JP2024509023A - 肝線維化および/または肝硬変の予防および治療における使用のための、脂肪組織由来再生細胞(ADRCs)を含む医薬組成物 - Google Patents

肝線維化および/または肝硬変の予防および治療における使用のための、脂肪組織由来再生細胞(ADRCs)を含む医薬組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】肝線維化および/または肝硬変の予防および治療のための新規医薬組成物を開発することを目的とする。【解決手段】脂肪組織由来再生細胞(ADRCs)の投与が、肝硬変状態およびその前段階である肝線維化の状態における対象の、肝機能の維持および改善に有効であることを確認し、これらADRCsを含む、肝線維化および/または肝硬変の予防および治療のための医薬組成物を完成させた。

Description

本発明は、肝線維化および/または肝硬変の予防または治療における使用のための、脂肪組織由来再生細胞(以下、ADRCsともいう)を含む新規医薬組成物に関する。
慢性肝疾患は、その末期に、慢性炎症に伴う肝線維化の進展によって引き起こされる肝硬変、およびそれに伴う肝不全を含み、さらに肝癌の発症を招く(Amico,G.D. et al., Natural history and prognostic indicators of survival in cirrhosis: A systematic review of 118 studies. 44, 217-231 (2006))。
慢性肝疾患がウイルス肝炎の場合、その原因であるウイルスの完全駆除が治療の最大の目標となる。しかしながら、現在、インターフェロン、核酸アナログ製剤、または直接作用型抗ウイルス薬を使用する現在最も効果的な抗ウイルス療法によってさえも、全症例に肝炎ウイルスの完全駆除を果たすことは不可能である。一方、非アルコール性脂肪性肝炎の原因については依然として不詳であり、有効な治療法は未だ確立されていない。
慢性肝疾患が進行すると肝硬変状態に移行し、さらに進行して救命に肝移植を要する肝不全状態に陥るか、あるいは肝癌を合併する場合もある。
肝移植はドナー不足が深刻である。特に、生体肝移植は、ドナーへの侵襲が問題となっている。さらに、生体肝移植は、高額な医療費を要する。肝移植適応例が増大するにつれ、その医療経済的負荷も大きな問題となっている。
肝硬変状態において高頻度に発生する肝癌については、その根治的な治療を妨げる主たる原因の1つに、肝予備能の低下がある。言い換えれば、肝予備能の改善が得られれば、肝癌患者でも外科的切除またはラジオ波焼灼術による根治的治療が適用可能となり、予後の改善が期待される。
こうした背景より、肝硬変状態およびその前段階である肝線維化の状態において、さらなる肝機能の悪化を阻止し、終末期状態への進展をできる限り遅延させる、新たな治療法の開発が望まれる。
一方、体性幹細胞である間葉系幹細胞(MSCs)は、脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞、神経細胞および肝細胞等に分化する多分化能があることが知られており、間葉系幹細胞抗原を発現する細胞を多く含む脂肪組織由来幹細胞(ADSCs)が、肝硬変の病態生理学的基盤プロセスである持続性炎症を抑制し、障害された肝組織を再生、修復することにより肝機能を回復させることが報告されている(Seki A, Sakai Y, Komura T, et al., Adipose tissue-derived stem cells as a regenerative therapy for a mouse steatohepatitis-induced cirrhosis model. Hepatology. 2013; 58: 1133-1142)。
さらに、特開2018-145096号公報では、マウスの尾静脈に投与された脂肪組織由来間質細胞集団が肝組織障害部位に到達することが報告され、かつ、肝組織の修復に関与していることが示唆されている。しかしながら、特開2018-145096号公報では、急性の免疫性肝障害を引き起こす一般的に使用される確立されたモデルであるコンカナバリンAモデル(実施例2)に基づくデータを提供しているに過ぎない。コンカナバリンA(ConA)モデルは、繊維化および肝硬変を導く肝実質の進行性の破壊および再生を伴う慢性肝疾患を反映していない。さらに、Heymannらは、ConAおよび繰り返しの適用は、疾患の除去に成功した後にマウスがConA肝炎症に対する防御免疫寛容を発達させるため、慢性損傷のモデルとして実行可能ではないと報告している(Heymann et al., The concanavalin A model of acute hepatitis in mice, Laboratory animals 49 (S1) (2015) 12‐20)。
特開2018-145096号公報では、損傷剤としてCoAを投与した1時間後に細胞を投与することも挙げている。これについて、Hyemannらは、前記報告書において、「DNAの断片化およびアポトーシスの形成および血清トランスアミナーゼの増加が、通常、ConA適用の5時間後に観察できる」ことを示しており、したがって、ConA投与の1時間後での細胞の投与が、意味のある損傷が生じる前であったと言える。このように、特開2018-145096号公報のデータは、急性肝障害の治療における有効性の証拠を提供せず、せいぜい急性肝障害の予防を支持するにすぎない。さらに、特開2018-145096号公報のデータは、慢性肝損傷、肝線維症および肝硬変の治療および/または予防に関する証拠を提供していない。
一方で、特開2018-145096号公報に引用された請求項3および実施例は、肝細胞の分化による肝組織の生成による特定の作用機序を論じている。本発明者らは、当該刊行物において慢性肝疾患においてこの作用を実証していないだけでなく、血管新生および抗線維化のような修復機能をブーストすることで、慢性肝疾患を治療し、肝機能を維持または回復させることは本発明とは完全に異なる。
さらに、Sakaiらの他の報告において、脂肪組織由来間質細胞集団が、種々の病因に基づく肝硬変を示す患者に投与されたことが記載されているが、ここでも、慢性肝疾患に基づく肝線維化および/または肝硬変に対するこのような細胞集団の効果を確認するのに十分なデータは依然提供されていない(Sakai Y, Tamura M, Seki A, et al. Phase I clinical study of liver regenerative therapy for cirrhosis by intrahepatic infusion of freshly isolated autologous adipose tissue -derived stromal/stem (regenerative) cell. Regenerative Therapy 6 (2017) 52-64.)。
以上のことから、肝線維化および/または肝硬変によって特徴付けられる慢性肝疾患の有効な治療法の確立が、依然必要とされている。
特開2018-145096号公報
Amico,G.D. et al. Natural history and prognostic indicators of survival in cirrhosis: A systematic review of 118 studies. 44, 217-231 (2006). Seki A, Sakai Y, Komura T, et al. Adipose tissue-derived stem cells as a regenerative therapy for a mouse steatohepatitis-induced cirrhosis model. Hepatology. 2013; 58: 1133-1142. Sakai Y, Tamura M, Seki A, et al. Phase I clinical study of liver regenerative therapy for cirrhosis by intrahepatic infusion of freshly isolated autologous adipose tissue -derived stromal/stem (regenerative) cell. Regenerative Therapy 6 (2017) 52-64.
本発明は、肝線維化および/または肝硬変の予防および治療のための新規医薬組成物を開発することを目的とする。
本発明者は、脂肪組織由来再生細胞(ADRCs)の投与が、肝硬変状態における肝機能の維持および改善に有効であることを確認し、これらADRCsを含む、肝線維化および/または肝硬変の予防および治療における使用のための医薬組成物を完成させた。
一態様において、本発明は、ADRCsを含む、肝線維化および/または肝硬変の予防および治療における使用のための医薬組成物に関する。
他の態様において、本発明は、ADRCsの治療有効量を対象に投与することを含む、肝線維化および/または肝硬変の予防または治療のための方法に関し、ここで、治療有効量は、肝機能の検出可能な改善または維持を生じるために十分な量である。
特定の実施形態において、本発明のADRCsは、脂肪組織由来幹細胞(ADSCs)、内皮細胞(血管およびリンパ内皮細胞を含む)、内皮前駆細胞、マクロファージ、線維芽細胞、周皮細胞、平滑筋細胞、前脂肪細胞、ケラチノサイト、単能性または多能性前駆細胞および先駆細胞(およびそれらの子孫)並びにリンパ球を含む脂肪組織由来の再生細胞の1つ以上のタイプを含む、任意の不均一または均一な細胞集団であってよい。
より具体的な実施形態において、本発明のADRCsは、全細胞成分の少なくとも0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、50%、またはそれ以上のパーセンテージでADSCsを含んでいてもよい。このパーセンテージは、脂肪由来細胞集団中に見られる有核細胞の総数に基づく。
特定の実施形態において、本発明のADRCsは、脂肪組織から単離され、次いで、対象への投与前に培養することなく直接使用されうる。より具体的な実施形態において、本発明のADRCsは培養されていない細胞である。
他の特定の実施形態において、本発明のADRCsは、凍結保存された細胞を含む。特定の実施形態において、本発明のADRCsの少なくとも一部は、当業者に公知の方法を使用することにより、その後の使用のために凍結保存することができる。
本発明のADRCsは、同一または異なる動物種の脂肪組織から採取された細胞であってもよい。特定の実施形態において、本発明のADRCsは、患者自身の脂肪組織から採取された細胞であってよく、好ましい実施形態では、免疫拒絶を回避するための自己の皮下脂肪組織由来の再生細胞を含む。
特定の実施形態において、本発明のADRCsを含む細胞集団の特徴付けは、当該技術分野において一般に使用される手段を使用して実施してよく、例えば、細胞マーカーおよび/または遺伝子マーカーを種々に組み合わせることによって実施してよい。
特定の実施形態において、本発明のADRCsは、細胞表面マーカーCD45陽性細胞を含む。
いくつかの実施形態において、本発明のADRCsは、CD14および/またはCD11bである。
特定の実施形態において、本発明のADRCsは、CD34、CD44、CD45、CD90およびCD105からなる群から選択される細胞表面マーカーの発現により同定されうる。
ある実施形態において、本発明のADRCsは、全身的に、例えば、静脈内もしくは動脈内にまたはリンパ系を介して投与されるように処方されてよい。他のある実施形態において、本発明のADRCsを含む医薬組成物は、局所的に、例えば、局部的に、または局所注射によって投与されるように処方されてよい。
いくつかの実施形態において、肝線維化および/または肝硬変の予防または治療のための方法であって、予防または治療を必要とする対象を選択し、同定し、または分類することをさらに含む方法は、医師による臨床もしくは診断評価によって行われる。さらなる実施形態において、前記方法は、画像所見または組織学による診断を含む。
いくつかの実施形態において、前記対象は、非アルコール性脂肪性肝炎による、あるいは脂肪性肝疾患を基盤とする肝線維化および/または肝硬変を有する患者であってよい。より具体的な実施形態において、前記疾患を有する患者は、肥満、内臓脂肪、メタボリックシンドロームおよび糖尿病からなる群から選択される、アルコール摂取量、脂肪肝の原因となる可能性のある状態または合併症を含む特定の基準の1つ以上を満たしうる。
特定の実施形態において、本発明のADRCsを含む医薬組成物は、例えば、動脈内、静脈内、門脈内、皮内、皮下、筋肉内または腹腔内注射の形態で投与することができるが、投与方法はこれらに限定されない。
より具体的な実施形態において、動脈内、静脈内または門脈内注射による投与が好ましく、投与されたADRCsが血液循環を介して治療される臓器である肝臓に到達するため、肝動脈投与が特に好ましく実施される。
ある実施形態において、ADRCsは、等張電解質輸液中で少なくとも1×10細胞/mL、少なくとも1×10細胞/mL、少なくとも1×10細胞/mL、少なくとも1×10細胞/mL、少なくとも1×10細胞/mL、少なくとも1×10細胞/mL、少なくとも1×10細胞/mL、少なくとも1×10細胞/L、または少なくとも1×1010細胞/mLの細胞密度で処方および投与されうる。より具体的な実施形態において、等張電解質輸液、例えば乳酸リンゲル液中に、1×10~1×10細胞/mLであることが好ましく、最も好ましい実施形態は、1×10細胞/mLの細胞密度である。さらなる実施形態において、ADRCsを含む注入溶液は、3.3×10細胞/kg×BW以上で投与されてもよい。
