して、CasΩはDNAを標的とすると推定された。
RNA認識、並びに引き起こされる付随的なssDNA、dsDNA、及びRNAの分解、並びにrPAMの認識の組み合わせは、既知のCasヌクレアーゼの中でも独特である。これは、分子診断に使用される他のCasヌクレアーゼと比較して明確な利点を提供し、RNA干渉及びRNA編集を達成する独特な手段を提供し、配列特異的対抗選択、並びに細菌、古細菌、及び真核生物の殺傷、並びにDNA及びRNAウイルスの除去における最初の応用を開示する。
Zetsche Bら(Cpf1 is a single RNA-guided endonuclease of a class 2 CRISPR-Cas system. Cell. 2015 Oct 22;163(3):759-71. doi: 10.1016/j.cell.2015.09.038. Epub 2015 Sep 25. PMID: 26422227; PMCID: PMC4638220において)は、推定クラス2 CRISPRエフェクターであるCpf1の特徴付けを報告している。彼らは、Cpf1がCas9と異なる特徴の強力なDNA干渉を媒介することを実証している。Cpf1は、tracrRNAを欠くRNA誘導型シングルエンドヌクレアーゼであり、Tリッチプロトスペーサー隣接モチーフを利用する。さらに、Cpf1は、互い違いのDNA二本鎖切断によりDNAを切断する。彼らは、16のCpf1ファミリータンパク質のうち、アシドアミノコッカス属及びラクノスピラ科からヒト細胞において効率的なゲノム編集活性を有する2つの候補酵素を同定した。CasΩ酵素は、Sulfuricurvum_sp_PC08-66から発見される。
Begemann, M.B.ら(Characterization and validation of a novel group of Type V, Class 2 nucleases for in vivo genome editing. 2017. bioRxiv, pp.1-9において)は、植物における酵素及びゲノム編集の幾つかの証拠を示している。本発明の(発明者らの?)文脈において示される結果によれば、観察されるゲノム欠失は、DNA標的化に起因するものではなく、むしろRNA標的化に応答した純化選択により生じたようである。
Makarova, K.S.ら(Classification and Nomenclature of CRISPR-Cas Systems: Where from Here? 2018. The CRISPR journal, 1(5), pp.325-336において)は、CasΩではないと思われる2つの他のヌクレアーゼと共に分類されたCas12aバリアントとしてSmクレード由来のCasΩ(KFO67988.1)を開示している。
Aliaga Goltsman, D.S.ら(Novel Type V-A CRISPR Effectors Are Active Nucleases with Expanded Targeting Capabilities. 2020. The CRISPR journal, 3(6), pp.454-461において)は、Smクレード由来の多数のCasΩヌクレアーゼ、すなわち、Cas12a-M60-3、Cas12a-M60-1、Cas12a-M60-8、Cas12a-M60-9、Cas12a-M26-5、Cas12a-M26-14、及びCas12a-M26-15をCas12aとして分類した。
米国特許出願公開第2019/0048357号(これは引用することによりその全体が本明細書の一部をなす)は、真核細胞、好ましくは植物細胞のゲノムの標的部位でヌクレオチド配列を改変する方法を開示している。このために、Cms1ポリペプチド又はCms1ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及びDNAを標的化するRNA又はDNAを標的化するRNAをコードするDNAポリヌクレオチド(ここで、DNAを標的化するRNAが、(a)標的DNAの配列に相補的なヌクレオチド配列を含む第1のセグメントと(b)Cms1ポリペプチドと相互作用する第2のセグメントとを含む)が細胞に導入される。本方法は、次いで、上記ヌクレオチド配列を上記標的部位で改変することを必要とし、ここで、上記真核細胞のゲノムは、核ゲノム、プラスチドゲノム、又はミトコンドリアゲノムである。
米国特許出願公開第2019/0048357号の図1は、示されるV型ヌクレアーゼアミノ酸配列のRuvCを基点としたMUSCLEアラインメントにより描画された系統樹を示す。Sm型、Sulf型、及びUnk40型Cms1ヌクレアーゼが示されている。次に、図2は、Sm型Cms1タンパク質間で共有されるアミノ酸モチーフの概要を示す。ボックス1~10のWeblogoによる図は、それぞれ米国特許出願公開第2019/0048357号の配列番号177~配列番号186に対応し、SmCms1タンパク質(米国特許出願公開第2019/0048357号の配列番号10)上でのそれらの位置が示されている。図3は、Sulf型Cms1タンパク質間で共有されるアミノ酸モチーフの概要を示す。ボックス1~17のWeblogoによる図は、それぞれ米国特許出願公開第2019/0048357号の配列番号288~配列番号289及び配列番号187~配列番号201に対応し、SulfCms1タンパク質(米国特許出願公開第2019/0048357号の配列番号11)上でのそれらの位置が示されている。
図4は、Unk40型Cms1タンパク質間で共有されるアミノ酸モチーフの概要を示す。ボックス1~7のWeblogoによる図は、それぞれ配列番号290~配列番号296に対応し、Unk40Cms1タンパク質(配列番号68)上でのそれらの位置が示されている。
したがって、米国特許出願公開第2019/0048357号は、Sm型Cms1タンパク質及びSulf型Cms1タンパク質並びにUnk40型Cms1の形式で本発明によるCasΩヌクレアーゼの好ましい例を開示している。したがって、本発明の文脈において、CasΩヌクレアーゼ又はCasΩヌクレアーゼ酵素という用語は、少なくとも以下の特徴を示すCasヌクレアーゼポリペプチド又はその対応する機能断片を包含する:
a)少なくとも1つのRuvCのモチーフ、より好ましくは2つのRuvCのモチーフ、より好ましくは3つのRuvCのモチーフからなるRuvCドメインを有し、好ましくはHNH又はHEPNドメインを有さないCRISPR関連シングルエフェクターヌクレアーゼ酵素、
b)非CasΩヌクレアーゼと比較して3つのモチーフのうちの1つのアミノ酸の挿入を含む、RuvC-IモチーフからRuvC-IIモチーフまでの間の独特のアミノ酸組成、
c)非CasΩヌクレアーゼと比較して、かつZnフィンガードメインと置き換えられた(replacement of amino acids with a Zn-finger domain compared to non-CasΩ nucleases,)アミノ酸の欠失を含む、RuvC-IIモチーフからRuvC-IIIモチーフまでの間の独特のアミノ酸組成、
d)アクセサリー因子なしで(すなわち、tracrRNA及び/又はRNアーゼIIIなしで)CRISPR RNAリピートをプロセシングするヌクレアーゼの能力、
e)ヌクレアーゼがその固有の核酸標的として一本鎖RNAを認識すること、
f)ヌクレアーゼがrPAMと隣接するRNAを天然に標的とすること、並びに、
f)g)RNAの認識が、ssRNA、ssDNA、及び/又はdsDNAの非特異的(非配列特異的)切断をもたらすこと。
本発明の文脈において、CasΩヌクレアーゼ又はCasΩヌクレアーゼ酵素という用語は、米国特許出願公開第2019/0048357号に開示される配列番号10又は配列番号11又は配列番号68からなる群から選択される配列との少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の同一性を有し、RNA依存性CasΩヌクレアーゼ活性を有し、すなわち、dsDNA、ssDNA、及び/又はRNAを非特異的に切断するポリペプチドも包含する。
酵素のSuクレードのCasΩヌクレアーゼ又はCasΩヌクレアーゼ酵素(図1を参照のこと)が好ましく、したがって、CasΩヌクレアーゼ又はCasΩヌクレアーゼ酵素は、米国特許出願公開第2019/0048357号に開示される配列番号11に記載のアミノ酸配列との少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%の同一性を有し、RNA依存性CasΩヌクレアーゼ活性を有し、すなわち、dsDNA、ssDNA、及び/又はRNAを非特異的に切断するポリペプチドを包含する。
これらのヌクレアーゼ間でよく保存されているタンパク質配列内のモチーフを同定するために、CasΩヌクレアーゼアミノ酸配列のアラインメントが調査された。CasΩヌクレアーゼは、図1に示す系統樹の3つの良好に分類されたクレードに見出されることが確認された。これらのクレードのうちの1つは、Sm CasΩ(米国特許出願公開第2019/0048357号に開示される配列番号10)を含み、もう一つは、Su CasΩ(米国特許出願公開第2019/0048357号に開示される配列番号11)を含み、3つ目は、Unk40(米国特許出願公開第2019/0048357号に開示される配列番号68)を含む。したがって、これらのヌクレアーゼ間で部分的及び/又は完全に保存されたアミノ酸モチーフを同定するために、これらのクレードの各々のメンバーが個別にアラインメントされた。Sm CasΩヌクレアーゼのアラインメントでは、米国特許出願公開第2019/0048357号に開示される配列番号10、配列番号20、配列番号23、配列番号30、配列番号32~配列番号34、配列番号37~配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号44、配列番号46~配列番号60、配列番号67、配列番号154~配列番号156、配列番号208~配列番号211、配列番号222、配列番号223、配列番号225、配列番号228、配列番号229、配列番号232、配列番号234、配列番号236、配列番号237、配列番号241、配列番号243、配列番号245、配列番号248、配列番号250、配列番号251、配列番号253、及び配列番号254がアラインメントされた。Su CasΩヌクレアーゼのアラインメントでは、米国特許出願公開第2019/0048357号に開示される配列番号11、配列番号21、配列番号22、配列番号31、配列番号35、配列番号36、配列番号40、配列番号42、配列番号45、配列番号61~配列番号66、配列番号69、配列番号227、配列番号230、配列番号231、配列番号235、配列番号239、配列番号240、配列番号242、配列番号244、及び配列番号247がアラインメントされた。Unk40 CasΩヌクレアーゼのアラインメントでは、配列番号68、配列番号224、配列番号226、配列番号233、配列番号238、配列番号246、配列番号249、及び配列番号252がアラインメントされた。これらのアラインメントは、米国特許出願公開第2019/0048357号においてMUSCLEを使用して実行され、アラインメントされた全てのタンパク質間で保存性を示した領域を同定するために、得られたアラインメントが手動で調査された。
本発明の配列番号32~配列番号67に示すアミノ酸(モチーフ)がSm CasΩヌクレアーゼのアラインメントにより同定された。本発明の配列番号16~配列番号31に示すアミノ酸モチーフがSu CasΩヌクレアーゼのアラインメントにより同定された。本発明の配列番号1~配列番号15に示すアミノ酸モチーフがca40(Unk40)CasΩヌクレアーゼのアラインメントにより同定された。Sm CasΩ及びSu CasΩタンパク質配列上のこれらの保存されたモチーフの位置を示す模式図を図2~図4に示す。
本発明によるヌクレアーゼは、以下(追加の)特徴に基づいて区別/分類されてもよい。特に配列番号16~配列番号31に示す、本発明によるSuCasΩヌクレアーゼの特に好ましいサブグループは、1つの際立った特徴として、Cas12a等の非CasΩヌクレアーゼと比較したアミノ酸の欠失を含む、RuvC-II触媒モチーフからRuvC-III触媒モチーフまでの間の独特のアミノ酸組成を示す(図2も参照のこと)。特に配列番号32~配列番号67に示す、本発明によるSmCasΩヌクレアーゼのサブグループは、1つの際立った特徴として、Cas12a等の非CasΩヌクレアーゼと比較したZnフィンガードメインとのアミノ酸の置換を含む、RuvC-II触媒モチーフからRuvC-III触媒モチーフまでの間の独特のアミノ酸組成を示す。最後に、特に配列番号1~配列番号15に示す、本発明によるca40CasΩヌクレアーゼのサブグループは、1つの際立った特徴として、Cas12a等の非CasΩヌクレアーゼと比較したZnフィンガードメインとのアミノ酸の置換を含む、RuvC-II触媒モチーフからRuvC-III触媒モチーフまでの間の独特のアミノ酸組成を示す。
以下の表に示すような、本発明によるものであり、かつ本発明に従って使用される特に好ましいCasΩヌクレアーゼ酵素が同定された。


