JP2024509124A - 絨毛間質細胞組成物及びその使用 - Google Patents

絨毛間質細胞組成物及びその使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、周産期間質細胞の組成物及びその使用方法を提供する。具体的には、本発明は、羊膜間質細胞、ホウォートンゼリー間質細胞、胎盤固有間質細胞、絨毛膜間質細胞、または絨毛膜絨毛間質細胞を含む組成物、ならびに、移植片対宿主病の処置、線維症の低減、炎症の軽減、免疫寛容の誘導、及び単一または多臓器の線維症の処置のための、その組成物の使用方法を提供する。【選択図】図1A

Description

関連出願
本出願は、2021年2月26日に出願された「VILLI STROMAL CELLS COMPOSITIONS AND USES THEREOF」と題された米国仮出願第63/154,027号に対する優先権を主張し、この内容は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
技術分野
本発明は、一般に、周産期間質細胞組成物に関し、より具体的には、絨毛膜絨毛由来間質細胞の組成物、ならびに組織線維症及び組織炎症を処置するその組成物の使用に関する。
背景情報
移植後の拒絶反応は、依然として、高い罹患率及び死亡率と関連する医学的障害である。移植拒絶反応は、急性(短期)または慢性(長期)に分類することができる。急性拒絶反応は、それほど一般的ではないが、広範囲の免疫抑制剤の進歩により管理することができる。他方では、慢性拒絶反応は、好適な処置を有さず、これは、満たされていない重要な臨床ニーズを表す。造血幹細胞移植の場合、ドナー細胞がレシピエントの細胞を「非自己」として認識し、移植片対宿主病(GVHD)として既知のプロセスで宿主組織に対する広範な攻撃に参加する時、拒絶反応が特徴的である。慢性移植片対宿主病(cGVHD)は、移植患者の30~60%で発症する主要な免疫学的合併症であり続けている。臨床的cGVHDは、急性拒絶反応の特徴を有するが、主に、閉塞性動脈障害及び間質性線維症を特徴とする進行性同種移植傷害などの自己免疫症候群に似た、より多様な要素も有する。例えば、肺のcGVHDは、気流閉塞を伴う閉塞性細気管支炎として現れ得る。同様に、肝臓では、肝臓のcGVHDは、胆管減少症及び線維症と関連し得る。明らかに、cGVHDは、臓器同種移植片拒絶反応と関連する病理の多くを共有する。従って、免疫調節分子は、cGVHDを処置する新薬を開発する際の大きな関心のあるものである。
間葉系間質細胞(MSC)は、多分化能、遊走能力、及び推定される免疫特権状態の組み合わせのために、治療用途及び再生用途を有する。さらに、MSCは、損傷部位に遊走した後に遭遇する環境の合図に反応する。当初、ドナー幹細胞の送達による利点は、臓器修復の改善がもたらされる、損傷した組織への局在化及び健康な細胞への分化によるものであると考えられたが、生着及び生存のレベルは、5%未満であり、数字は、治療に関連するには小さすぎると考えられる。さらに、MSC(骨髄、BM、または脂肪由来、ASC)の有益な効果の1つは、パラクリンシグナル伝達による局所細胞/組織環境の調節と関連している。高齢者及び高齢動物から分離されたMSC(BM及び脂肪由来)は、部分的に分子プロファイルの変化が原因で、加齢に伴い再生能力を失うことを、最近の証拠は示唆する。従って、高齢のドナー由来のMSCが、若いドナーに由来するMSCほど、有効である可能性は低い。多くの重要な疑問は、古いMSCの再生能力の悪化に関連する因子の喪失または獲得を中心に展開している。
周産期間質細胞(PSC)は、出生後の赤ちゃんの周囲の組織に由来する細胞である。PSCは、正常な妊娠中の自然免疫調節機能の一部(すなわち、免疫寛容、抗炎症など)を活用することを目的として、細胞治療分野で関心を集めている。さらに、PSCは、他の方法では、廃棄される、倫理的に供給された材料から大量に収集することができる。間葉系間質細胞(MSC)と同様に、PSCは、免疫調節特性と、in vivoで臓器の線維化を調節する能力について研究されている。骨髄由来の間葉系間質細胞が、GVHDを調節する能力において広く研究されているが、PSCについてはほとんど情報が得られていない。さらに、ヒト化GVHDモデルにおいて、PSCに関する情報は入手できない。さらに、異なる組織供給源由来のPSCをin vivoで比較する報告はなく、組織供給源が潜在的な治療効果にどのように影響し得るかを理解する上でギャップが残されている。
ホウォートンゼリー(WJ)のMSC、ならびに「若い」MSC(すなわち、PSC)の豊富な供給源である全絨毛膜由来(CSC)及び絨毛膜絨毛由来MSC(CVC)は、生体の組織から単離されたMSCと比較していくつかの利点をもたらし得る。これらには、組織供給源の無制限の利用可能性、非侵襲性の単離、及び多数のMSCにつながる分離効率の向上を含む。さらに、最新の文献は、WJ-MSCが、胚性幹細胞のいくつかの有益な特徴を示し、以前に報告されているような腫瘍形成及び浸潤と関連する因子を欠いていることが報告されている。
本発明は、羊膜、胎盤、ホウォートンゼリー、絨毛膜、絨毛膜絨毛、及び臍帯組織から単離された周産期間質組織細胞が、移植片対宿主病の処置及び/または予防用に、特に、組織線維症、例えば、特発性肺線維症及び多臓器線維症の処置及び/または予防、に有用であるという独創的な発見に基づいている。
一実施形態では、本発明は、以下の細胞型:(i)羊膜周産期間質細胞(APSC)、(ii)胎盤固有間質細胞(PPSC)、(iii)ホウォートンゼリー周産期間質細胞(WPSC)、(iv)全絨毛膜由来間質細胞(CSC)、及び(v)絨毛膜絨毛由来間質細胞(CVC)、のうちの少なくとも1つと、薬学的に許容される担体を含む周産期間質細胞(PSC)組成物を提供する。
別の実施形態では、本発明は、以下の細胞型:(i)APSC、(ii)PPSC、(iii)WPSC、(iv)CSC、及び(v)CVC、のうちの少なくとも2つを含む上記のPSC組成物を提供する。
別の実施形態では、本発明は、以下の細胞型:(i)APSC、(ii)PPSC、(iii)WPSC、(iv)CSC、及び(v)CVC、のうちの少なくとも3つを含む上記のPSC組成物を提供する。
別の実施形態では、本発明は、以下の細胞型:(i)APSC、(ii)PPSC、(iii)WPSC、(iv)CSC、及び(v)CVC、のうちの少なくとも4つを含む上記のPSC組成物を提供する。
別の実施形態では、本発明は、以下の細胞型:(i)APSC、(ii)PPSC、(iii)WPSC、(iv)CSC、及び(v)CVC、のうちの5つ全てを含む上記のPSC組成物を提供する。
別の実施形態では、本発明は、APSC、PPSC、WPSC、またはCVCのうちの少なくとも1つがCD105、CD90、CD73、CD273、CD210、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される分子マーカーを発現する上記のPSC組成物を提供する。
別の実施形態では、本発明は、APSC、PPSC、WPSC、またはCVCのうちの少なくとも1つがCD11b、CD45、HLADR、CD119、CD85b、CD178、CD40、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される分子マーカーを発現しない上記のPSC組成物を提供する。
別の実施形態では、本発明は、該細胞が複数のドナーに由来する上記のPSC組成物を提供する。
別の実施形態では、本発明は、該細胞が同じ血液型の複数のドナーに由来する上記のPSC組成物を提供する。
別の実施形態では、本発明は、該細胞が互いに組織適合性があると判定されている複数のドナーに由来する上記のPSC組成物を提供する。
別の実施形態では、本発明は、該細胞が同じものを含むか、または類似のヒト白血球抗原(HLA)対立遺伝子または主要組織適合性複合体(MHC)を含むと判定されている複数のドナーに由来する上記のPSC組成物を提供する。
別の実施形態では、本発明は、上記のPSC組成物を提供し、該細胞が、1人以上のドナーに由来し、それの上記DNAが、分析されて、該細胞が、限定されないが、常染色体優性疾患、例えば、家族性高コレステロール血症、I型神経線維腫症、遺伝性球状赤血球症、マルファン症候群、ハンチントン病、常染色体劣性疾患、例えば、鎌状赤血球性貧血、嚢胞性線維症、テイ・サックス病、フェニルケトン尿症、常染色体劣性多発性嚢胞腎、ムコ多糖症、リソソーム酸リパーゼ欠損症、糖原病、例えば、ガラクトース血症、X連鎖性疾患、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、及び血友病を含む遺伝性疾患に関連するものを含む遺伝子変異を含まないことが確認されている。
別の実施形態では、本発明は、該細胞が任意の病原性ウイルスまたは他の微生物病原体を含まないと判定されている1人以上のドナーに由来する上記のPSC組成物を提供する。
別の実施形態では、本発明は、対象の慢性炎症及びそれに伴う組織線維症を低減する方法を提供し、方法は、それを必要とする対象に、上記の特許請求の範囲のいずれか1項に記載の周産期間質細胞(PSC)組成物を投与することを含む。
別の実施形態では、本発明は、それを必要とする対象の線維症を処置または予防する方法を提供し、方法は、それを必要とする対象に、先行請求項のいずれか1項に記載の周産期間質細胞(PSC)組成物を投与することを含む。
別の実施形態では、本発明は、対象が、例えば、感染症、化学療法、がん、COPD、環境損傷、例えば、アスベスト、石炭粉塵などにより引き起こされる肺もしくは肺線維症、または疾患、例えば、がんもしくは嚢胞性線維症;例えば、アルコール依存症、脂肪肝疾患、NASH、B型肝炎、もしくはC型肝炎により引き起こされる肝線維症;例えば、疾患、感染症、心臓発作、もしくは脳卒中により引き起こされる心臓線維症;リンパ節の石灰化線維症を特徴とする縦隔線維症;後腹膜腔の線維症;骨髄線維症;皮膚の線維化:または強皮症もしくは全身性硬化症を含む上記の方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、線維性組織が肺、肝臓、心臓、膵臓、血管、大腸、小腸、腎臓、皮膚、間質、または瘢痕組織を含む上記の方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、組織内のコラーゲン含有量及び/またはコラーゲン沈着が、PSC組成物の投与前の該組織内のコラーゲン含有量またはコラーゲン沈着と比較して減少している上記の方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、組織内の線維化スコアが、PSC組成物の投与前の組織内線維化スコアと比較して減少している上記の方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、上記の方法を提供し、線維化スコアは、Ashcroftスコア及びIshakスコアからなる群より選択される。
別の実施形態では、本発明は、線維症の分子マーカーは、PSC組成物の投与前の組織内の該分子マーカーと比較して、組織内で減少しており、任意に、線維症の分子マーカーは、αv-インテグリン発現、活性型MMP-2、pAKT/AKT発現比、miR199発現、及びそれらの組み合わせからなる群より選択され、及び/または、任意に、抗線維化分子マーカーは、PSC組成物の投与前の組織内の該分子マーカーと比較して、組織内で増加しており、さらに、任意に、抗線維化分子マーカーは、カベオリン-1発現である上記の方法を提供する。
別の実施形態では、本発明は、それを必要とする対象の組織または臓器の炎症を低減または予防する方法を提供し、方法は、上記の周産期間質細胞(PSC)組成物のいずれかを、それを必要とする対象に投与することを含む。
別の実施形態では、本発明は、それを必要とする対象の組織または臓器の炎症を低減または予防する方法を提供し、方法は、上記の周産期間質細胞(PSC)組成物のいずれかを、それを必要とする対象に投与することを含み、組織内の炎症の分子マーカーが、PSC組成物の投与前の組織内の該分子マーカーと比較して減少しており、任意に、炎症の分子マーカーは、TNFα発現、INFγ発現、IL-17発現、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
別の実施形態では、本発明は、それを必要とする対象の炎症の組織または臓器を低減または予防する方法を提供し、それを必要とする対象に上記の周産期間質細胞(PSC)組成物のいずれかを投与することを含み、組織内のCD45+T細胞の浸潤は、PSC組成物の投与前と比較して減少している。
