JP2024520651A - 乾乳期中の乳牛の乳房炎を抑制する方法 - Google Patents

乾乳期中の乳牛の乳房炎を抑制する方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、泌乳後期および乾乳期の乳牛にペグボビグラスチムを投与することを含む、それを必要とする乳牛において乳房炎を処置および抑制する方法を提供する。

Description

発明の背景
乳房炎は乳腺(乳頭および乳房)の炎症であり、一般的には感染によって引き起こされる。乳房炎は酪農産業に大きな経済的損失をもたらす。例えば、乳房炎は世界の酪農産業に年間197億ドル~320億ドル(米ドル)の損害を与えると推定されている(グラスゴー大学の2016年の研究による)。アメリカだけでも乳房炎により酪農において年間20億米ドルの損失が推定されている。乳房炎は、乳量の減少(loss of milk production)、感染牛の除外率の上昇、ミルクの価値の低下(decreased value of milk)、抗生物質処理後の廃棄乳および獣医費用などを含む多くの点で、直接的および間接的に酪農の収益性に影響を及ぼす。さらに、乳房炎は家畜のパフォーマンス、健康および動物福祉にも影響を及ぼす。
臨床型乳房炎症例の約20~35%は病因不明であるが(Wellenberg et al., “Viral infections and bovine mastitis: a review.” Veterinary Microbiology. 2002; 88:27-45)、ウシ乳房炎は主に細菌が原因であることは広く認識されている。乳房炎は伝染性または環境性に分類できる(Blowey et al., “Mastitis control in dairy herds.” Farming Press (Ipswich) 1995. p. 29)。伝染性乳房炎は、黄色ブドウ球菌、G群溶血性レンサ球菌(Strep. dysgalactiae)、B群レンサ球菌(Strep. agalactiae)などの微生物によって引き起こされ、これらの微生物はすべて乳房で生存するように適応しており、不顕性感染を引き起こす。
乳牛の乳腺は、出産(すなわち、分娩)が近づく前に、その後の泌乳量を最適化するための非泌乳期間を必要とする。この非泌乳期間は“乾乳期”と呼ばれ、搾乳の中止“乾乳(dry-off)”からその後分娩までの期間を含む。この期間は、乳腺の分泌組織の再生を可能とする。この期間は乳腺の再構築にとって重要であるが、乳牛は乾乳期初期に新たな乳腺内感染症(IMI)に高度に罹りやすい(Dingwell et al., 2003)。乾乳期を過ぎると、乳汁は排出されなくなるが、乳腺は一時的に乳汁の合成を続け、乳房内に蓄積される。その結果、乳腺圧が上昇し、乳頭から乳汁が漏れ、微生物が乳腺内に侵入する可能性がある。さらに、退縮期(involution)の初期には、乳腺分泌液は低濃度の免疫細胞、免疫グロブリンおよびラクトフェリンなどの天然防御因子、ならびに高濃度の脂肪、カゼイン、ラクトースおよびクエン酸塩を含み、これは乳腺の防御能を妨げ、細菌増殖のための優れた培地を提供し得る(Oliver and Sordillo, 1989; Collier et al.)。乳腺の退縮が完了すると、搾乳停止後30日以内に乳房内の液体量が少なくなり、細菌にとって好ましくない培地となるため、乳腺は新たなIMIに対してより抵抗性となる(Burvenich et al., 2007)。泌乳量が増加増加すると、乾乳期は乳牛にとって難しい期間になる。Rajala-Schultz ら(2005)は、分娩時のIMIのリスクは、搾乳を止めた時の産乳量が12.5kgを超えると、5kg毎に77%増加することを明らかにした。
乳房炎を引き起こす微生物は、乾乳直後の乳頭先端に蓄積するため、従来の“乾乳期治療”によってこれらの微生物群を減少させる試みがなされてきた。このような治療法には、乳頭浸漬および乾乳期初期の抗生物質の使用が含まれる。しかしながら、このような治療法の結果は様々である。例えば、ある調査では、乾乳時に乳頭を5%のヨードチンキに浸し、その24時間後に再度ヨードチンキに浸すと、新たな黄色ブドウ球菌感染は有意に減少したが、ウベリスレンサ球菌(Strep. uberis)による感染は減らなかった。また、乾乳後7日間、1%ヨード液に毎日浸漬しても予防効果は認められなかった。さらに、乳房に抗生物質を注入することは、乾乳期に起こる感染症の予防に役立つが、抗生物質耐性微生物が発生するリスクを有する。例えば、現在の治療法は、耐性株を発生させる大腸菌群など、全ての細菌種に対して有効ではない。さらに、Staphylococcus(ブドウ球菌)および Corynebacterium bovis(牛コリネバクテリウム)などの一般的な乳房病原菌を治療で除去すると、一般的ではない病原菌に乳牛が感染しやすくなる可能性がある。乳頭シーラント(teat sealant)はより高い効果を示しているが、乳頭シーラントが乳牛の乳中の体細胞数に与える影響を調べるには、さらなる試験が必要である(Rabiee et al., “The effect of internal teat sealant products (Teatseal and Orbeseal) on intramammary infection, clinical mastitis, and somatic cell counts in lactating dairy cows: a meta-analysis”, J Dairy Sci. 2013; 96(11):6915-6931.)。
乾乳期の乳牛の感染症の発生率を減少させる効果的な方法、とりわけ、広範囲の微生物(例えば、大腸菌群、ブドウ球菌種および連鎖球菌種を含む)に対して有効であり、かつ抗生物質の環境的に不利な影響がない治療法が、明らかに必要とされている。
図1:試験結果は、Imrestor(登録商標) がWBC数および好中球数の両方を有意に増加させたことを示す。図1A:試験結果は、処置および時間別の血漿中ジホモ-γ-リノレン酸を示す。図1B:試験結果は、処置および時間別の血漿中エイコサペンタエン酸を示す。 図2:試験結果は、処置および時間別の血漿中TXB2を示す。 図3:試験結果は、血清活性酸素種を示す。 図4:試験結果は、血清抗酸化力を示す。 図5:試験結果は、酸化ストレス指数を示す。 図6:試験結果は、処置および時間別の血清グルコースを示す。 図7:試験結果は、処置および時間別の血清カルシウムを示す。 図8:試験結果は、処置および時間別の血清ハプトグロビンを示す。 図9:試験結果は、処置および時間別の総白血球数を示す。 図10:試験結果は、処置および時間別の好中球数を示す。 図11:試験結果は、処置および時間別のリンパ球数を示す。 図12:試験結果は、退縮期の処置および時間別の乳腺分泌中のアルブミン濃度を示す。 図13:試験結果は、退縮期の処置および時間別の乳腺分泌中のラクトフェリン濃度を示す。 図14:試験結果は、退縮期の処置および時間別の乳腺分泌中のα-ラクトアルブミン濃度を示す。 図15:試験結果は、崩壊型サンプリング期間別のIMIを有する分房数を示す。 図16:試験結果は、乾乳期の7日前を共変数として用いた、サンプリング期間に亘る体細胞数(対数)に対する処置の効果を示す(A=対照;B=Imrestor(登録商標))。 図17:試験結果は、乾乳期の7日前およびパリティを共変数として用いた、サンプリング期間中の1日乳量(kg)に対する処置の効果を示す(A=対照;B=Imrestor (登録商標))。
発明の概要