ヌクレアーゼのRuvCのモチーフの位置は、以下の通りに同定された。
次に、本発明による方法は、少なくとも1種の標的RNAへの結合のために設計された少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAを提供する。標的RNAの結合及び認識の成功はシグナルをもたらし、次いで、このシグナルはDNA及びRNA等の核酸の分解を引き起こす。
本発明の方法に使用される核酸分子のハイブリダイズする部分は、少なくとも80%相補的、好ましくは90%を超えて相補的、より好ましくは95%を超えて相補的であり、最も好ましくは互いに100%相補的である。したがって、好ましくはrPAMを除く標的RNAと特異的にハイブリダイズする上記ガイドRNAの上記部分/一部のヌクレオチド配列は、少なくとも80%相補的、好ましくは90%を超えて相補的、より好ましくは95%を超えて相補的となるように、作製及び/又は改変され得て、最も好ましくは標的RNAに100%相補的である。
本発明による方法に使用される核酸分子のある特定の部分は、他の分子の相補的な部分と特異的にハイブリダイズすることが発見されており、及び/又は特異的にハイブリダイズするように設計されている。当業者に既知のように、これに関しては、ハイブリダイゼーション及び洗浄条件が重要である。配列が100%相補的である場合、高度な厳密性のハイブリダイゼーションが実行されてもよい。しかしながら、本発明によれば、ハイブリダイズ及び/又は特異的にハイブリダイズする部分は、少なくとも80%相補的、好ましくは90%を超えて相補的、より好ましくは95%を超えて相補的であり、最も好ましくは100%相補的である。ハイブリダイゼーションの厳密性は、ハイブリダイゼーション温度及びハイブリダイゼーション緩衝液の塩濃度により決まり、高温及び低塩がより厳密性が高い。一般的に使用される洗浄溶液は、SSC(クエン酸ナトリウム及びNaClの混合物である塩化ナトリウム・クエン酸ナトリウム)である。ハイブリダイゼーションは、溶液中で実行されてもよく、又はより一般的には、少なくとも1種の成分が固相担体、例えば、ニトロセルロース紙上に存在してもよい。頻繁に使用されるプロトコルでは、ブロッキング試薬、例えば、多くの場合、断片化した変性サケ精子DNA(又は複雑度が高い任意の他の異種DNA)及び界面活性剤、例えば、SDSと組み合わされる脱脂粉乳由来のカゼイン又はウシ血清アルブミンが用いられる。多くの場合、SDSの非常に高い濃度は、ブロッキング薬剤として使用される。温度は、42℃~65℃又はそれ以上であってもよく、緩衝液は、3×SSC、25 mMのHEPES(pH7.0)、0.25%のSDS(最終濃度)であってもよい。
本発明による方法であって、少なくとも1種の標的RNAへの結合のために設計された上記の事前選択されたガイドRNAの上記部分が、15個以上のヌクレオチド、好ましくは18個以上のヌクレオチド、より好ましくは約20個以上のヌクレオチドを有する標的RNAと特異的にハイブリダイズする、方法が好ましい。好ましい範囲は、15ヌクレオチド~30ヌクレオチド、より好ましくは18ヌクレオチド~25ヌクレオチド、最も好ましくは20ヌクレオチド~24ヌクレオチドである。複合体のハイブリダイズする部分(ガイドの3’)の延長が可能であり、かつ好ましく、より安定した複合体の形成の利点を提供する。
本発明による方法であって、標的RNAがrPAM(上記を参照のこと)を含む、方法が更に好ましい。本発明による方法の好ましい実施形態において、Casヌクレアーゼは、例えば、Casの相互作用(PI)ドメインの重要な領域を、関連するCasオーソログのパネルにおける対応する領域と置き換えることにより、より幅広いパネルのrPAM部位を認識するように改変され得る(例えば、Cas9について、Ma et al., Engineer chimeric Cas9 to expand PAM recognition based on evolutionary information. Nat Commun. 2019 Feb 4;10(1):560. doi: 10.1038/s41467-019-08395-8を参照のこと)。これにより、細胞におけるRNA標的候補の幅が広がる。
本発明による方法の次の工程では、上記のような少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素と少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとの間で形成される複合体は、事前選択されたガイドRNAの上記のように設計された配列に基づいて標的RNAに結合している。CasΩ酵素は、標的核酸を切断するその能力とは無関係に標的核酸に結合し、この柔軟性は、上記の少なくとも1種の標的RNAへの結合のために使用される。
本発明の文脈において、標的RNAは、切断を引き起こすためのトリガーとして使用されるべき、及び/又は本発明による方法を使用して検出されるべき関心対象の任意のRNAである。通常、かつ好ましくは、標的RNAは、一本鎖RNA分子、例えば、メッセンジャーRNA、リボソームRNA、転移RNA、低分子RNA、アンチセンスRNA、核小体低分子RNA、マイクロRNA、piwiRNA、長鎖非コードRNA、スプライシングされたイントロン、及び環状RNAである。RNAは、天然起源であり得るか、又は人工的に作製され得る。検出される一本鎖RNAは、ヒト細胞、動物細胞、植物細胞、癌細胞、感染細胞、若しくは病変細胞由来であり得て、及び/又はウイルス、寄生虫、蠕虫、真菌、原生動物、細菌、若しくは病原菌に由来し得る。標的RNAは、本発明の方法において作製及び使用される(非天然)ガイドRNAの一部と特異的にハイブリダイズする配列を含む。
本発明による複合体であって、上記ガイドRNAが、細菌に特異的となるように選択された配列、ウイルスに特異的となるように選択された配列、真菌に特異的となるように選択された配列、原生動物に特異的となるように選択された配列、遺伝的障害に特異的となるように選択された配列、及び増殖性障害に特異的となるように選択された配列を含む、複合体が好ましい。通常、上記配列は、上記の標的RNAの相補体又は部分的相補体である。
本発明による方法の最終工程では、少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素が、dsDNA、ssDNA、及びRNAから選択される核酸分子を切断(すなわち、分割、切断、及び/又はニッキング)する。標的RNAへの特異的なRNA結合の前述の「トリガー」とは対照的に、ヌクレアーゼ活性は非特異的である。RNAにより誘発される非特異的なRNアーゼ活性を有するCas13a(C2c2)、及びdsDNAにより誘発される非特異的なssDNアーゼ活性を有するV型エフェクタータンパク質であるCas12aのような他のCas-ヌクレアーゼとは対照的に、本発明のCasヌクレアーゼであるCasΩは、RNAにより誘発される非特異的なヌクレアーゼ活性を有する(Varble A, Marraffini LA. Three New Cs for CRISPR: Collateral, Communicate, Cooperate. Trends Genet. 2019;35(6):446-456. doi:10.1016/j.tig.2019.03.009も参照のこと)。
本発明による方法は、in vivo又はin vitroで、例えば、生物、細胞、組織、及び/又は核のようなそれらの一部で、又は診断アッセイのようなin vitroアッセイで実行され得る。
上記したように、本発明の第2の態様においては、本発明の目的は、CasΩヌクレアーゼ、及び好ましくは特に少なくとも1種の標的RNAへの結合のために設計されている、少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAを含む複合体を提供することにより達成される。上記ガイドRNAと少なくとも80%まで、好ましくは90%超まで、より好ましくは95%超まで、最も好ましくは100%相補的な配列を有する標的RNA分子に更に結合しており、上記標的RNAが、好ましくは少なくとも1つのrPAMと隣接している、本発明による複合体が好ましい。
CasΩヌクレアーゼは、上述した酵素、及び本明細書に開示されるようなRNA依存性ヌクレアーゼ活性を保持するその断片、すなわち、RuvCドメインを少なくとも保持する断片から選択され得る。CasΩヌクレアーゼのポリペプチドは、意図される使用に応じて、例えば、in vivo又はin vitroで提供され得て、合成により作製され、in vitro転写により生成され、及び/又はプラスミドにクローニングされる。酵素は、精製されたか、又はほぼ精製された単離酵素製剤として提供されてもよい。本発明による複合体は、CasΩヌクレアーゼの混合物、例えば、記載される2種又は3種以上のヌクレアーゼ又はその断片により調製されてもよい。
したがって、使用されるCasΩポリペプチドは、野生型CasΩポリペプチド、改変されたCasΩポリペプチド、又は野生型若しくは改変されたCasΩポリペプチドの断片であり得る。CasΩポリペプチドは、核酸結合の親和性及び/又は特異性を増加させるために、酵素活性を変化させるために、及び/又はタンパク質の別の特性を変化させるために改変され得る。例えば、CasΩポリペプチドのヌクレアーゼ(すなわち、DNアーゼ、RNアーゼ)ドメインが改変され得るか、除去され得るか、又は不活性化され得る。あるいは、CasΩポリペプチドは、タンパク質の機能、すなわち、好ましくはRNA依存性ヌクレアーゼ活性に必須ではないドメインを除去するために短縮され得る。
CasΩポリペプチド又はその断片若しくはバリアント、及びエフェクタードメインを含む融合タンパク質が本明細書において提供される。CasΩポリペプチドは、ガイドRNAにより標的部位に誘導され得て、その部位でエフェクタードメインが、標的とされる核酸配列を改変し得るか、又はそれに影響を及ぼし得る。エフェクタードメインは、切断ドメイン、RNA修飾ドメイン、翻訳活性化ドメイン、翻訳抑制ドメイン、プロセシング/スプライシング因子、RNA局在に影響を及ぼすドメイン、又はこれらの機能のいずれかに影響を及ぼすタンパク質を動員するドメインであり得る。融合タンパク質は、核局在化シグナル、プラスチドシグナルペプチド、ミトコンドリアシグナルペプチド、複数の細胞内位置へのタンパク質輸送が可能なシグナルペプチド、細胞膜透過性ドメイン、又はマーカードメインから選択される少なくとも1つの追加のドメインを更に含み得て、これらのいずれかは、融合タンパク質のN末端、C末端、又は内部位置に存在し得る。CasΩポリペプチドは、融合タンパク質のN末端、C末端、又は内部位置に存在し得る。CasΩポリペプチドは、エフェクタードメインに直接融合され得るか、又はリンカーと融合され得る。特定の実施形態において、CasΩポリペプチドをエフェクタードメインと融合させるリンカー配列は、少なくとも1アミノ酸長、2アミノ酸長、3アミノ酸長、4アミノ酸長、5アミノ酸長、6アミノ酸長、7アミノ酸長、8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長、15アミノ酸長、20アミノ酸長、25アミノ酸長、30アミノ酸長、40アミノ酸長、又は50アミノ酸長であり得る。例えば、リンカーは、1アミノ酸長~5アミノ酸長、1アミノ酸長~10アミノ酸長、1アミノ酸長~20アミノ酸長、1アミノ酸長~50アミノ酸長、2アミノ酸長~3アミノ酸長、3アミノ酸長~10アミノ酸長、3アミノ酸長~20アミノ酸長、5アミノ酸長~20アミノ酸長、又は10アミノ酸長~50アミノ酸長の範囲であり得る。CasΩポリペプチドは、結合ドメインによりエフェクターを動員してもよい。
上記ヌクレアーゼが核局在化シグナルを含む、本発明による複合体が好ましい。核局在化シグナルを含む上記融合ヌクレアーゼ及びそれと共に形成される本明細書に記載される複合体は、本発明の他の実施形態である。
幾つかの実施形態において、融合タンパク質のCasΩポリペプチドは、野生型CasΩタンパク質に由来し得る。CasΩ由来のタンパク質は、改変されたバリアント又は断片であり得る。幾つかの実施形態において、CasΩポリペプチドは、ヌクレアーゼ活性が低減又は除去されたヌクレアーゼドメイン(例えば、RuvC又はRuvC様ドメイン)を含有するように改変され得る。ヌクレアーゼドメインは、既知の方法、例えば、部位特異的変異誘発、PCR媒介変異誘発、及び全遺伝子合成、並びに当該技術分野において既知の他の方法を使用して、1つ以上の欠失変異、挿入変異、及び/又は置換変異により改変され得る。
さらに、複合体又は複数の複合体は、好ましくは特に少なくとも1種の標的RNAへの結合のために設計されている、少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAを含む。ガイドRNAの配列(複数の場合もある)を設計及び選択する方法は、通常、標的RNAの配列及びアッセイ条件に依存し、かかる配列を設計及び選択する方法は、当業者に既知である。
上記ガイドRNA分子が、標的RNAと少なくとも80%まで、好ましくは90%超まで、より好ましくは95%超まで、最も好ましくは100%相補的な配列を含み、上記標的RNAが、好ましくは少なくとも1つのrPAMと隣接している、本発明による複合体が好ましい。ガイドRNAは、少なくとも1種の標的RNAへの結合のために設計され得て、天然に存在する配列(次いで、分子における所望される配列を生成させるために改変される)に由来し得る。ガイドRNAは、追加の改変、例えば、標識又は修飾ヌクレオチド、例えば、イノシン等を更に含み得る。天然に存在するガイドRNA及び/又は非天然ガイドRNAのいずれの場合も、ガイドRNAは、標準的方法により作製され得て、例えば、合成により作製され得て、in vitro転写により生成され得て、及び/又はプラスミド若しくは複数のプラスミド若しくは他の好適なベクターにクローニングされ得る。
本発明の方法に使用される核酸分子のハイブリダイズする部分は、少なくとも80%相補的、好ましくは90%を超えて相補的、より好ましくは95%を超えて相補的であり、最も好ましくは互いに100%相補的である。したがって、標的RNAと特異的にハイブリダイズする上記ガイドRNAの上記部分/一部のヌクレオチド配列は、少なくとも80%相補的、好ましくは90%を超えて相補的、より好ましくは95%を超えて相補的となるように、作製及び/又は改変され得て、最も好ましくは標的RNAに100%相補的である。
本発明による方法に使用される核酸分子のある特定の部分は、他の分子の相補的な部分と特異的にハイブリダイズすることが発見されており、及び/又は特異的にハイブリダイズするように設計されている。当業者に既知のように、これに関しては、ハイブリダイゼーション及び洗浄条件が重要である。配列が100%相補的である場合、高度な厳密性のハイブリダイゼーションが実行されてもよい。しかしながら、本発明によれば、ハイブリダイズ及び/又は特異的にハイブリダイズする部分は、少なくとも80%相補的、好ましくは90%を超えて相補的、より好ましくは95%を超えて相補的であり、最も好ましくは100%相補的である。ハイブリダイゼーションの厳密性は、ハイブリダイゼーション温度及びハイブリダイゼーション緩衝液の塩濃度により決まり、高温及び低塩がより厳密性が高い。一般的に使用される洗浄溶液は、SSC(クエン酸ナトリウム及びNaClの混合物である塩化ナトリウム・クエン酸ナトリウム)である。ハイブリダイゼーションは、溶液中で実行されてもよく、又はより一般的には、少なくとも1種の成分が固相担体、例えば、ニトロセルロース紙上に存在してもよい。頻繁に使用されるプロトコルでは、ブロッキング試薬、例えば、多くの場合、断片化した変性サケ精子DNA(又は複雑度が高い任意の他の異種DNA)及び界面活性剤、例えば、SDSと組み合わされる脱脂粉乳由来のカゼイン又はウシ血清アルブミンが用いられる。多くの場合、SDSの非常に高い濃度は、ブロッキング薬剤として使用される。温度は、42℃~65℃又はそれ以上であってもよく、緩衝液は、3×SSC、25 mMのHEPES(pH7.0)、0.25%のSDS(最終濃度)であってもよい。
本発明による方法であって、少なくとも1種の標的RNAへの結合のために設計された上記の事前選択されたガイドRNAの上記部分が、15個以上のヌクレオチド、好ましくは18個以上のヌクレオチド、より好ましくは約20個以上のヌクレオチドを有する標的RNAと特異的にハイブリダイズする、方法が好ましい。好ましい範囲は、15ヌクレオチド~30ヌクレオチド、より好ましくは18ヌクレオチド~25ヌクレオチド、最も好ましくは20ヌクレオチド~24ヌクレオチドである。複合体のハイブリダイズする部分(ガイドの3’)の延長が可能であり、かつ好ましく、より安定した複合体の形成の利点を提供する。
ガイドRNAは、好ましくは機能の増強又は新たな機能を導入するために、更に改変され得る。例えば、標的RNAと完全に相補的となり、これにより、RNA修飾酵素(例えば、ADAR)により編集され得るdsRNAを生じるように、ガイドRNAの5’及び/又は3’末端が延長され得る。ガイドモチーフの5’側の保存されたCasΩハンドルモチーフの構造は、認識されるヘアピン構造を安定化するために、又はCasΩによる結合を促進するために改変され得る。ガイドRNAの5’及び/又は3’末端は、アプタマー配列を更に組み込むために延長され得る。その場合、これらのアプタマーは、使用されるエフェクタードメインに融合されたペプチド又はタンパク質リガンドを認識し得る。アプタマー及びそれらの応用は、当該技術分野において既知である(例えば、Rabiee N, Ahmadi S, Arab Z, Bagherzadeh M, Safarkhani M, Nasseri B, Rabiee M, Tahriri M, Webster TJ, Tayebi L. Aptamer Hybrid Nanocomplexes as Targeting Components for Antibiotic/Gene Delivery Systems and Diagnostics: A Review. Int J Nanomedicine. 2020 Jun 17;15:4237-4256. doi: 10.2147/IJN.S248736. PMID: 32606675; PMCID: PMC7314593を参照のこと)。