別の実施形態では、本発明は、対象の免疫寛容を誘導する方法を提供し、方法は、それを必要とする対象に、上記の周産期間質細胞(PSC)組成物のいずれかを投与することを含み、任意に、炎症誘発性成熟単球由来樹状細胞(moDC)の増殖が阻害され、寛容原性未熟moDCの増殖が誘導され、炎症誘発性CD4+、CD8+、CD3+、CD4+CD8+(二重陽性)、及び/またはCD25+T細胞の増殖が阻害され、及び/またはCD11b+、CD11c+T細胞の増殖が阻害され、及び/または、任意に、単球集団における成熟マーカーCD1a及びCD83の発現の減少が成熟moDC増殖の阻害を示し、単球集団における未成熟マーカーCD85d及びCD14の発現増加が未成熟moDC増殖の増加を示す。
別の実施形態では、本発明は、対象が単一もしくは多臓器線維症、特発性肺線維症(IPF)、間質性肺疾患(ILD)、拡張型心筋症(DCM)、または移植片対宿主病(GVHD)に罹患する上記の方法のいずれかを提供する。
別の実施形態では、本発明は、対象の単一もしくは多臓器線維症、特発性肺線維症(IPF)、間質性肺疾患(ILD)、拡張型心筋症(DCM)、または移植片対宿主病(GVHD)を処置する方法を提供し、それを必要とする対象に、上記の周産期間質細胞(PSC)組成物のいずれかを投与することを含む。
別の実施形態では、本発明は、PSC組成物が絨毛膜絨毛由来間質細胞(CVC)及び薬学的に許容される担体を含む上記の方法のいずれかを提供する。
別の実施形態では、本発明は、対象が急性呼吸窮迫症候群(ARDS)もしくは敗血症に罹患しているか、またはそれを発症するリスクがある、上記の方法のいずれかを提供する。
別の実施形態では、本発明は、上記の方法のいずれかを提供し、対象が、急性または慢性のウイルス疾患または感染症、例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、もしくはE型肝炎、またはコロナウイルス感染症、例えば、SARS-CoV、SARS-CoV-2、MERS、に罹患しており、及び/あるいは、急性または慢性の細菌性疾患または感染症、例えば、インフルエンザまたは肺炎球菌感染症、任意に、対象を急性呼吸窮迫症候群(ARDS)または敗血症または線維症を発症するリスクにさらすもの、に罹患している。
別の実施形態では、本発明は、対象が組織または臓器の炎症、例えば、心膜炎、に罹患している、上記の方法のいずれかを提供する。
別の実施形態では、本発明は、対象が、ワクチン、任意に、mRNAワクチンにより引き起こされる組織もしくは臓器の炎症に罹患しているか、またはそれを発症するリスクがある、上記の方法のいずれかを提供する。
Aは、異種移植片対宿主病(GVHD)、huPBMC:ヒト末梢血単核細胞、huPSC:ヒト周産期間質細胞の誘発図を示す。Bは、周産期間質細胞のフローサイトメトリー特性を示すヒストグラムを示す。APSC:羊膜周産期間質細胞、PPSC:胎盤固有間質細胞、WPSC:ホウォートンゼリー周産期間質細胞。Cは、組織培養された単離細胞を示す。スケールバー=400μm。
Aは、40日目のマウス試料由来のヒト特異的CD3+細胞のフローサイトメトリーの結果を示す棒グラフである。Bは、実験条件毎の毎日の重量変化率(%)を示すグラフである。Cは、総体重の曲線下面積を示す棒グラフである。Dは、全体の平均身体変化率(%)を示す棒グラフである。ns=P>0.05、*=P≦0.05、**=P≦0.01、***=P≦0.001。PBMC及びシクロスポリンA(CsA)は、それぞれ陽性(GvHD)及び陰性(減弱GvHD)対照である。
Aは、体重変化がベースライン(変化ゼロ)に戻るまでの時間を示すグラフである。Bは、GvHDスコアのAUCを示すグラフである。*=P≦0.05、**=P≦0.01、***=P≦0.001。PBMC及びシクロスポリンA(CsA)は、それぞれ陽性(GvHD)及び陰性(減弱GvHD)対照である。
Aは、GvHD(PBMC陽性対照)、シクロスポリンA(CsA陰性対照)、胎盤固有間質細胞(PPSC)、羊膜周産期間質細胞(APSC)、ホウォートン周産期間質細胞(WPSC)に対するヒト特異的hCD45+細胞について染色されたマウス肺組織の組織学的試料を示す。上段スケール=1mm及び下段スケール=200μm。Bは、肺組織におけるヒトCD45+細胞の割合を示すグラフである。N=3。*P<0.05。**P<0.001。
Aは、GvHD(PBMC陽性対照)、シクロスポリンA(CsA陰性対照)、胎盤周産期間質細胞(PPSC)、羊膜周産期間質細胞(APSC)、ホウォートン周産期間質細胞(WPSC)に対するヒト特異的CD45+細胞について染色されたマウス肝臓組織の組織学的試料を示す。上段スケール=1mm及び下段スケール=200μm。Bは、肝臓組織におけるヒトCD45+細胞の割合を示すグラフである。N=3。*P<0.05。**P<0.001。
Aは、マッソントリクロームで染色されたマウス肺組織の組織学的試料を示す。上段スケール=1mm及び下段スケール=200μm。Bは、GvHD(PBMC陽性対照)、シクロスポリンA(CsA陰性対照)、胎盤固有間質細胞(PPSC)、羊膜周産期間質細胞(APSC)、ホウォートン周産期間質細胞(WPSC)に対する線維化病理学的スコア(Ashcroft)を示すグラフである。N=3。*P<0.05。
Aは、マッソントリクロームで染色されたマウス肝臓組織の組織学的試料を示す。上段スケール=1mm及び下段スケール=200μm。Bは、GvHD(PBMC陽性対照)、シクロスポリンA(CsA陰性対照)、胎盤固有間質細胞(PPSC)、羊膜周産期間質細胞(APSC)、ホウォートン周産期間質細胞(WPSC)に対する線維化病理学的スコア(Ishak)を示すグラフである。N=3。*P<0.05。**P<0.001。
Aは、重度の体重減少(>30%)のある動物を含む、研究期間中(55日間)の生存率を示す曲線である。Bは、体重減少が15%未満の動物を含む、研究期間中(55日間)の生存率を示す曲線である。GvHD(PBMC陽性対照)、シクロスポリンA(CsA陰性対照)、胎盤固有間質細胞(PPSC)、羊膜周産期間質細胞(APSC)、ホウォートン周産期間質細胞(WPSC)。N=10。*P<0.05。
生理食塩水、同種異系脂肪(ASC)、全臍帯、またはホウォートンゼリー(WJ)由来の間葉系幹細胞を投与されたブレオマイシン(BLM)誘発性肺損傷に罹患するマウスの生存率を示す曲線である。
Aは、生理食塩水(対照)を投与され、マッソントリクロームで染色されたマウスの肺組織の組織片である。Bは、マッソントリクロームで染色されたBLM処置マウスの肺組織の組織片である。Cは、マッソントリクロームで染色されたASCを注入したマウスの肺組織の組織片である。Dは、マッソントリクロームで染色されたCSCを注入したマウスの肺組織の組織片である。Eは、マッソントリクロームで染色されたCVCを注入したマウスの肺組織の組織片である。Fは、マッソントリクロームで染色されたWJを注入したマウスの肺組織の組織片である。Gは、半定量的Ashcroftスコアで測定される、組織切片上の肺線維症の程度を示すグラフである。図10Hは、ヒドロキシプロリンアッセイで測定される、肺コラーゲン含有量に対する気管内BLM注入の効果を示すグラフである。データは、平均値±平均値の標準誤差としてグラフ化されている(生理食塩水 n=3、他の全て n=7~11/群)。*P<0.05;**P<0.01。
対象の肺組織内のリン酸化AKT対AKTタンパク質発現の比(21日目の死亡時にウェスタン分析で定量)を示す。データは、平均値±平均値の標準誤差としてグラフ化されている(n=4~9/群)。*P<0.05;**P<0.01。 BLMまたはBLM+ASCまたはBLM+CSC、BLM+CVC、BLM+WJ処置マウスの肺組織からのタンパク質抽出物に対して実施されたザイモグラフィーで評価された活性型MMP-2を示す。データは、平均値±平均値の標準誤差としてグラフ化されている(n=5~7/群)P<0.05。 ウェスタン分析で決定されたCav-1タンパク質発現を示す。データは、平均値±平均値の標準誤差としてグラフ化されている(n=3~5/群)。P<0.05。
Aは、絨毛間質細胞によるマーカーCD105、CD90、CD73、CD273、CD210、CD178、CD119、CD85d、CD40、CD11b、HLADR、及びCD45の発現を示す棒グラフである。Bは、CD163、CD11b、PanCK、及びPDL1マーカーの発現を示す絨毛膜絨毛組織の組織切片を示す。
Aは、絨毛間質細胞の存在下での成熟moDC CD1a+細胞の数の変化を示す棒グラフである。Bは、絨毛間質細胞の存在下での成熟moDC CD83+細胞の数の変化を示す棒グラフである。Cは、絨毛間質細胞の存在下での未熟moDC CD85d+細胞の数の変化を示す棒グラフである。Dは、絨毛間質細胞の存在下での未熟moDC CD14+細胞の数の変化を示す棒グラフである。
Aは、PBMC及び絨毛間質細胞の共培養後のCD4+細胞数の変化を示す棒グラフである。Bは、PBMC及び絨毛間質細胞の共培養後のCD25+細胞数の変化を示す棒グラフである。Cは、PBMC及び絨毛間質細胞の共培養後のCD8+細胞数の変化を示す棒グラフである。Dは、PBMC及び絨毛間質細胞の共培養後のCD4+細胞及びCD8+細胞の数の変化を示す棒グラフである。Eは、PBMC及び絨毛間質細胞の共培養後のCD3+細胞数の変化を示す棒グラフである。
IL10由来及び絨毛由来moDC細胞と共培養したT細胞の増殖を示す棒グラフである。
Aは、実験条件毎の毎日の重量変化パーセントを示すグラフである。Bは、GvHDスコアのAUCを示すグラフである。*=P≦0.05。PBMC及びシクロスポリンA(CsA)は、それぞれ陽性(GvHD)及び陰性(減弱GvHD)対照である。
Aは、マッソントリクロームで染色されたマウス肺組織の組織学的試料を示す。Bは、GvHD(PBMC陽性対照)及び絨毛間質細胞に関する線維化病理学的スコア(Ashcroft)を示すグラフである(*P<0.05)。Cは、GvHD(PBMC陽性対照)及び絨毛間質細胞のヒト特異的hCD45+細胞について染色されたマウス肺組織の組織学的試料を示す。Dは、肺組織のヒトCD45+細胞の割合を示すグラフである。*P<0.05。**P<0.001。
Aは、GvHD(PBMC陽性対照)及び絨毛間質細胞のヒト特異的hCD45+細胞について染色されたマウス肝臓組織の組織学的試料を示す。Bは、肝臓組織のヒトCD45+細胞の割合を示すグラフである。*P<0.05。**P<0.001。Cは、マッソントリクロームで染色されたマウス肝臓組織の組織学的試料を示す。Dは、GvHD(PBMC陽性対照)及び絨毛間質細胞に関する線維化病理学的スコア(Ishak)を示すグラフである(*P<0.05)。
Aは、マッソントリクロームで染色されたマウス心臓組織切片の組織学的試料を示す。Bは、疾患スコア(平均値±SD)*、P値を示すグラフである。
Aは、IFN-γ産生T細胞の出現頻度を示す。Bは、IL-17産生T細胞の出現頻度を示す。(平均値±SD)*、P値。
マッソントリクロームで染色されたマウス肺組織の組織学的試料を示す。
Aは、処置後のマウスで測定された線維症スコアを示す。Bは、線維症指数を決定するために使用されたコラーゲンの量を示す。Cは、処置後のインテグリンの発現のmRNAレベルを示す。ブレオマイシン(BLM)、絨毛膜間質細胞(絨毛膜)、絨毛間質細胞(絨毛)、及びヒト脂肪間質細胞(hASC)。各点は、個々のマウスを表す。*p、<0.05、**p<0.001(BLM処置マウスと比較)。
本発明は、羊膜、胎盤、ホウォートンゼリー、絨毛膜、絨毛膜絨毛、及び臍帯組織から単離された周産期間質組織細胞が、移植片対宿主病の処置及び/または予防用に、特に、組織線維症、例えば、特発性肺線維症及び多臓器線維症の処置及び/または予防、に有用であるという独創的な発見に基づいている。
本発明の組成物及び方法を説明する前に、本発明は、記載される特定の組成物、方法、及び実験条件に限定されず、そのような組成物、方法、及び条件は変動し得ることが理解される。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲においてのみ限定されるので、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図されないことも理解される。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈に別途明示のない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「方法」への言及には、本開示などを読めば、当業者らには明らかとなる本明細書に記載される種類の1つ以上の方法及び/またはステップが含まれる。
