JP2024519214A - 簡易試料抽出用組成物及び方法 - Google Patents

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Abstract

核酸抽出・精製用組成物及び方法を提供する。

Description

本出願は、2021年5月6日に出願された、米国仮特許出願番号63/184,857号の優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、一面において、新規な核酸抽出・精製用組成物及び方法に関する。
大半の核酸抽出システムは、所定の基本工程を踏んでいる。これらのシステムは、生体試料を溶解させて核酸を放出させ、核酸を何らかの表面と結合させ、夾雑物を除去し、核酸を溶出させる必要があり、より濃厚な形態で溶出させることが好ましい。システムによっては、核酸を結合させるためにガラス繊維やフィルター等の固体基材を使用するものもあるし、磁性粒子を使用するものもある。高レベルの感度を必要としないシステムでは、より簡易なプロセスをとる場合もあるが、いずれのシステムでも、核酸標的を同定することができるアッセイにこの標的を供する方法が必要である。自動化を簡易にするためにプレロードカートリッジも使用されている。プレロードシステムでは、液体を移送するために精巧なポンプ・ピペット機構を機器に設ける必要がない。しかし、プレロードカートリッジは、それ自体複雑な装置であり、製造費用がかさみ、依然として機械的混合等の工程が必要な場合もある。
本開示の1態様によると、生体試料から核酸を抽出・単離するための多層組成物が提供され、前記多層組成物は、a)前記多層組成物の各層をその内側に集合させる反応容器と;b)前記反応容器の内側に配置されており、濃厚半固体溶解ペーストを含む最上層と;c)低温で融解可能なワックスを含む中間層と;d)水性ゲルを含む下層洗浄層を含む。所定の態様において、前記反応容器は、実質的に円形の横断面のチューブを含み、前記チューブは、上端と下端を有する。所定の態様において、前記チューブの上端と下端は、可逆的に封止されている。ある種の態様において、前記チューブは、J字形又はU字形である。所定の態様において、前記生体試料は、液体生体試料である。所定の態様において、前記液体生体試料は、血清試料、血液試料、血漿試料、唾液試料、又は他の種類の生体試料である。所定の態様において、前記低温で融解可能なワックスは、室温で固体である。所定の態様において、前記低温で融解可能なワックスは、50~55℃を上回る温度で液体への転移を開始する。ある種の態様において、前記多層組成物は、更に前記洗浄層と流体連通している溶出緩衝液を含む隣接層を含む。所定の態様において、前記溶出緩衝液は、低イオン強度溶出緩衝液である。所定の態様において、前記低イオン強度溶出緩衝液は、リン酸緩衝液である。所定の態様において、前記中間層は、複数の低温で融解可能なワックス層を含み、前記複数の低温で融解可能なワックス層は、各々介在シール層により分離されている。所定の態様において、前記複数の低温で融解可能なワックス層の各々を分離する前記介在シール層は、より低温で融解可能なワックスを含み、そのすぐ下の層よりも低温で融解する。所定の態様において、前記複数の低温で融解可能なワックス層の各々を分離する前記介在シール層は、鉱物油を含む。ある種の態様において、前記複数の低温で融解可能なワックス層の各々を分離する前記介在シール層は、アガロースを含む。所定の態様において、前記複数の低温で融解可能なワックス層は、使用時に前記複数の低温で融解可能なワックス層の各々が最上層から最下層まで順次融解するように積層されている。所定の態様において、前記中間層は、更に内部対照を含む。所定の態様において、前記濃厚半固体溶解ペーストは、GITC、トリス塩酸塩、トリス塩基、及びTween-20を含む。所定の態様において、前記濃厚半固体溶解ペーストは、残留水分率が10%未満であり、流動しない。所定の態様において、前記濃厚半固体溶解ペーストは、残留水分率が5%未満である。所定の態様において、前記水性ゲルは、アガロース又はポリアクリルアミドを含む。所定の態様において、構成要素b)の前記最上層は、更に複数の金属酸化物被覆磁性粒子を含む。所定の態様において、前記複数の金属酸化物被覆粒子は、前記生体試料中に存在する核酸の計算量に対してモル過剰になると予想される量で存在する。所定の態様において、前記金属酸化物被覆粒子は、酸化チタン粒子である。所定の態様において、前記酸化チタン被覆粒子は、チタン銅(CuTi)被覆粒子である。
本開示の別の態様によると、生体試料から核酸を抽出・精製するための方法が提供され、前記方法は、a)前記生体試料から核酸を抽出・単離するための多層組成物として、i)前記多層組成物の各層をその内側に集合させる反応容器と;ii)前記反応容器の内側に配置されており、濃厚半固体溶解ペーストを含む最上層と;iii)低温で融解可能なワックスを含む中間層と;iv)水性ゲルを含む下層洗浄層を含む多層組成物を準備する工程と;b)前記最上層の上に生体試料を積層し、複数の金属酸化物被覆磁性粒子を加えた前記溶解ペーストを可溶化して可溶化溶解ペーストを形成する工程と;c)前記反応容器を加熱して前記中間層の融解を開始させ、前記中間層が融解して前記可溶化濃厚半固体ペーストを通って上昇することを特徴とする密度逆転を生じることにより、前記生体試料、前記可溶化濃厚半固体溶解ペースト及び前記複数の金属酸化物被覆磁性粒子を混合し、前記生体試料内の核酸を前記金属酸化物被覆粒子と結合させる工程と;c)前記反応容器の周囲又は付近に磁石を配置することにより、金属酸化物被覆粒子とそれに結合した核酸を吸引する工程と;d)前記磁石を移動させることにより、吸引した金属酸化物被覆粒子とそれに結合した核酸が少なくとも部分的に前記水性ゲルを通って移動するように推進し、抽出夾雑物を除去する工程を含む。所定の態様において、前記低温で融解可能なワックスは、室温で固体である。所定の態様において、前記低温で融解可能なワックスは、50~55℃を上回る温度で液体への転移を開始する。ある種の態様において、前記多層組成物は、更に前記洗浄層と流体連通している溶出緩衝液を含み、前記磁石を移動させることにより、吸引した金属酸化物被覆粒子とそれに結合した核酸が少なくとも部分的に前記水性ゲルを通って前記溶出緩衝液内に移動するように推進する。所定の態様において、前記溶出緩衝液は、低イオン強度溶出緩衝液であり、任意に更に、前記低イオン強度溶出緩衝液は、リン酸緩衝液である。所定の態様において、前記多層組成物の前記中間層は、複数の低温で融解可能なワックス層を含み、前記複数の低温で融解可能なワックス層は、各々介在シール層により分離されている。所定の態様において、前記複数の低温で融解可能なワックス層の各々を分離する前記多層組成物の前記介在シール層は、より低温で融解可能なワックスを含み、そのすぐ下の層よりも低温で融解する。他の態様において、前記複数の低温で融解可能なワックス層の各々を分離する前記多層組成物の前記介在シール層は、鉱物油を含む。所定の態様において、前記複数の低温で融解可能なワックス層の各々を分離する前記多層組成物の前記介在シール層は、アガロースを含む。所定の態様において、前記複数の低温で融解可能なワックス層は、使用時に前記反応容器が加熱されるにつれて前記複数の低温で融解可能なワックス層の各々が最上層から最下層まで順次融解するように積層されている。所定の態様において、前記複数の金属酸化物被覆粒子は、酸化チタン粒子である。所定の態様において、前記酸化チタン粒子は、チタン銅(CuTi)被覆粒子である。ある種の態様では、構成要素a)の前記多層組成物を準備した後に、前記複数の金属酸化物被覆粒子を付加する。
図1A~Dは、ワックス完全性試験の模式図と顕微鏡写真画像を示す。図1A~Cは、25%パラフィン/75%Chill-out(登録商標)液体ワックスのワックス混合物を使用した完全性試験を示す。図1Aの左図は、右図でチューブ内に示すようなワックス層とアガロース層の交互層の模式図を示す。図1Bの左図は、右図でチューブ内に示すようなアガロース層とワックス層の模式図を示す。図1Cの左図は、右図でチューブ内に示すようなワックス層とアガロース層の模式図を示す。図1Dは、マイクロクリスタリンワックスと重質鉱物油のワックス混合物を使用した完全性試験を示す。左図は、右図でチューブ内に示すようなアガロース層とワックス層の模式図を示す。 図1A~Dは、ワックス完全性試験の模式図と顕微鏡写真画像を示す。図1A~Cは、25%パラフィン/75%Chill-out(登録商標)液体ワックスのワックス混合物を使用した完全性試験を示す。図1Aの左図は、右図でチューブ内に示すようなワックス層とアガロース層の交互層の模式図を示す。図1Bの左図は、右図でチューブ内に示すようなアガロース層とワックス層の模式図を示す。図1Cの左図は、右図でチューブ内に示すようなワックス層とアガロース層の模式図を示す。図1Dは、マイクロクリスタリンワックスと重質鉱物油のワックス混合物を使用した完全性試験を示す。左図は、右図でチューブ内に示すようなアガロース層とワックス層の模式図を示す。 図1A~Dは、ワックス完全性試験の模式図と顕微鏡写真画像を示す。図1A~Cは、25%パラフィン/75%Chill-out(登録商標)液体ワックスのワックス混合物を使用した完全性試験を示す。図1Aの左図は、右図でチューブ内に示すようなワックス層とアガロース層の交互層の模式図を示す。図1Bの左図は、右図でチューブ内に示すようなアガロース層とワックス層の模式図を示す。図1Cの左図は、右図でチューブ内に示すようなワックス層とアガロース層の模式図を示す。図1Dは、マイクロクリスタリンワックスと重質鉱物油のワックス混合物を使用した完全性試験を示す。左図は、右図でチューブ内に示すようなアガロース層とワックス層の模式図を示す。 図1A~Dは、ワックス完全性試験の模式図と顕微鏡写真画像を示す。図1A~Cは、25%パラフィン/75%Chill-out(登録商標)液体ワックスのワックス混合物を使用した完全性試験を示す。図1Aの左図は、右図でチューブ内に示すようなワックス層とアガロース層の交互層の模式図を示す。図1Bの左図は、右図でチューブ内に示すようなアガロース層とワックス層の模式図を示す。図1Cの左図は、右図でチューブ内に示すようなワックス層とアガロース層の模式図を示す。図1Dは、マイクロクリスタリンワックスと重質鉱物油のワックス混合物を使用した完全性試験を示す。左図は、右図でチューブ内に示すようなアガロース層とワックス層の模式図を示す。 図2A~Bは、本開示の各種実施形態の構造図と模式図を示す。図2Aは、本開示の1実施形態の構造図を示す。参照符号は以下の通りである。(1)抽出チューブ又は反応容器;(2)濃厚半固体溶解ペースト(「溶解ペースト」);(3)中間層の低温で融解可能なワックス層;(4)中間層の介在シール層;(5)アガロースゲル洗浄層;(6)任意に付加されるワックスプラグ及び/又は任意に付加されるキャップ。ゲル洗浄層は、粒子がこの層を通って磁気的に吸引されるにつれて前記粒子から夾雑物と溶解試薬を除去する。図2Bの模式図は、中間層が、低温で融解可能なワックス層(25%パラフィン/75%鉱物油;融点50~55℃)と、その間に配置されたより低温で融解可能なワックス(5%パラフィン/95%鉱物油;融点45~50℃;「ワックスIL」)の介在シール層を含む本開示の1実施形態を図解する。 図2A~Bは、本開示の各種実施形態の構造図と模式図を示す。図2Aは、本開示の1実施形態の構造図を示す。参照符号は以下の通りである。(1)抽出チューブ又は反応容器;(2)濃厚半固体溶解ペースト(「溶解ペースト」);(3)中間層の低温で融解可能なワックス層;(4)中間層の介在シール層;(5)アガロースゲル洗浄層;(6)任意に付加されるワックスプラグ及び/又は任意に付加されるキャップ。ゲル洗浄層は、粒子がこの層を通って磁気的に吸引されるにつれて前記粒子から夾雑物と溶解試薬を除去する。図2Bの模式図は、中間層が、低温で融解可能なワックス層(25%パラフィン/75%鉱物油;融点50~55℃)と、その間に配置されたより低温で融解可能なワックス(5%パラフィン/95%鉱物油;融点45~50℃;「ワックスIL」)の介在シール層を含む本開示の1実施形態を図解する。 図3A~Eは、作製された抽出チューブの模式図と、本開示の組成物及び方法を使用して抽出した試料で試験したHIV RNA及び内部対照のリアルタイムPCR(RT-PCR)結果のグラフを示す。図3Aは、本開示の1実施形態を図解する模式図を示す。低温で融解可能なワックス層内に含まれるHIV内部対照を「o」として表す。図3B~Cは、本実験において2種の陽性試料で使用したHIV RNAのRT-PCR結果を示す。図3D~Eは、本実験で使用した全6種の試料における内部対照のRT-PCR結果を示す。 図3A~Eは、作製された抽出チューブの模式図と、本開示の組成物及び方法を使用して抽出した試料で試験したHIV RNA及び内部対照のリアルタイムPCR(RT-PCR)結果のグラフを示す。図3Aは、本開示の1実施形態を図解する模式図を示す。低温で融解可能なワックス層内に含まれるHIV内部対照を「o」として表す。図3B~Cは、本実験において2種の陽性試料で使用したHIV RNAのRT-PCR結果を示す。図3D~Eは、本実験で使用した全6種の試料における内部対照のRT-PCR結果を示す。 図3A~Eは、作製された抽出チューブの模式図と、本開示の組成物及び方法を使用して抽出した試料で試験したHIV RNA及び内部対照のリアルタイムPCR(RT-PCR)結果のグラフを示す。図3Aは、本開示の1実施形態を図解する模式図を示す。低温で融解可能なワックス層内に含まれるHIV内部対照を「o」として表す。図3B~Cは、本実験において2種の陽性試料で使用したHIV RNAのRT-PCR結果を示す。図3D~Eは、本実験で使用した全6種の試料における内部対照のRT-PCR結果を示す。 図3A~Eは、作製された抽出チューブの模式図と、本開示の組成物及び方法を使用して抽出した試料で試験したHIV RNA及び内部対照のリアルタイムPCR(RT-PCR)結果のグラフを示す。図3Aは、本開示の1実施形態を図解する模式図を示す。低温で融解可能なワックス層内に含まれるHIV内部対照を「o」として表す。図3B~Cは、本実験において2種の陽性試料で使用したHIV RNAのRT-PCR結果を示す。図3D~Eは、本実験で使用した全6種の試料における内部対照のRT-PCR結果を示す。 