本発明による複合体は、少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素と、事前選択されたガイドRNAの上記のように設計された配列に基づいて標的RNAに結合した上記の少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとの間で最終的に形成される。CasΩ酵素は、標的核酸を切断するその能力とは無関係に標的核酸に結合し、この柔軟性は、上記の少なくとも1種の標的RNAへの結合のために使用される。
本発明の文脈において、標的RNAは、切断を引き起こすためのトリガーとして使用されるべき、及び/又は本発明による方法を使用して検出されるべき関心対象の任意のRNAである。通常、かつ好ましくは、標的RNAは、一本鎖RNA分子、例えば、メッセンジャーRNA、リボソームRNA、転移RNA、低分子RNA、アンチセンスRNA、核小体低分子RNA、マイクロRNA、piwiRNA、長鎖非コードRNA、スプライシングされたイントロン、及び環状RNAである。RNAは、天然起源であり得るか、又は人工的に作製され得る。検出される一本鎖RNAは、ヒト細胞、動物細胞、植物細胞、癌細胞、感染細胞、若しくは病変細胞由来であり得て、及び/又はウイルス、寄生虫、蠕虫、真菌、原生動物、細菌、若しくは病原菌に由来し得る。上記のように、標的RNAは、本発明の方法において作製及び使用される(非天然)ガイドRNAのガイド部分と特異的にハイブリダイズする配列を含む。
本発明の別の重要な態様は、本発明の複合体及び方法の診断的使用である。この態様は、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAを検出する方法であって、上記方法が、a)少なくとも1種のssDNA、dsDNA、又はRNAレポーター核酸を上記細胞、組織、細胞核、及び/又は試料に提供する工程と、b)上記細胞、組織、細胞核、及び/又は試料を、少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素と少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとの間の少なくとも1種の複合体と接触させる工程であって、上記少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAが、標的RNAに少なくとも90%相補的なガイド配列を含む、工程と、c)上記少なくとも1種のssDNA、dsDNA、又はRNAレポーター核酸の切断、分割、及び/又はニッキングを検出する工程であって、上記少なくとも1種のレポーター核酸の切断を検出することにより、上記細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における上記少なくとも1種の標的RNAが検出される、工程とを含む、方法を提供することにより本発明の目的を達成する。
上記したように、本発明の方法に使用される核酸分子のハイブリダイズする部分は、少なくとも80%相補的、好ましくは90%を超えて相補的、より好ましくは95%を超えて相補的であり、最も好ましくは互いに100%相補的である。したがって、標的RNAと特異的にハイブリダイズする上記ガイドRNAの上記ガイド部分/一部のヌクレオチド配列は、少なくとも80%相補的、好ましくは90%を超えて相補的、より好ましくは95%を超えて相補的となるように、作製及び/又は改変され得て、最も好ましくは標的RNAに100%相補的である。
各相補性及びアッセイ条件を適用する場合、本発明の方法は、標的RNAの変異を検出するために使用され得るが、望ましくなく、細胞若しくは試料においてより高レベルで存在し、及び/又は外来性、例えば、ヒト細胞、動物細胞、植物細胞、癌細胞、感染細胞、若しくは病変細胞由来であり、及び/又はウイルス、寄生虫、蠕虫、真菌、原生動物、細菌、又は病原菌に由来し得るRNAを検出するためにも使用され得る。
本発明による方法の好ましい実施形態において、上記少なくとも1種の標的RNAは、ジカウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルスI型、単純ヘルペスウイルスII型、パピローマウイルス、狂犬病ウイルス、サイトメガロウイルス、ヒト血清パルボ様ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、マウス白血病ウイルス、ムンプスウイルス、水疱性口炎ウイルス、シンドビスウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、いぼウイルス、ブルータングウイルス、センダイウイルス、ネコ白血病ウイルス、レオウイルス、ポリオウイルス、シミアンウイルス40、マウス乳癌ウイルス、デング熱ウイルス、風疹ウイルス、西ナイルウイルス、コロナウイルス、黄熱ウイルス、及びアフリカ豚熱ウイルスから選択されるウイルスに由来する。
本発明による方法の好ましい実施形態において、上記少なくとも1種の標的RNAは、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus)、レジオネラ菌(Legionella pneumophila)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、大腸菌、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、肺炎球菌、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、ライム病スピロヘータ(Lyme disease spirochetes)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、ライ菌(Mycobacterium leprae)、及びウシ流産菌(Brucella abortus)から選択される病原菌に由来する。
少なくとも1種の標的RNAが、対照標的RNAと比較して少なくとも1つの変異を含む変異型標的RNAである本発明による方法が好ましい。
本発明による方法の好ましい実施形態において、少なくとも1種の標的RNAは、遺伝子に由来し、その転写及び/又は発現は、外部要因、例えば、代謝因子若しくはシグナル、ホルモン、病原体、毒素、薬物、加齢、及び/又は生物的ストレス若しくは非生物的ストレスに応答して変更される。
本発明による方法の好ましい実施形態において、標的RNAは、環境、種、系統、疾患、細胞、及び/又は組織特異的となるように選択される。この態様において、本発明の方法は、選択される標的RNAに基づいて細胞又は生物を同定及び/又は分類するのに役立つ。少なくとも1種の標的RNAは、好ましくは、ウイルス感染症、例えば、コロナウイルス感染症、病原体による感染症、代謝疾患、癌、神経変性疾患、加齢、薬物、及び生物的ストレス又は非生物的ストレスから選択される状態に関連する。
本発明による方法の更なる好ましい実施形態において、少なくとも1種の標的RNAが、工程a)の前に上記細胞、組織、及び/又は試料に添加され得て、及び/又はここで、上記方法は、DNAのRNAへのin vitroでの転写、RNAのDNAへの逆転写、及び最適には、その後の上記DNAのRNAへのin vitroでの転写から選択される少なくとも1つの工程を更に含む。これは、好適な又は所望のシグナル増幅をもたらすために行われ得る。通常、上記細胞、組織、又は試料における標的RNAは、約500 fM~約1 μM、例えば、約500 fM~約1 nMの範囲で存在し、好ましくは、約1 pM~約1 nMの範囲で存在する。最適には、本方法は、細胞、組織、及び/又は試料毎に単一の分子を検出し得る。
DNA分解を引き起こす配列特異的なRNA認識の広範な適用性を考慮すると、CasΩヌクレアーゼは、幾つかの利点を提供する。COVID-19パンデミックは、単一ヌクレオチドの差でさえも検出することができる安価かつ迅速な診断の必要性を強調した。パンデミックが収まった後でさえ、社会は、診断の利点をより認識し、日常的な場面(例えば、空港)でのそれらの使用を受け入れるであろう。CasΩヌクレアーゼは、特異的なRNA標的配列を認識し、例えば、ssDNA又はdsDNA又はRNAレポーターの分解をもたらす。読み出しは、蛍光読み出し(例えば、フルオロフォア及びクエンチャーに融合されたレポーターの切断)又は比色読み出し(例えば、ラテラルフローアッセイの一部としてのナノ粒子の放出)であり得る。CasΩヌクレアーゼの配列特異性は、標的RNAにおける単一ヌクレオチドの変化、例えば、ウイルス、特にSARS-CoV-2バリアントに関連するものでさえも識別するための診断アッセイを可能にし得る。Cas12a又はCas13に基づく現行のCRISPR技術は、ssDNA又はssRNAレポーターの付随的な切断を引き起こす、dsDNA又はssRNA標的の認識に依存する。
Smith CWら(非特許文献11において)は、標的検出時のCas12aのトランス切断活性を調べるためのdsDNA基質(プローブ-フル)を報告している。異なるdsDNA特徴を有するCas12a基質の多様なセットが設計され、蛍光分光法を使用して研究された。Smithらは、ニックのないプローブ-フルが、ニックを有する形態よりも良好なトランス切断性能を示したことを確認した。塩濃度、標的濃度、及びミスマッチ(許容性?)が異なる実験条件を試験して、プローブ性能を評価した。Cas12aの活性は、タバコカーリーシュートウイルス(TCSV)又はB型肝炎ウイルス(HepBV)に対するcrRNAを使用することにより、それぞれTCSV又はHepBVゲノムから複製されたdsDNA骨格用にプログラム化された。オンターゲット活性がわずか10 pMのdsDNA標的の検出をもたらした一方で、オフターゲット活性は、1 nMの対照DNAであっても観察されなかった。彼らは、Cas12aのトランス切断がssDNA基質に限定されず、Cas12aベースの診断をdsDNA基質に拡張することができることを実証した。しかしながら、この検出方法は、依然としてdsDNA標的を必要とし、したがって、事前に逆転写工程が追加されない限りRNA標的を検出することができない。
他にも標準的な診断技術、例えば、PCR及びLAMPが存在する。本発明の技術の別の利点は、それがラテラルフローアッセイを使用して実行することができることである。現行の技術も、通常、Casヌクレアーゼに付随する、PCR又はLAMPでは達成するのがより困難な単一ヌクレオチドの分解能を提供することができる。
使用される構成要素に関するこの態様の基本原理は上記の通りであるが、本発明のこの態様において、上記細胞、組織、及び/又は試料における上記少なくとも1種の標的RNAの検出は、上記試料における上記少なくとも1種の標的核酸の上記ヌクレアーゼ酵素による切断の検出に依存し、したがって、上記少なくとも1種の標的核酸の上記切断を検出することにより、上記細胞、組織、及び/又は試料における上記少なくとも1種の標的RNAが検出される。
CasΩは、RNA標的を認識し得て、ssDNA及びdsDNAを分解させ得る。このことは、逆転写工程なしにヌクレアーゼがRNAを直接検出するのを可能にし、CasΩは、安価かつ安定なssDNA及びdsDNAを分解させる。先導技術であるCas13は、RNAを付随的に切断する。付随するRNAレポーターは、ssDNA又はdsDNAと比べて合成するのにより費用がかかり、安定性が低く、CasΩの直接的な利点を示している。さらに、dsDNAレポーターを使用する能力は、例えば、複数のフルオロフォアと複合体を形成したdsDNAオリガミを作製することによる、切断活性の読み出しを促進する方法を可能にする。
本発明の方法に好ましいin vitro診断フォーマットの例は、ラテラルフローアッセイである。ラテラルフローアッセイは、当業者に既知であり、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)と同じ原理で機能する。基本的にこれらの試験では、液体試料を視覚的な陽性又は陰性結果を示す反応性分子と共にパッドの表面に沿って流す。
したがって、少なくとも1種のレポーター核酸の上記切断、分割、及び/又はニッキングを検出する工程が、好適な標識、例えば、色素、フルオロフォア(例えば、蛍光検出又はラマン分光法により検出される)、若しくは電気伝導度のシグナルの変化を検出すること、及び/又は上記切断された少なくとも1種のレポーター核酸の断片自体を検出することを含む、本発明による方法が好ましい。
本発明の別の重要な態様は、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの発現を調節する方法であって、上記少なくとも1種の標的RNAが、mRNA、非コードRNA、及びウイルスRNA分子から選択され、上記方法が、a)上記細胞、組織、細胞核、及び/又は試料を、b)少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素と少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとの間の少なくとも1種の複合体と接触させる工程であって、上記少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAが、少なくとも1種の標的RNAに少なくとも90%相補的な配列を含む、工程と、c)少なくとも1種の標的RNAにb)の複合体を結合させ、これにより、少なくとも1種の標的RNAの安定性、プロセシング、局在、又は翻訳を変化させる工程とを含み、これによって、c)における結合により、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの発現が調節される、方法である。
CasΩによるRNAの標的化は、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの翻訳に影響を及ぼすために使用され、ここで、上記少なくとも1種の標的RNAは、mRNA、非コードRNA、及びウイルスRNA分子から選択される。本発明のこの態様は、例えば、抗ウイルス薬又は他の治療物質の基礎研究、ハイスループットスクリーニングに使用され得る多重化可能かつ配列特異的な遺伝子サイレンシングも可能にする。したがって、関心対象の標的RNAを標的とすることによって、例えば、mRNA安定性、プロセシング、又は翻訳を変化させることにより、配列特異的な様式で遺伝子発現が調節される。
上記したように、本発明の方法に使用される核酸分子のハイブリダイズする部分は、少なくとも80%相補的、好ましくは90%を超えて相補的、より好ましくは95%を超えて相補的であり、最も好ましくは互いに100%相補的である。したがって、標的RNAと特異的にハイブリダイズする上記ガイドRNAの上記部分/一部のヌクレオチド配列は、少なくとも80%相補的、好ましくは90%を超えて相補的、より好ましくは95%を超えて相補的となるように、作製及び/又は改変され得て、最も好ましくは標的RNAに100%相補的である。
各相補性及びアッセイ条件を適用する場合、本発明の方法は、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの発現を調節するために使用され得る。好ましくは、上記少なくとも1種の標的RNAは、発現の調節が細胞、組織、細胞核、及び/又は試料に対して有益な効果をもたらすRNA、例えば、mRNA、非コードRNA、及びウイルスRNA分子から選択される。本発明によるこの方法では、細胞、組織、細胞質、細胞核、及び/又は試料は、本発明による少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素と少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとの間の少なくとも1種の複合体と接触される。少なくとも1種の標的RNAへの複合体の結合により、少なくとも1種の標的RNAの安定性、プロセシング、又は翻訳が変化し、したがって、複合体の結合により、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの発現が調節される。方法の構成要素及び条件は上記したものと概して同じであるのと同時に、上記のような少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素と少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとの間で形成される複合体は、標的核酸を切断するCasΩ酵素の能力とは無関係に、事前選択されたガイドRNAの上記のように設計された配列に基づいて標的RNAに結合しており、この柔軟性は、上記少なくとも1種の標的RNAへの結合のために使用される。したがって、この態様において、CasΩポリペプチドは、ヌクレアーゼ活性が低減又は除去されたヌクレアーゼドメイン(例えば、RuvC又はRuvC様ドメイン)を含有するように改変され得る。ヌクレアーゼドメインは、既知の方法、例えば、部位特異的変異誘発、PCR媒介変異誘発、及び全遺伝子合成、並びに当該技術分野において既知の他の方法を使用して、1つ以上の欠失変異、挿入変異、及び/又は置換変異により改変され得る。
