JP2024521443A - 二窒素のアンモニアへの還元方法および二窒素のアンモニアへの還元用電池 - Google Patents

二窒素のアンモニアへの還元方法および二窒素のアンモニアへの還元用電池 Download PDF

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Abstract

本発明は、二窒素を還元してアンモニアを製造する方法を提供する。該方法は、電気化学セルのカソードを電解質と接触させるステップと、カソード還元のために電気化学セルに二窒素を供給するステップと、二窒素を還元するのに十分な電位をカソードに印加してアンモニアを製造するステップと、を含み、電解質は、(i)リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、バナジウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される金属カチオンと、(ii)フッ素化スルホニルイミド、フッ素化スルホニルメチドおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの陰イオンを含む1つ以上のアニオンと、(iii)プロトンキャリアと、(iv)任意選択的に、少なくとも1つのホスホニウムカチオンと、を含み、金属カチオンは電解質中に0.5mol/L超の濃度で存在し、金属カチオンおよび任意の少なくとも1つのホスホニウムカチオンの電解質中の合計量は1mol/L超である。【選択図】図1

Description

本発明は、二窒素を還元してアンモニアを製造する方法に関する。該方法は、電気化学セルのカソードを、高濃度の金属カチオン(例えばリチウム)と、フッ素化スルホニルイミド、フッ素化スルホニルメチドおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの陰イオンと、プロトンキャリアとを含む電解質と接触させるステップと、カソード還元のために電気化学セルに二窒素を供給するステップと、二窒素を還元してアンモニアを形成するのに十分な電位をカソードに印加するステップと、を含む。本発明は二窒素を還元してアンモニアを製造するための電気化学セルにさらに関する。
急増する世界人口の要求を満たすのに十分な食糧とエネルギーを供給することは、依然として人類にとって継続的な課題である。アンモニア(NH)を形成するための二窒素(N)固定に関する新技術は、これら2つの課題に対する潜在的な解決策を提供する。合成アンモニアベースの肥料は、すでに世界的な食糧生産に不可欠であり、NHの高いエネルギー密度は、輸送可能な燃料または再生可能エネルギーのキャリアとしての利用に大きな見通しを与える。
20世紀にハーバー・ボッシュ・プロセスが発明され、初めて大量の合成アンモニアを工業的に生産するルートが提供された。しかしながら、二窒素三重結合(N≡N,942kJmol-1)の並外れた安定性のため、ハーバー・ボッシュ・プロセスは、高圧(150~350atm)と高温(400~550℃)という極端な反応条件と、通常天然ガスの水蒸気改質プロセスから供給される純Hの供給を必要とする。その結果、このプロセスは世界のエネルギー供給の約2%を消費し、世界の温室効果ガス排出量の約1.5%を占めている。したがって、再生可能資源を動力源とするNHへのN変換技術が緊急に必要とされている。
電気化学的窒素還元反応(NRR)プロセスが成功すれば、再生可能な電力を単純な電解セルでNHに直接変換することが可能になる。NRRのカソード半反応を式(1)に示す:
Figure 2024521443000002
水蒸気改質Hに頼る代わりに、NRRに必要なプロトンは、水のアノード酸化(酸素発生反応)または持続可能な水分解プロセスから生成されるHによって供給することができる。残念なことに、6eと6HのNRRは動力学的に緩慢であるため、式(2)に示すより容易な2eと2Hの水素発生反応(HER)よりも電気化学的に不利である。HERとの競合の結果、報告されている多くのNHの電気化学合成は、非常に低いファラデー効率および/または低いNH収率に悩まされている。
Figure 2024521443000003
リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、およびバナジウムを含む適切な金属が、対応する窒化物を形成するために使用される。金属イオンを含む溶融塩を高温で電気分解することによって、好ましくは液体状態の金属をまず形成し、次に窒素と反応させて金属窒化物を形成する。窒化物の形成が完了すると、分離されて電気化学セルのアノードコンパートメントに導入され、そこでプロトンが生成され、最終的にアンモニアが生成される。別々のプロセス環境間で金属窒化物化合物を操作する必要があるため、設備投資がかさみ、エネルギー効率も悪い複雑な多段階プロセスが必要となる。
以前開発された別のアプローチ、例えばTsuneto et al,Chemistry Letters 1993,851-854によって報告されているように、連続的なリチウム媒介電気化学アンモニア合成である。典型的なリチウムを介した連続的な電気化学的NH合成反応では、電解質系はテトラヒドロフランのような有機溶媒中で、リチウムトリフラート(LiOTf)、過塩素酸リチウム(LiClO)またはテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)のようなリチウム塩とプロトンキャリア(プロトン供与体)を含む。プロトンの供給源がアノードHの酸化である場合の反応メカニズムを図1に示す。カソード102では、リチウム陽イオン(Li)が金属リチウム(Li)に還元され、これが二窒素(N)と自発的に反応して窒化リチウム(LiN)を形成する。その後、LiNは電解質中に存在するプロトンキャリア(BH)によってプロトン化され、アンモニアと脱プロトン化されたプロトンキャリア(プロトン受容体B)を生成し、リチウム陽イオンを再生する。陽極104では、Hの陽極酸化によってプロトン(H)が生成される。これらのプロトンは電解質中のBをプロトン化してプロトンキャリア(BH)を再生し、反応サイクルを完了させる。プロトンは窒素還元反応に間接的にしか関与しないため、HERとの競合は最小限に抑えられると期待される。
今日までの大きな進歩にもかかわらず、商業的に実行可能なリチウム媒介NRRプロセスの開発には、収率および選択性(ファラデー効率)のさらなる改善が必要である。さらに、この性能は、長時間の反応、例えば、何日間も反応を中断することなく持続可能でなければならない。リチウム媒介NRRの重要な課題は、カソード上での不溶性の副生成物の形成である。これらの電解質分解物質の析出は、セルの内部抵抗の急激な上昇、ひいては所望の反応を駆動するのに必要なセル電圧の上昇を引き起こし、最終的には不安定で悪化した電気化学的性能と反応の早期終了につながる。さらに、寄生分解反応は電気化学プロセスの電荷の一部を消費するため、ファラデー効率が低下し、溶媒、電解質および/またはプロトンキャリアを徐々に不可逆的に破壊する。
したがって、上記の欠点の1つ以上に少なくとも部分的に対処するか、または有用な代替手段を提供するアンモニアを生成するために二窒素を還元する新たな方法が必要である。
先行技術として記載された特許文献またはその他の事項への本明細書における言及は、当該文献または事項が公知であったこと、または当該文献または事項が含む情報が請求項の優先日において一般的な知識の一部であったことを認めるものとして解釈されるものではない。
第1の態様では、本発明は、二窒素を還元してアンモニアを製造する方法を提供する。該方法は、電気化学セルのカソードを電解質と接触させるステップと、カソード還元のために電気化学セルに二窒素を供給するステップと、二窒素を還元するのに十分な電位をカソードに印加してアンモニアを製造するステップと、を備え、電解質は、(i)リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、バナジウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される金属カチオンと、(ii)フッ素化スルホニルイミド、フッ素化スルホニルメチドおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの陰イオンを含む1つ以上のアニオンと、(iii)プロトンキャリアと、(iv)任意選択的に、少なくとも1つのホスホニウムカチオンと、を含み、金属カチオンは電解質中に0.5mol/L超の濃度で存在し、金属カチオンおよび任意の少なくとも1つのホスホニウムカチオンの電解質中の合計量は1mol/L超である。
驚くべきことに、フッ素化スルホニルイミドまたはメチドアニオンを、電解質中の高濃度の適切なカチオンと組み合わせて使用すると、このプロセスで以前に使用された電解質と比較して、連続的な金属媒介電気化学的二窒素還元において、収率および/またはファラデー効率が非常に顕著に改善されることが見出された。還元性能は、1mol/L超の金属カチオン濃度、または(b)金属とホスホニウムとの合計濃度が1mol/L超であるようにホスホニウムカチオンを添加した場合には0.5mol/L超の金属濃度で特に顕著である。金属カチオン(および存在する場合にはホスホニウムカチオン)は、典型的には電解質中での最も豊富なカチオンであり、イミダゾリウムカチオンおよびピロリジニウムカチオンなどの干渉する非金属カチオンが存在しないか、またはそれらが二窒素還元反応に許容できないほど影響を及ぼさない十分に低い量でのみ存在することが好ましい。さらに好ましくは、フッ素化スルホニルイミドまたはメチドアニオンが電解質中に存在する主要なまたは唯一のアニオンである。最大500nmol s-1cm-2(カソード表面積で正規化)の全体収率およびほぼ定量的なファラデー効率(>98%)が、24時間または96時間の反応中に得られた。
いかなる理論にも限定されることを望むものではないが、金属カチオンと嵩高で電気化学的に安定なフッ素化スルホニルイミドまたはメチドアニオンが、電気化学的還元中にカソード表面の電解質-電極界面層で保護イオン集合体を形成することが提案されている。高イオン濃度で増強されるこの保護界面は、溶液成分(アニオン、溶媒分子、プロトンキャリアなど)の分解や、金属メディエーター(金属、金属窒化物、金属水素化物など)が関与する還元プロセスの生成物の過剰な析出を抑制する一方で、高率の二窒素還元を可能にする。その結果、二窒素のアンモニアへの高い生産性と選択的還元が得られ、長い反応時間にわたって持続することができる。
本開示に記載の電解質組成物による保護効果は、電気化学反応後のカソード表面の分析によって見分けることができる。高濃度のリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を含む電解質中で長時間反応させた後、カソード表面は目視で元の状態であった。顕微鏡検査と分光分析から、LiF、S-O種、無傷のLiTFSIからなる薄い(<10nm)ながらもコヒーレントな固体層が存在することが示された。対照的に、他の弱配位性アニオンを使用したり、電解質中のリチウム濃度を低くしたりすると、カソード上に相当量の不溶生成物が析出した。
フッ素化スルホニルイミドおよびメチドアニオンは、以前から二次電池用のリチウム系電解質に使用されており、電極における安定な固体-電解質界面(SEI)層の形成を介してサイクル安定性を促進する。本発明者らは、リチウム電池のサイクル中に存在する電解質-電極界面と、リチウムを介した二窒素還元反応との間に類似性があることを認識した。したがって、リチウム電池の用途に適したフッ素化スルホニルイミドおよびメチドアニオンの範囲が、本開示の方法において使用され得る。
第2の態様では、本発明は、二窒素を還元してアンモニアを製造する方法を提供する。該方法は、電気化学セルのカソードを電解質と接触させるステップと、カソード還元のために電気化学セルに二窒素を供給するステップと、二窒素を還元するのに十分な電位をカソードに印加してアンモニアを製造するステップと、を備え、電解質は、(i)リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、バナジウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される金属カチオンと、(ii)フッ素化スルホニルイミド、フッ素化スルホニルメチドおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの陰イオンを含む1つ以上のアニオンと、(iii)プロトンキャリアと、を含み、金属カチオンは電解質中に1mol/L超の濃度で存在する。
第3の態様では、本発明は、二窒素を還元してアンモニアを製造するための電気化学セルを提供する。該電気化学セルは、カソードと、アノードと、少なくともカソードと接触する電解質と、カソード還元のために電気化学セルに二窒素を供給する二窒素供給源と、カソードおよびアノードに接続され、二窒素を還元してアンモニア製造するのに十分な電位をカソードに印加することが可能な電源と、を備え、電解質は、i)リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、バナジウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される金属カチオンと、(ii)フッ素化スルホニルイミド、フッ素化スルホニルメチドおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの陰イオンを含む1つ以上のアニオンと、(iii)プロトンキャリアと、(iv)任意選択的に、少なくとも1つのホスホニウムカチオンと、を含み、金属カチオンは電解質中に0.5mol/L超の濃度で存在し、金属カチオンおよび任意の少なくとも1つのホスホニウムカチオンの電解質中の合計量は1mol/L超である。
第4の態様では、本発明は、二窒素を還元してアンモニアを製造するための電気化学セルを提供する。該電気化学セルは、カソードと、アノードと、少なくともカソードと接触する電解質と、カソード還元のために電気化学セルに二窒素を供給する二窒素供給源と、カソードおよびアノードに接続され、二窒素を還元してアンモニア製造するのに十分な電位をカソードに印加することが可能な電源と、を備え、電解質は、i)リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、バナジウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される金属カチオンと、(ii)フッ素化スルホニルイミド、フッ素化スルホニルメチドおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの陰イオンを含む1つ以上のアニオンと、(iii)プロトンキャリアと、を含み、金属カチオンは電解質中に1mol/L超の濃度で存在する。
第1および第3の態様の一部の実施態様では、金属カチオンは、電解質中に0.75mol/L超、または1mol/L超の濃度で存在する。
第1および第3の態様の一部の実施態様では、電解質中の金属カチオンおよび任意の少なくとも1つのホスホニウムカチオンの合計量が1.5mol/L超である。
第1~第4の態様の一部の実施態様では、金属カチオンが、電解質中に1.25mol/L超、または1.5mol/L超、または超1.75Mの濃度で存在する。
第1~第4の態様の一部の実施態様では、少なくとも1つの陰イオンがフッ素化スルホニルイミドからなる群より選択される。
第1~第4の態様の一部の実施態様では、フッ素化スルホニルイミドが式1:
Figure 2024521443000004
の構造を有する。式中、Rf1およびRf2は独立して-F、C-C12ペルフルオロアルキルおよびフルオロアリールからなる群より選択されるか、またはRf1およびRf2は結合してペルフルオロアルキレンリンカーを形成する。一部のそのような実施態様では、Rf1およびRf2は独立して-FおよびC-Cペルフルオロアルキルからなる群より選択される。
第1~第4の態様の一部の実施態様では、少なくとも1つの陰イオンがビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、(トリフルオロメタンスルホニル)-(フルオロスルホニル)-イミド(FTFSI)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。一部の実施態様では、少なくとも1つの陰イオンがTFSIからなる。
第1~第4の態様の一部の実施態様では、少なくとも1つの陰イオンが、電解質中に1mol/L超、または1.25mol/L超、または1.5mol/L超の濃度で存在する。
第1および第3の態様の一部の実施態様では、少なくとも1つの陰イオンが、金属カチオンおよび任意の少なくとも1つのホスホニウムカチオンの合計量と実質的に等しいか、またはそれを超える濃度で存在する。
第1~第4の態様の一部の実施態様では、少なくとも1つの陰イオンが、1つ以上のアニオンの少なくとも50mol%、または少なくとも80mol%、または少なくとも90mol%を含む。
第1~第4の態様の一部の実施態様では、少なくとも1つの陰イオンが、電解質中の弱配位性アニオンの合計量の少なくとも90mol%、または実質的に100mol%を含む。
第1~第4の態様の一部の実施態様では、金属カチオンがリチウムである。