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかも個々の刊行物、特許、または特許出願が参照により組み込まれることが具体的且つ個別に示されるのと同じ程度で、参照により本明細書に組み込まれる。
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法及び材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、修正及び変更は、本開示の精神及び範囲内に含まれることが理解されるであろう。ここで、好ましい方法及び材料を記載する。
一実施形態では、本発明は、羊膜周産期間質細胞(APSC)、胎盤固有間質細胞(PPSC)、ホウォートンゼリー周産期間質細胞(WPSC)、全絨毛膜由来間質細胞(CSC)、または絨毛膜絨毛由来間質細胞(CVC)、及び薬学的に許容される担体を含む周産期間質細胞(PSC)組成物を提供する。
本明細書で使用される場合、「周産期間質細胞」または「PSC」は、胎盤、好ましくは、ヒト胎盤、から単離された細胞を指す。ヒトの胎盤には、絨毛、羊膜、及び「胎盤本体」が含まれ、これには、絨毛膜または絨毛膜板、絨毛、絨毛間腔、基底板、及び子葉が含まれる。胎盤の各部分は、単離することができ、周産期間質細胞の部分集団を得るために使用することができる。
羊膜は、絨毛膜から機械的に分離することができ、これにより、羊膜周産期間質細胞(APSC)の誘導体がもたらされる。臍帯を縦方向に切断すると、臍動脈及び静脈を含有するホウォートンゼリーが露出する。血管を除去した後、ホウォートンゼリー周産期間質細胞(WPSC、WJPSC、またはMJ-MSC)は臍帯に由来し得る。羊膜及び臍帯が除去される時、胎盤の残部(胎盤本体と呼ぶことができる)は、胎盤本体間質細胞(PPSC)を調製するために直接使用することができるか、または、分離することもできる。例えば、絨毛膜は、絨毛膜由来間質細胞(CSC)全体を単離するために分離することができ、中間及び終末絨毛は、絨毛膜絨毛間質細胞(CVC)を単離するために露出させることができる。
ホウォートンゼリー(WJ)は、これらのPSCが脂肪組織などの他の供給源からのSCよりも幹様特性を維持しているので、臨床用途で使用されるPSCを取得するための理想的なリザーバーである。これらの非胚性MSCの使用には倫理的な問題は生じない。加齢に伴う肺修復機序の悪化がIPFの発症機序の根拠である可能性が高いので、この若いMSC源は、高齢マウスのBLM誘発性IPFの処置においてASCよりも特定の利点をもたらし得る。さらに、供給源が容易に入手でき、通常は廃棄物として生成されるので、臍帯由来細胞は採取が容易である。
実験モデルでは、WJ由来MSCは、抗線維化効果を示す。腎線維症の片側虚血再灌流損傷ラットモデルでは、主張される機序は、上皮から間葉への移行及び腎線維症の救済の遅延を含む。WJ-MSCは、S.mansoni誘発性肝線維症の処置としても研究されている。WJ-MSCを移植すると、WJ-MSCは、ヒト肝細胞に特異的なマーカーを発現する肝細胞様細胞に分化したことを報告した。さらに、肝線維症は、肝線維症に関連するマーカーであるコラーゲンI、α平滑筋アクチン、及びIL-13の下方制御と同時に退行した。ヒトケロイド線維芽細胞の線維化促進プロファイルは、WJ-MSC馴化培地との共培養により増強された。対照的に、WJ-MSC馴化培地は、正常な皮膚線維芽細胞の遊走及び創傷閉鎖を促進した。
「薬学的に許容される」とは、担体、希釈剤、または賦形剤が製剤の他の成分と適合性があり、そのレシピエントに有害であってはならないことを意味する。薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Osol,A.Ed.(1980))は、当該技術分野で周知である。薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤は、用いられる投薬量及び濃度ではレシピエントに対して無毒であり、これには、緩衝液(例えば、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸);抗酸化物質(アスコルビン酸、ビタミンA、ビタミンE、及びメチオニンを含む);防腐剤(例えば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール);アルキルパラベン(例えば、メチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量の(約10残基未満の)ポリペプチド;タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、システイン、またはリジン);単糖類、二糖類、及び他の炭水化物(グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖類(例えば、スクロース、マンニトール、トレハロース、またはソルビトール);塩形成カウンターイオン(例えば、ナトリウム);金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/あるいは非イオン性界面活性剤(例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、またはポリエチレングリコール(PEG));パルミチン酸レチニル、セレン、メチオニン、クエン酸、硫酸ナトリウム、及びパラベンが含まれ得る。希釈剤の例としては、水、アルコール、食塩水、グリコール、鉱油、及びジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられるが、これらに限定されない。
医薬組成物は、他の治療薬も含有してもよく、医薬製剤の分野で既知の手法に従い、例えば、従来のビヒクルまたは希釈剤、及び所望の投与様式に適切なタイプの医薬添加剤(例えば、賦形剤、保存剤など)を用いることにより製剤化され得る。
医薬組成物は、さらに、該医薬組成物を投与する内科医により有益であると評価される追加の医薬または治療薬を含んでもよい。
一態様では、APSC、PPSC、WPSC、またはCVCは、CD105、CD90、CD73、CD273、CD210、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される分子マーカーを発現する。別の態様では、APSC、PPSC、WPSC、またはCVCは、CD11b、CD45、HLADR、CD119、CD85b、CD178、CD40、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される分子マーカーを発現しない。
本明細書で使用される場合、「分子マーカー」は、評価することができ、組織または細胞に関する有用な情報を提供する、組織または細胞の特徴を指す。分子マーカーの非限定例としては、遺伝子、タンパク質、miRNA、mRNA、酵素などの発現または活性が挙げられるが、これらに限定されない。膜関連タンパク質の発現は、分子マーカーであり得;タンパク質の発現または欠如は、細胞型の同定に有用であり得る。酵素の活性は、分子マーカーであり得;酵素の活性またはその欠如は、細胞内の経路の活性化または抑制を同定するのに有用であり得る。遺伝子、mRNA、またはmiRNAの発現は、分子マーカーであり得;遺伝子、mRNA、またはmiRNAの発現または欠如は、細胞内の経路の活性化または抑制を同定するのに有用であり得る。
別の実施形態では、本発明は、本発明の周産期間質細胞(PSC)組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、対象の慢性炎症及びそれに伴う組織線維症を低減する方法を提供する。
線維症は、修復または反応プロセスにおける臓器または組織への過剰な線維性結合組織の形成である。生理学的には、線維症は、結合組織を堆積させるように作用し、これは、その下にある臓器または組織の正常な構造及び機能を妨げるか、または完全に阻害し得る。線維症は、線維組織の過剰な沈着の病理学的状態、及び治癒における結合組織の沈着のプロセスについて記載するために使用することができる。線維症は、細胞外マトリックス(ECM)タンパク質の病理学的蓄積で定義することができ、正常な臓器機能を妨げる罹患組織の瘢痕化及び肥厚が生じる。線維症は、実質的に体内のあらゆる組織で、炎症または組織への損傷の結果として生じ得る。線維症に罹患し得る組織の非限定例としては、肺、肝臓、脳、腎臓、動脈、腸、関節(膝、肩)、皮膚、手、指、軟部組織、陰茎、及び心臓が挙げられる。
一態様では、組織は、肺、肝臓、心臓、膵臓、血管、大腸、小腸、腎臓、皮膚、間質、または瘢痕組織である。
本明細書で使用される場合、「対象における組織線維症を軽減すること」は、組織内で発生する線維化プロセスを治癒し、減速させ、その症状を軽減し、及び/またはその進行を停止する任意の介入を指し得る。
本明細書で使用される「対象」という用語は、本方法が実施される任意の個体または患者を指す。一般に、対象は、ヒトであるが、当業者らには理解されるように、対象は、動物であってもよい。従って、脊椎動物、例えば、齧歯動物(マウス、ラット、ハムスター、及びモルモットを含む)、ネコ、イヌ、ウサギ、家畜(ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ニワトリなどを含む)、ならびに霊長類(サル、チンパンジー、オランウータン、及びゴリラを含む)を含む他の動物が対象の定義に含まれる。
「の投与」及び/または「投与すること」という用語は、処置を必要とする対象に治療有効量の医薬組成物を提供することを意味すると理解されるべきである。投与経路は、経腸、局所、または非経口であり得る。そのため、投与経路には、皮内、皮下、静脈内、腹腔内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、経皮、経気管、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内及び胸骨内、経口、舌下、口内、経直腸、膣内、経鼻、眼内投与、さらに、注入、吸入、及び噴霧が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「非経口投与」及び「非経口的に投与される」という語句は、経腸投与及び局所投与以外の投与様式を意味する。
「治療的有効量」、「有効用量」、「治療有効用量」、「有効量」などの用語は、研究者、獣医、医師、または他の臨床医が調査する組織、系、動物、またはヒトの生物学的または医学的応答を誘発する主題の化合物の量を指す。一般に、応答は、患者の症状の改善、または所望の生物学的結果(例えば、組織線維症の低減、組織炎症の低減、免疫調節の増加)のいずれかである。
いくつかの態様では、組織内のコラーゲン含有量及び/またはコラーゲン沈着は、PSC組成物の投与前の該組織内のコラーゲン含有量またはコラーゲン沈着と比較して減少している。
線維症は、様々な組織の過剰成長、硬化、及び/または瘢痕化で定義され、コラーゲンを含む細胞外マトリックス成分の過剰な沈着に起因する。それ故、組織のコラーゲン含有量及び/または組織内のコラーゲンの沈着の任意の変化を評価することは、線維症を評価及び監視するのに有用な手法である。組織学で使用される3色染色プロトコールであるマッソントリクローム染色は、ケラチン及び筋線維を赤で、コラーゲン及び骨を青または緑で、細胞質を淡い赤またはピンクで、細胞核を暗褐色~黒で染色することにより、細胞を周囲の結合組織から区別することを可能にする。組織内のコラーゲンの検出及び定量化を可能にする他の方法が当該技術分野に存在しており、その趣旨で、任意の好適な方法を使用することができる。
他の態様では、組織内の線維化スコアは、PSC組成物の投与前の組織内の該線維化スコアと比較して減少している。
本明細書で使用される場合、「線維化スコア」は、組織内の線維症の量を容易且つ再現的に評価するために使用することができる検証された任意のスコアリング法を指す。組織及び/または組織に罹患する疾患に応じて、異なるスコアリング法を適用することができる。
多くの態様では、線維化スコアは、Ashcroftスコア及びIshakスコアからなる群より選択される。
