JP2024507244A - 根管治療器具用の作業領域を製造する方法、根管治療器具を製造する方法及び根管治療器具 - Google Patents

Abstract

本発明は、根管治療器具（１）用の作業領域（４）を作成する方法であって、ニッケルチタン合金製のストランドを設け、前記ストランドを前記作業領域（４）のブランク寸法に切断し、前記作業領域（４）に先端を形成し、前記作業領域（４）を４００～４３０℃の温度で２５～４０分間加熱処理し、前記加熱処理された作業領域（４）を室温まで急速冷却し、前記作業領域（４）の最終的な形状を作成するステップを有し、前記ニッケルチタン合金は、金属成分としてニッケルとチタンのみを含む方法に関する。【選択図】図１

Description

本発明は、根管治療器具用の作業領域を製造する方法及び根管治療器具を製造する方法に関する。また本発明は、当該方法に従って製造された根管治療器具に関する。

例えば独国実用新案第２０２０１２０１２５２６号等の従来技術から、根管治療器具が知られている。根管治療器具は、対応する根管治療を実施できるように根菅の屈曲や湾曲に沿えるような所定の柔軟性を有していなければならない。このため、根管治療器具は、作業領域と軸領域を有しており、軸領域（又は略して軸）は取っ手領域として機能する。作業領域は、軸領域へ向かう方向へ円錐状に連続的に拡大する芯、すなわち固体素材製の芯を有する。特に大臼歯は比較的複雑な根管系を有しており、根管治療器具はこの根管系において根管の小さな半径に沿わなければならない。このため、根管治療器具の作業領域は特に柔軟でなければならない。今までは根管治療器具の芯を更に先細りさせることでこれを実現してきたが、これは作業領域の機械的安定性の減少につながり、根管治療の最中に作業領域の一部が破断するある種の危険性を伴う。

独国実用新案第２０２０１２０１２５２６号

従って、本発明の目的は、根管治療器具用の作業領域を製造する方法、根管治療器具を製造する方法及び歯科根管治療器具を提供することで、根管治療器具は、簡潔で安定した構造と共に向上した柔軟性を有し、特に歯の根管の急な湾曲に沿いうることを特徴している。また、本方法は、簡単且つ安価に実現できる。

この目的は、独立請求項の特徴を有する根管治療器具用の作業領域を製造する方法、根管治療器具を製造する方法及び根管治療器具によって実現される。従属請求項は、本発明の好適な実施形態を示す。

このため、本発明に係る根管治療器具用の作業領域を製造する方法は、まずニッケルチタン合金のストランドを設けるステップを有する。本発明の意味におけるニッケルチタン合金は、金属成分としてニッケルとチタンのみを含み且つその他の金属成分を実質的に含まない合金であると理解すべきである。この文脈における「実質的」は、ニッケルチタン合金の全質量に対し、０．１質量％未満、特に０．０５％未満の量的割合で含まれる、技術的に不可避の不純物を除くことを意味する。一方、ニッケルチタン合金は非金属元素、化合物及び／又は成分を含みうる。

そして、ニッケルチタン合金ストランドは、作業領域のブランク寸法に切断された後、製造される作業領域におけるストランドの一端に先端が形成される。先端の形成は、先端を根管への挿入に適するように正確且つ細く成形しなければならないため、後の根管治療器具用の作業領域の最終的な形状のために必須である。先端の成形は、一端に先端を有する実質的に円柱状の部品が作成されるよう、例えば研削によって行われてもよい。

その後、作業領域は、４００～４３０℃の温度で２５～４０分間熱処理される。温度が４００℃で、熱処理時間が３０分間であることが特に有利であることが分かっている。先端は、しかしながら未だにニッケルチタン合金の状態で形成されており、合金はこの状態では超弾性体で硬い。このため先端を非常に細くできると同時に結果的に得られる先端の破損を防げる。