ある実施形態において、本発明の医薬組成物は、肝線維化および/または肝硬変の予防または治療において、血清アルブミン濃度における改善および/またはプロトロンビン活性における改善を示す。ここで、血清アルブミン濃度およびプロトロンビン活性は肝機能評価する指標として、一般的に知られているものである。特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、動脈内、静脈内または門脈内注射による投与に適したADRCsの単一細胞懸濁液である。ここで、細胞塊を除去し、上記投与に適したADRCsの単一細胞懸濁液を調製するための適切な酵素試薬を使用することができる。前記酵素試薬の例としては、Intravase(登録商標) 840(Cytori Therapeutics社製)を挙げることができる。
ある実施形態において、本発明の医薬組成物は、患者への静脈内または動脈内の細胞送達の直前に、フィルター膜スクリーンを使用して、細胞凝集体およびデブリの除去をおこなうことにより、血管閉塞およびその後の合併症の危険性を軽減した、ADRCsの単一細胞懸濁液であってもよい。前記目的のために、適切な孔径を有する任意のフィルター膜スクリーン、例えば、平均細孔径43ミクロンを有するマクロシリンジフィルター(Cytori Therapeutics社製)を使用してよい。
本発明は、具体的には以下の態様によって示すことができる;
[1]脂肪組織由来再生細胞(ADRCs)を含む、肝線維化および/または肝硬変の予防または治療における使用のための医薬組成物。
[2]ADRCsが、脂肪組織由来幹細胞(ADSCs)、内皮細胞、内皮前駆細胞、マクロファージ、線維芽細胞、周皮細胞、平滑筋細胞、前脂肪細胞、ケラチノサイト、単能性または多能性前駆細胞および先駆細胞およびそれらの子孫並びにリンパ球から選択される脂肪組織由来再生細胞の1つ以上のタイプを含む任意の不均一または均一な細胞集団である、[1]に記載の医薬組成物。
[3]ADRCsが、ADRCsの全ての細胞成分の少なくとも0.1%のパーセンテージでADSCsを含む、[1]または[2]に記載の医薬組成物。
[4]ADRCsが、培養されていない細胞である、[1]から[3]までのいずれか1つに記載の医薬組成物。
[5]ADRCsが、凍結保存された細胞である、[1]から[4]までのいずれか1つに記載の医薬組成物。
[6]ADRCsが、自家皮下脂肪組織由来再生細胞である、[1]から[5]までのいずれか1つに記載の医薬組成物。
[7]ADRCsが、細胞表面マーカーCD45に対して陽性である、[1]から[6]までのいずれか1つに記載の医薬組成物。
[8]肝線維化および/または肝硬変が、慢性肝損傷によって生じる、[1]から[7]までのいずれか1つに記載の医薬組成物。
[9]肝線維化および/または肝硬変が、非アルコール性脂肪性肝炎によって生じる、[1]から[8]までのいずれか1つに記載の医薬組成物。
[10]画像所見または組織学により非アルコール性脂肪性肝炎によって生じる肝硬変と診断された患者であって、以下の基準(1)~(3):
(1)アルコール摂取量がエタノール消費量で1日あたり20g以下である、
(2)肝障害のその他の公知の原因が特定されていない、および
(3)患者は、肥満、内臓脂肪、メタボリックシンドロームおよび糖尿病からなる群から選択される、脂肪肝の原因となる少なくとも1つの状態または合併症を有している
を満たす患者に適用するための、[9]に記載の医薬組成物。
[11]肝線維化および/または肝硬変が、脂肪性肝疾患を基盤とする肝線維化および/または肝硬変である、[1]から[8]までのいずれか1つに記載の医薬組成物。
[12]画像所見または組織学により脂肪性肝疾患を基盤とする肝硬変と診断された患者であって、以下の基準(4)~(6):
(4)アルコール摂取量がエタノール消費量で1日あたり20g超70g以下である、
(5)肝障害のその他の公知の原因が特定されていない、および
(6)患者は、肥満、内臓脂肪、メタボリックシンドロームおよび糖尿病からなる群から選択される、脂肪肝の原因となる少なくとも1つの状態または合併症を有している
を満たす患者に適用するための、[11]に記載の医薬組成物。
[13]動脈内、静脈内または門脈内注射により投与されるように調製された、[1]から[12]までのいずれか1つに記載の医薬組成物。
[14]細胞密度が1×10~1×10細胞/mLの量で調製される、[1]から[13]までのいずれか1つに記載の医薬組成物。
[15]肝線維化の治療が、血清アルブミン濃度および/またはプロトロンビン活性における改善を含む、[1]から[14]までのいずれか1つに記載の医薬組成物。
[16]ADRCsの単一細胞懸濁液の形で調製される、[1]から[15]までのいずれに1つに記載の医薬組成物。
本発明のADRCsを含む医薬組成物は、肝機能の維持および改善において顕著な効果をもたらし、それによって肝線維化および/または肝硬変の予防および治療、特に、有効な治療方法が確立されていない、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)による肝線維化および/または肝硬変および脂肪性肝障害を基盤とする肝線維化および/または肝硬変の予防および治療に用いることができる。
図1は、血清アルブミン値およびプロトロンビン活性の推移を示す。 図2は、血清アルブミン値の平均値推移と個別推移を示す。 図3は、トロンビン活性の平均値推移と個別推移を示す。 図4は、NAS(脂肪肝)およびNAS(小葉内炎症)を示す。 図5は、NAS(幹細胞のバルーン形成)とMetteoni分類を示す。
定義
本明細書中で使用されるように、用語「約」は、記述された数値に関する場合、記述された数値の±10%以内の値を示す。
本明細書中で使用されるように、用語「由来する」は、特定の対象から単離された、精製されたおよび/または分離された形を意味する。したがって、「脂肪組織由来再生細胞」または「ADRCs」は、脂肪組織から単離された、精製されたおよび/または分離された再生細胞を意味する。同様に、「脂肪組織由来幹細胞」または「ADSCs」は、脂肪組織から単離された、精製されたおよび/または分離された幹細胞を意味する。また、用語「由来する」は、脂肪組織などの組織から直接単離された細胞または初代単離物から培養されたもしくは増殖された細胞から大規模に培養された(例えば、分裂細胞の大多数が3、4、5回以下の細胞倍加を起こす培養条件に置かれた)細胞を包含しない。したがって、本発明における「ADRCs」または「ADSCs」は、脂肪組織マトリックスから分離されたそれらの「天然」型であってよく、大規模に培養された細胞を含まない。
本明細書中で使用されるように、用語「再生細胞」は、それによって治療的、構造的または美容上の利益を提供するための、器官、組織または生理学的単位もしくは系の構造または機能の完全なまたは部分的な再生、修復または置換を引き起こすかまたはそれに寄与する、本明細書に開示された実施形態のシステムおよび方法を用いて得られた任意の異種のまたは同種の細胞を意味する。再生細胞の例は、成体幹細胞(ASCs)、内皮細胞、内皮先駆細胞、内皮前駆細胞、マクロファージ、線維芽細胞、周皮細胞、平滑筋細胞、前脂肪細胞、分化したまたは脱分化した脂肪細胞、角化細胞、単能性および多能性前駆および先駆細胞(およびそれらの子孫)並びにリンパ球を含みうる。
いくつかの本記載内容において、用語「前駆細胞」または「先駆細胞」は、1つまたは複数の特異的な機能を発揮し、限定された自己再生能を有するかまたは自己再生能を有さない、1つまたは複数の細胞タイプに分化する能力を有する単能性、二能性または多能性細胞を意味する。本明細書に開示された前駆細胞のいくつかは、多能性でありうる。
本明細書中で使用されるように、細胞は、特別なマーカーが当該技術分野において一般に使用される技術を使用して検出可能である場合に、そのマーカーに関して「陽性」である。例えば、本発明のADRCsがCD45に関して陽性である場合に、用語「陽性」は、CD45が、バックグラウンドよりも(例えば、アイソタイプ対照または任意のアッセイのための実験上の陰性対照と比較して)大きいレベルで検出できることを意味する。細胞は、マーカーが、該細胞を少なくとも1つの他の細胞タイプから識別するために使用可能である場合または存在するかもしくは該細胞によって発現されるときに細胞を選択もしくは単離するために使用可能である場合にも、該マーカーに関して陽性である。
本明細書中で使用されるように、用語「脂肪組織」は、脂肪細胞および血管細胞を含む複数の細胞型を含有する組織を意味する。脂肪組織は、成体幹細胞(ASCs)並びに内皮前駆および先駆細胞を含む、複数の再生細胞型を含む。脂肪組織は、脂肪を貯蔵する結合組織を含む脂肪を意味しうる。
いくつかの記載内容において、用語「脂肪組織由来細胞」は、成熟脂肪細胞からの活性細胞成分と結合組織を分離するために処理された脂肪組織から抽出された細胞を意味する。分離は、部分的または完全であってよい。すなわち、「脂肪組織由来細胞」は、いくつかの脂肪細胞および結合組織を含有しても含有しなくてもよく、凝集体または部分的に凝集した形(例えば、細胞外マトリックスにより結合された2つ以上の細胞を含む、血管またはリンパ管の断片)で存在するいくつかの細胞を含有しても含有しなくてもよい。本明細書において「脂肪組織由来細胞」は、「脂肪由来細胞」または「ADCs」と呼称されることもある。典型的に、「脂肪組織由来細胞」は、脂肪組織からの細胞を洗浄し、分離することによって得られた細胞のペレットを意味する。該ペレットは、典型的に、細胞が遠心容器の底で凝集するように細胞懸濁液を遠心分離するか、あるいは異なるやり方で細胞を濃縮することによって得られる。
適用疾患
本発明のADRCsを含む医薬組成物は、肝線維化および/または肝硬変の予防および治療に用いられる。
肝硬変は、炎症、肝細胞壊死、再生能力の障害、肝線維化/肝硬変を含む重複する病原性プロセスを共有する種々の慢性肝損傷の結果として生じる。
肝硬変の前段階である肝線維化は、肝細胞の壊死または損傷に対する一般的な応答であり、多種多様な薬剤、例えば、肝臓のホメオスタシスを妨害する任意のプロセス(特に、炎症、毒性損傷、糖尿病、脂肪性肝炎、または肝血流の変化)、および肝臓の感染(ウイルス、細菌、真菌、および寄生虫)によって引き起こされる。
正常な肝臓は、コラーゲン(主にI型、III型、およびIV型)、糖タンパク質を含む非コラーゲンタンパク質(例えば、フィブロネクチン、ラミニン)、およびいくつかのプロテオグリカン(ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸塩)から構成される細胞外マトリックス内に分布する肝細胞および類洞からなる。繊維芽細胞は、通常、門脈管のみで見出され、コラーゲン、大きな糖タンパク質、およびプロテオグリカンを生成できる。他の肝細胞(特に星状細胞、肝細胞、脂肪蓄積細胞、および内皮細胞)も細胞外マトリックス成分を生成できる。Disse空間における類洞内皮の真下に位置する脂肪蓄積細胞は、線維芽細胞の前駆細胞であり、増殖して過剰な細胞外マトリックスを生成することが可能である。コラーゲンの活発な沈着による線維化の発症は、肝細胞損傷、特に壊死、および炎症性細胞の結果である。これらの細胞から放出される正確な因子は知られていないが、1つ以上のサイトカインまたは脂質過酸化の生成物である可能性が高い。クッパー細胞および活性化マクロファージは、炎症性サイトカインを生じる。新たな線維芽細胞は、壊死性肝細胞の周囲に形成し、コラーゲン合成の増加が、瘢痕化を導く。無活動の星状細胞が活性化されて、線維化の増加を導きうる。線維化は、活発な線維形成、および正常なまたは変化したコラーゲンの分解障害から生じる。脂肪貯蔵細胞、クッパー細胞、および内皮細胞は、I型コラーゲン、いくつかのプロテオグリカン、および変性コラーゲンのクリアランスに重要である。これらの細胞の活動の変化は線維化の程度を改変しうる。組織病理学者にとって、線維組織は、既存の線維の受動的な崩壊および凝縮からより明らかになりうる。
したがって、コラーゲンの増加した合成または減少した分解は、以下の肝機能に影響を与える過剰な結合組織の活発な沈着をもたらす:(1)細胞周囲線維化が細胞栄養を損ない、肝細胞萎縮を引き起こす。(2)Disse空間内で、線維組織が類洞の周囲に蓄積し、血液から肝細胞への物質の自由な通過を妨害する。(3)肝細静脈と門脈の周りの線維化が、肝血流を妨害する。肝臓全体の静脈抵抗は、門脈枝から類洞へ、そして最終的に肝静脈へと増加する、3つ全ての経路に含まれうる。
門脈と中心静脈とを結ぶ線維性の帯は、吻合チャネルも促進する:正常な肝細胞を迂回して動脈血は、肝機能をさらに損ない、肝細胞の壊死を強めうる遠心性肝静脈に分流される。これらのプロセスが存在する程度は、肝機能障害の程度を決定する:例えば、先天性肝線維化において、大きな線維性の帯は、主に門脈領域を含むが、通常は肝実質を残す。したがって、先天性肝線維化は、肝細胞機能を維持した門脈圧亢進症として存在する。
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は、過剰なアルコール消費のない場合での肝脂肪の蓄積によって特徴付けられ、かつ肝細胞の少なくとも5%に脂肪症が存在することによって定義される慢性肝疾患である。NAFLDは、予後の異なる組織学的状態を含む不均一な疾患である。非アルコール性脂肪肝(NAFL)は、肝細胞バルーンの形での肝細胞損傷の証拠がない、肝細胞の少なくとも5%に脂肪肝が存在すると定義される:非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、線維化の有無にかかわらず、少なくとも5%の脂肪肝および肝細胞損傷を伴う炎症(例えばバルーン形成)が存在すると定義される。NAFLとNASHとの双方が進行して線維化および肝硬変に進行する可能性があるが、進行の危険性は、NAFLと比較してNASHを有する患者の方がはるかに高く、肝硬変、肝不全、さらには肝癌に進行する可能性が高くなる。