一局面において、本発明は、それを必要とする乳牛の乳房炎を治療する方法を提供し、ここで、該方法は、泌乳後期にペグボビグラスチムを該乳牛に投与することを含む。一態様において、ペグボビグラスチムは、乾乳日の約5日前、約6日前、約7日前、約8日前、約9日前、約10日前または約14日前に乳牛に投与される。一態様において、ペグボビグラスチムは乾乳日の7日前に投与される。一態様において、本発明の方法は、乾乳日にペグボビグラスチムを乳牛に投与することをさらに含む。一態様において、ペグボビグラスチムは、乾乳日の約5日後、約6日後、約7日後、約8日後、約9日後、約10日後または約14日後に乳牛に投与される。一態様において、乳房炎は、無症候性乳房炎である。一態様において、抗生物質は投与されない。一態様において、ペグボビグラスチムの用量は、乳牛の重量に基づき、約2-40μg/kg、約10-40μg/kg、約20-40μg/kg、約30-40μg/kg、約20-30μg/kg、2-10μg/kg、または約10-20μg/kgである。一態様において、ペグボビグラスチムの用量は、乳牛の重量に基づき、約20-40μg/kgである。
一局面において、本発明は、それを必要とする乳牛の乳房炎を阻止する方法を提供し、ここで、該方法は、泌乳後期にペグボビグラスチムを該乳牛に投与することを含む。一態様において、ペグボビグラスチムは、乾乳日の約5日前、約6日前、約7日前、約8日前、約9日前、約10日前または約14日前に乳牛に投与される。一態様において、ペグボビグラスチムは、乾乳日の7日前に投与される。一態様において、本発明の方法は、乾乳日にペグボビグラスチムを乳牛に投与することをさらに含む。一態様において、ペグボビグラスチムは、乾乳日の約5日後、約6日後、約7日後、約8日後、約9日後、約10日後または約14日後に乳牛に投与される。一態様において、乳房炎は、無症候性乳房炎である。一態様において、抗生物質は投与されない。一態様において、ペグボビグラスチムの用量は、乳牛の重量に基づき、約2-40μg/kg、約10-40μg/kg、約20-40μg/kg、約30-40μg/kg、約20-30μg/kg、2-10μg/kg、または約10-20μg/kgである。一態様において、ペグボビグラスチムの用量は、乳牛の重量に基づき、約20-40μg/kgである。一態様において、本発明の方法は、ペグボビグラスチムを投与しなかった乳牛と比較して、乳房炎の発生率を約10%以上減少させる。一態様において、本発明の方法は、ペグボビグラスチムを投与しなかった乳牛と比較して、乳房炎の発生率を約40%~約100%減少させる。一態様において、本発明の方法は、ペグボビグラスチムを投与されなかった乳牛と比較して、乳房炎の発生率を約50%減少させる。一態様において、無症候性乳房炎が臨床的乳房炎に発展することを阻止する。
一局面において、本発明は、乳牛の乳生産を増加させる方法を提供し、ここで、該方法は、泌乳後期にペグボビグラスチムを乳牛に投与することを含む。一態様において、ペグボビグラスチムは、乾乳日の約5日前、約6日前、約7日前、約8日前、約9日前、約10日前または約14日前に乳牛に投与される。一態様において、ペグボビグラスチムは、乾乳日の7日前に投与される。一態様において、本発明の方法は、乾乳日にペグボビグラスチムを乳牛に投与することをさらに含む。一態様において、ペグボビグラスチムは、乾乳日の約5日後、約6日後、約7日後、約8日後、約9日後、約10日後、または約14日後に乳牛に投与される。
一局面において、本発明はそれを必要とする乳牛において乳房炎を処置する方法を提供し、ここで、該方法は、ペグボビグラスチムを、i)分娩予定日の約1週間前、およびii)分娩後約24時間以内の2回で該乳牛に投与することを含む。一態様において、ペグボビグラスチムは、分娩予定日の約5日前から10日前に乳牛に投与される。一態様において、ペグボビグラスチムは、分娩予定日の7日前に投与される。一態様において、ペグボビグラスチムは分娩後約20~30時間以内に投与される。一態様において、乳房炎は無症候性乳房炎である。一態様において、抗生物質は投与されない。一態様において、ペグボビグラスチムの用量は、乳牛の重量に基づき、約2-40μg/kg、約10-40μg/kg、約20-40μg/kg、約30-40μg/kg、約20-30μg/kg、2-10μg/kg、または約10-20μg/kgである。一態様において、ペグボビグラスチムの用量は、約15mgである。
一局面において、本発明はそれを必要とする乳牛において乳房炎を阻止する方法を提供し、ここで、該方法は、ペグボビグラスチムを、i)分娩予定日の約1週間前、およびii)分娩後約24時間以内の2回で該乳牛に投与することを含む。一態様において、本発明の方法は、ペグボビグラスチムを投与されなかった乳牛と比較して、乳房炎の発生率を約40%から約100%減少させる。
一局面において、本発明は、乳牛において泌乳量を増加させる方法を提供し、ここで、該方法は、ペグボビグラスチムを、i)分娩予定日の約1週間前、およびii)分娩後約24時間以内の2回で乳牛に投与することを含む。一態様において、本発明の方法は、ペグボビグラスチムを投与されなかった乳牛と比較して、泌乳量を約5%、約10%、約15%または約20%増加させる。
発明の詳細な説明
本発明は、それを必要とする哺乳動物において、感染症、特に哺乳動物の泌乳周期の重要な時期、すなわち、乾乳期中に起こるか、または発症する感染症によって一般的に引き起こされる乳腺炎を処置し、かつ阻害する方法を含む。それを必要とする哺乳動物とは、乳腺炎/感染症に罹患するリスクを有するか、または乳腺炎/感染症を有する何れかの哺乳動物である。
乳房炎
乳房炎は、乳腺の炎症(例えば、乳腺内の炎症)である。乳房炎は、何れかの哺乳動物、例えば乳牛、雌牛およびヤギが罹患し得る。乳房炎は、主に、グラム陽性およびグラム陰性細菌感染によって引き起こされ、とりわけ乳牛の総体的乳汁産生量に影響を及ぼす。
乳牛の乳房炎を引き起こす主な病原性微生物としては、黄色ブドウ球菌、B群レンサ球菌(Streptococcus agalactiae)、ウベリスレンサ球菌属(Streptococcus uberis)、G群溶血性レンサ球菌(Streptococcus dysgalactiae)、大腸菌(Escherichia coli)、エアロバクター・アエロゲネス(Aerobacter aerogenes)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)が挙げられる。これらの微生物は乳頭管から乳房に侵入し、乳汁産生組織に炎症を起こし、瘢痕組織の形成を引き起こし得る。感染症はまた、乳汁の成分、量、外観および質を変化させることもある。乳房炎を引き起こす病原菌は2つに分類され、すなわち、伝染性病原菌および環境性病原菌である。伝染性細菌は、B群レンサ球菌および黄色ブドウ球菌などの細菌であり、主に乳腺、乳頭管および乳頭皮膚病変などの宿主組織部位に定着し、搾乳過程で感染牛から他の牛へと伝播する。環境性細菌(多くの場合、連鎖球菌、腸球菌および大腸菌群)は、牛の糞便、土壌、植物、寝わら(bedding)または水などの起源から牛の周辺に存在し、動物との偶発的接触によって感染する。すべての牛の乳房炎の場合、原因微生物が何であれ、侵入した病原体の乳房内腺への感染経路は、乳頭開口部および乳頭管を通る。
乳房炎は、特定の検査で検出できる乳汁の変化があるにもかかわらず、乳腺の腫脹がないか、または乳汁に観察可能な異常がない、不顕性型で存在することもある。無症候性乳房炎は、乳房および分泌物の異常状態が観察できる臨床的な乳房炎に発展し得る。本明細書中、“乳房炎”とは、あらゆる形態の乳房炎を含み得る。
無症候性乳房炎の有無は、乳牛の乳汁中の体細胞数(SCC)を計測することで決定できる。特に、SCCは泌乳乳腺の炎症を評価する基準として認められている。SCCは主に、乳腺における炎症(すなわち、乳房炎)と闘うために乳牛の免疫系が産生する白血球から構成されている。体細胞数(SCC)は、乳汁中の1mlあたりの細胞の総数である。非感染/非炎症の乳腺分房(mammary quarters)の乳汁(すなわち、“正常乳”)中のこれらの細胞の濃度は、1日2回、一定の間隔で搾乳した場合、約10万細胞/ml未満である。分房は、臨床的変化がないにもかかわらず、乳汁中のSCCが20万細胞/ml以上である場合(すなわち、分房は感染している可能性が高く、その乳汁は、飲用乳(fluid milk)の貯蔵期間の短縮、チーズの収量および品質の低下など、製品特性が低下している)、無症候性乳房炎を有すると指定される。乳汁(生乳)のSCCを計数する代表的な方法は、FossomaticまたはBentleyのいずれかの機器を用いた、フルオロ-オプト-エレクトロニック法(Bulletin IDF No.321, pp.39, 1996)である。