続く４００～４３０℃の温度での２５～４０分間の熱処理と続く熱処理された作業領域の室温への急速冷却によって、超弾性素材が焼なましされ、高い機械的安定性と共に恒久的に高い柔軟性が超弾性素材に与えられる。３００℃付近の温度でのニッケル含有チタン合金の焼なましは知られているものの、本発明によると、熱処理が４００℃以上の温度、すなわち４００～４３０℃、好ましくは４００℃で２５～４０分間、特に３０分間実施された場合にのみ、根管治療器具の作業領域の作成に最適化された、非常に扱いやすく、破断することなく高角度の根管にも導入できる素材が形成されることが分かった。４００℃未満の温度は、非常に良好な機械特性と共に良好な適用性を得るには不十分であることが分かった。この場合、加熱処理は、特に内部温度が４００℃に維持された適切な加熱炉で実施できる。炉における熱処理の代わりに、「抵抗処理」によっても必要な熱を加えることができる。この場合、加熱する部品一つにつき電流が約５Ａになるように制御した状態で部品に電圧をかける。部品は、機械的なスライド接触によって又は導電性電解質を介して電圧源と接触させてもよい。

室温での急速冷却は、特に作業領域の柔軟性を向上、すなわち曲げ負荷能力を増加させるために、また特に高ねじり力下での作業領域の破損に対抗する延性の観点から機械的安定性を向上させるためにも実施される。本発明の目的のために、急速冷却は、焼なまし温度又は熱処理の温度から室温、すなわち約２０～２５℃への急速冷却を意味していると理解される。これは、具体的には室温に維持された媒体を焼なまし又は熱処理されニッケルチタン合金に接触させることで実現される。媒体の詳細に特に制限はなく、窒素や二酸化炭素等の気体又は水やその他の不活性溶媒等の液体を含みうる。

焼なまし後、作業領域の最終的な形状が作成され、すなわち具体的には元々使用されたストランドの円柱形から、先端へ先細る円錐形が形成され、根管洗浄に使用可能な任意のアブレーション面が形成される。

本発明に係る方法は、簡単且つ費用効率よく実現でき、根管治療器具での使用に理想的に適した作業領域の作成を可能とし、作業領域が高い柔軟性と共に高い機械的安定性とを有するため、根管治療において使用された場合に破断することなく簡単に根管に沿うことができることを特徴とする。

有利には、抵抗処理を適用することによって熱処理を実施することとする。

有利なさらなる発展例によると、ニッケルチタン合金は炭素及び／又は酸素を更なる成分として含む。これらの成分は、元素、例えば純粋な炭素の形又は化合物、例えば炭化物や酸化物の形で存在しうる。ただし、炭素及び／又は酸素の含有は必須ではなく、ニッケルチタン合金は、ニッケルとチタンのみから構成されていてもよい。炭素及び酸素各々の最大含有量は、ニッケルチタン合金の全質量に対して０．０５質量％である。

特に好ましくは、本方法で使用されるニッケルチタン合金は、５４～５７質量％のニッケルと、最大で０．０５質量％の炭素と、最大で０．０５質量％の酸素と、残部のチタンから成る。水素、酸素及び窒素の含有量は、キャリアホットガス抽出（Ｃａｒｒｉｅｒ Ｈｏｔ Ｇａｓ Ｅｘｔｒａｃｔｉｏｎ：ＴＧＨＥ）によって測定される。炭素の含有量は燃焼分析によって測定され、その他全ての元素の含有量はＸ線蛍光分析（Ｘ－ｒａｙ ｆｌｕｏｒｅｓｃｅｎｃｅ ａｎａｌｙｓｉｓ：ＸＲＦ）によって測定される。

形状記憶という観点から特に好適な素材として、ニチノールが使用される。

さらに有利には、本方法は、先端の形成後、熱処理前に作業領域をラウンディングするステップを有する。ラウンディングは、特にタンブリングによって実施でき、尖った縁を丸めることができる。縁は、焼なまし後では再加工することが困難又は、素材の大量の損失を伴ってのみ再加工できる。