NASHにおいて、遺伝的感受性および貧しい食生活は、インスリン抵抗性および肝脂肪症の発症の素因となる。特に、飽和脂肪酸の脂肪毒性代謝産物は、過剰な酸化ストレスによる細胞の損傷を導くプロセスである脂肪毒性を生じうる。損傷した肝細胞は、トール様受容体を介して炎症誘発性シグナル伝達経路を活性化する内因性関連分子パターンを放出する。クッパー細胞およびインフラマソームの後の活性化は、炎症誘発性、線維形成促進性のサイトカインおよびリガンドの大量放出を促進する。次に、肝星細胞を刺激して、細胞外マトリックスを大量に生成して進行性線維化を導く。クッパー細胞の活性化は、Th17を介した適応免疫応答を誘発する炎症誘発性微小環境を好む。
さらに、慢性的な門脈の炎症性浸潤は、小管反応および肝前駆細胞動員をブーストする。これらの要因の全ては、種々の炎症性細胞の影響に続発する、組織の損傷と修復との間の不均衡を構成する進行性線維化を促進する。
本発明の医薬組成物は、上述のとおり、肝線維化の予防および/または治療にも用いられる。肝線維化は、肝硬変の前段階にも相当することから、肝線維化の発症を抑制または進行を遅らせることが、肝硬変の予防に重要である。
本発明の医薬組成物の適用疾患は、種々の慢性肝疾患、例えばウイルス性B型肝炎、ウイルス性C型肝炎、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、脂肪性肝疾患、自己免疫肝炎または原発性胆管炎に基づく肝硬変を含む。
特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、非アルコール性脂肪性肝炎による肝硬変または脂肪肝疾患を基盤とする肝硬変と診断された患者に投与される。
ある実施形態において、本発明の医薬組成物は、画像所見または組織学により非アルコール性脂肪性肝炎による肝硬変と診断され、かつ、以下の基準(1)~(3):
(1)アルコール摂取量がエタノール消費量で1日あたり20g以下である、
(2)肝障害のその他の公知の原因が特定されていない、および
(3)患者は、肥満、内臓脂肪、メタボリックシンドロームおよび糖尿病からなる群から選択される、脂肪肝の原因となる少なくとも1つの状態または合併症を有している
を満たす患者に投与される。
他のある実施形態において、本発明の医薬組成物は、画像所見または組織学により脂肪性肝疾患を基盤とする肝硬変と診断され、かつ、以下の基準(4)~(6):
(4)アルコール摂取量がエタノール消費量で1日あたり20g超70g以下である、
(5)肝障害のその他の公知の原因が特定されていない、および
(6)患者は、肥満、内臓脂肪、メタボリックシンドロームおよび糖尿病からなる群から選択される、脂肪肝の原因となる少なくとも1つの状態または合併症を有している
を満たす患者に投与される。
特定の実施形態において、上記患者は、上記基準に加えて、治療開始時に以下の基準(7)~(11)の1つ以上をさらに満たすものであってよい:
(7)総ビリルビン値が3.0mg/dL以下である、
(8)血小板数が5.0×10/μl以上である、
(9)プロトロンビン活性が70%以上である、
(10)血清クレアチンレベルが1.5mg/dL以下である、および
(11)血清アルブミン値が4.0g/dL以下である。
ADRCsを含む脂肪組織由来細胞集団の抽出方法
いくつかの実施形態において、本明細書に開示された実施形態において有用な脂肪由来細胞の精錬された、富化された、濃縮された、単離されたまたは精製された集団、例えば、ADRCsの集団を得るために、細胞処理ユニット、勾配沈降、ろ過またはこれらのアプローチの任意の1つまたは複数の組合せを用いて脂肪組織が処理される。一般に、脂肪組織が最初に対象(例えば、哺乳動物、家畜、げっ歯類、ウマ、イヌ、ネコまたはヒト)から採取され、次いで処理されて細胞集団、例えば、ADRCsの集団が得られる。同種間移植のために、当該技術分野において公知の方法、例えば、骨髄ドナーを選択するために使用される方法を用いて適切なドナーが選択されてよい。患者から採取される脂肪組織の体積は、約1ccから約2000ccまで変更可能であり、いくつかの実施形態においては、約3000ccまで変更可能である。採取された組織の体積は、患者ごとに異なり、年齢、体型、凝固プロフィール、血液動態安定性、欠乏または傷害の重症度、併存疾患および医師の選択を含むが、それに限定されない多くの要素に依存する。
脂肪組織は、当業者に公知の任意の方法によって得られてよい。例えば、脂肪組織は、吸引補助された脂肪摘出術、超音波補助された脂肪摘出術または切除による脂肪摘出術によって対象から除去されうる。さらに、該手順は、切除による脂肪摘出術および吸引補助された脂肪摘出術のような手順の組合せを含んでよい。組織またはその何らかの部分が、対象への再移植を目的とする場合、脂肪組織は、細胞成分の生存能を保存し、細菌および/またはウイルスのような感染の可能性のある微生物による組織の汚染の可能性を最小化するやり方で集められるべきである。したがって、組織抽出は、汚染を最小化するために、滅菌または無菌のやり方で実施されるべきである。吸引補助された脂肪摘出は、脂肪組織を患者から除去するために望ましく、というのも、それは、超音波補助された脂肪摘出のような他の技術と関連しうる幹細胞損傷の可能性が最小限の、最小限に侵襲性の組織採取方法を提供するためである。
したがって、脂肪組織は、脂肪由来再生細胞について容易に富化される細胞集団の豊かな供給源を提供する。脂肪組織の採取は、より患者にやさしく、同体積の、例えば、皮膚または非常に大きな体積の扁桃の採取に比べて低い疾病率を示す。
吸引補助された脂肪摘出手順のために、脂肪組織は、患者内に存在する脂肪組織蓄積部位中にまたはその近傍にカニューレを挿入し、続いて、吸引装置中へ脂肪が吸引されることによって採取される。いくつかの実施形態において、小さなカニューレがシリンジに連結され、脂肪組織が手動力を用いて吸引されてよい。シリンジまたは他の同様の装置を使用することは、比較的中程度の量の脂肪組織(例えば、0.1mlから数百mlまでの脂肪組織)を採取するためには望ましいことがある。これらの比較的小さな装置を使用する手順は、局所麻酔のみを必要とする。より大量の(例えば、数百ml超の)脂肪組織は、ドナーおよび採取手順を実施する人の判断で全身麻酔を必要とすることがある。より大きな体積の脂肪組織が採取される場合には、比較的大きなカニューレおよび自動吸引装置が使用されてよい。
切除による脂肪摘出手順は、手順の付随的部分として脂肪組織含有組織(例えば、皮膚)が除去される手順;すなわち、手術の主目的が組織(例えば、肥満外科手術または美容外科手術における皮膚)の除去であり、脂肪組織が主目的の組織と共に除去されるものを含むが、それに限定されない。皮下脂肪組織も、付随する皮膚の除去なしに脂肪組織が皮下空間から切除される、切除による脂肪摘出術によって取り出されてよい。
特定の実施形態において、本発明のADRCsは、局所麻酔薬および止血薬を補なった大量の生理食塩水を含む溶液を脂肪採取部位の皮下層に注入し、そしてそこに脂肪吸引チューブを挿入し、真空下で皮下脂肪を吸引することを含む、チューメセント脂肪吸引法によって皮下脂肪組織から採取することができる。
採取された組織の量は、ドナーの肥満度指数、アクセスできる脂肪組織採取部位の利用可能性、(抗凝固療法のような)付随するおよび事前の薬物療法および状態、並びに該組織が採取される臨床目的を含むが、それに限定されない多くのパラメータに依存しうる。造血幹細胞(レシピエントの血液細胞形成能を再生させるために使用される骨髄または臍帯血由来幹細胞)の移植の経験は、閾値効果により生着が細胞用量依存性であることを示している(Smithら、1995;Barkerら、2001、どちらも参照をもって本明細書に組み込まれる)。したがって、「多ければ多いほど良い」という一般原則が、他のパラメータにより設定された限界値内で適用され、実行可能であれば、採取はできるだけ大量の組織を集めることが可能である。
患者から採取される脂肪組織は、次いで、コラーゲン、脂肪細胞、血液および食塩水を除去し、それによって脂肪組織由来細胞、例えばADRCsを含む脂肪組織由来細胞集団を得るように、さらなる処理のために装置(例えば、細胞処理ユニット、遠心分離またはろ過ユニット)中に集められる。好ましくは、ADRCsを含む脂肪組織由来細胞集団は、混入したコラーゲン、脂肪細胞、血液および塩水を含まない。脂肪組織(脂肪細胞)中の主な混入細胞は、密度が低く、浮上分離法によって容易に除去される。
精錬され、濃縮され、および単離された脂肪組織由来細胞の集団、例えばADRCsの集団を得るための脂肪組織の処理並びにそれに対する改変は、例えば、その全てが参照をもってその全体を明示的に本明細書に組み込まれる、SYSTEMS AND METHODS FOR TREATING PATIENTS WITH PROCESSED LIPOASPIRATE CELLSと題された、2002年12月9日出願の米国特許出願第10/316,127号明細書(米国特許出願公開第2003/0161816号明細書)およびSYSTEMS AND METHODS FOR SEPARATING AND CONCENTRATI NG REGENERATIVE CELLS FROM TISSUEと題された、2004年6月25日出願の米国特許出願第10/877,822号明細書(米国特許出願公開第2005/0084961号明細書);PRESERVATION OF NON EMBRYONIC CELLS FROM NON HEMATOPOIETIC TISSUESと題され、2001年9月14日出願の米国特許出願第60/322,070号明細書に基づく優先権の利益を主張する、2002年9月12日出願の米国特許出願第10/242,094号明細書;SYSTEMS AND METHODS FOR ISOLATING AND USING CILINICALLY SAFE ADIPOSE DERIVED REGENERATIVE CELLSと題された、2004年7月2日出願の米国特許出願第10/884,638号明細書に記載された方法を用いて実施されることが好ましい。上記出願は、閉じた、滅菌流体/組織経路を維持するように構成された系における脂肪由来細胞の処理を開示する。これは、予め組み立てられた、閉じた滅菌容器並びに閉じた経路内の組織および流体要素の移動を可能とする配管の連結された組の使用によって達成可能である。この処理用の組は、試薬の添加、温度および加工のタイミングを制御することができ、こうして、オペレーターが手動でプロセスを管理する必要性を取り除く装置中に挿入される一連の処理用試薬(例えば、食塩水、酵素など)に繋げることができる。好ましい実施形態において、組織抽出から処理およびレシピエントへの配置への手順全体は、手順を受けている患者と同じ施設において、それどころか同じ室内で実施される。
多くの用途のために、活性な細胞集団の調製は、脂肪組織の脂肪を蓄積した成熟脂肪細胞成分の枯渇を必要とする。これは、組織を最初にすすぎ(破裂した脂肪細胞から放出され)、遊離脂質および(組織採取の間に断ち切られた血管から放出された)末梢血成分の存在を低減させ、次いで、脱凝集させて、結合組織マトリックスから無傷の脂肪細胞および他の細胞集団を遊離させる、一連の洗浄および脱凝集ステップによって達成されうる。いくつかの実施形態において、脂肪組織由来細胞、例えばADRCsは、血管内皮細胞(BECs)、BEC前駆細胞(EPCs)および脂肪組織由来幹細胞、脂肪組織由来星状細胞および他の細胞成分と共に提供される。いくつかの実施形態において、脂肪組織由来細胞、例えばADRCsは、凝集体または部分的に凝集した断片の形態、例えば、細胞外マトリックスによって連結された2つ以上の血管細胞を含む。いくつかの実施形態において、かかる凝集体は、大きな凝集体または細胞外マトリックスによって連結された10個超の細胞または100個超の細胞を含む断片を含む。かかる凝集体は、その中で数個の細胞がそれらの元の配向性に近似して相互に連結したままの血管またはリンパ管断片(非限定的な例として、処理前の組織中でそれらを一緒にして結合させる、いくつかのまたは全ての細胞外マトリックスにより連結された、血管内皮細胞および周皮細胞または平滑筋細胞を含む)を含むが、それに限定されない。特別な実施形態において、かかる凝集体は、処理前にそれらが組織中にあったよりも少ない脂肪細胞と接触または結合する、数百個の細胞を含みうる。
すすぎは、任意であるが、好ましいステップであり、ここでは、遊離脂質および単一細胞成分、例えば血液中の成分、を洗い流して無傷の脂肪組織断片を残すために、組織と溶液とを混合する。ある実施形態において、患者から採取された脂肪組織が、等張の食塩水または他の生理学的溶液(複数可)、例えば、Baxter Inc.のPlasmalyte(登録商標)またはAbbott Labs.のNormosol(登録商標)と混合される。無傷の脂肪組織断片が、ろ過、デカンテーション、沈降または遠心分離を含むがそれに限定されない、当該技術分野の当業者に公知の任意の手段によって、遊離脂質および細胞から分離されうる。いくつかの実施形態において、本明細書中で論じられるように、脂肪組織は、組織収集容器内に配置されるフィルターを使用することによって、非脂肪組織から分離される。他の実施形態において、脂肪組織は、材料を分離するためにデカンテーション、沈降および/または遠心分離技術を利用する組織収集容器を使用して、非脂肪組織から分離される。