第1~第4の態様の一部の実施態様では、電解質が、少なくとも1つのホスホニウムカチオンを含む。少なくとも1つのホスホニウムカチオンは、電解質中に0.2mol/L超、または0.4mol/L超、例えば0.2mol/L~1.5mol/L、例えば0.4mol/L~1.2mol/Lの濃度で存在し得る。
第1~第4の態様の一部の実施態様では、電解質が、有機窒素カチオンを実質的に含まないか、または0.2mol/L未満、例えば0.1mol/L未満の合計量でいずれの有機窒素カチオンを含む。
第1~第4の態様の一部の実施態様では、カソードが、Ni、Nb、Ti、Mo、Fe、Cu、Ag、Znおよびそれらの合金からなる群より選択される金属を含む。一部のそのような実施態様では、カソードが、金属のニッケルまたはニオブを含む。
第1~第4の態様の一部の実施態様では、カソードの金属表面がコーティングされていないか、またはアンモニアの6時間の製造後にLiFを含む固体界面層でコーティングされており、固体界面層の厚さが100nm以下、または50nm以下、または10nm以下である。
第1および第2の態様の一部の実施態様では、アンモニアを製造するステップが、プロトンキャリアを脱プロトン化してプロトン受容体を形成するステップを備え、該方法は、電気化学セル中の水素含有種の陽極酸化によって電解質に導入されたプロトンでプロトン受容体をプロトン化することによって、電解質中のプロトンキャリアを再生するステップをさらに含む。水素含有種は任意選択的に二水素または水であり得る。
第1および第2の態様の一部の実施態様では、プロトンキャリアおよびプロトン受容体(プロトンキャリアの脱プロトン化によって形成)が、0.001mol/L超、または0.01mol/L超、または0.05mol/L~0.5mol/Lの範囲の合計濃度で電解質中に存在する。第2の態様の一部の実施態様では、プロトンキャリア、およびプロトンキャリアの脱プロトン化によって形成されたいずれのプロトン受容体が、0.001mol/L超、または0.01mol/L超、または0.05mol/L~0.5mol/Lの範囲の合計濃度で電解質中に存在する。
第1および第2の態様の一部の実施態様では、アンモニアを製造するステップが、カソードで金属カチオンおよび二窒を還元して金属窒化物を形成するステップと、金属窒化物をプロトンキャリアと反応させてアンモニアを製造するステップと、を備える。
第1~第4の態様の一部の実施態様では、プロトンキャリアが、(a)アニオン性プロトン受容体を形成する可逆的脱プロトン化が可能な中性プロトンキャリア、および(b)中性プロトン受容体を形成する可逆的脱プロトン化が可能なカチオン性プロトンキャリアからなる群より選択され、中性プロトン受容体はイリドである。
一部のそのような実施態様では、プロトンキャリアが(a)中性プロトンキャリアであり、中性プロトンキャリアは、アルコールおよび酸からなる群より選択される。一部の実施態様では、中性プロトンキャリアはアルコールであり、任意選択的にメタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールからなる群より選択される。
他の実施態様では、プロトンキャリアが(b)カチオン性プロトンキャリアである。一部のそのような実施態様では、カチオン性プロトンキャリアはアルキルホスホニウムカチオンおよびアルキルスルホニウムカチオンからなる群より選択され、中性プロトン受容体はホスホニウムイリドおよびスルホニウムイリドからなる群より選択される。カチオン性プロトンキャリアはテトラアルキルホスホニウムカチオンであり得、任意選択的に[PR(式中、R、R、RおよびRはC-C20n-アルキルから独立して選択)の形態であり得る。
第1~第4の態様の一部の実施態様では、電解質が、(iv)エーテル、ポリエーテル、グリコールエーテル、フッ素化エーテル、フッ素化アルキル、フッ素化シクロアルキル、カーボネート、スルホランおよびジメチルスルホキシドからなる群より選択される1つ以上の分子溶媒をさらに含む。
第1~第4の態様の一部の実施態様では、電解質が、金属カチオンを溶媒和できる非プロトン性供与体溶媒を含む。
第1および第2の態様の一部の実施態様では、二窒素が、1bar超、または5bar超、または10bar超の二窒素分圧で電解質を二窒素と接触させることによって、カソード還元のために電気化学セルに供給される。第3および第4の態様の一部の実施態様では、二窒素供給源が、1bar超、または5bar超、または10bar超の二窒素分圧で電解質を二窒素と接触させることによって、カソード還元のために電気化学セルに二窒素を供給する。
第1および第2の態様の一部の実施態様では、カソードが、アンモニアを製造する際に、静的な気体と電解質との間のメニスカスでガス状の二窒素と接触していない。第3および第4の態様の一部の実施態様では、電気化学セルが、アンモニアを製造する際に、静的な気体と電解質との間のメニスカスでガス状の二窒素とカソードが接触しないように構成されている。
第1および第2の態様の一部の実施態様では、カソードの電位が、電解質中の金属カチオンの見かけの還元電位より下(より負)であり、好ましくは電解質中の金属カチオンの見かけの還元電位に対して-0.4Vより下(より負)である。
第1および第2の態様の一部の実施態様では、カソードの電位が、電解質中の金属カチオンの見かけの還元電位に対して-0.8Vより上(より正)である。
第1~第4の態様の一部の実施態様では、電解質の25℃の粘度が20MPa・s未満である。
本明細書(特許請求の範囲を含む)において「含む」という用語が使用される場合、これらの用語は、記載された特徴、整数、ステップまたは構成要素を特定するものとして解釈されるが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップまたは構成要素、またはそれらのグループの存在を排除するものではない。
本発明の更なる態様を、以下の発明の詳細な説明に記載する。
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を例示的に説明する。
アンモニアを製造する連続的な電気化学的二窒素還元の提案したメカニズムを概略的に示す図である。 水素含有種としてHを用いて、本発明の実施態様に従って連続的な電気化学的二窒素還元を行うための単一区画電気化学セルを概略的に示す図である。 水素含有種としてHOを用いて、本発明の実施態様に従って連続的な電気化学的二窒素還元を行うための膜分離された二重区画電気化学セルを概略的に示す図である。 (a)テトラヒドロフラン(THF)中の異なる濃度のLiTFSI(0.1mol/L~3mol/L)およびエタノール(EtOH)(0.1mol/L)を含む電解質のイオン伝導率および粘度、並びに(b)実施例1のニッケルカソード上で、-0.55V vs Li/Li、15barのN圧力下で実施した、これらの電解質を用いた一連のクロノアンペロメトリー電気化学的実験で得られたアンモニア収率およびファラデー効率を表す図である。 THF中の異なるリチウム塩(1mol/Lまたは2mol/L)とEtOH(0.1mol/L)を含む電解質を用い、15barのN圧下、-0.55V vs Li/Liで実施した実施例2のニッケルカソードでの一連のクロノアンペロメトリー電気化学実験で得られたアンモニア収率(菱形)とファラデー効率(三角形)をプロットした図である。結果は、(a)電解質粘度、(b)電解質イオン伝導度に対してプロットした。 実施例1のニッケルカソード上で、THF中LiTFSI(2mol/L)とEtOH(0.1mol/L)を含む電解質を用い、15barのN圧力下で-0.55V vs Li/Liで実施したクロノアンペロメトリー電気化学実験後の、カソード表面に存在する硫黄種を示すX線光電子(XP)スペクトル(S 2p領域)を示す図である。NRR領域Bは、電解質に完全に浸されたカソードの部分である。NRR領域Aは、静的な気体-電解質メニスカスで電気化学反応が起こったカソードの部分である。 実施例1のニッケルカソード上で、-0.55V vs Li/Liで15barのN圧力下で実施した、THF中のLiTFSI(2mol/L)とEtOH(0.1mol/L)を含む電解質を用いたクロノアンペロメトリー電気化学実験後の、カソード表面に存在する窒素種を示すXPスペクトル(N 1s領域)を示す図である。 実施例1のニッケルカソード上で、-0.55V vs Li/Liで15barのN圧力下で実施した、THF中のLiTFSI(2mol/L)とEtOH(0.1mol/L)を含む電解質を用いたクロノアンペロメトリー電気化学実験後のカソード表面に存在するフッ素種を示すXPスペクトル(F 1s領域)を示す図である。 実施例1のニッケルカソード上で、-0.55V vs Li/Liで15barのN圧力下で実施した、THF中のLiTFSI(2mol/L)とEtOH(0.1mol/L)を含む電解質を用いたクロノアンペロメトリー電気化学実験後のカソード表面に存在するニッケル種を示すXPスペクトラム(Ni 2p領域)を示す図である。 、実施例5の単独のニッケルカソード上で-0.55V vs Li/Liで15barのN圧力下で実施した、THF中のLiTFSI(2mol/L)とEtOH(0.1mol/L)を含む電解質を用いる一連のクロノアンペロメトリー電気化学的実験について、電流密度、通過した全電荷および全体のセル電位を時間の関数としてプロットした図である。 実施例6のニッケルカソード上で、異なるカソード電位(-0.4V~-1V vs Li/Li)の範囲で、15barのN圧力下で実施したTHF中のLiTFSI(2mol/L)とEtOH(0.1mol/L)を含む電解質を用いる一連のクロノアンペロメトリー電気化学的実験について、時間の関数としての電流密度を表す図である。 窒化リチウムによる連続的な脱プロトン化および弱酸による再プロトン化反応によるTHF中0.2M[P666,14][eFAP]溶液中での[P666,14カチオンの可逆的脱プロトン化を実証する、実施例9で得られた一連の31P NMRスペクトルを示す図である。 実施例8のニッケルカソード上で、-0.55V vs Li/Liで15barのN圧力下で実施した、LiTFSI(2mol/L)と異なる種類および濃度のプロトンキャリアを含む電解質を用いる一連のクロノアンペロメトリー電気化学的実験で得られた(a)アンモニア収率および(b)ファラデー効率を、プロトンキャリア濃度の関数としてプロットした図である。 実施例8のニッケルカソード上で、-0.55V vs Li/Liで15barのN圧力下で実施した、LiTFSI(2mol/L)と異なるアルコールプロトンキャリア(0.1M)を含む電解質を用いる一連のクロノアンペロメトリー電気化学的実験で得られたアンモニア収率(菱形)およびファラデー効率(棒グラフ)をプロットした図である。 実施例10のニッケルカソード上で、-0.55V vs Li/Liで、NおよびHの分圧を変動させ、15barの合計圧力下で実施した、LiTFSI(2mol/L)とEtOH(0.1M)を含む電解質を用いる一連のクロノアンペロメトリー電気化学的実験で得られたアンモニア収率(菱形)およびファラデー効率(棒グラフ)をプロットした図である。 実施例11のニッケルカソード上で、15barのN圧力下で実施した、LiTFSI(1~2mol/L)と、EtOH(0.1M)と種々のイオン液体添加剤を含む電解質を用いる一連のクロノアンペロメトリー電気化学的実験で得られたアンモニア収率(菱形)およびファラデー効率(棒グラフ)をプロットした図である。 実施例12のニッケルカソード上で1barのN圧力で実施した、LiTFSI(1.5~2mol/L)とEtOH(0.1M)と異なる量のホスホニウム系イオン液体添加剤を含む電解質を用いる一連のクロノアンペロメトリー電気化学的実験で得られたアンモニア収率(菱形)およびファラデー効率(棒グラフ)をプロットした図である。 実施例13のニッケルカソード上で15barのN圧力で実施した、LiTFSI(0.2~1.5mol/L)とEtOH(0.1M)と異なる量のホスホニウム系イオン液体添加剤を含む電解質を用いる一連のクロノアンペロメトリー電気化学的実験について、時間の関数としての電流密度を表す図である。 実施例13のニッケルカソード上で15barのN圧力で実施した、LiTFSI(0.2~1.5mol/L)、とEtOH(0.1M)と異なる量のホスホニウム系イオン液体添加剤を含む電解質を用いる一連のクロノアンペロメトリー電気化学的実験で得られたアンモニア収率(菱形)およびファラデー効率(棒グラフ)をプロットした図である。
二窒素を還元してアンモニアを製造する方法
本発明は、二窒素を還元してアンモニアを製造する方法に関する。該方法は、電気化学セルのカソードを電解質と接触させるステップを備え、電解質は(i)電解質中0.5mol/L超の濃度で、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、バナジウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される金属カチオンと、(ii)フッ素化スルホニルイミド、フッ素化スルホニルメチドおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの陰イオンを含む1つ以上のアニオンと、(iii)プロトンキャリアと、(iv)任意選択的に、少なくとも1つのホスホニウムカチオンとを含む。金属カチオンおよび任意のホスホニウムカチオン成分の合計量は電解質中1mol/L超である。したがって、ホスホニウムカチオンが存在しない場合、金属カチオンは電解質中に1mol/L超の濃度で存在する。二窒素は、カソード還元のために電気化学セルに供給され、電位が、二窒素を還元してアンモニアを製造するのに十分に負であるカソードに印加される。アンモニアを製造するために、プロトンキャリアはプロトンを提供し、脱プロトン化してプロトン受容体を形成し得る。
概して、電気化学セルは、アノードも含み、陽極酸化反応が電気化学的なアンモニア合成中に生じて、電荷の中性を維持し、電流がセルを通して流れるようにする。アノードでの二水素または水などの水素含有種の陽極酸化は、電解質にプロトンを導入する。これらのプロトンは、プロトン受容体を再プロトン化することによって、電解質中のプロトンキャリアを少なくとも部分的に再生し得る。
したがって、本開示は、連続的な金属媒介(例えばリチウム媒介)電気化学的二窒素還元プロセスに関する。このようなプロセスは、二窒素が一連の時間的および/または空間的に分離されたプロセスステップ、例えば、リチウム電解、窒化リチウム形成およびアンモニア生成のための別個のバッチプロセスにおいてアンモニアに変換される逐次電気化学的プロセスとは区別され得る。上記で説明したように、連続的な還元は、金属種および/またはプロトンキャリア種を含む1つまたは複数の種を、合成の1つのプロセスステップにおいて異なる形態間で循環させることを含むことが提案される。
金属および任意のホスホニウムカチオン
電解質は、連続的な電気化学的二窒素還元を仲介するか、またはそれに触媒作用を及ぼす少なくとも1つの金属カチオンを含む。合成は、反応サイクルにおける金属窒化物中間体を伴うことが提案される。したがって、電気化学反応条件下での二窒素からの金属窒化物の形成が可能な金属の範囲が本発明で使用され得る。本開示で、「金属」は、金属元を指し、特定の還元状態または種を意味しない。例えば、提案された反応メカニズムにおいて、ゼロ酸化状態の金属形態が特に特定される場合、これはその「金属形態」、「金属」または「金属(0)」と呼ばれる。
提案したメカニズムに従って、金属カチオンの電気化学的還元によってカソード上に金属が生成し、これがNと自発的に反応して、対応する金属窒化物が生成する。この後者の反応は、アンモニア電解合成の条件下では熱力学的に好ましい(一般的反応
Figure 2024521443000005
の負のギブズエネルギー)はずである。表形式の熱力学的データ(例えばL.B.Pankratz,et al,Thermodynamic Data for Mineral Technology,Washington D.C.,1984 John R.Rumble,CRC Handbook of Chemistry and Physics 101st Edition,2020)、公開された理論計算(例えばNΦrskov et al,in Energy Environ.Sci.,2017,10,1621-1630)および実験報告(例えば独国特許出願公開第102018210304号明細書)によると、適した金属としては、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、およびバナジウムが挙げられる。
一部の実施態様では、金属は、リチウムを含むか、またはリチウムからなる。リチウムは、周囲温度で二窒素を活性化する能力が実証されていることから、特に適していると考えられる。
金属は、電解質中に溶解した金属カチオン、例えばLiの形で還元が進行している間も存在したままであることが予想される。上述したように、反応サイクルは、電解質から金属カチオンを還元してカソード上に金属を形成し、サイクルの最終段階として金属カチオンを再生すると考えられている。しかしながら、カソード表面上の固体種(例えば金属窒化物と金属)が連続的に反応する間に、可溶性金属カチオンを中間体として用いずに金属サイクルを行うことも可能であると考えられる。したがって、リチウムの場合、カソード反応機構は、原理的には、(i)カソード上の金属リチウムが二窒素と化学反応して窒化リチウムを形成し、(ii)プロトン供与体の存在下で窒化リチウムを直接電気化学的に還元して金属リチウムを直接再生し、アンモニアを生成する(すなわち、LiN+3HB+3e=NH+3Li(0)+3B)ことを含む可能性がある。