好ましくは、CasΩポリペプチド又はその断片若しくはバリアント、及びエフェクタードメインを含む融合タンパク質がこの態様において提供される。CasΩポリペプチドは、ガイドRNAにより標的部位に誘導され得て、その部位でエフェクタードメインが、標的とされる核酸配列を改変し得るか、又はそれに影響を及ぼし得る。エフェクタードメインは、切断ドメイン、RNA修飾ドメイン、翻訳活性化ドメイン、翻訳抑制ドメイン、プロセシング/スプライシング因子、RNA局在に影響を及ぼすドメイン、又はこれらの機能のいずれかに影響を及ぼすタンパク質を動員するドメインであり得る。融合タンパク質は、核局在化シグナル、プラスチドシグナルペプチド、ミトコンドリアシグナルペプチド、複数の細胞内位置へのタンパク質輸送が可能なシグナルペプチド、細胞膜透過性ドメイン、又はマーカードメインから選択される少なくとも1つの追加のドメインを更に含み得て、これらのいずれかは、融合タンパク質のN末端、C末端、又は内部位置に存在し得る。CasΩポリペプチドは、融合タンパク質のN末端、C末端、又は内部位置に存在し得る。CasΩポリペプチドは、エフェクタードメインに直接融合され得るか、又はリンカーと融合され得る。特定の実施形態において、CasΩポリペプチドをエフェクタードメインと融合させるリンカー配列は、少なくとも1アミノ酸長、2アミノ酸長、3アミノ酸長、4アミノ酸長、5アミノ酸長、6アミノ酸長、7アミノ酸長、8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長、15アミノ酸長、20アミノ酸長、25アミノ酸長、30アミノ酸長、40アミノ酸長、又は50アミノ酸長であり得る。例えば、リンカーは、1アミノ酸長~5アミノ酸長、1アミノ酸長~10アミノ酸長、1アミノ酸長~20アミノ酸長、1アミノ酸長~50アミノ酸長、2アミノ酸長~3アミノ酸長、3アミノ酸長~10アミノ酸長、3アミノ酸長~20アミノ酸長、5アミノ酸長~20アミノ酸長、又は10アミノ酸長~50アミノ酸長の範囲であり得る。
上記ヌクレアーゼが核局在化シグナル(NLS)を含む、本発明による複合体が好ましく、各シグナルは、本明細書に記載されており、当該技術分野において既知である。核局在化シグナルを含む上記融合ヌクレアーゼ及びそれと共に形成される本明細書に記載される複合体は、本発明の他の実施形態である。あるいは、NLSは含まれなくてもよく、これは、真核生物における核小体DNA又はミトコンドリアDNAの付随的な切断又は分解を予防する利点を有する。
次に、本発明の別の重要な態様は、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの配列を編集する方法であって、上記少なくとも1種の標的RNAが、mRNA、非コードRNA、及びウイルスRNA分子から選択され、上記方法が、a)上記細胞、組織、細胞核、及び/又は試料を、b)少なくとも1種のRNA修飾酵素と複合体を形成した、改変されており、触媒活性のない少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素と、少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとの間の少なくとも1種の複合体と接触させる工程であって、上記少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAが、少なくとも1種の標的RNAと少なくとも90%相補的な配列を含む、工程と、c)少なくとも1種の標的RNAにb)の複合体を結合させ、上記少なくとも1種のRNA修飾酵素により少なくとも1種の標的RNAを編集する工程とを含む、方法に関する。
上記したように、本発明の方法に使用される核酸分子のハイブリダイズする部分は、少なくとも80%相補的、好ましくは90%を超えて相補的、より好ましくは95%を超えて相補的であり、最も好ましくは互いに100%相補的である。したがって、標的RNA及び/又はrPAMと特異的にハイブリダイズする上記ガイドRNAの上記部分/一部のヌクレオチド配列は、少なくとも80%相補的、好ましくは90%を超えて相補的、より好ましくは95%を超えて相補的となるように、作製及び/又は改変され得て、最も好ましくは標的RNAに100%相補的である。
本発明のこの態様において、複合体は、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの配列を編集するために使用され、ここで、上記少なくとも1種の標的RNAは、mRNA、非コードRNA、及びウイルスRNA分子から選択される。例えば、種々の遺伝性疾患は、根底にあるDNAではなくRNAを編集することにより修正され得て、これにより、ゲノムの永続的な編集を引き起こすことなく疾患を処置する手段が提供される。天然のRNA修飾酵素(ADAR)を動員する改変されたCas9及びCas13ヌクレアーゼ並びにオリゴヌクレオチドを含む編集手法は、当該技術分野においてほとんど存在しない。
好ましくは、CasΩポリペプチド又はその断片若しくはバリアント、及びエフェクタードメインを含む融合タンパク質がこの態様において提供される。CasΩポリペプチドは、ガイドRNAにより標的部位に誘導され得て、その部位でエフェクタードメインが標的とされる核酸配列を改変し得る。融合タンパク質は、核局在化シグナル、プラスチドシグナルペプチド、ミトコンドリアシグナルペプチド、複数の細胞内位置へのタンパク質輸送が可能なシグナルペプチド、細胞膜透過性ドメイン、又はマーカードメインから選択される少なくとも1つの追加のドメインを更に含み得て、これらのいずれかは、融合タンパク質のN末端、C末端、又は内部位置に存在し得る。CasΩポリペプチドは、融合タンパク質のN末端、C末端、又は内部位置に存在し得る。CasΩポリペプチドは、エフェクタードメインに直接融合され得るか、又はリンカーと融合され得る。特定の実施形態において、CasΩポリペプチドをエフェクタードメインと融合させるリンカー配列は、少なくとも1アミノ酸長、2アミノ酸長、3アミノ酸長、4アミノ酸長、5アミノ酸長、6アミノ酸長、7アミノ酸長、8アミノ酸長、9アミノ酸長、10アミノ酸長、15アミノ酸長、20アミノ酸長、25アミノ酸長、30アミノ酸長、40アミノ酸長、又は50アミノ酸長であり得る。例えば、リンカーは、1アミノ酸長~5アミノ酸長、1アミノ酸長~10アミノ酸長、1アミノ酸長~20アミノ酸長、1アミノ酸長~50アミノ酸長、2アミノ酸長~3アミノ酸長、3アミノ酸長~10アミノ酸長、3アミノ酸長~20アミノ酸長、5アミノ酸長~20アミノ酸長、又は10アミノ酸長~50アミノ酸長の範囲であり得る。標的編集を誘導し得て、コドンの変化及び翻訳タンパク質における異なるアミノ酸をもたらす、RNA修飾酵素(例えば、ADAR)に融合された触媒的に不活性化されたバージョンのCasΩの融合物が好ましい。
上記少なくとも1種のガイドRNAに依存したCasΩヌクレアーゼ酵素複合体の上記少なくとも1種の標的RNAへの結合は、当業者に既知の任意の好適な検出方法により検出され得て、ヌクレアーゼに対する抗体及び関心対象のRNA配列に対するRT-PCRプライマーを使用するクロマチン免疫沈降(ChIP)法が含まれてもよい。抗体は、タンパク質-RNA複合体を他のタンパク質-RNA複合体から選択的に沈殿させるために使用される。PCRプライマーは、標的RNA配列の特異的な増幅及び検出を可能にする。定量PCR(qPCR)法は、標的核酸配列の量が定量化されるのを可能にする。ChIPアッセイは、アレイベースのフォーマット(ChIP-on-chip)又は免疫沈殿タンパク質により捕捉された標的RNAから逆転写されたDNAの直接配列決定(ChIP-seq)に適している。
本発明による方法の好ましい実施形態において、上記少なくとも1種の標的RNAは、疾患状態、例えば、遺伝的障害を示す細胞、増殖性障害を示す細胞、例えば、癌細胞、自己抗体を産生する免疫細胞、細菌病原体又はウイルス病原体に感染した細胞、細菌病原体、原生動物病原体、微生物叢の細胞、及び汚染性細菌又は古細菌からなる群から選択される細胞に特異的な核酸配列を含む。
本発明による方法の別の好ましい実施形態において、上記少なくとも1種の標的RNAは、一本鎖であるか、又は最初は二本鎖である。本発明の文脈において、標的RNAは、本発明による方法を使用して検出されるべき関心対象の任意のRNAである。通常、かつ好ましくは、標的RNAは、一本鎖RNA分子、例えば、mRNA、ウイルスRNA、又は非コードRNAである。RNAは、天然起源であり得るか、又は人工的に作製され得る。一本鎖標的RNAは、ヒト細胞、動物細胞、植物細胞、免疫細胞、癌細胞、感染細胞、若しくは病変細胞由来であり得て、及び/又はウイルス、寄生虫、蠕虫、真菌、原生動物、細菌、若しくは病原菌に由来し得る。
本発明による方法の好ましい実施形態において、上記方法は、in vivoで、例えば、細胞、組織、若しくは細菌、真菌、植物、若しくは動物で、又はin vitroで、試料で実行される。試料は、固体又は液体試料であり得て、細胞を含む試料及び無細胞in vitro試料から選択され得る。細胞は、好ましくは植物細胞又は動物細胞、例えば、哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞である。試料は、好ましくは、組織試料、唾液、血液、血漿、血清、便、尿、痰、粘液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、腹水、胸水、漿液腫、膿、又は皮膚若しくは粘膜表面のスワブから得られる生体試料であり得る。一態様において、細胞、組織、及び/又は試料は、粗製の試料であり得て、及び/又はここで、1種以上の核酸分子は、本方法の適用前に試料から精製若しくは増幅されない。別の態様において、細胞、組織、及び/又は試料は、精製されたか、若しくは部分的に精製(濃縮)された試料であり得て、及び/又は1種以上の核酸分子は、本方法の適用前に試料から精製若しくは増幅される。別の態様において、細胞は、環境試料、例えば、空気、天然水域(例えば、川、湖、海)、廃水、又は土壌の一部であり得る。
本発明による方法は、部分的又は完全に自動化され得て、例えば、完全又は部分的にロボットにより実行され得る。本発明による方法は、実行及び/又は得られる結果の解析のためのコンピュータ及び対応するデータベースの使用を含み得る。
本発明による方法の好ましい実施形態において、各々が1つ以上の試料、組織、及び/又は細胞における、好ましくは、幾つか又はさらには多数の試料、組織、及び/又は細胞における上記標的RNAの異なる部分と特異的にハイブリダイズする2種以上のガイドRNAが、選択され、設計され、作製(生成)され(上記を参照のこと)、使用される。
本発明による遺伝子発現の改変、RNA編集、又はプログラム化可能なウイルス若しくは細胞除去の文脈において、本発明の系は、例えば、単一のプラスミドに複数のガイドRNAをクローニングすることにより2個~7個の遺伝子座を標的とし得る。ガイドRNAは、別個のプロモーターから個別に発現され得るか、又は単一のプロモーターから転写されるCRISPRアレイに組み込まれ得る。これらの多重ガイドRNAベクターは、おそらく、本発明の態様で使用されるために上述のCasΩヌクレアーゼと好適に組み合わされ得る。
本発明による方法の別の態様において、上記方法は、少なくとも部分的に定量的解析を含む。したがって、上記試料、組織、及び/又は細胞における切断された核酸の量を検出することを含む工程が好ましい。好ましくは、試料、組織、及び/又は細胞毎の量は、対照と比較して決定される。定量化アッセイは、当業者に既知であり、これには、吸光度アッセイ(例えば、UV、分光測定法)及び/又は蛍光アッセイ、並びにリアルタイムPCRが含まれてもよい。アッセイは、(例えば、使用されるアッセイの結果として、又は「最後」に)単一の値として定量化される核酸の量(複数の場合もある)及び/又は比率(複数の場合もある)を定量化し得るか、又は核酸の経時的な変化をモニタリングし得て、すなわち、好ましくは特に対照と比較される場合の上記切断された核酸(複数の場合もある)の量の変化を検出することを更に含む。
本発明による方法の更に別の態様において、複数の標識及び/又はマーカーが使用される。マーカーは、アッセイの一部を構成する核酸分子及びタンパク質構成要素(例えば、ヌクレアーゼ及び/又は融合物)の両方に対して使用され得る。標識及びマーカーは、アッセイの構成要素(特に核酸及び/又はタンパク質)に含まれ得て、加えて、共有結合又は非共有結合のいずれかにより結合している部分を構成し得る。
次に、本発明の別の態様は、細胞、組織、又は生物、例えば、哺乳動物、好ましくはヒトの医学的状態を検出する方法であって、上記状態が、少なくとも1種の標的RNAの存在、発現、及び/又はそれにおける変異(複数の場合もある)に関連する、方法に関する。本方法は、上記のような本発明による方法を実行する工程と、検出される上記少なくとも1種の標的RNAの存在、発現、及び/又はそれにおける変異(複数の場合もある)により引き起こされる核酸切断に基づいて上記医学的状態を検出する工程とを含む。
本発明を使用して検出され得る医学的状態は、少なくとも1種の標的RNA分子に関連する医学的状態である。前述したように、標的RNAは、それ自体が状態又は疾患のいずれか、例えば、感染症の場合、例えば、試験される細胞、組織、及び/又は試料のウイルス感染症、例えば、コロナウイルス感染症、細菌感染症及び/又は真菌感染症の原因であり得る。他の状態は、少なくとも1種の標的RNA分子により間接的に関連し得る(例えば、異常に転写され(存在するか、又は見つかる)、発現され、プロセシング(例えば、スプライシング)され、及び/又は変異しているRNAの場合)。標的RNA分子は、健常な対照(例えば、健常試料又は病変試料の群に基づく対照)と比較して増加又は減少した量で存在し得る。
本発明の方法に好ましいin vitro診断フォーマットの例は、ラテラルフローアッセイである。ラテラルフローアッセイは、当業者に既知であり、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)と同じ原理で機能する。基本的にこれらの試験では、液体試料を視覚的な陽性又は陰性結果を示す反応性分子と共にパッドの表面に沿って流す。
上記したように、本発明による方法の好ましい実施形態において、少なくとも1種の標的RNAが、工程a)の前に上記細胞、組織、及び/又は試料に添加され得て、及び/又はここで、上記方法は、DNAのRNAへのin vitroでの転写、RNAのDNAへの逆転写、及び最適には、その後の上記DNAのRNAへのin vitroでの転写から選択される少なくとも1つの工程を更に含む。これは、好適な又は所望のシグナル増幅をもたらすために行われ得る。通常、上記細胞、組織、又は試料における標的RNAは、約500 fM~約1 μM、例えば、約500 fM~約1 nMの範囲で存在し、好ましくは、約1 pM~約1 nMの範囲で存在する。最適には、本方法は、細胞、組織、及び/又は試料毎に単一の分子を検出し得る。
次に、本発明の別の重要な態様は、医薬品における本発明の使用に関する。
本発明の一態様は、望ましくない細胞又はウイルスを特異的に不活性化する方法であって、上記細胞又はウイルスを本明細書に記載される本発明による複合体と接触させる工程を含み、ガイドRNA、特にその配列が、不活性化されるべき上記望ましくない細胞若しくはウイルス又は本明細書に記載されるような編集されていない細胞に対して特異的に選択/設計される、方法である。
本発明の別の態様は、疾患の予防及び/又は処置に使用される、例えば、感染症及び/又は増殖性障害等の遺伝的障害、例えば、癌、真菌感染症、原生動物感染症、細菌感染症、及び/又はウイルス感染症の予防及び/又は処置に使用される、本明細書に記載される本発明による複合体である。
実施形態は、細胞からの感染性DNA又はRNAウイルスの除去及び癌変異を含有するという理由での望ましくない細胞の(特異的な)殺傷である。
本発明の更に別の態様は、疾患、例えば、感染症及び/又は増殖性障害等の遺伝的障害、例えば、癌、真菌感染症、原生動物感染症、細菌感染症、及び/又はウイルス感染症、自己免疫疾患を予防及び/又は処置する方法であって、かかる処置を必要とする対象に有効量の本発明による複合体を投与することを含む、方法である。
本発明は、配列特異的な細胞殺傷に使用され得る。配列特異的な様式で細胞を殺傷することが望ましい多数の用途が存在する。具体例は、癌細胞、自己抗体を産生する免疫細胞、細菌若しくはウイルス病原体に感染した細胞、細菌病原体、又は産業用培養物中の汚染性細菌若しくは古細菌の選択的殺傷である。核における標的RNA認識(例えば、真核生物の核局在化シグナルに融合されたCasΩを使用する)は、広範囲のdsDNA切断及び細胞の殺傷をもたらす。標的RNAが細胞又は試料に存在しないか、又は変異を含有する場合、細胞は温存される。この効果は、特に癌細胞、細菌、及び古細菌に適用される。真核生物におけるプログラム化可能かつ配列特異的な殺傷のための手法は存在せず、その代わりに、この分野は編集効率を高める改善に焦点を置いてきた。