Ashcroftスコアは、肺標本における線維症の程度と、他の肺変数、例えば、肺機能検査またはミネラル負荷、との相関関係のために作成された連続的な数値スケールである。グレードは、顕微鏡視野スコアの平均を使用して、0~8のスケールでスコア化される。この系は、線維症が小さな組織試料(1cm)で測定可能にし、これは、肺の変化の詳細な説明を提供し得、現在では、ほとんどの既存の方法では不可能である。
肝線維症の評価のための、いくつかのスコアリングシステム(IASL、Batts-Ludwig、Metavir、及びIshakスコアを含む)が存在する。Ishakは、慢性C型肝炎の処置における線維症及び壊死性炎症の評価に最も広く受け入れられているスコアリングシステムの1つである。
一態様では、線維症の分子マーカーは、PSC組成物の投与前の組織内の該分子マーカーと比較して、組織内で減少している。
スコアリングシステムは、通常は、組織学的組織試料を研究することにより、組織の全体的な評価が可能になる。線維症の分子マーカーは、線維症を制御可能な分子経路に関与するタンパク質、酵素、またはmiRNAの発現レベルを評価するために使用することもできる。分子マーカーは、線維化を進行させ得、それにより、その発現/活性の増加は、線維症の増加を示し得るか、または、分子マーカーは、抗線維性である得、それにより、その発現/活性の増加は、線維症の減少を示し得る。例えば、α-インテグリン発現、活性型MMP-2、pAKT/AKT比、及びmiR199発現は、線維症のマーカーであることが当該技術分野で既知である。カベオリン-1は、抗線維化マーカーであることが当該技術分野で既知である。
様々な態様では、線維症の分子マーカーは、α-インテグリン発現、活性型MMP-2、pAKT/AKT発現比、miR199発現、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。別の態様では、抗線維化分子マーカーは、PSC組成物の投与前の該組織内の該分子マーカーと比較して組織内で増加している。様々な態様では、抗線維化分子マーカーは、カベオリン-1発現である。
さらなる実施形態では、本発明は、それを必要とする対象に、本発明の周産期間質細胞(PSC)組成物を投与することを含む、対象の組織炎症を低減する方法を提供する。
「炎症反応」または「炎症」は、組織が損傷された時に、細菌、外傷、毒素、熱、または他の任意の原因を生じる。損傷した細胞は、ヒスタミン、ブラジキニン、及びプロスタグランジンを含む化学物質を放出し、腫脹を引き起こす。化学物質は、食細胞などの白血球も引き付けて、細菌及び死んだ細胞または損傷した細胞を除去する。組織の損傷及び炎症は、自然免疫系及び適応免疫系の様々な異なる細胞型の動員及び活性化を誘導することにより、再生及び線維症の重要な引き金である。
一態様では、組織内の炎症の分子マーカーは、PSC組成物の投与前の組織内の該分子マーカーと比較して減少している。
いくつかの態様では、炎症の分子マーカーは、TNFα発現、INFγ発現、IL-17発現、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。
腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーは、細胞死を引き起こし得るサイトカインのスーパーファミリーを指す。全てのTNFスーパーファミリーのメンバーは、特定の受容体に認識されるホモ三量体(またはLT-アルファ/ベータの場合のヘテロ三量体)複合体を形成する。TNFスーパーファミリーメンバーの例としては、TNFα、TNF-β、リンホトキシンアルファ、CD40L、CD27L、CD30L、FASL、4-1BBL、OX40L、及びTRAILが挙げられる。
インターフェロン(IFN)は、いくつかの病原体、例えば、ウイルス、細菌、寄生虫、及びさらには腫瘍細胞、の存在に応答して宿主細胞により生成及び放出されるシグナル伝達タンパク質の群である。典型的なシナリオでは、ウイルスに感染した細胞が、インターフェロンを放出し、これにより、近くの細胞に抗ウイルス防御を増強させる。IFNは、病原体の根絶を助ける免疫系の防御防衛を引き起こすために細胞間の情報伝達に使用される分子であるサイトカインとして既知のタンパク質の大きなクラスに属する。IFNの例としては、IFN-α、IFN-β、IFN-ε、IFN-κ、及びIFN-γが挙げられる。
インターロイキン17A(IL-17またはIL-17A)は、IL-23による刺激に応答して、Tヘルパー17細胞として既知のヘルパーT細胞の群により産生される炎症誘発性サイトカインである。
組織へのTリンパ球の浸潤は、線維症患者及び線維症の動物モデルで一般的である。細胞は、細胞外マトリックス、特に、コラーゲンの蓄積を調節する役割を果たしていると考えられている。線維化促進性Tリンパ球及び抗線維化性Tリンパ球の両方は、線維化に関与することが確認され得る。線維化促進性浸潤性Tリンパ球の除去は、線維症患者の転帰を改善するためにアプローチすることができる。
他の態様では、組織内のCD45+T細胞浸潤は、PSC組成物の投与前と比較して減少している。
さらなる実施形態では、本発明は、対象の免疫寛容を誘導する方法を提供し、方法は、本発明の周産期間質細胞(PSC)組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
「免疫応答」は、抗原に対する統合された身体応答を指し、好ましくは、細胞性免疫応答または細胞性及び体液性免疫応答、を指す。免疫応答は、防御的/予防的/防止的及び/または治療的または病理学的であり得る。免疫系は、疾患を防ぐ生体内の生物学的構造及びプロセスの系である。この系は、相互作用する細胞、細胞産物、及び細胞形成組織の拡散した複雑なネットワークであり、これは、病原体及び他の外来物質から身体を保護し、感染細胞及び悪性細胞を破壊し、細胞残骸を除去する。この系には、胸腺、脾臓、リンパ節及びリンパ組織、幹細胞、白血球、抗体、ならびにリンホカインが含まれる。B細胞またはBリンパ球は、獲得免疫系の体液性免疫におけるリンパ球の一種であり、免疫監視にとって重要である。T細胞またはTリンパ球は、細胞性免疫において中心的な役割を果たすリンパ球の一種である。T細胞には、キラーT細胞及びヘルパーT細胞という2つの主要なサブタイプがある。さらに、免疫応答を調節する役割を有するサプレッサーT細胞がある。キラーT細胞は、クラスI MHC分子に結合した抗原のみを認識するが、ヘルパーT細胞は、クラスI IMHC分子に結合した抗原のみを認識する。これら2つの抗原提示の機序は、2種類のT細胞の異なる役割を反映する。3番目のマイナーのサブタイプは、MHC受容体に結合していないインタクト抗原を認識するγδT細胞である。対照的に、B細胞抗原特異的受容体は、B細胞表面の抗体分子であり、いかなる抗原プロセシングも必要とせずに病原体全体を認識する。B細胞の各系統は、異なる抗体を発現するので、B細胞抗原受容体の完全なセットは、身体が製造することができる全ての抗体を表す。
「細胞性免疫応答」、「細胞性応答」、「抗原に対する細胞性応答」、または同様の用語は、クラスIまたはクラスII MHCを有する抗原の提示を特徴とする細胞に対する細胞性応答を含むことを意味する。細胞応答は、「ヘルパー」または「キラー」のいずれかとして機能するT細胞またはTリンパ球と呼ばれる細胞に関連する。ヘルパーT細胞(CD4+T細胞とも呼ばれる)は、免疫応答を調節することにより中心的な役割を果たし、キラー細胞(細胞傷害性T細胞、細胞溶解性T細胞、CD8+T細胞またはCTLとも呼ばれる)は、がん細胞などの罹患細胞を殺傷し、これにより、より多くの罹患細胞の生成が予防される。好ましい実施形態では、本発明は、1つ以上の腫瘍発現抗原を発現し、好ましくは、そのような腫瘍発現抗原をクラスI MHCで提示する腫瘍細胞、に対する抗腫瘍CTL応答の刺激を含む。
本発明の文脈における「免疫反応性細胞」「免疫細胞」、または「免疫エフェクター細胞」という用語は、免疫反応中にエフェクター機能を発揮する細胞に関する。「免疫反応性細胞」は、好ましくは、抗原、または、抗原もしくは抗原由来の抗原ペプチドの提示を特徴とする細胞に結合し、及び免疫応答を媒介することが可能である。例えば、そのような細胞は、サイトカイン及び/またはケモカインを分泌し、抗体を分泌し、がん性細胞を認識し、任意に、そのような細胞を除去する。例えば、免疫反応性細胞は、T細胞(細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、腫瘍浸潤性T細胞)、B細胞、ナチュラルキラー細胞、好中球、マクロファージ、及び樹状細胞を含む。
「免疫調節」または「免疫寛容」は、免疫応答が適切であることを保証するための基本である。本明細書で使用される場合、「免疫寛容の誘導」は、バランスの取れた好適な免疫応答の維持に関与している調節細胞の誘導を指す。免疫制御細胞には、制御性T細胞、B細胞、及びマクロファージ、ならびに骨髄由来サプレッサー細胞、樹状細胞、及び間葉系間質細胞(MSC)を含む。これらの細胞は、エフェクター細胞を阻害し、他の調節細胞を誘導することにより免疫応答を調節し得る。
一態様では、炎症誘発性成熟単球由来樹状細胞(moDC)の増殖が阻害され、寛容原性未熟moDCの増殖が誘導され、CD4+、CD8+、CD3+、CD4+CD8+(二重陽性)、及び/またはCD25+T細胞の増殖が阻害され、及び/またはCD11b+、CD11c+T細胞の増殖が阻害される。
単球は、マクロファージ前駆体として機能し、樹状細胞(DC)に分化する能力を有し、それ故、自然免疫及び適応免疫の両方で重要な役割を果たす。成熟単球由来樹状細胞(moDC)は、成熟マーカー、例えば、CD1a及びCD83を発現し、炎症誘発能を有する。未成熟moDC、または寛容原性DCは、未成熟マーカー、例えば、CD85d及びCD14を発現し、免疫抑制特性を有している。
いくつかの態様では、単球集団における成熟マーカーCD1a及びCD83の発現の減少は、成熟moDC増殖の阻害を示し;他の態様では、単球集団における未成熟マーカーCD85d及びCD14の発現増加は、未成熟moDC増殖の増加を示す。
多くの態様では、対象は、単一もしくは多臓器線維症、特発性肺線維症(IPF)、間質性肺疾患(ILD)、拡張型心筋症(DCM)、または移植片対宿主病(GVHD)に罹患している。
いくつかの態様では、対象は、強皮症に罹患している。本明細書で使用される場合、「強皮症」は、皮膚、血管、筋肉、及び内臓に変化をもたらし得る一群の自己免疫疾患を指す。特に、コラーゲンの合成の増加(硬化症を引き起こす)、小血管の損傷、Tリンパ球の活性化、及び結合組織の変化の発生により、強皮症は、皮膚、血管、筋肉、及び内臓の肥厚、硬直、及び線維化を引き起こす。
本明細書で使用される場合、「単一臓器線維症」という用語は、線維症(すなわち、肺線維症、肝臓線維症、心臓線維症、腎臓線維症など)(本明細書に記載の組成物を使用して、それぞれ個別に処置することができる)により別々に影響を受ける個々の臓器の処置を指すことを意味するが、「多臓器線維症」という用語は、同時に同じ対象において線維症の影響を受けた複数の臓器を処置することを指す。実に、いくつかの場合では、線維症は、複数の臓器(1つの臓器に限定されない)に広がり得る。
特発性肺線維症(IPF)は、進行性肺瘢痕化及び通常の間質性肺炎の組織像を特徴とする原因不明の慢性進行性線維化性間質性肺疾患(ILD)である。ILDカテゴリーに属する障害は、炎症、浮腫、及び/または線維症を含む様々な機序を通じて肺間質に損傷を引き起こす。最新の推計によると、肺線維症に罹患するアメリカ人は20万人を超えている。IPFは、主に、60歳以上の男性に現れる。予測不可能で過酷な臨床経過に直面すると、患者に、有効性が限られ、重大な罹患率を伴う非標的療法の使用を含む管理が提供される。歴史的に、ブレオマイシン(BLM)誘発性肺線維症の動物モデルの特徴は、線維性肺疾患の研究に使用されており、これにより、結果をヒトIPF(IPF患者に対する第I相安全性試験を含む)に直接変換している(ClinicalTrials.gov、NCT02013700)。不可逆的で機能障害性の線維性肺疾患の臨床的負担を認識することにより、より効果的な治療法の開発が推進される。