1つまたは複数の金属カチオンは、0.5mol/L超の濃度で電解質中に存在する。一部の好ましい実施態様では、1つまたは複数の金属カチオンは0.75mol/L超、または1mol/L超、または1.5mol/L超の濃度で電解質中に存在する。このような範囲の金属カチオン濃度は、電解質が非常に高い質量分率の金属塩を含むことを意味すると理解すべきである。例えば、1.5mol/LのLiTFSIは、430g/L、または37質量%超に対応する。驚くべきことに、金属媒介NRR中のそのような高濃度の金属カチオンは、改善した電気化学的性能(ファラデー効率および/または収率)をもたらし、カソード上の電解質分解生成物の形成を抑制することが見出された。いかなる理論によっても限定されることを望むものではないが、カソード表面における、高いイオン濃度が金属カチオンとフッ素化スルホニルイミドまたはメチドの保護イオン集合体を増大させることが提案される。金属カチオン濃度の上限範囲は、電解質の粘度によって制限され得、高濃度の電解質塩で物質移動およびイオン伝導性を制限し得る。そのような制限は、いずれの溶媒の存在および選択、ならびに反応温度などの要因に依存し得る。一部の実施態様では、1つまたは複数の金属カチオンは、したがって、3mol/L未満、例えば1mol/L~3mol/Lの範囲、例えば1.5mol/L~2.5mol/Lの濃度で存在し得る。本開示で、「mol/L」および「M」はモル濃度(モル/L)の単位として互換的に使用される。
金属は、例えば適切な金属塩を電解質に溶解させるなどして、カチオンの形で電気化学セルに導入するのが最も好都合である。しかしながら、金属が金属窒化物として、あるいは金属形態で導入されることを排除するものではない。金属カチオンは、そのような種から電解質中でその場で生成し得る。
リチウムカチオンなどの金属カチオンは、アンモニア合成中に電解質中に有意の濃度で存在する最も豊富な(すなわち存在する全カチオンの50%超)、または唯一のカチオン種であってもよい。一部の実施態様では、電解質は、このように実質的に非金属カチオンを含まないか、または0.2mol/L未満、例えば0.1mol/L未満の合計量でいずれの非金属カチオンを含む。
しかしながら、電気化学的性能に許容できないほどの影響を与えないのであれば、一部の実施態様では他のカチオンが存在し得る。特に、ホスホニウムカチオンは、金属カチオンを補完するのに適しており、場合によっては二窒素還元反応のファラデー効率を増加させることが見出されている。したがって、一部の実施態様では、電解質は、金属およびホスホニウムカチオンの合計量が電解質中1mol/Lを超えるような十分な量の少なくとも1つのホスホニウムカチオンを含む。一部の実施態様では、ホスホニウムカチオンは、電解質中に0.2mol/L超(例えば0.2mol/L~1.5mol/L)、または0.4mol/L超(例えば0.4mol/L~1.2mol/L)の量で存在する。
しかしながら、しかしながら、イミダゾリウムカチオンおよびピロリジニウムカチオンなどの特定の他の非金属カチオンは、金属媒介NRRのファラデー効率および/または収率に悪影響を及ぼすことが実験により見出されている。したがって、一部の実施態様では、電解質は、イミダゾリウムカチオンおよびピロリジニウムカチオンを実質的に含まないか、または0.5mol/L未満、または0.2mol/L未満、例えば0.1mol/L未満の合計量でいずれのイミダゾリウムカチオンおよびピロリジニウムカチオンを含む。一部の実施態様では、電解質は、有機窒素カチオンを実質的に含まないか、または0.5mol/L未満、または0.2mol/L未満、例えば0.1mol/L未満の合計量でいずれの有機窒素カチオンを含む。本開示で、有機窒素カチオンは、イミダゾリウム、ピロリジニウム、アンモニウムなどを含む、カチオン性窒素中心を含む有機カチオンを指す。一部の実施態様では、電解質は、ホスホニウム以外の非金属カチオンを実質的に含まないか、または0.5mol/L未満、または0.2mol/L未満、例えば0.1mol/L未満の合計量でいずれのホスホニウム以外の非金属カチオンを含む。
ホスホニウムカチオン(存在する場合)は、好適には、テトラアルキルホスホニウムカチオンなどのアルキルホスホニウムカチオンであり得る。テトラアルキルホスホニウムカチオンは、構造[PR(式中、R、R、RおよびRはC-C20n-アルキルから独立して選択される)を有し得る。一部の実施態様では、R、R、RおよびRの炭素原子の合計値は少なくとも7、または少なくとも13、または少なくとも16である。当業者に理解されるように、テトラアルキルホスホニウムカチオンの合計鎖長の増加は、一般に有機媒体へのその溶解度を増加させ、その塩の融点を低下させ、水を吸収または溶解するその傾向を低下させる。一部の実施態様では、R、RおよびRはC-C20n-アルキルから独立して選択され、RはC-C20n-アルキルである。
一部の実施態様では、アルキルホスホニウムカチオンはイオン液体カチオンであり、これは、適した対イオン(例えばフッ素化スルホニルイミド、フッ素化スルホニルメチドおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの陰イオン)と対になったときに、イオン液体、例えば室温イオン液体を形成できることを意味する。本開示で、イオン液体は融点が100℃未満である塩であり、室温イオン液体は融点が25℃未満である。そのようなカチオンは、電解質中の他の溶媒および塩との溶解度/混和性が高く、導電性が高く、(イオン液体中で)高濃度のNを溶解する能力があるため、好ましいと考えられる。
アニオン
電解質は、フッ素化スルホニルイミド、フッ素化スルホニルメチドおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの陰イオンを含む1つ以上のアニオンを含む。1つまたは複数のアニオンが、金属カチオンおよび存在するいずれの他のカチオン種を含む電解質中に存在するカチオン種の電荷バランスをとるために存在する。本開示で、アニオンおよび陰イオンは同じ意味を有する。
アニオン、特に電気化学反応の開始前に電解質に意図的に配合されるアニオンは、好ましくは弱配位性アニオンである。非配位性アニオンと呼ばれることもある、広範囲の弱配位性アニオンが電気化学合成およびイオン液体技術の分野において既知である。弱配位性アニオンの非限定的な例としては、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、過塩素酸塩、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェートなどのフルオロアルキルホスフェート、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートおよびテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどのフルオロアリールボレート、テトラキス[ヘキサフルオロイソプロピル]ボレートなどのフルオロアルキルボレート、トリフルオロメタンスルホネート(トリフレート)などのフッ素化スルホネート、および他のペルフルオロアルキルスルホネート(例えばペルフルオロヘキサンスルホネート)、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドおよび(フルオロスルホニル)-(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどのフッ素化スルホニルイミド、およびトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドなどのフッ素化スルホニルメチドが挙げられる。
弱配位性アニオンは電気化学的用途に好ましいが、フッ素化スルホニルイミドまたはメチド陰イオン(1つもしくは複数)と組み合わせて他のアニオンが電解質中に存在することを排除するものではない。例えば、塩化物は、例えばアノード反応がH酸化である場合など、一部の実施形態において陽極酸化に対して十分に安定であると考えられ、それ故に使用され得る。
電解質中に存在する1つまたは複数のアニオンとしては、フッ素化スルホニルイミド、フッ素化スルホニルメチドおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの陰イオンが挙げられる。本開示で、フッ素化スルホニルイミドは、1つまたは2つのフッ素化スルホニル基(すなわち-SO-R、ここでRはフッ素置換オルガニル基である)共有結合した負の炭素原子を含む一価のアニオンである。
フッ素化スルホニルイミドおよびメチドは、電気化学的に安定な弱配位性アニオンであり、形式的に負の窒素または炭素から電子求引性のフッ素化スルホニル基への電荷の非局在化が高いためである。少なくとも一部のフッ素化スルホニルイミドおよびメチドは立体的にかさ高いアニオンでもある。フッ素化スルホニルイミドおよびメチドアニオンは、電極に安定な固体-電解質界面(SEI)層を形成することによりサイクル安定性を促進することができ、二次電池用のリチウム系電解質に使用されている。したがって、例えば、リチウム金属電池用電解質に使用することで、電池充電中のリチウム金属アノードにおけるリチウムデンドライトの形成や電解質の分解を抑制することができる。本発明者らは、このような電池プロセスとカソードリチウムを介した電気化学的窒素還元反応との類似性を認識した。したがって、リチウム電池用途として以前に実証または提案されたフッ素化スルホニルイミドおよびメチドアニオンの範囲は、本開示の方法に適している。これらの構造の命名法は、文献において非体系的であり、IUPAC命名規則が明確でないことに留意されたい。例えば、アニオン[CFSO-N-SOCFは、イミドまたはアミドと称されているが、ここでは、負に帯電した窒素を表すためにイミドという用語を使用する。
一部の実施態様では、フッ素化スルホニルイミドは、下記式2に従う構造を有する。
Figure 2024521443000006
式2中、Rはフッ素化オルガニル基であり、任意選択的に-F、フルオロアルキル(例えばペルフルオロアルキル)およびフルオロアリール(例えばペルフルオロアリール)からなる群より選択される。REWGは電子求引基であり、任意選択的にスルホニル(例えばフッ素化スルホニル、-SO-R)、シアノ(-CN)、およびアシル基(例えばフッ素化したアシル、-C(=O)-R)、およびニトロソ(-N=O)からなる群より選択される。任意選択的に、RおよびREWGは結合して環構造を形成する。
リチウム電池用途に実証または提案されている式2に従う例示の化合物としては、(i)メチルカーボネート(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(R=-CF;REWG=-C(=O)-CH)(Gunderson-Briggs et al,Angew.Chem.Int.Ed.2019,58,4390)、(ii)シアノ(トリフルオロメタンスルホニル)イミドおよびシアノ(ペルフルオロブタンスルホニル)イミド(R=-CF、-C;REWG=-CN)(米国特許第6,294,289号明細書)、(iii)ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、および(トリフルオロメタンスルホニル)-(フルオロスルホニル)イミド(FTFSI)(R=-CF、-F;REWG=-SO-CF、-SO-F)、(iv)様々なフルオロアリール基を含む対称および非対称ビス(スルホニル)イミド塩(R=-CF3、Ar;REWG=-SO-Ar、ここでAr=部分的にフッ素化したアリールまたはペルフルオロアリール基)(Huang et al,Energy Environ.Sci.,2018,11,1326)、および(v)シクロ-ジフルオロメタン-1,1-ビス(スルホニル)イミド(RはREWGと結合して-CF-を形成)(Murmann et al,Phys.Chem.Chem.Phys.,2015,17,9352)が挙げられる。
一部の実施態様では、フッ素化スルホニルメチドは下記式3に従う構造を有する。
Figure 2024521443000007
式3中、Rはフッ素化オルガニル基であり、任意選択的に-F、フルオロアルキル(例えばペルフルオロアルキル)およびフルオロアリール(例えばペルフルオロアリール)からなる群より選択される。REWGはそれぞれ独立して電子求引基であり、任意選択的にスルホニル(例えばフッ素化スルホニル、-SO-R)、シアノ(-CN)、およびアシル基(例えばフッ素化したアシル、-C(=O)-R)、およびニトロソ(-N=O)からなる群より選択される。任意選択的に、RおよびREWGは結合して環構造を形成する。
リチウム電池用途に実証または提案されている式3に従う例示の化合物としては、(i)ビス(シアノ)(トリフルオロメタンスルホニル)メチドおよびビス(シアノ)(ペルフルオロブタンスルホニル)メチド(R=-CF、-C;REWG=-CN)(米国特許第6,294,289号明細書)、および(ii)トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(R=-CF;REWG=-SO-CF)(Walker et al,J.Electrochem.Soc.,Vol.143,1996)が挙げられる。
一部の実施態様では、少なくとも1つの陰イオンは、任意選択的に式2に従う構造を有するフッ素化スルホニルイミドからなる群より選択される。一部の実施態様では、1つまたは複数のフッ素化スルホニルイミドが下記式1の構造を有する。
Figure 2024521443000008
式1中、Rf1およびRf2は独立して-F、C-C12ペルフルオロアルキルおよびフルオロアリール(任意選択的にペルフルオロアリール)からなる群より選択されるか、またはRf1およびRf2は結合してペルフルオロアルキレンリンカーを形成する。一部の実施態様では、Rf1およびRf2は独立してFおよびC-Cペルフルオロアルキルからなる群より選択される。一部の実施態様では、少なくとも1つの陰イオンはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、(トリフルオロメタンスルホニル)(フルオロスルホニル)イミド(FTFSI)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。一部の実施態様では、少なくとも1つの陰イオンが本開示に記載の単一のフッ素化スルホニルイミドからなる。一部のそのような実施態様では、少なくとも1つの陰イオンはTFSI(NTfとも称される)である。
フッ素化スルホニルイミド、フッ素化スルホニルメチドおよびそれらの組み合わせより選択される1つまたは複数の陰イオンが、電解質中に1mol/L超、好ましくは1.25mol/L超、より好ましくは1.5mol/L超の濃度で存在し得る。一部の実施態様では、濃度は金属カチオン濃度と実質的に同じである。これは、電解質が、金属カチオンと、フッ素化スルホニルイミドおよび/または1つまたは複数のフッ素化スルホニルメチドアニオンとの1つまたは複数の塩のみ用いて配合される場合である。電解質が1つまたは複数のホスホニウムカチオンを含む場合、濃度は金属カチオンと1つまたは複数のホスホニウムカチオンの合計濃度と実質的に同じであり得る。これは、電解質が、(i)金属カチオンとフッ素化スルホニルイミドおよび/またはフッ素化スルホニルメチドの1つまたは複数のアニオンの1つまたは複数の塩と、(ii)1つまたは複数のホスホニウムカチオンと、フッ素化スルホニルイミドおよび/またはフッ素化スルホニルメチドの1つまたは複数のアニオンとの1つまたは複数の塩とを組み合わせて配合される場合である。
フッ素化スルホニルイミド、フッ素化スルホニルメチドおよびそれらの組み合わせより選択される陰イオンは、好ましくは、電解質中に存在する最も豊富な(すなわち50%超)、または唯一の弱配位性アニオンである。一部の実施態様では、陰イオンは、電解質中に存在する弱配位性アニオンの合計量の少なくとも50mol%、または少なくとも80mol%、または少なくとも90mol%、または実質的に100mol%を含む。いかなる理論によっても限定されることを望むものではないが、他のアニオンの最小化または排除は、カソード表面における金属カチオンとフッ素化スルホニルイミド(またはメチド)アニオンの保護イオン集合を増進することが提案される。
一部の実施態様では、陰イオンは、電解質中で最も豊富な(すなわち50%超)アニオンであるか、または電解質中に存在するいずれのアニオン性反応中間体(脱プロトン化プロトンキャリアなど)を除いた唯一のアニオンである。一部の実施態様では、少なくとも1つの陰イオンは、電解質中に存在するアニオンの合計量の少なくとも50mol%、または少なくとも80mol%、または少なくとも90mol%を含む。
フッ素化スルホニルイミドおよび/またはメチドは、通常、例えば金属塩またはホスホニウムイオン液体添加剤として、金属および任意のホスホニウムカチオンと共に電解質に導入される。しかしながら、電解質中の他のカチオン種、例えばカチオン性プロトンキャリアの対イオンとして導入され得ることも除外されない。
プロトンキャリア
電解質はプロトンキャリアを含む。本開示で説明されるように、プロトンキャリア(図1のBH)の役割は、二窒素のアンモニアへのカソード還元のためにプロトンを提供することである。少なくとも一部の実施態様では、これは、カソード上に形成された金属窒化物中間体との反応によって生じることが提案されている。得られた脱プロトン化プロトンキャリア(図1のB)は、プロトン受容体となり、アノード反応によって電解質に導入されたプロトンとの再プロトン化によって電解質中で再生され得る。全体の連続的なプロセスにおいて、プロトンキャリアは、アノードで生成したプロトンをカソードで反応させるために運搬またはシャトルする。プロトンはカソードに到達する前に脱プロトン化されたプロトンキャリアによって遮断されるため、HERを介してHに還元されることはない。