図3A~Eは、作製された抽出チューブの模式図と、本開示の組成物及び方法を使用して抽出した試料で試験したHIV RNA及び内部対照のリアルタイムPCR(RT-PCR)結果のグラフを示す。図3Aは、本開示の1実施形態を図解する模式図を示す。低温で融解可能なワックス層内に含まれるHIV内部対照を「o」として表す。図3B~Cは、本実験において2種の陽性試料で使用したHIV RNAのRT-PCR結果を示す。図3D~Eは、本実験で使用した全6種の試料における内部対照のRT-PCR結果を示す。 図4A~Gは、本開示の組成物及び方法を使用して抽出した試料で試験したHIV RNA及び内部対照のリアルタイムPCR(RT-PCR)結果のグラフとプロットを示す。図4A~Bは、陽性試料で使用したHIV RNAのRT-PCR結果を示す。図4C~Dは、全実験試料で使用した内部対照のRT-PCR結果を示す。図4E~Gは、図4A~Dの結果のフィット群分析のグラフを示す。図4Eは、試料毎のHIV CTの一元配置分析を示す。図4Fは、試料毎のIC CTの一元配置分析を示す。図4Gは、試料毎のlog cp/mlの一元配置分析を示す。 図4A~Gは、本開示の組成物及び方法を使用して抽出した試料で試験したHIV RNA及び内部対照のリアルタイムPCR(RT-PCR)結果のグラフとプロットを示す。図4A~Bは、陽性試料で使用したHIV RNAのRT-PCR結果を示す。図4C~Dは、全実験試料で使用した内部対照のRT-PCR結果を示す。図4E~Gは、図4A~Dの結果のフィット群分析のグラフを示す。図4Eは、試料毎のHIV CTの一元配置分析を示す。図4Fは、試料毎のIC CTの一元配置分析を示す。図4Gは、試料毎のlog cp/mlの一元配置分析を示す。 図4A~Gは、本開示の組成物及び方法を使用して抽出した試料で試験したHIV RNA及び内部対照のリアルタイムPCR(RT-PCR)結果のグラフとプロットを示す。図4A~Bは、陽性試料で使用したHIV RNAのRT-PCR結果を示す。図4C~Dは、全実験試料で使用した内部対照のRT-PCR結果を示す。図4E~Gは、図4A~Dの結果のフィット群分析のグラフを示す。図4Eは、試料毎のHIV CTの一元配置分析を示す。図4Fは、試料毎のIC CTの一元配置分析を示す。図4Gは、試料毎のlog cp/mlの一元配置分析を示す。 図4A~Gは、本開示の組成物及び方法を使用して抽出した試料で試験したHIV RNA及び内部対照のリアルタイムPCR(RT-PCR)結果のグラフとプロットを示す。図4A~Bは、陽性試料で使用したHIV RNAのRT-PCR結果を示す。図4C~Dは、全実験試料で使用した内部対照のRT-PCR結果を示す。図4E~Gは、図4A~Dの結果のフィット群分析のグラフを示す。図4Eは、試料毎のHIV CTの一元配置分析を示す。図4Fは、試料毎のIC CTの一元配置分析を示す。図4Gは、試料毎のlog cp/mlの一元配置分析を示す。 図4A~Gは、本開示の組成物及び方法を使用して抽出した試料で試験したHIV RNA及び内部対照のリアルタイムPCR(RT-PCR)結果のグラフとプロットを示す。図4A~Bは、陽性試料で使用したHIV RNAのRT-PCR結果を示す。図4C~Dは、全実験試料で使用した内部対照のRT-PCR結果を示す。図4E~Gは、図4A~Dの結果のフィット群分析のグラフを示す。図4Eは、試料毎のHIV CTの一元配置分析を示す。図4Fは、試料毎のIC CTの一元配置分析を示す。図4Gは、試料毎のlog cp/mlの一元配置分析を示す。 図4A~Gは、本開示の組成物及び方法を使用して抽出した試料で試験したHIV RNA及び内部対照のリアルタイムPCR(RT-PCR)結果のグラフとプロットを示す。図4A~Bは、陽性試料で使用したHIV RNAのRT-PCR結果を示す。図4C~Dは、全実験試料で使用した内部対照のRT-PCR結果を示す。図4E~Gは、図4A~Dの結果のフィット群分析のグラフを示す。図4Eは、試料毎のHIV CTの一元配置分析を示す。図4Fは、試料毎のIC CTの一元配置分析を示す。図4Gは、試料毎のlog cp/mlの一元配置分析を示す。 図4A~Gは、本開示の組成物及び方法を使用して抽出した試料で試験したHIV RNA及び内部対照のリアルタイムPCR(RT-PCR)結果のグラフとプロットを示す。図4A~Bは、陽性試料で使用したHIV RNAのRT-PCR結果を示す。図4C~Dは、全実験試料で使用した内部対照のRT-PCR結果を示す。図4E~Gは、図4A~Dの結果のフィット群分析のグラフを示す。図4Eは、試料毎のHIV CTの一元配置分析を示す。図4Fは、試料毎のIC CTの一元配置分析を示す。図4Gは、試料毎のlog cp/mlの一元配置分析を示す。 図5A~Cは、実施例3に例証する本開示の各種実施形態の模式図と、本開示の組成物及び方法を使用して抽出した試料で試験したHIV RNA陽性及び陰性対照並びに内部対照のリアルタイムPCR(RT-PCR)結果のグラフとプロットを示す。図5Aは、中間層が5層の融解可能なワックス層(「5層」)又は6層の融解可能なワックス層(「6層」)を含む本開示の実施形態の模式図を示す。5層及び6層実施形態のいずれにおいても、夫々の中間層は、低温で融解可能なワックス層(15%パラフィン/85%鉱物油;「15%ワックス」)を含み、介在シール層は、より低温で融解可能なワックス(5%パラフィン/95%鉱物油;「5%ワックスIL」)を含む。図5B~Cは、実施例3に記載するように抽出した試料で実施したHIV RT-PCR反応の結果を示す。図5Bは、標的増幅(陽性対照試料)の結果を示す。図5Cは、全試料における内部対照増幅の結果を示す。 図5A~Cは、実施例3に例証する本開示の各種実施形態の模式図と、本開示の組成物及び方法を使用して抽出した試料で試験したHIV RNA陽性及び陰性対照並びに内部対照のリアルタイムPCR(RT-PCR)結果のグラフとプロットを示す。図5Aは、中間層が5層の融解可能なワックス層(「5層」)又は6層の融解可能なワックス層(「6層」)を含む本開示の実施形態の模式図を示す。5層及び6層実施形態のいずれにおいても、夫々の中間層は、低温で融解可能なワックス層(15%パラフィン/85%鉱物油;「15%ワックス」)を含み、介在シール層は、より低温で融解可能なワックス(5%パラフィン/95%鉱物油;「5%ワックスIL」)を含む。図5B~Cは、実施例3に記載するように抽出した試料で実施したHIV RT-PCR反応の結果を示す。図5Bは、標的増幅(陽性対照試料)の結果を示す。図5Cは、全試料における内部対照増幅の結果を示す。 図5A~Cは、実施例3に例証する本開示の各種実施形態の模式図と、本開示の組成物及び方法を使用して抽出した試料で試験したHIV RNA陽性及び陰性対照並びに内部対照のリアルタイムPCR(RT-PCR)結果のグラフとプロットを示す。図5Aは、中間層が5層の融解可能なワックス層(「5層」)又は6層の融解可能なワックス層(「6層」)を含む本開示の実施形態の模式図を示す。5層及び6層実施形態のいずれにおいても、夫々の中間層は、低温で融解可能なワックス層(15%パラフィン/85%鉱物油;「15%ワックス」)を含み、介在シール層は、より低温で融解可能なワックス(5%パラフィン/95%鉱物油;「5%ワックスIL」)を含む。図5B~Cは、実施例3に記載するように抽出した試料で実施したHIV RT-PCR反応の結果を示す。図5Bは、標的増幅(陽性対照試料)の結果を示す。図5Cは、全試料における内部対照増幅の結果を示す。
本開示は、生体試料から核酸を抽出・単離するための新規組成物及び方法を提供する。本開示の各種態様は、一面において、容易に集合させることが可能でありながら、高機能のデザインを具現化できる単純な試薬を含む組成物と方法に基づく。濃厚半固体溶解ペーストは、溶解及び捕捉用の全成分を含み、試料添加により再水和して流動性液体となる。低密度ワックス層は、融解すると高密度ライセートの表面に浮き上がり、機械的混合を必要とせずに密度逆転混合により溶解反応物を混合する。水性ゲル洗浄層は、プロセス全体を通してその完全性を維持し、ライセートが溶出液を汚染するのを防ぐ。磁気的に捕捉された粒子はゲルを通って吸引され、それ以上洗浄する必要なしに溶解夾雑物を除去し、溶出緩衝液内に吸引することができる。溶出後、溶出液は容易にアッセイに添加される。したがって、本開示の各種実施形態は、最小限の操作工程数を使用し、抽出中に複雑な操作、大量の試薬、分配ポンプ、及び機械的混合の必要がなく、核酸抽出を著しく簡易化する。更に、ワックスは、冷却後に抽出チューブを封止し、廃液処理を不要にする。
所定の態様において、本開示の組成物及び方法は、抽出工程と精製工程を同時に実施するように、又は従来の洗浄と機械的工程を削減若しくは削除する方法で抽出工程と精製工程を実施するようにし、抽出工程と精製工程を統合する。所定の態様において、本開示の組成物及び方法は、核酸抽出を実施するために液体生体試料の添加、加熱、及び粒子の磁気移動しか必要としない内蔵式の加熱活性化装置を含む。
従来の抽出の概念(その開示内容を本願に援用する米国特許第9,803,230号)では、水性ゲルを使用し、核酸を液体溶解緩衝液内に捕捉後に前記ゲルを通って磁性粒子を磁気的に移動させるにつれて前記磁性粒子から溶解緩衝液夾雑物を除去していたが、本開示の組成物及び方法の各種態様はこのような従来の概念を踏まえている。従来では、ゲルを通って移動させることにより、粒子を「洗浄」し、高濃度のGITCを含有する緩衝液を粒子から除去していた。粒子を緩衝液に移送した後に、核酸を粒子から放出させていた。しかし、上記のようなシステムは、抽出直前に溶解緩衝液、試料、金属酸化物被覆磁性粒子、及び溶出緩衝液を別々に添加する必要があった。更に、この方法では、高塩濃度の溶解緩衝液がゲル内に拡散し、ゲル洗浄の効果が低下するため、プレロードすることができなかった。これに対して、本開示の各種態様は、濃厚半固体溶解ペースト、金属酸化物被覆磁性粒子、及び低イオン強度溶出緩衝液を使用し、最も重要な点として、1本のチューブの内側で融解可能なワックス層により抽出成分を区画化する。ワックス層は、溶解ペーストを水性層から分離するのみならず、溶解インキュベーション中に融解すると、溶解反応物を混合する。本開示の各種実施形態において、前記金属酸化物被覆磁性粒子は、酸化チタン粒子である。所定の実施形態において、前記酸化チタン粒子は、チタン銅(CuTi)被覆粒子である(その開示内容を本願に援用する米国特許第10,392,613号)。
所定の態様において、本開示の組成物及び方法は、従来のシリカ抽出法に勝るいくつかの利点がある。当業者に自明の通り、利点の1つは操作の簡易さであり、所定の実施形態では、プレロード抽出チューブに試料を添加する工程と、チューブを加熱する工程と、磁性粒子を抽出チューブの側で捕集する工程と、磁性粒子を溶出緩衝液チャンバー内に移動させる工程を含む。所定の実施形態では、試薬のピペッティングの必要がない。抽出中にライセートを機械的に混合する必要もない。また、抽出チューブは製造が容易であり、綿密な必需品製造の必要がなく、ゲル、ワックス層、及び溶解ペーストを抽出チューブ内に分配するだけでよい。所定の実施形態では、最小限の試薬とプラスチック容器を使用し、プラスチック及び液体廃棄物が激減する。当業者に自明の通り、工程が減ると、抽出プロセスの速度も上がる。これらの利点により、自動化に必要な計器が著しく減る。本開示の組成物及び方法は、既存の核酸抽出法を実質的に改善し、限定されないが、血液バンキング及び移植等を目的とするポイントオブケア検査及び高スループット処理に重要であると思われる。
各種態様において、本開示は、生体試料から核酸を抽出・単離するための多層組成物に関する。本願で使用する「生体試料」なる用語は、対象から取得され、細胞、組織、又は他の生体原料に由来する試料を意味する。生体試料は、天然に存在するものでもよいし、細胞若しくは組織又はその断片の濃厚液又は緩衝液懸濁液でもよいし、細胞又は組織の産物でもよいし、合成核酸でもよい。生体試料の非限定的な例としては、血液、骨髄、組織、摘出標本、生検標本、液体生検標本、組織外植片、臓器培養物、あるいは他の任意の組織若しくは細胞調製物又はその画分若しくは誘導体又はその単離体等が挙げられる。本開示の各種態様において、生体試料は、残留水分を含むか又は含むように調製されている。限定するものではないが、例えば、液分が0.2mlの試料は、55℃で溶解ペースト1gを可溶化するであろうし、液分が0.3mlの試料は、室温で溶解ペースト1gを可溶化するであろう。
本開示の各種態様において、前記生体試料は、液体生体試料である。液体生体試料の非限定的な例としては、全血、血清、血漿、リンパ液、硝子体液、房水、粘液、脳脊髄液、唾液、尿、乳汁、腹水液、滑液、腹腔液、羊水、発酵ブロス、細胞培養物、核酸合成物、又は他の生体液等が挙げられる。本開示の各種実施形態において、核酸は、任意の生体試料から取得することができ、例えば、初代細胞、細胞株、新たに単離された細胞若しくは組織、凍結細胞若しくは組織、パラフィン包埋細胞若しくは組織、固定細胞若しくは組織、及び/又はレーザー切除細胞若しくは組織が挙げられる。所定の実施形態において、本発明の方法で使用するために核酸の単離元となる試料は、対照試料である。核酸は、当技術分野で公知の方法に従って対象、細胞、又は他の原料から単離することができる。当技術分野で公知の方法を使用して生体試料及び液体生体試料を取得・作製する方法は当業者に自明であり、限定されないが、血液から血漿の調製、生体液から細胞の単離、組織の均質化、細胞又はウイルス粒子の破砕、固体材料から液体の調製、粘性液の希釈、液体濾過、液体蒸留、液体濃縮、干渉成分の不活性化、試薬添加、核酸精製等が挙げられる。
本願で使用する「対象」なる用語は、ヒト又は非ヒト動物を意味することができ、哺乳動物及び非哺乳動物、脊椎動物及び無脊椎動物が挙げられ、更に、真核生物(植物及び藻類を含む)又は原核生物、古細菌、微生物(例えば、細菌、古細菌、真菌、原生生物、ウイルス)、及び水生プランクトン等の任意の多細胞生物又は単細胞生物を意味することもできる。対象は、正常な対象とみなされるものでもよいし、障害、疾患、又は病態を有することが分かっている対象又は有することが疑われる対象でもよい。疾患又は病態の非限定的な例としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)や、A型、B型、C型、D型及びE型肝炎ウイルス等の感染症;鎌状赤血球貧血、血友病、嚢胞性線維症、テイ・サックス病、ハンチントン病、及び脆弱X症候群等の単一遺伝子疾患;ダウン症候群やターナー症候群等の染色体異常;アルツハイマー病、心臓病、糖尿病等の多遺伝子性疾患;欠失、挿入、及びリピート伸長等の構造障害;並びにがんが挙げられる。