次いで、機械力(刻む力もしくはせん断力)、超音波もしくは他の物理的エネルギー、レーザー、マイクロ波、コラゲナーゼ、トリプシン、リパーゼ、リベラーゼH1、ヌクレアーゼ、または参照をもってその全体が明示的に本明細書に組み込まれる米国特許第5,952,215号明細書、「Enzyme composition for tissue dissociation」に開示されたBlendzymeファミリーのメンバーのようなタンパク質分解酵素およびペプシンのうちの単一のもしくは組合せのタンパク質分解酵素による酵素消化または機械的および酵素的方法の組合せを含む、任意の慣用技術または方法を用いて、無傷の組織断片が脱凝集させられる。例えば、無傷の組織断片の細胞成分は、その全体が参照をもって明示的に本明細書に組み込まれる、米国特許第5,372,945号明細書に開示された脂肪組織中の微小血管内皮細胞を収集するための方法に類似した、脂肪組織のコラゲナーゼ媒介性解離を用いる方法によって脱凝集させられうる。使用されてよいコラゲナーゼを用いるさらなる方法は、例えば、どちらもそれらの全体が参照をもって明示的に本明細書に組み込まれる米国特許第5,830,741号明細書、「Composition for tissue dissociation containing collagenase I and II from clostridium histolyticum and a neutral protease」およびWilliamsら、1995, "Collagenase lot selection and purification for adipose tissue digestion" Cell Transplant 4(3);281-9に開示されている。同様に、Twenty manら(その全体が参照することによって明示的に本明細書に組み込まれるTwentymanら、1980, "Use of bacterial neutral protease for disaggregation of mouse tumors and multicellular tumor spheroids" Cancer Lett. 9(3):225-8)に記載の中性プロテアーゼがコラゲナーゼの代わりに使用されることができる。さらに、本明細書に記載の方法は、酵素の組合せ、例えばコラゲナーゼおよびトリプシンの組合せ、または酵素、例えばトリプシンと機械的解離との組合せを使用してもよい。
次いで、成熟脂肪細胞の数を低減させることによって、脂肪組織由来細胞、例えばADRCsが脱凝集させた組織断片から得られうる。次いで、脱凝集させた脂肪組織およびその中で脂肪組織が脱凝集させた液体の懸濁液が、他の容器、例えば細胞収集容器に移される。該懸濁液は、懸濁液を組織収集容器から引き出し、それを細胞収集容器へ押し進める、ポンプ、例えばペリスタリックポンプを使用することによって、1つ以上の導管を通って、細胞収集容器に流れ込みうる。他の実施形態は、閉じた系を維持しながらの重力または真空の使用を採用してよい。懸濁液中の細胞の分離は、浮遊密度沈降法、遠心分離法、溶出法、ろ過法、固相部分への差示的接着およびそこからの溶出、抗体媒介性選択、電荷の相違、免疫磁性ビーズ、蛍光標識細胞分取(FACS)または他の手段によって達成されてよい。これらの多様な技術および該技術を実行するための装置の例は、その全てが参照をもってその全体を本明細書に組み込まれる、米国特許第6,277,060号明細書;米国特許第6,221,315号明細書;米国特許第6,043,066号明細書;米国特許第6,451,207号明細書;米国特許第5,641,622号明細書;および米国特許第6,251,295号明細書において見出される。これらの装置の多くは、閉じた系を維持しつつ、細胞処理ユニット内に組み込まれうる。
いくつかの実施形態において、スピニングメンブレンフィルター(spinning membrane filter)を用いて、懸濁液中の細胞が懸濁液の無細胞成分から分離される。他の実施形態において、遠心分離法を用いて、懸濁液中の細胞が無細胞成分から分離される。かかる代表的な一実施形態において、細胞収集容器は、遠心分離機中に(例えば、手動でまたはロボティクスによって)設置されるように構築された軟質バッグであってよい。他の実施形態において、軟質バッグは使用されない。遠心分離後、ADRCsを含有する細胞成分がペレットを形成し、次いでこれが、本明細書中で記載されているように、細胞が混合容器まで1つまたは複数の導管を通過させられうるように、緩衝溶液を用いて再懸濁される。再懸濁液は、任意の好適な手段によって提供されてよい。例えば、バッファーは、細胞収集容器上のポート中へ注入されてよいかあるいは細胞収集容器は、それを破裂させることによってバッファーが細胞のペレットと混合されることのできる貯留槽を含んでもよい。スピニングメンブレンフィルターが使用される場合、分離手順後、大量の液体中に細胞が留まるため、再懸濁は任意である。
ある実施形態において、脂肪組織由来細胞、例えばADRCsは、表面、例えば、プラスチックへの短時間の接着によって他の細胞から選択される。特定の実施形態において、選択という目的のための接着の持続時間は、約1時間である。他の実施形態において接着の持続時間は、24時間である。
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、活性細胞を成熟脂肪細胞および結合組織から分離するために、脂肪組織を完全に脱凝集させる方法を対象とするが、さらなる実施形態は、脂肪組織が部分的に脱凝集させられるのみである方法を対象とする。例えば、部分的脱凝集は、1つまたは複数の酵素によって実施されてよく、これは、そうでなければ、組織を完全に脱凝集させるために酵素がその上に残される時間よりも早く、脂肪組織の少なくとも一部から除去される。かかるプロセスは、より短い加工時間を必要とし、複数の脂肪由来細胞、例えばADRCsが、その中で部分的にまたは完全に接触したままである、組織成分の断片を生成しうる。別の実施形態においては、細胞、例えばADRCs、および/または処理の前に組織中でそれらが会合していた成熟脂肪細胞の全てまたは一部から単離された脂肪由来細胞を含む断片を調製するために、機械力(例えば、超音波エネルギーまたはせん断力)が加えられる。
いくつかの実施形態において、組織は滅菌緩衝等張食塩水で洗浄され、適切な脱凝集を与えるために十分なコラゲナーゼ濃度、温度および時間の間、コラゲナーゼと共にインキュベートされる。好ましい実施形態において、使用されるコラゲナーゼ酵素は、関係当局(たとえば、米国FDA)によりヒトによる使用が承認されるものである。好適なコラゲナーゼ製剤は、組換えおよび非組み換えコラゲナーゼを含む。非組換えコラゲナーゼは、F.Hoffman-La Roche Ltd.,Indianapolis,INおよび/またはAdvance Biofactures Corp.,Lynbrook,NYから入手されうる。組換えコラゲナーゼも、米国特許第6,475,764号明細書に記載の通りに得られうる。
一実施形態において、溶液は、約10μg/ml~約50μg/ml(例えば、10μg/ml、20μg/ml、30μg/ml、40μg/mlまたは50μg/ml)の濃度のコラゲナーゼを含有し、約30℃~約38℃において約20分間~約60分間、インキュベートされる。これらのパラメータは、該系が、所望の細胞集団を適切な時間枠で抽出することにおいて効果的であることを確認するために、コラゲナーゼ酵素の供給源によって変化し、実証的研究によって最適化される。特に好ましい濃度、時間および温度は、(中性プロテアーゼディスパーゼ;Blendzyme 1, Rocheと混合された)20μg/mlコラゲナーゼおよび37℃において45分間インキュベートされることである。別の好ましい実施形態は、(中性プロテアーゼサーモリシン;Blendzyme 3と混合された)0.5単位/mLコラゲナーゼに当てはまる。特に好ましい実施形態において、使用されるコラゲナーゼ酵素は、関連当局(例えば、米国食品医薬品局)によってヒトによる使用のために許可された材料である。使用されるコラゲナーゼは、混入物、例えば微生物およびエンドトキシンを含んではならない。
脱凝集後、活性な細胞集団は、脱凝集プロセスの添加物および/または副生成物(例えば、コラゲナーゼおよび新たに放出された遊離脂質)を除去するために、洗浄/すすぎを受けることができる。活性な細胞集団は、次いで、遠心分離法または上で論じたような当該技術分野の当業者に公知の他の方法によって濃縮されうる。これらの処理後洗浄/濃縮ステップは、別個にまたは同時に適用されてよい。ある実施形態において、脂肪組織由来細胞、例えばADRCsは濃縮され、細胞集団を、連続フロースピニングメンブレン系(continuous flow spinning membrane system)など、例えば、その全てが参照をもってその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,034,135号明細書および米国特許第5,234,608号明細書に開示された系に通すことによって、コラゲナーゼが除去される。
上記に加えて、ADRCsを含む細胞集団をさらに精製するために適用されうる、多くの公知の洗浄後の方法がある。これらは、正の選択(標的細胞を選択すること)、負の選択(望ましくない細胞の選択的除去)またはその組合せを含む。本明細書および文献に記載のフローサイトメトリーによる分離に加えて、細胞は、電荷またはサイズを含むが、それに限定されない多くの異なるパラメータに基づいて分離されうる(例えば、誘電泳動法または多様な遠心分離法など)。
細胞処理のために使用される段階的メカニズムの多くの他の構成が当業者に明らかであろう。例えば、洗浄および脱凝集中の組織と食塩水の混合は、撹拌または流体の再循環によって生じることができる。細胞の洗浄は、連続フローメカニズムにより、例えばスピニングメンブレンアプローチ、差示的接着、(差示的沈降、速度または勾配分離を含むが、それに限定されない)差示的遠心分離により、または手段の組合せによって仲介されうる。同様に、さらなる成分が、成長因子または他の生物学的応答調節剤の添加および細胞と共にレシピエントに移植されることを意図する天然または合成の成分と細胞との混合を含む、細胞のさらなる操作を可能とする。
処理後操作は、細胞培養またはさらなる細胞の精製も含んでよい(Kriehuberら、2001;Garrafaら、2006)。いくつかの実施形態において、脂肪組織由来細胞集団、細胞、例えばADRCsが得られたら、それを、セルソーティング装置および/または勾配沈降を用いてさらに精錬させ、濃縮させ、富化させ、単離させまたは精製させる。これらの機能を実行するためのメカニズムは、記載された装置内に統合されてよく、または別個の装置に組み込まれてもよい。しかしながら、多くの実施形態において、治療有効量の脂肪由来細胞、例えば再生細胞を含む脂肪由来細胞の濃縮された集団は、(例えば、強皮症、レイノー症候群または他の線維症に関連する疾患および障害における)疼痛および/または線維症の低減のための薬物を調製するために使用され、前記濃縮された細胞集団は、細胞を患者に投与する前に細胞を培養することなく、それを必要とする患者に投与されるべきである。すなわち、いくつかの実施形態は、疼痛、線維症またはその両方を低減する方法に関し、治療有効量の脂肪由来細胞、例えばADRCsの濃縮された集団が、該細胞を患者に投与する前にそれらを培養することなく、それを必要とする患者に投与される。
好ましい実施形態において、組織除去系および処理の組は、手術室または外来患者処置室のような処置を受けている患者の近傍に(効果的には患者のベッドサイドに)存在する。これは、迅速で効率的な組織の採取および処理を可能とし、検体の取扱い/ラベリングの間違いの機会を減少させ、それによって、1つの外科手術の過程におけるプロセス全体の遂行を可能とする。
SYSTEMS AND METHODS FOR ISOLATING AND USING CILINICALLY SAFE ADIPOSE DERIVED REGENERATIVE CELLSと題された、2004年7月2日出願の米国特許出願第10/884,638号明細書に記載のように、1つまたは複数の添加剤が処理の間および/または後に細胞に添加されてよい。添加剤のいくつかの例としては、洗浄および脱凝集を最適化する作用物質、処理の間の活性な細胞集団(例えば再生細胞を含む脂肪由来細胞)の生存能を高める添加剤、抗微生物剤(例えば、抗生物質)、脂肪細胞および/または赤血球を溶解する添加剤、または(固相部分への差示的接着によってまたはそうでなければ細胞集団の実質的な低減もしくは富化を促進するために)着目の細胞集団に関して富化させる添加剤を含む。
本明細書に記載の通りに得られた脂肪組織由来細胞、例えばADRCsは、当該技術分野で知られたアプローチに従って培養されることができ、培養された細胞は、具体化された方法のいくつかにおいて使用可能である。例えば、脂肪組織由来細胞、例えばADRCsは、低度または高度ウシ胎仔血清または参照をもって本明細書に組み込まれるNgら、Nov 2004, "Interstitial flow differentially stimulates blood and lymphatic endothelial cell morphogenesis in vitro," Microvasc Res. 68(3):258-64に記載された同様の製品の存在下、コラーゲンコーティングされたディッシュまたは内皮細胞基礎培地中の3Dコラーゲンゲル培養において培養されうる。あるいは、脂肪組織由来細胞、例えばADRCsは、他の細胞外マトリックスタンパク質でコーティングしたディッシュにおいて培養可能である。使用されてよい細胞外マトリックスタンパク質の例としては、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチンおよびIV型コラーゲンが挙げられるが、それらに限定されない。ゼラチンまたは任意の他の化合物または支持体であって、内皮細胞の培養容器への接着を同様に促進するものも、ADRCを培養するために同様に使用されてよい。