結果として、プロトンキャリアは、NHを生成するためにLiNまたは他の金属窒化物と反応性であるべきであるが、そのような実施形態では、二水素および/または水素化物への競合的プロトン還元の速度を減少させるために弱酸性であるにすぎない。また、プロトンキャリアは、最小限の副反応で複数の脱プロトン化/再生サイクルを循環できることが好ましい。このように、プロトンキャリアはプロセスにおいて触媒的な役割を果たし、プロトンキャリア試薬の消費およびカソードまたはアノードでの望ましくない分解反応を最小限に抑える。このように、プロトン化形態と脱プロトン化形態の間をシャトリングできる弱酸性プロトンキャリアが好ましいが、代わりにプロトンキャリアがプロトン(H)またはヒドロニウムイオン(H)であることも排除されない。
連続的なNH合成の間、特に定常状態またはそれに近い運転条件では、電解質は、プロトンキャリアとそれに対応する脱プロトン型(プロトン受容体)の両方の混合物を含むことができる。他の物質(例えば、Li、LiN、LiH)が蓄積していなければ、アノードでのプロトンの生成とカソードでの消費(所望のNHまたはHなどの副生成物)が正確に一致するとき、連続運転されるセルは、両方の種の定常状態の相対濃度に達する。実際、電解質中に両種が存在すると、望ましい緩衝作用が生じることが理解されている。この緩衝作用により、プロトンキャリアは、起動時および/または間欠駆動による電流の変動時に、アノードでの過剰なプロトン生成を吸収することができる。さらに、電解質中のプロトン受容体の濃度がかなり高い状態で運転することによって、プロトンの高い割合が、HERのような望ましくないカソード反応に関与する前に阻止され、消費されることが確保される。
プロトンキャリアの適した濃度が、プロトンキャリア分子の選択を含む、全体の電気化学的システムの仕様に依存することが理解される。一部の実施態様では、プロトンキャリアおよびプロトン受容体は、0.001mol/L超、または0.01mol/L超、または0.05mol/L~0.5mol/Lの範囲の合計濃度で電解質中に存在する。
プロトンキャリアは、中性またはカチオン性であり得、対応するアニオン性または中性プロトン受容体を形成するために可逆的脱プロトン化が可能であり得る。本開示で可逆的脱プロトン化とは、プロトンキャリアが脱プロトン化されてプロトン受容体を形成することができ、次いで再プロトン化されてプロトンキャリアを再生することができることを意味する。提案されたメカニズムと一致して、プロトンキャリアは、LiNのような金属窒化物と、好ましくは室温での溶液中で反応することによって、プロトン受容体に脱プロトン化することができる。プロトン受容体は、遊離プロトンおよび/または有機酸との反応によって、プロトンキャリアを形成するために、好ましくは室温で溶液中でプロトン化することができる。本発明者らは、このような反応が、本発明の方法において使用するためのプロトンキャリア候補を評価する便利な方法を提供することを見出した。
一部の実施態様では、プロトンキャリアはアニオン性プロトン受容体を形成する可逆的脱プロトン化が可能な中性プロトンキャリアである。アルコール、エーテルおよび酸を含む広範囲の中性プロトンキャリアが有効である。一部の実施態様では、中性プロトンキャリアはアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノールまたはブタノールである。一部の実施態様では、酸は弱配位性アニオンの共役酸(プロトン化形態)、例えば電解質中に存在するフッ素化スルホニルイミドおよび/またはメチドである。
一部の実施態様では、プロトンキャリアは、イリドである中性プロトン受容体を形成する可逆的脱プロトン化が可能なカチオン性プロトンキャリアである。カチオン性プロトンキャリアおよびその対応するプロトン受容体は典型的には有機種である。中性プロトン受容体分子はイリドであり、イリドは形式的に負電荷を有する原子が形式的に正電荷を有するヘテロ原子に直接結合した中性双極分子である。したがって、イリドは双性イオンの一種である。
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、適したイリドは、負電荷の電子の一部が正電荷中心の空の軌道と共有されるため、必要に応じてプロトン化反応と脱プロトン化反応によって、カチオン性プロトン供与体と可逆的に相互変換できると考えられている。これによって、金属を介した連続的なアンモニア合成においてプロトン供与体に要求される弱酸性領域の酸性を、プロトン化型に与えることができると考えられている。
一部の実施態様では、イリドは、正に帯電したヘテロ原子に隣接するカルバニオンを含む。したがって、分子上のプロトンキャリア部位は炭素原子であり、脱プロトン化形態におけるカルバニオンからプロトン化形態におけるC-H共有結合へと遷移する。
一部の実施態様では、カチオン性プロトンキャリアはアルキルホスホニウムカチオンまたはアルキルスルホニウムカチオンであり、中性プロトン受容体は対応するホスホニウムイリドまたはスルホニウムイリドである。
一部の実施態様では、カチオン性プロトンキャリアはホスホニウムカチオンであり、中性プロトン受容体は対応するホスホニウムイリドである。ホスホニウムカチオンはアルキルホスホニウムカチオンであり得る。本開示で、アルキルホスホニウムカチオンは、少なくとも1つの任意選択的に置換されたアルキル基を含むホスホニウムカチオンを指す。アルキルホスホニウムカチオンは、一般に、ホスホニウム-カルバニオンイリド(R’)-C(R”)(式中、R’およびR”オルガニル基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい)へ脱プロトン化が可能ないずれのそのような種であり得る。
アルキルホスホニウムカチオンの脱プロトン化によるイリドの形成は、有機合成化学の分野で知られており、イリドは一般にWittig試薬と呼ばれている。ホスホニウム-カルバニオンイリドは、多くの合成反応スキームにおいて求核試薬として有用である。例えば、Wittig反応では、ホスホニウムイリドは[2+2]環化付加反応を介してカルボニル基と反応し、オキサホスフェタンを形成し、続いて脱離し、アルケンとホスフィンオキシドを生成する。イリド試薬を用いた合成反応は、一般に、反応性イリドがホスフィンオキシドのような安定種に非可逆的に転化することで進行する。
これに対して、本発明の実施態様は、ホスホニウムイリドを可逆的なプロトンシャトル剤として使用し、電解質中のプロトンを遮断し、窒素とのプロトン化反応のために輸送して、アンモニアを形成する。
広範囲のアルキルホスホニウムカチオンが、例えばスキーム1に示されるように、イリドプロトン受容体への可逆的脱プロトン化の影響を受けやすいという要件のみを条件として、本発明に適していると考えられる。したがって、アルキルホスホニウムカチオンは式4の構造を有し、対応するイリドは式5の構造を有する
Figure 2024521443000009
一部の実施態様では、R、R、Rは独立して、アルキル(例えばC-C20n-アルキル基)およびアリール(例えばフェニル基)より選択され、Rは、水素、アルキル(例えばC-C20n-アルキル基)およびアリール(例えばフェニル基)より選択され、Rは、水素、アルキル(例えばC-C19アルキル基)、シクロアルキル(例えばC-Cシクロアルキル基)、ハロゲン、エーテル、エステル、アシル、アミノおよびニトリル官能基で置換されたアルキル(例えばC-C19アルキル)もしくはシクロアルキル、アリール(例えばフェニル基を含む-C)、エステル(例えば-C(=O)O(C-Cアルキル)、アミド(例えばC(=O)NHC、C(=O)N(Me)OMe)、ニトリル(-CN)、ハロゲン、エーテル(例えば-O(C-Cアルキル)、チオエーテル(例えば-S(C-Cアルキル)、-SC)、-PR1011および-P(=O)R1213より選択され、ここで、R10~R13は独立してアルキル(例えばC-C)アルキルおよびアリール(例えば-C)である。R~Rのいずれのアルキルおよびアリール基は、非置換であっても、ハロゲン、エーテル、ヒドロキシ、エステル、アシル、アミノおよびニトリル官能基などの置換基で置換されていてもよく、R~Rのいずれか2つが結合して環状構造を形成してもよい。
当業者に理解されるように、基R~R、特にRは、アルキルホスホニウムカチオンの酸性度、したがって、プロトン供与能力を制御するために選択され得る。
一部の実施態様では、R、RおよびRはC-C20n-アルキルおよびフェニルから独立して選択され、Rは水素であり、Rは、水素およびC-C19n-アルキルより選択される。
一部の実施態様では、アルキルホスホニウムカチオンはイオン液体カチオンであり、適切な対イオンと対になった場合に、イオン液体、例えば室温イオン液体を形成できることを意味する。テトラアルキルホスホニウムカチオンを含む一般式4のホスホニウムカチオンは、BF 、PF 、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート(eFAP)を含むフルオロアルキルホスフェート;テトラキス[ヘキサフルオロイソプロピル]ボレートなどのフルオロアルキルボレート;ビス(フルオロスルホニル)イミドビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドおよび(フルオロスルホニル)-(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含むフッ素化ビス(スルホニル)イミド;トリフレートを含むフッ素化スルホネート並びに他のペルフルオロアルキルスルホネートなどの対イオンと組み合わせてイオン液体を形成する。このタイプのイオン液体は、先行技術(例えばMacFarlane et al、国際公開第2017/132721号)における窒素還元という面において、溶解した金属カチオンなしで使用されてきた。しかしながら先行技術に開示されたカソード電位において、これらのイオン液体は、脱プロトン化する傾向を示さない。金属窒化物の形成を達成するために、例えば-2.0VvsAg/Agよりも負であるなど、本ケースで必要とされるより著しく負の電位では、これらのイオン液体は、活性なプロトン供与体になり得る(特に、より反応性の高い中性プロトンキャリアが存在しない場合)。
一部の実施態様では、アルキルホスホニウムカチオンはテトラアルキルホスホニウムカチオンである。テトラアルキルホスホニウムカチオンは、[PR(式中、R、R、RおよびRはC-C20n-アルキルから独立して選択される)構造を有し得る。一部の実施態様では、R、R、RおよびRの炭素原子の合計値は少なくとも7個、または少なくとも13個、または少なくとも16個である。当業者に理解されるように、テトラアルキルホスホニウムカチオンの結合鎖長の増加は、一般に、有機媒体へのその溶解度を増加させ、その塩の融点を低下させ、水を吸収または溶解する傾向を低下させる。一部の実施態様では、R、RおよびRはC-C20n-アルキルから独立して選択され、RはC-C20n-アルキルである。
プロトンキャリア系は、例えば、中性のプロトンキャリアまたはカチオン性プロトンキャリア種の適切な塩を電解質に溶解することによって、プロトン化された形態で化学セルに導入し得る。しかしながら、NH合成反応を促進するために、プロトン化されたプロトンキャリアまたは対応するプロトン受容体のいずれかを最初に電気化学セルに供給し得ることが理解される。
溶媒
電解質は、典型的には液体であり、好ましくは、物質移動の制限が回避されるかまたは許容できる程度に低い粘度を有する。いくつかの実施形態において、電解質は、25℃で50MPa・s未満、または20MPa・s未満、または15MPa・s未満の粘度を有する。この粘度は、Lovis2000M Anton Paar粘度計(Lovis角30°)を用いてISO12058に従って測定することができる。
電解質は、このように1つ以上の非水溶媒を含むことができる。適切な非水溶媒は一般に非プロトン性溶媒、例えば非プロトン性分子溶媒である。溶媒は、好ましくは、反応条件下で安定であるか、またはせいぜい分解が小さい程度であるべきである。
一部の実施態様では、電解質は、エーテル、ポリエーテル(例えばメチル化ポリエーテル)、グリコールエーテル(例えばテトラグライムなどのメチル化グリコールエーテル)、フッ素化エーテル、フッ素化アルキル、フッ素化シクロアルキル、カーボネート、スルホランおよびジメチルスルホキシドからなる群より選択される1つ以上の分子溶媒を含む。適したエーテル溶媒の例はテトラヒドロフラン(THF)である。
一部の実施態様では、電解質は、金属カチオンを溶媒和できる非プロトン性供与体溶媒を含む。適した溶媒の例としては、THF、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、カーボネート、ジメトキシエタン、グリム、ジオキソランが挙げられる。いかなる理論によっても限定されることを望むものではないが、そのような溶媒は、金属カチオンへの配位によって、電解質中の必要な高濃度の金属カチオンを促進し得ることが提案される。また、非プロトン性供与体溶媒の存在は、金属カチオンとアニオンとの電荷分離を促すことによって、高イオン濃度の電解質液体の導電性を好都合に増大させ得る。このように、非プロトン性供与体溶媒は、各金属カチオンが複数の非プロトン性供与体溶媒分子によって溶媒和され得るのに十分な濃度で存在し得る。
一部の実施態様では、液体電解質は、例えば、電解質中の全非水性溶媒の少なくとも20wt.%、または少なくとも50wt.%の量で室温イオン液体溶媒を含む。いかなる理論によっても限定されることを望むものではないが、特定のイオン液体溶媒は、金属カチオンの溶媒和を助けるか、かつ/または電解質におけるNの溶解度を増加させるのに有用であり得る。任意選択的に、イオン液体は、アニオンとして、フッ素化スルホニルイミド、フッ素化スルホニルメチドおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの陰イオンを含む。
しかしながら、いくつかのイオン液体カチオンは、おそらく金属媒介NRRを駆動するのに必要なカソード電位で不可逆的に分解するため、二窒素還元反応に悪影響を及ぼすことが実験により見出されている。したがって、いくつかの実施形態では、イオン液体は、イミダゾリウム系またはピロリジニウム系のイオン液体ではない。いくつかの実施形態では、イオン液体のカチオンは有機窒素カチオンではない。対照的に、ホスホニウム系イオン液体添加剤は、特に低いN圧力において、ファラデー効率および収率を向上させることが可能であることが見出されている。このようなイオン液体は、金属を介するNRRの条件下では、十分に安定であるか、(カチオン性プロトンキャリアとして)望ましい反応性を示す。
本開示の電解質は、溶媒またはプロトンキャリアとして水が存在しないように、非水電解質であってもよい。非水電解質は、好ましくは、実質的に水を含まない、すなわち、水の量がゼロであるか、または本明細書に開示されるような連続的な金属媒介電気化学的NH合成反応の反応サイクルに有意な程度まで干渉しないほど低いことを意味する。例えば、1000ppm以下、好ましくは100ppm以下、最も好ましくは20ppm以下の水を含むことができる。
カソード、アノードおよび電源
本開示の方法は、一般に、カソードと、アノードと、カソードおよびアノードに接続された電源とを含む電気化学セルにおいて実施される。電源は、電気化学的アンモニア合成を駆動するのに十分な電圧をカソードとアノードとの間に印加するように構成される。
カソードは、必要な還元電位で安定な任意の導電性電極であり得、例えば、以前に報告されたリチウム媒介連続電気化学合成(例えば、Tsuneto et al,Chemistry Letters 1993,851-854)または金属カチオンの金属形態への還元を伴う他のプロセスで使用される金属電極であり得る。好適な金属の非限定的な例としては、Ni、Nb、Ti、Mo、Fe、Cu、AgおよびZnならびにそれらの合金を挙げることができる。他の実施形態では、カソードの金属は、アンモニア合成を媒介する金属(例えば金属リチウム)からなるか、または金属からなる。
リチウム媒介窒素還元反応の一般的に理解されているメカニズムは、カソードの電気触媒的役割を示唆していないが、それにもかかわらず、驚くべきことに、カソード材料の選択が収率およびファラデー効率に影響を与えることが見出されている。いかなる理論にも限定されることを望むものではないが、電解質-電極界面層中の嵩高で電気化学的に安定なアニオンと金属カチオンを含む保護イオン集合体が、合成中にカソード表面に形成されることが提案されている。本明細書で開示されるような電解質組成物は、改善されたアンモニア合成結果に対する主要な一因と考えられるが、カソード表面組成物は、望ましいイオン性集合体の形成を促進する上で二次的な役割を果たし得る。いくつかの実施形態において、カソードは、金属のニッケル、ニオブまたは銅、好ましくはニッケルまたはニオブ、最も好ましくはニッケルを含む。
カソードは、円柱、円板、プレート、またはセル設計に適した他の形状とすることができる。カソードはさらに、例えばエッチングによって多孔質にしたり、発泡体や圧縮粒子の塊として、あるいは逆オパール構造にしたりすることができる。所望のメディエーター金属は、最適な粗さおよび多孔性をもたらす下地構造上に、例えば電着または化学蒸着によってコーティングすることもできる。カソードはまた、金属ナノ粒子を不活性な構造に堆積させることによって形成することもできる。