細胞、組織若しくは他の原料又は試料としては、シングルセル、種々の細胞、又はオルガネラが挙げられる。当然のことながら、細胞試料は、複数の細胞を含む。本願で使用する「複数」なる用語は、2以上を意味する。場合により、複数の細胞は、少なくとも1個、10個、100個、1,000個、10,000個、100,000個、500,000個、1,000,000個、5,000,000個、又はそれ以上の細胞である。本開示の組成物及び方法で使用するために核酸の単離元となる複数の細胞は、細胞集団とすることができる。複数の細胞としては、同一細胞種の細胞が挙げられる。所定の実施形態において、本開示の方法で使用するために核酸の単離元となる細胞は、疾患、障害、又は異常状態を有することが分かっていない健康な正常細胞である。所定の実施形態において、本開示の方法で使用するために核酸の単離元となる複数の細胞は、既知又は疑似疾患又は病態又は他の異常を有する細胞を含み、例えば、障害、疾患、又は病態を有すると診断された対象から取得された細胞が挙げられ、限定されないが、ウイルスに感染した細胞、変性細胞、神経疾患を有する細胞、疾患又は病態の細胞モデル、損傷細胞等が挙げられる。所定の実施形態において、細胞は、本願の他の箇所に記載する障害、疾患又は病態の非限定的な例を含めて障害、疾患、又は病態を含むことが分かっている細胞株である細胞培養物から得られた異常細胞である。本発明の所定の実施形態において、複数の細胞は、混合細胞集団であり、即ち、全細胞が同一細胞種ではない。所定の実施形態において、本発明の方法で使用するために核酸の単離元となる細胞は、対照細胞である。
本開示の多層組成物は、容器又は反応容器(本願の他の箇所では「実験チューブ」とも言う)の内側で各層を順次集合させることにより形成される。反応容器の製造材料は、このような材料が生体試料から核酸を抽出・単離するための本開示の方法の各種態様に支障を来さない限り、重要ではない。例えば、後述するように、磁性粒子を吸引するために磁場を利用する。磁場の重要性を考慮すると、磁性金属の使用は避けるべきである。例えば、オーステナイト系ステンレス鋼構造は、非磁性であるので、この要件は全ての金属を除外するものではない。フェライト又はマルテンサイト構造を有するステンレス鋼は、磁性があるので、避けるべきである。反応容器の形成に使用するには、ガラス及びポリマー製剤(例えば、ポリスチレン及びポリエチレン)が好ましい。
反応容器は、上端と下端を有する実質的に円形の横断面のチューブを含むことができる。化学産業及びライフサイエンス産業で使用・消費されている材料のうちで、実質的に円形の横断面は、一般に原料を入手し易く、広く行き渡っているため、(必ずしもそうでなくてもよいが)好ましい。使用することができるチューブの非限定的な例としては、限定されないが、5ml試験管、5mlピペットチップ、1mlピペットチップ、又は機器用に注文設計された反応容器が挙げられる。本開示の所定の実施形態において、チューブの上端と下端は可逆的に封止されている。所定の実施形態では、チューブの上端又は下端のみが可逆的に封止されている。チューブの上端と下端を封止するために使用することができる材料の非限定的な例としては、融解可能な疎水性ワックス、融解可能な重合性材料、又は取り外し可能なプラスチックチップが挙げられる。所定の実施形態では、チューブの上端及び/又は下端を穿孔可能なシールにより不可逆的に封止してもよい。特定の一連の作業条件に適した型のシールを選択する方法は、当業者に推察されよう。
所定の実施形態では、本開示の多層組成物を反応容器の内側に手動で積層することができる。他の実施形態では、自動分子診断分析装置における使い捨て用に反応容器を製造することができる。反応容器サイズは、抽出を実施する方法(限定されないが、例えば、手動ベンチトップフォーマット、自動分析装置、又はその組み合わせ)と初期試料体積に応じて、種々の容積、長さ及び形状をとることができる。非限定的な1例として、手動ベンチトップ用の反応容器は、総容積を少なくとも1ml、2ml、5ml、10ml、又はそれ以上とすることができる。自動分析装置用の反応容器は、容積及び/又は長さを小さくすることができ、限定されないが、例えば、少なくとも0.25ml、0.5ml、1ml、又はそれ以上が挙げられる。ある種の実施形態において、チューブは、上端及び下端開口が一直線となるように直立状とすることができる。所定の実施形態では、自動分析装置における効率を最大限にするために、チューブの一部が湾曲部を含むように構成することができる。所定の実施形態において、チューブは、チューブの全体形状が「J」又は「U」字状となるように構成される。一直線の直立状反応容器に代わるこのような構成については、反応容器の非直立部分に含まれるゲル洗浄層を通って金属酸化物被覆磁性粒子とこれに結合させた核酸を吸引する方法に関連して後に詳述する。
本願に開示する組成物と方法は、例えば、ベンチトップフォーマットで手動実施することもできるが、反応容器は、特に自動分析装置用に選択されるであろう。例えば、Abbott Alinity m(Abbott,Abbott Park,IL)は、例えばポリメラーゼ連鎖反応アッセイに適用される完全統合型の自動分子診断分析装置である。
説明の便宜上、反応容器が内径約20mmのポリエチレンピペットである本開示の多層組成物を例にとる。本開示の目的で、反応容器は、上端と下端が開いた直立状とする。多層組成物の形成は、上端から各層を反応容器に注入することにより行う。したがって、下端は、可逆的に封止される。
当該管状例において、最下層(即ち、最初に注入する層)は、水性ゲルを含む洗浄層である。所定の実施形態において、水性ゲルは、アガロース又はポリアクリルアミドから構成される。水性ゲルは、少なくとも0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.75%、0.8%、0.9%、1%、若しくは1.5%(w/v)のアガロース又は少なくとも0.5%、1%、5%、若しくは15%(w/v)のポリアクリルアミドを含むことができる。当業者に自明の通り、水性ゲルは、試料層、溶解層及びワックス層を支持するために十分でありながら、抽出工程中にゲルを通って粒子を吸引できるために十分な濃度でなければならない。水性ゲルは、本開示の組成物及び方法を使用して単離した核酸で実施しようとする下流の核酸分析に適合可能な水性緩衝液を使用して調製することができる。非限定的な1例として、単離した核酸をAlinity m装置で分析する場合には、System Diluent(Abbott,Abbott Park,IL)又は他の低塩濃度の非リン酸含有緩衝液システムを使用して水性ゲルを調製することができる。洗浄層を含む本開示の多層組成物の割合を反応容器内の体積又は反応容器内の直線深さで表すと、反応容器の容積及び/又は深さに対して種々多様とすることができる。洗浄層は、反応容器の容積及び/又は深さの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%を占めることができる。当業者は、単なる日常的実験を使用し、核酸を結合させた磁性粒子が上層の抽出混合物から洗浄層内に吸引されるにつれて前記粒子を試料から十分に「洗浄」するために必要なゲル深さを容易に決定することができる。
ゲル洗浄層が硬化したら、低温で融解可能なワックスを含む中間層をゲル洗浄層の上に注入して硬化させる。低温で融解可能なワックス層は、濃厚半固体溶解ペーストとゲル洗浄層の間にシールを形成し、水性ゲルからの水分が溶解ペーストと接触するのを防ぎ、生体試料のみに由来する水分を使用して溶解反応が進行するように、溶解反応を水性成分から区画化する。場合により、低温で融解可能なワックス層は、単一の均質な低温で融解可能なワックス層とすることができる。
ワックスは、多くの場合には長鎖脂肪族アルキル鎖の存在を特徴とする炭化水素である。天然ワックスとしては、植物及び動物ワックスと誘導体が挙げられる。合成ワックスとしては、石油由来ワックス(例えば、パラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックス)が挙げられる。
各種実施形態において、前記低温で融解可能なワックス層は、パラフィンワックス層又はその誘導体から構成される。パラフィンワックスは、一般的に50~70℃の範囲の融点を有する。例えば、鉱物油の添加によりパラフィンワックスの融点を下げることができる。本願で使用する低温で融解可能なワックスとは、商用輸送温度(例えば、4~45℃)で固体であるが、パラフィン融点範囲(例えば、50~55℃)の下限値で液体に転移するワックスを意味する。当業者は、50~55℃の好ましい範囲よりも高温で融解するように中間層の融解温度を調整することができるが、それに伴い、エネルギー投入量の点でアッセイのコストが漸増する。また、生体試料とその成分の完全性の観点からこのような温度上昇は好ましくない。これらの欠点はあるが、55℃超で融解する融解性ワックス層が本願に記載するように融解して密度逆転に寄与するのであれば、中間層にこのような層を含む多層組成物も本開示の範囲に含まれる。
ジュエリーの注文製作で広く使用されているマイクロクリスタリンワックスも本開示で利用される。マイクロクリスタリンワックスは、パラフィンに比較してイソパラフィン系(分岐鎖)炭化水素とナフテン系炭化水素の含有率が高い。一般に、パラフィンワックスよりも色が暗く、粘性で、密度が高く、粘着性があり、弾力性がある。例えば、鉱物油の添加により、マイクロクリスタリンワックスの融点を下げることができる。
単一の均質な低温で融解可能なワックス層の代わりに、中間層は、複数の低温で融解可能なワックス層を含むことができ、前記複数の低温で融解可能なワックス層は、各々1種以上の機能を有する介在シール層により分離されている。前記1層以上の介在シール層は、前記複数の低温で融解可能なワックス層を融解させるために十分な熱を加えた後に、前記低温で融解可能なワックス層の段階的放出を助長する。複数の低温で融解可能なワックス層の段階的放出の1つの利点は、溶解反応物の補助的混合を促進することである。また、前記1層以上の介在シール層は、疎水性シールを強化し、洗浄層に存在する液体から溶解ペーストを更に遮断することができる。
後に詳述するように、生体試料による溶解ペーストの初期水和後、低温で融解可能なワックス層と(介在シール層がより低温で融解可能なワックス等の固体又は半固体である実施形態では)介在シール層を融解させるために、反応容器の外側に熱を加える。発熱体により反応容器全体に同時に熱を加えてもよいし、反応容器の一部のみに加えてもよい。所定の実施形態において、発熱体は、限定されないが、自動分析装置等の機器に適合するようにデザインされる。所定の実施形態において、発熱体は、取り外せないように機器の内部に取り付けてもよいし、取り外せるようにしてもよい。所定の実施形態において、発熱体は、1本以上の反応容器を挿入するための穴を有するように構成された加熱ブロックであるが、コイルや熱風等の他の発熱体も想定される。所定の実施形態において、前記穴は、反応容器が加熱ブロックの底から突出するように、加熱ブロックの全深に延びている。所定の実施形態において、加熱ブロックは手動操作することができ、ホットプレート又は実験用オーブンで加熱することができる。加熱ブロックは、熱を保持・伝達する任意材料から製造することができ、限定されないが、金属(例えば、アルミニウム)が挙げられる。
低温で融解可能なワックス層が1層の場合には、反応容器の内面で融解が生じる傾向があり、十分な融解が生じると、低温で融解可能なワックスの残りのプラグが放出され、放出されたプラグは、密度逆転により、より高密度の可溶化濃厚半固体溶解ペーストを通って上昇することにより、液体生体試料、可溶化濃厚半固体溶解ペースト、及び複数の金属酸化物被覆磁性粒子を含む溶解反応物を混合する。この混合により、関連アッセイの実施において機械的攪拌を不要にすることができる。混合された溶解反応物は、融解したワックスの下に沈み、ゲル洗浄層の上に静止し、ゲル洗浄層と流体連通した状態となる。
中間層が複数の低温で融解可能なワックス層を含む場合には、複数の低温で融解可能なワックス層の各々の融解と放出の結果として、複数のプラグの各々の放出が順次段階的に生じ、複数ラウンドの混合を助長すると共に、保存中に水性ゲルからの溶解ペーストの遮断を強化するという点を除き、原理は同じである。本開示の組成物及び方法の所定の実施形態では、複数の低温で融解可能なワックス層の各々を介在シール層により分離する。本願の他の箇所に記載するように、介在シール層は、低温で融解可能なワックス層を相互に物理的に分離することにより、低温で融解可能なワックス層の段階的な順次融解を助長する。このような物理的分離は、中間層内で相互に隣接する低温で融解可能なワックス層を相互に遮断する傾向がある。したがって、上端から反応容器に熱を加えると、最上位の低温で融解可能なワックス層が先ず放出され、上記のように、生体試料、可溶化した濃厚半固体溶解ペースト及び複数の金属酸化物被覆磁性粒子を含む溶解反応物を混合する。混合された溶解反応物は、融解したワックスの下に沈み、ゲル洗浄層の上に静止し、ゲル洗浄層と流体連通した状態となる。介在シール層は、下から2番目の低温で融解可能なワックス層が最上位の低温で融解可能なワックス層と同時に放出されないように遮断する傾向がある。当業者に自明の通り、単なる日常的実験を使用し、融解が生じる速度、したがって、密度逆転により推進される溶解反応物の混合が生じる速度を制御するために、各低温で融解可能なワックス層及び/又は各介在シール層の体積及び/又は厚みの調節を使用することができる。
前段落に記載したような各層の逐次融解は、所定の利点があるが、当業者に自明の通り、反応容器に均一に熱が加えられるならば、複数の低温で融解可能なワックス層と介在シール層は、各々ほぼ同時に融解して放出される(即ち、逆転する)傾向がある。当然のことながら、複数の層の同時放出と逆転は有効な混合をもたらす。実施例3は、このような実施形態に関する。