脂肪組織由来細胞、例えばADRCsをインビトロで培養するために使用可能な基本培地の例としては、EGM、RPMI、M199、MCDB131、DMEM、EMEM、マッコイ5A、イスコフ培地、改変イスコフ培地または血液内皮細胞の増殖を支持するための当該技術分野で知られた任意の他の培地が挙げられるが、それらに限定されない。ADRCsを培養するために使用されうる基本培地に添加可能な追加の因子または化合物の例としては、アスコルビン酸、ヘパリン、内皮細胞成長因子、内皮細胞成長補助剤、グルタミン、HEPES、Nu血清、ウシ胎仔血清、ヒト血清、ウマ血清、血漿由来ウマ血清、鉄添加ウシ血清、ペニシリン、ストレプトマイシン、アンフォテリシンB、塩基性および酸性線維芽細胞成長因子、インスリン成長因子、星状細胞条件培地、線維芽細胞または線維芽細胞様細胞条件培地、炭酸水素ナトリウム、上皮細胞成長因子、ウシ下垂体抽出物、硫酸マグネシウム、イソブチルメチルキサンチン、ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、ジブチリルサイクリックAMP、インスリン、トランスフェリン、亜セレン酸ナトリウム、エストラジオール、プロゲステロン、成長ホルモン、アンギオゲニン、アンギオポエチン-1、Del-1、フォリスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、エリスロポエチン、肝細胞成長因子(HGF)/分散因子(SF)、レプチン、ミドカイン、胎盤成長因子、血小板由来内皮細胞成長因子(PD-ECGF)、血小板由来成長因子BB(PDGF-BB)、プレイオトロフィン(PTN)、プログラニュリン、プロリフェリン、トランスフォーミング成長因子α(TGFα)、トランスフォーミング成長因子β(TGFβ)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、血管内皮細胞成長因子(VEGF)/血管透過性因子(VPF)、インターロイキン-3(IL-3)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン-8(IL-8)、エフリン、(MMP2およびMMP9のような)マトリックスメタロプロテイナーゼまたは内皮細胞の生存、増殖または分化を促進することが当該技術分野で知られた任意の他の化合物が挙げられるが、それらに限定されない。
細胞のさらなる処理は、(1つまたは複数の再生細胞タイプの)細胞増殖および(細胞シートのすすぎおよび培地交換を含む)細胞維持;継代培養;細胞シーディング;(バルク供給からトランスフェクトされた細胞のシーディングを含む)一過性トランスフェクション;(酵素的、非酵素的採取および機械的に削り取ることによる採取を含む)採取;細胞の生存能を測定すること;(例えば、増殖のために個々のウエルから細胞を取り上げること、細胞を新たなウエルに増殖させることを含む、マイクロタイタープレートにおける)細胞播種;ハイスループットスクリーニング;細胞治療応用;遺伝子治療応用;組織工学応用;治療用タンパク質応用;ウイルスワクチン応用;バンキングまたはスクリーニングのための再生細胞または上清の採取、細胞の増殖、溶解、接種、感染または誘導の測定;(ハイブリドーマ細胞を含む)細胞株の生成;透過性試験のための細胞の培養;RNAiおよびウイルス耐性試験のための細胞;ノックアウトおよびトランスジェニック動物試験のための細胞;アフィニティー精製試験;構造生物学応用;アッセイ開発およびタンパク質工学応用も含んでよい。
一般に、脂肪組織由来細胞集団、例えばADRCsを含む脂肪組織由来集団を単離するために有用な系は、a)組織収集容器であって、i)対象から除去された脂肪組織を受容するために構築された、組織収集入口ポート、およびii)組織収集容器内に配置されたフィルターであって、前記対象からの脂肪由来細胞集団を保持するように、および脂肪細胞、血液および食塩水を通過させるように構成されたフィルターを含む、組織収集容器;b)閉じた経路が維持されるように、導管によって組織収集容器に連結された、混合容器または細胞処理チャンバーであって、前記混合容器が前記細胞集団を受容し、該混合容器が、少なくとも1つの添加剤を前記脂肪由来細胞の集団に導入するための、追加のポート;および患者への投与のために、前記混合容器または細胞処理チャンバーからの前記脂肪由来細胞の集団の除去を可能とするように構成された、出口ポートを含む、前記混合容器または細胞処理容器を含む。いくつかの実施形態において、前記混合容器または細胞処理容器は、スピニングメンブレンフィルターおよび/または遠心分離機のような、細胞濃縮装置をさらに含む。本明細書に開示される実施形態の態様は、セルソーターも含み、これは、導管によって前記混合容器または細胞処理容器に取り付けられ、閉じた経路を維持しつつ、前記混合容器または細胞処理容器から細胞を受容するように構成されている。上記実施形態の態様は、導管によって前記混合容器または細胞処理容器に取り付けられ、閉じた経路を維持しつつ、前記脂肪由来細胞の集団を受容するように構成された遠心分離機も含んでよく、ここで、前記遠心分離機は、前記脂肪由来細胞の集団のさらなる分離および精製に好適な勾配(例えば、フィコール-ハイパック)を含む。前記脂肪由来細胞の集団を受容するように構成された前記勾配を含む前記遠心分離機は、前記混合容器または細胞処理容器内に含まれてもよい。
特定の実施形態において、本発明のADRCsの単離は、採取した脂肪組織を洗浄し、そして当該組織を酵素によりまたは機械的に分解して脂肪組織マトリックスに結合した細胞を放出することにより実施してよい。例えば米国特許第7390484号明細書、米国特許第7585670号明細書、米国特許第7687059号明細書、米国特許第8309342号明細書、米国特許第8440440号明細書、米国特許出願公開第2013/0164731号明細書、米国特許出願公開第2008/0014181号明細書、国際公開第2009/073724号および国際公開第2013/030761号において記載される方法および/または装置を、本発明のADRCsの単離のために使用することができる。完全に無菌の閉鎖型脂肪組織分離装置、例えばCelution(登録商標)800/IV(Cytori Therapeutics社)も、本発明のADRCsの単離に使用してもよい。
ADRCsを含む脂肪組織由来細胞集団の特徴付け
本明細書に記載の脂肪由来細胞の集団中のある特定の細胞の存在を決定するための、該集団の測定、分析または特徴付けは、細胞処理ユニットの閉じた系の内部または細胞処理ユニットの閉じた系の外部で、当該技術分野で利用可能な任意の数のタンパク質および/またはRNA検出アッセイを用いて行われうる。さらに、脂肪由来細胞またはADRCsにおける特定の細胞(例えば、幹細胞、前駆細胞、先駆細胞など)の測定、分析または特徴付けは、単離手順(例えば、ある特定の細胞タイプ(例えば、再生細胞)に特異的な抗体を用いる細胞ソーティングまたはある特定の細胞タイプに選択的な培地を用いる勾配分離)の一部であることができるかまたはそれを伴うことができる。
いくつかの実施形態において、単離された細胞集団の測定または特徴付けは、ある特定の細胞タイプ(例えば、脂肪由来再生細胞、脂肪由来幹細胞など)にとって独自であるか、そうでなければ当該技術分野の当業者によって着目の具体的な細胞タイプの存在を確認すると考えられるタンパク質マーカーの存在または不存在を検出することによって実行される。前記タンパク質またはマーカーに特異的な抗体プローブを用いる慣用のウェスタンブロットに加えて、細胞表面マーカーの発現を利用する免疫選択技術が、当該技術分野において公知であり文献に記載された多数の方法を用いて実施可能である。かかるアプローチは、CD34陽性細胞の分離のための手動の、自動のまたはWattsら(Wattsら, 2002, Variable product purity and functional capacity after CD34 selection: a direct comparison of the CliniMACS(v2.1) and Isolex 300i(v2.5)clinical scale devides, "Br J Haematol. 2002 Jul; 118(1): 117-23")に記載の、半自動の装置と共に固体基材(例えば、磁性ビーズ)に直接的または間接的に連結された抗体を用い、パニングにより、蛍光励起セルソーター(FCS)または他の手段の使用により、実施可能である。
分離、測定および特徴付けは、ある特定の細胞手段によって発現されるが、1つまたは複数の他の細胞タイプまたは細胞集団内に存在する亜集団によっては発現されない細胞表面マーカーまたはマーカーの組合せを認識する抗体を用いる正の選択によっても達成可能である。分離、測定および特徴付けは、負の選択によっても達成可能であり、ADRCsへの明らかな結合を示さない抗体または抗体の組合せを用いて、単離された脂肪由来細胞の集団から望ましくない細胞タイプが除去される。ADRCsによって特異的に発現されるマーカーが記載されている。負の選択において使用されうる抗体の例としては、内皮細胞によって発現されるマーカーが挙げられるが、それに限定されない。負の選択に適用することができる当該技術分野で周知の他の抗体が多数ある。ADRCsのためのマーカーの相対的特異性も、精製および/または特徴付けまたは測定ストラテジーにおいて利用可能である。例えば、蛍光標識されたリガンドは、FACSに基づく細胞のソーティングにおいて使用可能であり、または固体基材に直接的または間接的にコンジュゲーションされたリガンドは、上記の免疫選択アプローチに類似したやり方で分離するために使用可能である。
特定の細胞タイプ(例えば、再生細胞の特定のタイプ)の存在または不存在を決定するための脂肪由来細胞集団の測定および特徴付けは、ADRCs特有のタンパク質またはそうでなければ、ADRCsの存在または不存在を示すマーカーであると当該技術分野の当業者によって考えられるタンパク質をコードする1つまたは複数のRNAの分析も含みうる。いくつかの実施形態において、例えば、単離された細胞集団またはその一部が、例えば、CD45の1つまたは複数をコードするRNAの存在または不存在について分析される。前記RNAの検出は、ノーザンハイブリダイゼーション、PCRに基づく方法論、転写ランオフアッセイ、遺伝子アレイおよび遺伝子チップを含むが、それに限定されない、当該技術分野の当業者に利用可能な任意の技術によって達成可能である。
特定の実施形態において、本発明のADRCsは、CD31を発現する。より具体的な実施形態において、前記ADRCsは、さらにCD34を発現してもよく、例えば、本発明のADRCsは、CD31およびCD34である。より具体的な実施形態において、前記ADRCsは、CD45である。言い換えれば、本発明のADRCsは、は、CD31、CD34、およびCD45であってよい。他の実施形態において、本発明のADRCsは、CD146である。いくつかの実施形態において、本発明のADRCsは、CD31、CD34、CD45およびCD146である。
他の実施形態において、本発明のADRCsは、CD45であり、より具体的な実施形態において、CD45およびCD206である細胞を含む。
特定の実施形態において、本発明のADRCsは、ある量の、例えば、CD45、CD11b、CD14、CD68、CD90、CD73、CD31および/またはCD34を発現する。
いくつかのアプローチにおいて、ADRCsは、CD14および/またはCD11bである。
特定の実施形態において、本発明のADRCsは、CD34、CD44、CD45、CD90およびCD105からなる群から選択される細胞表面マーカーの発現によって同定されうる。いくつかのアプローチにおいて、ADRCsは、CD34、CD44、CD45、CD90及びCD105である。
ADRCsを含む医薬組成物の調製方法
成熟脂肪細胞および結合組織を実質的に除去し、それによって、脂肪由来細胞、例えばADRCsを含む、不均一な複数の脂肪組織由来細胞であって、対象の体内への設置に好適なものを得るために、上記アプローチに従って未加工の脂肪組織が処理される。抽出された脂肪組織由来細胞、例えばADRCsは、成熟脂肪細胞および結合組織を実質的に含まないこれらの細胞または不活性成分(例えば、担体)もしくは第2の活性成分(例えば、脂肪組織由来幹細胞および/または脂肪組織由来内皮細胞)との組合せを含む適切な組成物中で提供される。細胞は、レシピエント中に単独で或いは細胞、組織、組織断片または細胞成長および/または分化の成長因子のような生物学的材料、支持体、装具または医療装置との組合せ(例えば、単一の組成物でまたは同時投与)で設置されてよい。組成物は、追加の構成要素、例えば、細胞分化因子、成長促進因子、免疫抑制剤または本明細書中で論じられる医療装置を含んでよい。いくつかの実施形態において、細胞は、上記の添加剤のうちのいずれかと共に、レシピエントへの治療的利益を提供することを目的とする単一の手術方法の場面でそれらが得られた人に設置される(例えば、自家組織の移動)。
したがって、本発明の医薬組成物は、精錬された、富化された、濃縮された、単離されたまたは精製された脂肪組織由来細胞集団、例えばADRCs、およびこれらの細胞と未処理の脂肪組織、脂肪細胞、コラーゲンマトリックスまたは担体、細胞分化因子、成長促進剤、免疫抑制剤、脂肪由来幹細胞および/または前駆細胞を含有する処理済み脂肪組織並びに既に富化された量のADRCsを含有する細胞集団を含むが、それに限定されない、生物学的材料、添加物、担体、装具または医療装置の混合物を含む、それから成るまたは本質的にそれから成る組成物を含む。いくつかの実施形態において、上記の組成物は、全脂肪組織細胞集団に対して0.5%~1%、1%~2%、2%~4%、4%~6%、6%~8%、8%~10%、10%~20%、20%~30%、30%~40%、40%~50%、50%~60%、60%~70%、70%~80%、80%~90%または90%~100%に等しいかまたはそれより多い量または濃度の、精錬された、単離されたまたは精製されたADRCsを含む。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の脂肪組織由来細胞、例えばADRCsは、任意の利用可能な薬化学技術を用いて、少なくとも1つの医薬として許容できる希釈剤、アジュバントまたは担体物質を含む組成物に処方される。一般に、これは、ヒトまたは動物に有害でありうる不純物を本質的に含まない組成物を調製することを必要とする。