本開示に記載の一部の実施形態の利点は、二窒素の継続的な電気化学的還元中に、カソードの有害なファウリングを回避または最小化し得ることである。その代わりに、固体LiF、S-O種および無傷のフッ素化スルホニルイミドアニオンを含む、非常に薄く(<10nm)かつコヒーレントな固体界面層の形成が観察された。いかなる理論にも限定されることを望むものではないが、この層は単に良性である場合もあれば、カソード表面で起こる還元プロセスを有益に媒介する場合もある。したがって、一部の実施形態では、カソードは、例えば6時間アンモニアを生成した後、電気化学的還元条件下で、LiF(および任意にS-O種および/または無傷のフッ素化スルホニルイミドまたはメチドアニオンも)を含む薄い固体界面層で被覆された表面を含む。この層は、電解質の電解還元によってその場で生成してもよいし、別の適切な技術、例えば、予備工程でのカソード表面への固体界面層の電解コーティングまたは他の合成によって生成してもよい。
OまたはHなどの水素含有種を酸化してプロトンを形成するのに適したアノードは、電気化学の分野において周知である。一部の実施態様では、アノードは白金電極である。
電源は、直流電源のような、電解システム用のいずれの従来の電源であり得る。任意選択的に、電源は、光起電力太陽電池を含み得る。アンモニアを電力、特に再生可能電力から製造できることは、本発明の特に大きな利点であると考えられる。例えば、本発明によって、太陽光発電または風力発電の電力を使用して、アンモニアベースの肥料を必要な時点で製造できるようになることが想定される。これは、水耕栽培のような高価値の農業用途で特に価値がある可能性があり、または遠隔地への肥料輸送に関連する物流上の課題を最小限に抑えることができる可能性がある。
二窒素のアンモニアへのカソード還元
本開示の方法は、カソード還元のために電気化学セルに二窒素を供給するステップと、二窒素を還元するのに十分な電位をカソードに印加してアンモニアを製造するステップと、を含む。電解質を通したカソードからアノードへの生じた電流によって、時間とともにアンモニアの収量が増加する。
本開示で「カソード還元」は、いずれの特定のメカニズムを示すものではなく、反応サイクルに関与する中間種を特定するものでもなく、これらの種が反応する場所(例えば、カソード表面またはバルク電解質中)を示唆するものでもないことが理解される。しかしながら、いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、図1を参照して本開示に記載されたメカニズムに従って、二窒素がカソード的にアンモニアに還元されることが提案される。したがって、全体のカソード窒素還元反応は、中性[B-H]およびカチオン[B-H]プロトンキャリアについて、それぞれ式(3)および(4)に示す通りであると考えられる。
Figure 2024521443000010
1bar超、または5bar超、または10bar超の二窒素分圧で、二窒素がカソード還元のために電気化学セルに供給され得る。一部の実施態様では、二窒素分圧は、0.7bar~100bar、または2bar~30bar、または5bar~20bar、または10bar~15barの範囲内である。セル内のN分圧を高くすると、電解質中に溶解したNの濃度を増加させることによって、アンモニア合成の収率およびファラデー効率を向上させ得る。これは、金属窒化物を形成するためのNと金属との間の所望の反応を促進すると考えられている。
二窒素は、電解質を二窒素と接触させ、それによって二窒素を電解質中に可溶化することによって、カソード還元のために電気化学セルに供給し得る。好ましくは、二窒素は、カソードにさらされたとき、溶液相に主に、または専ら存在する。静的なガス-電解質メニスカス(カソード/電解質/Nガス)において、ガス状二窒素にさらされたカソードの領域では、電解質の分解が促進されることが見出されている。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、この望ましくないプロセスは、二窒素の非常に高い濃度勾配と、静的なガス-電解質メニスカスを横切るプロトンキャリアの枯渇に起因しており、これによりカソード上の金属窒化物および/または金属(0)の形成速度が過度に速くなり、電解質の制御不能な電解還元変換が誘発される。電極-電解質-ガス-静的ガス-電解質メニスカスにおける電解質分解の促進は、電荷のかなりの部分を消費し、それによってファラデー効率を低下させ、結果として生じる不溶性の堆積物は、カソードへの物質移動を阻害し、それによって反応系を不安定化させ得る。したがって、一部の実施形態では、アンモニアを生成する際に、カソードは静的なガス-電解質メニスカスでガス状二窒素と接触しない。これを達成するために、カソードの電気化学的に活性な部分は、電解質に完全に浸漬され得る。
二窒素およびプロトンキャリアを還元するのに十分な絶対的なカソード電位は、金属カチオンの選択を含む様々な要因に依存することが理解される。リチウムカチオンが使用される場合、カソード電位は、-2.0VvsAg/Ag未満(より負)であり得る。
一部の実施態様では、カソード電位は、対応する還元形態、例えば金属形態および/または金属窒化物(見かけのLi/Li還元電位)への金属カチオンの見かけの還元電位より下(より負)である。本開示で、見かけの還元電位は、サイクリックボルタンメトリーにおけるクロスオーバー点によって測定される二窒素還元条件下での電解質中の金属カチオンの還元電位である。一部の実施態様では、カソード電位は、電解質中の金属カチオンの見かけの還元電位に対して、-0.2V、または-0.4Vより下(より負)である。そのような負電位で、優れた収率およびファラデー効率が得られ得る。しかしながら、一部の実施態様では、カソード電位は、電解質中の金属カチオンの見かけの還元電位に対して、-1V、または-0.8V、より上(より正)である。これより負の電位は、望ましくない電解質分解反応を促進し得る。
アンモニア合成を促すのに適した温度に電解質を維持し得る。温度は、-35℃~200℃、例えば15℃~100℃の範囲内であり得る。
少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、などの少なくとも70%、または少なくとも80%のファラデー効率で二窒素をアンモニアへ還元し得る。そのような高いファラデー効率は、生成したアンモニアの単位当たりの副生成物およびエネルギー損失を最小化するため非常に望ましい。
アンモニウム陽イオンは典型的にはプロトンキャリアより強い酸であることから、生成物であるアンモニアは、NH よりもむしろNHとして電解質中に存在すると予想される。しかしながら、過剰なプロトンが生成された場合、NH 形のアンモニアが生成される可能性は否定できない。生成物のアンモニアは気相に放出されることも予想される。
陽極酸化
本開示の方法は、電気化学セルのアノードでの水素含有種の陽極酸化によって、電解質にプロトンを導入することを含み得る。本開示に記載の原理によれば、プロトンは、電解質中のプロトン受容体と反応して、カチオン性プロトンキャリアを再生すると予想される。窒素還元反応に関与する主要なプロトン化剤と考えられるのは、プロトン自体ではなく後者の種である。
プロトンは、二水素(H)および水(HO)を含むいずれの適した水素含有種の酸化によって、電気化学セルのアノードで生成され得る。H酸化の場合、プロトンキャリアの全体のアノード再生プロセスは、中性プロトンキャリア[B-H]では式(4)、カチオン性プロトンキャリア[B-H]では式(5)で示される。HO陽極酸化の対応する反応は式(6)および(7)に示される。
Figure 2024521443000011
が酸化されてプロトンを生成する場合、電解質は、カソードおよびアノードの両方と接触し得る。したがって、アノードで形成される場合、プロトンは直接電解質に導入される。Hは、再生可能エネルギーによる水の電気分解を含めたいずれの供給源から得られ得る。任意選択的に、水の電気分解セルを窒素還元セルと統合して、Hを電気分解から窒素還元に直接供給することができる。
水は安価であるため、電気化学合成において特に望ましいプロトンの供給源であるが、金属を介した連続的なNRRを妨害することが知られている。したがって、HOを酸化してプロトンを生成する場合、アノードから電解質へのプロトンの間接的な移動が好ましいものであり得る。これは、窒素還元が行われる電解質中の水の存在を許容範囲内に制限または回避するのに役立つ可能性がある。例えば、電気化学セルは、2つの電解質:金属カチオン、フッ素化スルホニルイミドまたはメチドアニオン、およびプロトンキャリア(概して本開示に記載されているもの)を含むカソライトと、水が酸化されるアノードと接触するアノライト(液体、または固体、または液体と固体の混合物)を含み得る。電気化学セルは、アノライトからカソライトへのプロトンの移動は許容するが、水の移動は実質的に制限または回避するように構成される。これを実現するための様々な配置が電気化学合成の分野で知られており、より詳細については後述する。
本開示に記載の方法は一般に高いファラデー効率をもたらすが、一部の実施態様では、カソードでのHERとの競合により、Hが窒素還元反応の重大な副生成物として形成され得る。H副生成物は、任意選択的にカソードでの酸化のためにリサイクルされ得、選択された水素含有種の供給を補い得る。この結果、他のエネルギー含有副生成物がないため、生成されるアンモニアの単位当たりのエネルギー消費が減少される。
電気化学セル
本発明の実施態様を実施する電気化学セルの例を図2に概略的に示す。セル200は、セルチャンバー211内にニッケルカソード210を含む。セル200は、白金アノード212と、任意選択的にAg/Agなどの従来型の参照電極213をさらに含む。これら3個の電極が同じ液体電解質214に浸漬され、液体電解質214は、リチウムカチオン(>1mol/L、またはホスホニウムカチオンと共に合計濃度>1mol/Lで>0.5mol/L)と、唯一の弱配位性アニオンとしてのフッ素化スルホニルイミドアニオン(例えばTFSI)と、プロトンキャリア(例えばエタノール)をTHF中に含む。カソード210の導電性表面全体は、反応中に気体Nに曝されないように、電解質表面の下に完全に浸漬されている。任意選択的に、セルチャンバー211内の物質輸送を強化するために、電解質を混合または循環する攪拌機または他の手段が含まれ得る。電極は、カソード210とアノード212との間に電圧を印加することが可能な電源(図示せず)に接続され、カソードの還元電位が参照電極に対して制御(または測定)される。
セル200は、二窒素(N)と二水素(H)を含むガス混合物218をチャンバー211へ導入するガス注入口215をさらに含む。セルは、チャンバーのヘッドスペースからガス219を除去するガス排出口216と、電解質供給物222で電解質を補充する電解質注入口220と、電解質214を回収する電解質排出口221を含み得る。セルは、好ましくは高圧で作動するように構成されている。
使用時には、ガス混合物218が供給口215を介してチャンバー211内に加圧され、見かけのLi/Li還元電位より下(より負)であるカソード210での還元電位を確立するのに十分な電圧がカソードとアノードとの間に印加される。セルチャンバー211内の二窒素の分圧は10bar超であり得、二水素分圧は1bar超であり得る。結果として生じたセルを通る電流の流れは、本開示に記載の原理に従って、電気化学的に二窒素をアンモニアに還元する。アンモニア生成物は、ガス排出口216を介してガス219中に、および/または電解質排出口221を介して回収した電解質214中に、セルチャンバー211から連続してまたは周期的に除去され得る。
一部の実施態様では、セルは、これらの流れの一方または両方を連続的に引き出し、必要に応じてガス混合物218および/または電解質供給物222を導入することでガス反応物(NおよびH)および/または電解質を連続的に補充することによって定常状態で運転される。アンモニアは、ガス219および/または電解質214の引き抜かれた流れから分離されてもよく、残留ガスおよび電解質は、それぞれガス混合物218および電解質供給物222の一部としてセルチャンバー211にリサイクルされてもよい。電解質排出口221を介して引き出された電解質214の一部は、廃棄され(または再生され)、供給物222中の新鮮な電解質と交換されてもよく、こうしてセル内の目標電解質滞留時間が維持される。
使用時肥料生成セルの一実施形態では、出口ガス流219は、アンモニアをアンモニウム(NH4)として吸収するために、水中の硫酸またはリン酸の溶液に通される。このプロセスの生成物は、使用された酸のアンモニウム塩の溶液、例えば硫酸アンモニウム溶液であり、肥料溶液として直接適用することができる。水耕栽培や商業用温室で使用する場合は、植物への給水中にインラインで連続的に肥料を供給するようにセルを制御することができる。
本発明の実施形態を実施するための電気化学セルの別の例を図3に概略的に示す。セル300はカソードチャンバー311とアノードチャンバー331を含み、これらはプロトン透過性膜セパレータ333、例えばNafionのようなスルホン化ポリ(テトラフルオロエチレン)アイオノマーで作られた膜によって分離されている。ニッケルカソード310はカソードチャンバー311に配置されている。従来型の参照電極313もカソードチャンバー内にある。白金アノード312はカソードチャンバー331に配置されている。電極は、カソード310とアノード312の間に電圧を印加できる電源(図示せず)に接続され、カソードの還元電位は参照電極に対して制御(または測定)される。
カソード310および参照電極313はカソライト314に浸漬され、アノード312はアノライト334に浸漬される。カソライト314は、リチウムカチオン(>1mol/L、またはホスホニウムカチオンと共に>1mol/Lの合計濃度で>0.5mol/L)と、フッ素化スルホニルイミドまたはメチドアニオンと、本開示に概して記載されているプロトンキャリアを含む液体電解質である。アノライト334は、アノードでの酸化のために水を含むが、その他の点ではカソライト314と比較して組成が同一でも異なっていてもよい。膜セパレータ333は、カソード反応チャンバーとアノード反応チャンバーとの間のプロトン以外の化学種の透過を阻害するか、または実質的に妨げる。
セル300は、二窒素供給物318をカソードチャンバー311に導入するガス供給口315をさらに含む。セルは、カソードチャンバーのヘッドスペースからガス319を除去するカソードガス排出口316と、カソライト供給物325でカソライト補充するカソライト注入口324と、カソライト314を回収するカソライト排出口321を含み得る。セル300は、アノライト334を導入または補充するアノード入口340と、任意選択的に、アノードチャンバー331に1つ以上の水素含有種(例えば、液体または蒸気としてのHOおよび/またはH)を導入するアノード入口340を含み得る。アノライト排出口341は、アノライト334を回収するために設けられ、アノードガス排出口344は、アノードチャンバーのヘッドスペースからガス345を回収するために設けられる。
使用時、二窒素318は、ガス供給口315を介してカソードチャンバー311に加圧される。カソードチャンバー311内の二窒素の分圧は10bar超であり得る。水は、最初にアノライト344中に存在するか、かつ/またはアノード入口340を介してアノードチャンバーに供給される。見かけのLi/Li還元電位より下(より負)であるカソード310の還元電位を確立するのに十分な電圧がカソードとアノードとの間に印加される。セルを通る結果として生じた電流の流れは、本開示に記載の原理に従って、カソードチャンバー311で二窒素をアンモニアに電気化学的に還元する。
セル300では、セル200と異なり、水がアノード312で酸化されてアノライト334中でプロトンを生成する。プロトンは膜セパレータ333を通して移動して、セル内の電荷中性を維持し、それらはカソライト314を入れ、プロトン受容体をプロトン化することによってプロトンキャリアを再生する。しかしながら、水および他の望ましくない種は、膜セパレータ333によって、アノライト334からカソライト314への移動を除外または阻害される。
アンモニア生成物は、カソードチャンバー311から、ガス排出口316を介してガス319中で、および/または電解質排出口221を介して回収したカソライト314中で、連続してまたは周期的に除去し得る。セルは、連続して運転し得、セルから回収した電解質およびガスは、セル200について説明したのと同様に、アンモニアおよび他の副生成物の除去後にリサイクルし得る。カソードチャンバー311で副生成物として生成したいずれの二水素は回収され得、酸化のためにアノードチャンバー331へリサイクルされ得る。
変形例では、アノード312での酸化のために唯一の水素含有種として二水素をセル300に導入してもよい。この場合、カソライト314およびアノライト334の両方は、実質的に水を含まない。
セル300に表されている配置は、カソードで水を酸化し、その結果生じたプロトンを実質的に水を含まない電解質に選択的に透過させ、水に敏感なカソード反応に参加できるように構成された電気化学セルの一例に過ぎない。報告されている別のアプローチでは、セパレータが多孔質アノード(例えばガス拡散電極)に近接して配置されている。水を含むガス流(例えば湿った空気)がアノードの外側を横切り、セパレータが対流混合を妨げる。電解質は十分に疎水性であるため、ガス流からほとんど水は吸収されない。電解質の疎水性とガス流の湿度が適切に調整されていれば、セパレータはバルク電解液中の水分含有量を低く維持するためのプロトン選択性を必要としない。