急速冷却は、特に有利には水中で実施される。水は、その高い熱容量により、特にニッケルチタン合金の急冷を確実なものとし、これにより作業領域の曲げ負荷能力と延性の両方を更に向上させる。

作業領域の最終的な形状は、特に研削によって作成される。ここでは、有利なさらなる発展例によると、研削は歯部及び／又は深さマークの研削を含みうる。鋸歯状の縁は、感染した歯髄組織のよりよい除去に役立つ。深さマークは、深すぎる根管治療防ぐために、根管治療器具がどれだけ深く根管に挿入されたかをユーザに示す印として機能する。

特に深さマークは、熱処理及び急速冷却によって変色した領域に研削され、この結果、非常に高い色の対比が生まれ、深さマークをよりよく視認できる。

本方法は、作業領域のデバリング等の更なる方法ステップを有しうる。デバリングは、例えばレーザー光又はウォータージェットによって実行できる。

更に本発明によると、根管治療器具を製造する方法が述べられ、当該方法は以下のステップを有する。第一の方法ステップでは、上述の根管治療器具用の作業領域を作成する発明に係る方法を用いて根管治療器具用の作業領域を作成した後、作業領域を軸に接続する。軸は、ユーザが根管治療器具を正確に案内するための取っ手領域として機能する。

好ましくは、作業領域が、押圧、溶接又は成形によって軸に接合される。特に、上述の最初の２つの方法は、軸が金属素材製である場合にとりわけ適している。作業領域、すなわち作業領域の先端の反対側の根管治療器具の端に軸を直接成形することは、特に軸が射出成形可能なプラスチック素材製である場合に実施される。例えば、ここでは射出成形技術が用いられる。

更に有利には、本方法は、カラーマークのステップ及び／又はストッパーを搭載するステップを有する。両変形例は、患者へのダメージを防ぐために、根管治療器具のユーザが根管治療器具をどれだけ深く根管に挿入したかを、ユーザに明示する働きをする。カラーマーク又はストッパーは、根管治療器具の、根管のさらに奥への挿入が防がれるべき位置に取り付けられる。

また、本発明によると、上述の根管治療器具を製造する方法によって製造できる歯科根管治療器具も述べられている。本発明に係る根管治療器具は、本発明に係る方法の適用により、優れた柔軟性と同時に高い機械的安定性を有することを特徴とする。その結果、本発明に係る根管治療器具は、根管の治療時に、アクセスが困難な大臼歯の根管であっても、根管治療器具の作業領域の破断のおそれ無しに根管の屈曲や湾曲に見事に沿うことができる。これは、根管から壊死又は感染した歯髄組織の完全な除去が、高い確度で可能であることを意味している。これにより、根管に存在する微生物が可能な限り除去される結果となる。

本発明に係る方法及び本発明に係る根管治療器具について説明した利点、有利な効果及びさらなる発展例は各ケースにおいて相互に適用可能である。また、いずれの定義に関しても、上述の説明が参照される。

以下では、本発明を、図面に関連する実施形態例を用いて説明する。図面は以下を示す。

本発明の一実施形態に係る根管治療器具の模式的側面図である。

図１は、本発明に係る根管治療器具を作成する方法に従って作成された根管治療器具１を詳細に示し、根管治療器具１は、軸２と、接続領域３によって軸２に接続された作業領域４とを備える。軸２の先端に接続ピース５が位置する。接続ピース５は、駆動部への接続用として、また歯科医師が用いることによって根管治療器具１の操作が可能となるハンドピースとして用いられる。