ADRCsを含む脂肪組織由来細胞集団を安定化させ、取り込みを容易化するために、適切な塩および緩衝剤が使用可能である。本明細書において考慮される組成物は、有効量の脂肪由来細胞、例えばADRCを、医薬として許容できる担体または水性媒体中に含むことができる。
本発明の医薬組成物の投与は、標的組織がその経路を介して利用可能である限り、任意の一般的経路を介することができる。本明細書に記載の方法に従って投与される組成物は、例えば、静脈内、動脈内、リンパ管内、皮下、皮内、筋肉内、乳房内、腹腔内、髄腔内、眼球後方、肺内(例えば、期間放出)により;経口、舌下、鼻内、肛門内、膣内または経皮送達により、噴霧もしくは他の直接投与によりまたは特別な部位における外科的移植により、対象中に導入されてよい。特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、例えば、動脈内、静脈内、門脈内、皮内、皮下、筋肉内または腹腔内注射の形態で投与することができるが、投与方法はこれらに限定されない。
特定の実施形態において、動脈内、静脈内または門脈内注射による投与が好ましく、投与されたADRCsが血液循環を介して治療される臓器である肝臓に到達するため、肝動脈投与が特に好ましく実施される。
特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、動脈内、静脈内または門脈内注射での投与に適した、単一細胞懸濁液として調製される。
静脈内および動脈内細胞移植は、多くのリスクおよび合併症に関連する。細胞のサイズおよび直径は、血管閉塞およびそれらから現れる合併症の主要な決定要因である。肺微小塞栓症は、特に大きな細胞を注入する場合、静脈内および動脈内の細胞送達後に報告されている重要な安全上の関心である。
脂肪組織の処理は、細胞の凝集または凝集塊をもたらす、細胞破裂並びに細胞外デブリおよびDNAの放出を導きうる。DNAの粘着性は、細胞および他のデブリを大きな凝集塊に凝集させる。DNase I酵素は、遊離した/緩んだDNA鎖を消化ために使用されてよい。好ましくは、高度に精製したDNase I酵素は、遊離した/緩んだDNAの効率的で穏やかな再現可能な消化のために使用されてよく、ADRCsの分解をもたらし、そしてかかる細胞が互いに付着するのを防ぎ、ADRCsの単一細胞懸濁液を生成する。かかる酵素は、たとえば、Cytori Therapeutics社からイントラベース(登録商標)840として商業的に入手可能である。
さらに、患者への静脈内または動脈内の細胞送達の直前にフィルター膜スクリーンの使用を介する細胞凝集体およびデブリの除去は、血管閉塞およびその後の合併症の危険性を軽減する。前記目的のために、適切な孔径を有する任意のフィルター膜スクリーンを使用できる。好ましい実施形態において、それは、患者に接触する送達メカニズムと一致し、患者に注入されるADRCsの単一細胞懸濁液を濾過するように設計される。かかるフィルターは、患者の微小血管系における微小塞栓の形成を引き起こすかまたはその一因となりうる、大きな細胞凝集体の通過を捕捉および防止しながら、単細胞および二倍体細胞が膜を通過して患者に到達できるようにすることを目的とする。
例えば、平均細孔径43ミクロンを有するポリエステルフィルターメンブレンスクリーンを覆うアクリルハウジングから構成される滅菌の非発熱性の使い捨ての使い捨てシリンジフィルターであるマクロシリンジフィルターは、Cytori Therapeutics社から市販されている。
本発明の医薬組成物は、担体または作用部位における組成物の滞留時間を増加させるまたは作用部位への組成物の輸送を容易化する性質を有する他の材料を含んでいてもよい。また、投与は、単一用量またはある期間にわたる複数の用量からなっていてもよい。細胞治療薬のためのビヒクルは当該技術分野において公知であり、文献中に記載されている。例えば、参照をもって本明細書に組み込まれるRemington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed.(1990, Mack Publ. Co, Easton Pa. 18042)pp 1435-1712を参照されたい。滅菌溶液は、必要量の脂肪組織由来細胞集団、例えば、ADRCsを、本明細書に記載の1つまたは複数の他の成分を含むかまたは含まない適切なバッファー中に取り込むことによって調製される。
本明細書に記載の任意の2つ以上の作用物質による併用療法も、本発明の態様として考慮される。同様に、新しいキットとして一緒に包装されるかまたは単一の組成物として一緒に処方される、本明細書に記載の作用物質のそれぞれの組合せは、本発明の態様と考慮される。本発明の態様による使用のための組成物は、医薬として許容できる担体と共に処方された脂肪組織由来細胞、例えばADRCsを含むことが好ましい。該細胞は、目的の治療効果を高め、制御しまたは方向づけるための添加剤と共に適用することもできる。例えば、いくつかの実施形態において、脂肪組織由来細胞集団、例えばADRCsは、有効性を増大させ、疾病率を低減させまたは手順を容易化するために、細胞集団を富化するための抗体介在性の正のおよび/または負の細胞選択を使用することによってさらに精製されうる。同様に、細胞は、生物適合性のマトリックスと共に適用可能であり、これは、移植された細胞の運命を支援および/または方向づけることによってインビボの組織工学を容易化する。同じ方法で、細胞は、該細胞によって提供される治療反応を促進すると考えられるかまたは意図される遺伝子産物をそれらが発現するように、遺伝子操作後に投与されうる。
ADRCsを含む脂肪組織由来細胞集団は、単独でまたは他の細胞、組織、組織断片、成長因子、生物学的に活性なもしくは不活性な化合物、吸収性プラスチック足場または該集団の送達、有効性、耐容性または機能を高めることを目的とする他の添加剤とともに適用可能である。脂肪組織由来細胞集団、例えばADRCsは、構造上または治療上の目的の誘導のために細胞の機能を変化させ、高めまたは補充するようなやり方で、DNAの挿入によりまたは細胞培養中への設置によって、改変することが可能である。
さらなる実施形態において、ADRCsを含む脂肪組織由来細胞集団は、細胞が移植部位内、すなわち、腫瘍内でプロドラッグを活性化することを可能とする、プロドラッグ変換酵素をコードする遺伝子と組み合わされる。遺伝子(または遺伝子の組合せ)の添加は、アデノウイルス形質導入、「遺伝子銃」、リポソーム介在性形質導入およびレトロウイルスまたはレンチウイルス介在性形質導入、プラスミドまたはアデノ関連ウイルスを含むが、それに限定されない当該技術分野において公知の任意のテクノロジーによってよい。細胞は、形質導入がインサイチュで持続または開始可能であるように、経時的に細胞に遺伝子を放出および/または提示することのできる遺伝子送達ビヒクルを有する担体材料とともに移植可能である。特に、細胞および/または該細胞を含有する組織が、該細胞および/または組織が得られた患者以外の患者に投与される場合、移植物の拒絶を低減し、好ましくは予防する、1つまたは複数の免疫抑制剤が、細胞および/または組織を受容する患者に投与することができる。
さらなる実施形態は、ADRCsを含む脂肪組織由来細胞集団のエクスビボでのトランスフェクション、これらのトランスフェクトされた細胞の対象へのその後の転移に関する。かかる実施形態は、転移された遺伝子のインビボレベルを上方制御するため、および遺伝子(複数可)の低発現によりもたらされたまたはそうでなければ、遺伝子の上方制御に対して応答性である疾患または障害からの解放を提供するための有効なアプローチでありうると考えられる(例えば、全て参照をもって本明細書に組み込まれるGelseら, 2003, "Articular cartilage repair by gene therapy using growth factor-producing mesenchymal cells," Arthritis Rheum. 48:403-41; Huardら, 2002, "Muscle-derived cell-mediated ex vivo gene therapy for urological dysfunction," Gene Ther. 9: 1617-26; Kimら, 2002, "Ex vivo gene delivery of IL-1Ra and soluble TNF receptor confers a distal synergistic therapeutic effect in antigen-induced arthritis," Mol. Ther. 6: 591-600を参照されたい)。ADRCsを含む脂肪組織由来細胞集団の、適切な細胞への送達は、エクスビボ、インサイチュまたはインビボで、ベクター、より具体的には、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、アデノ関連ウイルスもしくはレトロウイルス)の使用により、またはエクスビボで、物理的DNA転移方法(例えば、リポソームまたは化学処理)の使用によりもたらされる。例えば、参照をもって本明細書に組み込まれるAnderson, 1998, "Human Gene Therapy," Nature Suppl.to vol. 392 (6679): 25-20を参照されたい。遺伝子治療テクノロジーは、その全てが参照をもって本明細書に組み込まれるFriedmann, 1989, "Progress toward human gene therapy," Sicence 244(4910): 1275-1281, Verma (1990), "Gene therapy" Scientific American 263(5):68-84およびMiller (1992), "Human gene therapy comes of age," Nature, 357: 455-460によっても総説される。脂肪組織由来細胞集団、例えばADRCsは、増殖またはかかる細胞において所望の効果または活性を生成するために、エクスビボにおいて添加剤(例えば、分化または膵臓細胞形成を誘導する化合物)の存在下で培養されうる。次いで、処理された細胞は対象に導入されうる。
本発明の態様は、治療用ポリペプチドをコードする遺伝子による脂肪組織由来細胞、例えばADRCs(幹細胞、前駆細胞、先駆細胞または幹細胞と前駆細胞および/または先駆細胞の組合せ)のエクスビボでのトランスフェクションおよびトランスフェクトされた細胞の哺乳動物対象への投与にも関する。
いくつかの実施形態において、投与ステップは、哺乳動物対象に装具または医療装置(例えば、血管内ステント)を移植することを含み、該ステントは、脂肪組織由来集団、例えばADRCsでコーティングまたは含浸されている。トランスフェクトされた内皮細胞でコーティングまたはシーディングされた弁、ステントまたは移植片を構築するための代表的な材料は、参照をもって本明細書に組み込まれるPavenikら, 2004, "Second-generation percutaneous bioprosthetic valve: a short-term study in sheep," Eur. J. Endovasc. Surg. 40: 1223-1227およびArtsら, 2002, "Contaminants from the Transplant Contribute to Intimal Hyperplasia Associated with Microvascular Endothelial Cell Seeding, " Eur. J. Endovasc. Surg. 23: 29-38に記載されている。参照をもって本明細書に組み込まれる、CELL-LOADED PROSTHESIS FOR REGENERATIVE INTRALUMINAL APPLICATIONSと題された、2005年12月22日出願の米国特許出願第11/317,422号明細書も参照されたい。例えば、一変法において、ADRCsを含む脂肪由来細胞集団を含む合成弁が、四角形のステンレススチールステントに縫合される。四角形のステントは、設置の間に弁のためのアンカーを提供するために、それぞれの末端に短い棘を有し、粘膜下膜は、弁開口部を作るためにステントの対角軸において長い切り目が入っている。
合成弁の表面は、例えば、細胞による弁表面の完全なコーティングを可能とするために、移植前の1~3日間、適切な細胞培地中に合成弁を置くことによって、ADRCsを含むトランスフェクトされたまたはトランスフェクトされていない脂肪由来細胞集団(例えば、幹細胞を含むもの、前駆細胞を含むもの、先駆細胞を含むものまたは他の再生細胞-その任意の組合せを含むもの)でコーティングされうる。