使用することができる低温で融解可能なワックス層及び対応する介在シール層の数に理論的制限はない。低温で融解可能なワックス層及び対応する介在シール層の数が物理的因子により制約され得ることは、単なる日常的実験を使用して当業者に理解されるであろうが、このような因子としては、限定されないが、反応容器の容積及び/又は深さ、ゲル洗浄層の体積及び/又は深さ、添加されると予想される生体試料体積、並びに溶解反応に所望される総時間が挙げられる。好ましい1実施形態では、複数の低温で融解可能なワックス層の少なくとも1層が、ゲル洗浄層と接触しており、複数の低温で融解可能なワックス層の少なくとも1層が、溶解ペースト層と接触している。別の実施形態では、複数の介在シール層の少なくとも1層が、ゲル洗浄層と接触しており、複数の低温で融解可能なワックス層の少なくとも1層が、溶解ペースト層と接触している。別の実施形態では、複数の介在シール層の少なくとも1層が、ゲル洗浄層と接触しており、複数の介在シール層の少なくとも1層が、溶解ペースト層と接触している。所定の実施形態では、アガロースゲルを介在シール層として使用してもよいが、本願の他の箇所に記載するように、このような材料は、ゲル洗浄層から溶解ペースト層への水分移動を最小限にする傾向がないと思われる。55℃の範囲で融解するように配合された低温で融解可能なパラフィンワックス層は、後述する実施例のセクションに示すように、反応容器の側壁からの収縮が最小であることが実証されているが、収縮が最小でも、水性ゲル層からの水分は、反応容器の側壁と収縮中の低温で融解可能なワックス層の間を通過できる。水分が半固体溶解ペースト層と接触すると、生体試料の添加前に溶解ペースト層を部分的に可溶化する可能性があるため、この水分移動は望ましくない。溶解ペーストが部分的に可溶化されると、試料から核酸を確実に抽出するために多層組成物を使用できなくなる可能性があり、生体試料から得られる実験又は臨床結果が不明瞭になる可能性がある。そこで、介在シール層として疎水性材料を使用すると、洗浄層中に存在する液体から溶解ペーストを更に遮断することにより、水分移動の問題の解決策ともなり得る。好ましい1実施形態において、このような疎水性介在シール層は、特に複数の低温で融解可能なワックス層の融点よりも低く且つ標準商用輸送温度よりも高い温度で融解するワックスとなるように選択される。所定の実施形態において、複数の低温で融解可能なワックス層は、1層のより低温で融解する疎水性介在シール層により相互に分離された2層の低温で融解可能なワックス層を含む。所定の実施形態において、複数の低温で融解可能なワックス層は、(図2Aに図解するように)2層のより低温で融解する疎水性介在シール層により相互に分離された3層の低温で融解可能なワックス層を含む。所定の実施形態において、複数の低温で融解可能なワックス層は、3層のより低温で融解する疎水性介在シール層により相互に分離された4層の低温で融解可能なワックス層を含む。限定するものではないが、例えば、(図2Bに図解するような)1実施形態において、中間層は、各々55℃で融解する3層の低温で融解可能なワックス層(0.3ml、25%パラフィン/75%鉱物油)と、各々45~50℃で融解する2層のより低温で融解可能な介在ワックス層(0.3ml、5%パラフィン/95%鉱物油)を含む。所定の実施形態において、複数の低温で融解可能なワックス層は、2層のより低温で融解する疎水性介在シール層により相互に分離されていると共に、より低温で融解する疎水性介在シール層によりゲル洗浄層から分離された3層の低温で融解可能なワックス層を含む。(図5Aに図解するような)実施形態の他の非限定的な例において、中間層は、各々55℃で融解する3層の低温で融解可能なワックス層(0.3ml又は0.4ml、15%パラフィン/85%鉱物油)と、各々45~50℃で融解する2層のより低温で融解可能な介在ワックス層(0.3ml、5%パラフィン/95%鉱物油)を含み、又は中間層は、各々55℃で融解する3層の低温で融解可能なワックス層(0.3ml又は0.4ml、15%パラフィン/85%鉱物油)と、各々45~50℃で融解する3層のより低温で融解可能な介在ワックス層(0.3ml、5%パラフィン/95%鉱物油)を含む。
当業者に自明の通り、隣接する低温で融解可能なワックス層よりも低温で融解する疎水性介在シール層として機能するように、種々のワックスブレンドを配合することができる。例えば、Bio-Rad(登録商標)Chill-out(登録商標)液体ワックスは、10℃未満に冷却されると凝固するので、本願の他の箇所に記載するように、パラフィンを希釈して未希釈パラフィンよりも融解温度の低いパラフィンワックスブレンドとするために使用することができる。本願の他の箇所に記載するように、パラフィン又はマイクロクリスタリンワックスを鉱物油(パラフィン油とも言う)で希釈し、パラフィンの融解温度を下げてもよい。単なる日常的実験を使用し、当業者は、所定温度で融解する疎水性介在シール層に適したワックスブレンドを配合することができよう。上記方法のどちらも、洗浄層から溶解ペースト層への水分の移動を最小限にする傾向がある。あるいは、好ましい1実施形態では、鉱物油層を疎水性介在シール層として利用してもよい。
また、当業者に自明の通り、介在シール層、特に疎水性介在シール層の1種以上の材料の選択は、目的とする反応容器の1種以上の性質により少なくとも部分的に影響を受けると思われる。目的とする反応容器の性質の非限定的な例としては、サイズ、形状、(ガラス又はポリマー組成等の)化学組成、及び熱伝導率が挙げられる。単なる日常的実験を使用し、当業者は、目的とする反応容器に対して必要な1組の条件下で水分移動を防ぐために十分なシールを形成する疎水性材料を見出すことができよう。
本開示の組成物及び方法の各種実施形態で使用されるシール材料は、数種の重要な性質を有する。シール材料は、実質的に不透過性のシールを提供することが好ましく、本願で使用する場合に、実質的に不透過性のシールとは、苛性物質(非限定的な例として、酸と塩基が挙げられる)との接触時又は所望の融解温度よりも低温(室温よりも低温を含み、更に、例えば、4℃)においてシール材料が亀裂や収縮を生じないことが好ましいという意味である。固体又は半固体の場合、シール材料は、溶解反応の温度範囲に適合可能な予測可能な融解温度を有する(例えば、少なくとも50~55℃以上の温度で融解し始める)ことが好ましい。また、融解したシール材料が上昇して溶解反応物の混合に寄与できるようにすると共に、ライセートを沈ませることができるように、融解したシール材料は、半固体溶解ペーストより低密度でなければならない。更に、シール材料は、溶解反応の成分又は液体生体試料に由来する核酸と結合することができず、又は他の方法でこれらを妨害することができない。当業者は、これらの条件を満たすポリマー又は他の種類の材料を見出すことができよう。
本開示の多層組成物の最上層は、濃厚半固体溶解ペースト(本願では、「溶解ペースト」とも言う)を含む。本願に開示する1実施形態において、溶解ペーストは、グアニジンチオシアン酸塩(GITC)、トリス塩酸塩、トリス塩基、及びTween(登録商標)-20から構成される。当業者に自明の通り、GITCに加えて又はその代わりに他の還元剤及び変性剤も溶解ペーストで使用することができる。このような他の還元剤及び変性剤は、ThermoFisher Scientific社から市販されている。液体界面活性剤であるTween(登録商標)-20の代替品も使用できる。当業者は、代替液体界面活性剤の例としてSDSとTriton X-100に想到するであろう。同様に、トリス塩酸塩、トリス塩基の代わりに、他の緩衝液系を利用してもよい。当業者に自明の通り、緩衝液選択については、適応するpH範囲のみが考慮事項ではない。
本開示の濃厚半固体溶解ペーストは、従来記載されている溶解緩衝液に比較して複数の大きな違いがある(その開示内容を本願に援用する米国特許第6,936,414B2号)。従来の全ての溶解緩衝液は、水性液体であり、即ち、それらの成分は水に溶解している。このため、水性液体として、従来の溶解緩衝液はピペット、ポンプ、又は他の流体操作システムにより分配される。一方、本開示の濃厚半固体溶解ペーストは、非水性である。従来の溶解緩衝液とは対照的に、濃厚半固体溶解ペーストは、粉末状の固体化学成分を使用し、液体界面活性剤と混合して、高濃度スラリー及び/又は非常に小さい気泡を有する高密度フォーム状の混合物とする。したがって、濃厚半固体溶解ペーストは安定しており、流動せず、反応容器から漏出せず、クレー、ポリマー、及び食料品等の半固体材料に使用されている周知の一般的なペースト押出方法を使用して分配することができる。ペースト押出方法の非限定的な例としては、クッキープレスと大孔径シリンジが挙げられる。
本開示の各種態様において、GITC、トリス塩酸塩、及びトリス塩基は、固体成分として提供され、界面活性剤と混合する前に微細に粉砕され、篩別される。所定の実施形態において、界面活性剤は、Tween(登録商標)-20(ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート)である。所定の実施形態では、固体成分を混和するために、Tween(登録商標)-20を少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも16%、又は少なくとも20%(w/w)の濃度で使用することができる。所定の実施形態では、16%のTween(登録商標)-20を固体成分に加える。所定の実施形態では、試料と1:1w/vで混合したときに、3.8M GITC、100mMトリス(pH7.8)、及び8%(w/w)Tween(登録商標)-20となるように、GITC、トリス塩酸塩、トリス塩基、及びTween(登録商標)-20の混合物を計算する。所定の実施形態において、濃厚半固体溶解ペーストは、残留水分率が10%未満であり、流動しない。ある種の実施形態において、濃厚半固体溶解ペーストは、流動せず、残留水分率が約5%、約4%、約3%、約2%、又は約1%である。所定の実施形態において、溶解ペーストは、加熱時に分離せず、室温で少なくとも1年間安定である。
本開示の各種態様において、溶解ペーストは、生体試料から核酸の抽出・精製中に核酸と結合する金属酸化物を含む複数の磁性粒子を含む。金属酸化物は、核酸リン酸基を金属酸化物と結合させることにより、核酸と結合する。
その開示内容を本願に援用する米国特許第6,936,414号(「414特許」)は、核酸と金属酸化物担体材料の可逆的結合について開示している。同特許に開示されている担体材料には「粒子」が含まれていた。414特許に教示されているように金属酸化物担体粒子を使用すると、従来の試料作製法に勝るいくつかの重要な利点が得られる。例えば、金属酸化物は、核酸配列に対する親和性が高いため、核酸を望ましくない領域に逃がさずに制御可能に金属酸化物粒子と結合させることができるので、試料間の汚染が最小限になる。また、金属酸化物担体は、被験試料中の核酸をより定量的に精製できるため、被験試料中に存在する可能性のある所望の核酸が少量でも採取される。更に、他の試料作製法によると、アルコール、フェノール又はクロロホルム等の有機溶媒が広く利用されており、廃棄の問題が重要になるが、金属酸化物粒子を利用すると、有機溶媒濃度が低くても(又は、重要な点であるが、このような有機溶媒を使用しなくても)核酸を被験試料から分離することができる。それに加えて、増幅反応に完全に適合可能な緩衝液を使用して核酸を金属酸化物粒子から溶出させることができる。換言するならば、溶出緩衝液を増幅反応に適合可能な緩衝液に交換する必要なしに、本願に記載するように被験試料から分離された核酸を増幅反応で直接利用することができる。
また、本願に開示する金属酸化物粒子は、単一の被験試料からDNAと各種形態のRNAを分離するために利用することができる。したがって、金属酸化物粒子を用いる方法は、後で検出できるように、同一の被験試料中の種々の異なる細胞及び/又は生物から核酸を分離するために利用することができる。
一般に、本開示は、被験試料(即ち、生体試料)を抽出緩衝液中で複数の金属酸化物粒子と接触させる工程について記載する。抽出緩衝液の存在下で、被験試料に含まれるDNA及び各種形態のRNA等の全種の核酸は、金属酸化物粒子と結合する。金属酸化物粒子と、これに結合した核酸を被験試料から分離することができる。
本願で使用する「金属酸化物」なる用語は、種々の原子価状態のいずれかにおける金属元素の酸化物及び水酸化物を意味する。したがって、例えば、アルミニウム、マグネシウム、チタン、ジルコニウム、鉄、ケイ素、ニッケル、クロム、亜鉛及びこれらの組み合わせの酸化物が金属酸化物である。所定の実施形態において、金属又は金属酸化物は、他の文献(その開示内容を本願に援用する米国特許第10,526,596号)に記載されているように、AlTi、CaTi、CoTi、FeTi、FeTi、MgTi、MnTi、NiTi、SnTi、ZnTi、Fe、Fe、Mg、Mn、Sn、Ti、又はZn(例えば、無水物又は水和形態)である。
所定の実施形態において、磁性粒子は、他の文献(その開示内容を本願に援用する米国特許第10,392,613号)に記載されているように、銅-酸化チタン(CuTi)を被覆した磁性粒子である。本開示は、特定量の銅とチタンに限定されない。所定の実施形態において、CuTiは、約2:1(例えば、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3等)のCu対Ti比で存在する。所定の実施形態において、前記粒子は、直径が0.5~50μm(例えば、0.5μm、1.0μm、1.5μm、2.0μm、5.0μm、10.0μm、20.0μm、30.0μm、40.0μm、50.0μm等)である。所定の実施形態において、粒子及び/又は固体表面は、ポリスチレンとその誘導体、ポリアクリレート及びポリメタクリレートとその誘導体、又はポリウレタン、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、並びにこれらの材料のコポリマー等の有機ポリマーから構成される。所定の実施形態において、粒子は多糖類、特に、アガロース、セルロース、デキストラン、Sephadex、Sephacryl、キトサン等のハイドロゲル、例えば、ガラス又は他の金属酸化物及びメタロイド酸化物(特に、式MeOの酸化物であり、式中、Meは、例えば、Al、Ti、Zr、Si、Bから選択され、特にAl、TiO、シリカ及び酸化ホウ素である)又は金属表面(例えば、金)等の無機材料である。所定の実施形態において、粒子は磁性(例えば、常磁性、フェリ磁性、フェロ磁性又は超常磁性)である。所定の実施形態において、粒子は、板状、針状、立方体状、管状、繊維状、円柱状又は不定形をとることができるが、他の形状も明確に想定される。所定の実施形態では、(例えば、ISK Magnetics,Valparaiso,IN.;Qiagen,Venlo,The Netherlands;Promega Corporation,Madison,WI;Life Technologies,Carlsbad,CA;Ademtech,New York,NY;及びSperotech,Lake Forest,ILから入手される)市販の粒子を利用する。