100,000~199,999細胞/mlの体細胞数は、炎症および/または乳房内感染によるとは考えにくい範囲である。しかしながら、乳牛の分房に観察可能な炎症(すなわち、臨床的乳房炎)を有する乳牛が生産する乳は、定義上、“異常乳”であり、SCCとの関連付けをする必要はない。
SCCに加え、その乳牛が無症候性乳房炎を有するかどうかは、泌乳された乳の外観で評価することができる。感染した乳腺から搾乳された乳には、薄片、塊、またはその他の外観の著しい変化が認められる。このような異常は飲用に適さない乳の指標となる。一般的に、感染が重症なほど、感染した分房からの分泌物の異常な外観はより多くなる。
泌乳サイクル
乳牛は乳を生産するために分娩しなければならず、泌乳サイクルとは分娩から次の分娩までの期間である。サイクルは泌乳前期、泌乳中期および泌乳後期(それぞれ約120日間)、乾乳期(通常、約45~60日間;しかし、乾乳期は最長120日間になることもある)の4段階に分けられる。乾乳期の間、乳牛は泌乳しない。乾乳期を設けることで、その後の泌乳量を最適化することができる。乾乳期を設けない場合、その後の泌乳量は25~30%減少し得る。乾乳期は分娩時に終了する。
乾乳期を開始する通常の手順は、乳牛を“乾乳(dry off)”させることである。“乾乳”段階では、乳牛を低エネルギー飼料に移行させる(例えば、低品質の飼料に移行させ、および/またはカロリーを少なくする)。このような移行期は、乾乳期が始まる数日前に乳汁分泌を減少させる。乾乳期は、搾乳を中止した日である“乾乳日”から始まる。すなわち、“乾乳日”は乾乳期の初日である。搾乳が中止されると、乳房内圧が上昇し、乳腺内に乳汁分泌物が蓄積するため、それ以降の乳汁分泌が抑制される。
泌乳期間中の乳腺の主な機能は、大量の乳汁の継続的な合成および分泌である。乾乳期の乳腺の生理は、泌乳期とは著しく異なる。乾乳期には乳腺に変化が起こり、それが乳腺細胞の増殖およびその後の泌乳期の乳腺機能に影響を与える。特に、活性な乳汁分泌細胞は、次の泌乳に備え、非分泌の休息状態に戻る。乾乳期の間、乳腺は3つの異なる段階を経る:(1)“活動的退縮”、(2)“安定的退縮”;および、(3)“初乳形成(colostrum formation)”。“活動的退縮”中、乳腺は生理的変化を受けており、ケラチンプラグが十分に発達していないため環境からの細菌に曝されやすく、搾乳時のように細菌が筋管から洗い流されることがないため、新たな乳腺内感染の影響を大いに受けやすい。(対照的に、安定的退縮期には、乳汁中の抗細菌因子の活性が増加するため、乳腺は感染に対して非常に抵抗的である。初乳形成(colostrogenesis)期には、乳腺組織が大量の乳汁を合成し、分泌する組織へと移行するため、感染し易さが再び増加する。)
“活動的退縮”は乾乳日から始まり、乾乳期に入る約3~4週までに完了する(安定的退縮には明確な始まりと終わりはなく、その長さは乾乳期の長さに比例する。初乳形成は分娩前1~3週から始まり、乳汁産生細胞の発達および大量の乳汁分泌の開始によって特徴づけられる)。
乳牛顆粒球-コロニー刺激因子(bG-CSF)ポリペプチド
本発明の方法は、有効量の乳牛顆粒球-コロニー刺激因子(bG-CSF)ポリペプチドを乳牛の泌乳周期の特定の時期に乳牛に投与して、乳腺感染症(例えば、乳房炎)を処置する、および/または抑制することを含む。
乳牛顆粒球コロニー刺激因子は、好中球の殺菌機能を増強し、骨髄前駆体からの好中球の産生を増加させる内因性タンパク質である。“有効量”とは、乳腺感染/炎症症状の少なくとも1つをある程度緩和するか、乳腺感染/炎症を抑制する量である。bG-CSFポリペプチドを含む組成物は、予防的、強化的および/または治療的処置のために投与され得る。
好ましくは、本発明のbG-CSFポリペプチドは、少なくとも1つの非天然コード化アミノ酸を含む。このようなbG-CSFポリペプチドの例は、US10,138,283に開示されている。かかる特許の内容は、引用によりその全体を本明細書中に包含させる。ポリエチレングリコールと共有結合したbG-CSFであるペグボビグラスチムは、Elanco Animal Healthによって販売されている、商品名Imrestor(登録商標)である。
ペグボビグラスチムの配列は以下の通りである:
TPLGPARSLP QSFLLKCLEQ VRKIQADGAE LQERLCAAHK LCHPEELMLL RHSLGIPQAP LSSCSSQSLQ LTSCLNQLHG GLFLYQGLLQ ALAGISPELA PTLDTLQLDV TDFATNIWLQ MEDLGAAPAV QPFQGAMPTF TSAFQRRAGG VLVASQLHRF LELAYRGLRY LAEP
(ジスルフィド架橋:36-42、64-74;修飾残基:133 F=4-(メトキシPEGカルボニルアミノ-エトキシイミノエチル)
CAS: 1363409-60-2;PubChem: 172232540。
乾乳期初期(すなわち、“活動的退縮(active involution)”期)は、乳腺の健康およびその後の泌乳のための乳生産を決定する重要な分岐点である。この乾乳期は、代謝の劇的な変化、高度に組織化された免疫反応、および酸化状態への変化によって特徴づけられる。乾乳期は、代謝の劇的な変化、高度に組織化された免疫反応、および酸化剤の状態変化によって特徴づけられる。乳腺の退縮に対する初期免疫反応のひとつに、乳腺への好中球の誘導がある。作用機序にこだわることなく、ペグボビグラスチムには循環する好中球を増加させる働きがあるため、乳腺の退縮を最適化すると考えられている。
乳房炎の阻止
乾乳期に乳腺感染を獲得することは、その後の泌乳における臨床的乳房炎の発生率に大きな影響を与える。例えば、乳牛は乾乳期に亜臨床性(無症候性)乳腺炎を発症し、その後の泌乳期間中に臨床性(症候性)乳腺炎に発展することがある。
一態様において、有効量のbG-CSFポリペプチド(例えば、ペグボビグラスチム)を泌乳周期の特定の時期に乳牛に投与して乳房炎を阻害する、例えば、乳房炎の発症を予防する、とりわけ、その後の泌乳における乳房炎を阻止する。
本明細書中、用語“阻止(阻害)する”とは、“罹患の可能性を減少させる”および/または“予防する”を含む。すなわち、本発明の方法は、乳房炎に関連するあらゆる症状を発症する可能性を低減する、または予防する場合に有効であると考えられる。
症状の阻害は、同じ環境(例えば、同じ搾乳頻度)に曝された異なる対象の乳房炎の発生率を比較することによって評価することができ、ここで、ある対象にはbG-CSFポリペプチドが投与され、ある対象にはbG-CSFポリペプチドが投与されない。
一態様において、ペグボビグラスチムを投与された乳牛の乳房炎の発生率は、ペグボビグラスチムを投与された乳牛の乳房炎の発生率と比較して、約10%以上減少する。別の態様では、ペグボビグラスチムを投与しなかった乳牛と比較した場合、乳房炎の発生率は約40%~約100%減少する。さらなる態様において、ペグボビグラスチムを投与しなかった乳牛と比較した場合、乳房炎の発生率は約50%減少する。
乳房炎の処置
別の態様では、有効量のbG-CSFポリペプチド(例えば、ペグボビグラスチム)を乳牛に投与して乳房炎を処置する。本明細書中、用語“処置”とは、乳房炎の“症状の重篤度を軽減する”および/または乳房炎の“期間を短縮する”ことを含む。すなわち、本発明の方法は、乳房炎に関連する何らかの症状を軽減し、および/またはそのような症状の発現の期間を短縮する場合に有効であると考えられる。一態様では、無症候性乳房炎は乾乳期に処置される。