別の実施形態において、投与ステップは、哺乳動物対象に血管内ステントを移植することを含み、該ステントは、上記引用文献に記載され、Lincoffら, 1994に概説されたようにコーティングまたは含浸される。ステントを形成するための金属またはポリマーワイヤーは、ADRCsを含むトランスフェクトされたまたはトランスフェクトされていない脂肪由来細胞集団(例えば、幹細胞を含むもの、前駆細胞を含むもの、先駆細胞を含むものまたは他の再生細胞-その任意の組合せを含むもの)で含浸された(またはその中に浸漬されもしくは使用直前に容易にコーティングされうる)多孔質生物適合性ポリマーまたはゲルのような組成物でコーティングされる。ワイヤーは、巻かれ、織られまたはそうでなければ慣用の材料および血管内血管形成カテーテル挿入のような技術を用いて血管の管腔中に移植されるための好適なステントに形成される。このやり方で改善されうる代表的なステントは、その全てが参照をもって全体として明示的に本明細書に組み込まれる米国特許第5,800,507号明細書および米国特許第5,697,967号明細書(Medtronic, Inc.,フィブリンおよび再狭窄の処置を提供することのできる溶出可能な薬物を含む、管腔内ステントを記載する);米国特許第5,776,184号明細書(Medtronic, Inc.,ポリマーおよび固体中のまたは固体/ポリマーを含む溶液中の治療用物質を含む多孔質コーティングを有するステントを記載する);米国特許第5,799,384号明細書(Medtronic, Inc.,体腔に接触する生物適合性ポリマー表面を有するフレキシブルな円筒状の金属ステントを記載する);および米国特許第5,824,048号明細書、米国特許第5,679,400号明細書および米国特許第5,799,729号明細書に記載され、描写される。
本明細書に開示されるように、ADRCsを含む脂肪組織由来集団は、さらなる処理またはさらに細胞を精製し、改変し、刺激しもしくは別の方法で変化させるための後続の追加の手順なしに、対象に提供され、または損傷組織にもしくは損傷組織の近傍に直接適用されてよい。例えば、患者から得られた細胞は、投与の前に該細胞を培養することなく、前記患者に戻されてよい。いくつかの実施形態において、脂肪組織の採取および処理並びにADRCsの投与は、患者のベッドサイドで実施される。好ましい実施形態において、ADRCsは、それらが移植され、それによって移植組織に対する抗原性および/または免疫原性反応に伴う潜在的な合併症を低減するべき人の脂肪組織から採取される。しかしながら、別の個体から抽出されたADRCsの使用も考慮される。
本明細書に開示される発明に従って、ADRCsを含む脂肪組織由来細胞は、患者から脂肪組織を採取した後、すぐに該患者に送達されうる。例えば、ADRCsは、ADRCsを含む医薬組成物を得るために、脂肪組織を処理した直後に投与されてよい。送達のタイミングは、患者の入手可能性および脂肪組織を処理するために必要な時間に依存する。別の実施形態において、送達のタイミングは、患者に送達される細胞が追加の改変、精製、刺激または本明細書中で論じられる他の操作に供される場合、比較的長くてよい。さらに、脂肪組織由来細胞、例えばADRCsは、複数回投与されてよい。例えば、ADRCsは、長期間(例えば、数時間)にわたって投与されてよく、またはある期間にわたって延長された複数の注射において投与されてもよい。
患者に投与される脂肪組織由来細胞、例えばADRCsの数は、脂肪組織の処理後の細胞収率に依存する。さらに、送達される用量は、患者への細胞の送達経路に依存する。患者に投与される細胞の用量は、採取された脂肪組織およびドナーの(利用可能な脂肪組織の量の尺度としての)肥満度指数にも依存する。採取される組織の量は、損傷または機能不全の程度によっても決定されうる。複数の組織採取物を使用するかまたは投与の間での細胞の適切な貯蔵を伴う単一の採取物を使用する、複数の処置は、本発明の範囲内にある。
脂肪由来細胞、例えば再生細胞を含む脂肪由来細胞の総数の一部は、後の使用のために保持されるか、または凍結保存されてよい。処理された脂肪組織の一部は、患者に投与される前に貯蔵されてよい。短期間の貯蔵(例えば、6時間未満)のためには、細胞は、栄養溶液の補給を含むまたは含まない密封容器中に室温以下で貯蔵されてよい。中間の期間の貯蔵(例えば、48時間未満)は、細胞接着を防止する材料から構成される容器またはそれでコーティングされた容器中の等張の緩衝溶液(例えば、Plasmalyte(登録商標))中で、2~8℃において実施されることが好ましい。長期保存は、その内容がどちらも参照をもって明示的に本明細書に組み込まれる、2002年9月13日出願のPCT出願第PCT/US02/29207号および2001年9月14日出願の米国特許出願第60/322,070号明細書に開示されたような適切な凍結保存および細胞機能の保持を促進する条件下での細胞の貯蔵によって実施されることが好ましい。
いくつかの実施形態において、それを必要とする対象に提供されるべき脂肪組織由来細胞、例えばADRCsの量は、約10000個、20000個、30000個、40000個、50000個、60000個、70000個、80000個、90000個、100000個、110000個、120000個、130000個、140000個、150000個、160000個、170000個、180000個、190000個または200000個以上の細胞であり、ここで、ADRCsの量は、全脂肪組織由来細胞集団の0.5%~1%、1%~2%、2%~4%、4%~6%、6%~8%、8%~10%、10%~20%、20%~30%、30%~40%、40%~50%、50%~60%、60%~70%、70%~80%、80%~90%または90%~100%超であるかまたはそれに等しくあってよい。このパーセンテージは、脂肪由来細胞集団中に見られる有核細胞の総数に基づく。用量は、ある期間にわたって投与するため、または局所注射などによる患部組織の異なる部分への注射のための数個のより小さな用量に分割されうる。しかしながら、この用量は、所望の治療効果を達成するための大きさによって調整されてもよい。
脂肪組織由来細胞、例えばADRCsは、(血管および/またはリンパ管中への輸注を含む、逆流輸注を含む)静脈内または動脈内輸注による全身投与を含む数種の経路、または直接注射により適用されうる。特に末梢静脈アクセスによる全身投与は、血液から肝臓への細胞の自然の輸送に依存して、最小限に侵襲性であるという利点を有する。ADRCsを含む脂肪由来細胞集団は、単回ボーラスで、遅い輸注により、もしくは数時間離された一連の時間差投与によって注射されてよく、または提供された細胞は、数日もしくは数週間、適切に貯蔵される。ADRCsを含む脂肪組織由来細胞集団は、目的の領域を通る細胞の最初の通過がバルーンを用いることによって促進されるように、カテーテル挿入の使用により適用することもできる。末梢静脈アクセスによるように、ADRCsを含む脂肪組織由来細胞集団は、カテーテルを通して、単回ボーラスまたは複数のより少量のアリコートで注射されてよい。
先に上記した通り、好ましい実施形態において、ADRCsを含む脂肪組織由来細胞集団は、患者に直接投与される。言い換えれば、活性な細胞集団、例えばADRCsは、系から除去されることなくまたは患者に投与される前に系の外部環境に曝露されることなく、患者に投与される。閉じた系を提供することは、患者に投与される材料の汚染の可能性を低減させる。したがって、閉じた系中で脂肪組織を処理することは、既存の方法に比べた利益を提供し、それというのも、活性な細胞集団が無菌である可能性がより高いからである。いくつかの実施形態において、ADRCsを含む脂肪組織由来細胞集団が外部環境に曝露されるかまたは系から除去される唯一の時は、該細胞が投与装置中に引き込まれ、患者に投与される時である。他の実施形態において、投与装置は閉じた系の一部であってもよい。したがって、完全な閉じた系は、対象からの脂肪組織の除去(例えばカニューレ)から対象への導入(例えば投与装置)まで維持される。したがって、これらの実施形態において使用される細胞は、培養または凍結保存のために処理されてよく、さらなる処理なしに患者に投与されてよく、または他の組織、細胞または添加物と混合された後に患者に投与されてもよい。
他の実施形態において、ADRCsを含む脂肪由来細胞集団の少なくとも一部は、後の移植/輸注のために貯蔵されうる。該集団は、細胞集団の一部が後の投与のために保持される一方で、一部は直ちに患者に適用されるように、1つ超のアリコートまたは単位に分割されてよい。そのどちらの内容も参照をもって明示的に本明細書に組み込まれる、2001年9月14日出願の米国特許出願第60/322,070号明細書の優先権の利益を主張する、PRESERVATION OF NON EMBRYONIC CELLS FROM NON HEMATOPOIETIC TISSUESと題された、2002年9月12日出願の米国特許出願第10/242,094号明細書に記載されたような、細胞の全てまたは一部の細胞バンク中での中程度から長期の貯蔵も、本発明の範囲内にある。処理の最後に、当該技術分野の当業者に公知の任意の手段によるレシピエント中への設置のために、シリンジのような送達装置に濃縮された細胞が充填されうる。
以下で、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
I.被験者母集団
非アルコール性脂肪性肝炎による肝硬変と診断された患者、および脂肪性肝疾患を基盤とする肝硬変と診断された患者合わせて7例について試験した。
より詳細には、以下(1)~(6)のいずれの項目にも該当する患者を対象として使用した。
(1)画像診断または組織診断により、(i)の基準を充たす非アルコール性脂肪性肝炎による肝硬変または(ii)の基準を充たす脂肪性肝疾患を基盤とした肝硬変と診断されている患者;
(i)
・飲酒量がエタノール摂取量換算で1日20g以下
・肝障害をきたす他の既知の原因が明らかでない
・肥満、内臓脂肪、メタボリック症候群および糖尿病からなる群の少なくとも一つから選択される、脂肪肝をきたしうる状態または合併症を有する
(ii)
・飲酒量がエタノール摂取量換算で1日20gを上回り70g以下
・肝障害をきたす他の既知の原因が明らかでない
・肥満、内臓脂肪、メタボリック症候群および糖尿病からなる群の少なくとも一つから選択される、脂肪肝をきたしうる状態または合併症を有する
(2)治療開始時のプロトロンビン活性が70%以上である患者
(3)治療開始時の血清アルブミン値が4.0g/dL以下である患者
(4)治療開始時の総ビリルビン値が3.0mg/dL以下である患者
(5)治療開始時の血小板数が5.0×10/μL以上である患者
(6)治療開始時の血清クレアチニンが1.5mg/dL以下である患者。
II.脂肪組織の採取
全身麻酔下で、または局所および腰椎麻酔下で、患者の臀部または腹壁の皮下脂肪組織に、生理食塩液1000mLと、キシロカイン注射液「1%」エピレナミン(1:100000)含有2mLとの混合液を適量注入し、膨満させた。
皮下脂肪組織を200~400mL採取した。採取には、メルセデスチップ付き3mm標準脂肪吸引カニューラを使用した。
III.ADRCsの分離
採取した皮下脂肪組織より、完全無菌密閉型脂肪組織分離装置(Celution(登録商標)800/IV;Cytori Therapeutics社)を用いてADRCsを含む細胞集団を分離し、乳酸リンゲル液中にADRCsを含む細胞懸濁液5mLを回収した。
細胞数および生細胞率を、Nucleocounter(ChemoMeTec A/S社)を用いてカウントした。上記ADRCsを含む細胞懸濁液については、3.3×10(細胞)/kg×BW/5mL以上であり、生細胞率が70%以上であることを確認した。
IV.ADRCsの投与
分離したADRCsを乳酸リンゲル液により1×10(細胞)/mLとなるよう調整し、大腿動脈または上腕動脈よりカテーテル(マイクロカテーテルIV;朝日インテック株式会社)の先端を総肝動脈まで挿入した後、カテーテルを介して3.3×10(細胞)/kgに相当する細胞浮遊液量を30分かけて投与した。
なお、ADRCsは培養せずに新鮮に単離したものを使用し、単離したADRCsを、皮下脂肪組織からの単離後、同日に患者へ注入した。
Figure 2024509023000002
V.ADRCsの特徴付け
ADRCsを含む細胞集団については、患者への投与前に、CD34、CD44、CD45、CD90およびCD105の細胞膜タンパク質に対する蛍光標識抗体を使用した蛍光活性化細胞分取を実施して、単離されたADRCsの特徴付けをおこなった。結果を、表2に示す。
Figure 2024509023000003
全7例の平均値は、CD34が6.833±7.2941%、CD44が66.986±20.7903%、CD45が3.071±2.9945%、CD90が6.571±3.9425%、CD105が2.577±2.9341%であった。
VI.肝機能検査
急性および慢性の肝細胞損傷は、肝機能障害につながる可能性がある。肝機能検査は、疑われる肝疾患の調査、および疾患活動の監視に有用であり、異常値は一般に進行した肝疾患を意味する。ここで、肝機能を評価する一般的な検査は、血清アルブミン濃度およびプロトロンビン活性である。
低い血清アルブミン濃度は肝機能障害を示し、肝硬変に関連する。肝硬変の患者はアルブミン合成が低下しており、これは進行性肝硬変の60~80%の低下に達する。水と塩の保持による希釈効果、および細胞外空間および腹水における循環アルブミンの隔離により、タンパク質レベルがさらに低下する。重要なことに、血清アルブミン濃度は、予後の重要性を有しており、肝硬変を有する患者における100以上の研究で死亡の重要な予測因子である。血清アルブミン濃度は、肝硬変において最も重要で広く使用されている予後スコア、Child-Pugh-Turcotteスコアの構成要素である。
プロトロンビン時間(PT)もまた肝疾患の重症度の普遍的な指標であり、ビタミンK凝固因子およびフィブリノーゲンによって定義する。肝臓は、血液凝固カスケードに必要な大部分の凝固タンパク質を生成する。重度の肝機能障害は、凝固因子の肝臓合成が低下し、その結果PTの延長を導く。PTを、生存する予後モデルにおいて使用し、急性肝不全の重要な基準とする。PTの結果を、パーセントで表されるプロトロンビン比(PTR)として、および国際正規化比(INR)として秒単位で報告したものを、プロトロンビン活性として示す。