報告されている別のアプローチでは、疎水性有機カソライトおよび極性(例えば水性)アノライトは非混和性であり、プロトン移動は両者の相境界を横切って行われる。この配置は、カソライトへの水の透過を十分に抑制しながら、満足のいくプロトン移動を可能にし得る。安定した相境界を維持するために、相境界の位置としてセパレータを使用することができる。
本発明を以下の実施例を参照して説明する。実施例は、本明細書に記載の発明を例示するものであり、限定するものではないことを理解される。
材料および方法
銅金属線(直径1.3mm;99.99%)はFisher Scientificから購入した。ニッケル線(直径0.5および2mm、≧99.9%微量金属基準)をSigma-Aldrichから購入した。ニオブ箔(0.127mm厚さ、99.8%微量金属基準)をAlfa Aesarから購入した。
リチウム過塩素酸塩(LiClO、99.99%)およびリチウムトリフルオロメタンスルホネート(LiOTf、96%)はSigma-Aldrichによって供給された。リチウムテトラフルオロボレート(LiBF4、98%)をAcr・s Organicsから購入した。リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI;≧99%;HQ-115、LOT10197)を3MFluoradから購入した。リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)は日本触媒(日本)から入手した。
エタノール(無水、≧95%)およびトリエチルスルホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(EtS-TFSI)をSigma-Aldrichから購入した。テトラヒドロフラン(BHTで安定化、分析グレード)、可溶性デンプンおよびリン酸(85wt.%)はChem-Supplyから供給された。ジメチルスルホキシド-d(DMSO-d;D、99%)はCambridge Isotope Laboratories Inc.(UK)から入手した。硫酸(98%)およびアセトンはUnivar Solutionから供給された。NHCl(>99%)、NaOH(ペレット、分析グレード)、サリチル酸(≧99%)、三クエン酸ナトリウム二水和物(分析グレード)、次亜塩素酸ナトリウム(10~15wt.%塩素)、ニトロプルシドナトリウム二水和物(≧99%)およびマレイン酸(≧99%)は、Sigma-AldrichおよびMerckから購入した。高純度脱イオン水(Sartorius Arium Comfort I超純水システムHO-I-1-UV-T;23±2℃で測定した抵抗率18.2MΩ cm)は、は、水を必要とするすべての手順で使用した。高純度グレードのN(99.999%;CO<1ppm、O<2ppm、HO<2ppm)およびAr(99.999%;CO<1ppm、O<2ppm、HO<2ppm)ガスは、BOC Australiaから購入した。
ホスホニウムおよびトリヘキシルスルホニウム塩(テトラデシル)ホスホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート;([P666,14][eFAP])、トリブチル(オクチル)ホスホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート;([P444,8][eFAP])、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド([P666,14][TFSI])、トリエチル(メチル)ホスホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスフェート;([P1222][eFAP])およびトリエチルスルホニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド[EtS][TFSI]は既報の方法に従って合成した。
電解質溶液は、活性化ゼオライト「分子篩」(3A、Sigma-Aldrich)上で1日間乾燥させたテトラヒドロフランを用いて調製し、その後、Ar充填グローブボックス(Korea Kiyon;O≦0.6ppmおよびHO≒0.0ppmレベルを連続してモニター)内の活性化ゼオライトの別の新鮮な部分上で保管した。すべてのリチウム塩は、グローブボックスアンティチェンバーで真空下、温度を上昇させて乾燥し、その後周囲環境にさらさずにグローブボックス内に移した。具体的には、LiBFおよびLiFSIを80℃で12時間乾燥し、LiClO、LiOTfおよびLiTFSIを120℃で24時間乾燥した。
電解質溶液を、Ar充填グローブボックス内でメスフラスコを用いて、乾燥THFに必要な濃度で乾燥リチウム塩を溶解することによって調製した。エタノールは、プロトンキャリアとして使用する前に、Ar充填グローブボックス内で少なくとも5日間、活性化ゼオライト上に保持した。電解質溶液の調製に必要なすべての化学薬品、調製した電解質溶液、使用した電解質溶液は、常にAr充填グローブボックス内に保管した。
電気化学実験は、Biologic VSP電気化学ワークステーションを用いた3電極構成のガス密閉ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)オートクレーブセル内で、周囲温度(23±2℃)で行った。作用電極と参照電極は、補助電極のらせん状コイル(d=16mm)の中心に配置した。)。
使用した作用電極(カソード)は、銅箔(電気活性領域0.62cm)、銅線(0.74cm)、ニオブ箔(0.18cm)、裸ニッケル線(Φ0.5mm;0.15cm)、単離したニッケル線(Φ0.5mm;0.05cm)またはニッケルディスク(Φ2mm;0.031cm)であった。銅線、ニオブ箔およびニッケル線は、市販のサプライヤーから入手したものを使用した。銅箔は銅線から厚さ0.39mmの板状に圧延した。銅箔の集電体は銅線とした。ニッケルディスク電極は、ニッケル線(Φ2mm)をテフロン(登録商標)シース内に閉じ込め、片側の平らな端部のみを電解液に露出させて特注した。絶縁ニッケル線電極は、ニッケル線(Φ0.5mm)を、電解液に露出する3mmを残してガラスシースにガラス吹きして作製した。使用前に、ニッケルディスクとニオブ箔を除くすべての作用電極を、可溶性デンプン(1:1000w/v)を含むリン酸(85%水溶液)中で連続撹拌(テフロン(登録商標)ライニングのマグネチックスターラー;1000rpm)しながら、直流電源(Powertech,MP-3091)を用いて5Vの印加電圧で2分間直接電解研磨した。電解研磨した電極を無水エタノールで洗浄し、圧縮窒素ブローガンで乾燥させた。上記の手順に従って1分間電解研磨する前に、ニッケルディスク電極を、研磨パッド布とエタノール中のアルミナ(0.3μm、Buehler)のスラリーを用いて機械的に研磨した(鏡面仕上げまで少なくとも150桁の「8」)。ニオブ箔電極は上記の手順では電解研磨できず、使用前にエタノールですすぎ拭きしたのみであった。
電気化学実験の補助電極は白金線で、無水エタノール中で超音波洗浄(40KHz、120W)を1時間行い、圧縮窒素気流下で乾燥させた後、プロパン-ブタンバーナーでフレームアニールした。準参照電極として、メインコンパートメントと同じ電解質溶液を満たしたフリット付きガラス管内に閉じ込めた銀線を使用した。各実験の前に、フリット付きチューブを超音波処理(40KHz、120W)下で無水エタノールで30分間洗浄し、さらに窒素ガス加圧下でエタノールをフリット内に押し込んだ。これらの手順を3回繰り返した後、フリット付きチューブを120℃のオーブンで1時間乾燥させ、さらに真空下80℃で20分間乾燥させた。採用した銀線準参照電極の電位は、サイクリックボルタンメトリーのクロスオーバー点から推定したリチウム(0/+)プロセスの見かけの電位に対して較正した。この方法で測定された電位は、LiとN、エタノール、場合によってはテトラヒドロフランとの化学反応に影響されるため、
Figure 2024521443000012
酸化還元カップルの真の電位ではない。したがって、本開示では見かけのリチウム(0/+)電位(Li/Li)と呼ぶ。
組み立てのためにグローブボックスに導入する前に、セルを0.1M KOH(aq.)に、次に0.05M HSO4(aq.)に、それぞれの溶液に数時間浸し、その後、水と無水エタノールで激しく洗浄した。この洗浄手順は、残留アンモニアや、NRRを妨害する可能性のある酸化型窒素(NO)を含むその他の不要な汚染物質の除去に非常に効率的であることが証明されている。電気化学実験前後の溶液や化学薬品の調製と保管に使用したすべてのメスフラスコ、容器、バイアル、その他の実験器具は、水と無水エタノールで洗浄し、セルに使用した手順と同じ手順に従って乾燥させた。
洗浄手順の終了後、電気化学セルのすべての部品と必要な実験器具を、グローブボックスの控え室で80℃の真空下、少なくとも15分間乾燥させた。セルをArで満たされたグローブボックスに導入し、組み立てと必要に応じて電解質溶液の充填を行った。その後、セルを密閉し、グローブボックスから取り出して、セル内部への空気の侵入を防ぐ方法でNで加圧した。特に断りのない限り、カソードプロセスにおけるHのLiHへの還元による寄与を避けるため、水素はセル内に導入しなかった。Hがない場合、プロトン形成アノード反応はTHFの酸化である。
テフロン(登録商標)ライニングを施したマグネチックスターリングバー(l=10mm、d=3mm)を用いてメインチャンバー内の電解質溶液を600rpmで攪拌しながら、システムを約30分間平衡化させた。その後、電気化学的還元反応を行い、主要な実験を少なくとも3回再現し、対応するデータを平均値±1標準偏差で示した。
実験終了後、加圧ガスを0.05MのHSO水溶液15mLを満たしたトラップを通してゆっくりと放出し(約10mL min-1)、ガス状アンモニアを捕捉した。トラップ中のNH量は、常に作動電解質溶液中で見られたものより少なくとも2桁低かった。したがって、すべての収率およびファラデー効率データは、作動電解質溶液中で生成されたアンモニア量のみに基づいている。
実験で多量のアンモニアが生成したため、反応後の電解質溶液を水で10~4000倍に希釈する必要があった。酸トラップ溶液のNH4蓄積濃度はかなり低かったが、それでも10倍までの希釈(0.05M HSO4(aq.)による)が必要であった。信頼性の高い定量を確実にするため、同じサンプルに対して少なくとも2種類の有意に異なる希釈液を主要な実験にて適用した。
アンモニアのルーチン定量には、分光光度法ベルテロー分析(Analyst 109,549-568 (1984); ACS Energy Letters 5,736-741 (2020))を採用した。この目的のため、500μlの試料を2mlのAxygenマイクロチューブに加え、5wt.%のサリチル酸と5wt.%のクエン酸三ナトリウムを含む400μlの1M NaOH(aq.)と混合した。続いて0.05MのNaClO(aq.)100μlと1wt.%ニトロプルシドナトリウム水溶液30μlを順次加えた。得られた均一混合物を暗所、周囲温度でちょうど2時間インキュベートした後、直ちにポリスチロール/ポリスチレン10mmキュベット(Sarstedt)に移し、UV-visスペクトル(Cary分光光度計)を500~1000nmの範囲で10nm s-1のスキャン速度で記録した。電解質溶液とトラップ溶液の分析には、それぞれ水中のベルテロー試薬溶液と0.05MのHSO4(aq.)を用いて、各サンプルのバックグラウンドスペクトルを記録した。吸光度データはすべてバックグラウンド補正後の値である。
酸トラップ中のアンモニウムの定量は、0.05MのHSO(aq.)中の5~100μMのNHCl標準溶液を用いて作成した検量線に基づいて行った。655nmの吸光度(A)のNH4濃度(CNH4+)に対する依存性は、A=0.0091CNH4+/μM+0.019(R=0.99)の関係に従って直線的であった。
電解されたテトラヒドロフラン溶液の信頼性の高い定量ベルテロー分析は、通常の較正アプローチでは達成できず、各試料に特有の環境の干渉効果を考慮した標準添加法の実施が必要だった。典型的な手順では、希釈した試料1mLをAxygenマイクロチューブ6本(2mL)に加え、そこにHO中0、10、20、30、40、50μMのNHCl 1mLを加えた。得られた6つの混合物を、上述の標準的なベルテロー分光光度法に従ってさらに分析した。添加したNHCl濃度に対する655nmの吸光度のプロットは線形依存性でフィッティングされ、Y切片はX切片の負の逆数を得るために傾きで割られた。後者は、分析した希釈試料中のアンモニア濃度に対応する。
アンモニアのHNMR分光分析は、Bruker Avance III 600 MHz (14.1テスラマグネット)装置と、5mm CPTCI 1H,13C,15N,2Dオートチューナブルクライオプローブ(Zグラジエント付き)、および600.27MHzのHに設定されたBACS 60チューブオートサンプラーを使用して実施した。測定手順はlc1pncwpsパルスシーケンス(512スキャン、d1 1.5秒、p12 0.08秒)に従った。このパルスシーケンスはnoesyprphの1Dバージョンで、緩和遅延およびミキシングタイム中にプレサチュレーションを行い、オフレゾナンスのプレサチュレーションに整形パルスを使用し、測定中はf2チャンネルでcwデカップリングを行う。
サンプルを、50μLのDMSO-d中4M HSO、125μLのDMSO-d中4.3mMマレイン酸、740μL DMSO-d、125μLの分析対象溶液および10μL HO順次混合することによって調製した。アンモニアシグナル積分値は、マレイン酸内部標準ピークの積分値(2.0に設定)に正規化した。2MのLiTFSIおよび0.1MのCOHも含む標準0~1Mの14NHClおよび15NHClテトラヒドロフラン溶液の検量線プロットを作成した。正規化アンモニア積分(INH4+)のNH 濃度依存性は、INH4+=144[14NH ]-0.3077(R=0.994)およびINH4+=100[15NH ]+0.2745(R=0.999)の関係に従って本質的に線形であった。
X線回折(XRD)分析は、波長1.5418AのCu Kα X線源を備えたBruker D8 Advance回折計を用いて行った。調べた 2θ 範囲 は25°~110°、走査速度は0.014° s-1であった。測定中は10rpmで回転させた。電気化学試験後の電極は、Ar充填グローブボックス内でセルから取り外し、THFに数回浸して電解液の残留物を除去した後、一晩静置して乾燥させた。乾燥した電極は、特注の気密ドームホルダーに装填し、グローブボックスから取り出してXRD装置に移し、どの段階でも周囲環境と接触させずに分析した。
走査電子顕微鏡(SEM)およびエネルギー分散X線(EDX)分光分析は,Gatan EDX DigitalMicrographプラグイン付きJEOL 50mm Si(Li) EDX検出器を装備したJEOL JSM-7001F FEGSEM 顕微鏡を用いて行った。装置は、加速電圧15kV、プローブ電流50pA、フィールドエミッションガンで作動させた。電極は、XRD特性評価と同じ手順に従って前処理し、導電性両面カーボンテープでSEMスタブにしっかりと貼り付け、密閉容器に入れて装置に運んだ。ただし、試料を顕微鏡にセットするのに必要な短時間は、周囲環境にさらした。
X線光電子分光分析(XPS)は、ThermoFisher Scientific InstrumentのNexsa Surface Analysis Systemを用い、単色Al Kα線源(1486.6eV)を用いて行った。X線スポットサイズは400μmに設定した。分析チャンバーは1.0×10-8bar以下の圧力に維持した。サーベイスキャンはパスエネルギー200eV、ステップサイズ1eVで記録し、高分解能データはパスエネルギー50eV、ステップサイズ0.1eVで取得した。試料は、Ar充填グローブボックス内のホルダーにロードし、グローブボックスの控え室で真空下に10分間静置した後、いかなる段階でも周囲環境と接触することなく装置に運ばれた。XPS測定を行う前に、試料を一晩超高真空に保持した。試料と装置のアースとの電気的接触はなく、試料は分析前に電荷中和した。収集したスペクトルデータは、C 1sスペクトルの脂肪族C-Cピークの最大値を284.8eVに調整することでエネルギー補正した。
粘度測定は、Lovis2000M Anton Paar viscosimeter(Lovis角30°)を用いて25℃の制御した温度で行った。各試料を3回分析し、標準偏差は0.001g cm-3およびMPa・s未満であった。
電解質溶液の伝導率は、Biologic MTZ-35周波数応答アナライザーに接続したSolartron1296誘電体インターフェースを用いる2電極(Pt線)ディップセルにて、25℃に制御した温度で10~1Hzの周波数範囲で電気化学的インピーダンス分光法によって測定した。記録した伝導率が25℃で1408μS cm-1である標準0.01M KCl(aq.)溶液を用いて測定したセル定数は1.19cm-1であった。各試料につき3会の測定を行い、得られた標準偏差は0.001mS cm-1未満であった。
実施例1.異なるLiTFSI濃度でのクロノアンペロメトリー(CA)アンモニア製造