拡張型心筋症(DCM)は、若年成人における心不全(HF)及び心臓移植の主な原因であるが;この疾患が、出現頻度の高い、且つ壊滅的なものであるにもかかわらず、この状態を予防または回復する効果的な処置はまだない。DCMは、重大な健康管理の懸念材料であり、米国で580万の症例の心不全(HF)及び全世界で2,300万を超える症例の心不全の約10%を占める。DCMの病因は、不均一であり、これには、遺伝的原因、非遺伝的原因、及び炎症性原因を含む。DCM症例(DCMi)の少なくとも30~40%で炎症が観察され、従って、心筋炎が、その病因の重要な原因であると考えられている。心筋炎は、男性に多く見られ、最大20%の若者の突然死の重要な原因である。それは、潜行性の発症のため、広く診断されていない。心筋炎処置試験は、症状のある患者の1年死亡率が20%、4年死亡率が50%を超えることを示した。巨細胞性心筋炎の生存期間中央値は、疾患発症から約5ヶ月である。心筋炎及びDCMiの現在の処置は、主に、対症療法であり、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、ニトログリセリン、利尿薬、及び重度の心不全の場合の強心薬による心不全の臨床症状の処置を目的としていた。免疫抑制療法は、根底にある病因が炎症性及び自己免疫性である場合であっても、DCMiの予防または逆転には効果がない。根本的な理由は、ほとんど理解されていない。慢性心筋炎及びDCMiへの進行の自己免疫機序は、心筋炎患者の心臓組織に対する自己抗体及び動物モデルでの心臓自己抗原を使用した実験的自己免疫性心筋炎(EAM)の誘発でサポートされる。心筋炎からDCMiへの進行は、この疾患の壊滅的な合併症であり、多くの場合、致命的な結果をもたらす。炎症は、心筋炎からDCMiへの進行に重要な役割を果たしていると考えられている。未知の原因で、免疫抑制性グルココルチコイド(GC)薬を使用する処置は、効果がなく、DCMiの進行が阻止される。従って、DCMiを予防または回復するための新規の処置が緊急に必要とされている。
移植片対宿主病(GvHD)は、骨髄移植で生じるような幹細胞移植と一般に関連するが、固形臓器移植などの他の形態の移植組織にも当てはまる。提供された組織(移植片)内に残るドナーの免疫系の白血球は、レシピエント(宿主)を異物(非自己)として認識する。次に、移植された組織内に存在する白血球は、レシピエントの身体の細胞に対して反応し、これは、GvHDを引き起こす。これは、移植レシピエントの免疫系が移植組織を拒絶する時に生じる移植拒絶反応と混同すべきではなく、GvHDは、ドナーの免疫系の白血球がレシピエントを拒絶する時に生じる。
さらに別の実施形態では、本発明は、対象の単一もしくは多臓器線維症、特発性肺線維症(IPF)、間質性肺疾患(ILD)、拡張型心筋症(DCM)、または移植片対宿主病(GVHD)を処置する方法を提供し、方法は、本発明の周産期間質細胞(PSC)組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
「処置すること」という用語は、「処置」または「処置方法」を指すために使用され、1)診断された病的状態または障害を治癒し、減速させ、その症状を軽減し、及び/またはその進行を停止させる治療的処置または手段と、2)防止/予防手段の両方を指す。処置が必要な者らには、既に特定の内科的疾患に罹患している個体、ならびに、最終的に疾患を患う可能性のある個体(すなわち、予防手段が必要な個体)も含まれ得る。
多くの態様では、PSC組成物には、絨毛膜絨毛由来間質細胞(CVC)及び薬学的に許容される担体を含む。
議論された用途のために企図される周産期間質細胞組成物を議論する例が、以下に提示される。本発明の実施形態をさらに説明するために、以下の実施例は、提供されるが、本発明の範囲を限定することが意図されるものではない。これらは、使用され得るものに特有であるが、当業者らに既知の他の手順、方法論、または手法が代わりに使用され得る。
実施例1
周産期間質細胞の単離及び特性評価
周産期間質細胞(PSC)を、ヒト胎盤から単離し、そこから、羊膜由来細胞、臍帯由来細胞、及び絨毛膜由来細胞を、母親の同意後に、アラバマ大学の協力的ヒト組織ネットワークの倫理委員会のガイドラインに従って、選択的帝王切開により収集された健常な妊娠末期胎盤から単離した。ヒト胎盤組織は、次の通り、滅菌層流フード内で収集後24時間以内に処理された。
羊膜を絨毛膜から機械的に分離し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で十分に洗浄した。次に、それを小片に切り刻み、シェーカーインキュベーター(I24 Incubator Shakerシリーズ、New Brunswick Scientific、米国ニュージャージー州エジソン)内で5mL/g組織のTryple(Gibco、米国マサチューセッツ州ウォルサム)で30分間消化し、37℃、150rpmで羊膜上皮細胞を除去した。次に、未消化の羊膜を取り出し、PBSで洗浄し、さらに、125U/mgのコラゲナーゼI(Worthington、米国ニュージャージー州レイクウッド)を用いて、37℃、150rpmで1.5時間消化して、羊膜間葉細胞(APSC)を単離した。消化物中で移動した細胞を、100μmのセルストレーナー(VWR、米国ペンシルベニア州ラドノール)に通し、500xgで8分間遠心分離することにより収集した。
ホウォートンゼリー(WPSC)を、以下のように臍帯から抽出し:臍帯を長さ約1.5cmの小片に切断し、次に、縦方向に切開してホウォートンゼリーを露出させた。動脈及び静脈を除去し、残りの組織を小片に切り刻み、125U/mgのコラゲナーゼIを用いて、37℃、150rpmで2.5時間または全ての組織が消化されるまで消化した。消化物を100μmのセルストレーナーに通し、500xgで8分間遠心分離した。
胎盤本体を、PBSで十分に洗浄し、小片に切り刻み、125U/mgのコラゲナーゼIを用いて、37℃、150rpmで1.5時間消化して、胎盤本体間質細胞(PPSC)を単離した。消化物を100μmのセルストレーナーに通し、500xgで10分間遠心分離して、PPSCを収集した。
新たに単離された周産期間質細胞(PSC)を、1%のAnti-Anti(Gibco)及び5%の熱不活化FBS(Gibco)が補充されたMEM-アルファ(Gibco、米国マサチューセッツ州ウォルサム)中、標準的な組織培養条件(加湿、37℃、及び5%のCO)で培養した。細胞培地を、1日おきに交換し、細胞が70~80%のコンフルエンシーに達した時に、それを継代培養した。図1Cに示されるように、全ての周産期間質細胞由来の単離細胞は、培養された時に、スピンドル様モルホロジーを呈した。
PSCを、フローサイトメトリーで特性評価して、間葉系間質細胞関連マーカー(CD105、CD90、CD73、CD11b、HLADR、及びCD45)ならびに他の免疫関連マーカー(CD273、CD210、CD178、CD119、CD85d、及びCD40)の発現を評価した。
PSCをランニング緩衝液(Miltenyl BiotecInc.、米国カリフォルニア州オーバーン)で洗浄し、350xgで5分間遠心分離した(Eppendorf、米国ニューヨーク州ウェストベリー)。細胞を、ブロッキング溶液(Blockaid、Thermo、米国テキサス州オースティン)中、4℃で15分間インキュベートした。PSC試料(1×10細胞/100μl)を、以下の抗体と共にインキュベートした:CD85d-ILT4-PE、HLA-DR-TU36-PE、CD45-HI30-Brilliant Violet、CD73-AD2-PE(StemCell Technologies、カナダ・ブリティッシュコロンビア州バンクーバー)、CD90-5E10-PE(Molecular Probes、オレゴン州ユージーン)、CD105-43A3-PE、CD273-B7DC-PE、CD119-IFNgRa-PE、CD40-5C3-FITC、CD11b-M1/70-FITC、及びCD178-NOK-1-PE(Biolegend、米国カリフォルニア州サンディエゴ)、HLAG9-MEM-G/11-FITC(Invitrogen、米国テキサス州オースティン)。インキュベーションの完了時、細胞をランニング緩衝液で2回洗浄し、350×gで遠心分離し、次に、300μMのDAPI(Biolegend)を含有するランニング緩衝液100μlに再懸濁させ、暗所、4℃で、15分間インキュベートした。製造者の使用説明書に従い、全血試料を遠心分離で処理し、赤血球(RBC)をACK緩衝液で溶解した。製造者の使用説明書に従って、最終的な単一細胞懸濁液を、染色緩衝液(PBS pH7.4、2.5%のFBS、0.09%のNaN3)中、2x10細胞/mLで調製し、96ウェルプレートに添加し、100μLの再構成Live/Dead Aqua(Life Technologies)を用いて、4℃で30分間染色した。150μLの染色緩衝液で2回洗浄した後、免疫染色の前に、容量100μLのTruStain Fc(Biolegend)を使用して、Fc受容体を氷上で5~10分間ブロックした。抗体を用いる、細胞を4℃で30分間染色し、次に、150μLの染色緩衝液で2回洗浄し、分析のために100μLの染色緩衝液に再懸濁した。必要と思われる場合に、アイソタイプ対照抗体を、陰性染色対照として使用した。全てのデータを、FortessaLSR(BD)で収集し、FlowJoソフトウェア(Tree Star,Inc.)で分析した。細胞集団を、プロトコールに従って定義し、ゲーティング方策を、シングレットでの最初のゲーティング(FSC-H対FSCA)により決定し、次に、生細胞を、Live/Dead Aqua生存率染色に基づいて決定した。ヒトCD3+(CD3 PE HIT3a、Biolegend)細胞の割合を、親細胞ゲーティングに従って決定した。Cytoflexフローサイトメーター(Beckman Coulter、米国テキサス州アービング)を使用して、分析を実施した。図1Bに示されるように、PSCは、そのような細胞を同定するために使用される他の示唆された免疫関連マーカーに加えて、通常、間葉系間質細胞(MSC)で見出される表面マーカーを有する。
本明細書で単離された周産期間質細胞(PSC)は、ISCT基準に基づく間葉系間質細胞(MSC)と同様の特徴を有しており、これは、標準的な培養条件下で可塑性接着性、CD105+、CD73+、CD90+、CD11b-、及びCD45-HLADRの発現である。しかし、PSCの効果がそれらの分化能力(幹細胞性)に基づいていることが推測されないので、PSCが三系統(軟骨細胞、骨細胞、及び脂肪細胞)に分化する能力を評価しなかった。従って、PSCは、MSCとは呼ばれなかった。さらに、そのような細胞をさらに同定するために、他のいくつかの免疫関連マーカーを試験した。全てのPSCは、CD273+(PD-L2)、CD210+(IL-10受容体)については陽性(>70%)であり、CD178-(FasL)、CD119-(IFNg受容体)、CD85d-(ILT4)、及びCD40については陰性(<5%)であった。これらの追加の免疫調節マーカーは、そのような細胞を同定する特性評価パネルを拡張するために使用することができる。
実施例2
移植片対宿主病に対する周産期間質細胞注入の効果の評価
移植片対宿主病に対する周産期間質細胞注入の効果を、GVHDの異種マウスモデルで評価した。
非肥満糖尿病/重度複合免疫不全IL-2受容体ガンマヌル(NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ、NSG(登録商標))マウスをJackson Laboratories(米国メイン州バーハーバー)から購入した。マウスを、チャールズリバー動物管理施設に収容し、病原体が存在しない条件下で餌及び水が利用できるようにした。マウスを、制御された室温及び湿度で、12:12時間の明暗サイクルにさらした。チャールズリバー施設内動物管理使用委員会の承認を得て、全ての動物実験を実施した。
異種GVHD NSGを雌NSGマウスで作製し、尾静脈注射により3×10個のヒトPBMCを静脈内(IV)移植し、それぞれ、10匹ずつの5群に分けた。陽性対照(PBMC)群は、GvHDの発症を可能にする処置は受けなかった。陰性対照(CsA)群を、GvHDの症状を抑制するために、1日目から研究終了まで(qdから終了まで)シクロスポリンAを15mg/kgで1日1回腹腔内(IP)投与した。5日目に、3つの処置マウス群に、尾静脈内注射で送達される350,000個の細胞の単回用量としてPSC注入を行った(図1A)。細胞を凍結保存から回収し、注射前に48時間インキュベーター(加湿、37℃及び5%のCO2)内で回復させた。使用された全ての細胞は、P2及びP3間にあった。処置群を、以下のように指定した:羊膜周産期間質細胞(APSC)、ホウォートンゼリー周産期間質細胞(WPSC)、及び胎盤固有間質細胞(PPSC)。