一態様において、ペグボビグラスチムを投与した乳牛の乳房炎の症状/期間は、ペグボビグラスチムを投与しなかった乳牛と比較して、約10%以上減少する。一態様において、ペグボビグラスチムを投与した乳牛の乳房炎の症状/期間は、ペグボビグラスチムを投与しなかった乳牛と比較して、約25%以上減少する。別の態様では、乳房炎の症状/期間は、ペグボグラスチムを投与しなかった乳牛と比較して、約40%~約100%減少する。さらに別の態様では、ペグボビグラスチムを投与しなかった乳牛と比較して、乳房炎の症状/期間が約50%減少する。
乳生産量の増加
さらなる態様において、有効量のbG-CSFポリペプチド(例えば、ペグボビグラスチム)を乳牛に投与して、その後の泌乳期における乳生産量(すなわち、乳量)を増加させる。乳量は、1日の乳量によって評価することができる。一態様では、乳牛の乳量は、ペグボビグラスチムを投与しなかった乳牛と比較して、約5%以上増加する。一態様では、ペグボビグラスチムを投与しなかった乳牛と比較して、乳量が約5%以上増加する。一態様では、ペグボビグラスチムを投与しなかった乳牛と比較して、乳量が約10%以上増加する。一態様では、ペグボビグラスチムを投与しなかった乳牛と比較して、乳量が約15%以上増加する。別の態様では、ペグボビグラスチムを投与しなかった乳牛と比較して、牛の乳量が約10%から約50%増加する。別の態様では、ペグボビグラスチムを投与しなかった乳牛と比較して、乳牛の乳量が約10%から約25%増加する。別の態様において、ペグボビグラスチムを投与しなかった乳牛と比較して、牛の乳量は約5%から約15%増加する。さらなる態様において、ペグボビグラスチムを投与しなかった乳牛と比較して、牛の乳量が約25%増加する。
bG-CSFポリペプチドの投与
一態様において、bG-CSFポリペプチドを乳牛に乾乳日前後に単回投与する。例えば、1回のペグボビグラスチムを乳牛に乾乳日の約2日前から約2日後までの範囲の期間に投与する。例えば、ペグボビグラスチムは乾乳日に投与される。
別の態様において、bG-CSFポリペプチドを乳牛に泌乳周期の後期泌乳期に単回投与する。例えば、ペグボビグラスチムを乾乳日の約1-3週間前、一般的には乾乳日の約5-10日前に投与する。例えば、ペグボビグラスチムを乾乳日の約7日前に投与する。
別の態様において、bG-CSFポリペプチドを、乾乳期の活動的退縮期に乳牛に単回投与する。例えば、ペグボビグラスチムを乾乳日の約1-3週間後に、一般的には乾乳日の約5-10日後に投与する。例えば、ペグボビグラスチムを乾乳日の約7日後に投与する。
ある態様において、bG-CSFポリペプチドを乳牛に2回投与する。一態様において、ペグボビグラスチムは、i)泌乳後期、およびii)乾乳日前後に投与される。例えば、ペグボビグラスチムは、i)乾乳日の約1-3週間前、一般的には乾乳日の約5日前、6日前、7日前、8日前、9日前、10日前、11日前、12日前、13日前または14日前、およびii)乾乳日の約2日前から乾乳日の約2日後までの期間(例えば、乾乳日)に投与される。例えば、ペグボビグラスチムは、i)乾乳日の約7日前、およびii)乾乳日に投与される。
一態様において、bG-CSFポリペプチドを乳牛に2回、i)乾乳期前後に、そしてii)乾乳期の活動的退縮期に投与する。例えば、ペグボビグラスチムを、i)乾乳日の約2日前から乾乳日の約2日後までの期間(例えば、乾乳日)に、そしてii)乾乳日の約6日後、7日後、8日後、9日後、10日後、11日後、12日後、13日後または14日後に、一般的には乾乳日の約5~8日後に投与する。例えば、ペグボビグラスチムを、i)乾乳日に、そしてii)乾乳日の約7日後に投与する。
一態様において、bG-CSFポリペプチドを乳牛に2回、i)分娩予定日の約1週間前に、そしてii)分娩後約24時間以内(すなわち、分娩日)に投与する。例えば、ペグボビグラスチムを、i)分娩予定日の約5~10日前に、または分娩予定日の約7~10日前に、そしてii)分娩後約20~30時間以内に投与する。
ある態様において、bG-CSFポリペプチドを乳牛に複数回、i)乾乳期前後、およびii)泌乳後期、またはi)乾乳期前後、およびii)乾乳期の活動的退縮期に、投与する。例えば、3回または4回がこれらの期間内に投与され得る。
ある態様において、本発明の方法においてbG-CSFポリペプチドが投与されるとき、抗生物質は除外される。一般的な抗生物質の例としては、ベータ-ラクタム剤(ペニシリン、アンピシリン、アモキシシリン、クロキサシリン、セファピリンおよびセフチオフルを含む)が挙げられる。
bG-CSFポリペプチドは、当業者に知られているような何れかの方法で乳牛動物に投与される。いくつかの態様では、組成物は経腸的または非経腸的(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、皮内注射、注射溶液または懸濁液として、腹腔内、舌下および経直腸(例えば、坐薬によって))に投与される。一般的には、bG-CSFポリペプチドを含む医薬組成物は、好適な担体をさらに含んでいてもよい。非経腸投与に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤(バクテリオスタット)および製剤をレシピエントの血液と等張にする溶質を含み得る水性および非水性無菌注射溶液、ならびに懸濁化剤または増粘剤を含み得る水性および非水性無菌懸濁液が含まれる。好ましい態様において、bG-CSFポリペプチドは、皮下注射によって乳牛動物に投与される。
特定の場合におけるポリペプチド組成物の実際の好ましい量は、投与される特定の組成物、適用様式、適用される特定の部位、および処置される対象の体重によって変化し得る。
本明細書における量は、範囲、および範囲の下限境界および上限境界によって定義される。各下限境界は、各上限境界と組み合わせて範囲を定義することができる。下限境界および上限境界はそれぞれ別個の要素(element)として考慮されるべきである。本発明の方法により投与されるペグボビグラスチムの一般的な投与量の例は、乳牛の体重に基づいて、約2μg/kgから約40μg/kgである。この範囲の他の下限境界の例としては、約5μg/kg、約10μg/kg、約15μg/kgおよび約20μg/kgが挙げられる。この範囲の他の上限境界の例としては、約25μg/kg、約30μg/kg、約35μg/kgおよび約38μg/kgが挙げられる。一態様において、平均動物体重450~700kgのとき、投与量は約30μg/kgである。通常、このような投与量は、乳牛に2回、例えば泌乳後期に1回、乾乳日前後に1回投与される。
ある態様では、bG-CSFポリペプチドは、2.7mL/15mg、または1.35mL/7.5mg、または0.68mL/3.75mgの用量で、2回、7日間隔を空けて、すなわち乾乳の7日前および乾乳日に、乳牛に投与される。
一態様において、ペグボビグラスチムは約4~7μg/ml濃度、例えば、約5.6μg/ml濃度(例えば、予め充填したシリンジ2.7ml中に15mg)で調製される。一態様において、製品は約5ml、約10ml、約50ml、約100mlおよび約200mlの多用途バイアルである。
実施例1
本検討の目的は、ペグボビグラスチムが早期乾乳期に起こる代謝、免疫および酸化還元変化にどのような影響を与えるかを含む、健康な早期乾乳牛の生理的変化を評価することであった。
泌乳後期の乳牛(n=20)を、乳量、BLVの状態およびSCCについて対比するため、無作為に分け、乾乳期の1週間前および乾乳日に15mgのペグボビグラスチムまたは生理食塩水をそれぞれに投与した。血液サンプルを、乾乳日の7日前、2日前、1日前、0日(乾乳日)、1日後、2日後、4日後、7日後および14日後ならびに分娩後5日目、10日目および14日目に採取した。サンプルを、好中球数、単核球数、好酸球数、総カルシウム、BHB、NEFA、アルブミン、グルコース、ハプトグロビン、活性酸素種(ROS)および抗酸化能について分析した。PROC MIXEDを用いた反復測定モデルを用いて処置の効果を評価し、ボンフェローニ補正(SAS ver.9.4)を用いて平均値を分けた。