本開示の各種態様において、核酸の結合は、溶解ペースト内で溶解中の生体試料を複数の金属酸化物被覆磁性粒子と接触させる工程を含む。所定の実施形態では、複数の金属酸化物被覆磁性粒子を最小限の水分と共に半固体溶解ペーストに加える。本開示の組成物及び方法の各種態様において、生体試料の積層に関連して複数の金属酸化物粒子を溶解ペーストに添加する順序は、複数の因子に依存すると思われ、限定されないが、溶解させようとする試料の組成、及び実施しようとする実験がベンチトップで実施されるか又は自動分析装置で実施されるかが挙げられる。所定の実施形態では、溶解ペーストを最上層として反応容器に加える前に、溶解ペーストを調製しながら、複数の金属酸化物粒子を溶解ペーストに加える。所定の実施形態では、溶解ペーストを反応容器に加えた後で生体試料を溶解ペーストに積層する前、又は生体試料を溶解ペーストに積層した後に、複数の金属酸化物粒子を溶解ペーストに別途に加える。所定の実施形態では、生体試料を溶解ペーストに積層する前に、複数の金属酸化物粒子を生体試料に加える。好ましい自動化実施形態では、複数の金属酸化物粒子を自動分析装置に大量に搭載しておき、自動的に添加する。
所定の実施形態において、複数の金属酸化物粒子は、生体試料中に存在する核酸の計算量に対してモル過剰となるように計算された量で存在する。所定の実施形態では、溶解ペースト0.5g当たり粒子1mgとなるように、複数の金属酸化物粒子を最小限の水分と共に溶解ペーストに加えることができる。所定の実施形態では、粒子懸濁率が15%となるように金属酸化物粒子を加える。所定の実施形態において、前記複数の金属酸化物粒子は、酸化チタン粒子であり、所定の実施形態において、前記酸化チタン粒子は、チタン銅(CuTi)被覆粒子である。
生体試料を溶解ペーストに添加すると、試料中の水分がペーストを溶解するにつれて溶解反応が開始し、ペースト内に小気泡を放出し、小気泡の移動により、ペースト、試料、及び磁性粒子を混合し始める。本願の他の箇所に記載するように、生体試料は、天然液体生体試料とすることができ、その非限定的な例としては、血液、血漿、及び唾液が挙げられ、あるいは、水分を含むように用途に合わせて調製してもよく、その非限定的な例としては、細胞又は均質化組織を緩衝液に懸濁した懸濁液や、細胞培養上清が挙げられる。本願の他の箇所に記載するように、低密度の融解性ワックス層が融解するにつれて上昇すると、ペースト、試料、及び磁性粒子の混合に更に寄与し、機械的攪拌が不要になる。試料溶解が進行するに伴い、界面活性剤は細胞膜を破壊し、核酸を反応混合物中に放出させ、核酸は、カオトロピック試薬GITCの存在下で金属酸化物磁性粒子と接触して結合する。カオトロピック剤は、当技術分野で周知であり、タンパク質を分解又は可溶化する物質が挙げられる。典型的なカオトロピック試薬としては、限定されないが、グアニジンイソチオシアン酸塩(GITC)、グアニジン塩酸塩、ヨウ化カリウム、尿素等が挙げられる。中間層の全層が融解し、溶解ペーストを通り抜けてその上まで上昇すると、溶解反応物は、反応容器を通って沈み、洗浄層の上に静止してこの層と接触する。所定の実施形態では、溶解反応を完了まで進行させるように、反応容器に更に少なくとも1分間、2分間、3分間、4分間、5分間、10分間、又は15分間熱を加える。溶解反応が完了したら、本願の他の箇所に記載するように磁力を加え、洗浄層の水性ゲルを通って核酸を結合させた金属酸化物磁性粒子を吸引し、夾雑物を溶解反応物から除去する。
本願で使用する1又は複数の「核酸」なる用語は、複数のヌクレオチドモノマーを含むポリマーを意味する。本願で使用する「ヌクレオチド」なる用語は、核酸(DNA又はRNA)の基本構造単位であるヌクレオシドのリン酸エステルを包含する。核酸は、1本鎖でもよいし、各鎖が5’末端と3’末端を有する2本鎖でもよい。核酸は、RNAでもよいし、DNA(限定されないが、cDNA又はゲノムDNAが挙げられる)でもよいし、又はハイブリッドポリマー(例えば、DNA/RNA)でもよい。1又は複数の「核酸」なる用語は、特定長のポリマーを意味するものではない。本開示の組成物及び方法の各種実施形態で使用される核酸は、少なくとも1kb、2kb、3kb、4kb、5kb、10kb、20kb、30kb、40kb、50kb、60kb、70kb、80kb、90kb、100kb、200kb、500kb、1000kb、又は2000kb長以上とすることができる。核酸に関して本願で使用する「配列」なる用語は、ホスホジエステル結合等の共有結合により相互に連結されたヌクレオチドの連続系列を意味する。核酸は化学的又は生化学的に合成してもよいし、限定されないが、RNA、mRNA、及びDNA等の核酸配列を含むか又は含むと考えられる対象、細胞、組織、又は他の生体試料若しくは原料から単離してもよい。本開示の組成物を使用して高濃度化、単離又は精製された核酸は、それらの後続使用に有害となり得るように改変されないため、当技術分野における通常の知識を有する者に公知の従来の任意の分子アッセイ又はプロセスで使用することができる。例えば、これらの核酸を配列決定し、PCRにより増幅し、発現ベクターで使用すること等ができる。この点では、洗浄層の通過後に、核酸を例えば、DNAポリメラーゼや逆転写酵素等の酵素と接触させることができる。更に、本開示は、核酸を希釈せずに固体基板上で配列決定することを想定する。更に、本開示は、非メチル化シトシンを脱アミノ化するように、固体基板に結合させた核酸を洗浄層の通過後に重亜硫酸塩と接触させることを想定する。更に、本開示は、核酸中の少なくとも1個の核酸塩基がエピジェネティックな修飾を有することも想定する。
所定の実施形態において、中間層は、内部対照を含む。内部対照は、逆転写PCR(RT-PCR)、リアルタイムRT-PCR(rRT-PCR)、又は定量的RT-PCR(qRT-PCR)等の後続アッセイの性能が試験・確認されている既知核酸配列である。当業者は、使用する試料の種類、実施する1種以上のアッセイ、アッセイする1種以上の核酸の種類、及び決定しようとする核酸配列に基づいて適切な内部対照を選択する方法を見出すであろう。
核酸を結合・単離するための従来のシリカ製剤組成物及び方法は、核酸をシリカ表面で塩析させることに依存しており、溶解緩衝液夾雑物を除去するために高濃度のエタノール又は他のアルコールによる洗浄を必要とする。アルコールはPCR系試験における抑制因子であるため、これらのアルコールも溶出前に乾燥により除去する必要がある。従来のシリカ組成物及び方法とは対照的に、CuTi粒子を含む金属酸化物被覆磁性粒子は、核酸を非常に低いイオン強度条件下に維持するため、結合させた核酸を溶出させずに水洗して夾雑物を除去することができる。更に、CuTi粒子を含む金属酸化物粒子は、試料処理洗浄にアルコールを必要とせず、溶出前に乾燥工程を必要としない。したがって、これらの特性により、他の文献(その開示内容を本願に援用する米国特許第9,803,230号)に記載されているように低イオン強度水性ゲルを通って磁気的に吸引することにより、CuTi粒子を含む金属酸化物粒子を洗浄して溶解夾雑物を除去することができる。従来のシリカ法は、核酸を溶出させるために水又は低イオン強度緩衝液を使用しているので、夾雑物を除去するために低イオン強度水性ゲルを使用することができない。CuTi粒子を含む金属酸化物粒子は、核酸を溶出させるために低イオン強度リン酸緩衝液(例えば、5mMリン酸緩衝液)を使用し、このような緩衝液は、溶出させた核酸を使用する可能性のある後続反応(限定されないが、PCRを含む)の抑制因子とならない。
本開示に係る「溶出緩衝液」は、結合させた核酸をCuTi粒子又は他の金属酸化物磁性粒子の金属酸化物から分離する任意の試薬又は試薬セットとすることができる。所定の態様において、本開示の組成物及び方法は、ゲル洗浄層に隣接し、これと流体連通している層として溶出緩衝液を含む。所定の実施形態において、溶出緩衝液は、核酸を溶出させるためにリン酸対イオンを使用する低イオン強度溶出緩衝液である。所定の実施形態において、低イオン強度溶出緩衝液は、リン酸緩衝液であり、例えば、5mMリン酸緩衝液である。所定の実施形態において、低イオン強度溶出緩衝液は、ホスホセリン等の有機リン酸エステルを含む。好ましい1実施形態において、低イオン強度溶出緩衝液は、無機リン酸塩である。
本開示の組成物及び方法の所定の実施形態では、反応容器内の水性ゲル洗浄層の下に溶出緩衝液を配置することができる。所定の実施形態では、低温で融解可能なワックス層により溶出緩衝液を水性ゲル洗浄層から分離することができる。ある種の実施形態では、溶出緩衝液を水性ゲル洗浄層と隣接するように配置することができる。所定の実施形態では、反応容器を挿入できる別個のチャンバー又はチューブに溶出緩衝液を収容し、核酸を結合させたCuTi粒子を含む金属酸化物粒子を、水性ゲル洗浄層を通って別個のチャンバー又はチューブ内の溶出緩衝液中に直接磁気的に吸引できるようにすることができる。ある種の実施形態では、溶出段階で融解させることができる融解性プラグ(限定されないが、例えば、融解性ワックスプラグ)で反応容器の下端を可逆的に封止し、金属酸化物粒子を溶出チャンバー内に磁気的に吸引することができる。その後、反応容器を溶出チャンバーから取り出し、溶出させた核酸を含む溶出液をアッセイに移送するか、又はその後の使用に備えて保存することができる。所定の実施形態では、核酸を結合させた金属酸化物粒子をアッセイに直接移送することができる。
本開示の多層組成物が完成すると、即時使用可能になる。あるいは、反応容器の上端を封止し、その後の使用に備えて多層組成物を保存することができる。多層組成物のデザインにおいて重要な点は、貯蔵寿命である。多層組成物は、少なくとも6カ月間安定であるべきであり、複数年間が好ましい。標準商用貯蔵・輸送温度は、本願に記載するゲル洗浄層の凝固点よりも高く、本願に記載する低融点ワックス組成物の融点よりも低い。例えば、限定されないが、商用輸送品は、輸送中の最高温度が45℃を超えず且つ輸送中の最低温度が4℃を下回らないように包装することが好ましい。洗浄層の完全性を維持するためには、溶出緩衝液等の水性緩衝液を別に提供すればよく、製造時に反応容器の内側に密封しなくてもよい。
各種態様において、本開示は、本願の他の箇所に記載するような多層組成物を使用して生体試料から核酸を抽出・精製するための方法を提供する。前記方法の多層組成物は、各層をその内側に集合させる反応容器と;前記反応容器の内側に配置されており、濃厚半固体溶解ペーストと、非限定的な1例としてCuTi粒子を含む複数の金属酸化物被覆磁性粒子を含む最上層と;低温で融解可能なワックスを含む中間層と;水性ゲルを含む下層洗浄層を含む。
各種実施形態では、先ず下層ゲル洗浄層を導入した後に、中間層、次いで溶解ペーストを含む最上層の順に前記方法の多層組成物を上記のような反応容器の内側で集合させる。本願の他の箇所に記載するように、溶解ペーストに更に複数の金属酸化物磁性粒子を付加する。所定の実施形態では、ペーストを調製している間、生体試料を溶解ペーストの上に積層する前、又は生体試料の積層後に、複数の金属酸化物粒子を溶解ペーストに加える。所定の実施形態では、生体試料に複数の金属酸化物粒子を加える。所定の実施形態では、下層ゲル洗浄層を加える前に、反応容器の下端を例えば低温で融解可能なワックスで可逆的に封止する。例えば、各層を反応容器内にピペット滴下又は注入することにより、多層組成物を手動で集合させることができる。あるいは、限定されないが、液体処理ロボット又はペースト押出機を使用し、多層組成物の集合を自動化することができる。前記方法の多層組成物の自動集合は、生体試料から核酸を迅速及び/又は大規模に抽出、単離及び分析するための自動分析装置で使用する使い捨てカートリッジの生産に有利であると思われる。
本願の他の箇所に記載する各種実施形態において、反応容器は、実質的に円形の横断面を有しており、ベンチトップ用とするか又は自動分析装置用とするかに応じて種々のサイズとすることができる。円形横断面は、全実施形態の要件ではない。所定の実施形態において、反応容器は、直立状チューブとすることができる。所定の実施形態において、ゲル洗浄層が形成される反応容器の部分は、反応容器の全体形状が「J」又は「U」字状となるように湾曲部を含む。このような形状は、特定の自動装置の内側で利用可能なスペースと、自動装置が特定のスペース内で前記方法の各工程を物理的にどのように実行することができ、その後、ゲル洗浄層を通って吸引された金属酸化物磁性粒子をどのように処理することができるかに基づき、より迅速でより効率的なワークフローを可能にできるので、自動分析装置の場合に有利であると思われる。限定するものではないが、例えば、「U」の第1のアームに中間層と溶解ペーストを含み、「U」の湾曲部と第2のアームにゲル洗浄層を含み、ゲル洗浄層が、更にゲル洗浄層の上に積層された溶出緩衝液と流体連通している自動分析装置用「U」字形反応容器を想定することができる。このような構成では、溶解ペースト層の上に生体試料を積層し、反応容器を加熱すると、密度逆転混合が生じ、金属酸化物磁性粒子とこれに結合した核酸は、湾曲部内のゲル洗浄層を通って吸引され、つまり、水平方向又は他の非鉛直方向に吸引されることが考えられ、「U」の第2のアームに至り、溶出緩衝液内に達する。この構成では、溶出緩衝液は、溶出させた核酸を後続分子アッセイに移送する自動分析装置の機構に容易に接近可能である。所定の実施形態では、延長ゲル洗浄層を通って種々の経路で金属酸化物粒子を磁気的に吸引することができ、後続核酸増幅及び/又は検出用の種々のチャンバー又はカートリッジ内に吸引することができる。