動物の生存を毎日監視し、体重及びGvHDスコアリングを週に3回評価した。臨床GVHD指数を、5つのパラメーター:体重減少、活動性、姿勢、毛皮の質感、及び皮膚の完全性に基づいてスコア化した(の0~2のスケールで、2が最も重篤である)(表1)。動物を安楽死させ、次に、体重が30%を超える体重減少、または25%を超える2回連続した体重減少に達した。各群の5匹の動物を40日目に全血中のヒトCD3+の発現について分析した(下顎血から0.1mLを収集した)。実験を55日目まで実施した。
Figure 2024509124000002
図2Aに示されるように、ヒトPBMCを、NSGマウスにうまく移植し、これを、40日目のマウス血液試料由来のヒト特異的CD3+細胞のフローサイトメトリーによる検出で確認した。陰性対照(シクロスポリンA)条件は、陽性対照(PBMC)及び実験条件と比較して、hCD3+が有意に減少した唯一の試料であり;PBMC及び実験条件間に差異は観察されなかった。図2Bに示されるように、GvHDは、移植マウスで発生し、これを、疾患の進行に特徴的な体重減少で検出した。PBMCと比較して、陰性対照及びPPSCのみが、体重変化率(%)及び総体重の曲線下面積(AUC)の両方において有意差を示した(図2C~D)。
ベースラインへの戻り(日数)は、GvHDの進行速度を計算するために、体重が変化率0(%)(0日目の体重)に戻った日として、群毎の個々の動物に注釈を付け、グラフ化した。このベースライン数値への戻り(図3A)に加えて、表1に記載のスコアリングシステムを使用して、GvHDの進行を記録し、動物毎のAUCをグラフ化した(図3B)。GvHDの進行及び進行速度は、シクロスポリンA及びPPSC群でのみ有意に遅延した。
確立された組織病理学である、肺(Ashcroft)及び肝臓(Ishak)の線維化を定量的に記録するマッソントリクローム染色スライドを使用して、GVHDの発症も評価した。終点に達した時に、肝臓及び肺(膨張)試料を、各群の動物から収集した。全ての臓器を、ホルマリンで24時間保存し、70%のエタノールに移し、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ブロック、H&E染色スライド、及び特殊な染色(マッソントリクローム及びヒトCD45+染色)に処理するために、Histowiz(米国ニューヨーク州ブルックリン)に室温で発送した。Histowizと契約した認定病理学者(盲検)は、肝臓(Ishak)及び肺(Ashcroft)の線維症の組織病理学スコアを提供し、ヒトCD45+染色細胞をデジタルで定量した。
ヒトCD45+細胞浸潤を、肺(図4)及び肝臓(図5)組織の組織学的試料で検出した。画像解析を使用して、ヒトCD45+染色細胞の定量化(割合)を計算した。ヒトCD45+細胞の大部分は、血管内腔表面の周囲に位置しており、これは、血管系からの浸潤細胞で通常見られるパターンである。PBMCと比較して、PPSC及び陰性対照(CsA)のみは、組織への浸潤ヒトCD45+細胞の有意な減少を示し、これは、上記の観察(GvHDスコア及び体重減少)をサポートする。
マッソントリクロームで染色されたマウスの肺(図6)及び肝臓(図7)の組織切片(コラーゲン沈着が青色に染色)は、PPSCが、PBMC群と比較して肺及び肝臓組織の両方の線維症スコアを有意に低減させた唯一の処置群であったことが判明した。これは、肺及び肝臓の病理学的線維症スコアである、それぞれ、Ashcroft及びIshakをサポートする。
55日間実施した生存分析は、陰性対照(シクロスポリンA)及びPPSCのみがPBMCと比較して有意に異なることを示した(図8)。動物のほとんどは、重度の体重減少(>30%)で死亡した。異なる処置群の中で、WPSCは、群内で最も高い体重変動を示した群であった(データは示されず)。
ヒト化モデルを使用して、GvHDにおける細胞治療の効果を評価すると、従来の客観的な測定値(体重減少、GVHDスコアリング、線維症スコアリングなど)が提供された。さらに、マウス組織で簡単に検出することができるヒト浸潤細胞を簡単に定量する機会も提供され、これは、将来的にはより優れた機序の慢性拒絶反応研究を提供し得る。PPSCによる処置は、肺及び肝臓への浸潤ヒトCD45+細胞が大幅に減少したことが示されたが、循環ヒトCD3+の割合(図2A)は、他の処置群と異ならなかった。これは、PPSCがヒトCD45+細胞の遊走活性または走化性活性を変化させることが可能であることを示唆する。あるいは、PPSCが内皮細胞に影響を及ぼし、活性化されたヒトCD45+細胞の遊走を妨げる能力を有し得る可能性もある。
PPSCの生存率は、PBMC及び他の実験群と比較して大きく異なったが、シクロスポリンAと比較して45日目に体重が減少したので、GVHDに対する恒久的な解決策をもたらさなかった。これは、1回の注射の制限された効果によるものであり得、おそらく、疾患の経過中に、複数回注射を投与した場合に、治療効果を維持することができる。興味深いことに、シクロスポリンA群は、薬剤に応答せず、GVHDで死亡した1匹の動物を有する。
全ての処置は、忍容性が良好であったが、全てのPSCに、同じ治療効果があるとは限らなかった。PPSC細胞療法は、GVHDスコア、体重減少、臓器線維化、及びヒトCD45+浸潤のような様々な結果測定に基づいて、GVHDに対する有効性の可能性を示した。
実施例3
PSCの分離及び特性評価
ホウォートンゼリー(WJ)MSCは、男児を出産した母親に由来し、予想どおりY染色体検査で陽性であった。33歳の男性の男性由来脂肪由来MSC(ASC)は、Lonza(Lonza Bioscience、メリーランド州ウォーカーズビル)から購入した。製造者の注意書きに従い、細胞をLonza培地で増殖させ、対照として使用した。
WJ細胞を臍帯から単離し、次に、小片に切断した。試験片を、付着を可能にする最小限の培地を含むいくつかのT-175フラスコに入れた。フラスコを、5%のCOを含む37℃のインキュベーターに入れた。培地は、α-MEM中の10%のウシ胎児血清(FBS)及び1%のペニシリン/ストレプトマイシンで構成されていた。最初のプレーティングから3日後、少量の培地を、フラスコに添加して、WJピースがしっかりと取り付けられていることを確認した。続いて、フラスコが90%のコンフルエンシーに達するまで、3~4日毎に、細胞に新鮮な培地を補充した。コンフルエントになった時点で、細胞を、リン酸緩衝食塩水(PBS)で1回すすぎ、次に、トリプシンと共に37℃で7分間インキュベートした。トリプシンを培地で中和し、細胞層を、200xgで10分間遠心分離した。細胞を計数し、1×10個の細胞を、各T-175フラスコに播種した。新しいフラスコ中の細胞を、継代1として表記した。プロセスを繰り返して、継代3に達した。継代3の細胞がコンフルエントに達した時、細胞を回収し、1.25×10細胞/mLの凍結保存培地で凍結保存した。凍結保存培地は、Hespan中の5%のジメチルスルホキシド(DMSO)を含む10%のFBSで構成されていた。
絨毛膜(CSC)及び絨毛膜絨毛(CVC)由来のMSCを、母親の同意後に、アラバマ大学の協力的ヒト組織ネットワークの倫理委員会のガイドライン(IRBプロトコール#940831016)に従って、選択的帝王切開により収集された健康な健常な妊娠末期胎盤から単離した。ヒト胎盤組織を、次のように、収集後24時間以内に滅菌層流フード内で処理した。絨毛膜を羊膜から機械的に分離し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で十分に洗浄した。次に、絨毛膜を、小片に切り刻み、シェーカーインキュベーター(I24 Incubator Shakerシリーズ、New Brunswick Scientific、米国ニュージャージー州エジソン)内で、125U/mgのコラゲナーゼI(Worthington、米国ニュージャージー州レイクウッド)を用いて、150rpm、37℃で1.5時間消化し、絨毛膜間質細胞(CSC)を単離した。消化物中で移動した細胞を、100μmのセルストレーナー(VWR、米国ペンシルベニア州ラドノール)に通し、500xgで8分間遠心分離することにより収集した。最後に、胎盤固有の組織を慎重に除去して、中間絨毛及び終末絨毛を露出させ、中間絨毛の基部で切開し、PBSで完全に洗浄し、小片に切り刻み、125U/mgのコラゲナーゼIを用いて、150rpm、37℃で、1.5時間消化して、絨毛膜絨毛間質細胞(VSC)を分離した。消化物を、100μmのセルストレーナーに通し、500×gで8分間遠心分離して、移動した周産期間質細胞(PSC)を収集した。
男性新生児の誕生後に単離されたWJ由来のMSCの胎児起源を確認するために、X/Y染色体分析を実施した。継代2で、細胞を分析した。PCR媒介増幅及び後続のショートタンデムリピート(STR)のサイズ分析で、全臍帯MSCをアッセイして、細胞または組織の母体及び/または胎児の細胞組成を決定した。ゲノムDNAを、培養細胞または組織から抽出した。X染色体及びY染色体の偽常染色体領域上の合計15個の常染色体STR及びアメロゲニンを標的とする多重PCR媒介増幅反応に、このDNAを使用した。PCR増幅後、蛍光標識されたPCR産物を、ABI Genetic Analyzerのキャピラリー電気泳動で分離した。GeneMapperソフトウェア(ABI)を使用して、各STR遺伝子座のリピート数及び各リピートの相対存在量を計算した。次に、このデータを使用して、母体STRプロファイル(TD19-66)を使用して、試料中の母体細胞の有無を判定した。このアッセイでは、胎児細胞または母体細胞のわずか2%しか検出することができなかった。
全ての供給源由来のMSCを、蛍光標識抗体:パシフィックブルー抗CD90.2、パシフィックブルー抗CD105、FITC抗CD29、PE、FITC抗CD79α、APC-Cy7抗CD45、PE抗-CD14、またはPE抗CD11、のうちの1つと共にインキュベートした。細胞を、フローアシストセルソーティング(FACS)Canto(商標)II(BD Biosciences;カルフォルニア州サンノゼ)で分析した。アイソタイプ対照を、陰性対照として使用した。FACS分析により、単離MSCは、CD90.2、CD105、CD29、Sca-1の陽性発現、及びCD79α、CD45、CD14の欠如、及びCD11の発現を含む、間葉系マーカーのよく特徴付けられた発現パターンを示した(表2)。
Figure 2024509124000003
実施例4
線維症の発症に対する周産期間質細胞注入の安全性及び有効性の評価
線維症の進行に対するWJ及び全臍帯MSCの効果を試験するために、ブレオマイシン注入後1日目に、細胞の尾静脈注射を実施した。
雄C57BL/6マウスを、Jackson Laboratories(メイン州バーハーバー)から入手した。22月齢の雄マウスを、全ての実験に使用した(n=6~10/群)。4月齢の雄C57BL/6を、ASCの単離に使用した。動物を、病原体不含の条件下、餌及び水を自由にして収容した。全ての実験及び手順は、米国実験動物管理認定協会により認定された施設であるマイアミ大学ミラー医学部(フロリダ州マイアミ)の施設内動物管理使用委員会に承認された。
ケタミンを用いる麻酔導入後に、50μlの滅菌生理食塩水に溶解した硫酸ブレオマイシン(Sigma-Aldrich Corp;ミズーリ州セントルイス)を直接気管内点滴注入(2.0U/kg)により投与し、BLM誘発肺損傷を生じさせた。対照マウスは、50μlの滅菌生理食塩水を気管内投与した。開始時、BLM後の7日目、及び死亡時に、マウスを計量した。BLMまたは生理食塩水の投与から21日後に、マウスを死亡させた。ASC及び他の全ての供給源由来のMSC(継代2または3)を、37℃の水浴で解凍し、注射前に、PBSで洗浄して、細胞凍結溶液を除去した。次に、細胞を、70μmのセルストレーナーに通して、細胞塊を除去した。細胞を計数し、注射の直前に、PBSに再懸濁した。BLM損傷の1日後または10日後に、200μlのPBS中の5×10細胞を、マウスに1分間かけて尾静脈注射により投与した。対照マウスは、尾静脈注射により200μlのPBSを受けた。
図9に示されるように、且つ、以前に報告されるように、BLMによる処置後に、生存率は、減少した。BLM群のマウスの50%は、BLM投与の14日後以降生存した。しかし、ASC群のマウスの80%、またはWJ群のマウスの75%が、BLM投与後21日間生存した。全臍帯注射を受けたマウスは、BLM後21日目の生存率が約50%であった。
BLM注入後10日目に確立された線維症からの回復に対する細胞の尾静脈注射の効果を評価するために、Ashcroftスコアリング及びコラーゲン含有量を測定した。