ペグボビグラスチムは対照乳牛と比較して好中球および単核球の血清濃度を増加させた(P<0.001)。ペグボビグラスチムは、乾乳後4日目の血清グルコース濃度を低下させるという有意な処置効果および処置時間による効果がみられた(P<0.001)。ペグボビグラスチムは、乾乳期初期に、血清ROS濃度を上昇させる傾向があり、同時に血清カルシウム濃度およびハプトグロビン濃度を低下させた。対照乳牛では分娩後14日目にBHBが上昇した(P<0.01)。この検討により、乾乳期にペグボビグラスチム注射を行うことで、乾乳期初期の乳牛に広範な影響を及ぼし、その後の泌乳期における健康および乳生産に影響を及ぼす可能性が示された。
実施例2
ペグボビグラスチムの代替投薬スケジュールが乳腺の健康および乳生産に及ぼす影響を評価する無作為化臨床試験
この無作為化臨床試験の目的は、ペグボビグラスチム(PEG;Imrestor(登録商標)、Elanco Animal Health)の異なる投薬スケジュールが乳腺の健康状態および乳生産に及ぼす影響を評価することであった。泌乳後期の妊娠牛を、15mgのPEGを投与する群(n=10頭)と、生理食塩水による偽注射を行う群(n=10頭)に無作為に分け、乾乳期7日前および乾乳日(DRY)に投与した。DRYには抗菌剤は投与されなかった。8つの時点(乾乳の7日前および2日前、乾乳日、乾乳の7日後および14日後、分娩後5日目、10日目および14日目)にて、細菌学的培養および体細胞数(SCC)について分房(Quarter;QTR)乳サンプルを採取した。その後の泌乳における日乳量は、DIM(泌乳日数)10日目、14日目、30日目、60日目および120日目に評価した。乳房内感染(IMI)の発生率に対する処置効果の評価にはカイ二乗分析を用い、SCCおよび乳量に対する処置効果の判定には多変量モデリングを用いた。
IMIの発生率は、処置を受けた乳牛のQTRと比較して、対照群の乳牛のQTRが高かった(X2=6.3;P=0.006)。処置を受けた乳牛と比較して、IMIのオッズは、対照群のQTRが7.5倍高かった(95% CI:1.5、36.7)。
SCCに対する処置の全体的な効果は有意ではなかったが(P=0.23)、期間および処置と期間の相互作用(the interaction of treatment by period)については有意な効果が認められた(P<0.01)。
対数SCCは、DRYの2日前に処置した乳牛(対照 4.09;PEG 4.68)およびDRY当日に処置した乳牛(対照 4.12;PEG 4.62)の方が大きいことが観察された。乳量については、サンプリング期間の有意な影響(P<0.001)および処置とサンプリング期間の相互作用(P=0.001)が観察され、処置された乳牛の方がその後の泌乳期間での乳量が多いという傾向が全体的に見られた(P=0.09)。対照群の乳牛の乳量は、各サンプリング期間で45kg/頭/日、48kg/頭/日、52kg/頭/日、52kg/頭/日および42kg/頭/日であった。これと対照的に、処置群の乳牛は、48kg/頭/日、51kg/頭/日、62kg/頭/日、58kg/頭/日および50kg/頭/日の量であった。別の投薬スケジュールでPEGを投与した乳牛では、乾乳期のIMI発症率が減少し、その後の泌乳量も増加した。
実施例3
Imrestor (登録商標) パイロット好中球試験 -WUR(NL)
・目的:乳牛の乾乳期における乳房炎の発生率に対するImrestor (登録商標)の影響(好中球数の評価を含む)を調査する。
・20頭の乳牛を試験に用いた。
・2つのグループ:対照群(生理食塩水)およびImrestor (登録商標)群。
・登録された乳牛は、健康で、泌乳中であり、分娩予定日の約6~9週間前に乾乳期を迎える。
・予定される乾乳期前の直近の乳汁分泌記録における体細胞数が150,000細胞/ml未満である。
・Imrestor (登録商標)注射を2回行う(乾乳の7日前および乾乳日)。
・乳房炎およびSCC(乾乳日前後)を観察した。
・好中球の機能アッセイを実施した:MPO産生;貪食能;完全WBC。図1の結果はWBC数および好中球数を示す。
この結果から、Imrestor (登録商標)の投与により、WBC数および好中球数の両方が有意に増加したことが分かる。この増加は最後の時点である乾乳後14日目まで有意であった。
実施例4
ハンガリーにおけるImrestor (登録商標) パイロットフィールド試験
目的:分娩後4日目/5日目/6日目の、乾乳期から通常の搾乳に戻るまでの間、乳牛に自然発生する臨床的乳房炎の発生率を減少させるImrestor (登録商標)の有効性を試験する。
試験パラメーター:
・過去に乳房炎の発生率が高かった154頭/2施設(20%)
・対照群(生理食塩水)およびImrestor (登録商標)
・d-7(すなわち、乾乳の7日前)およびd0(すなわち、乾乳日)の2回の注射および通常の農場での乾乳プロトコール(すなわち、抗生物質および乳頭シーラント)。
・d-7から分娩後d3-5まで(すなわち、分娩後3日目~5日目)、臨床的乳房炎について牛をモニターする。
・CMTを実施する(乾乳の7日前および分娩の4日後)。
Figure 2024520651000001


表は試験動物の結果を示す。乾乳期から通常の搾乳に戻るまで、乳房炎の発症は観察されなかった。泌乳開始後の乳房炎:両投与群間で乳房炎全体の発生率に統計的な差はなかった。しかしながら、全体的な乳房炎発症率はImrestor(登録商標)投与群で9%、対照群で16%であった。
実施例5
乾乳前に投与されたImrestor(登録商標)のMSU(ミシガン州立大学)製品の試験
生理的データの結果
背景のまとめ:目的は、乾乳期前後の乳牛にImrestor(登録商標)を投与したとき、乾乳期にどのような影響を与えるかを調べることであった。MSU Dairy Teaching & Research Center の20頭の牛を、乾乳期の7日前および乾乳日にImrestor(登録商標)を投与する群(処置- 群B)、または生理食塩水の偽注射を受ける群(対照 - 群A)に無作為に分け、乾乳期および分娩後の臨床結果を記録した。
乳牛は乾乳期には抗生物質を投与せず、乾乳の14日後(乾乳期の分泌物サンプリング終了後)に外部シーラントを施した。
本試験に含まれる結果変数:分娩前、乾乳期および分娩後の選択した臨床的および生理的結果(表1)を評価した。この報告では、測定された退縮(measured involution)および一般的な健康状態を測定した生理学的結果を示す。標的ポリ不飽和脂肪酸(表2)をLC-MSで分析し、48種類のオキシ脂質(表3)をLC-MS/MSで定量した。
Figure 2024520651000002
分析:すべての結果は、Proc Mixed(SAS Vers 9.3)を用いて別個の反復測定モデルで評価した。モデルには、処置別、時間別および処置×時間の相互作用に一定の効果が含まれる。乳牛はすべてのモデルにランダム項として、また反復測定の対象として含まれた。
結果:血漿および乳汁中のポリ不飽和脂肪酸。すべてのモデルで時間の有意な効果が見いだされたが(P<0.001)、どのモデルも有意な処理と時間の相互作用を含まなかった(P>0.13)。2つのモデルだけが処理の有意な効果を含んでいたが(どのモデルも処理と時間の相互作用は含まなかった)、どちらの効果も意味がないように思われた(図1a、1bおよび表2)。
ジホモガンマリノレン酸(GLA)は、リノール酸およびGLAの脱飽和および伸長産物である20炭素のオメガ6脂肪酸である。ジホモGLAは比較的珍しい脂肪肪酸であるが、エイコサノイド代謝物に関しては生物学的に重要である。シクロオキシゲナーゼ(COX)1経路およびCOX2経路を介したジホモGLAの代謝は、一連のトロンボキサンおよびプロスタノイドを生じ、これらは抗炎症活性を有することが知られている。対照的に、COX経路からのアラキドン酸(AA)の代謝から誘導されるエイコサノイドは、強力な炎症誘発作用を有するシリーズ2のトロンボキサンおよびプロスタノイドを生じる。興味深いことに、ジホモGLAはAAとCOXを競合させ、これらの炎症誘発性シリーズ2トロンボキサンおよびプロスタノイドの阻害をもたらす。エイコサペンタエン酸(EPA)は、食事由来、またはデサチュラーゼおよびエロンガーゼの作用によりα-リノレン酸(ALA)を変換して得られるオメガ3脂肪酸である。EPAの代謝は、抗炎症性オキシ脂質の産生をもたらす。ジホモGLAおよびEPAの両方が対照群と比較して泌乳初期の数週間において減少したことは、オキシリピッド(oxylipid)の生合成の違いでは説明できない。ジホモGLA由来のオキシ脂質は、どのサンプルからも検出されなかった。EPA由来のオキシ脂質(DiHETE)は発現量が低く、処置群間で差はなかった。