上記7例の患者については、ADRCsの投与後24週にわたり経過観察をおこない、肝機能改善の有無を、血清アルブミン濃度およびプロトロンビン活性に基づき評価した。
ADRCsの投与後12週目の血清アルブミン濃度が、投与前に得られた値よりも上昇した場合、血清アルブミン値の改善がみられたと定義した。有効性評価の主たる解析対象集団として、FASを対象とした。血清アルブミン値の改善率を算出し、閾値3%、片側有意水準5%として、正規近似に基づいて検査した。信頼区間の計算にはClopper-Pearson法を用いた。結果を以下に示す。
Figure 2024509023000004
アルブミン値の改善率は85.7%(95%信頼区間:47.9~99.3%)で、検定の結果は有意であった(p<0.0001)。
血清アルブミン値の推移を、図2に示す。
血清アルブミン値の推移は、ベースラインが3.66±0.140g/dL、投与後4週目が3.87±0.160g/dL(p=0.0675)、投与後8週目が3.91±0.090g/dL(p=0.0041)、投与後12週目が3.90±0.231g/dL(p=0.0278)、投与後16週目が3.87±0.236g/dL(p=0.0994)、投与後20週目が3.84±0.207g/dL(p=0.0947)、投与後24週目が3.86±0.420g/dL(p=0.2467)であり、投与後8週目および12週目に有意な上昇を認めた。
同様に、プロトロンビン活性についても、改善率を算出して評価した。結果を以下に示す。
Figure 2024509023000005
プロトロンビン活性改善率は71.4%(95%信頼区間:34.1~94.7%)で、検定の結果は有意であった(p<0.0001)。プロトロンビン活性の推移を、図3に示す。
プロトロンビン活性の推移は、ベースラインが79.7±8.14%、投与後4週目が82.1±7.60%(p=0.0179)、投与後8週目が83.0±7.92%(p=0.1126)、投与後12週目が83.6±7.63%(p=0.1156)、投与後16週目が85.1±7.31%(p=0.0297)、投与後20週目が88.4±7.04%(p=0.0019)、投与後24週目が84.0±10.08%(p=0.207)となり、投与後4週目、16週目、20週目に有意な上昇を認めた。
VII.肝生検
肝生検によるNAFLD活性スコア(NAS)およびMatteoni分類を評価する。
肝臓組織標本の組織学的検査は、脂肪症の定量化、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の診断、および線維化の病期分類のゴールドスタンダードである。
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)の診断には、脂肪症、つまり生検標本に脂肪滴を含む肝細胞の5%の最小閾値が不可欠である。NAFLDは、組織学的に非アルコール性脂肪肝(NAFL)またはNASHとして現れることがある。NAFLが肝細胞損傷(肝細胞のバルーン形成)の証拠がない脂肪肝の存在として定義される一方で、NASHは、最終的に進行性の線維化および肝硬変を導く線維形成の主要なドライバーであると考えられている脂肪肝、小葉の炎症、および肝細胞のバルーン形成の組み合わせの存在を含む。
Matteoniらは、NAFLDを4つの異なるサブタイプに分類する最初の診断基準を提示した:脂肪肝のみのNAFLDタイプ1;脂肪肝と小葉の炎症を伴うタイプ2;脂肪肝とバルーン形成変性を伴うタイプ3;脂肪の蓄積とバルーン形成変性と、マロリー・デンク体または線維化のいずれかとを伴うタイプ4(Matteoniら, alcoholic fatty liver disease: a spectrum ofclinical and pathological severity. Gastroenterology. 1999 Jun;116(6):1413-9)。サブタイプ1および2と比較して、サブタイプ3および4の患者では、肝臓関連の死亡率が増加する傾向があった。サブタイプ3および4は、今日NASHを表すと考えられるものである。
一方、KleinerらによるNAFLD活動スコア(NAS)は、0から8の範囲の非荷重合計(8はより重篤な疾患を示す)であり、脂肪症(0~3)、小葉の炎症(0~3)およびバルーン形成変性(0~2)の3つの独立した組織学的要素で構成される(Kleinerら, Nonalcoholic Steatohepatitis Clinical ResearchNetwork. Association of Histologic Disease Activity With Progression of Nonalcoholic Fatty LiverDisease. JAMA Netw Open. 2019 Oct 2;2(10): e1912565)。
NASは、潜在的に可逆的であり、介入および治療戦略の組織学的効果を評価するために設計された活動性傷害の機能を含む。現在、NASはNAFLD/NASHで最も広く使用されている組織学的分類であり、インターベンショナル研究で疾患活動性を定義および定量化するための臨床試験のエンドポイントとしてその使用が推奨される。Kleinerらによる研究では、NASおよび疾患活動性の改善は、線維化の改善と関連しており、その逆も同様であった。研究の結果は、本発明に記載されるような疾患活動性を改善する薬剤を使用するNASHの臨床試験における短期間の代理エンドポイントとしてのNASの使用の理論的根拠を提供する。
投与後24週目のNAS(小葉内炎症)では2例に改善、NAS(肝脂肪化)および線維化では1例に改善が認められた。
投与後24週目のNAS(肝細胞のバルーン形成)では患者の多くに改善が認められた。
投与後24週目のMatteoni分類では、変化は認められなかった。結果を図4、5に示す。
VIII.結論
肝硬変患者全7症例中、5症例において、血清アルブミン値およびプロトロンビン活性の双方の改善がみられた。また、肝生検による肝臓の組織診断によっても、肝臓状態の改善例が認められた。上記試験結果は、ARDCs、特に新鮮に単離された自家ARDCsを用いた治療が、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)による肝硬変と診断された患者および/または脂肪性肝障害を基盤とする肝硬変と診断された患者において、肝機能の改善または維持に有効であることを示している。
特に、上記試験結果から、ADRCSを含む脂肪組織由来細胞など、生理的刺激に応答してトランスクリプトームおよびセクレトームを変化させることができる生細胞の異種混合は、多数のアクションを介して(線維化を治療または予防することにより)肝臓の再生に作用する能力を有することが示されたと言える。種々の細胞系統と放出された多数の因子との間の細胞クロストークは、相加的および相乗的効果を有するものであり、これらの因子のいずれか1つのみの放出では、上記効果を確認することができなかったものと考えられる。肝機能の改善または維持において微小環境によって調節される例示的なメカニズムは、血管新生、抗線維化およびリモデリングなどを含むが、これらに限定されない。
ADRCsは、血管内皮前駆細胞(EPC)の存在と血管新生促進因子の発現との双方によって、血管新生を促進できることを示している。EPCは、肝疾患の動物モデルにおいて生存期間および肝機能を改善することが示されている。EPCは、少なくとも部分的には、新しい血管の形成を促進し、肝細胞灌流を改善することによって機能する可能性がある。肝硬変は、肝細胞灌流を劇的に減少させ、再生および修復に適さない低酸素環境を作出できる肝内血管シャントの発生を伴う。確かに、広範囲の肝内血管シャントの発生は、肝硬変が再発しないという点の主要な決定要因として説明されている。EPCは、新しい血管の形成および細胞外マトリックスのリモデリングを介して肝臓内の微小環境を改善することによって機能する可能性がある。これは、EPCsで処理した動物において増加した肝細胞増殖によって証明されるように、通常の肝臓修復メカニズムがより効果的に機能できる微小環境を作出することによる。したがって、肝血管新生を増加させるアプローチは、改善された肝再生を促進する可能性を有する。
また、肝細胞増殖因子(HGF)は、周知の抗線維化サイトカインであり、HGF遺伝子またはタンパク質の送達は、多数のインビボモデルで肝線維化を減弱させる。HGFの抗線維化作用は、線維形成性サイトカインの発現(トランスフォーミング増殖因子ベータ1(TGF-β1)および血小板由来増殖因子-bb(PDGF-bb))の減弱、および増殖の阻害および肝星細胞の活性化によって達せられ、肝臓における主要なECM発生場であると考えられる。さらに、HGFは正常な肝細胞の細胞死を阻害する。ADRCsは、脂肪由来間葉系幹細胞を含む間葉系幹細胞と比較して有意に高いレベルでHGFを分泌することが示されている。種々の成長因子およびサイトカイン、例えばHGFの分泌を介したADRCsの使用は、肝線維化からの回復および肝機能の改善の促進に有効であり、肝線維化および/または肝硬変の予防および治療における効果が期待される。

Claims (16)

  1. 脂肪組織由来再生細胞(ADRCs)を含む、肝線維化および/または肝硬変の予防または治療における使用のための医薬組成物。
  2. 脂肪組織由来再生細胞(ADRCs)が、脂肪由来幹細胞(ADSCs)、内皮細胞、内皮前駆細胞、マクロファージ、線維芽細胞、周皮細胞、平滑筋細胞、前脂肪細胞、ケラチノサイト、単能性または多能性前駆細胞および先駆細胞およびそれらの子孫、並びにリンパ球から選択される脂肪由来再生細胞の1つ以上のタイプを含む任意の不均一または均一な細胞集団である、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 脂肪由来再生細胞が、脂肪組織由来再生細胞(ADRCs)の全ての細胞成分の少なくとも0.1%の割合で脂肪組織由来幹細胞(ADSCs)を含む、請求項1または2に記載の医薬組成物。
  4. 脂肪組織由来再生細胞(ADRCs)が、培養されていない細胞である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
  5. 脂肪組織由来再生細胞(ADRCs)が、凍結保存された細胞である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
  6. 脂肪組織由来再生細胞(ADRCs)が、自家性の皮下脂肪組織由来再生細胞である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
  7. 脂肪組織由来再生細胞(ADRCs)が、CD45の細胞表面マーカーについて陽性である、請求項1から6までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
  8. 肝線維化および/または肝硬変が、慢性肝損傷によって生じる、請求項1から7までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
  9. 肝線維化および/または肝硬変が、非アルコール性脂肪性肝炎によって生じる、請求項1から8までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
  10. 画像所見または組織学によって非アルコール性脂肪性肝炎によって生じる肝硬変と診断され、以下の基準(1)~(3):
    (1)アルコール摂取量がエタノール消費量で1日あたり20g以下である、
    (2)肝障害のその他の公知の原因が特定されていない、および
    (3)患者は、肥満、内臓脂肪、メタボリックシンドロームおよび糖尿病からなる群から選択される、脂肪肝の原因となる少なくとも1つの状態または合併症を有している
    を満たす患者に適用するための、請求項9に記載の医薬組成物。
  11. 肝線維化および/または肝硬変が、脂肪性肝疾患に基づく、請求項1から8までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
  12. 画像所見または組織学により脂肪性肝疾患に基づく肝硬変と診断され、以下の基準(4)~(6):
    (4)アルコール摂取量がエタノール消費量で1日あたり20g超70g以下である、
    (5)肝障害のその他の公知の原因が特定されていない、および
    (6)患者は、肥満、内臓脂肪、メタボリックシンドロームおよび糖尿病からなる群から選択される、脂肪肝の原因となる少なくとも1つの状態または合併症を有している
    を満たす患者に適用するための、請求項11に記載の医薬組成物。
  13. 動脈内、静脈内または門脈内注射により投与されるように調製される、請求項1から12までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
  14. 細胞密度が1×10~1×109細胞/mLの量で調製される、請求項1から13までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
  15. 肝線維化および/または肝硬変の治療が、血清アルブミンレベルおよび/またはプロトロンビン活性における改善を含む、請求項1から14までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
  16. 脂肪組織由来再生細胞(ADRCs)の単一細胞懸濁液の形で調製される、請求項1から15までのいずれか1項に記載の医薬組成物。
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