テトラヒドロフラン(THF)中のリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)およびエタノール(EtOH)を含み、EtOH濃度が0.1M、LiTFSI濃度が0.1M、0.5M、1M、1.5M、2M、2.5Mおよび3Mである7つの電解質を調製した。これらの電解質のイオン伝導率および粘度を測定した。結果を表1および図4(a)に示す。
一連のCA実験を、-0.55V vs Li/Liの加電圧でニッケル線カソード(0.15cm)を備えた単一コンパートメントセルに電解質を用いて実施した。実験を、15barのN(静的圧力)下、電解質を600rpmで攪拌しながら6時間行った。結果を表1および図4(b)に示す。
Figure 2024521443000013
a,bn=3および7の独立した実験の繰り返しの平均および標準偏差。
システムに流れる電流は、使用したリチウム塩濃度にもかかわらず、6時間にわたってほぼ安定していた。LiTFSI濃度を0.1~0.5Mに増加させると、NH収率(YR)が20nmol s-1cm-2より大きく顕著に増加したが、両方の実験でのファラデー効率(FE)は10~20%の範囲内であった。LiTFSI濃度を1Mにさらに増加させると、YRは160nmol s-1cm-2、FEは45%に大幅に増加した。
LiTFSI濃度をさらに上げると、イオン伝導率が徐々に抑制され、より粘性のある溶液が得られた。驚くべきことに、これは直ちにNRR性能を悪化させるものではなかった。実際に、1.5および2MのLiTFSI電解質では、それぞれ250±20および230±20nmol s-1cm-2という非常に高いNH収率が達成され、後者の場合、FEが80%超であった。YRの低下は、粘度が20MPa・sを超え、物質輸送が制限要因となった非常に粘性のある2.5および3M溶液でのみ見られた。しかしながら、これらの電解質でFEは高いままであった。結果は、LiTFSI塩濃度の増加がN還元ファラデー効率を次第に増加させ、[LiTFSI]≧2Mで90%に近づくことを示している。
実施例2.低濃度および高濃度の異なるリチウム塩を用いたクロノアンペロメトリー(CA)アンモニア製造
実施例1で得られた、低リチウム濃度のTFSIアニオンで得られた電気化学的窒素還元結果を、トリフルオロメタンスルホネート(OTf)アニオンで行ったCA実験の結果と比較した。THF中0.2Mリチウムトリフルオロメタンスルホネート(LiOTf)と0.18Mエタノールを含む電解質を用い、銅線カソードを備えた単一コンパートメントセルで、-0.55V vs Li/Liの加電圧でCA実験を実施した。実験を、15barのN(静的圧力)下、電解質を600rpmで攪拌しながら12時間行った。実験の結果、ファラデー効率が7%のみ、収率が0.049nmol s-1cm-2のみであり、TFSIアニオンの優れた性能が実証された。
過塩素酸塩(OCl )、テトラフルオロボレート(BF )、トリフレート(OTf)、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)およびビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなど、種々の弱配位性アニオンを用いて、リチウム塩濃度を上げてアニオン選択の効果を調べた。テトラヒドロフラン(THF)中これらの配位性アニオンのリチウム塩とエタノール(EtOH)を含む電解質を、EtOH濃度を0.1M、リチウム塩濃度を2Mとして、表2に示すように調製した。これらの電解質のイオン伝導率および粘度を測定し、結果を表2に示した。
一連のCA実験を、-0.55V vs Li/Liの加電圧で、ニッケル線カソード(0.15cm表面積)を備えた単一コンパートメントセルに電解質を用いて実施した。実験を、15barのN(静的圧力)下、電解質を600rpmで攪拌しながら6時間行った。二窒素還元結果も表2に示す。
Figure 2024521443000014
n=7の独立した実験の繰り返しの平均および標準偏差。
二窒素還元結果(実施例1の1M LiTFSI結果も含む)を、粘度またはイオン伝導率に基づいて電解質を並べた図5で比較する。溶液の粘度はBF <ClO <OTf<FSI<TFSIの順に増加し、伝導率はOTf<ClO <BF <TFSI<FSIの順に増加した。NH収率およびファラデー効率はイオン伝導率とある程度相関する(図5b)。しかしながら、イオン伝導率の顕著な差異にもかかわらず、2M LiTFSI電解質および2M LiFSI電解質の両方とも、並外れて高い収率(TFSIはFSIと同程度)およびファラデー効率(TFSIはFSIより優れている)を示した。また、伝導率がより低いにもかかわらず、1M LiTFSIを含む電解質は、他のリチウム塩(LiBF、LiOCl、LiOTF)と比較して改善した結果を示した。このように、フッ素化スルホニルイミドアニオン(例えばTFSIおよびFSI)は、イオン伝導率または粘度の効果とは無関係に、他の弱配位性アニオンに対して明らかな利点をもたらす。
1M LiTFSIと1M LiBF(合計2MLi)を含む電解質も優れた二窒素還元性能を示したが、2M LiTFSIまたは1M LiTFSIを含む電解質より収率が低かった。これは、フッ素化スルホニルイミドが、存在する唯一の弱配位性アニオンである場合に、リチウム濃度に関係なく改善した結果を示す。
実施例3.異なるカソード材料によるクロノアンペロメトリー(CA)アンモニア製造
電気化学セルの作用電極として、表3に示すように、種々の異なる金属を用いて、カソード組成の効果を調べた。-0.55V vs Li/Liの加電圧で単一コンパートメントセルにTHF中LiTFSI(2M)とEtOH(0.18Mまたは0.10M)を含む電解質を用いて、CA実験を実施した。実験を、15barのN(静的圧力)下、電解質を600rpmで攪拌しながら6時間行った。結果を表3に示す。
Figure 2024521443000015
すべてのカソード材料が良好なアンモニア合成性能を示したが、カソードの化学的な性質が反応速度に影響し、ファラデー効率およびNH収率がCu<Nb<Niの順番に増加する。いかなる理論によっても限定されることを望むものではないが、カソード組成は、Li媒介NRRプロセスにおいてカソード表面に望ましい電極-電解質界面層を確立する上で2次的な役割を果たし得ることが提案される。
実施例4.反応後のカソードの特性評価
異なる電解質を用いた二窒素還元反応に使用したニッケル線カソードを反応後に分析した。THF中2M LiTFSIと0.1M EtOHを含む電解質(実施例1)に使用したカソードは、電解質に完全に浸漬した線の部分(領域B)では目視で清浄であったが、静的な気体と電解質との間のメニスカス(カソード/電解質/気相)で電気化学反応が生じた攪拌された電解質表面(領域A)付近の線の部分に沿って目に見える堆積物が明らかになった。領域AおよびBは、電子顕微鏡およびXPSによって特性評価された。選択されたXPSスペクトルを図6(S 2p)、図7(N 1s)、図8(F 1s)および図9(Ni 2p)に示す。
領域Aの堆積物の主要な成分は、LiF(図8を参照)、LiN(図7を参照)、並びに硫化リチウムおよびポリスルフィドを含む硫黄系化合物(図6を参照)と同定した。これに対して、領域Bのカソード部分の特性評価では、電解質(無傷のTFSIアニオンを含む)、固体LiFおよびS-O種(図8を参照)の非常に薄い、コヒーレントな層のみ存在することが示された。領域Aと対照的に、XPSで明らかなNi 2pシグナルが検出できたことから、この固体界面層の厚さは10nm以下である(図9を参照)。
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、itis提案したthat領域Aでの堆積物の形成は、少なくとも部分的に、Nの非常に高い濃度勾配および気相-液相の境界を横切るエタノールプロトンキャリアの枯渇に関連しており、これによって、三相界面付近のカソード上でLiN形成速度が過剰に高くなることが提案される。これは、過剰なLi堆積および電解質の制御不能な電解還元変換を促進する。電極-電解質-ガスの三相境界における堆積物の形成は、電荷のかなりの部分を消費し、その結果、ファラデー効率を低下させ、カソードへの物質移動を阻害して、経時的な反応系の不安定さを助長すると予想される。
THF中0.5M LiTFSIと0.1M EtOHを含む電解質(実施例1)に使用したカソードは、電解質中に完全に浸漬したカソード部分を含め、反応後に可視の灰色堆積物で覆われた。堆積物の主要なLiベースの成分はXPSでLiFと同定し、これは実験中に制御不能に電着したものであった。
0.5MのLiTFSI電解質を使用したカソードでは、2MのLiTFSI電解質を使用したカソードよりも、電解質の分解が大幅に進行した。電解質中のフッ素化スルホニルイミドリチウム塩(LiTFSIなど)の濃度が高いほど、カソード表面の電解質-電極界面層に、嵩高で電気化学的に安定なアニオンとLiカチオンを含む保護イオン集合体が形成されやすくなることが示唆された。この電解質-電極界面は、電解質の分解を抑制すると同時に、高率の二窒素還元を可能にする。その結果、カソード上で、アンモニアへの二窒素の高い生産性と選択的還元が得られ、長時間の反応を持続させることができる。
THF中2M LiBFと0.1M EtOHを含む電解質(実施例1)に使用したカソードは、電解質に完全に浸漬したカソード部分を含め、反応後に厚い灰色堆積物で覆われた。堆積物の主要なLiベースの成分はやはりLiFであった。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、この実験は、(i)弱配位性アニオンの他のリチウム塩と比較して、フッ素化スルホニルイミドリチウム塩(例えばLiTFSI)の保護電解質-電極界面を形成する優れた能力、および/または(ii)フッ素化スルホニルイミドアニオンの優れた電気化学的安定性を強調している。
実施例5.カソードでに静的なガス-電解質メニスカスがないクロノアンペロメトリー(CA)アンモニア製造
より長時間のCA実験を、-0.55V vs Li/Liの加電圧で、THF中のLiTFSI(2M)とEtOH(0.10M)を含む電解質を絶縁ニッケル線カソード(0.05cm表面積)を備えた単一コンパートメントセルに用いて実施した。ニッケル線は3mmの端部を除いてガラスに封入して、露出したニッケルの全表面積が反応中に電解質に完全に浸漬するようにした(すなわち静的ガス-電解質メニスカスがない)。実験を、15barのN(静的圧力)下、電解質を600rpmで攪拌しながら24または96時間行った。結果を表4および図10に示し、電流密度、通過した電荷および全体のセル電位の経時変化を示す。
Figure 2024521443000016
新しいカソード構成で、窒素還元反応を実施し、ファラデー効率は99±1%であった(表4)。約24hの最初の活性化期間中、平均アンモニア収率は約500nmol s-1cm-2であった。この期間の後、システムは安定化し、96hにわたって安定な性能がもたらされ、平均アンモニア収率は170~200nmol s-1cm-2であった。
反応終了時、カソードは目視できれいであった。これらの実験でファラデー効率が改善されたのは(同じ電解質を使った以前の例と比較して)、電解質表面領域での三相境界がなくなったためと考えられる。カソードが電解質中に溶解した二窒素にのみさらされることで、電気化学的に誘発される電解質の分解反応が大幅に抑制された。
この結果は、フッ素化スルホニルイミドアニオンとリチウム塩を含む電解質を高リチウム濃度で使用した場合、ほぼ定量的な選択性と高い反応速度で、長時間の反応でも持続的に二窒素をアンモニアに電気化学的に還元できることを示している。
実施例6.電位依存
ニッケル線カソード(0.15cm表面積)を備えた単一コンパートメントセルにTHF中LiTFSI(2M)とEtOH(0.10M)を含む電解質用いて実施した一連のCA実験にて還元電位の効果を調べた。実験を、15barのN(静的圧力)下、電解質を600rpmで攪拌しながら6時間行った。Li/Liに対して-0.2~-1Vの範囲の電位を調べ、結果を表5および図11に示す。
Figure 2024521443000017
b,cn=3および7の独立した実験の繰り返しの平均および標準偏差。
対Li/Li電位が-0.2Vから-0.8Vと負電位に向かうにつれて、還元率(図11)およびアンモニア収率(表8)の両方が上昇した。80%を超えるファラデー効率が-0.50~-0.80V vs Li/Liの範囲に維持された。しかしながら、-0.7、-0.8および-1.0V vs Li/Liでは、数時間の運転で性能が劣化した(図11)。
-1.0V vs Li/Liでの反応後、ニッケルカソードは、電解質に完全に浸漬したカソード部分を含め、かなりの量の目に見える堆積物で覆われた。堆積物の主要なLiベースの成分はLiFとXPSで同定され、実験の非常に負の電位で制御不能に電着したものであった。X線回折(XRD)による分析によって、リチウムアミド、オキシド、硫化物およびフッ化物に関連する一連のピークが検出され、後者2つは電解質アニオンの分解生成物であった。時間の経過に伴う還元性能の低下は、これらの分解生成物がカソード表面に蓄積したためと考えられる。
実施例7.圧力依存
-0.55V vs Li/Liの加電圧で、ニッケル線カソード(0.15cm表面積)を備えた単一コンパートメントセルにTHF中LiTFSI(2M)とEtOH(0.10M)を含む電解質を用いて実施した一連のCA実験にて、二窒素圧力の効果を調べた。実験を、15barのN(静的圧力)下、電解質を600rpmで攪拌しながら6時間行った。1bar~20barの範囲の圧力を調べ、結果を表6に示す。
Figure 2024521443000018
b,cn=3および7の独立した実験の繰り返しの平均および標準偏差。
実験中、PN2=20barでは約4時間後に電解還元率が低下したが、それ以外のすべてのケースで比較的安定した電流密度が記録された。PN2=20barでの結果は、過剰なLiNがカソード表面に蓄積したためと考えられた。収率およびファラデー効率の両方が、6時間の実験にわたって二窒素圧力と正の相関があった。
実施例8.異なるプロトンキャリアおよびプロトンキャリア濃度
-0.55V vs Li/Liの加電圧で、ニッケル線カソード(0.15cm表面積)を備えた単一コンパートメントセルにTHF中LiTFSI(2M)を含む電解質を用いて実施した一連のCA実験にて、異なる濃度での異なるプロトンキャリアの使用を調べた。電解質を600rpmで攪拌しながら実験を6時間行った。結果は表8に示し、図13および14に要約する。
Figure 2024521443000019
プロトンキャリアの添加なし。b-Cn=7および3の独立した実験の繰り返しの平均および標準偏差。HTFSI=ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミン;(CFSONH。
(i)アルコール(メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールおよびn-ブタノールなど)、ブロンステッド酸ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミンおよびTHF自体(エーテル)を含む中性プロトンキャリア、並びに(ii)ホスホニウム塩などのカチオン性プロトンキャリアを含む様々な異なる種類のプロトンキャリアが効果的であることが示された。図13は、異なる種類のプロトンキャリアについての収率およびファラデー効率の結果をプロットしたものであり、プロトンキャリアの種類によって最適濃度が異なり得ることを示している。最も良い結果が得られたのはアルコール類であった。図14は、さまざまなアルコールで得られた収率およびファラデー効率を比較したもので、すべてエタノールに最適であることが判明した0.1M濃度で行った。すべてのC-Cアルコールで優れた結果が得られた。
実施例9.イリド再生調査
電気化学的Li媒介アンモニア合成中の再生可能なプロトンキャリアとしてのアルキルホスホニウム種の役割を調べるために、一連の実験を[P666,14][eFAP]で実施し、図12に示すように31P NMR分光法でモニターした。すべての反応は、アルゴングローブボックスの不活性雰囲気(OおよびHO<0.5ppm)にて乾燥した材料を用いて実施した。31P-NMRスペクトルをTHF中、PPhを基準として、外部キャピラリーを用いて記録し軸を0ppmで較正した。
第1のステップでは、THF中[P666,14][eFAP]の0.2M溶液を調製し、31P NMRスペクトルを記録した。図12に見られるように、スペクトルは、39.3ppmにホスホニウムカチオン[P666,14]に対応する1つの31P NMRシグナルと、[eFAP]アニオンに対応する-131~-151ppmのシグナル群を特徴とする。第2のステップでは、過剰のLiNを[P666,14][eFAP]の0.2M溶液に添加し、混合物を24時間攪拌した。目視では、混合物の変化は観察されず、無色透明で、目に見える沈殿物がないままであった。24時間後に記録した31P NMRスペクトル(図12の中央のスペクトル)は、39.3ppmのピークが完全に消失し、新しいピークが15.7ppmに現れたことを示す。このピークは、LiNとの反応によるホスホニウムカチオンの脱プロトン化を介して、ほぼ定量的な収率で形成された双性イオン種に対応する。NMRデータはホスホニウムイリドの形成と一致している。第3のステップでは、0.2mlの酢酸の0.1M溶液を0.5mlのイリド含有溶液に添加し、31P NMRスペクトルを記録した(図12の一番下のスペクトル)。スペクトルは、ホスホニウムカチオンの定量的な回復を示す(39.3ppmのピーク)。