作業領域４は、それにより根管の壊死または細菌感染した歯髄組織を除去できる切断領域であるとされる。作業領域４は、第一の端６と第二の端７とを備える。第一の端６は、接続領域３において軸２に接続される。一方、第二の端７は、露出しており、先端を備える。第一の端６から第二の端７までの作業領域２は、おおよそ円錐形に延びており、作業領域２は、異なるねじれ角を有する複数の領域を軸線方向Ｘ－Ｘに備え、ねじれ角は、第一の端６から第二の端７に向かうに従い減少する。

作業領域４は、特に５４～５７質量％のニッケルと、最大で０．０５質量％の炭素と、最大で０．０５質量％の酸素と、残部のチタンから成るニッケルチタン合金から成る。作業領域４は、ニッケルチタン合金のストランドを作業領域のブランク寸法に切断し、先端を作業領域に形成し、作業領域を４００～４３０℃の温度で２５～４０分間、特に４００℃で３０分間熱処理し、熱処理された作業領域を室温まで急速冷却し、作業領域の最終的な形状を作成することによって得られる。ここでは、例えば炉において実施される熱処理と、それに続く室温（２０～２５℃）に維持される水を用いて実施される急速冷却とは、機械的に安定しつつ高い柔軟性を有する作業領域を得るのに不可欠であり、この作業領域は、最終的な形状が作成された後に軸２に接合される。

炉における熱処理の代わりに、「抵抗処理」によっても必要な熱を加えることができる。この場合、加熱する部品一つにつき電流が約５Ａになるように制御した状態で部品に電圧をかける。部品は、機械的なスライド接触によって又は導電性電解質を介して電圧源と接触さてもよい。

１ 根管治療器具
２ 軸
３ 接続領域
４ 作業領域
５ 接続ピース
６ 第一の端
７ 第二の端

Claims (12)

1. 根管治療器具（１）用の作業領域（４）を製造する方法であって、
   ニッケルチタン合金製のストランドを設け、
   前記ストランドを前記作業領域（４）のブランク寸法に切断し、
   前記作業領域（４）に先端を形成し、
   前記作業領域（４）を４００～４３０℃の温度で２５～４０分間加熱処理し、
   前記加熱処理された作業領域（４）を室温まで急速冷却し、
   前記作業領域（４）の最終的な形状を作成するステップを有し、
   前記ニッケルチタン合金は、金属成分としてニッケルとチタンのみを含む方法。
2. 前記熱処理が、抵抗処理を適用することによって実施される請求項１に記載の方法。
3. 前記ニッケルチタン合金が、炭素及び／又酸素を更なる成分として含む請求項１又は２に記載の方法。
4. 前記ニッケルチタン合金は、５４～５７質量％のニッケルと、最大で０．０５質量％の炭素と、最大で０．０５質量％の酸素と、残部のチタンから成る請求項１～３のいずれか一項に記載の方法。
5. 前記先端の形成の後、前記熱処理の前に前記作業領域（４）をラウンディングするステップを更に有する請求項１～４のいずれか一項に記載の方法。
6. 前記急速冷却が水中で実施される請求項１～５のいずれか一項に記載の方法。
7. 前記作業領域（４）の最終的な形状の作成は、歯部及び／又は深さマークの研削を含む請求項１～６のいずれか一項に記載の方法。
8. 前記深さマークは、前記熱処理及び前記急速冷却によって退色した領域に研削される請求項７に記載の方法。
9. 根管治療器具（１）を製造する方法であって、
   請求項１～８のいずれか一項に記載に記載の方法に従って前記根管治療器具（１）用の作業領域（４）を作成し、
   前記作業領域（４）を軸（２）に接続するステップを有する方法。
10. 前記作業領域（４）の前記軸（２）への接続は、押圧、溶接又は成形によって実施される請求項９に記載の方法。
11. カラーマークのステップ及び／又はストッパーを搭載するステップをさらに有する請求項９又は１０に記載の方法。
12. 請求項９～１１のいずれか一項に記載の方法によって製造された根管治療器具（１）。

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