したがって、CasΩは、原核細胞及び真核細胞の配列特異的な殺傷/不活性化を達成するための最初の手段を提供する。これは、真核生物において癌細胞をそれらに特有の変異に基づいて殺傷するため、及び特異的な免疫細胞をそれらの特異的抗体をコードする分化した遺伝物質に基づいて殺傷するための独特の手段を提供し得る。この手法は、例えば、特定の自己免疫障害を処置するための新規治療法をもたらし、集団における編集された細胞を濃縮するための標準的な手法になり得る。
本発明の手法は、感染性疾患に対抗するためにも使用される。ウイルス又は細菌に感染した真核細胞へのCasΩの送達は、ウイルス又は細菌RNAを認識し、次いで、ウイルス又は細菌DNAを破壊することにより免疫系を補助する。これらの処置は、感染した宿主細胞の死滅をもたらし、これにより、疾患の広がりを停止させ、更に免疫系を活性化する。CasΩが選択的であるため、相補的なウイルス又は細菌RNAを含有しない非感染細胞への送達は、活性な反応を引き起こさない。
本発明の手法は、産業及び医療に重要な微生物集団を処理/調節/操作するためにも使用され、例えば、哺乳動物、例えば、ヒトの微生物相内の細菌のある特定の菌株が肥満と相関する場合、この菌株は、別のin situ微生物集団を殺傷することなく細胞死の標的とされる。かかる処置は、細菌の抗生物質耐性株に対抗するための手段を提供することもできるであろう。
この態様において、複合体又はそれの全体若しくは一部をコードする核酸が、予防及び/又は処置における実際の活性成分として使用される。複合体の患者、細胞、又は試料への送達は、任意の好適な方法で、例えば、本発明による少なくとも1種の複合体の単離された成分(ポリペプチド及び/又は核酸)を好適な安定剤又は担体と共に含む医薬組成物としてなされ得る。別の実施形態は、少なくとも1種の核酸ベクターにコードされる複合体の患者、細胞、組織、試料、又は核への提供である。これらの医薬組成物及びその使用は、本発明の好ましい実施形態となる。この態様は、処置をモニタリングする工程も含む。
別の態様は、上記のように遺伝子編集の全体的な結果を改善するための編集されていない細胞の対抗選択のための複合体の使用及び本発明の方法である。この手法により、標的RNA配列を破壊し、rPAMを破壊し、その接近可能性を断ち、及び/又はその転写を阻害する、導入された任意の所望の編集を選択することができる。
次に、本発明の更に別の態様は、細胞、組織、又は生物、例えば、哺乳動物、好ましくはヒトにおける疾患又は医学的状態を処置する方法であって、上記状態が、少なくとも1種の標的RNAの存在、発現、及び/又はそれにおける変異(複数の場合もある)に関連する、方法に関する。
この態様は、本発明の診断手法と別個の「定期的な」医学的処置との組み合わせであり、処置をモニタリングするための使用も包含する。本方法は、上記細胞、組織、又は生物に好適な処置、特に特異的な医学的処置を提供する工程と、上記のように本発明による方法を実行する工程と、検出される上記少なくとも1種の標的RNAの存在、発現、及び/又はそれにおける変異(複数の場合もある)に基づいて上記疾患又は医学的状態の処置を修正する工程とを含む。本発明を使用して検出され得る医学的状態は、少なくとも1種の標的RNA分子に関連する医学的状態である。前述したように、標的RNAは、それ自体が状態又は疾患のいずれか、例えば、感染症の場合、例えば、試験される細胞、組織、及び/又は試料のウイルス感染症、例えば、コロナウイルス感染症、細菌及び/又は真菌感染の原因であり得る。他の状態は、少なくとも1種の標的RNA分子により間接的に関連し得る(例えば、異常に転写され(存在するか、又は見つかる)、発現され、プロセシングされ、及び/又は変異しているRNAの場合)。標的RNA分子は、健常な対照(例えば、健常試料又は病変試料の群に基づく対照)と比較して増加又は減少した量で存在し得る。
本発明による処置方法の好ましい実施形態において、上記少なくとも1種の標的RNAは、一本鎖であるか、又は最初は二本鎖である。一本鎖標的RNAは、ヒト細胞、動物細胞、植物細胞、免疫細胞、癌細胞、感染細胞、若しくは病変細胞に由来し得て/関連し、及び/又はウイルス(上記を参照のこと)、寄生虫、蠕虫、真菌、原生動物、細菌、若しくは病原菌(上記を参照のこと)に由来し得る。本発明による方法の好ましい実施形態において、少なくとも1種の標的RNAは、遺伝子に由来/関連し、その転写及び/又は発現は、外部要因、例えば、代謝因子若しくはシグナル、ホルモン、病原体、毒素、薬物、加齢、及び/又は生物的ストレス若しくは非生物的ストレスに応答して修飾される。したがって、少なくとも1種の標的RNAは、好ましくは、ウイルス感染症、例えば、コロナウイルス感染症、病原体による感染症、代謝疾患、癌、神経変性疾患、加齢、薬物、及び生物的ストレス又は非生物的ストレスから選択される状態に関連する。通常、標的RNAの存在又はその増加若しくは減少した量は、上記疾患又は状態の存在を示す。本方法の別の態様は、上記個体、患者、又は生物、特に細胞、組織、及び/又は試料が採取されている個体、患者、又は生物の処置の間の上記標的RNAの量又は存在のモニタリングに関する。次いで、主治医はそれに応じて処置を調整し、すなわち、必要に応じて抗ウイルス化学療法薬及び/又は生物学的製剤を更に提供するであろう。この処置スケジュールは、必要に応じて繰り返され得る。
最後に繰り返しになるが、上記と同様に、(例えば、細菌又は真菌の標的核酸に特異的な)設計されたガイドRNAは、抗生物質耐性の特異的なマーカーを同定して、患者に投与するのに最も良い抗生物質レジメンを決定するために、感染性細菌病原体又は感染性真菌病原体(例えば、便試料中のクロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)、痰試料中の緑膿菌)を含有する試料と共に使用され得る。
本発明の別の好ましい態様において、本発明の目的は、標的RNAの検出システムであって、a)上記標的RNAの少なくとも1つの部分に結合するように設計された少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAであって、標的RNAと少なくとも90%相補的な配列を含む、少なくとも1種の事前選択されたガイドRNA、及びb)少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素を含む、検出システムを提供することにより達成される。並行して数種の標的RNAを並行検出するための検出システムであって、上記数種の標的RNAに対する数種のガイドRNAのセットを含む、検出システムが好ましい。別の検出システムは、1つの標的RNA上の幾つかの位置でハイブリダイズする数種のガイドRNAを含む。
本発明の方法に使用される核酸分子のハイブリダイズする部分は、少なくとも80%相補的、好ましくは90%を超えて相補的、より好ましくは95%を超えて相補的であり、最も好ましくは互いに100%相補的である。したがって、標的RNAと特異的にハイブリダイズする上記ガイドRNAの上記部分/一部のヌクレオチド配列は、少なくとも80%相補的、好ましくは90%を超えて相補的、より好ましくは95%を超えて相補的となるように、作製及び/又は改変され得て、最も好ましくは標的RNAに100%相補的である。
本発明のこの態様は、検出システムとして、例えば、診断キットの一部として、本発明による方法を実行するための構成要素、例えば、上記の事前選択されたガイドRNA核酸分子及び少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素を提供する。本システムは、本発明による少なくとも1種の複合体の単離された成分(ポリペプチド及び/又は核酸)を好適な安定剤又は担体と共に含む治療キット又は医薬組成物として使用され得る。別の実施形態は、少なくとも1種の核酸ベクターにコードされる複合体の患者、細胞、組織、試料、又は核への提供である。
好ましくは、上記システムは、1つ以上の容器で提供され、好適な酵素、緩衝液、及び賦形剤、並びに使用説明書を含む。成分は少なくとも部分的に基質上に固定化され得て、ここで、上記基質は、上記細胞、組織、及び/又は試料に曝露され得る。検出システムは、上記基質、例えば、軟質材料の基質、例えば、チップ上の複数の個々の位置に適用され得る。軟質材料の基質は、紙基質、布基質、又は可撓性ポリマーベースの基質であり得る。
本発明の更に別の態様は、本明細書にきさいされる方法に従って、dsDNA、ssDNA、及びRNAから選択される核酸分子を切断するための、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAを検出するための、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの発現を調節するための、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの配列を編集するための、望ましくない細胞若しくはウイルスを特異的に不活性化するための、又は調製物から望ましくない汚染物質を除染するための、本明細書に記載される本発明による複合体の使用に関する。好ましくは、本発明の目的は、上記の態様のいずれかによる方法を実行するための、特に上記のように、標的RNA、ウイルス標的RNA、疾患マーカーから転写される標的RNAを検出するための、疾患の処置のための、及び/又は1種以上の標的RNAの発現プロファイルを生成するためのCasΩ/ガイドRNA核酸複合体の使用を提供することにより達成される。
本明細書に記載される実施形態は、広範囲の用途、例えば、処置経過を知らせるための医学的状態の診断、急性敗血症等における健康転帰又は疾患に関連するSNPの同定、病原体の正体、毒性因子、耐性マーカー、SNPの決定、ウイルス検出、すなわち、同定及び/又はウイルスバリアント(例えば、本明細書において開示されるSARS CoV-2を参照のこと)、生検等の癌試料の癌診断、変異及び/又はSNPの決定、飲用水中の汚染微生物の同定、発酵又は細胞培養におけるウイルス又は汚染微生物の同定、植物若しくは昆虫変異体の同定、又は(例えば、消化管、土壌、水中の)混合集団における重要な微生物メンバーの同定、例えば、マイクロバイオーム及び/又は微生物指標(すなわち、非侵襲的測定のレポーターとして機能する共生細菌)の解析、特に正体、相対存在量、耐性マーカー、代謝遺伝子、門/属/種/菌株に特異的な遺伝子等、並びにin vivoでの、例えば、生物体全体での、又は例えば、環境から採取された試料に基づくウイルス又は細菌の拡散(例えば、廃水試料中に検出されるウイルス又は耐性菌の拡散等)の追跡に使用され得る。
本発明の文脈において、明示的に別様に言及されない限り、用語「約」は、所与の値+/-10%を意味する。
Cas12ヌクレアーゼ(V型CRISPR-Cas系)は、dsDNAを認識し、これにより、結合したdsDNAの切断及びその後のssDNAの分解を誘発することが知られている。Cas12aは代表例である。確立されたCasヌクレアーゼであるCas12aとの類似性を考慮して、CasΩはDNAを標的とすると推定された。Cas12ヌクレアーゼのうちの唯一の例外は、RNAを認識し、RNA及びssDNAを分解させるCas12gである。本明細書において使用されるCasΩは、その類似性に基づいて最初はCas12aと分類されたが、CasΩは異なるドメインを有し、場合により、Cas12aと共に現れる。
本明細書において述べたように、本発明は、特に以下の項目に関する。
項目1.CasΩヌクレアーゼと少なくとも1種の標的RNAへの結合のために設計された少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとを含む複合体。
項目2.前記ガイドRNAに少なくとも90%相補的な配列を有する標的RNA分子に更に結合しており、前記標的RNAが、好ましくは少なくとも1つのrPAMと隣接している、請求項(項目)1に記載の複合体。
項目3.前記ガイドRNAが、細菌に特異的となるように選択された配列、ウイルスに特異的となるように選択された配列、真菌に特異的となるように選択された配列、原生動物に特異的となるように選択された配列、遺伝的障害に特異的となるように選択された配列、及び増殖性障害に特異的となるように選択された配列を含む、項目1又は2に記載の複合体。
項目4.前記ヌクレアーゼが核局在化シグナルを含む、項目1~3のいずれか1項に記載の複合体。
項目5.dsDNA、ssDNA、及びRNAから選択される核酸分子を切断する方法であって、a)少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素を提供する工程と、b)少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAを提供する工程と、c)前記少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素と前記少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとの間で複合体を形成させる工程と、d)c)の前記複合体を前記少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAに基づいて標的RNAに結合させる工程と、e)dsDNA、ssDNA、及びRNAから選択される前記核酸分子を前記少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素により切断する工程とを含む、方法。
項目6.細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAを検出する方法であって、前記方法が、a)少なくとも1種のssDNA、dsDNA、又はRNAレポーター核酸を前記細胞、組織、細胞核、及び/又は試料に提供する工程と、b)前記細胞、組織、細胞核、及び/又は試料を、少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素と少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとの間の少なくとも1種の複合体と接触させる工程であって、前記少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAが、前記標的RNAに少なくとも90%相補的な配列を含む、工程と、c)前記少なくとも1種のssDNA、dsDNA、又はRNAレポーター核酸の切断、分割、及び/又はニッキングを検出する工程であって、前記少なくとも1種のレポーター核酸の前記切断を検出することにより、前記細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における前記少なくとも1種の標的RNAが検出される、工程とを含む、方法。
項目7.前記少なくとも1種のレポーター核酸の前記切断、分割、及び/又はニッキングを検出する工程が、好適な標識、例えば、色素、フルオロフォア、若しくは電気伝導度のシグナルの変化を検出すること、及び/又は前記切断された少なくとも1種のレポーター核酸の断片自体を検出することを含む、項目6に記載の方法。
項目8.前記少なくとも1種の標的RNAが、対照標的RNAと比較して少なくとも1つの変異を含む変異型標的RNAである、項目6又は7に記載の方法。
項目9.細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの発現を調節する方法であって、前記少なくとも1種の標的RNAが、mRNA、非コードRNA、及びウイルスRNA分子から選択され、前記方法が、a)前記細胞、組織、細胞核、及び/又は試料を、少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素と少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとの間の少なくとも1種の複合体と接触させる工程であって、前記少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAが、前記少なくとも1種の標的RNAに少なくとも90%相補的な配列を含む、工程と、c)前記少なくとも1種の標的RNAにb)の複合体を結合させ、これにより、前記少なくとも1種の標的RNAの安定性、プロセシング、局在、又は翻訳を変化させる工程とを含み、これによって、c)における結合により、前記細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの発現が調節される、方法。
項目10.細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの配列を編集する方法であって、前記少なくとも1種の標的RNAが、mRNA、非コードRNA、及びウイルスRNA分子から選択され、前記方法が、a)前記細胞、組織、細胞核、及び/又は試料を、少なくとも1種のRNA修飾酵素と複合体を形成した、改変されており、触媒活性のない少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素と、少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとの間の少なくとも1種の複合体と接触させる工程であって、前記少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAが、前記少なくとも1種の標的RNAに少なくとも90%相補的な配列を含む、工程と、c)前記少なくとも1種の標的RNAにb)の複合体を結合させ、前記少なくとも1種のRNA修飾酵素により前記少なくとも1種の標的RNAを編集する工程とを含む、方法。