各種実施形態では、上記のように、生体試料を溶解ペーストの最上層の上に積層する。本願の他の箇所に記載するように、生体試料は、天然に存在するものでもよいし、細胞若しくは組織又はその断片の濃厚液又は緩衝液懸濁液でもよいし、細胞又は組織の産物でもよいし、合成核酸でもよいし、液体生体試料でもよい。生体試料からの水分は、溶解ペーストを可溶化し、高濃度スラリー又はフォームから液体に変換し、ペースト内に閉じ込められた気泡を放出し、可溶化されたペーストと生体試料の混合を助長するので、生体試料を積層すると、溶解反応が開始する。生体試料と金属酸化物粒子を加えた可溶化溶解ペーストを本願では溶解反応物とも言う。本願の他の箇所に記載するように、溶解反応物内の界面活性剤は、生体試料内の細胞膜、核膜及び他の全組織成分を分解し、核酸を放出させる。生体試料から放出された核酸は、その後、溶解反応物内の複数の金属酸化物粒子と接触させて結合させるために利用できる。
本願の他の箇所に記載するように、中間層は、低温で融解可能なワックスを含み、下層水性ゲル洗浄層を最上層の溶解ペースト層から分離する。所定の実施形態において、中間層は、単一の低温で融解可能なワックス層を含むことができる。所定の実施形態において、中間層は、複数の低温で融解可能なワックス層を含み、前記複数の低温で融解可能なワックス層は各々、そのすぐ下の層よりも低温で融解する介在シール層により分離されている。所定の実施形態において、介在シール層は、より低温で融解可能なワックス又は鉱物油である。当業者は、単なる日常的な実験を使用し、特定用途に合わせて低温で融解可能なワックス層及び介在シール層の最適数、配置、及び組成を決定することができよう。
本開示の方法の各種実施形態では、反応容器の外側に熱を加えて中間層の融解を開始させ、中間層が融解して溶解反応物を通って上昇することを特徴とする密度逆転を生じることにより、溶解反応物を混合する。上述したように、複数の種類の発熱体を使用することができ、限定されないが、加熱ブロック、コイル、又は熱風が挙げられる。反応容器の加熱は、発熱体と反応容器の直接接触による場合もあるが、必ずしもその必要はない。中間層が最上層から最下層まで順次融解するように熱を加え、即ち、溶解反応物と当初接触している中間層の部分が先ず融解・上昇した後、それに続く各介在層又は低融点ワックス層が順次融解・上昇するように熱を加える。当業者に自明の通り、中間層を融解させるために十分でありながら、生体試料を損傷させたり、溶解反応を妨げるほど高くない温度で熱を加えることが必要になるであろう。当業者は、単なる日常的実験を使用して適切な温度と時間を決定することができよう。溶解反応物よりも低密度のワックスが融解して上昇するにつれて密度逆転により生じる混合現象は、機械的混合工程を不要にし、総ワークフロー時間を短縮するので、ベンチトップ用途と自動化用途のいずれにも有利である。中間層である全ての低温で融解可能なワックス層と全ての介在シール層を含む全層が融解し、溶解反応物を通って反応容器の上端まで上昇し、反応容器の上端を封止すると、密度逆転は完了する。密度逆転完了の結果として、溶解反応物はゲル洗浄層の上に静止し、この層と流体連通した状態となる。本願の他の箇所に記載するように、溶解反応を完了まで進めるために、密度逆転完了後に更に所定時間にわたって反応容器に熱を加えてもよい。
溶解反応物がゲル洗浄層上に静止したら、反応容器の周囲又は付近に磁石を配置することにより、複数の金属酸化物粒子とこれに結合した核酸を吸引することができる。磁力を加え、金属酸化物粒子を反応容器の壁に吸引する。種々の磁石形状を使用することができ、限定されないが、棒磁石、ドーナツ型磁石、又は電磁石が挙げられる。前記方法をベンチトップで手動実施している場合には、磁石はハンドヘルド型でもよいし、自動装置のプログラマブルコンポーネントとしてもよい。当業者は、目的用途に最適な磁石を選択することができよう。磁石を移動させることにより、吸引した金属酸化物被覆粒子とそれに結合した核酸が少なくとも部分的に前記水性ゲルを通って移動するように推進し、抽出夾雑物を除去する。所定の実施形態では、ゲル洗浄層を通って金属酸化物粒子とこれに結合した核酸を吸引した後に、金属酸化物粒子とこれに結合した核酸を溶出緩衝液内に移動させるために、磁力の補助的印加を使用することができる。上述したように、溶出緩衝液は、ゲル洗浄層と流体連通していてもよいし、別の容器に収容してもよい。溶出緩衝液は、低イオン強度緩衝液とすることができ、更にリン酸緩衝液とすることができる。溶出させた核酸の一部又は全部を手動でアッセイに移送してもよいし、自動分子分析装置により実施される自動アッセイの一環としてロボットにより移送してもよい。上述したように、単離した核酸は、後続分子アッセイに使用することができ、限定されないが、PCR、qPCR、及びRT-PCRが挙げられる。所定の実施形態では、溶出させた核酸の一部又は全部を将来の利用に備えて保存することができる。所定の実施形態では、金属酸化物粒子に結合させた核酸の直接増幅又は配列決定が想定され、ゲル洗浄層を通って金属酸化物粒子とこれに結合させた核酸を吸引した後に、粒子とこれに結合させた核酸を分子アッセイ内に直接吸引するために、磁力の補助的印加を使用することができる。
概説
下記実施例1、2、3及び4では、液体生体試料から核酸を抽出するための組成物及び方法の開発と試験について記載する。必要な工程数を最小限にし、核酸を抽出するために現在必要とされる複雑な操作の多くを省略して操作を簡易にした新規核酸抽出システムを開発した。構成要素を連携させ、各精製工程を同時に実施するように、又は機械的工程を削減若しくは削除する方法で各精製工程を実施するようにし、各精製工程を統合する高機能で有効なシステムを形成する。
要約すると、実施例1では、低水分率の溶解ペーストについて記載する。実施例2、3及び4では、積層組成物の集合と使用について記載する。前記組成物をポリプロピレンチューブとポリスチレンチューブの内側で集合させた。この種のチューブを本願では反応容器と言う場合もある。積層組成物の最上層は、実施例1に記載する溶解ペーストである。使用時には、積層組成物の上に液体生体試料を添加し、溶解ペーストを可溶化した。積層組成物は集合後の貯蔵寿命が長くなるように意図され、積層組成物における他の少なくとも1層は、水性層(実施例2で後述する水性ゲル洗浄層)であるので、積層組成物を核酸検出に使用する前に水性ゲル層と溶解ペースト層の間に水性連通(即ち、浸出)が存在しないことが重要である。
下記実施例2及び3では、積層組成物において溶解ペースト層のすぐ下に1層以上の低温で融解可能なワックスの層を集合させて使用する例について記載する。この低温で融解可能なワックス層は、水性ゲル層と溶解ペースト層の間の障壁として機能するので、水性ゲル層と溶解ペースト層の間の水性連通(即ち、浸出)を防ぐ。
使用時には、実施例2及び3に記載するチューブに収容された積層組成物に液体生体試料を添加する。液体生体試料は、溶解ペーストを可溶化し、その結果、生体試料に含まれる細胞が溶解する。溶解ペーストは、金属酸化物を被覆した粒子も含んでおり、この場合には、金属酸化物は、銅とチタンを含む。銅とチタンの金属酸化物を含む被覆粒子を本願ではCuTi粒子と言う。可溶化された溶解ペースト中に存在する核酸、特に生体試料内の溶解した細胞から放出された核酸は、CuTi粒子と結合し、磁場の吸引力を受けるCuTi粒子/核酸複合体を形成する。
上記のように、1層以上の低温で融解可能なワックス層は、水性ゲル洗浄層と溶解ペースト層の間の水性連通を防ぎ、使用前の保存中に溶解ペーストの低水分率の特性を維持する。使用時には、液体生体試料の添加により可溶化した可溶化溶解ペーストを混合するために、1層以上のワックス層の低温融解性を利用する。より具体的には、低温で融解可能なワックスの融解を生じる温度まで積層組成物を加熱する。積層組成物をその内側に集合させたチューブの壁から融解により解放されると、密度逆転が生じ、低温で融解可能なワックス層は、可溶化された溶解ペーストを通って上昇し、その成分を混合する。
積層組成物に含まれる低温で融解可能なワックス層が1層のみの場合には、この層の融解と逆転も、CuTi粒子/核酸複合体を含む可溶化溶解ペーストと水性ゲル層の間に水性連通を形成する。反応容器(即ち、実施例2及び3のポリプロピレン又はポリスチレンチューブ)に隣接するように磁石を配置することにより磁場を導入する。こうして可溶化溶解ペーストから水性ゲル層内にCuTi粒子/核酸複合体を吸引し、CuTi粒子/核酸複合体から溶解ペースト成分を除去する。CuTi粒子/核酸複合体から核酸を放出させて更に分析するために、この複合体を水性ゲル層から溶出緩衝液内に吸引することができる。
[実施例1]濃厚半固体溶解ペーストの調製
カオトロピック塩と界面活性剤の濃度が高く、水分を最小限にした濃厚半固体溶解ペースト(以下、「溶解ペースト」と言う)試薬を核酸抽出用に開発した。
材料
液体溶解試薬を使用するのではなく、乾燥グアニジンチオシアン酸塩(GITC)、トリス塩酸塩、及びトリス塩基(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)を粉末化し、200ミクロンフィルターで篩別した。篩別した乾燥試薬に16%w/wのTween(登録商標)-20(ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート,CAS9005-64-5,Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)を加え、高濃度スラリーを形成した。試薬混合物は、試料と1:1w/vで混合したときに、3.8M GITC、100mMトリス(pH7.8)、及び8%(w/w)Tween(登録商標)-20となるように計算した。溶解ペースト0.5g当たり粒子1mgとなるように、CuTi粒子(Abbott Molecular,Abbott Park,IL)を最小限の水分と共に加えた。
結果
篩別した乾燥試薬にTween(登録商標)-20を加えることにより、高濃度スラリーを形成した。スラリーは、液体試料による溶解ペーストの可溶化を助長する非常に小さい気泡を有するフォーム状であった。溶解ペーストは、残留水分率が<5%であり、加熱しても分離しなかった。溶解ペーストは、室温で12カ月超、53℃で少なくとも12時間安定であった。(図1C、右図に示すように)衝撃反転と長期倒立後でも溶解ペーストは流動せず、溶解ウェル及び他の収容容器内に保持された。
[実施例2]核酸抽出システムコンポーネント及び方法の試験及び実験検証
材料
濃厚半固体溶解ペースト
実施例1に記載したようにCuTi粒子を含む溶解ペーストを調製した。
ワックス組成物
以下に記載するように、ワックス組成物を調製し、試験した。
水性ゲル
水100mlとアガロース1gを混合し、沸騰するまで及びアガロースが十分に溶解するまで混合物をホットプレートで加熱することにより、1%アガロースゲルを調製した。
データ解析
自社開発したAbbottソフトウェアとJMPソフトウェア(SAS Institute,Cary,NC)を使用してデータ解析を実施した。
実験及び結果
疎水性ワックス組成物の試験
水分率を最小限にした溶解ペーストが磁性粒子を「洗浄する」ために使用される水性ゲルと接触しないようにするために、溶解ペーストと水性ゲル層の間にシールを形成することが可能な材料であり、冷却後に収縮せず、室温及び標準輸送温度で不透過性であり、既知温度で融解する材料として、疎水性ワックス組成物を試験した。複数のワックス組成物を試験し、これらの性質を維持する能力について検討した。
パラフィン/Chill-out(登録商標)ワックス溶液の試験
パラフィンが融解してChill-out(登録商標)ワックスと十分に混和するまで各々50gを加熱することにより、パラフィンワックス(融点>65℃;Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)とChill-out(登録商標)液体ワックス(BioRad,Hercules,CA)の1:1(w/w)混合物を調製した。ワックス組成物とシールの完全性を試験するために、水、酢酸、及び水酸化ナトリウムを用いて実験チューブを作製した。
pHストリップの指示領域を切り取り、RVチューブの下端に挿入し、1%アガロース2.5mlで覆った。冷却したアガロースの上に1:1ワックス混合物300μlを積層し、冷却した。水、1M酢酸、又は1M NaOH1mlをワックスの上に配置するように各チューブに加え、チューブを終夜放置した。1M酢酸のチューブ内のワックスは、チューブの壁から分離しているようであったが、水と1M NaOHのチューブ内のワックスは、不変のようであった。
パラフィンとChill-out(登録商標)ワックスの25%(w/w)混合物も調製し、より軟性のワックス混合物もチューブ壁に対して完全なシールを形成するか否かを調べた。50%ワックス24gとChill-out(登録商標)ワックス24gを融解させることにより、25%ワックスを調製した。5mlピペットチップを抽出チューブとして使用した。アガロース0.2gをSystem Diluent50mlで希釈して0.4%アガロースを調製し、硬化しない程度に冷却した。融解した25%ワックスを約75℃に維持し、ピペットチップの下端をワックスに浸してワックスを硬化させることにより封止した。溶出緩衝液75μlを加え、溶出緩衝液の上に少量のワックスを加えて封止した。次に、アガロース0.75mlを加え、冷却・凝固させた。25%ワックスの0.2ml層を加えて冷却し、HIV内部対照17μlを加え、25%ワックスの0.2ml層をもう1層加えて凝固させた。溶解ペースト0.5gを上端に加え、チューブを直立位置で保存した。
完全性持続試験
ワックス完全性試験用に積層チューブを作製した(図1A~C)。図1Aに示すように、pHストリップ(ColorpHast pH5.0~10.0,EMD MilliporeSigma,Burlington,MA)を封入した0.75%アガロース3層と25%ワックス(25%パラフィン/75%Chill-out(登録商標)ワックス)3層を交互に配置することにより、ポリプロピレンチューブとポリスチレンチューブを作製した。溶解ペースト0.5gを最終ワックス層の上に加えた。チューブを室温で少なくとも1年間放置し、収縮とシール完全性を定期的に試験した。収縮又は他のシール完全性低下が生じ、溶解ペーストが拡散して1層以上のアガロース層と接触できるようになったならば、1枚以上のpHストリップの変色が生じると予想された。ワックス層の目視試験でも、pHストリップの変色でも、収縮又はシール完全性低下は認められなかった。