ホスホニウムカチオンの回復は質量分析(MS)を用いて確認した。ステップ1からステップ3の質量スペクトルは同一であり、これは、[P666,14]カチオンに対応する1つのみのシグナル(m/z=483)を示す。
この段階的な反応プロセスを他のホスホニウム塩、[P1222][eFAP]、[P4448][eFAP]およびトリフェニルメチルホスホニウムテトラフルオロボレート([PPhMe][BF])について繰り返した。すべての31P-NMRスペクトルは、LiNと反応したときにイリド種の生成を示し、酢酸の添加後にホスホニウムカチオンが再生することを示した。これは、様々なアルキルホスホニウムカチオンが適したカチオン性プロトンキャリアであり、段階的な反応試験が、潜在的なプロトンキャリアのスクリーニング方法として使用できることを示す。
実施例10.アノードのプロトン源としてのH
実施例1に準じた実験(電解質:THF中2M LiTFSI、0.1M EtOH)を、合計圧力15barのNガス供給に2barまたは4barの二水素(H)を混合して実施した。結果を図15に示す。図15には、高い収率およびファラデー効率がHの存在下で維持されていることが示されている。
実施例11.イオン液体添加剤
-0.55V vs Li/Liの加電圧で、非絶縁ニッケル線カソード(0.15cm表面積;実施例1で使用したもの)を備えた単一コンパートメントセルに、THF中LiTFSI(1M、1.5Mまたは2M)、EtOH(0.10M)および異なる量のイオン液体添加剤を含む電解質を用いて、CA実験を実施した。実験を、15barのN(静的圧力)下、電解質を600rpmで攪拌しながら室温で6時間行った。結果を図16および表9に示す。
Figure 2024521443000020
a,bn=3および7の独立した実験の繰り返しの平均および標準偏差。
1Mを超えるリチウム濃度での極めて高いファラデー効率および収率、並びにリチウム濃度を1Mから2Mに増加させたときのファラデー効率の増加は、イオン液体添加剤なしの実験でもまた明らかである。イオン液体添加剤として1-ブチル-1-メチルピロリジニウムビス-(トリフルオロメチルスルホニル)イミド([Cmpyr][TFSI])(電解質中の合計塩濃度を2Mに一定にするため0.5Mまたは1M)を存在させると、ファラデー効率および収率の両方とも不利になることが見出された。これに対して、イオン液体添加剤としてトリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムビス-(トリフルオロメチルスルホニル)イミド([P6,6,6,14][TFSI])(電解質中の合計塩濃度を2Mに一定にするため0.5M)を存在させると、ファラデー効率が向上した(収率は低下したが)。
結果は、ピロリジニウムカチオン(およびイミダゾリウムのような電気化学的に安定でない非金属カチオン)は好ましくは避けるべきであるが、ホスホニウムカチオンは許容されるか、あるいは有益でさえあることを示す。理論に制限されることなく、テトラアルキルホスホニウムカチオンは(プロトンキャリアとしてエタノールが存在する場合)非反応性であるか、還元条件下で可逆的に反応してホスホニウムイリドのプロトン受容体を形成して、有害な分解反応が回避されることが提案される。
実施例12.低いN圧力でのホスホニウムイオン液体添加剤
-0.55V vs Li/Liの加電圧で、絶縁ニッケル線カソード(0.05cm表面積)を備えた単一コンパートメントセルにCA実験THF中LiTFSI(1~2M)、EtOH(0.10M)および異なる量の([P6,6,6,14][TFSI]添加物を含む電解質を用いて実施した。ニッケル線を3mmの端部を除いてガラスに封入して、露出したニッケルの全表面積を反応中に電解質に完全に浸漬した(すなわち静的ガス-電解質メニスカスがない)。実験を、1barのN(静的圧力)下、電解質を600rpmで攪拌しながら室温で6時間行った。結果を図17および表10に示す。
Figure 2024521443000021
2M LiTFSI、ホスホニウムイオン液体添加剤なしでは、N圧力が低い(1bar)ため、ファラデー効率がわずか16%であった(実施例17参照)。LiTFSIの一部を[P6,6,6,14][TFSI]に置き換えることによって(電解質中の合計塩濃度を2Mに、Li濃度を1.5Mに一定に保つ)、ファラデー効率が約50%に増加し、収率も大幅に増加した。[P6,6,6,14][TFSI]の量を0.65Mまで増やすと(Liは依然として1.5M)、ファラデー効率はさらに大幅に増加し、90%近くになった。このファラデー効率は、高いN圧力でイオン液体添加剤を使用しない場合に得られたものと同様である(実施例7参照)。0.65Mのホスホニウムイオン液体([P6,6,6,14][TFSI]または[P6,6,6,14][eFAP]のいずれか)の濃度を維持したままLi濃度を1Mに下げると、1barでファラデー効率の低下を引き起こした。
いかなる理論によっても限定されることを望むものではないが、ホスホニウムをベースとするイオン液体は、電解液のイオン濃度と伝導率を高く維持しながら、電解液中のN溶解度を高め、NRRの速度と選択性を有利にすると考えられる。
実施例13.高いN圧力でのホスホニウムイオン液体添加剤
-0.55V vs Li/Liの加電圧で、絶縁ニッケル線カソード(0.05cm表面積)を備えた単一コンパートメントセルにTHF中LiTFSI(0.2~1.5M)、EtOH(0.10M)および異なる量の[P6,6,6,14][TFSI]添加剤を含む電解質を用いて、CA実験を実施した。ニッケル線を3mmの端部を除いてガラスに封入して、露出したニッケルの全表面積を反応中に電解質に完全に浸漬した(すなわち静的ガス-電解質メニスカスがない)。実験を15barのN(静的圧力)下、電解質を600rpmで攪拌しながら室温で6時間行った。結果を図18、図19および表11に示す。
Figure 2024521443000022
結果は、窒素還元のファラデー効率に対するリチウム濃度の増加が驚くべき効果を持つことを再び示している。0.2M[Li]では、[P6,6,6,14][TFSI]イオン液体添加剤が存在し、電解質中のイオン濃度が高い(合計で1.5Mのリチウムとホスホニウムカチオン;1.5MのTFSIアニオン)にもかかわらず、ファラデー効率はわずか約10%であった。0.5M[Li]および合計イオン濃度1.7Mでは、ファラデー効率は顕著に増加した(約25%)。1M[Li]では、合計イオン濃度2Mで、ファラデー効率が90%を超えた。この場合、[P6,6,6,14][TFSI]の添加によって、収率は低下するものの(表1のホスホニウムカチオンなしの結果参照)、ファラデー効率は1.5M[Li]単独で得られたものと同等になった。
実施例14.フッ素化スルホニルメチドアニオン
-0.55V vs Li/Liの加電圧で、絶縁ニッケル線カソード(0.05cm表面積)を備えた単一コンパートメントセルにTHF中リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド[Li(CFSOC;≧99%;富士フイルム和光純薬株式会社](1.1M)とEtOH(0.10M)を含む電解質を用いて、CA実験を実施した。ニッケル線を、3mmの端部を除いてガラスに封入して、露出したニッケルの全表面積を反応中に電解質に完全に浸漬した(すなわち静的ガス-電解質メニスカスがない)。実験を、15barのN(静的圧力)下、電解質を600rpmで攪拌しながら室温で6時間行った。アンモニア収率は、70%のファラデー効率で301nmol/s/cmであった。
当業者であれば、本明細書に記載された本発明は、具体的に記載された以外の変形および修正の影響を受け得ることを理解するであろう。本発明は、本発明の精神および範囲に属するすべてのそのような変形および修正を含むことが理解される。

Claims (34)

  1. 二窒素を還元してアンモニアを製造する方法であって、
    電気化学セルのカソードを電解質と接触させるステップと、
    カソード還元のために前記電気化学セルに二窒素を供給するステップと、
    前記二窒素を還元するのに十分な電位を前記カソードに印加してアンモニアを製造するステップと、を備え、
    前記電解質は、
    (i)リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、バナジウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される金属カチオンと、
    (ii)フッ素化スルホニルイミド、フッ素化スルホニルメチドおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの陰イオンを含む1つ以上のアニオンと、 (iii)プロトンキャリアと、
    (iv)任意選択的に、少なくとも1つのホスホニウムカチオンと、を含み、
    前記金属カチオンは前記電解質中に0.5mol/L超の濃度で存在し、前記金属カチオンおよび任意の前記少なくとも1つのホスホニウムカチオンの前記電解質中の合計量は1mol/L超であるアンモニア製造方法。
  2. 前記金属カチオンが電解質中に1mol/L超の濃度で存在する請求項1に記載のアンモニア製造方法。
  3. 前記金属カチオンが前記電解質中に1.5mol/L超の濃度で存在する請求項1に記載のアンモニア製造方法。
  4. 前記少なくとも1つの陰イオンはフッ素化スルホニルイミドからなる群より選択され、前記フッ素化スルホニルイミドが下記式1の構造:
    Figure 2024521443000023
    (式中、Rf1およびRf2は独立して-F、C-C12ペルフルオロアルキルおよびフルオロアリールからなる群より選択されるか、あるいはRf1およびRf2は結合してペルフルオロアルキレンリンカーを形成する)を有する請求項1~3のいずれか1項に記載のアンモニア製造方法。
  5. 前記少なくとも1つの陰イオンがビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、(トリフルオロメタンスルホニル)-(フルオロスルホニル)-イミド(FTFSI)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項1~3のいずれか1項に記載のアンモニア製造方法。
  6. 前記少なくとも1つの陰イオンが電解質中に1mol/L超の濃度で存在する請求項1~5のいずれか1項に記載のアンモニア製造方法。
  7. 前記少なくとも1つの陰イオンが1つ以上のアニオンの少なくとも80mol%を含む請求項1~6のいずれか1項に記載のアンモニア製造方法。
  8. 前記金属カチオンがリチウムである請求項1~7のいずれか1項に記載のアンモニア製造方法。
  9. 前記少なくとも1つのホスホニウムカチオンが、前記電解質中に0.2mol/L超の濃度で存在する請求項1~8のいずれか1項に記載のアンモニア製造方法。
  10. 前記電解質が、有機窒素カチオンを実質的に含まないか、または0.1mol/L未満の合計量でいずれの有機窒素カチオンを含む請求項1~9のいずれか1項に記載のアンモニア製造方法。
  11. 前記カソードが、Ni、Nb、Ti、Mo、Fe、Cu、Ag、Znおよびそれらの合金からなる群より選択される金属を含む請求項1~10のいずれか1項に記載のアンモニア製造方法。
  12. 前記プロトンキャリアがアルコールおよび酸からなる群より選択される中性プロトンキャリアである請求項1~11のいずれか1項に記載のアンモニア製造方法。
  13. 前記電解質が、前記金属カチオンを溶媒和できる非プロトン性供与体溶媒を含む請求項1~12のいずれか1項に記載のアンモニア製造方法。
  14. 1bar超の二窒素分圧で前記電解質を二窒素と接触させることによって、カソード還元のために前記電気化学セルに二窒素を供給する請求項1~13のいずれか1項に記載のアンモニア製造方法。
  15. 前記カソードが、アンモニアを製造する際に、静的な気体と電解質との間のメニスカスでガス状の二窒素と接触していない請求項1~14のいずれか1項に記載のアンモニア製造方法。
  16. 前記カソードの電位が、前記電解質中の前記金属カチオンの見かけの還元電位に対して-0.4Vより下(より負)である請求項1~15のいずれか1項に記載のアンモニア製造方法。
  17. 前記電解質の25℃の粘度が20MPa・s未満である請求項1~16のいずれか1項に記載のアンモニア製造方法。
  18. 二窒素を還元してアンモニアを製造するための電気化学セルであって、
    カソードと、
    アノードと、
    少なくとも前記カソードと接触している電解質と、
    カソード還元のために電気化学セルに二窒素を供給する二窒素供給源と、
    前記カソードおよび前記アノードと接続され、二窒素を還元してアンモニアを製造するのに十分な電位を前記カソードに印加することが可能な電源と、を備え、
    前記電解質は、
    (i)リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、バナジウムおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される金属カチオンと、
    (ii)フッ素化スルホニルイミド、フッ素化スルホニルメチドおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1つの陰イオンを含む1つ以上のアニオンと、
    (iii)プロトンキャリアと、
    (iv)任意選択的に、ホスホニウムカチオンと、を含み、
    前記金属カチオンは前記電解質中に0.5mol/L超の濃度で存在し、前記金属カチオンおよび任意の前記ホスホニウムカチオンの合計量は前記電解質中1mol/L超である電気化学セル。
  19. 前記金属カチオンが、前記電解質中に1mol/L超の濃度で存在する請求項18に記載の電気化学セル。
  20. 前記金属カチオンは、前記電解質中に1.5mol/L超の濃度で存在する請求項18に記載の電気化学セル。
  21. 前記少なくとも1つの陰イオンはフッ素化スルホニルイミドからなる群より選択され、前記フッ素化スルホニルイミドが式1の構造:
    Figure 2024521443000024
    (式中、Rf1およびRf2は独立してからなる群より選択される-F、C-C12ペルフルオロアルキルおよびフルオロアリールか、あるいはRf1およびRf2は結合してペルフルオロアルキレンリンカーを形成する)を有する請求項18~20のいずれか1項に記載の電気化学セル。
  22. 前記少なくとも1つの陰イオンがビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)、ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)、(トリフルオロメタンスルホニル)-(フルオロスルホニル)-イミド(FTFSI)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される請求項18~20のいずれか1項に記載の電気化学セル。
  23. 前記少なくとも1つの陰イオンが、前記電解質中に1mol/L超の濃度で存在する請求項18~22のいずれか1項に記載の電気化学セル。
  24. 前記少なくとも1つの陰イオンが1つ以上のアニオンの少なくとも80mol%を含む請求項18~23のいずれか1項に記載の電気化学セル。
  25. 前記金属カチオンがリチウムである請求項18~24のいずれか1項に記載の電気化学セル。
  26. 前記少なくとも1つのホスホニウムカチオンが、前記電解質中に0.2mol/L超の濃度で存在する請求項18~25のいずれか1項に記載の電気化学セル。
  27. 前記電解質は、有機窒素カチオンを実質的に含まないか、または0.1mol/L未満の合計量でいずれの有機窒素カチオンを含む請求項18~26のいずれか1項に記載の電気化学セル。
  28. 前記カソードが、Ni、Nb、Ti、Mo、Fe、Cu、Ag、Znおよびそれらの合金からなる群より選択される金属を含む請求項18~27のいずれか1項に記載の電気化学セル。
  29. 前記プロトンキャリアがアルコールおよび酸からなる群より選択される中性プロトンキャリアである請求項18~28のいずれか1項に記載の電気化学セル。
  30. 前記電解質が、(iv)エーテル、ポリエーテル、グリコールエーテル、フッ素化エーテル、フッ素化アルキル、フッ素化シクロアルキル、カーボネート、スルホランおよびジメチルスルホキシドからなる群より選択される1つ以上の分子溶媒をさらに含む請求項18~29のいずれか1項に記載の電気化学セル。
  31. 前記電解質が、前記金属カチオンを溶媒和できる非プロトン性供与体溶媒を含む請求項18~30のいずれか1項に記載の電気化学セル。
  32. 前記二窒素供給源が、1bar超、好ましくは5bar超、より好ましくは10bar超の二窒素分圧で前記電解質を二窒素と接触させることによって、カソード還元のために前記電気化学セルに二窒素を供給する請求項18~31のいずれか1項に記載の電気化学セル。
  33. 前記電気化学セルが、アンモニアを製造する際に、静的な気体と電解質との間のメニスカスでガス状の二窒素と前記カソードが接触しないように構成されている請求項18~32のいずれか1項に記載の電気化学セル。
  34. 前記電解質の25℃の粘度が20MPa・s未満である請求項18~33のいずれか1項に記載の電気化学セル。
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