Figure 2024520651000003
結果:オキシ脂質およびイソプロスタン:合計48種の脂質代謝物についてアッセイを行った。血漿中では21種のオキシ脂質および2種のイソプロスタンのみが検出されたのに対し、乳汁中では14種のオキシ脂質および2種のイソプロスタンが検出された(表3)。
オキシ脂質およびイソプロスタン類の中で唯一有意な治療効果があったのは、トロンボキサンA2(TXA2)の不活性だが安定な代謝産物であるトロンボキサンB2(TXB2)であった(図2、表4)。TXA2は水溶液中ではとても不安定であるため、すぐに水和して生物学的に不活性なTXB2となり、TXA2産生の反映として生物学的溶液中で容易に測定できる。そのため、TXB2はTXA2産生の評価に常套的に用いられている。
TXA2は活性化血小板、内皮細胞およびマクロファージによって産生される。このトロンボキサンは、シクロオキシゲナーゼ経路を介した、およびトロンボキサンA合成酵素の酵素活性による、アラキドン酸の代謝により生成される。TXA2は、新しい血小板を活性化し、血小板凝集を増加させることによる血栓促進活性で知られている。TXA2はまた、強力な血管収縮因子でもあり、組織傷害および炎症時には特に重要である。実際、ヒトにおけるTXA2の上昇は心血管系疾患を含む多くの疾患と関連しており、免疫反応を負に制御していると考えられている。最後に、TXB2の血中濃度の上昇が、1型糖尿病患者における酸化ストレス(脂質過酸化産物)と有意に関連していることを示す、ヒトにおけるいくつかの証拠がある。TXB2は、乳房炎を有する乳牛の乳汁および血清中、ならびに酸化ストレスのかかる時期(乾乳期および分娩前後)に上昇することが示されている。TXA2活性を阻害するために、アスピリンおよび他の非ステロイド性抗炎症薬を使用することができる。
Imrestor(登録商標)は、非泌乳期間の大部分および泌乳14日目において、TXB2を明らかに減少させた(図2)。他のプロスタノイドを検出できなかったり、イソプロスタン濃度の違いを確認できなかったりしたため、この観察の生物学的意義を推測することはできなかった。他のプロスタノイドまたは他のイソプロスタンが検出されなかったことは、他の試験と一致しておらず、COVID-19での閉鎖によるサンプル処理時間の長さを反映している可能性がある。しかしながら、Imrestor(登録商標)がTXB2に明らかに効果を示したことは興味深く、乾乳期間中の免疫状態および/または組織再生に有益な効果があることを示唆し得る。
Figure 2024520651000004
Figure 2024520651000005
結果:血清および乳汁中のROSおよびAOP。血清中では、活性酸素種(ROS)、抗酸化能(AOP)および酸化ストレス指数(OSi)において、時間による有意な影響が認められたが、時間と処置の相互作用(interactions of treatment by time)は認められなかった(表5;図3、4および5)。乳汁サンプルでは、ROSおよびOSiに時間の有意な影響が認められたが、AOPには認められなかった。血清サンプルで見られたように、乳汁では時間と処置の相互作用はみられなかった。
Figure 2024520651000006

結果:血清代謝物。これらの変数のすべてについて、時間の有意な影響が認められた(表6)。アルブミン、BHBAまたはNEFAについては、処置別または処置と時間との有意な相互作用は認められなかったが、処置および処置と時間はグルコースに影響を及ぼし(図6)、処置はカルシウム(図7)およびハプトグロビン(図8)に影響を及ぼす傾向があった。
Figure 2024520651000007


Imrestor(登録商標) を投与された乳牛は、2回目の注射後に血清グルコースが減少した。
結果:白血球数。総白血球数(図9)、好中球数(図10)およびリンパ球数(図11)については、処置、時間および処置と時間の相互作用の効果が有意であった(P<0.001;表7)が、好酸球数については時間のみが有意であった。Imrestor(登録商標)は乾乳の7日前(D-7)および乾乳日(DRY day 0)に投与された。
Figure 2024520651000008
Figure 2024520651000009
結果: 乳腺分泌データ。ラクトフェリン、アルブミン、クエン酸塩およびα-ラクトアルブミンを、乾乳期前および乾乳7日目(D+7)および14日目(D+14)の乳汁分泌物(乾乳期に対する相対値)で測定した。アルブミンについては処置による有意な影響が認められた(表9、図12)。乳腺分泌物中のアルブミン濃度の変化は、細胞の完全性および血液-乳汁バリアの透過性を反映している。D+7およびD+14における乳腺分泌物中のアルブミン濃度の増加は、退縮期に分泌物組成が変化することを記録した、以前に発表された研究と一致している。乳腺分泌液中のアルブミン濃度に対する有意な処置効果は、Imrestor(登録商標)が乳腺細胞のターンオーバーおよび組織リモデリングを促進するのに必要な細胞マトリックスの分解を早めることを示している。このことは、乳腺の退縮がより早く、その後の泌乳量に関連することを示し得る。
Figure 2024520651000010
実施例6
乾乳前に投与されたImrestorのMSU製品試験
臨床データの結果
背景まとめ:乳牛の乾乳期前後にImrestor(登録商標)を投与したとき、退縮にどのような影響があるかを明らかにすることが目的であった。MSU Dairy Teaching & Research Center の20頭の牛を、乾乳の7日前および乾乳日にImrestor(登録商標)を投与する群(処置- B群)または生理食塩水を偽注射する群(対照 - A群)に無作為に分けた。生理的および臨床的結果は、乾乳期前および乾乳期中、ならびに分娩後に記録した。乳牛は乾乳期には抗生物質を投与されず、乾乳期の14日後(乾乳期の分泌物サンプリング終了後)に内部シーラントを施された。
結果変数:選択された臨床結果および生理学的結果を評価した:本明細書のこの部分には、子宮収縮および乳房の健康状態を測定した5つの臨床結果が記載されている。
1.乳房の硬さ(触診)、乳汁漏出および乳量(その後の泌乳)。
2.乳房衛生:a.乳培養(乳房内感染)およびSCC(分房レベル)。
試験に登録された動物。動物を分娩予定日でブロックし、BLVステータス(0=Elisa 陰性、1=Elisa 陽性)、パリティグループ(1=登録時に第1期の泌乳を完了、2=第2期の泌乳を完了、3=第3期の泌乳を完了、4=第3期以上の泌乳を完了)、および前期のME305乳量(<中央値ME305 または >中央値ME305でブロック)でマッチングした。動物は、最後のDHI検査でSCCが200,000細胞/mL未満であることが必要とされた。1頭の乳牛(5049)は、10月のDHIA SCCが66,000細胞/mLであったため登録されたが、最後の公式検査(official test)では400,000細胞/mLであった。
Figure 2024520651000011
Figure 2024520651000012
結果:試験集団:何れの動物特性においても、処置群(B)または対照群(A)に無作為化された乳牛の間に有意差は観察されなかった。サンプルサイズが小さく、群間で統計的に有意な差がないことから、ブロック変数(BLVの状態、パリティグループ、前泌乳量、SCC)は最終的な統計モデルの一部にのみ含まれた。