同様にポリプロピレンチューブとポリスチレンチューブを使用し、同様にpHストリップを0.75%アガロースに封入し、ワックス層構成を変えて他のチューブを作製した(図1B~C)。図1Bに示すように、アガロース層と25%ワックス層の間に液体Chill-out(登録商標)(BioRad)ワックス層を挟んで拡散試験を準備し、図1Cに示すように、25%ワックス層間に液体Chill-out(登録商標)ワックス層を挿入した。チューブを室温で少なくとも1年間放置し、収縮とシール完全性を定期的に試験した。収縮又はシール完全性低下は認められず、純Chill-out(登録商標)ワックス層は、シール完全性に顕著な変化を生じなかった。
パラフィンワックス-鉱物油組成物とマイクロクリスタリンワックス-鉱物油組成物の試験
パラフィンは、冷却後に収縮することが認められ、シールの欠陥に繋がる可能性があった。そこで、パラフィン-鉱物油混合物を試験した。58~62℃で融解するパラフィンワックス(パラフィンワックスMP58-62C,Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)と、>65℃で融解するパラフィンワックス(パラフィンワックスMP>65C,Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)の2種類のパラフィンワックスを試験した。各パラフィンワックスを軽質鉱物油(Mineral Oil Light,Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)又は重質鉱物油(Mineral Oil Heavy,Avantor Performance Materials,Radnor,PA)と混合して試験した。
性能を比較するために、ワックスと鉱物油を種々の割合で配合し、ワックス-鉱物油配合物50グラムを調製した(表1)。ワックス-鉱物油配合物を80℃超の実験用オーブンで融解させた。ワックス混合物約3mlを5ml反応容器に加え、室温で放冷させた。反応容器をサーモミキサー(非混合下)にセットした。サーモミキサーの設定を調節することにより温度を徐々に上げた。水約3mlを入れたチューブも温度計と共にサーモミキサーにセットした。温度上昇がプラトーに達し、それ以上上昇しなくなった後に温度を記録した。次に、反応容器内のワックスの特性を記録した。次に、設定を上方に調節し、プロセスを繰り返した。ワックスが反応容器内で目に見えて融解し、自由に流動した温度を、各ワックス-鉱物油配合物の融解温度(Tm)とした。各反応容器にワックス約3mlを入れ、各配合物の数本の反応容器を作製した。一部の反応容器は氷上に置き、より低温でのワックスの挙動を観察し、反応容器壁から観察される収縮により測定したシール完全性について試験した。後続実験の一部では25%パラフィン/重質鉱物油配合物を使用した。結果を表1に示す。
Figure 2024519214000002
更に、同様の試験を実施し、他のマイクロクリスタリンワックス-鉱物油配合物の融解挙動、融解温度、及び完全性を調べた。Castaldo SuperCera(登録商標)ワックス-グリーン(Castaldo,Staffordshire,UK)を適量の重質ホワイト鉱物油(Mineral Oil White,heavy;Avantor Performance Materials,Radnor,PA)と混合し、重量換算で5%、7.5%、10%、20%、及び25%のワックス溶液を調製し、75~80℃に加熱した。融解挙動を試験するために、各チューブにワックス溶液2.5mlを入れ、各百分率のチューブを3本ずつ作製した。全チューブをヒートブロックにセットし、ヒートブロック温度を徐々に上げた。融解挙動と融解温度を表2に示す。ワックス組成物外観に変化がない場合には、「固体」と記録した。ワックス組成物が透明になったが、流動しなかった場合には、「軟性」と記録した。ワックス組成物が非常にゆっくりとしか流動しなかった場合には、「粘性」と記録した。ワックス組成物が自由に流動した場合には、「融解」と記録した。次に全チューブを凝固するまで数分間4℃に維持したが、どの溶液もチューブの側面から離れるのは認められなかった。
Figure 2024519214000003
置換試験
融解温度のより代表的な試験として、可溶化した溶解ペーストと中間層のワックス層の相互作用をより正確に模倣するために、一連のワックス組成物で置換試験を実施した。溶解緩衝液(水中4.7M GITC)層をワックスの上に加え、軟化・融解したワックス層の下に溶解緩衝液層が沈む温度を測定した。各容器にワックス組成物3.25mlを収容した反応容器を作製し、各容器内の凝固したワックスの上に溶解緩衝液0.8mlを加えた。結果を表3及び4に示す。融解したワックス層の上に溶解緩衝液が残っている場合には、「浮遊」とし、融解したワックス層の下に溶解緩衝液が沈んだ場合には、「沈下」とした。
Figure 2024519214000004
SuperCera(登録商標)グリーンワックス/重質鉱物油溶液の完全性を試験するために、図1Dに示すように、5%ワックス溶液と18%ワックス溶液の交互層を配置した反応容器を作製した。容器を凝固するまで数分間4℃に維持し、60℃まで加熱し、冷却させた。4℃で収縮は認められず、60℃まで加熱後に漏出又は隙間は認められなかった。図1Dに示すように、ワックス層の上の溶解ペーストは、元の位置のままであり、ワックス層の下のアガロースに封入したpHストリップは変化を示さなかった。しかし、ワックスの小片を溶解ペーストと共に保存中に、若干の顔料が浸出し、SuperCera(登録商標)ワックス中の緑色顔料が濃厚溶解緩衝液の存在下での長期保存に問題となる可能性があると判断された。そこで、パラフィンワックス組成物に限定して更に検討・実験した。
パラフィンワックス/鉱物油組成物、カルナバワックス/鉱物油組成物、及びパラフィンワックス/カルナバワックス/鉱物油組成物による置換試験の結果を表4に示す。これらの置換試験は、SuperCera(登録商標)ワックス-グリーン/鉱物油組成物について上述したように実施した。マイクロクリスタリンワックス(SuperCera(登録商標)ワックス-グリーン)の代わりにカルナバワックス組成物を評価し、収縮量がパラフィンワックスと相違するか否かを判定するために試験したが、融解温度が高いため、それ以上続行しなかった。
Figure 2024519214000005
Figure 2024519214000006
ワックス組成物試験の総合結果を表5にまとめる。
Figure 2024519214000007
25%パラフィン/75%鉱物油層と5%パラフィン/95%鉱物油層の完全性試験のために、図2Bに示すような反応容器を以下のように作製した。System Diluent(Abbott,Abbott Park,IL)で0.7%アガロース3.5mlを調製し、ホットプレートで融解させた。反応容器の下端にAlinity m反応チューブ底を取り付けた(50μl;Abbott,Abbott Park,IL)。指示ストリップを反応容器に挿入し、アガロースを加え、凝固させた。図2Bに示すように、アガロース層の上に、低温で融解可能なワックス(25%パラフィン/75%鉱物油)0.3mlと、より低温で融解可能なワックス(5%パラフィン/95%鉱物油)0.3mlを交互に配置するように、ワックス層を順次加えた。次の層を加える前に各ワックス層を凝固させた。最後に、CuTi粒子を含む溶解ペースト0.5gを最終ワックス層の上に積層した。反応容器を室温で1年間保存し、ワックスの収縮と漏出を定期的に試験した。収縮又は漏出は認められず、5%パラフィンワックス層は、反応容器壁から収縮しなかったと判断され、溶解緩衝液を水性アガロース層から封止するように機能できると判断された。
抽出チューブ組み立て及び試験
5mlピペットチップ(VWR,Radnor,PA)を抽出チューブとして使用し、基本的な抽出チューブデザインを作製して融解プロセスを試験した。図3Aに示す模式図に従い、2層のワックス層をアガロース層により分離したチューブを作製した。融解した25%ワックス溶液(25%パラフィン/75%Chill-out(登録商標)液体ワックス)を調製し、約75℃に維持した。沸騰するまで加熱することにより、System Diluent(Abbott,Abbott Park,IL)で0.5%アガロース100mlを調製し、凝固しない程度に冷却した。アガロースが冷却している間に、抽出チューブの下端をAlinity m反応容器底(Abbott,Abbott Park,IL)で封止した。冷却したが、まだ液体のアガロースを次に抽出チューブに加え、水性ゲル層を形成し、凝固させた。次に、冷却した25%ワックス0.4mlを加え、アガロースゲル層の上にワックス層を形成した。25%ワックスが凝固した後に、冷却した0.5%アガロース0.4mlを加えて凝固させ、25%ワックス層の上にアガロースゲル層を形成した。次に、第2のアガロースゲル層の上に25%ワックス0.3mlを加えて凝固させた。HIV内部対照(IC)17μlを加えた後、更に25%ワックス0.3mlを加えた。最後に、凝固した最終ワックス層の上にCuTi粒子を含む溶解ペースト0.5gを加えた。
両端が開いた穴を有する加熱ブロックを75~80℃に維持した。ブロックの底面を露出させるようにブロックを設置した。下層のアガロース層がブロックの底面から突出し、その領域が加熱された上部領域よりも低温に保たれるように、チューブをブロックに挿入した。
初期被験試料として、水0.5mlを溶解ペーストに添加し、溶解ペーストを溶解させ、ペースト内に気泡を放出させた。次にチューブを加熱ブロックに数分間挿入し、中間ワックス層が融解するか否かを調べた。以下に記載するように、5分以内に融解が完了した。ワックス層は、先ず、最上層が融解し、次に2番目の層の順に、順次融解した。その都度、ワックスは溶解ペースト層の上に浮き上がり、溶解ペーストと試料と粒子の混合物を混合し、機械的混合が不要になった。冷却すると、ワックスはチューブの上端を封止したので、試料からの廃液がなくなった。下層のアガロースゲル層は融解せず、チューブ内に留まり、下端を封止した。
抽出システム試験
簡易抽出システムを試験するために実験を実施した。図3Aに示す模式図に従い、上述したように抽出チューブ6本を作製した。試験した6種の試料のうち、2種はHIV試料とし、4種は対照(HIVを含まないベースマトリックス(精製ヒト血漿))とした。融解した25%ワックス溶液(25%パラフィン/75%Chill-out(登録商標)液体ワックス)を調製し、約75℃に維持した。0.5%アガロース1mlを調製し、硬化しない程度に冷却した。アガロースが冷却している間に、抽出チューブの下端をAlinity m反応容器底(Abbott,Abbott Park,IL)で封止した。冷却したアガロースを次に抽出チューブに加えて水性ゲル層を形成し、凝固させた。次に、冷却した25%ワックス0.4mlを加え、アガロースゲル層の上にワックス層を形成した。25%ワックスが凝固した後に、冷却したが、まだ液体のアガロース0.4mlを加えて凝固させ、25%ワックス層の上にアガロースゲル層を形成した。第2のアガロースゲル層の上に更に25%ワックス層(0.3ml)を加えて凝固させた。HIV内部対照(IC)17μlを加えた後、更に25%ワックス層0.3mlを加えた。最後に、凝固した最終ワックス層の上に溶解ペースト0.5gを加えた。
以下のように試料抽出を実施した。ヒートブロックを75~80℃に維持した。0.5ml試料を各抽出チューブに添加し、チューブをヒートブロックに挿入し、全ワックス層を融解させるために十分な時間である5分間保持した。ヒートブロックは、溶解反応物とチューブのワックス層のみを加熱し、下層のアガロース洗浄層は加熱されなかった。チューブをヒートブロックで更に10~15分間インキュベートし、溶解反応を完了まで進行させた。磁力を加えてライセート内のCuTi粒子を捕捉し、水性アガロースゲル層を通って粒子をチューブの側に吸引した。抽出チューブの下端は封止せず、抽出チューブを空の200μl MicroAmpチューブ(Applied Biosystems,Waltham,MA)に挿入し、CuTi粒子をMicroAmpチューブ内に磁気的に吸引した。CuTi粒子に結合した核酸を溶出させるために、溶出緩衝液100μlをMicroAmpチューブに加え、反応液を非混合下に75℃で10分間インキュベートした。次に、粒子を磁気的に捕捉し、溶出液50μlをHIV RT-PCRアッセイにロードした。
溶出液をHIV RT-PCRアッセイで試験し、HIV RNAを試料から抽出するのに成功したか否かを調べた(Program 0.6ml HIV-1 RNA version 7.00,Alinity m2000RT PCR System,Abbott,Abbott Park,IL)。各ポリメラーゼボトルに、アクチベーター271μlとオリゴミックス941μlを加えた。各増幅プレートウェルに、マスターミックス50μlと試料50μlを加えた。図3B及びCに示すように、HIV RNAを2種の陽性試料から抽出するのに成功し、図3D及びEに示すように、内部対照は、全6種の試料で機能した。これらの結果によると、抽出システムが機能することと、内部対照をワックス層に封入して抽出プロセス中に回収するのに成功したことが実証された。
24本のチューブを使用し、同一試薬を使用して同一条件下で第2組の試験を実施した。上記に記載し、図3Aに示すように、抽出チューブを作製した。加熱ブロック4個を75~80℃に維持し、ブロック1個当たりチューブ6本をインキュベートした。抽出に使用した試料を表6に示す。
Figure 2024519214000008
上述したように、ライセート内のCuTi粒子を磁気的に捕捉し、水性アガロースゲル層を通ってMicroAmpチューブ内に吸引した。溶出緩衝液75μlの存在下に75℃で10分間のインキュベーションを使用してCuTi粒子から核酸を溶出させた。CuTi粒子を磁気的に捕捉し、残りのアッセイ試薬をロードした後、各溶出液50μlをアッセイプレートに移した。アッセイ試料を表7に示すように配置した。図4A~Gと表7~10に示すように、核酸抽出に成功した。
Figure 2024519214000009
Figure 2024519214000010
Figure 2024519214000011
Figure 2024519214000012
[実施例3]核酸抽出システムコンポーネント及び方法の追加試験及び検証
材料及び方法
使用した材料と方法は、以下の点を除き、実施例1及び2に記載した通りとした。
抽出システム試験