項目11.前記少なくとも1種の標的RNAが、疾患状態、例えば、遺伝的障害を示す細胞、増殖性障害を示す細胞、例えば、癌細胞、自己抗体を産生する免疫細胞、細菌病原体又はウイルス病原体に感染した細胞、細菌病原体、原生動物病原体、微生物叢の細胞、及び汚染性細菌又は古細菌からなる群から選択される細胞に特異的な核酸配列を含む、項目5~10のいずれか1項に記載の方法。
項目12.疾患の予防及び/又は処置に使用される、例えば、感染症及び/又は増殖性障害等の遺伝的障害、例えば、癌、真菌感染症、原生動物感染症、細菌感染症、及び/又はウイルス感染症の予防及び/又は処置に使用される、項目3又は4に記載の複合体。
項目13.望ましくない細胞又はウイルスを特異的に不活性化する方法であって、前記細胞又はウイルスを項目1~4のいずれか1項に記載の複合体と接触させる工程を含み、前記ガイドRNAが、不活性化されるべき前記望ましくない細胞又はウイルスに対して特異的に選択される、方法。
項目14.疾患、例えば、感染症及び/又は増殖性障害等の遺伝的障害、例えば、癌、真菌感染症、原生動物感染症、細菌感染症、及び/又はウイルス感染症、自己免疫疾患を予防及び/又は処置する方法であって、かかる処置を必要とする対象に有効量の項目3又は4に記載の複合体を投与する工程を含む、方法。
項目15.dsDNA、ssDNA、及びRNAから選択される核酸分子を切断するための、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAを検出するための、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの発現を調節するための、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの配列を編集するための、望ましくない細胞若しくはウイルスを特異的に不活性化するための、調製物から望ましくない汚染物質を除染するための、又は項目10に記載の方法によって未編集のままである細胞を除去するための項目1~4のいずれか1項に記載の複合体の使用。
項目16.前記ガイドRNA分子が、標的RNAと少なくとも80%まで、好ましくは90%超まで、より好ましくは95%超まで、最も好ましくは100%相補的な配列を含む、項目1~13のいずれか1項に記載の複合体又は方法。
項目17.項目10に記載の方法により編集されなかった望ましくない細胞を特異的に除去、不活性化、及び/又は殺傷する方法であって、前記細胞を項目1~4のいずれか1項に記載の複合体と接触させる工程を含み、前記ガイドRNAが、除去、不活性化、及び/又は殺傷されるべき前記編集されなかった細胞に対して特異的に選択される、方法。
次に、本発明が添付の図を参照して以下の実施例で更に説明されるが、本発明がこれに限定されることを望むものではない。本明細書において引用された全ての参考文献は、本発明の目的のために、引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。本開示は、配列番号1~配列番号67を含む配列表を説明の一部として含み、この配列表も引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。
CasΩはクラス2 V型CRISPR-Casヌクレアーゼ内で3つの異なるクレードを形成する
SmCasΩ、SuCasΩ、及びca40CasΩの代表的ヌクレアーゼにより代表される3つの異なる単系CasΩクレードを含む、クラス2 V型CRISPR-Casタンパク質配列の最尤推定系統樹を作成した。CasΩヌクレアーゼは、Cas12aと最終共通祖先を共有していない。タンパク質のアミノ酸配列は、ClustalΩを使用してアラインメントした。RAxML-NGを使用した系統樹再構築を、以下のパラメーターを使用して行った:
--model JTT+G --bs-metric fbp,tbe --tree pars{60},rand{60} --seed 12345 --bs-trees autoMRE。TnpBアミノ酸配列は外群として機能した。図1も参照のこと。
CRISPR-SuCasΩヌクレアーゼ内のアミノ酸保存性の解析
SuCasΩ系統クレードのヌクレアーゼオーソログは、V型CRISPR-Casヌクレアーゼに共通するRuvC-I触媒モチーフ、RuvC-II触媒モチーフ、及びRuvC-III触媒モチーフを含有する。SuCasΩオーソログは、Cas12a等の非CasΩヌクレアーゼにはない複数の保存されたアミノ酸モチーフを含有する。SuCasΩオーソログは、平均して10%以下の配列同一性をCas12aヌクレアーゼと共有する。16個のSuCasΩオーソログのアラインメント内の各位置でのアミノ酸確率を示す。タンパク質のアミノ酸配列は、ClustalΩを使用してアラインメントした。アミノ酸ロゴ及び対応する確率をWebLogo 3を使用して生成した。
CRISPR-SuCasΩヌクレアーゼにおけるRuvC-IモチーフからRuvC-IIIモチーフまでの間のアミノ酸保存性
SuCasΩ系統クレードのヌクレアーゼオーソログは、例えば、Cas12a等の非CasΩヌクレアーゼと比較して複数の保存されたアミノ酸モチーフの挿入を含む、RuvC-I触媒モチーフからRuvC-II触媒モチーフまでの間の独特のアミノ酸組成を示す。さらに、SuCasΩオーソログは、Cas12a等の非CasΩヌクレアーゼと比較したアミノ酸の欠失を含む、RuvC-II触媒モチーフからRuvC-III触媒モチーフまでの間の独特のアミノ酸組成を示す。相対エントロピーをビットで示す。高いエントロピーは、16個のSuCasΩオーソログのアラインメントに基づいて所与のアミノ酸がオルソロガスモチーフに存在するという高い確実性を示す。タンパク質のアミノ酸配列は、ClustalΩを使用してアラインメントした。アミノ酸ロゴ及び対応するエントロピー値をWebLogo 3を使用して生成した。図2も参照のこと。
CRISPR-SmCasΩヌクレアーゼ内のアミノ酸保存性
SmCasΩ系統クレードのヌクレアーゼオーソログは、V型CRISPR-Casヌクレアーゼに共通するRuvC-I触媒モチーフ、RuvC-II触媒モチーフ、及びRuvC-III触媒モチーフを含有する。SmCasΩオーソログは、Cas12a等の非CasΩヌクレアーゼにはない複数の保存されたアミノ酸モチーフを含有する。SmCasΩオーソログは、平均して10%以下の配列同一性をCas12aヌクレアーゼと共有する。36個のSmCasΩオーソログのアラインメント内の各位置でのアミノ酸確率を示す。タンパク質のアミノ酸配列は、ClustalΩを使用してアラインメントした。アミノ酸ロゴ及び対応する確率をWebLogo 3を使用して生成した。
CRISPR-SmCasΩヌクレアーゼにおけるRuvC-IモチーフからRuvC-IIIモチーフまでの間のアミノ酸保存性
SmCasΩ系統クレードのヌクレアーゼオーソログは、例えば、Cas12a等の非CasΩヌクレアーゼと比較して複数の保存されたアミノ酸モチーフの挿入を含む、RuvC-I触媒モチーフからRuvC-II触媒モチーフまでの間の独特のアミノ酸組成を示す。さらに、SmCasΩオーソログは、Cas12a等の非CasΩヌクレアーゼと比較したアミノ酸の欠失を含む、RuvC-II触媒モチーフからRuvC-III触媒モチーフまでの間の独特のアミノ酸組成を示す。相対エントロピーをビットで示す。高いエントロピーは、36個のSmCasΩオーソログのアラインメントに基づいて所与のアミノ酸がオルソロガスモチーフに存在するという高い確実性を示す。アミノ酸配列は、ClustalΩを使用してアラインメントした。アミノ酸ロゴ及び対応するエントロピー値をWebLogo 3を使用して生成した。図3も参照のこと。
CRISPR-ca40CasΩヌクレアーゼ内のアミノ酸保存性
ca40CasΩ系統クレードのヌクレアーゼオーソログは、V型CRISPR-Casヌクレアーゼに共通するRuvC-I触媒モチーフ、RuvC-II触媒モチーフ、及びRuvC-III触媒モチーフを含有する。ca40CasΩオーソログは、Cas12a等の非CasΩヌクレアーゼにはない複数の保存されたアミノ酸モチーフを含有する。ca40CasΩオーソログは、平均して10%以下の配列同一性をCas12aヌクレアーゼと共有する。15個のca40CasΩオーソログのアラインメント内の各位置でのアミノ酸確率を示す。タンパク質のアミノ酸配列は、ClustalΩを使用してアラインメントした。アミノ酸ロゴ及び対応する確率をWebLogo 3を使用して生成した。
CRISPR-ca40CasΩヌクレアーゼにおけるRuvC-IモチーフからRuvC-IIIモチーフまでの間のアミノ酸保存性
ca40CasΩ系統クレードのヌクレアーゼオーソログは、例えば、Cas12a等の非CasΩヌクレアーゼと比較して複数の保存されたアミノ酸モチーフの挿入を含む、RuvC-I触媒モチーフからRuvC-II触媒モチーフまでの間の独特のアミノ酸組成を示す。さらに、ca40CasΩオーソログは、Cas12a等の非CasΩヌクレアーゼと比較したアミノ酸の欠失を含む、RuvC-II触媒モチーフからRuvC-III触媒モチーフまでの間の独特のアミノ酸組成を示す。相対エントロピーをビットで示す。高いエントロピーは、15個のca40CasΩオーソログのアラインメントに基づいて所与のアミノ酸がオルソロガスモチーフに存在するという高い確実性を示す。タンパク質のアミノ酸配列は、ClustalΩを使用してアラインメントした。アミノ酸ロゴ及び対応するエントロピー値をWebLogo 3を使用して生成した。図4も参照のこと。
CasΩはin vitroでRNAを認識し、RNA、ssDNA、及びdsDNAを切断する
図5に示すように、精製されたSuCasΩ及び設計されたガイドRNA(crRNA)を、非標識の標的又は非標的RNA、並びに標識された非標的一本鎖DNA(ssDNA)、二本鎖DNA(dsDNA)、及び一本鎖RNA(ssRNA)と組み合わせた。(A)RNA標的の存在下でのみ、SuCasΩは、非標的ssDNA、dsDNA、及びssRNAを分解した。(B)非標的RNAの存在下では、SuCasΩは、ssDNA、dsDNA、及びssRNAを分解しなかった。この活性(特にRNA標的の認識及び付随的なdsDNA分解)は、完全にCRISPRヌクレアーゼに固有の活性である。
図5の(A)について、約250 nMのCasΩ:crRNA複合体を、100 nMの非標識の標的ssRNA又は非標的ssRNAのいずれか及び100 nMの標識された付随的基質と混合した(非標的ssDNA、dsDNA、及びssRNA、*は5’FAM標識を示す)。反応をNEB3.1(50 mMのTris-HCl(pH7.9)、100 mMのNaCl、10 mMのMgCl2、100 μg/mLのBSA)中で実行した。反応物をH2Oで10 μLまで希釈し、37℃で1時間インキュベートした。反応物をフェノール:クロロホルム抽出し、その後、12%尿素-PAGEにより分離した。ゲル上のバンドはFAM標識基質のバンドである。図5の(B)について、約250 nMのWT CasΩ:crRNA複合体を、100 nMの非標識の標的ssRNA又は非標的ssRNAのいずれか及び100 nMの5’FAM標識非標的dsDNAと混合した。反応をNEB3.1(50 mMのTris-HCl(pH7.9)、100 mMのNaCl、10 mMのMgCl2、100 μg/mLのBSA)中で実行した。反応物をH2Oで10 μLまで希釈し、37℃で1時間インキュベートした。1分、5分、10分、30分、60分の時点で取り出し、フェノール:クロロホルム抽出によりクエンチし、その後、12%尿素-PAGEにより分離した。ゲル上のバンドはFAM標識基質のバンドである。
RNAにより誘発されるCasΩによるin vitroでのDNA分解はRuvCドメインに依存する
図6に示すように、SuCasΩを、DNA切断に関連するRuvCモチーフ内の2つの部位で変異させた。切断アッセイを前の図で説明したように実施した。この例では、RuvCドメインを変異させることにより、RNAにより誘発されるdsDNAの分解が生じなくなった。約250 nMのE1064A/D1213A CasΩ:crRNA複合体を、100 nMの非標識の標的ssRNA又は非標的ssRNAのいずれか及び100 nMの5’FAM標識非標的dsDNAと混合した。反応をNEB3.1(50 mMのTris-HCl(pH7.9)、100 mMのNaCl、10 mMのMgCl2、100 μg/mLのBSA)中で実行した。反応物をH2Oで10 μLまで希釈し、37℃で1時間インキュベートした。1分、5分、10分、30分、60分の時点で取り出し、フェノール:クロロホルム抽出によりクエンチし、その後、12%尿素-PAGEにより分離した。図6のゲル上のバンドはFAM標識基質のバンドである。
CasΩはin vitroでのRNA標的認識後にssDNAを分解する
RNAにより誘発されるSuCasΩ活性を、非標的ssDNAを用いてin vitroで試験した。ssDNAを蛍光検出のためのフルオロフォアで標識した。結果は、作動されたSuCasΩによってssDNAも分解されることを示す。標的ssDNA及びdsDNAは、SuCasΩ活性を誘発しなかった。図7に示す結果について、約250 nMのCasΩ:crRNA複合体を、100 nMの標識された基質と混合した(標的:ssRNA、ssDNA、又はdsDNA)。反応をNEB3.1(50 mMのTris-HCl(pH7.9)、100 mMのNaCl、10 mMのMgCl2、100 μg/mLのBSA)中で実行した。反応物をH2Oで10 μLまで希釈し、37℃で1時間インキュベートした。反応物をフェノール:クロロホルム抽出し、ホルムアルデヒド中で変性させ、その後、0.5X MOPS緩衝液(10 mMのMOPS(pH7.0)、2.5 mMの酢酸ナトリウム、0.5 mMのEDTA)中での12%尿素-PAGEにより分離した。ゲル上のバンドはFAM標識基質のバンドである。
CasΩはin vitroでのRNA標的認識後にプラスミドDNAを分解する
RNAにより誘発されるSuCasΩ活性を、プラスミドDNAを用いてin vitroで試験した。アガロースゲル上で核酸生成物を泳動し、臭化エチジウムで染色することによりプラスミドを検出した。結果は、作動されたSuCasΩによってプラスミドDNAも分解されることを示す。図8に示す結果について、約100 nMのCasΩ:crRNA複合体を、100 nMの非標識の標的ssRNA又は非標的ssRNAのいずれか及び40 nMの非標的プラスミド(非標的pet27b TTTC)と混合した。反応をNEB3.1(50 mMのTris-HCl(pH7.9)、100 mMのNaCl、10 mMのMgCl2、100 μg/mLのBSA)中で実行した。反応物をH2Oで10 μLまで希釈し、37℃で1時間インキュベートした。反応物をフェノール:クロロホルム抽出し、その後、1%アガロースでの電気泳動により分離した。核酸を臭化エチジウムでの染色により可視化した。
CasΩは大腸菌において標的認識後に増殖を障害する
SuCasΩの活性を、標的プラスミド又は任意のプラスミドで選択することなく評価した。以下を図9に示す:(A~B)crRNAプラスミド及び標的/非標的プラスミドをすでに有する細胞にSuCasΩプラスミドを形質転換したときの形質転換減少倍率。異なるrPAM及び標的ミスマッチを、標的プラスミドでの選択有り又は無しで試験した。標的プラスミドで選択しない場合であっても、SuCasΩは、プラスミド形質転換を低減したが、Cas12aは低減しなかった。(C)異なる選択条件下で異なるヌクレアーゼを発現する大腸菌細胞の増殖の評価。選択抗生物質の非存在下であってもSuCasΩ及びLsCas13aは、増殖を低減したが、LbCas12aは低減しなかった。LsCas13aは、標的認識時に付随的に細胞RNAを分解し、これにより、増殖に対する同様の効果を生じることが知られている。他のヌクレアーゼと比較したSuCasΩによる標的化の影響を、大腸菌で更に評価した。(D)GFP発現を駆動するrecAプロモーターを使用したSOS反応の測定。全て選択抗生物質の非存在下で、GFP蛍光をヌクレアーゼ及びガイドRNAの4時間の誘導後に測定した。SuCasΩのみが非標的対照と比較してSOS反応を有意に誘発した。(E)細胞形態及びDNA含有量の評価。細胞をDNA結合色素であるDAPIで染色し、フローサイトメトリー解析により評価した。SuCasΩによる標的化を用いた細胞のみが、集団の分岐を引き起こし、一部の細胞は糸状になり、一方で他の細胞は小さくなり、DNA含有量が減少していた。両方が広範囲なDNA損傷を反映している。
TXTLにおいてCasΩヌクレアーゼはRNAにより誘発される付随的な活性を示す
RNAにより誘発されるSuCasΩ及びSmCasΩ活性を、蛍光GFPレポーターをコードする非標的プラスミドDNAを用いた無細胞転写-翻訳(TXTL)反応で試験した。SuCasΩ及びSmCasΩヌクレアーゼ及びcrRNAを、プラスミドから発現させた。標的RNAは、反応において別個のプラスミドから発現せたか、又は発現させなかった。結果は、CasΩヌクレアーゼによるRNA認識が、GFPを発現する非標的レポータープラスミドの付随的な分解に起因するGFP蛍光の減少をもたらすことを示す。図10並びに図12~図14及び図16も参照のこと。
例示的な診断的使用:CasΩ及びSARS-CoV-2を認識するように設計されたガイドRNAを、フルオロフォア及びクエンチャーに結合されたdsDNAプローブ並びに患者試料から抽出されたRNAと組み合わせる。RNA試料がSARS-CoV-2 RNAを含有する場合、CasΩ:ガイドRNA複合体によるdsDNAプローブの分解が引き起こされるであろう。