Figure 2024520651000013
結果変数: 測定された臨床結果には、乳房内感染、分房SCC(泌乳前、乾乳期分泌物、または分娩後乳で判定)、乳房の触診スコア、乳汁漏出および乳量が含まれる。
Figure 2024520651000014
Figure 2024520651000015
結果 - 乳房内感染。IMIはNMCガイドラインに従い、分房乳サンプルからの細菌の回収率に基づいて定義された。この試験ではIMIはほとんど観察されなかった。640分房サンプル(乾乳期分泌物または乳汁)のうち、9検体(1.5%)が汚染され、589検体(93.3%)が培養陰性であった。培養陽性サンプルの42検体(6.7%)のうち、(6頭の9分房サンプルより)32検体が非ウレア性ブドウ球菌属であった;4検体は連鎖球菌種(1頭の2分房)、3検体は黄色ブドウ球菌(1頭の1分房)、2検体はアエロコッカス・ビリダンス(2頭の2分房)、1検体はトゥルエペレラ・ピオゲネス(1頭の1分房)であった。病原体の同定はすべてMaldi-Tofに基づいて行った。
Figure 2024520651000016
乳牛レベルでのIMI解析:IMIデータの非正規分布に基づき、牛レベルでの処置とIMIの関連性を評価するため、Wilcoxon rank-sum 検定を実施したところ、処置に基づくIMIの有意差は認められなかった(P=0.27)。
Figure 2024520651000017
解析 - 分房レベルでのIMI。崩壊型サンプリング期間(期間1、2および3)に亘るIMIを有する分房の総数を評価した。スパースデータ(sparse data)に基づき、IMIを有する分房の数を従属変数とし、BLVの状態、パリティ、サンプリング順序(1、2、3)、およびサンプリング順序による処置の相互作用を予測変数として用いて、とても単純なANOVAを実施した。BLVの状態(P=0.008)およびパリティ(P=0.002)は、IMIを発症した分房と有意に関連していたが、処置別(P=0.64)および処置とサンプリング時期の相互作用は有意ではなかった(P=0.52)。
結果 - 体細胞数。SCCを、8つの期間にわたる80の分房(640値)に対するlog10値を用いて、分房レベルで分析した。処置は乾乳7日前のサンプリング後に行われたため、その日は結果分析に含まれなかった。SCCの記述的データを表7Bに示す。
Figure 2024520651000018
処置前(7日前)のQSCCには群間で差が出る傾向があった(P=0.08)ため、PreDry7 QSCC を、処置が乾乳前、乾乳期分泌物および分娩後乳サンプルのSCCに及ぼす影響を評価するモデルの共変量として用いた。SCCのモデルは、Proc Mixed(SAS)を用い、乳牛をランダム効果として含む反復測定モデルで行った。モデルのSASコードおよび選択された出力は以下の通りである:
Figure 2024520651000019
分析:サンプリング期間別および処置とサンプリング期間の相互作用による有意な影響が観察された。PreDry2および乾乳後サンプリング期間では、logSCCに数値的な差が認められたが、Bonferroni補正を用いて多重比較を調整した後、処置と期間によるの個別効果に有意差は認められなかった。これは、サンプルサイズが少ない試験的研究の性質によるものと思われる。
結果 - 乳房触診スコア:乳腺の触診は、処置を盲検化した2名の研究者が独立して行った。評価者間で異なるスコアが得られたとき、スコアは平均され、カテゴリー値に再割り当てされた。例えば、平均値0および0.5を0、平均値1および1.5を1、平均値1.5および2を2とした。
分房ごとの触診スコアも同じ方法で乳牛レベルで集計した(分房の平均値をカテゴリー値として再割り当て)。乳房触診スコアの記述データを表8Aに示す。
Figure 2024520651000020
触診スコアのモデルは Proc GLimmix(SAS)を用い、乳牛をランダム効果として含めた。モデルのSASコードおよび選択された出力は以下の通りである:
Figure 2024520651000021

Figure 2024520651000022
解析:サンプリング期間の有意な影響、およびパリティの傾向が観察された。乳房触診スコアに対する処置または処置と期間の統計的に有意な影響は認められなかった。
結果 - 乾乳期初期の乳汁漏出。乳腺の乳汁漏出については、処置を盲検化した2名の研究者が独立して観察した。乳汁漏出の記述的データを表9Aおよび表10Aに示す。
Figure 2024520651000023
Figure 2024520651000024
分析。0~3日目および4~14日目で崩れた(collapsed)分房レベルのデータを用いて、単純なカイ二乗分析を行い評価した。漏出分房数による処置の有意な関連は観察されなかった(P=0.19)。
結果 - 乳量。泌乳量は、各サンプリング期間における毎日の乳量値を用いて乳牛レベルで分析した。乳量(kg)の記述的データを表8Bに示す。
Figure 2024520651000025
処置前(predry-7)の乳量が群間で異なる傾向があったため(P=0.07)、PreDry-7の乳量をモデルの共変量として用い、パリティが乳量に与える影響が強いことが知られているため、パリティ群(1、2+)をこのモデルに含めた。乳量のモデルはProc Mixed(SAS)を用い、乳牛をランダム効果として含む反復測定モデルで、140個の観察値を含む。モデルのSASコードおよび選択された出力は以下の通りである:
Figure 2024520651000026

Figure 2024520651000027
分析:サンプリング期間別および処置とサンプリング期間の相互作用の有意な影響が観察され、Imrestorを投与された乳牛の産乳量が多い傾向が認められた。
実施例7
黄色ブドウ球菌曝露試験
この試験の目的は、黄色ブドウ球菌の実験的チャレンジモデル(N=32頭、2フェーズ)の処置において、対照(生理食塩水)と比較したペグボビガストリムの3種の用量(1/4、1/2および全量)の効果を調べることであった。全量投与(2.7mL/15mg)、半量投与(1.35mL/7.5mg)および1/4量投与(0.68mL/3.75mg)で、各群とも乾乳7日前および乾乳日に7日間隔で2回投与した。
- 対照および1X:n=12
- 1/4Xおよび1/2X:n=4
処置成功(治癒率)は、乾乳の31日後および38日後の両日で黄色ブドウ球菌の細菌学的検査が陰性であったことと定義した。
結果
Imrestor(登録商標)で処置した乳牛は、対照群と比較して治癒率または黄色ブドウ球菌の菌数に差は見られなかった。
- 試験38日目には、対照群と比較して1X投与群でCFU/mLが増加する傾向が認められた。
二次細菌病原体(log10 CFU/mL)は、試験31日目または38日目とも対照群と差はなかった。
試験31日目にImrestor(登録商標)を投与した乳牛では、分房の疼痛および腫脹が有意に少なかった。
乾乳期後の乳漏れは、Imrestor(登録商標)を投与した乳牛で有意に少なかった。
Imrestor(登録商標)を投与した乳牛では、乾乳期後の循環好中球濃度が約10倍であったにもかかわらず、乳汁漏出が有意に少なかった。
実施例8
ウベリス連鎖球菌曝露試験
本試験の目的は、ウベリス連鎖球菌乳頭浸漬試験曝露モデル(N=32頭、127分房)の予防に対して、ペグボビガストリムを全量(2.7mL)投与した効果を対照(生理食塩水)と比較して検討することであった。
-対照:n=16
-1X:n=16
感染成功基準:
-72時間以内に最小2x CFU>0、および最小2x SCC>200.000。
予防成功の定義は、感染中/感染後の試験期間(d0-16)において上記の基準を満たさなかったことと定義した。
結果
曝露モデルは対照群の55.6%で成功した。
Imrestor(登録商標)の投与により、分房におけるウベリス連鎖球菌の感染率が30%低下した。
- 傾向、有意ではない。
- ウベリス連鎖球菌のAUC CFUに差は見られなかった。
臨床症状への影響は限定的と思われる。