より低温で融解可能なワックス層を疎水性介在シール層として使用した簡易抽出システムの実施形態を試験するために追加実験を実施した。図5Aに示す模式図に従い、低温で融解可能なワックス層と、より低温で融解可能なワックス層を交互に配置した5層を中間層とする1セット(「5層」)と、低温で融解可能なワックス層と、より低温で融解可能なワックス層を交互に配置した6層を中間層とする1セット(「6層」)の2セットの5mlピペットチップ反応容器を作製した。低温で融解する15%ワックス溶液(15%パラフィン/85%鉱物油)と、より低温で融解する5%ワックス溶液(5%パラフィン/95%鉱物油)の2種類のワックス溶液を調製し、約80~85℃に維持した。0.5%アガロースを調製し、反応容器作製まで80~85℃に維持した。反応容器の下端をAlinity m反応容器底(Abbott,Abbott Park,IL)で封止し、0.5%アガロース2mlを反応容器に加え、冷却して硬化させ、水性ゲル洗浄層を形成した。
図5Aに図解するように、低温で融解する15%ワックス溶液と、より低温で融解する5%ワックス溶液(疎水性介在シール層)の交互層をゲル洗浄層の上に加えることにより、5層反応容器のセットを作製した。次のワックス層を加える前に、各ワックス層を室温で凝固させ、最初の4層にはワックス0.3mlを使用し、最終層にはワックス0.4mlを使用した。同じく図5Aに図解するように、より低温で融解する5%ワックス溶液(疎水性介在シール層)と、低温で融解する15%ワックス溶液の交互層をゲル洗浄層の上に加えることにより、6層反応容器のセットを作製した。次のワックス層を加える前に各ワックス層を凝固させ、最初の4層にはワックス0.3mlを使用し、最終層にはワックス0.4mlを使用した。最後に、凝固した最終ワックス層の上に、CuTi粒子を含む溶解ペースト0.5gを加えた。
2種の陰性対照試料(「Neg」;HIV-1陰性対照2G31Z(Abbott,Abbott Park,IL)及びHIV内部対照(IC))と2種の陽性対照試料(「Pos」;高用量HIV陽性対照2G31X(Abbott,Abbott Park,IL)及びHIV内部対照(IC))の4種の試料を各セットで試験した。以下のように試料抽出を実施した。ヒートブロックを実験用オーブン(Cole-Parmer,Vernon Hills,IL)で80℃に維持した。5層及び6層反応容器のいずれも、HIV内部対照(IC)17μlを溶解ペーストに加え、夫々の試料0.5mlを各反応容器内の溶解ペーストに添加した。一度に2本ずつ抽出を実施し、実験用オーブンに入れたヒートブロックに反応容器2本をセットした。この構成を使用し、反応容器内の全層を実質的に均一に加熱した。5層及び6層反応容器のいずれも、ワックス層は約3分後に完全に融解したようであり、粒子を含む溶解反応物は、ワックス層の下に沈んでおり、ゲル洗浄層と流体連通していた。5分後に、磁力を加えて溶解反応物内のCuTi粒子を捕捉し、アガロースゲル洗浄層を通ってチューブの側に粒子を吸引した。反応容器の下端は封止せず、溶出緩衝液100μlを収容した200μl MicroAmpチューブ(Applied Biosystems,Waltham,MA)に挿入し、CuTi粒子をMicroAmpチューブ内に磁気的に吸引した。CuTi粒子に結合した核酸を溶出させるために、反応液を非混合下に75℃で5分間インキュベートした。次に、粒子を磁気的に捕捉し、溶出液50μlをHIV RT-PCRアッセイにロードした。
溶出液をHIV RT-PCRアッセイで試験し、HIV RNAを試料から抽出するのに成功したか否かを調べた(Program 0.6ml HIV-1 RNA version 8.00,Alinity m2000RT PCR System,Abbott,Abbott Park,IL)。各ポリメラーゼボトルに、アクチベーター271μlとオリゴミックス941μlを加えた。各増幅プレートウェルに、マスターミックス50μlと試料50μlを加えた。
結果
図5B~Cと表11に示すような抽出セットでは、どちらも陽性試料からHIV RNAを抽出するのに成功し(標的CTの列)、内部対照は全試料で機能した(IC CTの列)。
Figure 2024519214000013
簡易抽出システムの各種実施形態は、HIVアッセイとHIV試料対照を使用して機能することが実証された。より低温で融解可能なワックスの介在シール層を含む中間層を有する5層及び6層の両方の実施形態を使用して試料を効率的に抽出するのに成功した。実施形態間に意味のある差は認められなかった。
[実施例4]HBV DNAの単離用核酸抽出システムコンポーネント及び方法の試験
B型肝炎ウイルス(HBV)DNAを単離するために、本発明の融解可能なワックスをベースとする多層抽出カートリッジに濃厚溶解溶液を充填し、試料により再水和させた。Alinity m自動装置でCuTi粒子を使用すると、溶解溶液をポンプ注入する必要なしにHBV DNAが単離され、自動プラットフォームの複雑さが軽減された。これらのデータから明らかなように、抽出システムの各種態様は、HBVアッセイとHBV試料対照を使用して機能することが実証された。
均等物
以上、本発明の数種の実施形態について記載し、例証したが、当技術分野における通常の知識を有する者であれば、本願に記載する機能を実施するため、及び/又は結果及び/又は利点の1種以上を得るための種々の他の手段及び/又は構造に容易に想到するであろうし、このような変形及び/又は変更は、各々本発明の範囲に含まれるとみなされる。より一般には、本願に記載する全パラメーター、寸法、材料、及び構造が代表例に過ぎず、実際のパラメーター、寸法、材料、及び/又は構造が本発明の教示を使用する特定の用途により異なることは、当業者に容易に理解されよう。当業者は、単なる日常的実験を使用し、本願に記載する発明の特定の実施形態の多数の均等物を見出すであろうし、又は突き止めることができるであろう。したがって、当然のことながら、上記実施形態は単なる例示であり、以下の特許請求の範囲とその均等物の範囲内で、本明細書及び特許請求の範囲に具体的に記載する以外の方法で本発明を実施することができる。本発明は、本願に記載する個々の特徴、システム、物品、材料、及び/又は方法に関する。更に、このような特徴、システム、物品、材料、及び/又は方法が相互に矛盾しない限り、2種以上のこのような特徴、システム、物品、材料、及び/又は方法のあらゆる組み合わせも本発明の範囲に含まれる。
本願で規定及び使用する全定義は、辞書の定義、本願に援用する文献における定義、及び/又は定義された用語の通常の意味に優先すると理解すべきである。
本明細書と特許請求の範囲で使用する不定冠詞は、そうでないことが明白に指示されている場合を除き、「少なくとも1」を意味すると理解すべきである。本明細書と特許請求の範囲で使用する「及び/又は」なる用語は、この用語の前後の構成要素の「一方又は両方」を意味すると理解すべきであり、即ち、連言的に存在する場合と選言的に存在する場合がある構成要素を意味すると理解すべきである。そうでないことが明白に指示されている場合を除き、「及び/又は」なる用語により具体的に特定される構成要素以外の他の構成要素が任意に存在していてもよく、これらの具体的に特定される構成要素との関係の有無も問わない。
本願中に引用又は言及する全ての参考文献、特許並びに特許出願及び公開は、その開示内容全体を本願に援用する。

Claims (38)

  1. 生体試料から核酸を抽出・単離するための多層組成物であって、前記多層組成物が、
    a)前記多層組成物の各層をその内側に集合させる反応容器と;
    b)前記反応容器の内側に配置されており、濃厚半固体溶解ペーストを含む最上層と;
    c)低温で融解可能なワックスを含む中間層と;
    d)水性ゲルを含む下層洗浄層
    を含む、前記組成物。
  2. 前記反応容器が、実質的に円形の横断面のチューブを含み、前記チューブが、上端と下端を有する、請求項1に記載の多層組成物。
  3. 前記チューブの上端と下端が、可逆的に封止されている、請求項2に記載の多層組成物。
  4. 前記チューブが、J字形又はU字形である、請求項2に記載の多層組成物。
  5. 前記生体試料が、液体生体試料である請求項1に記載の多層組成物。
  6. 前記液体生体試料が、血清試料、血液試料、血漿試料、唾液試料、又は他の種類の生体試料である、請求項5に記載の多層組成物。
  7. 前記低温で融解可能なワックスが、室温で固体である、請求項1に記載の多層組成物。
  8. 前記低温で融解可能なワックスが、50~55℃を上回る温度で液体への転移を開始する、請求項1に記載の多層組成物。
  9. 更に、前記洗浄層と流体連通している溶出緩衝液を含む隣接層を更に含む、請求項1に記載の多層組成物。
  10. 前記溶出緩衝液が、低イオン強度溶出緩衝液である、請求項9に記載の多層組成物。
  11. 前記低イオン強度溶出緩衝液が、リン酸緩衝液である、請求項10に記載の多層組成物。
  12. 前記中間層が、複数の低温で融解可能なワックス層を含み、前記複数の低温で融解可能なワックス層が、各々介在シール層により分離されている、請求項1に記載の多層組成物。
  13. 前記複数の低温で融解可能なワックス層の各々を分離する前記介在シール層が、より低温で融解可能なワックスを含み、そのすぐ下の層よりも低温で融解する、請求項12に記載の多層組成物。
  14. 前記複数の低温で融解可能なワックス層の各々を分離する前記介在シール層が、鉱物油を含む、請求項12に記載の多層組成物。
  15. 使用時に前記複数の低温で融解可能なワックス層の各々が最上層から最下層まで順次融解するように、前記複数の低温で融解可能なワックス層が積層されている、請求項12~14のいずれか一項に記載の多層組成物。
  16. 前記中間層が、更に内部対照を含む、請求項1に記載の多層組成物。
  17. 前記濃厚半固体溶解ペーストが、GITC、トリス塩酸塩、トリス塩基、及びTween-20から構成される、請求項1に記載の多層組成物。
  18. 前記濃厚半固体溶解ペーストが、10%未満の残留水分率を有しており、流動しない、請求項17に記載の多層組成物。
  19. 前記濃厚半固体溶解ペーストが、5%未満の残留水分率を有する、請求項18に記載の多層組成物。
  20. 前記水性ゲルが、アガロース又はポリアクリルアミドから構成される、請求項1に記載の多層組成物。
  21. 前記複数の金属酸化物被覆粒子が、前記生体試料中に存在する核酸の計算量に対してモル過剰になると予想される量で存在する、請求項31に記載の多層組成物。
  22. 生体試料から核酸を抽出・精製するための方法であって、前記方法が、
    a)前記生体試料から核酸を抽出・単離するための多層組成物として、
    i)前記多層組成物の各層をその内側に集合させる反応容器と;
    ii)前記反応容器の内側に配置されており、濃厚半固体溶解ペーストを含む最上層と;
    iii)低温で融解可能なワックスを含む中間層と;
    iv)水性ゲルを含む下層洗浄層
    を含む多層組成物を準備する工程と;
    b)前記最上層の上に生体試料を積層し、複数の金属酸化物被覆磁性粒子を加えた前記溶解ペーストを可溶化して可溶化溶解ペーストを形成する工程と;
    c)前記反応容器を加熱して前記中間層の融解を開始させ、前記中間層が融解して前記可溶化濃厚半固体ペーストを通って上昇することを特徴とする密度逆転を生じることにより、前記生体試料、前記可溶化濃厚半固体溶解ペースト及び前記複数の金属酸化物被覆磁性粒子を混合し、前記生体試料内の核酸を前記金属酸化物被覆粒子と結合させる工程と;
    d)前記反応容器の周囲又は付近に磁石を配置することにより、金属酸化物被覆粒子とそれに結合した核酸を吸引する工程と;
    e)磁石を移動させることにより、吸引した金属酸化物被覆粒子とそれに結合した核酸が少なくとも部分的に前記水性ゲルを通って移動するように推進し、抽出夾雑物を除去する工程
    を含む前記方法。
  23. 前記低温で融解可能なワックスが、室温で固体である、請求項22に記載の方法。
  24. 前記低温で融解可能なワックスが、50~55℃を上回る温度で液体への転移を開始する、請求項22に記載の方法。
  25. 前記多層組成物が、更に前記洗浄層と流体連通している溶出緩衝液を更に含み、前記磁石を移動させることにより、吸引した金属酸化物被覆粒子とそれに結合した核酸が前記水性ゲルを通って前記溶出緩衝液内に移動するように推進する、請求項22に記載の方法。
  26. 前記溶出緩衝液が、低イオン強度溶出緩衝液であり、任意に更に前記低イオン強度溶出緩衝液が、リン酸緩衝液である、請求項25に記載の方法。
  27. 前記多層組成物の前記中間層が、複数の低温で融解可能なワックス層を含み、前記複数の低温で融解可能なワックス層が、各々介在シール層により分離されている、請求項22に記載の方法。
  28. 前記複数の低温で融解可能なワックス層の各々を分離する前記多層組成物の前記介在シール層が、より低温で融解可能なワックスを含み、そのすぐ下の層よりも低温で融解する、請求項27に記載の方法。
  29. 前記複数の低温で融解可能なワックス層の各々を分離する前記多層組成物の前記介在シール層が、鉱物油を含む、請求項27に記載の方法。
  30. 使用時に前記反応容器が加熱されるにつれて前記複数の低温で融解可能なワックス層の各々が最上層から最下層まで順次融解するように、前記複数の低温で融解可能なワックス層が積層されている、請求項27に記載の方法。
  31. 構成要素b)の前記最上層が、複数の金属酸化物被覆磁性粒子を更に含む、請求項1に記載の多層組成物。
  32. 前記金属酸化物被覆粒子が、酸化チタン粒子である、請求項31に記載の多層組成物。
  33. 前記酸化チタン被覆粒子が、チタン銅(CuTi)被覆粒子である、請求項31に記載の多層組成物。
  34. 前記複数の金属酸化物被覆粒子が、酸化チタン粒子である、請求項22に記載の方法。
  35. 前記酸化チタン粒子が、チタン銅(CuTi)被覆粒子である、請求項34に記載の方法。
  36. 構成要素a)の前記多層組成物を準備した後に、前記複数の金属酸化物被覆粒子を付加する、請求項22に記載の方法。
  37. 前記複数の低温で融解可能なワックス層の各々を分離する前記介在シール層が、アガロースを含む、請求項12に記載の多層組成物。
  38. 前記複数の低温で融解可能なワックス層の各々を分離する前記多層組成物の前記介在シール層が、アガロースを含む、請求項27に記載の方法。
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