クエンチャーからのフルオロフォアの放出は、蛍光シグナルを生じさせるであろう。これと同じ手法がSARS-CoV-2バリアントを区別するために使用され得る。
配列特異的な殺傷の例:免疫療法の一部としてキメラ抗原受容体を、患者T細胞の天然の受容体遺伝子座に挿入するが、編集は1%の細胞でのみ起こる。CasΩ-NLS及び未編集の遺伝子座を認識する(しかし、編集された遺伝子座は認識しない)ように設計されたガイドRNAを、プラスミドの一過性形質移入又はRNPの送達により導入する。転写されたWT遺伝子座のRNAの認識は、広範囲なdsDNA分解を引き起こし、未編集の細胞を殺傷する。その結果、このとき集団はほぼ100%の編集された細胞を含む。CasΩは、コンジュゲートされたプラスミド又はバクテリオファージ/ファージミドにより病原体にも送達され得て、これにより、微生物集団又はマイクロバイオーム内での配列特異的な殺傷が可能となる。
CasΩヌクレアーゼは広範な標的RNAの濃度を検出することができる
図11は、SuCasΩが標的RNA分子を検出することができることを示す。1×100個~1×109個分子の標的RNAを、1×NEB 3.1緩衝液(NEB B7203)中の100 nMのSuCasΩ-crRNA複合体及び1 μMのDNAse Alert(IDT、11-02-01-04)を用いて試験した。SuCasΩ-crRNA複合体は、SuCasΩヌクレアーゼをcrRNAと室温で30分間インキュベートすることにより形成させた。検出を、それぞれ500/20及び560/20の励起及び発光波長で蛍光を測定することにより室温で1時間実行した。結果は、SuCasΩの活性化が標的RNAの濃度に依存することを示す。CasΩのこの特性は、診断的使用で未知の標的RNA濃度を有する試験試料中のcrRNAにより規定されるRNAの濃度を決定するために利用することができる。
SuCasΩ、SmCasΩ、及びca40CasΩ系統クレードのCasΩヌクレアーゼは無細胞転写-翻訳(TXTL)アッセイにおいてRNAにより誘発されるオンターゲット活性及び付随的なオフターゲット活性を示す
図12に示すように、SuCasΩ系統クレードのCasΩヌクレアーゼは、TXTLにおいてRNAにより誘発されるオンターゲット活性及び付随的なオフターゲット活性を示す(図10も参照のこと)。RNAにより誘発されるca33CasΩ、ca17CasΩ、AbCasΩ、及びSuCasΩの活性を、GFPをコードする標的プラスミドDNA及びmCherry蛍光レポーターをコードする非標的プラスミドDNAを用いて試験した。ca33CasΩ、ca17CasΩ、AbCasΩ、及びSuCasΩヌクレアーゼ、並びに標的化又は非標的化crRNAのいずれかをプラスミドから発現させた。結果は、CasΩヌクレアーゼによるRNA認識が、GFPを発現する標的レポータープラスミド及び同族RNAの分解に起因するGFP蛍光の減少、並びにmCherryを発現する非標的レポータープラスミド及び同族RNAの付随的な分解に起因するmCherry蛍光の減少をもたらすことを示す。
図13に示すように、SmCasΩ系統クレードのCasΩヌクレアーゼは、TXTLにおいてRNAにより誘発されるオンターゲット活性及び付随的なオフターゲット活性を示す(図10も参照のこと)。RNAにより誘発されるca16CasΩ及びSmCasΩの活性を、GFPをコードする標的プラスミドDNA及びmCherry蛍光レポーターをコードする非標的プラスミドDNAを用いて試験した。ca16CasΩ及びSmCasΩヌクレアーゼ、並びに標的化又は非標的化crRNAのいずれかをプラスミドから発現させた。結果は、CasΩヌクレアーゼによるRNA認識が、GFPを発現する標的レポータープラスミド及び同族RNAの分解に起因するGFP蛍光の減少、並びにmCherryを発現する非標的レポータープラスミド及び同族RNAの付随的な分解に起因するmCherry蛍光の減少をもたらすことを示す。
図14に示すように、ca40CasΩ系統クレードのCasΩヌクレアーゼは、TXTLにおいてRNAにより誘発されるオンターゲット活性及び付随的なオフターゲット活性を示す(図10も参照のこと)。RNAにより誘発されるca40CasΩ、ca50CasΩ、及びca134CasΩの活性を、GFPをコードする標的プラスミドDNA及びmCherry蛍光レポーターをコードする非標的プラスミドDNAを用いて試験した。ca40CasΩ、ca50CasΩ、及びca134CasΩヌクレアーゼ、並びに標的化又は非標的化crRNAのいずれかをプラスミドから発現させた。結果は、CasΩヌクレアーゼによるRNA認識が、GFPを発現する標的レポータープラスミド及び同族RNAの分解に起因するGFP蛍光の減少、並びにmCherryを発現する非標的レポータープラスミド及び同族RNAの付随的な分解に起因するmCherry蛍光の減少をもたらすことを示す。
CasΩは大腸菌において標的認識後にT4ファージ増殖を障害する
細菌ウイルス(バクテリオファージ)を不活性化するSuCasΩの能力をプラークアッセイで評価した。図15に示すように、SuCasΩヌクレアーゼは、非標的化crRNAと比較して、標的化crRNAの存在下でT4バクテリオファージプラークの数を低減した。大腸菌は、SuCasΩ又はLbCas12aヌクレアーゼのいずれか、及びT4バクテリオファージのe遺伝子の転写物を標的とするcrRNA又は非標的crRNAのいずれかを発現した。これらの細菌を寒天プレートで増殖させ、T4バクテリオファージに感染させた。T4バクテリオファージ感染及び増殖の成功を示すプラークを計数した。相対的プラーク減少は、ヌクレアーゼを標的化crRNAと共に発現する培養物で得られたプラーク数とヌクレアーゼを非標的化crRNAと共に発現する培養物で得られたプラーク数との間の比率を表す。
核局在化シグナルを含有するCasΩヌクレアーゼはTXTLにおいてRNAにより誘発されるオンターゲット活性及び付随的なオフターゲット活性を示す
図16に示すように、核局在化配列(NLS)をN末端及びC末端(N-NLS及びC-NLS)に含有するca33CasΩ及びSuCasΩ等のCasΩヌクレアーゼは、TXTLにおいてRNAにより誘発されるオンターゲット活性及び付随的なオフターゲット活性を示す(図10も参照のこと)。NLSを有するca33CasΩ及びSuCasΩヌクレアーゼをコードする遺伝子のコドンを、哺乳動物細胞におけるコドン使用頻度を反映するように最適化した。C-NLS及びN-NLSを有するca33CasΩ及びSuCasΩのRNAにより誘発される活性を、GFPをコードする標的プラスミドDNA及びmCherry蛍光レポーターをコードする非標的プラスミドDNAを用いて試験した。標的化及び非標的化crRNA、並びにC-NLS及びN-NLSを有するca33CasΩ及びSuCasΩヌクレアーゼを、プラスミドから発現させた。結果は、CasΩヌクレアーゼによるRNA認識が、GFPを発現する標的レポータープラスミド及び同族RNAの分解に起因するGFP蛍光の減少、並びにmCherryを発現する非標的レポータープラスミド及び同族RNAの付随的な分解に起因するmCherry蛍光の減少をもたらすことを示す。
CasΩヌクレアーゼは哺乳動物細胞においてRNA標的認識後に細胞生存率を減少させる
RNAにより誘発されるCasΩの細胞生存率を減少させる能力をHEK293T細胞で試験した。図17に示すように、ca33CasΩの活性は、HEK293T細胞の相対的生存率を減少させた。使用されるca33CasΩヌクレアーゼをコードする遺伝子を、哺乳動物細胞におけるコドン使用頻度を反映するように最適化した。ヌクレアーゼは、N末端及びC末端のNLSでタグ付けされたか(N-/C-NLS)、N末端のNLS及びC末端の核外輸送配列(NES)でタグ付けされたか(N-NLS C-NES)、NLSでもNESでもタグ付けされなかったか(なし)、又はC末端のNESでタグ付けされた(C-NES)。標的化及び非標的化crRNA並びにca33CasΩヌクレアーゼをプラスミドから発現させた。標的GFPのRNAをプラスミドから発現させた。相対的細胞生存率を、ca33CasΩヌクレアーゼ及びGFP RNAを標的とするcrRNAを発現する細胞における発光シグナルの、ca33CasΩヌクレアーゼ及び非標的化crRNAを発現する細胞に対する百分率として測定した。Promega(G7570)のCellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assayを使用した。哺乳動物細胞の生存率を減少させるCasΩの能力は治療的使用に利用することができる。
標的化crRNAの存在下のCasΩ及びRNA標的は哺乳動物細胞の破壊を引き起こす
図18に示すデータについて、24ウェルプレートに5×104個のHEK293細胞を播種し、これを、抗生物質を含有するイーグル最小必須培地(MEM)で48時間付着及び増殖させた。SuCasΩヌクレアーゼ及び対応するcrRNAをコードする500 ngのプラスミドDNAをリポフェクタミン3000(1.5 μl)と組み合わせ、1 μlのp3000を含有する50 μlのopi-MEME(Opti-MEM)中で15分間インキュベートさせた。DNA-脂質複合体を細胞に添加した。細胞を37℃及び5.0%CO2のインキュベーターに配置した。24時間後、培地を取り出し、採取した。接着細胞をPBSで洗浄し、100 μlのトリプシンを添加した。細胞を37℃及び5.0%CO2で5分間インキュベートさせた。400 μlのMEMを添加して、トリプシンを不活性化した。採取した培地と共に細胞を、トリパンブルーを使用して血球計数器で計数した。これらの結果は、細胞における特定の配列を標的とするように設計された能動免疫系及びガイドを含んでいた実験条件において、CasΩ及び標的化ガイドの存在が総細胞数の減少として観察される哺乳動物細胞の破壊を引き起こすことを示す。GAPDH標的化条件及びMALAT1標的化条件において、総細胞数は対照と比較してそれぞれ20%及び30%減少する。
図19に示すデータについて、24ウェルプレートに5×104個のHEK293細胞を播種し、これを、抗生物質を含有するイーグル最小必須培地(MEM)で48時間付着及び増殖させた。SuCasΩヌクレアーゼ及び対応するcrRNAをコードする500 ngのプラスミドDNAをリポフェクタミン3000(1.5 μl)と組み合わせ、1 μlのp3000を含有する50 μlのopi-MEME中で15分間インキュベートさせた。DNA-脂質複合体を細胞に添加した。細胞を37℃及び5.0%CO2のインキュベーターに配置した。24時間後、48時間後、及び72時間後に培地を取り出し、採取した。接着細胞をPBSで洗浄し、100 μlのトリプシンを添加した。細胞を37℃及び5.0%CO2で5分間インキュベートさせた。400 μlのMEMを添加して、トリプシンを不活性化した。採取した培地と共に細胞を、トリパンブルーを使用して血球計数器で計数した。各日で対照条件と比べてGAPDH標的化条件において死細胞の百分率がより高いこと分かった。GAPDH標的化条件において、対照を基準にして死細胞が50%~120%増加した。
図20に示すデータについて、6ウェルプレートに5×105個のHEK293細胞を播種し、これを、抗生物質を含有するイーグル最小必須培地(MEM)で48時間付着及び増殖させた。SuCasΩヌクレアーゼ及び対応するcrRNAをコードする2.5 μgのプラスミドDNAをリポフェクタミン3000(7.5 μl)と組み合わせ、5 μlのp3000を含有する250 μlのopi-MEME中で15分間インキュベートさせた。DNA-脂質複合体を細胞に添加した。細胞を37℃及び5.0%CO2のインキュベーターに配置した。48時間後及び120時間後に培地を取り出し、採取した。接着細胞をPBSで洗浄し、500 μlのトリプシンを添加した。細胞を37℃及び5.0%CO2で5分間インキュベートさせた。1.5 mlのMEMを添加して、トリプシンを不活性化した。採取した培地と共に細胞を、トリパンブルーを使用して血球計数器で計数した。1×106個の細胞を収集し、別個のチューブに添加し、それらを300×gで3分間遠心沈殿した。細胞を1 mlのPBSで1回洗浄し、再度遠心沈殿した。1 μlの再構成した反応性蛍光色素を細胞懸濁液に添加し、十分に混合し、続いて、氷上で30分間インキュベートし、光から保護した。次いで、細胞を1 mlのPBSで洗浄し、900 μlのPBS中に再懸濁した。次いで、それらを2%のホルムアルデヒドで60分間固定した。透過化処理を0.1%クエン酸ナトリウム中0.1%のトリトンXを用いて2分間実行した。細胞をPBSで2回洗浄し、50 μlのTUNEL反応混合物中に再懸濁した。混合物を加湿インキュベーター内の暗所で37℃にて60分間インキュベートさせた。試料を更に2回洗浄し、1%のBSAを含有する500 μlのPBS中に再懸濁した。次いで、細胞をフローサイトメーターにより分析し、これにより、GFP、DAPI、及びTUNELの波長をモニタリングした。これらのデータは、各条件につき400イベント~1400イベントから得た。GFPを含有する細胞の百分率は、形質移入効率の大まかな評価として存在する。活性なCasΩは細胞の完全な破壊をもたらす可能性があり、これにより、GAPDH標的化crRNA及びSuCasΩを発現するプラスミドを使用する場合に、対照と比較してより低い形質移入効率が観察される。
図21に示すデータについて、6ウェルプレートに5×105個のHEK293細胞を播種し、これを、抗生物質を含有するイーグル最小必須培地(MEM)で48時間付着及び増殖させた。SuCasΩヌクレアーゼ及び対応するcrRNAをコードする2.5 μgのプラスミドDNAをリポフェクタミン3000(7.5 μl)と組み合わせ、5 μlのp3000を含有する250 μlのopi-MEME中で15分間インキュベートさせた。DNA-脂質複合体を細胞に添加した。細胞を37℃及び5.0%CO2のインキュベーターに配置した。48時間後及び120時間後に培地を取り出し、採取した。接着細胞をPBSで洗浄し、500 μlのトリプシンを添加した。細胞を37℃及び5.0%CO2で5分間インキュベートさせた。1.5 mlのMEMを添加して、トリプシンを不活性化した。採取した培地と共に細胞を、トリパンブルーを使用して血球計数器で計数した。1×106個の細胞を収集し、別個のチューブに添加し、それらを300×gで3分間遠心沈殿した。細胞を1 mlのPBSで1回洗浄し、再度遠心沈殿した。1 μlの再構成した反応性蛍光色素を細胞懸濁液に添加し、十分に混合し、続いて、氷上で30分間インキュベートし、光から保護した。次いで、細胞を1 mlのPBSで洗浄し、900 μlのPBS中に再懸濁した。次いで、それらを2%のホルムアルデヒドで60分間固定した。透過化処理を0.1%クエン酸ナトリウム中0.1%のトリトンXを用いて2分間実行した。細胞をPBSで2回洗浄し、50 μlのTUNEL反応混合物中に再懸濁した。混合物を加湿インキュベーター内の暗所で37℃にて60分間インキュベートさせた。試料を更に2回洗浄し、1%のBSAを含有する500 μlのPBS中に再懸濁した。次いで、細胞をフローサイトメーターにより分析し、これにより、GFP、DAPI、及びTUNELの波長をモニタリングした。実質的により多くのDNA損傷がGAPDH標的化条件で観察された。
図22に示すデータについて、6ウェルプレートに5×105個のHEK293細胞を播種し、これを、抗生物質を含有するイーグル最小必須培地(MEM)で48時間付着及び増殖させた。SuCasΩヌクレアーゼ及び対応するcrRNAをコードする2.5 μgのプラスミドDNAをリポフェクタミン3000(7.5 μl)と組み合わせ、5 μlのp3000を含有する250 μlのopi-MEME中で15分間インキュベートさせた。DNA-脂質複合体を細胞に添加した。細胞を37℃及び5.0%CO2のインキュベーターに配置した。48時間後及び120時間後に培地を取り出し、採取した。接着細胞をPBSで洗浄し、500 μlのトリプシンを添加した。細胞を37℃及び5.0%CO2で5分間インキュベートさせた。1.5 mlのMEMを添加して、トリプシンを不活性化した。採取した培地と共に細胞を、トリパンブルーを使用して血球計数器で計数した。1×106個の細胞を収集し、別個のチューブに添加し、それらを300×gで3分間遠心沈殿した。細胞を1 mlのPBSで1回洗浄し、再度遠心沈殿した。1 μlの再構成した反応性蛍光色素を細胞懸濁液に添加し、十分に混合し、続いて、氷上で30分間インキュベートし、光から保護した。次いで、細胞を1 mlのPBSで洗浄し、900 μlのPBS中に再懸濁した。次いで、それらを2%のホルムアルデヒドで60分間固定した。透過化処理を0.1%クエン酸ナトリウム中0.1%のトリトンXを用いて2分間実行した。細胞をPBSで2回洗浄し、50 μlのTUNEL反応混合物中に再懸濁した。混合物を加湿インキュベーター内の暗所で37℃にて60分間インキュベートさせた。試料を更に2回洗浄し、1%のBSAを含有する500 μlのPBS中に再懸濁した。次いで、細胞をフローサイトメーターにより分析し、これにより、GFP、DAPI、及びTUNELの波長をモニタリングした。予想通りに、2日目から5日目までに死亡率が増加した。培養密度及び新鮮な培地の不足がこの全般的な傾向に寄与した可能性があるが、GAPDH標的化条件で死亡率がより高かったことは、SuCasΩが哺乳動物細胞のプログラム化可能な破壊を引き起こすことができることを実証する。CasΩのこの特性は治療的使用に応用することができる。
図面訳
図2
Entropy (bits) エントロピー(ビット)
Amino acid position in alignment アラインメントにおけるアミノ酸位置