20倍の倍率のマッソントリクローム染色スライドで半定量的Ashcroft法を使用して、実験群を知らない肺病理学者が、肺線維症を評価した。32正方形のグリッド上を体系的に移動することにより、個々のフィールドを評価し;各フィールドを線維症の重症度について評価し、スコアをスケール0(正常な肺)~8(領域の全線維症)に割当て、平均を各スライドについて得た。ヒドロキシプロリン含有量を評価することにより、コラーゲン含有量を評価し、これを、製造者の使用説明書に従って決定した(ヒドロキシプロリンアッセイキット;Sigma-Aldrich、ミズーリ州セントルイス)。要約すると、2mgの肺フラグメントを計量し、100μlの蒸留水中でホモジナイズした。等量の10NのHClを試料に添加後、49℃で3時間乾燥させた。50μlの試料をプレートにロードし、37℃で一晩インキュベートした。ヒドロキシプロリン標準曲線を、標準溶液(0~1μg/ウェル)に従って作製した。SoftMax Proソフトウェア(Molecular Devices Corp;カリフォルニア州サニーベール)を使用して、ヒドロキシプロリン含有量を557nmで読み取った。
非特異的である咳及び呼吸困難などの臨床症状により、ほとんどの肺線維症患者は、診断の遅延を経験し、重大な線維症が発生した後の疾患の後期段階で診断される。この設定では、10日目に、線維症が確立され、MSCの尾静脈注射の効果を評価することができることが判明した。図10A~Hに示されるように、全てのMSCは、Ashcroft(図10G)及びヒドロキシプロリン測定値(図10H)を低減させることが判明した。
実施例5
線維症及び炎症に対する周産期間質細胞注入の効果の評価
線維症及び炎症の分子マーカーに対する細胞注入の効果を評価するために、α-インテグリン及びTNFαの発現レベルをリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)で測定した。RNAを、肺組織から抽出した。TaqMan rRNAコントロール試薬キット(LifeTechnologies)を使用して、内因性コントロールである18SrRNA遺伝子を検出し、試料を18S転写物含有量に対して正規化した。マイクロRNA分析のために、製造者の使用説明書に従って、qScript(商標)マイクロDNA cDNA合成キット(Quanta Biosciences、マサチューセッツ州ビバリー)を使用して、cDNAを生成した。リアルタイムSYBR Green qRT-PCR増幅キット(QuantaBiosciences、マサチューセッツ州ビバリー)を使用する特異的プライマー(IDT、アイオワ州コーラルビル)を使用して、マイクロRNA-199-3pの増幅を実施した。U6発現をマイクロRNA解析の対照として使用し、比較C(T)法を使用して、相対発現を計算した。
表2に示されるように、ASC及びWJは、線維症及び炎症の確立された分子マーカーのmRNA発現を減少させた。処置の投与(BLM後10日目)により、BLM誘発性肺損傷と関連するマーカーが有意に減少した。組織線維症を調節する膜貫通細胞接着分子であるαインテグリンmRNAの発現は、ASC、CVC、及びWJ由来細胞と比較して、BLM処置マウスで増加していることが判明した(表3)。炎症のマーカーであるTNF-αも、CSCを除く全ての処置と比較して、BLM処置マウスで増加した(表3)。
Figure 2024509124000004
さらに、ウェスタンブロットによりAKT活性化を、ザイモグラフィーにより活性型MMP-2を評価することで、BLM投与により活性化される線維化経路に対する細胞注入の効果を測定した。
ウェスタン分析を、均質化された肺組織に対して実施した。pAKT(Cell Signaling、92715)、AKT(Santa Cruz Biotechnology、Sc-1619)、カベオリン1(Cell Signaling、3267S)、及びβ-アクチン(Sigma Aldrich、A5441)の場合。5~25μgのタンパク質溶解物を、10%のポリアクリルアミドゲル上で分画し、ニトロセルロース膜に転写した。ニトロセルロースブロットを化学発光溶液(Denville ScientificInc.、ニュージャージー州メトゥチェン)に曝露させ、続いて、Amersham Hyperfilm ECL(GE Healthcare Limited、英国バッキンガムシャー)に曝露させることにより、免疫反応性バンドを決定した。タンパク質の相対量を決定するために、Image Jバージョン1.48v(National Institutes of Health;メリーランド州ベセスダ)を使用して、濃度測定を評価した。β-アクチン分析を対照として使用した。対象の肺組織内のリン酸化AKT対AKTタンパク質発現の比(21日目の死亡時にウェスタン分析で定量)を示す。気管内BLMで処置された高齢C57Bl/6マウスは、BLM投与の10日後に、同種異系ASCまたはWJの尾静脈注射で処置されたマウスの肺と比較して、pAKT/AKTタンパク質発現の増加を示した。挿入図は、代表的なウェスタンブロット及びβ-アクチンローディング対照を示す。
活性型マトリックスメタロプロテイナーゼ2(MMP-2)を肺組織で測定した。要約すると、試料及び標準(Chemicon)を、10%のザイモグラムゲル(Novex、ThermoFisher Scientific)にロードした。電気泳動後、ゲルを、ゼラチナーゼ溶液中、37℃で24時間インキュベートして、関連組織阻害薬による干渉なしのMMP-2タンパク質分解活性の決定を可能にした。Image Jバージョンv1.48(National Institutes of Health、メリーランド州ベセスダ)を使用するデンシトメトリーで、相対的な活性型MMP-2を測定した。高齢のC56Bl/6マウスの肺における活性型MMP-2の発現は、ブレオマイシン(BLM)肺損傷に応答して21日目の死亡時に増加した。BLM注入後10日目に、同種異系ASCまたはWJで処置すると、BLMのみの対照マウスと比較して、活性型MMP-2が一貫して減少した。挿入図は、代表的なザイモグラムである。
図11A~Cに示されるように、ASC及びWJは、AKT活性化(図11A)及び活性型MMP-2(図11B)を一貫して抑制した。抗線維化として記載されるCav1タンパク質は、ASC処置でのみ増加した。これは、抗線維化効果を示す(図11C)。
肺関連線維化経路において重要であることが示されたmiR-29及びmiR-199に対する細胞注入の効果を評価した。表4に示されるように、BLM処置マウスで、miR-199発現が増加し、ASCの尾静脈注射によってのみ減少したことが判明した。これらのデータは、ASCのみによるCav-1の制御をサポートしていた。
Figure 2024509124000005
実施例6
in vitroでのヒト絨毛膜絨毛細胞の免疫調節効果の評価
ヒト胎盤から絨毛膜絨毛細胞が単離され、3つの異なるが、相補的な動物モデルを使用して、線維症を引き起こす慢性炎症を代表するモデルで治療的な細胞として使用した。
図12A~Bに示されるように、ヒト間質細胞を、CD163+、CD11b-、PanCK+、PDL1+絨毛膜絨毛組織から単離し(図12B)、線維芽細胞様モルホロジーを有し、可塑性接着性であり、CD105+、CD90+、CD73+、CD273+、CD210+、CD178-、CD119-、CD85d-、CD40-、CD11b-、HLADR-、CD45-の表現型を有していた(図12A)。
成熟単球由来樹状細胞(moDC)は、T細胞を活性化することで「炎症」を刺激することができる抗原提示能力を有する自然免疫系の細胞(抗原提示細胞)である。成熟moDCは、CD1a、CD83などの成熟マーカーの上方制御で測定することができる。対照的に、未成熟moDCは、T細胞の増殖を無効にすることにより「炎症」を阻害する寛容原性樹状細胞の特性を有し、未成熟moDCは、CD1a、CD83などの成熟マーカーの下方制御と、CD85d及びCD14など寛容原性マーカーの同時の上方制御により測定することができる。
絨毛間質細胞の免疫調節能力を評価するために、成熟マーカーCD1a及びCD83、CD85d、ならびにCD14の発現を測定した。図13A~Dに示されるように、moDCの成熟マーカーは、絨毛間質細胞の存在下で有意に下方制御され(図13A及び13B)、moDCの寛容原性マーカーは、絨毛間質細胞の存在下で有意に上方制御された(図13C及び13D)ことが判明した。絨毛間質細胞は、免疫系全体の主要な区画の両方を代表する適応免疫細胞及び自然免疫細胞の両方を免疫調節することが可能であった。
さらに、絨毛間質細胞の免疫抑制効果を、CD3/CD28/CD2で同種刺激された末梢血単核細胞(PBMC)の様々な細胞集団で評価した。図14に示されるように、絨毛間質細胞は、CD4+、CD25+、CD8+、CD4+及びCD8+、ならびにCD3+増殖に対して顕著な免疫抑制効果を有することが判明した。
ヒトの免疫寛容に対する絨毛間質細胞の影響も、様々なmoDCと共培養した時、T細胞の増殖の変化を測定することにより評価した。IL10由来moDCは、IL10の存在下で同種異系単球に由来する樹状細胞であり、これは、寛容原性樹状細胞の陽性対照として決定されている。絨毛由来moDC細胞は、絨毛細胞の存在下で同種単球由来の樹状細胞であり;ウェルインサートを使用して細胞を別々の区画で培養し、それ故、絨毛細胞のパラクリン効果を観察した。図15に示されるように、寛容原性IL10-moDCは、(同種抗原CD3/CD2/CD28を使用して得られるT細胞の最大増殖と比較して)完全なT細胞増殖/刺激を促進することができなかった(それらを本質的に寛容原性と定義する)。絨毛細胞は、ヒトT細胞に対して寛容特性を示した寛容原性樹状細胞を促進することにより、ヒトの免疫寛容の有意な促進を誘導することが判明した。
実施例6
in vivoヒト化移植片対宿主病モデルにおけるヒト絨毛膜絨毛細胞の効果の評価
in vivoでのヒト絨毛性絨毛間質細胞の効果を評価するために、ヒト化移植片対宿主病モデル、異種間GVHD NSG(非肥満糖尿病/重篤な複合免疫不全IL-2受容体ガンマヌル(NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ、NSG(登録商標))のマウスに、細胞を投与した。3×10個のヒトPBMCを尾静脈注射により静脈内(IV)移植された雌のNSGマウスにおいて、GVHDを生成した。陽性対照(PBMC)群は、GvHDの発症を可能にする処置は受けなかった。陰性対照(CsA)群を、GvHDの症状を抑制するために、1日目から研究終了まで(qdから終了まで)シクロスポリンAを15mg/kgで1日1回腹腔内(IP)投与した。5日目に、マウスは、尾静脈内注射により送達された350,000個の細胞を単回用量として、MSC細胞注入(絨毛)を受けた。
動物の生存状況を毎日監視し、体重及びGvHDスコアリングを、週に3回評価した。体重減少、活動性、姿勢、毛皮の質感、及び皮膚の完全性の5つのパラメーターに基づいて、0~2のスケール(2が最も重篤である)で、臨床GVHD指数をスコア化した。動物を安楽死させ、次に、体重が30%を超える体重減少、または25%を超える2回連続した体重減少に達した。各群の5匹の動物を40日目に全血中のヒトCD3+の発現について分析した(下顎血から0.1mLを収集した)。実験を55日目まで実施した。図16に示されるように、GvHD疾患の進行を代表する体重減少は、絨毛間質細胞の投与により有意に減少し、疾患進行のスコア(AUC)にも陽性の影響があった。
図17及び18に示されるように、炎症性傷害の原因となる臓器へのヒト免疫(CD45+)細胞の浸潤の大幅な減少に加えて、組織学的評価は、肺線維症及び肝臓線維症で、それぞれAshcroft及びIshakの減少を示した。
実施例6
拡張型心筋症のIN VIVOモデルにおけるヒト絨毛膜絨毛細胞の効果の評価
絨毛間質細胞が心臓線維症を低減する能力を評価するために、拡張型心筋症(DCM)の自己免疫マウスモデルのマウスに、ヒト絨毛膜絨毛細胞を投与した。実験的自己免疫性心筋炎(EAM)は、広く受け入れられている心筋炎の動物モデルであり、ミオシン抗原による感受性マウス株の能動免疫化、またはミオシン反応性Tリンパ球の養子移入により誘発することができる。疾患は、免疫後2~3週間でピークに達し、多くの場合、雄マウスではより重篤になり、心筋へのT細胞及びAPCの広範な浸潤を特徴とする。ミオシン反応性Th17細胞により産生されたIL-17の重要な役割が記載されている。重要なことに、EAMを有するほとんどのマウスは、免疫後約6~8週間までにDCMi(心臓線維症及び心筋リモデリングを特徴とする)に進行し、それにより、ヒトDCMiの典型的な特徴を複製する。