WBCおよび好中球の急激な増加を誘発。
・約10日で正常レベルに戻った。
実施例9
ニュージーランドの農場での試験
本試験の目的は、1)自然感染モデルを用いた商業農場において、乾乳期および分娩後の新規IMIの予防に最も有効なImrestorの投与量を決定すること、および2)乾乳期前後のImrestor(登録商標) 投与が好中球数および機能性に及ぼす影響を明らかにすること、であった。
-大規模商業グループ:N=102頭
・ 主要アウトカム変数:分娩後の分房における細菌学的検査(IMI)陽性
・ 乾乳期および分娩後の臨床的乳房炎
- 小規模で集中的なサンプリング:N=60頭
・ 血液サンプル、乳サンプル、乳汁漏出
結果
頭数が少ないため、統計的な結論を出すのは難しい。
Imrestor(登録商標)は、乾乳期における細菌学的治癒率が対照群よりも高かった。
- 特記:これらは処置の1週間前以内に発症した感染症である。
0.25倍および1XのImrestor(登録商標)を投与した乳牛の乾乳期および分娩後の生存曲線および乳房炎率は、対照群と比較して減少し、互いに同程度であった。
試験期間中の累積乳房炎率は、0.25倍の用量で最も低くなった(8.7%、対照群では13.9%)。
SCCおよび乳漏出は、処置乳牛と対照乳牛間に差は見られなかった。
実施例10
テキサス工科大学の農場での試験
本試験の目的は、自然感染モデルを用いた商業農場において、乾乳期および/または分娩後の新たなIMIの予防に最も有効なペグボビグラスチムの用量を決定することであった。
大規模商業グループ:N=340頭
- 主要アウトカム変数:分娩後の分房における細菌学的検査陽性
- 分娩後の臨床的乳房炎
- 約30~100 DIMでの乳量
小規模グループ:N=60頭
結果
分娩後7日目に0.25X(0.09)、1X(0.07)のImrestor(登録商標)を投与した乳牛では、分娩後に細菌学的検査で陽性となった分房の割合が対照群(0.13)と比較して減少した。
最初の60 DIMにおける臨床的乳房炎は、統計学的に有意ではないものの、対照群と比較して36%減少した(7.5% 対 11.7%)(P≧0.280)。
Imrestor(登録商標) SCCを投与した乳牛は、全体的に統計的な差は見られなかった。
- 試験時間1、3および4において、Imrestor(登録商標)を投与した乳牛に若干の数値的効果がみられた。
0.5X Imrestor(登録商標) を投与した乳牛では、試験時間1および2の乳量が悪化する傾向があった(-4.75~-4.33lb)。
試験時間4の乳量は、0.25Xの Imrestor(登録商標) を投与した乳牛の方が多かった(9.83lb)。
実施例7-10のまとめ
実験的曝露試験
- 乾乳時にImrestor(登録商標)を投与すると、全用量および半用量で同様の好中球反応が得られる。
・ 分房用量(Quarter dose)では、ピークが低く、減少がより早かった。
・ 用量依存性は、分娩後間もない乳牛ほど顕著ではないようである。
- 全体として、Imrestor(登録商標) は実験的黄色ブドウ球菌曝露の処置には効果がないようであった。
・ 治癒率の改善、二次的な細菌感染の減少が見られなかったが、乳房の退縮に数値的な差が見られ、臨床症状が改善した。
- 予防に関しては、Imrestor(登録商標)を全量投与することで、ウベリス連鎖球菌による乳房炎を発症する可能性が対照群と比較して30%低下した。
・ 傾向としては、有意ではなく、個々の動物の構成要素は有意であると思われる。
・ 臨床症状への影響は限定的と思われる。
農場での自然感染試験
-全体として、0.25Xまたは1XのImrestor(登録商標)を投与した乳牛では、乾乳期または分娩後の臨床的な乳房炎の発生率が対照群と比較して21~30%減少するという同様の傾向が見られた。
・ 同様の生存曲線
- 酪農家により確認された分娩後の臨床的乳房炎は、両試験とも0.25X投与群で最も少なかった(対照群では11.7%および14.8%であったのと比較して、7.5%および11.5%)。
- 分娩後の細菌学的検査では、0.25Xを分娩後7日目以降に投与した乳牛の陽性率が両試験で(統計学的および/または数値的に)減少した。
- いずれの農場での試験でも、Imrestor(登録商標)を投与した乳牛の分娩後のSCCに統計学的有意な改善はみられなかったが、乳質改善には数値的な傾向があり得る。
本発明の好ましい態様と考えられるものを説明してきたが、当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく、他のさらなる変更および修正を加えることができることを理解し、また本発明の真の範囲内に入る全てのそのような修正および変更を特許請求することを意図する。

Claims (20)

  1. 泌乳後期の乳牛にペグボビグラスチムを投与することを含む、それを必要とする乳牛における乳房炎の処置方法。
  2. ペグボビグラスチムが、乾乳期の7日前に投与される、請求項1に記載の方法。
  3. ペグボビグラスチムを乾乳期に乳牛に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  4. 抗生物質を投与しない、請求項1に記載の方法。
  5. ペグボビグラスチムの用量が、乳牛の重量に基づき、約2-40μg/kg、約10-40μg/kg、約20-40μg/kg、約30-40μg/kg、約20-30μg/kg、2-10μg/kg、または約10-20μg/kgである、請求項3に記載の方法。
  6. ペグボビグラスチムの用量が、乳牛の重量に基づき、約20-40μg/kgである、請求項1に記載の方法。
  7. 泌乳後期の乳牛にペグボビグラスチムを投与することを含む、それを必要とする乳牛において乳房炎を抑制する方法。
  8. ペグボビグラスチムが、乾乳期の7日前に投与される、請求項7に記載の方法。
  9. ペグボビグラスチムを乾乳期に乳牛に投与することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
  10. 抗生物質を投与しない、請求項7に記載の方法。
  11. ペグボビグラスチムの用量が、乳牛の重量に基づき、約2-40μg/kg、約10-40μg/kg、約20-40μg/kg、約30-40μg/kg、約20-30μg/kg、2-10μg/kg、または約10-20μg/kgである、請求項7に記載の方法。
  12. ペグボビグラスチムの用量が、乳牛の重量に基づき、約20-40μg/kgである、請求項11に記載の方法。
  13. 泌乳後期の乳牛にペグボビグラスチムを投与することを含む、乳牛の泌乳量を増加させる方法。
  14. ペグボビグラスチムが、乾乳期の7日前に投与される、請求項13に記載の方法。
  15. ペグボビグラスチムを乾乳期に乳牛に投与することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
  16. ペグボビグラスチムを、i)分娩予定日の約1週間前、およびii)分娩後約24時間以内の2回、乳牛に投与することを含む、それを必要とする乳牛において乳房炎を処置する方法。
  17. 抗生物質を投与しない、請求項16に記載の方法。
  18. ペグボビグラスチムの用量が、乳牛の重量に基づき、約2-40μg/kg、約10-40μg/kg、約20-40μg/kg、約30-40μg/kg、約20-30μg/kg、2-10μg/kg、または約10-20μg/kgである、請求項16に記載の方法。
  19. ペグボビグラスチムを、i)分娩予定日の約1週間前、およびii)分娩後約24時間以内の2回、乳牛に投与することを含む、それを必要とする乳牛において乳房炎を抑制する方法。
  20. ペグボビグラスチムを、i)分娩予定日の約1週間前、およびii)分娩後約24時間以内の2回、乳牛に投与することを含む、乳牛の泌乳量を増加させる方法。
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