図3
Entropy (bits) エントロピー(ビット)
Amino acid position in alignment アラインメントにおけるアミノ酸位置

図4
Entropy (bits) エントロピー(ビット)
Amino acid position in alignment アラインメントにおけるアミノ酸位置

図5
A
Target ssRNA 標的ssRNA
Non-target ssRNA 非標的ssRNA
Non-target ssDNA* 非標的ssDNA
Non-target dsDNA* 非標的dsDNA
Non-target ssRNA* 非標的ssRNA
B
1 min 1分
10 min 10分
Non-target dsDNA* 非標的dsDNA
Target ssRNA 標的ssRNA
Non-target ssRNA 非標的ssRNA

図6
1 min 1分
10 min 10分
Non-target dsDNA* 非標的dsDNA
Target ssRNA 標的ssRNA
Non-target ssRNA 非標的ssRNA

図7
Target ssDNA 標的ssDNA
Target dsDNA 標的dsDNA
Target ssRNA 標的ssRNA
Non-target ssDNA* 非標的ssDNA

図8
Non-target plasmid DNA 非標的プラスミドDNA
Target ssRNA 標的ssRNA
Non-target ssRNA 非標的ssRNA

図9
A
Nuclease, target selection ヌクレアーゼ、標的での選択
Nuclease selection ヌクレアーゼでの選択
Transformation fold-reduction 形質転換減少倍率
rPAM sequence rPAM配列
B
Nuclease, target selection ヌクレアーゼ、標的での選択
Nuclease selection ヌクレアーゼでの選択
Transformation fold-reduction 形質転換減少倍率
Guide mutation ガイド変異
C
Cell turbidity (ABS600) 細胞濁度(ABS600
Time (h) 時間(h)
Nuclease, target selection ヌクレアーゼ、標的での選択
Nuclease selection ヌクレアーゼでの選択
No selection 選択なし
D
GFP fluorescence GFP蛍光
E
DNA density (DAPI/FSC) DNA密度(DAPI/FSC)
Targeted 標的化
Non-targeted 非標的化
Percentage 百分率

図10
Fluorescence 蛍光
Time (hours) 時間(時)
Target RNA expression 標的RNA発現
No target RNA expression 非標的RNA発現

図11
SuCasΩ RNA activation SuCasΩ RNA活性化
Fluorescence (U) 蛍光(U)
Time (H:MM:SS) 時間(H:MM:SS)
number of target RNA molecules 標的RNA分子の数

図12
Fluorescence-target 蛍光(標的)
Non-target 非標的
Target 標的
Fluorescence-collateral 蛍光(付随的)
Time (hours) 時間(時)

図13
Fluorescence - target 蛍光(標的)
Non-target 非標的
Target 標的
Fluorescence - collateral 蛍光(付随的)
Time (hours) 時間(時)

図14
Fluorescence - target 蛍光(標的)
Non-target 非標的
Target 標的
Fluorescence - collateral 蛍光(付随的)
Time (hours) 時間(時)

図15
Plaque fold reduction プラーク減少倍率
Nucleases ヌクレアーゼ

図16
Fluorescence - target 蛍光(標的)
Non-target 非標的
Target 標的
Fluorescence - collateral 蛍光(付随的)
Time (hours) 時間(時)

図17
Relative cell viability 相対的細胞生存率
Non-target 非標的
Target 標的
Localization signal 局在化シグナル
None なし

図18
Total Cell Count at 24 Hours 24時間時点での総細胞数
Total Cell Count 総細胞数
Untransfected 非形質移入
Control 対照

図19
Percentage of Dead Cells 死細胞の百分率
Day 1 1日目
Day 2 2日目
Day 3 3日目
Control 対照

図20
GFP Containing Cells (Transfection Efficiency) GFPを含有する細胞(形質移入効率)
Percentage of Cells Containning GFP GFPを含有する細胞の百分率
Day 2 2日目
Day 5 5日目
Control 対照

図21
DNA Damage DNA損傷
Percentage of Cells with DNA Damage DNA損傷を有する細胞の百分率
Day 2 2日目
Day 5 5日目
Control 対照

図22
Dead Cells 死細胞
Percentage of Dead Cells 死細胞の百分率
Day 2 2日目
Day 5 5日目
Control 対照

Claims (15)

  1. CasΩヌクレアーゼと少なくとも1種の標的RNAへの結合のために設計された少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとを含む複合体。
  2. 前記ガイドRNAに少なくとも90%相補的な配列を有する標的RNA分子に更に結合しており、前記標的RNAが、好ましくは少なくとも1つのRNAプロトスペーサー隣接モチーフ(rPAM)と隣接している、請求項1に記載の複合体。
  3. 前記ガイドRNAが、細菌に特異的となるように選択された配列、ウイルスに特異的となるように選択された配列、真菌に特異的となるように選択された配列、原生動物に特異的となるように選択された配列、遺伝的障害に特異的となるように選択された配列、及び増殖性障害に特異的となるように選択された配列を含む、請求項1又は2に記載の複合体。
  4. 前記ヌクレアーゼが核局在化シグナルを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合体。
  5. dsDNA、ssDNA、及びRNAから選択される核酸分子を切断する方法であって、a)少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素を提供する工程と、b)少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAを提供する工程と、c)前記少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素と前記少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとの間で複合体を形成させる工程と、d)c)の前記複合体を前記少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAに基づいて標的RNAに結合させる工程と、e)dsDNA、ssDNA、及びRNAから選択される前記核酸分子を前記少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素により切断する工程とを含む、方法。
  6. 細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAを検出する方法であって、前記方法が、
    a)少なくとも1種のssDNA、dsDNA、又はRNAレポーター核酸を前記細胞、組織、細胞核、及び/又は試料に提供する工程と、
    b)前記細胞、組織、細胞核、及び/又は試料を、少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素と少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとの間の少なくとも1種の複合体と接触させる工程であって、前記少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAが、前記標的RNAに少なくとも90%相補的な配列を含む、工程と、
    c)前記少なくとも1種のssDNA、dsDNA、又はRNAレポーター核酸の切断、分割、及び/又はニッキングを検出する工程であって、前記少なくとも1種のレポーター核酸の前記切断を検出することにより、前記細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における前記少なくとも1種の標的RNAが検出される、工程と、
    を含む、方法。
  7. 前記少なくとも1種のレポーター核酸の前記切断、分割、及び/又はニッキングを検出する工程が、好適な標識、例えば、色素、フルオロフォア、若しくは電気伝導度のシグナルの変化を検出すること、及び/又は前記切断された少なくとも1種のレポーター核酸の断片自体を検出することを含む、請求項6に記載の方法。
  8. 前記少なくとも1種の標的RNAが、対照標的RNAと比較して少なくとも1つの変異を含む変異型標的RNAである、請求項6又は7に記載の方法。
  9. 細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの発現を調節する方法であって、前記少なくとも1種の標的RNAが、mRNA、非コードRNA、及びウイルスRNA分子から選択され、前記方法が、
    a)前記細胞、組織、細胞核、及び/又は試料を、少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素と少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとの間の少なくとも1種の複合体と接触させる工程であって、前記少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAが、前記少なくとも1種の標的RNAに少なくとも90%相補的な配列を含む、工程と、
    c)前記少なくとも1種の標的RNAにb)(???)の複合体を結合させ、これにより、前記少なくとも1種の標的RNAの安定性、プロセシング、又は翻訳を変化させる工程と、
    を含み、これによって、c)における結合により、前記細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの発現が調節される、方法。
  10. 細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの配列を編集する方法であって、前記少なくとも1種の標的RNAが、mRNA、非コードRNA、及びウイルスRNA分子から選択され、前記方法が、
    a)前記細胞、組織、細胞核、及び/又は試料を、少なくとも1種のRNA修飾酵素と複合体を形成した、改変されており、触媒活性のない少なくとも1種のCasΩヌクレアーゼ酵素と、少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAとの間の少なくとも1種の複合体と接触させる工程であって、前記少なくとも1種の事前選択されたガイドRNAが、前記少なくとも1種の標的RNAに少なくとも90%相補的な配列を含む、工程と、
    c)前記少なくとも1種の標的RNAにb)(???)の複合体を結合させ、前記少なくとも1種のRNA修飾酵素により前記少なくとも1種の標的RNAを編集する工程と、
    を含む、方法。
  11. 前記少なくとも1種の標的RNAが、疾患状態、例えば、遺伝的障害を示す細胞、増殖性障害を示す細胞、例えば、癌細胞、自己抗体を産生する免疫細胞、細菌病原体又はウイルス病原体に感染した細胞、細菌病原体、原生動物病原体、微生物叢の細胞、及び汚染性細菌又は古細菌からなる群から選択される細胞に特異的な核酸配列を含む、請求項5~10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 疾患の予防及び/又は処置に使用される、例えば、感染症及び/又は増殖性障害等の遺伝的障害、例えば、癌、真菌感染症、原生動物感染症、細菌感染症、及び/又はウイルス感染症の予防及び/又は処置に使用される、請求項3又は4に記載の複合体。
  13. 望ましくない細胞又はウイルスを特異的に不活性化する方法であって、前記細胞又はウイルスを請求項1~4のいずれか1項に記載の複合体と接触させる工程を含み、前記ガイドRNAが、不活性化されるべき前記望ましくない細胞又はウイルスに対して特異的に選択される、方法。
  14. 疾患、例えば、感染症及び/又は増殖性障害等の遺伝的障害、例えば、癌、真菌感染症、原生動物感染症、細菌感染症、及び/又はウイルス感染症、自己免疫疾患を予防及び/又は処置する方法であって、かかる処置を必要とする対象に有効量の請求項3又は4に記載の複合体を投与することを含む、方法。
  15. dsDNA、ssDNA、及びRNAから選択される核酸分子を切断するための、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAを検出するための、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの発現を調節するための、細胞、組織、細胞核、及び/又は試料における少なくとも1種の標的RNAの配列を編集するための、望ましくない細胞若しくはウイルスを特異的に不活性化するための、又は調製物から望ましくない汚染物質を除染するための請求項1~4のいずれか1項に記載の複合体の使用。
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