マウスにおけるEAMからDCMiへの進行が、絨毛間質細胞による処置で改善または予防することができるかどうかを評価するために、絨毛間質細胞は、EAMのマウスモデルに投与されている。EAM及びDCMiは、心臓ミオシンペプチド(MyHCα614-629)を用いる免疫化によりWtBALB/cマウスに誘導された。免疫後11日目に、マウスを絨毛間質細胞調製物で処置した。マッソントリクローム染色により決定されたコラーゲン沈着(線維症)を評価することにより、DCMiを42日目にスコア化した。42日目に、脾臓を取り出し、サイトカインELISPOTアッセイのために、単一細胞懸濁液を調製した。IFN-γ産生T細胞の出現頻度及びIL-17産生T細胞の頻度を評価した。
図19に示されるように、EAMによるマウスの絨毛間質細胞処置は、DCMiへの進行の予防に非常に効果的であり、線維症を軽減することができることが判明した。さらに、図20に示されるように、絨毛間質細胞処理により、EAMマウスにおけるT細胞由来の病原性サイトカインの産生が有意に減少した。絨毛MSCが、心臓の線維化スコアを低減可能であり、INFg及びIL17などの炎症誘発性サイトカインを下方制御するので、DCMiの新規処置法であり得、現在の処置パラダイムを変え得ると、結果は示唆している。
実施例7
誘発性肺線維症のin vivoモデルにおけるヒト絨毛膜絨毛細胞の効果の評価
絨毛間質細胞が肺線維症を低減する能力を評価するために、マウスの肺線維症の化学誘発モデルに、絨毛間質細胞を投与した。このモデルでは、雄のC57BL/6マウスを、直接気管内点滴注入により硫酸ブレオマイシン(BLM)で処理し、BLMの21日後に死亡させた。
図21及び図22に示されるように、絨毛間質細胞の注入により、コラーゲンの沈着が大幅に減少し、従って、線維症スコアが大幅に低減した。さらに、絨毛間質細胞は、炎症を減少し、線維症を媒介するインテグリンを下方制御した。
本発明を上記の例を参照して記載されているが、修正及び変形が本発明の精神及び範囲内に包含されると理解されるであろう。従って、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。

Claims (38)

  1. 以下の細胞型:(i)羊膜周産期間質細胞(APSC)、(ii)胎盤固有間質細胞(PPSC)、(iii)ホウォートンゼリー周産期間質細胞(WPSC)、(iv)全絨毛膜由来間質細胞(CSC)、及び(v)絨毛膜絨毛由来間質細胞(CVC)、のうちの少なくとも1つと、薬学的に許容される担体と、を含む、周産期間質細胞(PSC)組成物。
  2. 前記以下の細胞型:(i)APSC、(ii)PPSC、(iii)WPSC、(iv)CSC、及び(v)CVC、のうちの少なくとも2つを含む、請求項1に記載のPSC組成物。
  3. 前記以下の細胞型:(i)APSC、(ii)PPSC、(iii)WPSC、(iv)CSC、及び(v)CVC、のうちの少なくとも3つを含む、請求項1に記載のPSC組成物。
  4. 前記以下の細胞型:(i)APSC、(ii)PPSC、(iii)WPSC、(iv)CSC、及び(v)CVC、のうちの少なくとも4つを含む、請求項1に記載のPSC組成物。
  5. 前記以下の細胞型:(i)APSC、(ii)PPSC、(iii)WPSC、(iv)CSC、及び(v)CVC、のうちの5つ全てを含む、請求項1に記載のPSC組成物。
  6. 前記APSC、PPSC、WPSC、またはCVCのうちの少なくとも1つが、CD105、CD90、CD73、CD273、CD210、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される分子マーカーを発現する、先行請求項のいずれか1項に記載のPSC組成物。
  7. 前記APSC、PPSC、WPSC、またはCVCのうちの少なくとも1つが、CD11b、CD45、HLADR、CD119、CD85b、CD178、CD40、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される分子マーカーを発現しない、先行請求項のいずれか1項に記載のPSC組成物。
  8. 前記細胞が複数のドナーに由来する、先行請求項のいずれか1項に記載のPSC組成物。
  9. 前記細胞が、同じ血液型の複数のドナーに由来する、先行請求項のいずれか1項に記載のPSC組成物。
  10. 前記細胞が、互いに組織適合性があると判定されている複数のドナーに由来する、先行請求項のいずれか1項に記載のPSC組成物。
  11. 前記細胞が、同じものを含むか、または類似のヒト白血球抗原(HLA)対立遺伝子または主要組織適合性複合体(MHC)を含むと判定されている複数のドナーに由来する、先行請求項のいずれか1項に記載のPSC組成物。
  12. 前記細胞が、1人以上のドナーに由来し、それのDNAが、分析されて、前記細胞が、限定されないが、がん、常染色体優性疾患、例えば、家族性高コレステロール血症、I型神経線維腫症、遺伝性球状赤血球症、マルファン症候群、ハンチントン病、常染色体劣性疾患、例えば、鎌状赤血球性貧血、嚢胞性線維症、テイ・サックス病、フェニルケトン尿症、常染色体劣性多発性嚢胞腎、ムコ多糖症、リソソーム酸リパーゼ欠損症、糖原病、例えば、ガラクトース血症、X連鎖性疾患、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、及び血友病を含む遺伝性疾患に関連するものを含む遺伝子変異を含まないことが確認されている、先行請求項のいずれか1項に記載のPSC組成物。
  13. 前記細胞が、任意の病原性ウイルスまたは他の微生物病原体を含まないと判定されている1人以上のドナーに由来する、先行請求項のいずれか1項に記載のPSC組成物。
  14. 対象の慢性炎症及びそれに伴う組織線維症を低減する方法であって、それを必要とする前記対象に、先行請求項のいずれか1項に記載の周産期間質細胞(PSC)組成物を投与することを含む、前記方法。
  15. それを必要とする対象の線維症を処置または予防する方法であって、それを必要とする前記対象に、先行請求項のいずれか1項に記載の周産期間質細胞(PSC)組成物を投与することを含む、前記方法。
  16. 前記対象が、例えば、感染症、化学療法、がん、COPD、環境損傷、例えば、アスベスト、石炭粉塵などにより引き起こされる肺もしくは肺線維症、または疾患、例えば、がんもしくは嚢胞性線維症;例えば、アルコール依存症、脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、B型肝炎、もしくはC型肝炎により引き起こされる肝線維症;例えば、疾患、感染症、心臓発作、もしくは脳卒中により引き起こされる心臓線維症;リンパ節の石灰化線維症を特徴とする縦隔線維症;後腹膜腔の線維症;骨髄線維症;皮膚の線維化:または強皮症もしくは全身性硬化症のうちの1つ以上を含む、請求項14または15に記載の方法。
  17. 線維化組織が、肺、肝臓、心臓、膵臓、血管、大腸、小腸、腎臓、皮膚、間質、または瘢痕組織を含む、請求項14~16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 前記組織内のコラーゲン含有量及び/またはコラーゲン沈着が、前記PSC組成物の前記投与前の前記組織内の前記コラーゲン含有量またはコラーゲン沈着と比較して減少している、請求項14~17のいずれか1項に記載の方法。
  19. 前記組織内の線維化スコアが、前記PSC組成物の前記投与前の前記組織内の前記線維化スコアと比較して減少している、請求項14~18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 前記線維化スコアが、Ashcroftスコア及びIshakスコアからなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
  21. 線維症の分子マーカーが、前記PSC組成物の前記投与前の前記組織内の前記分子マーカーと比較して、前記組織内で減少している、請求項14~20のいずれか1項に記載の方法。
  22. 線維症の前記分子マーカーが、αインテグリン発現、活性型MMP-2、pAKT/AKT発現比、miR199発現、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項21に記載の方法。
  23. 抗線維化分子マーカーが、前記PSC組成物の前記投与前の前記組織内の前記分子マーカーと比較して、前記組織内で増加している、請求項14~22のいずれか1項に記載の方法。
  24. 前記抗線維化分子マーカーが、カベオリン-1発現である、請求項23に記載の方法。
  25. それを必要とする対象の組織または臓器の炎症を低減または予防する方法であって、それを必要とする前記対象に、請求項1~13のいずれか1項に記載の周産期間質細胞(PSC)組成物を投与することを含む、前記方法。
  26. 組織内の炎症の分子マーカーが、前記PSC組成物の前記投与前の前記組織内の前記分子マーカーと比較して減少している、請求項14~25のいずれか1項に記載の方法。
  27. 炎症の前記分子マーカーが、TNFα発現、INFγ発現、IL-17発現、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項26に記載の方法。
  28. 組織内のCD45+T細胞浸潤が、前記PSC組成物の前記投与前と比較して減少している、請求項14~27のいずれか1項に記載の方法。
  29. 対象における免疫寛容を誘導する方法であって、それを必要とする前記対象に、請求項1~13のいずれか1項に記載の周産期間質細胞(PSC)組成物を投与することを含む、前記方法。
  30. 炎症誘発性成熟単球由来樹状細胞(moDC)の増殖が阻害され、寛容原性未熟moDCの増殖が誘導され、炎症誘発性CD4+、CD8+、CD3+、CD4+CD8+(二重陽性)、及び/またはCD25+T細胞の増殖が阻害され、及び/またはCD11b+、CD11c+T細胞の増殖が阻害される、請求項29に記載の方法。
  31. 単球集団における成熟マーカーCD1a及びCD83の発現の減少が、成熟moDC増殖の阻害を示し、単球集団における未成熟マーカーCD85d及びCD14の発現の増加が、未成熟moDC増殖の増加を示す、請求項29または30に記載の方法。
  32. 前記対象が、単一もしくは多臓器線維症、特発性肺線維症(IPF)、間質性肺疾患(ILD)、拡張型心筋症(DCM)、または移植片対宿主病(GVHD)を有する、請求項14~31のいずれか1項に記載の方法。
  33. 対象の単一もしくは多臓器線維症、特発性肺線維症(IPF)、間質性肺疾患(ILD)、拡張型心筋症(DCM)、または移植片対宿主病(GVHD)を処置する方法であって、それ必要とする前記対象に、請求項1~13のいずれか1項に記載の周産期間質細胞(PSC)組成物を投与することを含む、前記方法。
  34. 前記PSC組成物が、絨毛膜絨毛由来間質細胞(CVC)及び薬学的に許容される担体を含む、請求項14~33のいずれか1項に記載の方法。
  35. 前記対象が、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)もしくは敗血症に罹患しているか、またはそれを発症するリスクがある、請求項14~33のいずれか1項に記載の方法。
  36. 前記対象が、急性または慢性のウイルス疾患または感染症、例えば、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、もしくはE型肝炎、インフルエンザ、ヘルペス、HIV、脳炎、デング熱、ヒトメタニューモウイルス(HMPV)、関節炎原性アルファウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、またはコロナウイルス感染症、例えば、SARS-CoV、SARS-CoV-2、MERSに罹患しており、及び/あるいは、急性または慢性の細菌性疾患または感染症、例えば、インフルエンザまたは肺炎球菌感染症、任意に、前記対象を急性呼吸窮迫症候群(ARDS)または敗血症または線維症を発症するリスクにさらすもの、に罹患している、請求項14~35のいずれか1項に記載の方法。
  37. 前記対象が、組織または臓器の炎症、例えば、心膜炎、に罹患している、請求項14~36のいずれか1項に記載の方法。
  38. 前記組織または臓器の炎症が、ワクチン、任意に、mRNAワクチンにより、または移植された組織もしくは臓器もしくは細胞療法に対する拒絶応答により引き起こされる、請求項37に記載の方法。
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